【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、それ単独の定量では認知機能との関連性が存在しない尿MI量の定量値と血清及び/又は血漿PlsEtnの定量値を組み合わせることで、認知症検査の精度が向上することを見出し、PlsEtnに特異的に作用するリゾプラスマローゲナーゼ(Lysoplasmalogenase、lyPls aseと略す場合がある)とホスホリパーゼ(以下PLと略す場合がある。)を新規に見出し、被験者の血清または血漿中のPlsEtnを定量するためのlyPls aseとPLを含有する認知症検査試薬キットを創出して本発明を完成させた。
【0023】
すなわち、本出願は前記の課題を解決する発明として以下を提供する。
【0024】
[1]
被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類するための認知症検査方法であって、
被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)を定量する工程と、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程とを含み、
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値と、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値のそれぞれに対して、前記被験者のミオイノシトール(MI)の定量値とエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値を比較する工程を含む認知症検査方法。
【0025】
[1−1]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程が、酵素を利用する反応により、最終的に過酸化水素が生成され、該エタノールアミン型プラスマローゲンの存在量に対応して発生する過酸化水素の量を検出して、血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程を含む[1]の方法。
【0026】
[1−2]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、以下の(1)〜(3−4)の工程を含む[1]に記載の方法。
(1)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素を用いて、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する工程:
(2)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素を用いて、前記(1)にて生成されたエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解する工程:及び
(3−1)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにせしめる酵素にて、工程(2)で得られたグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにする工程:
(3−2)エタノールアミンを酸化する酵素により、エタノールアミンから過酸化水素を発生せしめる工程:
(3−3)過酸化水素を過酸化水素定量手段により定量する工程:及び
(3−4)前記被験者の血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程:
または前記(2)の加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0027】
[1−3]
前記工程(2)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[1−2]に記載の方法。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0028】
[1−4]
前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素、が下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[1−2]に記載の方法。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0029】
[1−5]
前記(2)の加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする[1−1]〜[1−4]に記載の方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0030】
[1−6]
前記工程(4)のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素としてホスフォリパーゼ(PL)を使用し、該PLは、前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素としての作用を兼ねさせて新たな該PLを添加することなく前記工程(1)の工程を進行せしめ、前記工程(5)を実施と同時、または前記工程(5)の実施後に、前記工程(1)が完了し、以後前記工程(2)〜(3−4)を実施する[1−5]に記載の方法。
【0031】
[1−7]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、以下の(1)〜(3−3)´の工程を含む[1−1]に記載の方法。
(1)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素を用いて、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する工程:
(2)´エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をエタノールアミンとプラズメニルホスファチジン酸に加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解でき、かつリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる加水分解酵素を用いて、前記(1)にて生成されたエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をエタノールアミンとプラズメニルホスファチジン酸に加水分解する工程:及び
(3−1)´エタノールアミンを酸化する酵素により、工程(2)´で得られたエタノールアミンから過酸化水素を発生せしめる工程:
(3−2)´過酸化水素を過酸化水素定量手段により定量する工程:及び
(3−3)´前記被験者の血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程。
【0032】
[1−8−1]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−3)´の工程に先立つか、少なくとも前記(2)´工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする[1−7]に記載の方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0033】
[1−8−2]
前記工程(4)のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素としてホスフォリパーゼ(PL)を使用し、該PLは、前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素としての作用を兼ねさせて新たな該PLを添加することなく前記工程(1)の工程を進行せしめ、前記工程(5)を実施と同時、または前記工程(5)の実施後に、前記工程(1)が完了し、以後前記工程(2)〜(3−3)´を実施する[1−8−1]に記載の方法。
【0034】
[1−9]
自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値が、21.6〜63.3mg/gCrの範囲から選択される値であり、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値が、50〜64μMの範囲から選択される値であって、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値が、前記MI閾値を越え、かつ被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値が、前記PlsEtn閾値を下回った場合に、認知症患者またはその前段階にある者と区分する[1]に記載の方法。
【0035】
[1−10]
前記MI量の閾値が25mg/gCrである[1−9]に記載の方法。
【0036】
[1−11]
前記MI量の閾値が33.2mg/gCrである[1−9]に記載の方法。
【0037】
[1−12]
前記MI閾値が36.6mg/gCrである[1−9]に記載の方法。
【0038】
[1−13]
前記MI量の閾値が44.8mg/gCrである[1−9]に記載の方法。
【0039】
[1−14]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、58μMである[1−9]に記載の方法。
【0040】
[1−15]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、61μMである[1−9]に記載の方法。
【0041】
[1−16]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、56μMである[1−9]に記載の方法。
【0042】
[1−17]
前記被験者のMI量が21.6〜55.1mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が50〜64μMの範囲から設定される閾値以下である[1−9]に記載の方法。
【0043】
[1−18]
前記被験者のMI量が21.6〜55.1mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が52〜61μMの範囲から設定される閾値以下である[1−9]に記載の方法。
【0044】
[1−19]
前記被験者のMI量が29.8〜63.3mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が50〜64μMの範囲から設定される閾値以下である[1―9]に記載の方法。
【0045】
[1−20]
前記被験者のMI量が29.8〜63.3mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が52〜61μMの範囲から設定される閾値以下である[1―9]に記載の方法。
【0046】
[1−21]
前記MI量の閾値が36.6mg/gCrであり、PlsEtn量の閾値が58μMである[1−9]記載の方法。
【0047】
[1−22]
前記MI量の閾値が36.6mg/gCrであり、PlsEtn量の閾値が56μM又は61μMである[1−9]に記載の方法。
【0048】
[1−23]
前記MIを定量する尿が、特に被験者の空腹時随意尿である[1−9]に記載の方法。
【0049】
[2]
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値と、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値とを比較する工程と組み合わせることにより、被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類する認知症検査に用いるものであって、
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程を含み、該工程中に、健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の、予め求められた閾値に対して、被験者のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値を比較する工程を含む、エタノールアミン型プラスマローゲンの定量方法。
【0050】
[2−1]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程が、酵素を利用する反応により、最終的に過酸化水素が生成され、該エタノールアミン型プラスマローゲンの存在量に対応して発生する過酸化水素の量を検出して、血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程を含む[2]の方法。
【0051】
[2−2]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、以下の(1)〜(3−4)の工程を含む[2]に記載の方法。
(1)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素を用いて、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する工程:
(2)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素を用いて、前記(1)にて生成されたエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解する工程:及び
(3−1)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにせしめる酵素にて、工程(2)で得られたグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにする工程:
(3−2)エタノールアミンを酸化する酵素により、エタノールアミンから過酸化水素を発生せしめる工程:
(3−3)過酸化水素を過酸化水素定量手段により定量する工程:及び
(3−4)前記被験者の血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程:
または前記(2)の加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0052】
[2−3]
前記工程(2)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[2−2]に記載の方法。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0053】
[2−4]
前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素が、下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[2−2]に記載の方法。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0054】
[2−5]
前記(2)の加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする[2−2]〜[2−4]に記載の方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0055】
[2−6]
前記工程(4)のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素としてホスフォリパーゼ(PL)を使用し、該PLは、前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素としての作用を兼ねさせて新たな該PLを添加することなく前記工程(1)の工程を進行せしめ、前記工程(5)を実施と同時、または前記工程(5)の実施後に、前記工程(1)が完了し、以後前記工程(2)〜(3−4)を実施する[2−5]に記載の方法。
【0056】
[2−7]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、以下の(1)〜(3−3)´の工程を含む[2−1]に記載の方法。
(1)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素を用いて、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する工程:
(2)´エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をエタノールアミンとプラズメニルホスファチジン酸に加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解でき、かつリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる加水分解酵素を用いて、前記(1)にて生成されたエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をエタノールアミンとプラズメニルホスファチジン酸に加水分解する工程:及び
(3−1)´エタノールアミンを酸化する酵素により、工程(2)´で得られたエタノールアミンから過酸化水素を発生せしめる工程:
(3−2)´過酸化水素を過酸化水素定量手段により定量する工程:及び
(3−3)´前記被験者の血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程。
【0057】
[2−8]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−3)´の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする[2−7]に記載の方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0058】
[2−9]
前記工程(4)のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素としてホスフォリパーゼ(PL)を使用し、該PLは、前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素としての作用を兼ねさせて新たな該PLを添加することなく前記工程(1)の工程を進行せしめ、前記工程(5)を実施と同時、または前記工程(5)の実施後に、前記工程(1)が完了し、以後前記工程(2)〜(3−3)´を実施する[2−8]に記載の方法。
【0059】
[3]
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値と、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値とを比較する工程と組み合わせることにより、被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類する認知症検査に用いるものであって、
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程を含み、該工程中に、健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の、予め求められた閾値に対して、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値を比較する工程を含む、ミオイノシトール(MI)の定量方法。
【0060】
[3−1]
自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値が、21.6〜63.3mg/gCrの範囲から選択される値であり、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値が、50〜64μMの範囲から選択される値であって、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値が、前記MI閾値を越え、かつ被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値が、前記PlsEtn閾値を下回った場合に、認知症患者またはその前段階にある者と区分する[3]に記載の方法。
【0061】
[3−2]
前記MI量の閾値が25mg/gCrである[3−1]に記載の方法。
【0062】
[3−3]
前記MI量の閾値が33.2mg/gCrである[3−1] に記載の方法。
【0063】
[3−4]
前記MI閾値が36.6mg/gCrである[3−1] に記載の方法。
【0064】
[3−5]
前記MI量の閾値が44.8mg/gCrである[3−1] に記載の方法。
【0065】
[3−6]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、58μMである[3−1] に記載の方法。
【0066】
[3−7]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、61μMである[3−1] に記載の方法。
【0067】
[3−8]
前記エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)閾値が、56μMである[3−1] に記載の方法。
【0068】
[3−9]
前記被験者のMI量が21.6〜55.1mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が50〜64μMの範囲から設定される閾値以下である[3−1]に記載の方法。
【0069】
[3−10]
前記被験者のMI量が21.6〜55.1mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が52〜61μMの範囲から設定される閾値以下である[3−1]に記載の方法。
【0070】
[3−11]
前記被験者のMI量が29.8〜63.3mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が50〜64μMの範囲から設定される閾値以下である[3−1]に記載の方法。
【0071】
[3−12]
前記被験者のMI量が29.8〜63.3mg/gCrの範囲から設定される閾値以上であり、PlsEtn量が52〜61μMの範囲から設定される閾値以下である[3−1]に記載の方法。
【0072】
[3−13]
前記MI量の閾値が36.6mg/gCrであり、PlsEtn量の閾値が58μMである[3−1] 記載の方法。
【0073】
[3−14]
前記MI量の閾値が36.6mg/gCrであり、PlsEtn量の閾値が56μM又は61μMである[3−1] に記載の方法。
【0074】
[3−15]
前記MIを定量する尿が、特に被験者の空腹時随意尿である[3−1] に記載の方法。
【0075】
[4]
被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類するための認知症検査方法に用いられる手段であって、
被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)を定量する手段と、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する手段とを含み、
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値と、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値のそれぞれに対して、前記被験者のミオイノシトール(MI)の定量値とエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値を比較して用いる認知症検査手段。
【0076】
[4−1]
前記手段が試薬キットである[4]に記載の認知症検査手段。
【0077】
[4−2]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する試薬キットが、以下の(1a)〜(3a)を含む[4−1]に記載の試薬キット。
(1a)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物。
(2a)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物。
(3a)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロリン酸に変換する酵素、エタノールアミンをグリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素に変換する酵素とその酵素反応を進めるにことのできる添加物、さらに必要により過酸化水素を定量するための過酸化水素定量手段。
または前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む[4−1]に記載の試薬キット。
【0078】
[4−2−1]
前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む[4−2]に記載の試薬キット。
【0079】
[4−3]
前記(2a)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[4−2]または[4−2−1]に記載の試薬キット。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0080】
[4−4]
前記(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素、が下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[4−2]または[4−2−1]に記載の試薬キット。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0081】
[5]
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の予め求められた閾値と、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値とを比較する工程と組み合わせることにより、被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類する認知症検査に用いるものであって、
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程を含み、該工程中に、健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の、予め求められた閾値に対して、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値を比較して用いる、エタノールアミン型プラスマローゲンの定量手段。
【0082】
[5−1]
前記手段が試薬キットである[5]に記載の定量手段。
【0083】
[5−2]
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する試薬キットが、以下の(1a)〜(3a)を含む[5−1]に記載の試薬キット。
(1a)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物
(2a)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物
(3a)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロリン酸に変換し、エタノールアミンをグリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素に変換する酵素とその酵素反応を進めるにことのできる添加物、さらに必要により過酸化水素を定量するための過酸化水素定量手段。
または前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む[5−1]記載の試薬キット。
【0084】
[5−2−1]
前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む[5−2]に記載の試薬キット。
【0085】
[5−3]
前記(2a)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[5−2]または[5−2−1]に記載の試薬キット。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0086】
[5−4]
前記(1a)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素、が下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[5−2]または[5−2−1]に記載の試薬キット。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0087】
[6]
健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の予め求められた閾値と、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)の定量値とを比較する工程と組み合わせることにより、被験者を認知症患者またはその前段階にある者か否かを分類する認知症検査に用いるものであって、
同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する工程を含み、該工程中に、健常者と、認知症患者またはその前段階にある者とを区別することができる、自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の、予め求められた閾値に対して、被験者の自然排泄尿中のミオイノシトール(MI)の定量値を比較して用いる、ミオイノシトール(MI)の定量手段。
【0088】
[6−1]
前記手段が試薬キットである[6]に記載の定量手段。
【0089】
なお、本発明の実施の形態における認知症とは、知能、記憶、見当識含む認知の障害を指し、加齢に伴う現象は含まず、病的に能力が低下する障害を指す。「認知症患者」とは、記憶、判断力などの障害により社会生活が困難な者(特に高齢者)をいう。具体的には、認知機能検査によって認知障害を有するレベルと判定される者(例えば、CDRスコアが1.0以上)である。また「認知症の前段階にある者」とは、例えば日常生活において記憶、判断力に衰えが観察される者などであり、WAIS−R、HDS−R、MMS、MMSE、CDR、MoCA−J等の認知機能検査方法で検出できる最も軽度な段階を含み、例えばCDRスコアが0.5以上、1.0未満のような者が好ましい。認知症の原因となる疾患は、例えば脳血管障害、アルツハイマー病、正常圧水頭症、代謝障害、栄養障害、甲状腺機能低下、鬱病などがあるが、一例としてアルツハイマー病が挙げられる。
【0090】
「手段」とは組成物、試薬、酵素あるいはそれらの組み合わせの総称を言う。組成物は組成物中の各成分を単一の組成物としてもよいが、2以上の組成物に分離する場合、このような2以上の組成物を合わせてキットという。
「定量」とは「測定」、「検出」等を含む概念をいう。
又本発明に関連する発明として以下が提示される。
【0091】
[7]
被験者の試料のPlsEtnを定量する方法であって、以下の(1)〜(3−4)の工程を含む方法。
(1)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素を用いて、被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する工程:
(2)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、エーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素を用いて、前記(1)にて生成されたエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解する工程:及び
(3−1)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにせしめる酵素にて、工程(2)で得られたグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンを加水分解してエタノールアミンにする工程:
(3−2)エタノールアミンを酸化する酵素により、エタノールアミンから過酸化水素を発生せしめる工程:
(3−3)過酸化水素を過酸化水素定量手段により定量する工程:及び
(3−4)前記被験者の血清または血漿中のPlsEtn量を算出する工程:
または前記(2)の加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、同一被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0092】
[8]
前記工程(2)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[7]に記載の方法。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0093】
[9]
前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素、が下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[7]に記載の方法。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0094】
[10]
前記(2)に加水分解酵素が、リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、被験者の試料のPlsEtnを定量する方法が、前記(1)〜(3−4)の工程に先立つか、少なくとも前記(2)工程の前までに、下記(4)及び(5)を含む工程を行うことを特徴とする[7]に記載の方法。
(4)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を用いて、血清または血漿中に混在するホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程:及び
(5)リゾホスフォリパーゼ及び/又はモノグリセリドリパーゼを用いて、前記(4)工程により生成されるリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程。
【0095】
[11]
前記工程(4)のホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素としてホスフォリパーゼ(PL)を使用し、該PLは、前記工程(1)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素としての作用を兼ねさせて新たな該PLを添加することなく前記工程(1)の工程を進行せしめ、前記工程(5)を実施と同時、または前記工程(5)の実施後に、前記工程(1)が完了し、以後前記工程を(2)〜(3−4)実施する[10]に記載の方法。
【0096】
[12]
被験者の血清または血漿中のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)を定量する試薬キットであって、以下の(1a)〜(3a)を含む試薬キット。
(1a)エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物。
(2a)エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)をグリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドに加水分解でき、かつエーテル型リゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できない加水分解酵素およびその酵素反応を進めることのできる添加物。
(3a)グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロリン酸に変換する酵素、エタノールアミンをグリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素に変換する酵素とその酵素反応を進めるにことのできる添加物、さらに必要により過酸化水素を定量するための過酸化水素定量手段。
【0097】
または前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む試薬キット。
【0098】
[12−1]
前記(2a)の加水分解酵素がリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解できる酵素である場合、前記(1a)に、さらにリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する酵素を含む[12]に記載の試薬キット。
【0099】
[13]
前記(2a)の加水分解酵素が、下記(a)または(b)の酵素のいずれかである[12]または[12−1]に記載の試薬キット。
(a)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列:
(b)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:
からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する。
【0100】
[14]
前記(1a)のエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解できる酵素が、下記(c)または(d)のいずれかの酵素である[12]または[12−1]に記載の試薬キット。
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0101】
[15]
下記(A)または(B)の塩基配列を含む遺伝子。
(A)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列からなる酵素をコードする:
(B)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる酵素であって、エタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)を加水分解し、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンとアルデヒドとを得る反応を触媒する酵素をコードする。
【0102】
[16]
[15]に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
【0103】
[17]
[16]に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
【0104】
[18]
前記酵素の製造方法であって:
[15]に記載の遺伝子をもつ微生物、または[17]に記載の形質転換体を培地で培養する工程:
培養物中に[13]に記載の酵素を生成蓄積させる工程:及び
該培養物から該蛋白質を採取する工程:
を含む方法。
【0105】
[19]
前記PlsEtnを定量する試薬キットに含有させる下記(c)または(d)の酵素:
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列:
(d)配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であり、エタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をエタノールアミン型リゾプラスマローゲン(lyPlsEtn)に加水分解する作用を触媒する。
【0106】