(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本願で与えられる「背景技術」は、本開示の態様を一般的に与えることを目的とする。出願時に従来技術として認められ得ない本願の態様のみならずこの「背景技術」で説明される限りにおける本願発明者等の取り組みは、明示的にも黙示的にも本発明に対する従来技術として認められない。
【0003】
半導体処理中、プラズマは通常、半導体基板上にパターニングされた微細ラインに沿って又はビア(若しくはコンタクト)内での材料の異方的除去を促進することによるエッチング処理を支援するのに利用される。そのようなプラズマ支援エッチングの例には、反応性イオンエッチング(RIE)が含まれる。RIEは基本的に、イオンにより活性化される化学エッチング処理である。
【0004】
しかしRIEが数十年用いられてきたものの、RIEの成熟には複数の問題が伴う。そのような複数の問題には、(a)広いイオンエネルギー分布(IED)、(b)様々な電荷誘起副作用、及び(c)特徴部位の形状が負荷となる効果(つまりマイクロローディング)が含まれる。これらの問題を緩和する一の方法は、特許を受ける権利が譲渡された特許文献1に記載されているような中性ビーム処理の利用である。特許文献1の内容は本願に援用される。
【0005】
真の中性ビーム処理は、化学反応種、添加物、及び/又はエッチャントとして関与する中性の熱種が基本的に存在しない状態で行われる。基板での化学プロセス−たとえばエッチングプロセス−は、入射する(指向性を有する単色の)強力中性種の運動エネルギーによって活性化される。入射する(指向性を有して強力かつ反応性の)中性種はまた、反応物又はエッチャントとしての役割も果たす。
【0006】
中性ビーム処理の一の当然の帰結は、マイクロローディングが起こらないことである。その理由は、プロセスは、(RIEにおいてエッチャントとして機能する)熱種に係る束の角度のばらつきの効果を含まないからである。しかしマイクロローディングがなくなる不利な結果は、エッチング効率の実現である。つまり最大エッチング歩留まりは単位数つまり1となる。すなわち一の入射中性種は名目上、一のエッチング反応しかし促進しない。
逆にRIEでは、豊富な量の熱中性種(エッチャント)がすべて、膜のエッチングに関与しうる。このとき活性化は一の強力入射イオンによって起こる。従って運動エネルギーが活性化する(熱中性種)による化学エッチングは、10、100、及びさらには1000のエッチング効率を実現しうる一方で、マイクロローディングと共存せざるを得なくなる。
【0007】
現在の中性ビームはたとえば、壊れやすい基板−たとえば300mmウエハ基板−上に与えられるのには不当な10000リットル/秒(l/s)の流量を利用するターボ分子ポンプ(TMP)を用いて良い。
【0008】
図1は、中和器グリッド20が接地している従来の中性ビーム(NB)源10の概略図である。
図1は、従来の中性ビーム(NB)源の排気の困難さを表している。換言すると、TMPすなわちターボ28が高い−たとえば10000リットル/秒(l/s)−である場合、薄いウエハ基板26−たとえば300mmウエハ基板−がTMPに曝露されるとき、そのウエハ基板は故障又は破壊する恐れがある。
図1では、NB源10は、約10ミリトール(mTorr)で第1プラズマ電位(V
P,1)の第1プラズマ18を生成する第1プラズマチャンバ16、及び、約1×10
−4〜5×10
−5Torrで第2電位(V
P,2)の第2プラズマ24を生成する第2プラズマチャンバ22を有して良い。前記第2電位は前記第1プラズマ電位よりも高い。第1プラズマ18は、気体注入口14を介した第1プラズマチャンバ16内の電離可能気体−たとえばアルゴン(Ar)−に電力−たとえば高周(RF)波又はマイクロ波(μ波)−を結合することによって生成される。他方第2プラズマ24は、第1プラズマ18から中和器グリッド20を通過する電子束を用いて生成される。
【0009】
第1プラズマチャンバ16は、第1プラズマ18を点火及び加熱するように構成されるプラズマ生成システム12を有する。第1プラズマ18は任意の従来のプラズマ生成システムによって加熱されて良い。前記従来のプラズマ生成システムは、誘導結合プラズマ(ICP)源、変成器結合プラズマ(TCP)源、容量結合プラズマ(CCP)源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ源、ヘリコン波プラズマ源、表面波プラズマ源、スロット平面アンテナを有する表面波プラズマ源等を含む。第1プラズマ18が任意のプラズマ源によって加熱されて良いが、第1プラズマ18は、そのプラズマ電位(V
P,1)での揺らぎを減少又は抑制する方法によって加熱されることが望ましい。たとえばICP源は、(V
P,1)での揺らぎを減少又は抑制する実際的な方法である(特許文献1を参照のこと)。
【0010】
図2は、
図1の単色型の従来の中性ビーム(NB)源を用いた、加速器表面32及び接地された中和器グリッド上面34の電位図と構造30を示すグラフである。この型では、単色NBの加速器表面32は、直流(DC)電力(+V
A)が供給されなければならない。
図2では、プラズマバルク36は、正にバイアス印加されたDC加速器表面32によって駆動されるプラズマ電位(V
P)又は境界駆動プラズマ電位を有する。ここでV
P〜V
Aである。加速器表面32は、中和器グリッド34の表面積よりも実質的に大きな表面積を有することに留意して欲しい。さらに電位図及び構造30はまた、イオンのボーア速度と初期イオン束を支配する古典的プレシースS
A、シース端部38、及び電子の存在しない領域40又は陰極降下S
Bを有するシースSをも示している。ここで全体のシースSはS
A+S
Bである。
【0011】
DCバイアス印加された加速器表面32は、プラズマバルク36と接する相対的に大きな面積を有することに留意して欲しい。DCグランドでの面積が多くなればなるほど、第1プラズマ電位は小さくなる。たとえばプラズマバルク36と接するDCバイアス印加された加速器表面32の伝導性表面の表面積は、プラズマバルク36と接する任意の他の表面積よりも大きくて良い。
【0012】
それに加えてたとえばプラズマバルク36と接するDCバイアス印加された加速器表面32の伝導性表面の表面積は、プラズマバルク36と接する任意の他のすべての表面積の合計面積よりも大きくて良い。
【0013】
あるいはその代わりに例として、プラズマバルク36と接するDCバイアス印加された加速器表面32の伝導性表面は、プラズマバルク36と接する唯一の伝導性表面であって良い。DCバイアス印加された加速器表面32はグランドへの最低インピーダンス経路を供して良い。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで図面を参照する。図中、同様の参照番号は、同一又は対応する部材を指すものとする。
【0023】
一の実施例によると、とりわけ上述した問題の一部又は全部を緩和するため、基板の化学処理を活性化することが可能な非双極性電子プラズマ(NEP)によって異方的な単色中性ビーム(NB)を供する方法及び装置が供される。非双極性電子プラズマによる中性ビームにより活性化される化学処理は、運動エネルギー活性化−つまり熱中性種−を含むので、高い反応性すなわちエッチング効率を実現する。しかし中性ビームにより活性化される化学処理は、本願で供されているように、単色活性化、空間電荷の中和、ハードウエハの実用性を実現する機能、及び、基板でのターボ分子ポンプ(TMP)圧力をより合理的に低くすることを可能にする機能をも供する。
【0024】
たとえば約300mmのウエハ基板上で用いられるために、約2200l/s又は3300l/sのより合理的なTMP流量を供するため、中性ビーム(NB)源が供されて良い。それはつまり、(1)最低のポンピング(TMP)要件を可能にする最低圧プラズマを供するように構成されたプラズマ系NB源、(2)最高NB電子束、(3)制御可能で指向性(異方的)なエネルギー、(4)単色NB、(5)(伝導体の代わりに)たとえば石英(SiO
2)、セラミック(Al
2O
3)、バルクHfO
2、バルクY
2O
3等の絶縁体であって良い中和器グリッド、である。
【0025】
上述した
図1と
図2は、中和器グリッドが接地されている従来の中性ビーム(NB)源、及び、単色型の従来の中性ビーム源を用いた中和器グリッドの電位図と構造を示している。
【0026】
図3は、本開示のある実施例による化学処理装置−たとえば1つの注入器を備える中性ビーム(NB)非双極性電子プラズマ(NEP)装置50(NB−NEP)−の典型的実施例の概略図である。
図3では、一般的に、NB−NEP装置50の誘電体注入器は、プラズマ誘電体チャンバ58から第2プラズマ誘電体チャンバ64への電子束を可能にする注入ノズル又は開口部のアレイ(図示されていない)を有して良い。
図3では、単一ノズル電子注入器68(1つの注入器とも呼ばれる)を備えるNEPが典型的実施例として用いられている。NB−NEP装置50の容積は比較的小さい(たとえば直径約4cmである)。NB−NEP装置50の電位構造は重要である(
図9と
図10を参照のこと)。完結した注入器二重層が存在する(
図9と
図10を参照のこと)。ウエハ基板、中和器グリッド、又は検出器が設けられ得るNEP端部境界が存在して良い(
図3を参照のこと)。NEPと接する電気的接地が存在せず、プラズマ1のみが直流(DC)接地を有することは重要である。そのようなDC接地領域は、電子注入器ノズル68の断面積と比較して実質的に大きくなければならない。従ってNEP端部境界は(たとえば
図3の72では)実質的に絶縁体表面である。
【0027】
1つの注入器を備えるNB−NEP装置50は、電気的グランドの参照体として構成される接地被覆管52、第1プラズマ誘電体管/チャンバ58、たとえば加速器70と結合する90°の錐体注入器を有する誘電体注入器68を含む注入器誘電体部62、加速器70をグランドから隔離するように構成される第2プラズマ誘電体管/チャンバ64、電気的グランドとして構成されるグランドに載置されるフランジ66、誘電体グリッドホルダ71、及び誘電体中和器グリッド72又はウエハ基板を含んで良い。NEP端部境界は、上述したように、中和器グリッド(分離部材)72又はウエハ基板に設けられて良い。あるいはその代わりに、第2接地フランジは、第1プラズマ誘電体チャンバ58と注入器誘電体部62との間に設けられて良い。
【0028】
第1プラズマ誘電体管/チャンバ58は、石英(SiO
2)、Al
2O
3等を含んで良く、かつ、ヘリカル共振器、誘導結合プラズマ(ICP)、中空カソード等を含む第1プラズマ電源54と56を有して良い。たとえば第1プラズマ誘電管/チャンバ58はICP石英管であって良い。注入器誘電部62は石英(SiO
2)、Al
2O
3等であって良い。第2プラズマ電源は、注入器誘電体部62及び第2プラズマ誘電管/チャンバ64と結合する加速器70を含んで良い。さらに注入器誘電体部62はNEP石英管であって良い。第2プラズマ誘電管/チャンバ64は石英(SiO
2)、Al
2O
3等を含んで良い。よって第2プラズマ誘電体はたとえば石英管であって良い。第1プラズマは高n
eの電子源を有する効率的なプラズマ源であって良い。プラズマは不活性である。ここでn
eは電子数密度である。第1プラズマ誘電管/チャンバ58内での圧力Pは1×10
−5<P<1×10
−1Torrであって良い。第2プラズマ誘電管/チャンバ64内での圧力Pは1×10
−5<P<1×10
−2Torrであって良い。よって第1プラズマと第2プラズマは、合理的な基板圧力又は相互作用を保証する低プラズマ圧力であって良い。あるいはその代わりに、第1プラズマ誘電管58及び注入器誘電体部62は、それらの間に設けられる注入器ノズル68と一体として結合されても良い。
【0029】
図4は、本開示のある実施例による
図3の装置の構成を示す概略図である。一部の実施例では、NB−NEP装置50は、上述したように、ポンピング中和器76を有する正のDCバイアス電圧(+V
A)加速器70、第1プラズマ生成チャンバとして機能する第1プラズマ誘電体又はICP石英管58、加速器70と結合する注入器68を含む注入器誘電体又はNEP石英管62、加速器70を制御するように構成されるRF(高周波)チョーク74、中和器グリッド72に隣接して設けられる第2プラズマ生成チャンバとして機能する第2プラズマ(NEP)石英管64を有して良い。ポンピング中和器76は、プラズマがTMP(図示されていない)に到達する前にプラズマを中和する3つのグリッドの構成を有して良い。あるいはその代わりに中和器グリッド72は、ウエハ基板/試料又はエネルギー分析器に置き換えられて良い。加速器70は、実質的に円筒形に構成され、かつ、伝導性材料を含んで良い。
【0030】
【表1】
表1に示されているように、低圧非双極性電子プラズマ(NEP)又は第2プラズマ中での端部境界の浮遊表面シース電位、電子、及びイオンのエネルギー分布関数(EEDf、IEDf)が調査された。NEPは、該NEP内部に位置する加速器によって注入器誘電体62を介して誘導結合電子源プラズマ(ICP)又は第1プラズマから抽出される電子ビームによって加熱されて良い。NEPのEEDfは、プラズマビームエネルギー周辺の最も強力なエネルギー群を接続する広いネルギー連続体が従うマクスウエル関数部分を有して良い。NEP圧力はN
2の1〜3mTorrであって良い。ICP圧力はArの5〜20mTorrであって良い。加速器70は80〜700Vで正にバイアス印加(+V
A)されて良い。ICP電力範囲は150〜300Wであって良い。NEPのEEDf及びIEDfは、たとえば逆電位エネルギー分析器を用いて決定されて良い。EEDf並びにIEDfは、加速器電圧(+V
A)の関数として様々なNEP圧力、ICP圧力、及び電力で測定されて良い。加速器電流及びシース電位もまた測定されて良い。IEDfは調節可能なエネルギーによって単色イオンを明らかにし得る。IEDfはシース電位によって均整のとれた状態で制御されて良い。NEP端部境界の浮遊表面には、単色の空間電荷が中性のプラズマビームが衝突して良い(
図10の80を参照のこと)。注入された強力電子ビームがNEPによって適切に減衰されるとき、シース電位は、加速器電圧(+V
A)によって略1:1の比で1次関数的に制御され得る。NEPパラメータが電子ビームを十分に減衰できないことで、浮遊表面上に堆積した過剰な量の電子ビーム電力が残される場合、シース電位は急落して加速器電圧(+V
A)に対して応答しなくなる。
【0031】
第2プラズマ(NEP)は、5ミリトール(mTorr)〜1mTorrのオフ間隔なしに一度で数時間非常に安定して動作するように設定し得ることに留意して欲しい。表1では、V
fMは等方的浮遊電位で、つまりは中性ビーム(NB)下ではなく、V
fBはNB下での浮遊電位である。
【0032】
図5は、本開示のある実施例による
図3の装置の概略図である。中和器グリッド72は絶縁体として構成されて良い。注入器誘電管62と第2プラズマ(NEP)誘電管64を含む全NEP領域は電気的グランドを有しないように構成されていることに留意して欲しい。従って誘電体中和器グリッド72もまた接地されていない。換言すると、NEP領域は、グランドから離れた誘電体中和器グリッド72を保持するように構成される誘電体グリッドホルダ71を挿入することによってグランドに載置されているフランジ66の電気的グランドから隔離される。誘電体中和器グリッド72は、たとえば石英、セラミック、SiO
2、アルミニウム酸化物、HfO
2、Y
2O
3からなる群から選ばれる誘電体表面材料を有するように構成されて良い。
【0033】
誘電体グリッドホルダ71はウルテム(ポリイミド)(商標)等を含んで良い。誘電体グリッドホルダ71の目的は、NEP(第2プラズマ)が電気的グランド表面と接触するように接近せずに誘電体中和器グリッド72とのみ接触することを保証するためである。さらに加速器は、たとえば正のDCバイアス電圧(+V
A)で3つのグリッドのポンピング中和器76を有するように構成されて良い。
【0034】
図6は、本開示のある実施例による
図3の装置の誘電体中和器領域の断面の拡大概略図である。
図6では、中和器グリッド72はNEP石英管64とグリッドホルダ71との間に設けられて良い。
図6では、実質的に異方的な中性粒子のビームを含む空間電荷が中性のプラズマビーム80が、中和器グリッド72へ導入され、かつ、ウエハ表面(図示されていないが矢印の先)をエッチング又は処理する中性ビームとして飛び出す。中和は、電子と正イオンとの表面再結合が高アスペクト比−たとえば>5又は>15の比−の中和器グリッド管の内面で起こるときに起こりえる。これらの内面での正イオンの前方散乱とこれらの正イオンと表面電子との再結合を介して、中和が起こりえる(
図8Aと
図8Bを参照のこと)。
【0035】
図7は、本開示のある実施例によるNEP(第2プラズマ)と中和器グリッド72の概略的側面図である。
図7では、NEP(第2プラズマ)が、高アスペクト比の石英中和器グリッド72及びその管のチャネル88及び管壁86の構成と接触した状態で図示されている。プラズマビーム80は、図示されているようにシース端部後では任意の形状をとって良いことに留意して欲しい。
【0036】
図8Aと
図8Bは、NEP82が作用するときにシースの比が変化する
図6の接地されていない誘電体中和器グリッドの孔すなわちチャネル92,98の概略的側面図である。
図8Aでは、たとえばS〜2d及び高l/d管チャネルの比(>5)を有する中和器グリッド90は、中和器の個々のグリッド孔92を有して良い。
図8Bでは、たとえばS〜2d及び高l/d管チャネルの比(>15)を有する中和器グリッド94は、中和器管表面96、中和器管チャネル98、及び中和器上面100を有して良い。各中和器グリッドは比l/dを有するように構成されて良い。ここで、lは中和器管チャネル98の断面方向の長さで、dは中和器上面100と管表面96との間−つまり中和器グリッドの個々のグリッドの孔92すなわち開口部−で測定された長さである。中和器管チャネル98は、基板表面に対して垂直な方位をとる複数のチャネルとして構成されて良い。
【0037】
デバイ長未満のグリッド孔(d<S)は、シースSがグリッド孔92へ入り込むのを防止するように構成されて良く、かつ、入射イオンと管表面96との間での微小角(
図8Aと
図8Bのイオンと中性粒子を参照のこと)相互作用が起こる結果、放出される高速中性粒子が高い指向性を有することを保証することに留意して欲しい。
(1)比が5よりも大きい場合、たとえばS〜2dのデバイ長未満の中和器の構成は、グリッド孔92全体にわたってかなり平坦なシースSを保持することで、真っ直ぐで高速な中性粒子、及び、中和のための大きな管表面の利点を有し、かつ、軸から外れた望ましくない高速中性粒子を除去し得る高l/d管チャネル(>5)を保証する。
(1)比が15よりも大きい場合、たとえばS>2dのデバイ長未満の中和器の構成は、プラズマビーム80の単色、指向性、及び中和効率を最適化し得る幾何学構造を有する約15よりも大きな高l/d管チャネルと共に、グリッド孔92にわたって平坦なシースSを保証し得る。
【0038】
換言すると、グリッド孔92はデバイ長未満(たとえばS>2d)となるように構成されて良く、かつ、管チャネル98は、高い指向性を有する高速中性ビーム(異方的な強力NB)を保証するように高アスペクト比(たとえばl/d〜>15)となるように構成されて良い。従来の単色の強力NB(
図1参照)とは異なり、単色で強力なNB−NEP装置50は、表面を中和するために空間電荷が中和された中性プラズマを利用する。よって電子とイオンの数が等しいプラズマビームが管チャネルに入射することで、管表面の電子は、中性ビームを生成する微小角前方散乱イオンと再結合する。そのシースは電子の存在しない領域を有していない。その中和器グリッド72は電子を供給しない。つまり中和器グリッドの中性は、空間電荷が中和したプラズマビームによって予め決定された。
【0039】
図9は、本開示のある実施例による
図3の装置の電位
図102のグラフである。
図9では、電位構造は、NEP端部境界での表面二重層106、及び、
図3の注入器68での注入器二重層104を表している。表面二重層106はまだ実験的に探索されてこなかった。表面二重層が存在すること/の予測は非常に蓋然性の高い理論である。しかし表面二重層の存在又は不存在は、NB−NEP装置50の誘電体中和器グリッド72の設計にとって取るに足らないことであることに留意しなければならない。
図9ではたとえば、第1プラズマ(ICP)は略25Vの第1プラズマ電位を有し、第2プラズマ(NEP)は略700Vの第2プラズマ電位を有し、かつ、NB−NEP装置50の下の浮遊電位(V
fB)は略280Vであって良い。さらに加速器70のDCバイアス電位は略700Vであって良い。よって第2プラズマ電位は加速器70のDCバイアス電位に略等しくて良い。
【0040】
それに加えて、第1プラズマはTMPによって制御された圧力に保持されて良い。ここでの圧力P
1は、第1プラズマ誘電体チャンバ58内で1×10
−5<P
1<1×10
−1であって良い。第2プラズマもまたTMPによって制御された圧力に保持されて良い。ここでの圧力P
2は、第2プラズマチャンバ64内で1×10
−5<P
2<1×10
−2であって良い。
【0041】
図10は、本開示のある実施例による注入器誘電体62、加速器70の加速器表面114a、114b、及び、
図3の中和器グリッド72の接地されていない中和器グリッド上面118の電位
図108を示すグラフである。
図10は、NB−NEP装置50用の誘電体中和器グリッド72の電位構造及び設計を示している。ある実施例では、中和器グリッド72の管表面118でイオンと電子の再結合による中和とそれに続くこれらの粒子の前方散乱は、初期のイオン速度をほぼ保存し、かつ、プラズマビーム80中での電子と正イオンの数が等しく、かつ、中和器グリッド72の管表面96上での再結合による中和器によって、粒子のエネルギーと運動量が保存される。換言すると、接地されないように構成された中和器グリッド72によって、正イオンはプラズマビーム80内で失われない。加速器表面は、
図10に示されているように、NEP電子注入器ノズル面積(NEP基準)よりも実質的に大きいことに留意して欲しい。
【0042】
さらにある実施例では、シース端部84で生成されるプラズマビーム80中の等しい数の電子と正イオンが管表面96上で再結合及び中和することで、エネルギーと運動量が保存される。
【0043】
図11Aと
図11Bは、本開示のある実施例によるNEP端部境界で測定されたイオンエネルギー分布(IED)のグラフである。
図11Aと
図11Bは、NEP端部境界で測定されたIEDfの例を示している。ある実施例では、中性粒子の実質的に異方的なビームを含む空間電荷が中和したプラズマビーム80は、NEP端部境界(繰り返しになるが絶縁表面)に衝突する。たとえば加速器電圧はV
A=550Vであって良い。V
AはまたNEPプラズマ電位でもある。つまりV
P2〜V
Aである。測定されたイオンエネルギーピークは360eVで、これはV
P2−V
fBである。ここでV
fBはビーム80の衝突下での絶縁表面の浮遊電位である。端部境界に衝突するプラズマビームの電子エネルギーはV
fB−V
P1(V
P1は典型的には略20Vである第1プラズマ電位である)これは略190eVである。
【0044】
図3のNB−NEP装置50は、本開示のある実施例による銅の異方的エッチングに用いられて良い。エッチング剤は有機化合物ガスであって良い。有機化合物については、そのまま供給可能なものを用いるか、あるいは、加熱して気体状態にして真空状態に維持されるプラズマ処理システムへ供給可能なものを用いることが好ましい。一般的には有機酸が用いられる。有機酸については、酢酸(一般式R−COOH。Rは水素又はC1〜C20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル又はアルケニルで、好適にはメチル、エーテル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシル)によって表されるカルボン酸を用いることが好ましい。酢酸以外のカルボン酸は、ギ酸(HCOOH)、プロピオン酸(CH
3CH
2COOH)、酪酸(CH
3(CH
2)
2COOH)、吉草酸(CH
3(CH
2)
3COOH)等を含んで良い。カルボン酸の中でも、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸はより好適に用いられる。
【0045】
有機化合物が酢酸であるとき、銅酸化物と酢酸との間での反応が加速され、かつ、揮発性であるCu(CH
3COO)とH
2Oが生成される。その結果、銅酸化物分子はCu膜から分離される。同一の反応は、他の有機化合物(有機酸)−たとえば酢酸以外のギ酸又はプロピオン酸−を用いる場合でも起こる。その結果、Cu膜はエッチングされる。
【0046】
図12は、本開示のある実施例による
図3のNB−NEP装置50を用いた典型的な用途124の概略図である。
図12では、本開示の実施例は、Cu異方性乾式エッチングのためにCu系基板をCH
3COOHで処理するのに適用される。たとえば、基板は25℃及び3×10
5Torrの雰囲気に設けられている。異方的な超熱酸素(O)系処理がたとえば100eVで適用されるとき、CuxOが、エッチング中に異方的な超熱酸素(O)のサブプランテーションによって126に生成される。CH
3COOHと酸化銅との間での正味の表面反応は次式のように書くことができる。
CuO+2CH
3COOH→Cu(CH
3COO)
2+H
2O (1)
Cu
2O+4CH
3COOH→2Cu(CH
3COO)
2+H
2O+H
2 (2)
式(1)と(2)によると、CH
3COOHは酸化銅と反応して、Cu及び揮発性のCu(CH
3COO)
2+H
2Oエッチング生成物を生成する。従ってCH
3COOHがエッチング剤として選ばれるとき、揮発性エッチング生成物はCu(CH
3COO)
2及びH
2Oである。
【0047】
気体であるCH
3COOHエッチングガスの処理チャンバへの輸送は、バブラシステム及びマスフローコントローラ(MFC)を有し得る供給システムを用いることによって実現されて良い。バブラシステムは、たとえばアルゴン(Ar)のようなキャリアガスと併用されても良いし、あるいは併用されなくても良い。キャリアガスが用いられるとき、そのキャリアガスは、CH
3COOH液体を通って泡となり、かつ、CH
3COOH蒸気で飽和状態になる。プロセスチャンバ内でのCH
3COOH蒸気の分圧は、バブラ中でのCH
3COOHの温度によって制御される。CH
3COOHとキャリアガスの典型的なガス流量は1000sccm未満で、好適には500sccm未満である。あるいはその代わりに液体注入システムは、CH
3COOHを処理チャンバへ供給するのに用いられて良い。たとえばCH
3COOH剤のようなエッチング剤の取り扱い及び使用は当業者には周知である。
【0048】
換言すると、基板を設ける方法は、たとえばパターニングされたマスクの下に銅(Cu)の層を有する基板を設ける工程、及び、前記銅の層中にエッチングによって部位を生成する工程を有する。さらにエッチングは、実質的に異方的な中性粒子ビームを用いることによって基板上に1つ以上の部位をエッチングにより生成する工程を含んで良い。不活性ガスは、上述のプロセスガス化学物質のうちの任意の1つに加えられて良い。不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、及び窒素のうちの少なくとも1つを含んで良い。たとえばプロセス化学物質への不活性ガスの付加は、プロセスガスの希釈又は(複数の)プロセスガス分圧の調節に用いられる。
【0049】
あるいはその代わりに、本開示の一部の実施例は、他の材料−たとえばNB−NEP装置50によるルテニウム(Ru)−の処理又はエッチングに用いられて良い。Ruエッチングは、エタノール(C
2H
6O)雰囲気環境においてNB−NEP装置50の酸素イオンビームによって実行されて良い。
【0050】
図13は、本開示の本開示のある実施例による基板を処理するように構成された化学処理装置50の動作方法を表すフローチャート200である。
図13では、フローチャート200は、プラズマを用いて基板の処理を促進するように構成された化学処理装置50内に基板を設ける工程205を有する。プラズマ処理チャンバ(58,62,64)は、上述の
図3〜
図10に記載された化学処理装置50の部品を有して良い。
【0051】
210では、第1プラズマが、第1プラズマ電位−たとえば25V−で第1プラズマ領域内の第1プロセスガスから生成される。
図3、
図4、及び
図9に表されているように、第1プラズマ領域はプラズマ生成チャンバ(58、62、64)内に位置し、かつ、プラズマ生成装置(54)は、第1プラズマを生成するため、プラズマ生成チャンバ(58、62、70)に結合されて良い。第1プロセスガスは、アルゴン(Ar)を含むガスを第1プラズマ領域(58)へ流す工程を有して良い。
【0052】
215では、第2プラズマは、第1プラズマ領域(58)からの電子束を用いることによって、第2プラズマ電位−たとえば700V−で第2プラズマ領域(62、64)内に生成される。
図3〜
図10に表されているように、第1プラズマ領域(58)内の第1プラズマからの電子束は、プラズマ生成チャンバ(58、62、70)から注入器誘電体62を通り抜けて、処理されるべき基板が設けられているプロセスチャンバ又は第2プラズマ誘電体管/チャンバ64へ向かう。
図3、
図5、及び
図6で表されているように、第2プラズマ領域(58)はプロセスチャンバ(64)内に設けられて良い。プラズマ生成チャンバ(58、62、70)とプロセスチャンバ(64)との間に設けられる中和器グリッド72内の1つ以上の開口部すなわち流路は、第1プラズマ領域(58)から第2プラズマ領域(62、64)への輸送すなわち供給を容易にする。第2プラズマ(NEP)が、酸素を含む第2プロセスガスを第2プラズマ領域へ流すことによって生成され得る。
【0053】
220では、第2プラズマ電位が、電子束を制御するように、第1プラズマ電位を超えて上昇し、かつ、維持される(
図9及び
図10を参照のこと)。第1プラズマ領域(58)内の第1プラズマは境界駆動プラズマであって良い。つまりプラズマ境界は、各対応するプラズマ電位への実質的な影響を有して良い。第1プラズマと接する境界の一部又は全部はDCグランドに結合される。それに加えて第2プラズマ領域内の第2プラズマは境界駆動プラズマであって良い。第2プラズマと接する境界の一部又は全部は+V
AでDC電源に結合される。第1プラズマ電位を超えた第2プラズマ電位の上昇は、
図9及び
図10で与えられた実施例のうちの任意の1つ又は2つ以上の結合を用いて実行されて良い。
【0054】
225では、プロセスチャンバへ流入するガスが、そのプロセスチャンバ内の圧力を制御するように真空排気装置(TMP)によって排気される。230では、加速器は、電子と正イオンとを再結合させることで、異方的で単色の中性ビーム80を生成するように、第2プラズマ領域(62、64)から接地されていない中和器グリッド72へ向かうように加速するのに利用されて良い。正イオンを中和器グリッド72へ向けて加速する工程は、SiO
2、石英、アルミニウム酸化物、HfO
2、Y
2O
3等からなる群から選ばれる誘電体表面材料を有する中和器グリッド72へ向かうように正の酸素イオンを加速させる工程を含む。
【0055】
235では、基板は、第2プラズマ領域(62、64)内において第2プラズマの異方的で単色の中性ビームに曝露される。第2プラズマへの基板の曝露は、異方的で単色の中性ビームによって活性化される化学プロセスへの基板の曝露を含んで良い。
【0056】
よって前述の議論は、本発明の単に典型的な実施例を開示及び説明している。当業者はわかるように、本発明は、本発明の技術的思想又は基本的特性から逸脱することなく他の具体的形態で実施され得る。従って本発明の開示は例示を意図しているのであって、本発明及び他の請求項に係る発明を限定することを意図しているのではない。本開示−本願での教示の容易に認識可能な変化型を含む−は、本願の発明特定事項が公衆に公開されないように前述の請求項中の用語の範囲を部分的に画定する。