(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るエッチング装置の一例を示す縦断面図である。本実施形態におけるプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0011】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。この半導体ウエハWには本発明のエッチング対象である有機膜が形成されている。
【0012】
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20をAl2O3等の誘電体の絶縁層で挟んだ構造を有する。電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0013】
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0014】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室28には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ16上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
【0015】
更に、図示しない伝熱ガス供給機構からの冷熱伝達用ガス(冷却ガス)、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。これらの構成によって、半導体ウエハWを、所定の温度に制御可能となっている。
【0016】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部電極34および下部電極16間の空間にプラズマが生成される。
【0017】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数のガス吐出孔37を有する。また、上部電極34は、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38を有する。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0018】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理に必要なガスを供給するガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、複数のガス配管が接続されており、これらガス配管には流量制御器および開閉バルブ(いずれも図示せず)が設けられている。そして、処理に必要なガスは、ガス供給源66からガス供給管64を介してガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0019】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)51を介して可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50は、負極が上部電極34側となるように接続されており、上部電極34にマイナスの電圧を印加するようになっている。可変直流電源50からの給電はオン・オフスイッチ52によりオン・オフが可能となっている。ローパスフィルタ(LPF)51は後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0020】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。
【0021】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器46を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば60MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0022】
また、下部電極であるサセプタ16には、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90も電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハWに高周波バイアスが印加され半導体ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜20MHzの範囲内の周波数、例えば13.56MHzの高周波電力を出力する。第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0023】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0024】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分の半導体ウエハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は
図1の位置に限定されず、例えばサセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極34近傍に設けてもよい。
【0025】
プラズマエッチング装置の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、更には、第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、整合器46,88等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0026】
更に、制御部100には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理を制御部100で実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマエッチング装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0027】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100にて実行させることで、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。
【0028】
例えば、制御部100は、後述するプラズマエッチング方法を実行するようにプラズマエッチング装置の各部を制御する。その一例を挙げて詳細な説明をする。制御部100は、マスク膜203上に形成された所定のパターンを有するフォトレジスト膜204をプラズマ処理するようにプラズマエッチング装置の各部を制御する。そして、制御部100は、プラズマ処理されたフォトレジスト膜204のパターンに沿ってマスク膜203をプラズマによりエッチングして、マスク膜203の下層に形成されている有機膜202を露出させるようにプラズマエッチング装置の各部を制御する。そして、制御部100は、O2、COS、およびCl2を含む混合ガスによるプラズマにより有機膜202をエッチングするようにプラズマエッチング装置の各部を制御する。
【0029】
図2は、実施形態に係るエッチング装置でエッチングされる半導体ウエハの構造の一例を説明するための模式図である。本実施形態では、一例として
図2に示すような構造の半導体ウエハWを用いる。
【0030】
ここで用いる半導体ウエハ
Wは、
図2に示すように、基板上に下層膜201、有機膜202、マスク膜(無機膜)203、BARC(有機膜)およびフォトレジスト(PR)膜204を順次形成した後、フォトレジスト膜204にフォトリソグラフィにより所定パターンを形成した構造を有している。
【0031】
本実施形態におけるエッチング対象膜である有機膜202としては、通常この分野で用いられる有機膜であって、シリコンが含まれていないものであれば制限はなく、アモルファスカーボン(a−C)やSOC(スピンオンカーボン)、SOH(スピンオンハードマスク)等を好適に用いることができる。有機膜202の厚さは100〜1000nm程度で、例えば200nmである。
【0032】
マスク膜203としては、例え
ばSiON膜(シリコン酸窒化膜)を好適に用いることができ、その厚さは10〜100nm程度で、例えばそれぞれ12nmおよびと20nmである。フォトレジスト膜204は、典型的にはArF(フッ化アルゴン)レジストであり、その厚さは20〜200nm程度である。
【0033】
次に、本実施形態に係るプラズマエッチングの原理について
図3を用いて説明する。
図3は、処理ガスと溝の形状との関係の一例を示す模式図である。
図3(a)は、処理ガスにCOSもCl2も含まれていないCF系の処理ガスのプラズマによりマスク膜203をマスクとして有機膜202をエッチングした場合の溝の形状の一例を示す模式図である。
図3(a)に示すように、有機膜202に形成された溝の形状は、溝の開口や底の幅に比べて溝の中央が膨らむ形状となるボーイングが生成される。そのため、溝を設計値通りの幅にするためには、ボーイングによる中央部分の膨らみを考慮して、マスク膜をエッチン
グするBT工程においてマスク膜203に開けられる溝の幅を狭くすることにより、有機膜202の溝の開口を狭くする必要がある。
【0034】
しかし、マスク膜203の溝の幅を、高い精度を保ちながら狭くすることには高度な微細化の技術を必要とする。また、開口の狭い溝をエッチングにより有機膜202に形成できたとしても、溝の内部に比べて開口が狭いため、その後の工程において、内部に溜まった堆積物を除去したり、有機膜202に形成された溝の内壁に均一な膜を形成すること等が難しくなる場合がある。
【0035】
ここで、溝の開口の幅が溝の底の幅よりも広くなるように溝の内壁に傾斜(テーパ)が形成できれば、半導体の製造工程において内部に溜まった堆積物を除去したり、溝の内壁に均一な膜を形成すること等が容易になる。ただし、高密度化を達成するためには、溝の内壁の傾斜を緩やかにし過ぎることもできない。これらを考慮すると、テーパの角度は、84°〜89°であることが好ましい。より好ましくは、テーパの角度は、84°〜86°であるとよい。
【0036】
また、ボーイングの発生を抑える添加ガスとしては、COSガスが知られている。
図3(b)は、処理ガスにCOSガスを添加、又はCOS単ガスの処理ガスのプラズマによりマスク膜203をマスクとして有機膜202をエッチングした場合の溝の形状の一例を示す模式図である。
図3(b)に示すように、処理ガスにCOSガスが添加されると、プラズマ中に生成されたS(硫黄)成分のイオンにより、溝の内壁にSの堆積物が付着しながらエッチングされるので、ボーイングの発生がある程度抑えられる。しかし、COSガスを用いることでボーイングが抑制されたとしても、不十分であり、且つテーパ形状が形成されない。そのため、依然としてボーイングの抑制及びテーパ形状を考慮した設計が必要となる。
【0037】
図3(c)は、処理ガスにCl2ガスを添加、又はCl2単ガスの処理ガスのプラズマによりマスク膜203をマスクとして有機膜202をエッチングした場合の溝の形状の一例を示す模式図である。
図3(c)に示すように、COSガスを用いた場合と同様に、処理ガスにCl2ガスが添加されると、プラズマ中に生成されたSiClx(塩化ケイ素)成分のイオンにより、溝の内壁にSiClxの堆積物が付着しながらエッチングされるので、ボーイングの発生がある程度抑えられる。しかし、Cl2ガスを用いることでボーイングが抑制されたとしても、不十分であり、且つテーパ形状が形成されない。そのため、依然としてボーイングの抑制及びテーパ形状を考慮した設計が必要となる。
【0038】
そこで、本実施形態の有機膜エッチング工程では、O2ガス/Cl2ガス/COSガスを含む処理ガスのプラズマにより有機膜202をエッチングする。
図3(d)は、O2ガス/Cl2ガス/COSガスを含む処理ガスのプラズマによりマスク膜203をマスクとして有機膜202をエッチングした場合の溝の形状の一例を示す模式図である。
【0039】
発明者は、鋭意研究の結果、処理ガスにCOSガスおよびCl2ガスが添加されると、
図3(d)に示すように、プラズマ中に生成されたS成分のイオンおよびSiClx成分のイオンにより、溝の内壁にSとSiClxの混合堆積物が付着しながらエッチングされるので、ボーイングの発生が大幅に抑えられることが分かった。これにより、溝の内壁をテーパ形状とすることができ、後の工程において溝の内部に溜まった堆積物の除去や、溝の内壁に均一な膜を形成すること等が容易になる。このように、本願発明のエッチング方法により有機膜をエッチン
グして、好ましいCDやテーパ形状の溝を形成した後、その有機膜202をマスクとして、例えばSiON膜、TiN(メタルハードマスク)等の下層膜201をプラズマによりエッチングすることにより、下層膜201に形成される溝のCD及び形状を高い精度で形成することが可能となる。さらに、その下層膜の下層に形成する膜を、下層膜をマスクとしてエッチングすることで、良好な形状の溝を形成することが可能となる。また、これにより、半導体装置の性能及び歩留まりを向上させることが可能となる。
【0040】
<プラズマエッチング方法の実施形態>
次に、本実施形態におけるプラズマエッチング方法の各工程について説明する。
図4は、本実施形態に係るプラズマエッチング方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0041】
本実施形態におけるプラズマエッチング方法では、
図4に示すように、まず、被処理体となる
半導体ウエハWがチャンバ10内に搬入されてサセプタ16上に載置され。そして、制御部100は、排気装置84の真空ポンプにより排気口80を介してチャンバ10内を所定の圧力まで排気し、チャンバ10内に処理ガスを供給してプラズマ処理を実行する(ステップS100)。
【0042】
例えば、制御部100は、水素を含む処理ガスをガス供給源66からチャンバ10内に供給し、水素含有ガスのプラズマによりフォトレジスト膜の表面をプラズマ処理してレジスト膜を固化させる。プラズマ処理工程は、キュア工程とも称され、マスクとして用いられるフォトレジスト膜のSWR(Side Wall Roughness)やLER(Line Edge Roughness)等を改善する。
【0043】
より詳細には、制御部100は、例えば、以下の条件でフォトレジスト膜204をプラズマ処理を実行する。
チャンバ10内の圧力:10mT
上部電極34に供給する高周波電力:200W
上部電極34に供給する電力の周波数:60MHz
下部電極(サセプタ16)に供給する高周波電力:0W
供給ガスおよび流量比:H2(水素)/N2(窒素)/CH4(メタン)=180/60/10sccm
冷却ガスの圧力:20/20Torr
上部電極34の温度:90℃
チャンバ10の内壁の温度:60℃
サセプタ16の中央の温度:15℃
サセプタ16のエッジの温度:5℃
【0044】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内に処理ガスを供給して、マスク膜203のエッチング工程を実行する(ステップS101)。例えば、制御部100は、CF系ガス及びCH系ガスを含む処理ガスをガス供給源66からチャンバ10内に供給し、プラズマ処理されたフォトレジスト膜204をマスクとしてCF系ガス及びCH系含有ガスによるプラズマによりBARC(有機膜)及びシリコン含有膜であるマスク膜203をエッチングして、マスク膜203の下層に形成されている、Siを含まない有機膜202を露出させる。マスク膜203のエッチング工程は、BT(Break Through)工程とも称される。この場合、マスク膜203上には、ArF等のフォトレジスト膜204が所定の厚みで残される。
【0045】
より詳細には、制御部100は、例えば、以下の条件でマスク膜203のエッチングを行う。
チャンバ10内の圧力:15mT
上部電極34に供給する高周波電力:500W
上部電極34に供給する電力の周波数:60MHz
下部電極(サセプタ16)に供給する高周波電力:100W
下部電極(サセプタ16)に供給する電力の周波数:13MHz
供給ガスおよび流量比:CF4(四フッ化炭素)/CH4/O2=250/20/8sccm
冷却ガスの圧力:20/20Torr
上部電極34の温度:90℃
チャンバ10の内壁の温度:60℃
サセプタ16の中央の温度:15℃
サセプタ16のエッジの温度:5℃
【0046】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内に処理ガスを供給して、Siを含まない有機膜202のエッチング工程を実行する(ステップS102)。例えば、制御部100は、COSおよびCl2を含む処理ガスをガス供給源66からチャンバ10内に供給し、残膜のフォトレジスト膜204およびマスク膜203をマスクとして、COSガスおよびCl2ガス含有ガスのプラズマにより、Siを含まない有機膜202をエッチングする。
【0047】
より詳細には、制御部100は、例えば、以下の条件で、Siを含まない有機膜202のエッチングを行う。
チャンバ10内の圧力:10mT
上部電極34に供給する高周波電力:500W
上部電極34に供給する電力の周波数:60MHz
下部電極(サセプタ16)に供給する高周波電力:200W
下部電極(サセプタ16)に供給する電力の周波数:13.56MHz
供給ガス:O2/He(ヘリウム)/Cl2/COS
冷却ガスの圧力:20/20Torr
上部電極34の温度:90℃
チャンバ10の内壁の温度:60℃
サセプタ16の中央の温度:15℃
サセプタ16のエッジの温度:5℃
【0048】
なお、Siを含まない有機膜202のエッチング工程においてチャンバ10内に供給される処理ガスにはO2およびHeが多く含まれているため、プラズマが発生しにくい。そのため、制御部100は、チャンバ10内の圧力を一時的に20mTまで上げてからプラズマを発生させ、プラズマが安定的に発生した後に、チャンバ10内の圧力を処理圧力である10mTまで下げる制御を行うことが好ましい。
【0049】
<実施例1>
次に、
図2に示した膜構成の
半導体ウエハ
Wを用いて、COSガスおよびCl2ガスの流量を変えてエッチングし、流量比と、CDおよびテーパ角度との関係を調べる実験を行った。以下の実験結果では、マスク膜203/有機膜202/下層膜201=28/170/40nmの
半導体ウエハ
Wを用いている。また、プロセス条件は、以下の3通りである。
供給ガス:O2/He/Cl2/COS=50/160/20/8sccm ・・・(1)
=50/160/13/6sccm ・・・(2)
=50/160/16/8sccm ・・・(3)
各ガスの好ましい流量は、COSガスでは3〜10sccm、Cl2ガスでは10〜25sccm、Heガスでは100〜200sccm、O2ガスでは45〜100sccmである。その他のステップ及び条件は、前述の有機膜エッチングの条件と同様である。
【0050】
図5(a)〜(c)は、COSガスおよびCl2ガスを含む処理ガスのプラズマによりエッチングした場合の溝の断面の実験結果の一例を示す。
図5(a)は、上記(1)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示し、
図5(b)は、上記(2)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示し、
図5(c)は、上記(3)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示す。
【0051】
上記(1)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合には、
図5(a)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなっており、溝の側壁の傾斜も妥当な範囲に含まれている。
図5(a)の場合、溝の開口の幅は271nm、溝の底の幅は239nmであった。なお、上記(1)に示した流量比の処理ガスでは、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比は、0.4である。
【0052】
また、上記(2)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合も、
図5(b)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなっており、溝の側壁にテーパが形成されている。
図5(b)の場合、溝の開口の幅は264nm、溝の底の幅は257nmであった。なお、上記(2)に示した流量比の処理ガスでは、Cl2の流量に対するCOSの流量の比は、0.46である。
【0053】
また、上記(3)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合も、
図5(c)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなっており、溝の側壁にテーパが形成されている。
図5(c)の場合、溝の開口の幅は270nm、溝の底の幅は255nmであった。なお、上記(3)に示した流量比の処理ガスでは、Cl2の流量に対するCOSの流量の比は、0.5である。
【0054】
ここで、本明細書では、例えば
図6に示すような角度θをテーパ角度と定義する。テーパ角度θは、溝の開口の幅をTopCDとし、溝の底の幅をBottomCDとし、溝の深さ(有機膜202の厚み)をLとして、例えば、下記の算出式(4)を用いて算出される。
θ=tan
-1{L/((TopCD−BottomCD)/2)} ・・・(4)
【0055】
上記(1)〜(3)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合のそれぞれの溝の形状において、TopCDとBottomCDとからテーパ角度を算出すると、例えば
図7に示すようになる。また、テーパ角度の計算結果をプロットすると、例えば
図8に示すようなグラフになる。
図7は、COSガスとCl2ガスの流量の比に対するテーパ角度の計算結果の一例を示す。
図8は、COSガスとCl2ガスの流量の比に対するテーパ角度の変化の一例を示すグラフである。
【0056】
図7および
図8からわかるように、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が増加するに従って、テーパ角度が増加する傾向がみられる。テーパ角度は、84°〜89°の範囲内となることが好ましい。
図7および
図8の結果を参照すると、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.4〜0.5の範囲であれば、テーパ角度が、ボーイングを抑制しつつ、好ましいテーパ角度の84°〜89°の範囲内になっていることがわかる。
【0057】
また、発明者は、更に鋭意研究を重ねた結果、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.35〜0.5の範囲であれば、テーパ角度が、ボーイングを抑制しつつ、好ましいテーパ角度の84°〜89°の範囲に含まれることが分かった。そのため、処理ガスに含まれるCOSガスとCl2ガスの流量比は、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.35〜0.5の範囲内であることが好ましい。
【0058】
また、テーパ角度の範囲は、より好ましくは、84°〜86°の範囲であるとよい。ここで、
図7および
図8の結果を参照すると、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.4であれば、テーパ角度が、ボーイングを抑制しつつ、好ましいテーパ角度の84°〜86°の範囲内になっていることがわかる。また、発明者は、更に鋭意研究を重ねた結果、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.35〜0.45の範囲であれば、テーパ角度が、ボーイングを抑制しつつ、好ましいテーパ角度の84°〜86°の範囲に含まれることが分かった。そのため、処理ガスに含まれるCOSガスとCl2ガスの流量比は、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.35〜0.45の範囲であることが更に好ましい。
【0059】
<実施例2>
次に、
図2に示した膜構成の
半導体ウエハ
Wを用いて、COSガスおよびCl2ガスに対してO2ガスの流量を変えてエッチングし、流量比と、CDおよびテーパ角度との関係を調べる実験を行った。以下の実験におけるプロセス条件は、以下の3通りである。
供給ガス:O2/He/Cl2/COS=40/160/20/8sccm ・・・(5)
=50/160/20/8sccm ・・・(6)
=70/160/20/8sccm ・・・(7)
各ガスの好ましい流量は、COSガスでは3〜10sccm、Cl2ガスでは10〜25sccm、Heガスでは100〜200sccm、O2ガスでは45〜100sccmである。その他のステップ及び条件は、実施例1における有機膜エッチングの条件と同様である。
【0060】
図9(a)〜(c)は、COSガス、Cl2ガス、およびO2ガスを含む処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面の実験結果の一例を示す。
図9(a)は、上記(5)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示し、
図9(b)は、上記(6)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示し、
図9(c)は、上記(7)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合の溝の断面を示す。
【0061】
上記(5)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合には、
図9(a)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなり過ぎており、溝の側壁の傾斜も小さくなり過ぎている。
図9(a)の場合、溝の開口の幅は381nm、溝の底の幅は250nmであった。この場合、溝の底の幅(BottomCD)に対する溝の開口の幅(TopCD)の比であるCD比は、1.52である。また、上記(5)に示した流量比の処理ガスでは、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比は、1.43である。
【0062】
また、上記(6)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合には、
図9(b)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなっているものの、溝の側壁の傾斜は妥当な範囲に含まれている。
図9(b)の場合、溝の開口の幅は271nm、溝の底の幅は239nmであった。この場合、CD比は、1.13である。また、上記(6)に示した流量比の処理ガスでは、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比は、1.78である。
【0063】
また、上記(7)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合には、
図9(c)に示すように、溝の開口の幅が、溝の底の幅よりも広くなっているものの、溝の側壁のテーパの角度が急峻になっている。
図9(c)の場合、溝の開口の幅は279nm、溝の底の幅は265nmであった。この場合、CD比は、1.05である。また、上記(7)に示した流量比の処理ガスでは、CO
Sガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比は、2.5である。
【0064】
上記(5)〜(7)で示した流量比の処理ガスを用いてエッチングした場合のそれぞれの溝の形状において、TopCDとBottomCDとからCD比およびテーパ角度を算出すると、例えば
図10に示すようになる。また、CD比およびテーパ角度の計算結果をプロットすると、例えば
図11に示すようなグラフになる。
図10は、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比に対するCD比およびテーパ角度の計算結果の一例を示す。
図11は、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比に対するCD比およびテーパ角度の変化の一例を示すグラフである。
【0065】
図10および
図11の実験結果を参照すると、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比を増加させると、CD比は減少する一方、テーパ角度は増加する傾向にあることがわかる。
【0066】
また、
図10および
図11の実験結果を参照すると、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比が1.78〜2.63の範囲内が好ましい。その場合、テーパ角度が、好ましいテーパ角度の範囲である84°〜89°の範囲内の角度となっていることがわかる。
【0067】
また、発明者は、更に鋭意研究を重ねた結果、Cl2の流量とCOSの流量の合計に対するO2の流量の比が1.5〜2.7の範囲であれば、テーパ角度が、好ましいテーパ角度の84°〜89°の範囲に含まれることが分かった。そのため、処理ガスにおいて、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比は、1.5〜2.7の範囲内であることが好ましい。
【0068】
また、
図10および
図11の実験結果を参照すると、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比が1.78である場合に、テーパ角度が、より好ましいテーパ角度の範囲である84°〜86°の範囲内の角度となっていることがわかる。
【0069】
また、発明者は、更に鋭意研究を重ねた結果、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比が1.7〜1.9の範囲内であれば、テーパ角度が、より好ましいテーパ角度の84°〜86°の範囲内に含まれることが分かった。そのため、処理ガスにおいて、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比は、1.7〜1.9の範囲内であることが更に好ましい。従って、ボーイングを抑制しつつ、好ましいテーパ角度の範囲内の溝を形成するガス条件として、COSガスの流量とCl2ガスの流量の合計に対するO2ガスの流量の比が1.5〜2.7の範囲内が好ましく、また、Cl2ガスの流量に対するCOSガスの流量の比が0.35〜0.5の範囲が好ましい。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。