(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーが、シリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、アルミノシリケートバルーン及びジルコニアバルーンから選ばれ、比重が0.1〜0.8、平均粒子径が10〜200μmの無機中空フィラー、又はフェノール樹脂バルーン及びプラスチックバルーンから選ばれ、膨張後の平均粒子径が30〜100μmである、熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーであることを特徴とする請求項1に記載の封止材積層複合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた封止材積層複合体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明はこのような封止材積層複合体により封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ、封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を除去し個片化した半導体装置、及び封止材積層複合体を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、
1個以上の半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは1個以上の半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための封止材積層複合体であって、
該封止材積層複合体が硬化又は半硬化の支持基材用樹脂からなる支持基材と、該支持基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層とを有するものであり、前記支持基材用樹脂が無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーを含有する封止材積層複合体を提供する。
【0013】
このような封止材積層複合体であれば、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた封止材積層複合体となる。
【0014】
またこのとき、前記支持基材用樹脂が、シアネートエステル樹脂であり、該シアネートエステル樹脂が、(A)下記一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマー、
【化1】
(式中、R
1及びR
2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
3は
【化2】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。R
4は水素原子又はメチル基である。)
(B)下記一般式(2)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物(b−1)、
【化3】
(式中、R
5及びR
6は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
7は
【化4】
のいずれかを示し、p=0〜30の整数である。R
4は水素原子又はメチル基である。)
及び下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)
【化5】
のいずれか又は両方を含有し、硬化後のガラス転移温度が200℃以上、線膨張係数が5ppm/℃以下のものであることが好ましい。
【0015】
このようなシアネートエステル樹脂を用いた支持基材であれば、200℃以下での線膨張係数の変化がほとんどなく、熱膨張率の変化による半導体成形物への歪を抑えることができるため、剥離現象や半導体素子への影響を抑えることができる。また、線膨張係数が5ppm/℃以下であれば、半導体素子を搭載した基板あるいは半導体素子を形成したウエハとの膨張係数の差が小さくなるため、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制することができる。
【0016】
またこのとき、前記無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーが、シリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、アルミノシリケートバルーン及びジルコニアバルーンから選ばれ、比重が0.1〜0.8、平均粒子径が10〜200μmの無機中空フィラー、又はフェノール樹脂バルーン及びプラスチックバルーンから選ばれ、膨張後の平均粒子径が30〜100μmである、熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーであることが好ましい。
【0017】
このような中空フィラーであれば、支持基材が十分な耐圧強度を有し、配合、成形時に破壊されることなく形状を維持でき、封止硬化時に基板やウエハの反りを抑制できる十分な強度を有し、かつ内部構造をスポンジ状とすることができるため研磨性が著しく向上し、封止後の支持基材の除去がより容易になる。
【0018】
またこのとき、前記未硬化樹脂層の厚みが20μm以上2,000μm以下のものであることが好ましい。
【0019】
このように未硬化樹脂層の厚みが20μm以上であれば、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止するのに充分であり、薄すぎることによる充填性の不良が生じることを抑制できるため好ましく、2,000μm以下であれば封止された封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハが厚くなり過ぎることを抑制できるため好ましい。
【0020】
またこのとき、前記熱硬化性樹脂が、50℃未満で固形化し、かつ50℃以上150℃以下で溶融するものであることが好ましい。
【0021】
このような熱硬化樹脂であれば、支持基材でこのような樹脂を含む未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制できる。
【0022】
また、本発明では、上記の封止材積層複合体の未硬化樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆し、前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記封止材積層複合体により一括封止された封止後半導体素子搭載基板を提供する。
【0023】
また、本発明では、上記の封止材積層複合体の未硬化樹脂層により半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記封止材積層複合体により一括封止された封止後半導体素子形成ウエハを提供する。
【0024】
このような封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハであれば、封止後の支持基材を容易に除去可能であり、基板やウエハの反りが小さく、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0025】
さらに、本発明では、上記の封止後半導体素子搭載基板又は上記の封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化した半導体装置を提供する。
【0026】
このような半導体装置であれば、支持基材が除去され薄型であり、基板やウエハの反りが小さく、基板からの半導体素子の剥離が抑制され、かつ耐熱性や耐湿性等に優れた高品質な半導体装置となる。
【0027】
また、本発明では、上記の封止材積層複合体の未硬化樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、
前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは前記半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハとする封止工程、
前記封止後半導体素子搭載基板あるいは前記封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を研削して除去する研削工程、
研削した封止後半導体素子搭載基板あるいは研削した封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程、
を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0028】
このような半導体装置の製造方法であれば、封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を容易に除去することができるため、薄型で高品質な半導体装置を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の封止材積層複合体であれば、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた、非常に汎用性の高い封止材積層複合体となる。
また、このような封止材積層複合体によって封止された本発明の封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハであれば、封止後の支持基材を容易に除去可能であり、基板やウエハの反りが小さく、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハとなる。さらに、それらにより作製される本発明の半導体装置であれば、支持基材が除去され薄型であり、基板やウエハの反りが小さく、基板からの半導体素子の剥離が抑制され、かつ耐熱性や耐湿性等に優れた高品質な半導体装置となる。
また、上記の封止材積層複合体を用いた本発明の半導体装置の製造方法であれば、封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を容易に除去することができるため、薄型で高品質な半導体装置を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上述のように、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることなく、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる封止材の開発が求められていた。
【0032】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、硬化又は半硬化の支持基材用樹脂からなる支持基材と、支持基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層とを有し、支持基材用樹脂が無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーを含有する封止材積層複合体であれば、支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ中空フィラーを含むことで封止後の支持基材を容易に除去可能であり、また封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた、非常に汎用性の高い封止材積層複合体となることを見出して、本発明の封止樹脂積層複合体を完成させた。
【0033】
また、本発明者らは、上記封止材積層複合体により一括封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハであれば、封止後の支持基材を容易に除去可能であり、基板やウエハの反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハとなることを見出し、さらに、このように反りや半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハを個片化することで、高品質の半導体装置が得られることを見出し、本発明の封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、及び半導体装置を完成させた。
【0034】
さらに、本発明者らは、上記封止材積層複合体を用いることで簡便に半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆できることを見出し、上記封止材積層複合体の未硬化樹脂層を加熱、硬化することで半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を一括封止することができることを見出し、さらに、このように支持基材を有する封止材積層複合体により封止され、反り、半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を除去し、ダイシングして個片化することで、薄型で高品質な半導体装置を製造することができることを見出して、本発明の半導体装置の製造方法を完成させた。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明は、1個以上の半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは1個以上の半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための封止材積層複合体であって、
該封止材積層複合体が硬化又は半硬化の支持基材用樹脂からなる支持基材と、該支持基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層とを有するものであり、前記支持基材用樹脂が無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーを含有する封止材積層複合体である。
【0037】
<支持基材>
本発明の封止材積層複合体に用いる支持基材は、熱硬化性樹脂からなる支持基材用樹脂と、無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーを含有する。支持基材用樹脂としては、特に限定されないが、シアネートエステル樹脂からなるものであることが好ましい。
【0038】
[シアネートエステル樹脂]
本発明に用いるシアネートエステル樹脂は繊維基材を用いることなく線膨張係数を低く保つことができ、かつ、成形性に優れるものであることが好ましい。また、シアネートエステル樹脂の成分としては、(A)成分のシアネートエステル化合物又はそのオリゴマーのシアネート基1モルに対して、(B)成分のフェノール化合物又はジヒドロキシナフタレン化合物もしくはその両方の水酸基を0.05〜0.4モルの割合で配合した樹脂組成物を好ましく用いることができる。
【0039】
((A)成分:シアネートエステル化合物又はそのオリゴマー)
本発明で用いるシアネートエステル樹脂の(A)成分として、下記一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマーを好ましく用いることができる。
【化6】
(式中、R
1及びR
2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
3は
【化7】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。R
4は水素原子又はメチル基である。)
【0040】
ここで、シアネートエステル化合物としては、1分子中にシアネート基を2個以上有するものであり、具体的には、多芳香環の2価フェノールのシアン酸エステル、例えばビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアネートフェニル)−2,2−プロパン、ジ(4−シアネートフェニル)エーテル、ジ(4−シアネートフェニル)チオエーテル、多価フェノールのポリシアン酸エステル、例えばフェノールノボラック型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステル、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステル、ナフタレンアラルキル型シアネートエステルなどが挙げられる。
【0041】
前述のシアネートエステル化合物はフェノール類と塩化シアンを塩基性下、反応させることにより得られる。上記シアネートエステル化合物は、その構造より軟化点が106℃の固形のものから、常温で液状のものまでの幅広い特性を有するものの中から用途に合わせて適宜選択することができる。
【0042】
このうち、シアネート基の当量が小さいもの、即ち官能基間分子量が小さいものは硬化収縮が小さく、低熱膨張、高Tgの硬化物を得ることができる。シアネート基当量が大きいものは若干Tgが低下するが、トリアジン架橋間隔がフレキシブルになり、低弾性化、高強靭化、低吸水化が期待できる。
【0043】
なお、シアネートエステル化合物中に結合あるいは残存している塩素は好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下であることが好適である。50ppm以下であれば長期高温保管時熱分解により遊離した塩素あるいは塩素イオンが酸化されたCuフレームやCuワイヤー、Agメッキを腐食させ、剥離や電気的不良を引き起こす可能性がないため好ましい。また、樹脂の絶縁性も低下することがないため好ましい。
【0044】
((B)成分:硬化剤)
本発明で用いるシアネートエステル樹脂は、硬化剤として(B)成分を含有するものであることが好ましい。一般に、シアネートエステル化合物の硬化剤や硬化触媒としては、金属塩、金属錯体や活性水素を持つフェノール性水酸基や一級アミン類などが用いられるが、本発明では、フェノール化合物(b−1)やジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)といったものが好適に用いられる。
【0045】
(b−1)フェノール化合物
(B)成分として、下記一般式(2)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物(b−1)を好ましく用いることができる。
【化8】
(式中、R
5及びR
6は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
7は
【化9】
のいずれかを示し、p=0〜30の整数である。R
4は水素原子又はメチル基である。)
【0046】
ここでフェノール化合物としては1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つフェノール樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールA型樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂、ナフタレンアラルキル型樹脂が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
フェノール化合物はフェノール水酸基当量が小さいもの、例えば、水酸基当量120以下のものはシアネート基との反応性が高く、120℃以下の低温でも硬化反応が進行する。この場合はシアネート基に対する水酸基のモル比を小さくすると良い。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.05〜0.11モルである。この場合、硬化収縮が少なく、低熱膨張で高Tgの硬化物が得られる。
【0048】
一方フェノール水酸基当量が大きいもの、例えば水酸基当量175以上のものはシアネート基との反応が抑えられ保存性が良く、流動性が良い組成物が得られる。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.1〜0.4モルである。この場合Tgは若干低下するが吸水率の低い硬化物が得られる。希望の硬化物特性と硬化性を得るために、これらのフェノール樹脂を2種類以上併用することもできる。
【0049】
(b−2)ジヒドロキシナフタレン化合物
(B)成分として、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)を好ましく用いることができる。
【化10】
【0050】
ここでジヒドロキシナフタレンとしては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
融点が130℃の1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレンは非常に反応性が高く、少量でシアネート基の環化反応を促進する。融点が200℃以上の1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンは比較的反応が抑制される。
【0051】
これらのジヒドロキシナフタレンを単独で使用した場合、官能基間分子量が小さく、かつ剛直な構造であるため硬化収縮が小さく、高Tgの硬化物が得られる。また水酸基当量の大きい1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物と併用することにより硬化性を調整することもできる。
【0052】
なお、上記フェノール化合物及びジヒドロキシナフタレン中のハロゲン元素やアルカリ金属などは、120℃、2気圧下での抽出で10ppm、特に5ppm以下であることが好ましい。
【0053】
また、シアネートエステル樹脂のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましい。200℃以上であれば、200℃以下での線膨張係数の変化がほとんどなく、熱膨張率の変化による半導体成形物への歪を抑えることができる。すなわち、歪による剥離現象や半導体素子への影響を抑えることができる。ガラス転移温度は200℃以上あれば良いが、好ましくはガラス転移温度が250℃以上である。
【0054】
さらに、シアネートエステル樹脂の線膨張係数は5ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは1ppm/℃以上3ppm/℃以下、特に好ましくは2ppm/℃以上3ppm/℃以下である。シアネートエステル樹脂の線膨張係数が5ppm/℃以下であれば、半導体素子を搭載した基板又は半導体素子を形成したウエハとの膨張係数の差が大きくなることを抑制でき、そのためこれら基板又はウエハの反りをより確実に抑制することができる。特にウエハの径が300mm以上で厚みが100μm以下の大径薄膜状のウエハに対してはわずかな反りや歪応力が原因となって簡単に破壊される可能性が高いため、線膨張係数は2ppm/℃以上3ppm/℃以下であることが特に好ましい。
【0055】
[中空フィラー]
本発明で用いる支持基材用樹脂は、無機中空フィラー又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーを含有する。このようなフィラーを配合することにより、成形物がスポンジ状となり研磨性が著しく向上する。
【0056】
無機中空フィラーとしてはシリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、アルミノシリケートバルーン、ジルコニアバルーン等を用いるのが好ましい。無機中空フィラーの真比重は0.1〜0.8が好ましく、より好ましくは0.1〜0.7である。比重が0.1以上のものを用いることで、十分な耐圧強度が得られ、配合、成形時の破損を抑制できる。また、比重が0.8以下のものを用いることで、優れた研磨性を得ることができる。無機中空フィラーの平均粒子径は10〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜150μmである。平均粒子径10μm以上のものを用いることで、樹脂の粘度上昇を抑え、成形不良を抑制できる。また、平均粒子径200μm以下のものを用いることで、配合時や成形時の圧力による中空フィラーの破損を抑制できる。
【0057】
また、熱により膨張可能な未膨張の、あるいは熱により既に所定の粒径まで膨張済みの有機樹脂製微小中空フィラーとしてはフェノール樹脂バルーン、塩化ビニリデン樹脂バルーン等のプラスチックバルーンなどの各種の樹脂バルーンを用いるのが好ましい。例えば、熱可塑性中空バルーン、特に塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合物、あるいはこれら2種以上の共重合物が好適である。また、熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空フィラーの膨張後の平均粒子径は、例えば成形時に破壊されることなく、均一な硬化物を得る観点から30〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。膨張後の平均粒子径30μm以上の中空フィラーを用いることで、樹脂の粘度上昇を抑え、成形不良を抑制できる。また、膨張後の平均粒子径100μm以下の中空フィラーを用いることで、配合時や成形時の圧力による中空フィラーの破損を抑制できる。
なお、本発明において平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均径;D50(又はメジアン径)等として求めることができる。
【0058】
これらの中空フィラーの添加量としてはシアネートエステル樹脂等の支持基材用樹脂100質量部に対し1〜50質量部が好ましく、より好ましくは3〜30質量部である。1質量部以上とすることで、優れた研磨性を有するスポンジ状成形物を得ることができ、50質量部以下とすることで、配合が容易であり、十分な強度をもつ成形物となる。
【0059】
[無機充填剤]
本発明で用いる支持基材用樹脂には、さらに無機充填剤を配合することができる。配合される無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)、沈降シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノシリケート、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒子径や形状は特に限定されない。
【0060】
支持基材の厚みは50μm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは100μm〜500μmのものが望ましい。100μm以上であれば薄すぎて変形しやすくなることを抑制できるため好ましく、また1mm以下であれば封止後に支持基材を研削する際に、研削時間を短縮できるため好ましい。
【0061】
このような支持基材は、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止したあとの反りを低減させ、一個以上の半導体素子を配列、接着させた基板を補強するために重要である。そのため、硬くて剛直な基材であることが望ましい。
【0062】
<未硬化樹脂層>
本発明の封止材積層複合体は未硬化樹脂層を有する。この未硬化樹脂層は、前述の支持基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなるものである。この未硬化樹脂層は、半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を封止するための樹脂層となる。
【0063】
未硬化樹脂層の厚みは20μm以上2000μm以下であることが好ましい。20μm以上であれば半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止するのに充分であり、薄すぎることによる充填性の不良が生じることを抑制できるため好ましく、2000μm以下であれば封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハが厚くなり過ぎることが抑制できるため好ましい。
【0064】
未硬化樹脂層を形成する未硬化の熱硬化性樹脂としては、特に制限はされないが、通常、半導体素子の封止に使用される液状エポキシ樹脂や固形のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はエポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂からなる未硬化樹脂層であることが好ましい。特に、50℃未満で固形化し、かつ50℃以上150℃以下で溶融するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシシリコーン混成樹脂のいずれかを含むものであることが好ましい。このような熱硬化樹脂であれば、上述の支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離をより確実に抑制できる。
【0065】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂など室温で液状や固体の公知のエポキシ樹脂が挙げられる。また、必要に応じて、上記以外のエポキシ樹脂を目的に応じて一定量併用することができる。
【0066】
エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、イオン交換水50mlに試料10gを添加し、密封して120℃のオーブン中に20時間静置した後、加熱抽出する方法を挙げることができ、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが好ましい。
【0067】
エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層にはエポキシ樹脂の硬化剤を加えることができる。このような硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、各種アミン誘導体、酸無水物や酸無水物基を一部開環させカルボン酸を生成させたものなどを使用することができる。なかでも本発明の封止材積層複合体を用いて製造される半導体装置の信頼性を確保するためにフェノールノボラック樹脂を用いるのが好ましい。特に、エポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂の混合比をエポキシ基とフェノール性水酸基の比率が1:0.8〜1.3となるように混合することが好ましい。
【0068】
さらに、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進するため、反応促進剤(硬化触媒)としてイミダゾール誘導体、フォスフィン誘導体、アミン誘導体、有機アルミニウム化合物などの金属化合物等を使用しても良い。
【0069】
エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤等の添加剤を目的に応じて添加配合することができる。
【0070】
[シリコーン樹脂]
シリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーン樹脂等が使用可能である。特に、シリコーン樹脂からなる未硬化樹脂層は付加硬化型シリコーン樹脂組成物を含むことが望ましい。付加硬化型シリコーン樹脂組成物としては、(i)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(例えば、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン)、(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(iii)白金系触媒を含むものが特に好ましい。以下、これら(i)〜(iii)成分について説明する。
【0071】
(i)成分:非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物
(i)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物としては、
R
11R
12R
13SiO−(R
14R
15SiO)
a−(R
16R
17SiO)
b−SiR
11R
12R
13 (4)
(式中、R
11は非共役二重結合含有一価炭化水素基を示し、R
12〜R
17はそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基を示し、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数である。)
で示される、分子鎖両末端が脂肪族不飽和基含有トリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンなどの、オルガノポリシロキサンが例示される。
【0072】
上記一般式(4)中、R
11は非共役二重結合含有一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有する非共役二重結合含有一価炭化水素基である。
【0073】
上記一般式(4)中、R
12〜R
17はそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、このうちR
14〜R
17は、より好ましくは脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基であり、特に好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を持たないアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。さらに、このうちR
16、R
17は芳香族一価炭化水素基であることが好ましく、フェニル基やトリル基等の炭素数6〜12のアリール基等であることが特に好ましい。
【0074】
上記一般式(4)中、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数であり、aは10≦a≦500であることが好ましく、bは0≦b≦150であることが好ましく、またa+bは10≦a+b≦500を満たすことが好ましい。
【0075】
上記一般式(4)で示されるオルガノポリシロキサンは、例えば、環状ジフェニルポリシロキサン、環状メチルフェニルポリシロキサン等の環状ジオルガノポリシロキサンと、末端基を構成するジフェニルテトラビニルジシロキサン、ジビニルテトラフェニルジシロキサン等のジシロキサンとのアルカリ平衡化反応によって得ることができるが、この場合、アルカリ触媒(特にKOH等の強アルカリ)による平衡化反応においては、少量の触媒で不可逆反応で重合が進行するため、定量的に開環重合のみが進行し、末端封鎖率も高いため、通常、シラノール基及びクロル分は含有されない。
【0076】
上記一般式(4)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものが例示される。
【化11】
(上記式において、k、mは、0≦k≦500、0≦m≦250、かつ0≦k+m≦500を満足する整数であり、好ましくは5≦k+m≦250、かつ0≦m/(k+m)≦0.5を満足する整数である。)
【0077】
(i)成分としては、上記一般式(4)で示される直鎖構造を有するオルガノポリシロキサンの他、必要に応じて、3官能性シロキサン単位、4官能性シロキサン単位等を含む三次元網目構造を有するオルガノポリシロキサンを併用することもできる。このような非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
(i)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物中の非共役二重結合を有する基(Si原子に結合する二重結合を有する一価炭化水素基)の量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)のうち0.1〜20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10モル%、特に好ましくは0.2〜5モル%である。非共役二重結合を有する基の量が0.1モル%以上であれば硬化させたときに良好な硬化物を得ることができ、20モル%以下であれば硬化させたときの機械的特性が良いため好ましい。
【0079】
また、(i)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は芳香族一価炭化水素基(Si原子に結合する芳香族一価炭化水素基)を有することが好ましく、芳香族一価炭化水素基の含有量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)の0〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜90モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。芳香族一価炭化水素基は樹脂中に適量含まれた方が、硬化させたときの機械的特性が良く製造もしやすいという利点がある。
【0080】
(ii)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(ii)成分としては、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、架橋剤として作用し、(ii)成分中のSiH基と(i)成分のビニル基、アルケニル基等の非共役二重結合含有基とが付加反応することにより、硬化物を形成することができる。
【0081】
また、(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、芳香族一価炭化水素基を有することが好ましい。このように、芳香族一価炭化水素基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、上記の(i)成分との相溶性を高めることができる。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよく、例えば、芳香族炭化水素基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(ii)成分の一部又は全部として含ませることができる。
【0082】
(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、これに限られるものではないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシラン重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0083】
また、下記構造で示される単位を使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化12】
【0084】
(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合体の場合は重合度)は2以上が好ましく、より好ましくは3〜500、特に好ましくは4〜300程度のものを使用することができる。
【0085】
(ii)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(i)成分のアルケニル基等の非共役二重結合を有する基1個あたり(ii)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.7〜3.0個となる量であることが好ましい。
【0086】
(iii)成分:白金系触媒
(iii)成分の白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、キレート構造を有する白金錯体等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0087】
(iii)成分の白金系触媒の配合量は、硬化有効量であり所謂触媒量でよく、通常、(i)成分及び(ii)成分の総質量100質量部あたり、白金族金属の質量換算で0.1〜500ppmであることが好ましく、特に0.5〜100ppmの範囲であることが好ましい。
【0088】
シリコーン樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、エポキシ樹脂と同様であり、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが好ましい。
【0089】
[エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂]
エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂は特に限定されないが、例えば前述のエポキシ樹脂と前述のシリコーン樹脂を用いたものを挙げることができる。
【0090】
混成樹脂からなる未硬化樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂と同様であり、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが好ましい。
【0091】
[無機充填剤]
上記の熱硬化性樹脂には無機充填剤を配合することができる。配合される無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)、沈降シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミノシリケート、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒子径や形状は特に限定されない。
【0092】
特にエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂に添加する無機充填剤としては、エポキシ樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0093】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン等を用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0094】
シリコーン樹脂組成物からなる熱硬化性樹脂に添加する場合も、前記無機充填材の表面を上記のようなカップリング剤で処理したものを配合しても良い。
【0095】
無機充填剤の配合量は、熱硬化性樹脂の総質量100質量部に対し、100〜1,300質量部が好ましく、特に200〜1,000質量部が好ましい。100質量部以上であれば十分な強度を得ることができ、1,300質量部以下であれば増粘による流動性の低下が抑制され、流動性低下による充填性の不良が抑制され、結果としてウエハに形成された半導体素子及び基板上に配列・搭載された半導体素子を良好に封止することができる。なお、この無機充填剤は、熱硬化性樹脂を構成する組成物全体の50〜95質量%、特に60〜90質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0096】
<封止材積層複合体>
本発明の封止材積層複合体の断面図の一例を
図1に示す。本発明の封止材積層複合体10は、硬化又は半硬化の支持基材用樹脂からなる支持基材1と、支持基材1の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層2とを有するものである。
【0097】
[封止材積層複合体の作製方法]
支持基材を使用して本発明の封止材積層複合体を作製する場合は、支持基材の片面上に、減圧又は真空下で、印刷やディスペンス等で熱硬化性の液状エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を塗布し、加熱することで、50℃以下で固形な未硬化樹脂層を形成し、封止材積層複合体を作製する。
【0098】
さらに支持基材の片面上に未硬化の熱硬化性樹脂をプレス成形、印刷するなど、従来のエポキシ熱硬化性樹脂やシリコーン熱硬化性樹脂等で用いられてきた各種の方法で未硬化樹脂層を形成することができる。形成後、通常では180℃程度の温度で4〜8時間ポストキュアさせることが好ましい。
【0099】
その他、支持基材の片面上に未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成する方法としては、室温で固体のエポキシ熱硬化性樹脂やシリコーン熱硬化性樹脂等を加熱しながら加圧する方法やエポキシ樹脂組成物にアセトン等の極性溶剤を適量添加することで液状化し印刷などで薄膜を形成し、溶剤を減圧下で加熱するなどの方法で除去することで均一に支持基材の片面上に未硬化樹脂層を形成することができる。
【0100】
いずれの方法でも支持基材の片面上に、ボイドや揮発成分のない、厚みが20μm以上2,000μm以下、特には30〜500μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂からなる未硬化樹脂層を形成することができる。
【0101】
以上のようにして作製した本発明の封止材積層複合体であれば、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制することができるため、大径や薄型のウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた封止材積層複合体となる。
【0102】
[半導体素子を搭載した基板及び半導体素子を形成したウエハ]
本発明の封止材積層複合体は半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための複合体である。半導体素子を搭載した基板としては、例えば
図2中の一個以上の半導体素子3を接着剤4で無機基板、金属基板あるいは有機基板等の基板5上に搭載したものが挙げられる。また、半導体素子を形成したウエハとしては、ウエハ上に半導体素子が形成されたものが挙げられる。なお、半導体素子を搭載した基板とは、基板5としてシリコンウエハ等の各種ウエハ、無機基板、金属基板、有機基板等を用いたものや、半導体素子を搭載し配列等した半導体素子アレイを含むものである。
【0103】
<封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ>
本発明の封止材積層複合体により封止された封止後半導体素子搭載基板の断面図の一例を
図2に示す。本発明の封止後半導体素子搭載基板11は、封止材積層複合体10の未硬化樹脂層2(
図1参照)により半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を被覆し、未硬化樹脂層2を加熱、硬化することで封止樹脂層2’とし、封止材積層複合体10により一括封止されたものである(
図2)。また、本発明の封止後半導体素子形成ウエハは、封止材積層複合体の未硬化樹脂層により半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、未硬化樹脂層を加熱、硬化することで封止樹脂層とし、封止材積層複合体により一括封止されたものである。
【0104】
このように、封止材積層複合体の未硬化樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、封止材積層複合体により一括封止された封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハであれば、封止後の支持基材を容易に除去可能であり、基板やウエハの反りが小さく、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0105】
<半導体装置>
本発明の半導体装置の一例を
図3に示す。本発明の半導体装置13は上述の封止後半導体素子搭載基板11(
図2参照)の支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化したものである。このように、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れるシアネートエステル樹脂等の支持基材用樹脂からなる支持基材を有する封止材積層複合体10により封止され、かつ基板やウエハの反り、基板からの半導体素子3の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板11(
図2参照)の支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化することで作製された半導体装置13は、薄型で高品質な半導体装置となる。
封止後半導体素子搭載基板11(
図2参照)の支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化した場合、半導体装置13は基板5上に接着剤4を介して半導体素子3が搭載され、その上から封止樹脂層2’により封止された半導体装置となる(
図3)。
また、封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化した場合、半導体装置はウエハに半導体素子が形成され、その上から封止樹脂層により封止された半導体装置となる。
【0106】
<半導体装置の製造方法>
本発明では、半導体装置の製造方法であって、
上記の封止材積層複合体の未硬化樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、
前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、あるいは前記半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板あるいは封止後半導体素子形成ウエハとする封止工程、
前記封止後半導体素子搭載基板あるいは前記封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を研削して除去する研削工程、
研削した封止後半導体素子搭載基板あるいは研削した封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程、
を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0107】
以下、
図4を用いて本発明の半導体装置の製造方法について説明する。なお、ここでは半導体素子を搭載した基板を例に挙げて説明するが、半導体素子を形成したウエハでも同様にして半導体装置を製造することができる。
【0108】
[被覆工程]
本発明の半導体装置の製造方法における被覆工程は、支持基材1と未硬化樹脂層2を有する封止材積層複合体10の未硬化樹脂層2により、接着剤4を介して半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を被覆する工程である(
図4(A))。
【0109】
[封止工程]
本発明の半導体装置の製造方法における封止工程は、上記の被覆工程の後、未硬化樹脂層2を加熱、硬化して封止樹脂層2’とすることで、半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板11とする工程である(
図4(B))。
【0110】
[研削工程]
本発明の半導体装置の製造方法における研削工程は、上記の封止工程の後、封止後半導体素子搭載基板11の支持基材1を研削して除去し、研削した封止後半導体素子搭載基板12とする工程である(
図4(C))。
【0111】
[個片化工程]
本発明の半導体装置の製造方法における個片化工程は、上記の研削工程の後、研削した封止後半導体素子搭載基板12をダイシングし、個片化することで、半導体装置13を製造する工程である(
図4(D)、(E))。
【0112】
以下、より具体的に説明する。上述の被覆工程、封止工程においては、ソルダーレジストフィルムや各種絶縁フィルム等のラミネーションに使用されている真空ラミネータ装置等を使用することで、ボイドも反りもない被覆、封止を行うことができる。ラミネーションの方式としてはロールラミネーションやダイアフラム式真空ラミネーション、エアー加圧式ラミネーション等いずれの方式も使用することができる。なかでも、真空ラミネーションとエアー加圧式の併用が好ましい。
【0113】
ここでは例として、ニチゴーモートン社製の真空ラミネーション装置を用いて、厚み50μmのシアネートエステル樹脂からなる支持基材と片面に厚み50μmの未硬化の熱硬化性エポキシ樹脂からなる未硬化樹脂層を有する封止材積層複合体で、厚み70μm、直径300mm(12インチ)のシリコンウエハを封止する場合について説明する。
【0114】
上下にヒーターが内蔵され150℃に設定されたプレートのうち、上側プレートにはダイアフラムラバーが減圧された状態でヒーターと密着している。下側プレート上に直径300mm(12インチ)のシリコンウエハをセットし、その上に片面に封止材積層複合体の未硬化樹脂層面をシリコンウエハの半導体形成面に合わせてセットする。その後、下側プレートが上昇し、下側プレート上にセットされたシリコンウエハを囲むように設置されたOリングにより上下のプレートが密着して真空チャンバーが形成され、この真空チャンバー内が減圧される。真空チャンバー内が十分に減圧されたら、上側プレートのダイアフラムラバーとヒーターの間から真空ポンプにつながる配管の弁を閉じ、圧縮空気を送り込む。それにより、上側のダイアフラムラバーが膨張しシリコンウエハと封止材積層複合体を上側のダイアフラムラバーと下側のプレートで挟み、真空ラミネーションを行うと同時に未硬化樹脂層の熱硬化性エポキシ樹脂の硬化が進行し、封止が完了する。硬化時間としては3〜20分程度あれば十分である。真空ラミネーションが完了したら真空チャンバー内を常圧に戻し、下側プレートを下降させ、封止したシリコンウエハを取り出す。上記工程によりボイドや反りのないウエハの封止を行うことができる。取り出したシリコンウエハは通常、150〜180℃の温度で1〜4時間ポストキュアすることで電気特性や機械特性を安定化させることができる。
【0115】
上記の真空ラミネーション装置を用いた被覆、封止工程は例示した熱硬化性エポキシ樹脂に限らず、シリコーン樹脂やエポキシとシリコーンの混成樹脂の場合にも用いることができる。
【0116】
また、上述の研削工程では、例えば、グラインダー等で封止後半導体素子搭載基板や封止後半導体素子形成ウエハの支持基材の研削を行うことができる。
【0117】
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法であれば、被覆工程においては封止材積層複合体の未硬化樹脂層により簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆することができる。
また、封止材積層複合体を使用するので、支持基材で未硬化樹脂層の硬化封止時の収縮応力を抑制できるため、封止工程においては半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を一括封止することができ、薄型の大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハを得ることができる。
また、研削工程においては、支持基材に中空フィラーを含むため、封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を容易に研削して除去することができる。
さらに、個片化工程においては耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる封止材積層複合体により封止され、かつ反りが抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハの支持基材を除去したものをダイシングして個片化することで半導体装置を製造するため、薄型で高品質な半導体装置を効率よく製造することができる半導体装置の製造方法となる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
(実施例1)
[支持基材の作製]
シアネートエステル化合物 プリマセット PT−60 (ロンザ製 シアネート基当量119)90質量部、フェノール化合物 TD−2131 (DIC製 フェノール性水酸基当量110)10質量部、溶融球状シリカ(微粉末)900質量部、カルナバワックス1.5質量部、膨張後の平均粒子径が80μmである膨張性樹脂中空フィラー(松本油脂製)2.5質量部、比重0.6、平均粒子径60μmのセラミック製中空フィラー(秩父セメント製)30質量部を配合し、高速混合装置で均一に混合した後、加熱2本ロールで均一に混練することでシアネートエステル樹脂組成物を製造した。
得られたシアネートエステル樹脂組成物を粉砕し、顆粒粉末としてコンプレッション成形(175℃)によって、ガラス転移温度260℃、線膨張係数4ppm/℃、厚さ200μmの均一なシアネートエステル樹脂基材(I−a)を得た。
【0120】
[熱硬化性樹脂組成物の作製]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020 日本化薬製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(H−4 群栄化学製)30質量部、球状シリカ(龍森製 平均粒子径7μm)400質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン 北興化学工業製)0.2質量部、シランカップリング剤(KBM403 信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練してシート化し冷却した。得られたシートを粉砕し顆粒状の粉末としてエポキシ樹脂組成物(I−b)を得た。
【0121】
[封止材積層複合体の作製]
エポキシ樹脂組成物(I−b)の顆粒粉末をシアネートエステル樹脂基材(I−a)上に均一に分散させた。上下の金型温度を80℃にし、上金型にはフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)をセットして金型内を真空レベルまで減圧し、未硬化樹脂層の厚みが80μmになるように3分間圧縮成形して封止材積層複合体(I−c)を作製した。成形後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。
【0122】
[半導体素子を搭載したウエハの被覆及び封止]
次に、ニチゴーモートン社製のプレート温度を130℃に設定した真空ラミネーション装置を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに300mm(12インチ)で厚みが100μmのシリコンウエハ上に高温で接着力が低下する接着剤を介して、個片化した半導体素子である400個のシリコンチップ(形状:5mm×7mm 厚み100μm)を整列し搭載したシリコンウエハをセットし、その上に剥離フィルムを除去した封止材積層複合体(I−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(I−b)面をシリコンウエハ面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、封止材積層複合体(I−c)により封止されたシリコンウエハをさらに150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載ウエハ(I−d)を得た。
【0123】
[支持基材の研削]
封止後半導体素子搭載ウエハ(I−d)のシアネートエステル樹脂基材(I−a)をグラインダーで研削し除去した。研削条件は2条件で行い、最初に320メッシュ、グラインド量150μm、グラインド速度1.0μm/秒、スピンドル速度4,800r.p.m.、ステ−ジ速度300r.p.m.にて研削し、次に2,000メッシュ、グラインド量50μm、グラインド速度0.4μm/秒、スピンドル速度3,500r.p.m.、ステ−ジ速度300r.p.m.にて研削した。
【0124】
(実施例2)
[熱硬化性樹脂組成物の作製]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020 日本化薬製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(H−4 群栄化学製)30質量部、球状シリカ(龍森製 平均粒子径7μm)300質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン 北興化学工業製)0.2質量部、シランカップリング剤(KBM403 信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練してシート化し冷却した。得られたシートを粉砕し顆粒状の粉末としてエポキシ樹脂組成物(II−b)を得た。
【0125】
[封止材積層複合体の作製]
支持基材としてシアネートエステル樹脂基材(I−a)、熱硬化性樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物(II−b)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、封止材積層複合体(II−c)を作製した。成形後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。
【0126】
[半導体素子を搭載したウエハの被覆及び封止]
封止材積層複合体(II−c)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、半導体素子を搭載したシリコンウエハの被覆及び封止を行った。さらに、硬化封止後のポストキュアも実施例1と同様に行い、封止後半導体素子搭載ウエハ(II−d)を得た。
【0127】
[支持基材の研削]
封止後半導体素子搭載ウエハ(II−d)のシアネートエステル樹脂基材(I−a)を実施例1と同様の研削条件で研削し除去した。
【0128】
(実施例3)
[支持基材の作製]
シアネートエステル化合物 プリマセット PT−60 (ロンザ製 シアネート基当量119)78質量部、フェノール化合物 MEH−7800SS (明和化成製 フェノール性水酸基当量175)22質量部、溶融球状シリカ(微粉末)920質量部、カルナバワックス1.5質量部、膨張後の平均粒子径が100μmであり、表面が炭酸カルシウムでコートされた既膨張の熱可塑性樹脂製中空フィラー(松本油脂製)10質量部、比重0.18、平均粒子径100μmのアルミノシリケート製中空フィラー(日本フィライト製)40質量部を配合し、高速混合装置で均一に混合した後、加熱2本ロールで均一に混練することでシアネートエステル樹脂組成物を製造した。
得られたシアネートエステル樹脂組成物を粉砕し、顆粒粉末としてコンプレッション成形(175℃)によって、ガラス転移温度220℃、線膨張係数4ppm/℃、厚さ200μmの均一なシアネートエステル樹脂基材(III−a)を得た。
【0129】
[封止材積層複合体の作製]
支持基材としてシアネートエステル樹脂基材(III−a)、熱硬化性樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物(I−b)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、封止材積層複合体(III−c)を作製した。成形後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。
【0130】
[半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止]
次に、ニチゴーモートン社製のプレート温度を170℃に設定した真空ラミネーション装置を用いて被覆、封止した。まず、下側プレートに300mm(12インチ)で厚みが500μmの金属基板上に高温で接着力が低下する接着剤を介して、個片化した半導体素子である400個のシリコンチップ(形状:5mm×7mm 厚み125μm)を整列し搭載した基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した封止材積層複合体(III−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(I−b)面を基板面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、封止材積層複合体(III−c)により封止された基板をさらに170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(III−d)を得た。
【0131】
[支持基材の研削]
封止後半導体素子搭載基板(III−d)のシアネートエステル樹脂基材(III−a)を実施例1と同様の研削条件で研削し除去した。
【0132】
(実施例4)
[熱硬化性樹脂組成物の作製]
多官能型エポキシ樹脂(EPPN−502H 日本化薬製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(DL−92 明和化成製)30質量部、球状シリカ(アドマ製 平均粒子径1μm)400質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン 北興化学工業製)0.2質量部、シランカップリング剤(KBM403 信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練してシート化し冷却した。得られたシートを粉砕し顆粒状の粉末としてエポキシ樹脂組成物(IV−b)を得た。
【0133】
[封止材積層複合体の作製]
支持基材としてシアネートエステル樹脂基材(III−a)、熱硬化性樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物(IV−b)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、封止材積層複合体(IV−c)を作製した。成形後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。
【0134】
[半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止]
次に、アピックヤマダ社製のプレート温度を175℃に設定した真空コンプレション成形装置を用いて被覆、封止した。まず、上側プレートに300mm(12インチ)で厚みが100μmの金属基板上に高温で接着力が低下する接着剤を介して、個片化した半導体素子である400個のシリコンチップ(形状:5mm×7mm 厚み100μm)を整列し搭載した基板をセットし、その上に剥離フィルムを除去した封止材積層複合体(IV−c)の未硬化樹脂層であるエポキシ樹脂組成物(IV−b)面を基板面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、封止材積層複合体(IV−c)により封止された基板をさらに170℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(IV−d)を得た。
【0135】
[支持基材の研削]
封止後半導体素子搭載基板(IV−d)のシアネートエステル樹脂基材(III−a)を実施例1と同様の研削条件で研削し除去した。
【0136】
(比較例1)
[支持基材の作製]
シアネートエステル化合物 プリマセット PT−60 (ロンザ製 シアネート基当量119)90質量部、フェノール化合物 TD−2131 (DIC製 フェノール性水酸基当量110)10質量部、溶融球状シリカ(微粉末)920質量部、カルナバワックス1.5質量部を配合し、高速混合装置で均一に混合した後、加熱2本ロールで均一に混練することでシアネートエステル樹脂組成物を製造した。
得られたシアネートエステル樹脂組成物を粉砕し、顆粒粉末としてコンプレッション成形(175℃)によって、ガラス転移温度260℃、線膨張係数3ppm/℃、厚さ200μmの均一なシアネートエステル樹脂基材(V−a)を得た。
【0137】
[封止材積層複合体の作製]
支持基材としてシアネートエステル樹脂基材(V−a)、熱硬化性樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物(I−b)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、封止材積層複合体(V−c)を作製した。成形後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。
【0138】
[半導体素子を搭載したウエハの被覆及び封止]
封止材積層複合体(V−c)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、半導体素子を搭載したシリコンウエハの被覆及び封止を行った。さらに、硬化封止後のポストキュアも実施例1と同様に行い、封止後半導体素子搭載ウエハ(V−d)を得た。
【0139】
[支持基材の研削]
封止後半導体素子搭載ウエハ(V−d)のシアネートエステル樹脂基材(V−a)を実施例1と同様の研削条件で研削し除去した。
【0140】
実施例1〜4及び比較例1において得られた封止後半導体素子搭載基板(III−d)、(IV−d)、(VI−d)及び封止後半導体素子搭載ウエハ(I−d)、(II−d)、(V−d)の外観、反り、封止樹脂と基板又はウエハの接着状態、基板又はウエハからの半導体素子の剥離の有無を調べた。ここで、外観についてはボイド、未充填の有無を調べ、これらがなければ良好とした。また、接着状態については成形時に剥離がなければ良好とした。その結果を下記の表1に示す。
【0141】
また、実施例1〜4及び比較例1において得られた封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子搭載ウエハの支持基材を研削する際に使用した320メッシュ及び2,000メッシュの研削後の目詰まりを調べた。その結果を下記の表1に示す。
【0142】
また、実施例1〜4及び比較例1において得られた封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子搭載ウエハの支持基材を研削して除去した後、ダイシングして個片化したものを試験片とし、以下の耐熱性試験と耐湿性試験を行った。その結果を下記の表1に示す。
耐熱性試験では、この試験片に対してヒートサイクル試験(−25℃で10分保持、125℃で10分保持を1,000サイクル繰り返す)を行い、試験後にも導通がとれるかを評価した。
また、耐湿性試験では、この試験片に対して温度85℃、相対湿度85%の条件下で回路の両極に10Vの直流電圧を印加し、マイグレーションテスター(IMV社製、MIG−86)を用いて短絡が生じるかを評価した。
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示されるように、実施例1〜4では、ボイド及び未充填がなく外観が良好であり、基板又はウエハの反りも小さく、接着状態も良好であった。また、320メッシュ、2,000メッシュのどちらでも研削後の目詰まりがなかった。また、耐熱性試験、耐湿性試験でも剥離が生じなかった。
【0145】
一方、支持基材用樹脂中に中空フィラーを含有しない比較例1ではボイド及び未充填がなく外観が良好であり、接着状態も良好なものの、2,000メッシュで研削後の目詰まりがあった。
【0146】
以上のことから、本発明の封止材積層複合体であれば、半導体素子を搭載した基板又はウエハの半導体素子搭載面をウエハレベルで一括封止でき、大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、かつ封止後には支持基材を容易に除去可能であり、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた封止材積層複合体となることが明らかとなった。
【0147】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。