(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明により、この熱磁気材料粒子の平均粒径が50μm〜1mmの範囲であり、充填床での空隙率が30〜45%の範囲であるとき、この熱磁気材料粒子からなる充填熱交換器床が、熱交換器床が高効率な材料配置をとり、最適運転を可能とすることが明らかとなった。個々の材料粒子はいかなる形をしていてもよい。これら材料粒子は、好ましくは球状、ペレット状、シート状または円柱状である。これらの材料粒子は、より好ましくは球状である。これらの材料粒子の、特に球状粒子の径は50μm〜1mmであり、より好ましくは200〜400μmである。これらの材料粒子、特に球状粒子は、その大きさに分布があってもよい。この粒径分布は狭いことが好ましく、ほとんどが同じ大きさの球で存在することが好ましい。粒径は、平均粒径からの差が20%を超えないことが好ましく、より好ましくは10%を超ない、特に5%を超えないことが好ましい。
【0019】
この結果として、充填床中では、空隙率が30〜45%の範囲に、より好ましくは36〜40%となる。
【0020】
材料粒子、特に上記大きさの球状粒子は、充填熱交換器床として、高い固体−流体(熱交換器流体)間熱移動効率と低い圧力損失を与える。このため熱交換器床の動作係数(COP)が改善される。この高い熱移動効率のため、充填床を従来以上に高頻度で運転でき、より大きなエネルギーの抽出が可能となる。
【0021】
充填熱交換器床中に単一種の熱磁気材料が存在していてもよいが、キュリー温度が異なる積層状の異なる磁気熱量材料を組み合わせることもできる。この結果、単一の熱交換器床中で、全体として大きな温度変化が達成できる。本発明によれば、キュリー温度の最大の差異が1〜10℃、より好ましくは2〜6℃である熱磁気材料の組合せが好ましい。
【0022】
特定の運転条件用に、異なる径の材料粒子、特に球状粒子を用いて充填熱交換器床の性能を最適化することができる。小さな径、特に球径では、熱移動効率が高くなり、このためより好ましい熱交換が可能となる。しかしながら、これはまた、この熱交換器床での圧力損失の上昇につながっている。逆に、より大きな材料粒子、特に球状粒子を使用すると、熱移動が低下するが圧力低下も低下する。
【0023】
この熱磁気材料粒子からなる充填熱交換器床は、いずれか適当な方法で製造可能である。例えば熱電材料の粉末を成形して熱磁気材料粒子を形成すること等により、まず熱磁気材料粒子を製造する。次いでこの材料粒子を充填して熱交換器床を形成する。これは、この材料粒子を適当な容器に注入して行われる。この場合、容器を振ることでこの床の沈降が促進される。この材料粒子を一旦流体中に浮かせ、次いで沈降させることも可能である。また、制御された状態で個々の材料粒子を沈降させて均一構造とすることもできる。この場合、例えば堅固な立方晶的な球の充填が可能である。
【0024】
いずれか適当な方法で、この充填熱交換器床の運動を抑えることができる。例えば、充填熱交換器床の入った容器を前面で閉鎖することができる。例えばメッシュケージを用いてこれを行うことができる。あるいは、例えば充填床中の材料粒子を表面溶融させて、あるいは充填床中の材料粒子を相互に焼き付けて個々の材料粒子を相互に結合することができる。この表面溶融または焼き付けは、材料粒子間の間隙が、ほほ完全に保存されるように行う必要がある。
【0025】
シート状、円柱状、ペレット状または球状などの形状の熱磁気材料粒子を用いて充填熱交換器床を形成することが、大きな表面/質量比率が達成されるため好ましい。これにより、より大きな伝熱効率と比較的に小さな圧力損失が得られる。
【0026】
この熱交換器床の第二の好ましい実施様態は、連続流路を有する熱磁気材料製モノリスである。このモノリスは、熱磁気材料のブロックと考えることができ、その場合、ブロックの二つの対抗する端面が流体用の流入孔と流出孔をもち、これらの孔は、モノリス全体を通過して延びる流路により相互に連結されている。このようなモノリスは、例えばチューブバンドル製のものであり、個々の熱磁気材料製チューブが相互につながったものであってもよい。これらの流路は、相互に平行であることが好ましく、一般的にはモノリス内を直線的に延びている。特定の使用上の要件がある場合は、曲線的な流路を設けることもできる。このようなモノリスの形状は、例えば自動車排ガス触媒から公知である。従って、これらの熱磁気材料モノリスは、例えばセル状であってもよく、その場合には個々のセルがいかなる形状をしていてもよい。例えばこれらの流路が、ハニカムのような六角形の断面をしていても良く、長方形の断面をしていてもよい。本発明においては、以下の条件が満たされるなら、星型断面や丸断面、卵型断面または他の断面も可能である:
−個々の流路の断面積が0.001〜0.2mm
2の範囲、より好ましくは0.01〜0.03mm
2、特に0.015〜0.025mm
2の範囲にある、
−壁厚が50〜300μmの範囲、より好ましくは50−150μm、特に85〜115μmの範囲にある、
−空隙率が10〜60%の範囲、より好ましくは15〜35%、特に20〜30%の範囲にある、
−表面/体積比率が3000〜50000m
2/m
3の範囲、より好ましくは5000〜15000m
2/m
3の範囲にある。
【0027】
個々の流路は、例えば長方形断面をもち、断面径が50μm×25μm〜600μm×300μm、特に約200μm×100μmであってもよい。壁厚は約100μmであることが特に好ましい。空隙率は約25%であることがより好ましい。このように、この空隙率は通常、充填球床の空隙率よりかなりの低い。このため、特定の体積の磁場内により多くの磁気熱量材料を入れることができる。この結果、同等の磁場でより大きな熱効果が得られる。
【0028】
これらの成型体は連続流路をもつ。この流路が、水、水/アルコール混合物、水/塩混合物などの液体状熱媒や、空気または希ガスなどの気体状熱媒を流通させる。水または水/アルコール混合物の使用が好ましく、その場合、このアルコールは、一価アルコールでも多価アルコールであってもよい。例えば、このアルコールがグリコールであってもよい。
【0029】
モノリスを、例えばその中に薄い平行流路をもつ磁気熱量材料の層から形成してもよい。
【0030】
表面/体積比率が非常に大きいと熱移動がよくなり、圧力損失が極めて小さくなる。圧力損失は、例えば同じ熱移動係数をもつ球充填床のものより一桁小さくなる。このように、モノリスの形状は、動作係数(COP)を、例えば磁気熱量冷却装置の動作係数をさらに改善させる。
【0031】
この熱磁気材料自体は、いずれか適当な熱磁気材料から選ばれる。好適な材料が、いろいろな文書に、例えばWO2004/068512に記載されている。
【0032】
好ましい熱磁気材料は、以下の化合物から選ばれる:
【0033】
(1)一般式(I)の化合物:
(A
yB
y-1)
2+δC
wD
xE
z (I)
式中、
Aは、MnまたはCoであり、
Bは、Fe、CrまたはNiであり、
CとDとE:CとDとEの少なくとも二つは異なり、常にゼロ濃度でなく、PとB、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As、Sbから選ばれ、CとDとEのうち少なくとも一つはGeまたはSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲の数字であり、
wとxとyとzは、0〜1の範囲の数字であり、w+x+z=1である;
【0034】
(2)一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa系およびFe系化合物:
La(Fe
xAl
1-x)
13H
yまたはLa(Fe
xSi
1-x)
13H
y (II)
式中、
xは、0.7〜0.95の数字であり、
yは、0〜3の、好ましくは0〜2の数字である;
La(Fe
xAl
yCo
z)
13またはLa(Fe
xSi
yCo
z)
13 (III)
式中、
xは、0.7〜0.95の数字であり、
yは、0.05〜1−xの数字であり、
zは、0.005〜0.5の数字である;
LaMn
xFe
2-xGe (IV)
式中、
xは、1.7〜1.95の数字である;
【0035】
(3)MnTP型のホイスラー合金(式中、Tは遷移金属であり、Pは、原子当りの電子数e/aが7〜8.5の範囲であるp−ドープ金属である);
【0036】
(4)一般式(V)のGd系およびSi系化合物:
Gd
5(Si
xGe
1-x)
4 (V)
式中、xは、0.2〜1の数字である;
【0038】
(6)ペロブスカイト型のマンガナイト
【0039】
(7)希土類元素を含む一般式(VI)と(VII)の化合物:
Tb
5(Si
4-xGe
x) (VI)
式中、x=0、1、2、3又は4である;
XTiGe (VII)
式中、X=Dy、Ho又はTmである;
【0040】
(8)一般式(VIII)と(IX)のMnとSbまたはAs系化合物
Mn
2-xZ
xSb (VIII)
Mn
2Z
xSb
1-x (IX)
式中、
Zは、Cr、Cu、Zn、Co、V、As又はGeであり、
xは0.01〜0.5であり、
ZがAsでないとき、SbはAsで置き換えられていてもよい。
【0041】
本発明によれば、本発明の構造をとるとき、上記の熱磁気材料が、熱交換器、磁気冷却器、熱ポンプまたは熱磁気発電器または再生機中で好ましく使用できることがわかった。
【0042】
本発明によれば、化合物(1)と(2)、(3)、(5)から選ばれる金属系材料が特に好ましい。
【0043】
本発明で特に好適な材料が、例えばWO2004/068512, Rare Metals, vol. 25, 2006, pp. 544 to 549, J. Appl. Phys. 99, 08Q107 (2006), Nature, Vol. 415, January 10, 2002, pp. 150 to 152 and Physica B 327 (2003), pp. 431 to 437に記載されている。
【0044】
上記の一般式(I)の化合物中で、CとDとEは、好ましくは同一であるか異なり、Ge、Si、Sn及びGaの少なくとも一つから選ばれる。
【0045】
一般式(I)の金属系材料は、好ましくは、Mn、Fe、P及び任意にSbに加えて、更にGe又はSi又はAs、又はGe及びSi、又はGe及びAs、又はSi及びAs、又はGe、Si及びAsを含む少なくとも四元である化合物から選ばれる。
【0046】
成分Aの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がMnである。Bの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%が、Feである。Cの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がPである。Dの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がGeである。Eの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がSiである。
【0047】
この材料が、一般式MnFe(P
wGe
xSi
z)であることが好ましい。
【0048】
xは、好ましくは0.3〜0.7の範囲であり、wは1−x以下であり、zは1−x−wである。
【0049】
この材料は、結晶性の六方晶型Fe
2P構造をもつことが好ましい。好適な材料の例は、MnFeP
0.45-0.7Ge
0.55-0.30、及びMnFeP
0.5-0.70(Si/Ge)
0.5-0.30である。
【0050】
他の好適な化合物は、Mn
1+xFe
1-xP
1-yGe
yである。なお、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲である。同様に、一般式Mn
1+xFe
1-xP
1-yGe
y-zSb
zの化合物も好適である。なお、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲であり、zはy未満で、0.2より小さい。式Mn
1+xFe
1-xP
1-yGe
y-zSi
zの化合物もまた好適である。なお、xは0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.66の範囲であり、zはy以下で、0.6より小さい。
【0051】
Fe
2PとFeAs
2、必要ならMnとPから得られる他のFe
2P系化合物も好適である。これらは、例えば一般式MnFe
1-xCo
xGe(式中、x=0.7−0.9)や、Mn
5-xFe
xSi
3(式中、x=0−5)、Mn
5Ge
3-xSi
x(式中、x=0.1−2)、Mn
5Ge
3-xSb
x(式中、x=0−0.3)、Mn
2-xFe
xGe
2(式中、x=0.1−0.2)、Mn
3-xCo
xGaC(式中、x=0−0.05)の化合物である。
【0052】
一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa系及びFe系化合物で好ましいものとしては、La(Fe
0.90Si
0.10)
13、La(Fe
0.89Si
0.11)
13、La(Fe
0.880Si
0.120)
13、La(Fe
0.877Si
0.123)
13、LaFe
11.8Si
1.2、La(Fe
0.88Si
0.12)
13H
0.5、La(Fe
0.88Si
0.12)
13H
1.0、LaFe
11.7Si
1.3H
1.11、LaFe
11.57Si
1.43H
1.3、La(Fe
0.88Si
0.12)H
1.5、LaFe
11.2Co
0.7Si
1.1、LaFe
11.5Al
1.5C
0.1、LaFe
11.5Al
1.5C
0.2、LaFe
11.5Al
1.6C
0.4、LaFe
11.5Al
1.5Co
0.5、La(Fe
0.94Co
0.06)
11.83Al
1.17、La(Fe
0.92Co
0.08)
11.83Al
1.17があげられる。
【0053】
好適なマンガン含有化合物としては、MnFeGe、MnFe
0.9Co
0.1Ge、MnFe
0.8Co
0.2Ge、MnFe
0.7Co
0.3Ge、MnFe
0.6Co
0.4Ge、MnFe
0.5Co
0.5Ge、MnFe
0.4Co
0.6Ge、MnFe
0.3Co
0.7Ge、MnFe
0.2Co
0.8Ge、MnFe
0.15Co
0.85Ge、MnFe
0.1Co
0.9Ge、MnCoGe、Mn
5Ge
2.5Si
0.5、Mn
5Ge
2Si、Mn
5Ge
1.5Si
1.5、Mn
5GeSi
2、Mn
5Ge
3、Mn
5Ge
2.9Sb
0.1、Mn
5Ge
2.8Sb
0.2、Mn
5Ge
2.7Sb
0.3、LaMn
1.9Fe
0.1Ge、LaMn
1.85Fe
0.15Ge、LaMn
1.8Fe
0.2Ge、(Fe
0.9Mn
0.1)
3C、(Fe
0.8Mn
0.2)
3C、(Fe
0.7Mn
0.3)
3C、Mn
3GaC、MnAs、(Mn,Fe)As、Mn
1+δAs
0.8Sb
0.2、MnAs
0.75Sb
0.25、Mn
1.1As
0.75Sb
0.25、Mn
1.5As
0.75Sb
0.25があげられる。
【0054】
本発明で好適なホイスラー合金としては、例えば、Ni
2MnGa、Fe
2MnSi
0.5Ge
0.5などのFe
2MnSi
1-xGe
x(式中、x=0−1)、Ni
52.9Mn
22.4Ga
24.7、Ni
50.9Mn
24.7Ga
24.4、Ni
55.2Mn
18.6Ga
26.2、Ni
51.6Mn
24.7Ga
23.8、Ni
52.7Mn
23.9Ga
23.4、CoMnSb、CoNb
0.2Mn
0.8Sb、CoNb
0.4Mn
0.6Sb、CoNb
0.6Mn
0.4Sb、Ni
50Mn
35Sn
15、Ni
50Mn
37Sn
13、MnFeP
0.45As
0.55、MnFeP
0.47As
0.53、MnLiFe
0.9P
0.47As
0.53、MnFeP
0.89-xSi
xGe
0.11(式中、x=0.22、x=0.26、x=0.30、x=0.33)があげられる。
【0055】
他に好適な化合物は、Fe
90Zr
10、Fe
82Mn
8Zr
10、Co
66Nb
9Cu
1Si
12B
12、Pd
40Ni
22.5Fe
17.5P
20、FeMoSiBCuNb、Gd
70Fe
30、GdNiAl、NdFe
12B
6GdMn
2である。
【0056】
ペロブスカイト型のマンガナイトは、例えば、La
0.6Ca
0.4MnO
3、La
0.67Ca
0.33MnO
3、La
0.8Ca
0.2MnO
3、La
0.7Ca
0.3MnO
3、La
0.958Li
0.025Ti
0.1Mn
0.9O
3、La
0.65Ca
0.35Ti
0.1Mn
0.9O
3、La
0.799Na
0.199MnO
2.97、La
0.88Na
0.099Mn
0.977O
3、La
0.877K
0.096Mn
0.974O
3、La
0.65Sr
0.35Mn
0.95Cn
0.05O
3、La
0.7Nd
0.1Na
0.2MnO
3、La
0.5Ca
0.3Sr
0.2MnO
3である。
【0057】
一般式(V)のGd系およびSi系化合物
Gd
5(Si
xGe
1-x)
4
式中、Xは、0.2〜1の数字である;
は、例えば、Gd
5(Si
0.5Ge
0.5)
4、Gd
5(Si
0.425Ge
0.575)
4、Gd
5(Si
0.45Ge
0.55)
4、Gd
5(Si
0.365Ge
0.635)
4、Gd
5(Si
0.3Ge
0.7)
4、Gd
5(Si
0.25Ge
0.75)
4である。
【0058】
希土類元素を含む化合物は、Tb
5(Si
4-xGe
x)(式中、x=0、1、2、3、4)またはXTiGe(式中、X=Dy、Ho、Tm)であり、例えばTb
5Si
4、Tb
5(Si
3Ge)、Tb(Si
2Ge
2),Tb
5Ge
4、DyTiGe、HoTiGe、TmTiGeである。
【0059】
一般式(VIII)と(IX)のMnとSbまたはAs系化合物は、z=0.05〜0.3、Z=Cr、Cu、Ge、As又はCoと定義されることが好ましい。
【0060】
本発明で用いられる熱磁気材料は、いずれか適当な方法で製造される。
【0061】
これらの熱磁気材料は、例えばボールミル中でこの材料用の出発元素または出発合金の固相反応を行い、続いて不活性ガス雰囲気下でのプレスし、焼成と熱処理、続いて室温へ徐冷して製造される。このようなプロセスは、例えばJ. Appl. Phys. 99, 2006, 08Q107に記載されている。
【0062】
溶融紡糸による加工も可能である。これにより、より均一な元素分布が可能となり磁熱効果の改善が可能となる。Rare Metals, Vol. 25, October 2006, pages 544 to 549を参照。この文献に記載のプロセスでは、出発元素をまずアルゴンガス雰囲気下で誘導溶融し、溶融状態でノズルから回転銅ローラー上に噴射する。次いで1000℃で焼成し、室温まで徐冷する。
【0063】
この製造についてはWO2004/068512を参照。
【0064】
これらのプロセスで得られる材料は、多くの場合、高い熱ヒステリシスを示す。例えば、ゲルマニウムまたはケイ素で置換されたFe
2P型の化合物中では、10K以上の広い範囲の大きな熱ヒステリシス値が観測される。
【0065】
したがって、
a)その金属系材料に相当する化学量の化学元素及び/又は合金を、固体及び/又は液相で反応させ、
b)適当ならこの工程a)からの反応生成物を固化させ、
c)工程a)またはb)からの固体を焼成及び/又は熱処理し、
d)工程c)からの焼成及び/又は熱処理後の固体を少なくとも100K/sの冷却速度で急冷することからなる熱磁気材料の製造方法が好ましい。
【0066】
金属系材料を焼成及び/又は熱処理後に室温まで徐冷するのでなく大きな冷却速度で急冷すると、この熱ヒステリシスを大幅に抑え、大きな磁気熱量効果を達成することができる。この冷却速度は少なくとも100K/sである。この冷却速度は好ましくは100〜10000K/sであり、より好ましくは200〜1300K/sである。特に好ましい冷却速度は300〜1000K/sである。
【0067】
急冷は、いずれか適当な冷却プロセスで、例えば固体を水または水性の液体で、より具体的には冷水または氷/水混合物で急冷して行うことができる。固体を、例えば氷冷水中に投入してもよい。これらの固体を、液体窒素などの超冷却ガスで急冷することもできる。他の急冷プロセスが当業界の熟練者には知られている。好ましいのは、制御された急冷である。
【0068】
最終工程として、焼成及び/又は熱処理した固体を本発明の冷却速度で急冷することを含むなら、熱磁気材料の他の製造工程はあまり重要ではない。上述のように、本プロセスを、磁気冷却用のいずれか適当な熱磁気材料の製造に応用してもよい。
【0069】
本プロセスの工程(a)では、製品の熱磁気材料中に存在することとなる元素及び/又は合金が、熱磁気材料に相当する化学量論で、固相または液相で変換される。
【0070】
工程a)での反応は、これら元素及び/又は合金を密閉容器または押出機中での混合加熱して、あるいはボールミル中で固相反応をさせて行うことが好ましい。特にボールミル中で行う固相反応が特に好ましい。このような反応は原則的には公知である。上記文書を参照。通常、製品の熱磁気材料中に存在する個々の元素の粉末または二種以上の元素の合金の粉末を、粉末状で適当な重量比で混合する。必要なら、微結晶混合粉末を得るために、この混合物をさらに粉砕してもよい。この混合粉末は、ボールミル中で加熱することが好ましい。これにより、さらに粉砕が可能であり、また混合が良くなって、混合粉末中で固相反応が促進される。あるいは、特定の化学量論比で個々の元素を粉末として混合し溶融してもよい。
【0071】
閉鎖容器中での混合加熱により揮発性元素の固定と化学量論の制御が可能となる。例えばリンを使用すると、開放系であってはこれが容易に気化する。
【0072】
この反応の後に、固体の焼成及び/又は熱処理が続くが、その前に一つ以上の中間工程があってもよい。例えば、工程a)で得られる固体を、焼成及び/又は熱処理の前に成型してもよい。
【0073】
あるいは、得られる固体をボールミルから溶融紡糸プロセスに送ることもできる。溶融紡糸プロセスは公知であり、例えば、Rare Metals, Vol. 25, October 2006, pages 544 to 549やWO 2004/068512に記載されている。
【0074】
これらのプロセス中では、工程a)で得られる組成物が溶融され、回転している冷金属ローラー上に噴射される。この噴射は、噴射ノズル上流の加圧または噴射ノズル下流の減圧により行われる。通常、回転銅ドラムまたはローラーが用いられ、適当ならこれらをさらに冷却してもよい。この銅ドラムの表面回転速度は10〜40m/sであることが好ましく、特に20〜30m/sであることが好ましい。この銅ドラム上で液体組成物が、好ましくは10
2〜10
7K/sの速度で、より好ましくは少なくとも10
4K/s、特に0.5〜2×10
6K/sの速度で冷却される。
【0075】
工程a)の反応と同様に、この溶融紡糸を減圧下であるいは不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
【0076】
この溶融紡糸は、続く焼成と熱処理を短縮できるため、高い加工速度が達成可能となる。より具体的には、これらの金属系材料の製造が工業スケールでより経済的に実施可能となる。噴霧乾燥もまた高い加工速度を可能とする。溶融紡糸を行うことが特に好ましい。
【0077】
あるいは工程b)で噴射冷却を実施することも可能であり、その場合工程a)からの組成物が噴射塔中に噴射される。例えばこの噴射塔をさらに冷却することができる。噴射塔中では、10
3〜10
5K/sの範囲の、特に約10
4K/sの冷却速度がしばしば達成される。
【0078】
この固体の焼成及び/又は熱処理は、工程c)で、好ましくはまず800〜1400℃の範囲の温度で焼成し、次いで500〜750℃の範囲の温度で熱処理して行われる。例えば、この焼成を500〜800℃の範囲の温度で行うこともできる。成型物/固体の焼成は、1000〜1300℃の範囲の温度で行うことが好ましく、特に1100〜1300℃の範囲の温度で行うことがより好ましい。その場合、熱処理を例えば600〜700℃で実施できる。
【0079】
焼成は、好ましくは1〜50時間行われ、より好ましくは2〜20時間、特に5〜15時間行われる。この熱処理は、好ましくは10〜100時間の範囲で行われ、より好ましくは10〜60時間、特に30〜50時間の範囲で行われる。実際の処理時間は、その材料に求められる要件に応じて調整可能である。
【0080】
溶融紡糸プロセスを採用する場合、焼成を省けることが多く、熱処理を大幅に短縮することができ、例えば5分間〜5時間へ、好ましくは10分〜1時間へ短縮することができる。従来の焼成時間の10時間と熱処理時間の50時間と較べると、このプロセスは大きな時間的な利点を有している。
【0081】
この焼成/熱処理により粒子境界で部分的な溶融が起こり、この材料がさらに緻密となる。
【0082】
従って、工程b)での溶融と急冷で、工程c)の所要時間をかなり短縮することができる。またこれで熱磁気材料の連続生産が可能となる。
【0083】
このプレスは、例えば低温プレスであっても高温プレスであってもよい。プレスの後に上述の焼成工程が続いてもよい。
【0084】
この焼成工程または焼結金属工程において、熱磁気材料の材料をまず所望形状の成型体に変換し、次いで焼成により相互に連結して所望の成型体とする。同様にこの焼成を上述のように行うことができる。
【0085】
本発明によれば、熱磁気材料の粉末をポリマーバインダーと混合し、得られる熱可塑性成形材料を成型し、バインダーを除き、得られる成型体を焼成することもできる。熱磁気材料の粉末をポリマーバインダーで被覆し、これをプレスで成型し、適当なら熱処理することもできる。
【0086】
本発明によれば、これまで熱磁気材料用バインダーとして使われているいかなる有機バインダーを使用することもできる。これらは特にオリゴマー系またはポリマー系の化合物であるが、低分子量有機化合物、例えば糖類を用いることもできる。
【0087】
この熱磁気粉末を適当な有機バインダーの一つと混合し金型に充填する。これは、例えば流し込み成型や射出成型、押出成型で行われる。このポリマーを触媒的あるいは熱的に除き、焼成してモノリス構造をもつ多孔体を形成する。
【0088】
熱磁気材料の熱押出成型または金属射出成型(MIM)も可能であり、圧延プロセスで得られる薄いシートからの製造も可能である。射出成型の場合は、金型から成型物を取り出すことができるようにモノリス中の流路が円錐形の形状となっている。シートから製造する場合は、すべての流路壁面が平行に延びていてもよい。
【0089】
これらの特定のプロセスは、得られる熱交換器床が、適当な組合せの高熱移動性と低流動抵抗性と高磁気熱量密度をもつように制御される。効率的な熱除去と効率的な熱交換を保証するためには、適正なの比率の高磁気熱量密度と十分に大きな空隙率が好ましい。即ち、本発明の成型体は高い表面/体積比率を示す。高表面積のため、多量の熱を材料から排出し熱移動媒体中に移動させることができる。流体冷媒による機械的ストレスに対処するためには、この構造物は機械的に安定である必要がある。また、流動抵抗が十分に低くし多孔性材料中での圧力損失を小さくする必要がある。この磁場の体積は、できる限り小さくすることが好ましい。
【0090】
熱交換器床またはモノリスの層が、適当な中間層で、例えば炭素製のふるいで相互に熱的に絶縁されていてもよい。これにより、その材料内での熱伝導による熱損失を防止する。適当なデザインによりこれらの中間層を熱交換媒体の均一な分布のために用いてもよい。
【0091】
本発明で得られる熱交換器床を、冷蔵庫、空調装置、熱ポンプまたは熱交換器中で使用することが、あるいは熱の直接変換による発電に使用することが好ましい。これらの材料は、−100℃〜+150℃の温度範囲で大きな磁気熱量効果を示す必要がある。
【0092】
伝熱係数がサイクル速度を制限し、このため電力密度に大きな影響をもつ。
【0093】
発電では、この熱磁気材料の周りに導電性材料からなるコイルが置かれる。このコイル内で、磁場または磁化の変化により電流が誘起され、この電流が電気的な仕事を行うのに用いられる。最大のエネルギー収率で最小の圧力損失が得られるように、コイルの構造と熱磁気材料の構造を選ぶことが好ましい。コイルの巻き密度(回/長さ)やコイル長、荷電抵抗、熱磁気材料の温度変化が、このエネルギー収率に重要な有力因子である。
【0094】
この熱磁気材料は外部磁界中に置かれる。この磁場は、永久磁石で生成したものであっても、電磁石で生成したものであってもよい。電磁石は、従来の電磁石であっても超伝導磁石であってもよい。
【0095】
この熱磁気発電器は、地熱源からの、あるいは工業プロセスの排熱、太陽エネルギーまたは太陽熱収集器からの熱エネルギーが変換できるようにデザインすることが好ましい。例えば地熱活性の高い地域では、本発明の熱磁気発電器で地熱を用いた簡単な発電が可能となる。工業プロセスではプロセス熱または排熱がしばしば発生するが、これは通常環境中に排出されて再利用されていない。排水もしばしば、流入水より高温である。冷却水についても同じである。従って、この熱磁気発電器で排熱から従来失われている電気エネルギーを回収することが可能となる。この熱磁気発電器は室温領域で作動するため、この排熱を利用して電気エネルギーに変換することができる。このエネルギー変換は、20〜150℃の範囲の温度で行うことが好ましく、40〜120℃の範囲の温度で行うことがより好ましい。
【0096】
(高密度の)太陽光発電システム中では、しばしば高温が発生し、冷却が必要となる。本発明によりこの排熱を電力に変換できる。
【0097】
発電を行うには、この熱磁気材料を交互に温かい貯槽と冷たい貯槽に接触させて加熱冷却サイクルにかける。このサイクル時間は、特定の技術的前提条件に合わせて選択される。
【0098】
以下の実施例は、本発明の用途に好適な熱磁気材料の製造とモノリスと触媒床のデザインに関するものである。
【実施例】
【0099】
[実施例1]
脱気したMnFePGeのプレス品を含む石英アンプルを1100℃で10時間維持して、この粉末を焼成した。この焼成後に650℃で60時間熱処理して均一化させた。炉中で室温までゆっくり冷却するのでなく、直ちに室温の水中で急冷した。この水中での急冷により、試料表面である程度の酸化が起こった。表面の酸化層を希酸で溶解除去した。XRDパターンから、すべての試料がFe
2P型構造で結晶化していることがわかった。
【0100】
以下の組成物が得られた:
Mn
1.1Fe
0.9P
0.81Ge
0.19、Mn
1.1Fe
0.9P
0.78Ge
0.22、Mn
1.1Fe
0.9P
0.75Ge
0.25、Mn
1.2Fe
0.8P
0.81Ge
0.19。これらの試料の熱ヒステリシスの測定値は、この順序でそれぞれ7K、5K、2K、3Kであった。徐冷した試料の熱ヒステリシスは10Kを超え、これに較べると、熱ヒステリシスが大幅に減少した。
【0101】
この熱ヒステリシスは、0.5テスラの磁場中で測定した。
【0102】
Mn/Fe比と濃度を変えることでキュリー温度を制御可能であり、また熱ヒステリシスの値も制御可能である。
【0103】
マックスウェル式を用いて直流磁化から計算された、最大磁場変化が0〜2テスラでの磁気エントロピーの変化は、初めの3つの試料でそれぞれ、14J/kgK、20J/kgK、12.7J/kgKであった。
【0104】
Mn/Fe比が増加するとキュリー温度と熱ヒステリシスが減少する。そのため、上記MnFePGe化合物は、低磁場で比較的に大きなMCE値を示す。これら材料の熱ヒステリシスは非常に小さい。
【0105】
[実施例2]
MnFeP(GeSb)の溶融紡糸
WO2004/068512とJ. Appl. Phys. 99,08 Q107 (2006)に記載のようにして、ボールミル中で高エネルギー下での固相反応法で多結晶性MnFePC(Ge,Sb)合金を製造した。これらの材料を、次いでノズルを備えた石英チューブに入れた。内部を10
-2mbarの真空とし、高純度アルゴンガスで満たした。高周波加熱で試料を溶融し、回転銅ドラムを含んでいる槽中に、差圧でノズルから噴出させた。この銅ホイールの表面速度は制御可能であり、約10
5K/sの冷却速度を得ることができた。次いで、得られたリボンを900℃で1時間熱処理した。
【0106】
X線回折から、すべての試料が六方晶型Fe
2P構造パターンで結晶化していることがわかった。溶融紡糸法で製造されなかった試料とは対照的に、小さなMnO汚染相が観測されなかった。
【0107】
この溶融紡糸において異なる回転速度で、キュリー温度とヒステリシスとエントロピーの値を測定した。その結果を以下の表1と2に示す。いずれの場合も、低いヒステリシス温度が測定された。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
[実施例3]
積層状の磁気熱量材料からなる充填床または構造床と磁石と熱移動流体とからなる簡単な磁気熱量発電器を評価し、次の結果を得た:
【0111】
【表3】
【0112】
径が0.3mmの球とモノリスが、良い熱移動性能を与え、低圧力損失である(特にモノリス中で)ことが明らかである。
【0113】
2.異なる周波数での運転(他のすべての運転条件は同一):
以下の表には、異なる運転周波数での正味電力(冷却電力−熱移動流体を動かすのに必要な電力)をまとめて示す。
【0114】
【表4】