(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185655
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】バッテリー予熱システム及びそれを用いたバッテリー予熱方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20170814BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20170814BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20170814BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B60R16/033 Z
H02J7/00 302A
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-512817(P2016-512817)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-520475(P2016-520475A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】KR2014003603
(87)【国際公開番号】WO2014181983
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0052096
(32)【優先日】2013年5月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン−ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ジェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン−ホ・アン
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−283678(JP,A)
【文献】
特開2006−073364(JP,A)
【文献】
特開2006−210244(JP,A)
【文献】
特開2008−117565(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/014392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアを開放するためのドア開放信号を受信する開放信号受信部と、
車両のスタータに接続されたバッテリーパックの温度を測定する温度測定部と、
前記バッテリーパックを構成する複数のバッテリーモジュールそれぞれの充電状態を測定するバッテリー状態測定部と、
前記開放信号受信部によってドア開放信号が受信された場合、前記温度測定部によって測定された温度に関する情報を参照して強制放電開始信号を出力し、前記複数のバッテリーモジュールそれぞれの充電状態を参照してバランシング開始信号を出力する制御部と、
前記強制放電開始信号に従って前記複数のバッテリーモジュールのうち一部バッテリーモジュールを強制放電させる強制放電回路部と、
前記バランシング開始信号に従って前記バッテリーモジュールそれぞれの充電量をバランシングするバランシング部と
を含み、
前記バランシング部は、強制放電した前記一部バッテリーモジュールを除いた他のバッテリーモジュールを強制放電させて充電量をバランシングすることを特徴とするバッテリー予熱システム。
【請求項2】
前記制御部は、測定された前記バッテリーパックの温度が第1基準温度より低い場合に、前記強制放電開始信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記強制放電によって前記バッテリーパックの温度が第2基準温度に到達した場合、または、放電量が設定された基準放電量に到達した場合に、強制放電終了信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項4】
前記強制放電回路部は、前記バッテリーモジュールのうち一部の両端間に接続され、前記強制放電開始信号及び前記強制放電終了信号に従ってスイッチオン/オフ動作を行う強制放電スイッチを含むことを特徴とする請求項3に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項5】
前記強制放電回路部は、前記強制放電開始信号に従って前記複数のバッテリーモジュールのうち一部を同時に又は設定された順に強制放電させることを特徴とする請求項1に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項6】
前記バッテリー状態測定部は、前記バッテリーモジュールの電圧を測定する電圧センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項7】
前記バッテリー状態測定部は、前記電圧センサによってセンシングされた電圧値を含む情報を用いてバッテリーモジュールのSOCを算出するSOC算出部をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記電圧センサによってセンシングされた電圧値を含む情報を用いてバッテリーモジュールのSOCを算出することを特徴とする請求項6に記載のバッテリー予熱システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のバッテリー予熱システムと、
前記バッテリー予熱システムに接続されたバッテリーパックと
を含む自動車用電力供給システム。
【請求項10】
請求項9に記載の自動車用電力供給システムと、
前記バッテリーパックから始動に必要な電力の供給を受けるスタータと
を含む自動車。
【請求項11】
自動車のドアを開放するためのドア開放信号の受信如何を判断する段階と、
バッテリーパックの温度と設定された第1基準温度とを比較する段階と、
前記ドア開放信号が受信され、前記バッテリーパックの温度が第1基準温度より低い場合、強制放電開始信号を出力する段階と、
前記強制放電開始信号の出力によって前記バッテリーパックを構成する複数のバッテリーモジュールのうち一部バッテリーモジュールが放電し、バッテリーモジュール間の充電状態が不均一になった場合、バランシング開始信号を出力する段階と、
前記バランシング開始信号に従って、強制放電した前記一部バッテリーモジュールを除いた他のバッテリーモジュールを強制放電させて充電量をバランシングする段階と
を含むバッテリー予熱方法。
【請求項12】
前記強制放電開始信号の出力によって前記バッテリーパックの温度が第2基準温度に到達した場合、または、前記バッテリーパックを構成するバッテリーモジュールの放電量が設定された基準放電量に到達した場合、強制放電終了信号を出力する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のバッテリー予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー予熱システム及びそれを用いたバッテリー予熱方法に関し、具体的には、バッテリーの放電による発熱を用いたバッテリー予熱システム及びそれを用いたバッテリー予熱方法に関する。
【0002】
本出願は、2013年5月8日出願の韓国特許出願第2013−0052096号に基づく優先権を主張するものであり、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車産業においては燃費の向上とCO
2排出の低減が重大な課題として残っており、自動車業界は従来の鉛蓄電池と比べて高出力を出すことができ且つ充電効率も一層優れたリチウムイオン二次電池を用いることで燃費を高めようと持続的に努力している。
しかし、このようなリチウムイオン二次電池は、気温が一定水準以下に落ちれば出力特性が急激に悪化するという短所があり、このようなリチウムイオン二次電池の短所は、自動車の低温始動性改善のために克服すべき課題として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来の自動車用電力供給システムを大きく変更することなく、バッテリー自体の発熱を用いて自動車の低温始動性を大幅に改善させることを目的とする。
ただし、本発明がなそうとする技術的課題は上述した課題に限定されるものではなく、上述されていない他の技術的課題は下記する発明の説明から当業者であれば明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムは、自動車のドアを開放するためのドア開放信号を受信する開放信号受信部と、車両のスタータに接続されたバッテリーパックの温度を測定する温度測定部と、前記開放信号受信部によってドア開放信号が受信された場合、前記温度測定部によって測定された温度に関する情報を参照して強制放電開始信号を出力する制御部と、前記強制放電開始信号に従って前記バッテリーパックを構成する複数のバッテリーモジュールを強制放電させる強制放電回路部とを含む。
【0006】
前記制御部は、測定された前記バッテリーパックの温度が第1基準温度より低い場合に、前記強制放電開始信号を出力することができる。
前記制御部は、前記強制放電によって前記バッテリーパックの温度が第2基準温度に到達した場合、または、放電量が設定された基準放電量に到達した場合に、強制放電終了信号を出力することができる。
前記強制放電回路部は、前記バッテリーモジュールの両端間に接続され、前記強制放電開始信号及び前記強制放電終了信号に従ってスイッチオン/オフ動作を行う強制放電スイッチを含むことができる。
前記強制放電回路部は、前記強制放電開始信号に従って前記複数のバッテリーモジュールを同時に又は設定された順に強制放電させることができる。
【0007】
また、上記の課題を達成するために、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システムは、自動車のドアを開放するためのドア開放信号を受信する開放信号受信部と、車両のスタータに接続されたバッテリーパックの温度を測定する温度測定部と、前記バッテリーパックを構成する複数のバッテリーモジュールそれぞれの充電状態を測定するバッテリー状態測定部と、前記開放信号受信部によってドア開放信号が受信された場合、前記温度測定部によって測定された温度に関する情報を参照して強制放電開始信号を出力し、前記複数のバッテリーモジュールそれぞれの充電状態を参照してバランシング開始信号を出力する制御部と、前記強制放電開始信号に従って前記複数のバッテリーモジュールのうち一部バッテリーモジュールを強制放電させる強制放電回路部と、前記バランシング開始信号に従って前記バッテリーモジュールそれぞれの充電量をバランシングするバランシング部とを含む。
【0008】
前記制御部は、測定された前記バッテリーパックの温度が第1基準温度より低い場合に、前記強制放電開始信号を出力することができる。
前記制御部は、前記強制放電によって前記バッテリーパックの温度が第2基準温度に到達した場合、または、放電量が設定された基準放電量に到達した場合に、強制放電終了信号を出力することができる。
前記強制放電回路部は、前記バッテリーモジュールのうち一部の両端間に接続され、前記強制放電開始信号及び前記強制放電終了信号に従ってスイッチオン/オフ動作を行う強制放電スイッチを含むことができる。
前記強制放電回路部は、前記強制放電開始信号に従って前記複数のバッテリーモジュールのうち一部を同時に又は設定された順に強制放電させることができる。
【0009】
前記バッテリー状態測定部は、前記バッテリーモジュールの電圧を測定する電圧センサを含むことができる。
前記バッテリー状態測定部は、前記電圧センサによってセンシングされた電圧値を含む情報を用いてバッテリーモジュールのSOCを算出するSOC算出部をさらに含むことができる。
前記制御部は、前記電圧センサによってセンシングされた電圧値を含む情報を用いてバッテリーモジュールのSOCを算出することができる。
前記バランシング部は、強制放電した前記一部バッテリーモジュールを除いた他のバッテリーモジュールを強制放電させて充電量をバランシングすることができる。
【0010】
一方、上記の課題を達成するために、本発明による自動車用電力供給システムは、前記バッテリー予熱システムと、前記バッテリー予熱システムに接続されたバッテリーパックとを含む。
また、上記の課題を達成するために、本発明による自動車は、前記自動車用電力供給システムと、前記バッテリーパックから始動に必要な電力の供給を受けるスタータとを含む。
【0011】
上述した技術的課題は、本発明によるバッテリー予熱方法によっても解決することができる。このような本発明によるバッテリー予熱方法は、自動車のドアを開放するためのドア開放信号の受信如何を判断する段階と、バッテリーパックの温度と設定された第1基準温度とを比較する段階と、前記ドア開放信号が受信され、前記バッテリーパックの温度が第1基準温度より低い場合、強制放電開始信号を出力する段階とを含む。
【0012】
前記バッテリー予熱方法は、前記強制放電開始信号の出力によって前記バッテリーパックの温度が第2基準温度に到達した場合、または、前記バッテリーパックを構成するバッテリーモジュールの放電量が設定された基準放電量に到達した場合、強制放電終了信号を出力する段階をさらに含むことができる。
前記バッテリー予熱方法は、前記強制放電開始信号の出力によって前記バッテリーパックを構成する複数のバッテリーモジュールのうち一部バッテリーモジュールが放電し、バッテリーモジュール間の充電状態が不均一になった場合、バランシング開始信号を出力する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、従来の自動車用電力供給システムを大きく変更することなく、バッテリーパック自体の発熱を用いて自動車の低温始動性を大幅に改善させることができる。
本発明の別の態様によれば、自動車のユーザがバッテリーパックに対する予熱時点を選択できるため、バッテリーパックを不要に消耗することなく効率的に予熱することができる。
【0014】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするためのものであるので、本発明は、図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムを示したブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに接続されるバッテリーパックを示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに採用された強制放電回路部を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに採用されたバッテリーパック及び強制放電回路部が結合された形態を示した図である。
【
図5】本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システムを示したブロック図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システムに採用されたバッテリーパック及び強制放電回路部が結合された形態を示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないので、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0017】
図1ないし
図4を参照して本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システム10を説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムを示したブロック図であり、
図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに接続されるバッテリーパックを示した図である。また、
図3は、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに採用された強制放電回路部を示した図であり、
図4は、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システムに採用されたバッテリーパック及び強制放電回路部が結合された形態を示した図である。
【0018】
まず、
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システム10は、開放信号受信部11、温度測定部12、制御部13、及び強制放電回路部14を含む。
前記開放信号受信部11は、自動車のドアを開放するためのドア開放信号を受信する受信モジュールに該当する。
前記ドア開放信号は、例えば自動車のユーザが持っているリモコンのドア開放ボタンを押すことで送出されるか又は自動車のドアハンドルなどに設けられたドア開放ボタンを押すことで送出され得る。ただし、ドア開放信号の送出方式が自動車に適用されたドア開閉方式に従って変わり得ることは自明である。
【0019】
一方、前記ドア開放信号は、自動車ドアを開放させる最終的な信号のみを意味することではなく、ユーザが自動車に乗る前に行われる自動車の動作に係わる多様な信号を意味すると理解されねばならない。例えば、ユーザが自動車に近づくとき、自動車のヘッドライトやドアミラーなどが動作するウェルカム機能の開始信号などのようにドア開放以前の予備信号も本発明のドア開放信号に含まれ得る。
前記開放信号受信部11は、このようなドア開放信号が送出されれば、それを受信して制御部13に伝達し、そのとき制御部13はバッテリーパックPの温度を参照してバッテリーの予熱進行如何を決定するようになる。
【0020】
前記温度測定部12は、自動車のスタータSに接続されたバッテリーパックPの温度を測定するものであり、バッテリーパックPの特定位置に取り付けられて温度をセンシングする。このような温度センシングは、温度が一定温度未満(例えば、0℃未満)に落ちれば出力特性が悪化するリチウムイオン二次電池からなるバッテリーパックPの温度をモニタリングし、バッテリーパックPに対する予熱開始時点を決定するために行われるものである。
一方、前記バッテリーパックPは、例えば並列に接続された複数のリチウムイオン二次電池セル(図示せず)からなるバッテリーモジュールM(
図2参照)が直列で複数個接続されて具現されるものであり得る。
【0021】
前記温度測定部12によってセンシングされた温度に関する情報は、制御部13に伝達されてバッテリーパックPの充電状態、すなわちSOCを算出するための資料として活用されるだけでなく、強制放電回路部14の動作如何を決定するための資料としても活用され得る。
前記制御部13は、開放信号受信部11を通じてドア開放信号が受信されれば、バッテリーパックPの温度に関する情報を参照して強制放電開始信号を出力することでバッテリーパックPを予熱させる。
具体的には、前記制御部13は、温度測定部12を通じて測定されたバッテリーパックPの温度が設定された第1基準温度より低い場合バッテリーパックPが予熱されるように、強制放電開始信号を出力する。
このような強制放電開始信号は、それぞれのバッテリーモジュールMの放電を通じてバッテリーパックPの発熱を誘導することで、バッテリーパックPを予熱させるものである。
【0022】
また、前記制御部13は、バッテリーパックPの予熱が一定時間行われれば、強制放電終了信号を出力することでバッテリーパックPに対する強制放電を終了させるが、このような強制放電終了信号の出力時点、すなわちバッテリー予熱の完了時点は多様な方式で決定することができる。
例えば、前記制御部13は、強制放電が行われることでバッテリーパックPの温度が上昇し、設定された第2基準温度(第1基準温度より高い値で設定される)に到達した場合に、強制放電終了信号を出力するように設定され得る。また別の例として、前記制御部13は、バッテリーモジュールMの放電量が設定された基準放電量に到達した場合に、強制放電終了信号を出力するように設定され得る。
【0023】
一方、前記放電量は、多様な方式で測定できるが、一例としてアンペアカウンティング(Ampere counting)によって測定することができる。このようなアンペアカウンティング方式で放電量を算出する場合、強制放電回路部14には、放電電流をセンシングするための電流センサ(図示せず)を設けることができる。この場合、制御部13は、電流センサによってセンシングされた放電電流値に関する情報を収集して一定区間に対して積分することで放電量を算出することができる。
【0024】
図3及び
図4を参照すれば、前記強制放電回路部14は、それぞれのバッテリーモジュールMに接続されたものであり、バッテリーモジュールMの両端間に接続される強制放電スイッチ14aを含む。また、前記強制放電回路部14は、強制放電時に放電回路上に過電流が流れないように放電抵抗14bをさらに含むこともできる。
前記強制放電スイッチ14aは、制御部13から出力された強制放電開始信号に従ってスイッチオン動作を行うことでバッテリーモジュールMを放電させ、強制放電終了信号に従ってスイッチオフ動作を行うことで強制放電を中断させる。
一方、前記強制放電は、複数のバッテリーモジュールMそれぞれに対して同時に行われることもでき、予め設定された順に行われることもできる。すなわち、全てのバッテリーモジュールMに対して同量で放電が起きる場合であれば、放電の進行順序とは関係なくバッテリーパックPの予熱が可能である。
【0025】
上述したように、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システム10は、バッテリーパックPの温度が一定水準未満に落ちて自動車の始動性を確保し難い場合、バッテリーパックPを予熱することができる。したがって、このようなバッテリー予熱システム10とバッテリーパックPとが結合されて具現される自動車用電力供給システムは、バッテリーパックP自体の発熱を用いて行われる予熱を通じて自動車のスタータSに十分な電力を供給できるようになり、それにより自動車は優れた低温始動性を確保することができる。
【0026】
さらに、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システム10は、このような予熱の進行時点を自動車ユーザに選択させることで、効率的に予熱することができる。すなわち、前記バッテリーパックPが常時予熱動作を行うように設定された場合はSOCの低下による問題が生じ得るが、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱システム10の構成によれば、ユーザが車両に乗るためドアを開放する瞬間から予熱が始まるため、不要な電力消耗なく効率的に予熱することができる。
【0027】
以下、
図5及び
図6を参照して本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システム20を説明する。
図5は、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システムを示したブロック図であり、
図6は、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システムに採用されたバッテリーパック及び強制放電回路部が結合された形態を示した図である。
【0028】
図5及び
図6を参照すれば、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システム20は、上述した実施形態によるバッテリー予熱システム10と比べて、制御部13の機能及び強制放電回路部14とバッテリーパックPとの間の接続構造が異なり、バッテリー状態測定部15及びバランシング部16をさらに備える点が異なる。
したがって、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システム20の説明では、上述した実施形態と異なる事項のみを説明し、上述した実施形態と重なる説明は省略する。
【0029】
図6を参照すれば、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システム20において、前記強制放電回路部14は、バッテリーパックPを構成する複数のバッテリーモジュールMのうち一部のみに接続される。本発明の図面では、前記強制放電回路部14が1つのバッテリーモジュールMに接続された場合のみを示しているが、本発明がこれに限定されることはない。
【0030】
前記強制放電回路部14に接続されたバッテリーモジュールMは、制御部13の強制放電開始信号及び強制放電終了信号によって一定量放電するが、他のバッテリーモジュールMは放電しないため、バッテリーモジュールM間の充電状態に差が生じるようになる。
前記制御部13は、このような充電状態の差が増加して設定された第1基準量に到達すれば、バランシング開始信号を出力し、バランシング部16はバランシング開始信号に従ってバッテリーモジュールM間の充電状態を均一にするバランシング動作を行う。このようなバランシング動作は、強制放電回路部14に接続されて既に一定量放電したバッテリーモジュールMを除いた他のバッテリーモジュールMの放電を通じて行われる。すなわち、前記バランシング部16は、上述した強制放電回路部14と類似の構成を有する放電回路であり得る。
また、前記制御部13は、バランシングの進行によってバッテリーモジュールM間の充電量の差が設定された第2基準量に到達すれば、バランシング終了信号を出力し、バランシング部16はバランシング終了信号に従ってバランシング動作を中断する。
【0031】
前記バッテリーモジュールM間の充電量の差は、バッテリー状態測定部15を通じて収集された充電状態に関する情報を用いて算出することができる。すなわち、前記バッテリー状態測定部15は、バッテリーモジュールMそれぞれの充電状態を測定するものとして、バッテリーモジュールMそれぞれの電圧を測定する電圧センサ(図示せず)を含むことができる。
前記電圧センサを通じて測定された各バッテリーモジュールM両端間の電圧値に関する情報は、制御部13に伝達されてバッテリーモジュールMのSOCを算出するための資料として活用することができる。また、前記バッテリー状態測定部15がSOC算出部(図示せず)をさらに含むことで、電圧センサを通じて測定された電圧値に関する情報を用いてバッテリーモジュールMのSOCを直接算出することもできる。また、このようなSOCの算出時により正確な値を得るために、温度測定部12を通じて測定されたバッテリーパックPの温度に関する情報をさらに活用することもできる。
【0032】
上述したように、本発明の別の実施形態によるバッテリー予熱システム20は、バッテリーパックPに対する予熱条件が満たされる場合、一部バッテリーモジュールMに対する強制放電を優先的に行い、続いてバッテリーパックPに対するバランシングを行うことで、バッテリーパックPを全体的に予熱することができる。
【0033】
次いで、
図7を参照して本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法を説明する。
図7は、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法を示したフロー図である。
図7を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法は、開放信号の受信如何を判断する段階、温度を比較する段階、及び強制放電開始信号を出力する段階を含む。
前記開放信号の受信如何を判断する段階は、開放信号受信部11を通じて自動車のドアを開放するためのドア開放信号が受信されたのか否かを判断する段階である。
前記温度を比較する段階は、温度測定部12を通じて測定されたバッテリーパックPの温度を設定された第1基準温度と比べる段階である。
前記強制放電開始信号を出力する段階は、開放信号受信部11を通じてドア開放信号が受信され、測定されたバッテリーパックPの温度が設定された第1基準温度より低いと判断される場合、バッテリーモジュールMに対する強制放電を促す信号を出力する段階である。
【0034】
一方、本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法は、強制放電終了信号を出力する段階及びバランシング開始信号を出力する段階をさらに含むことができる。
前記強制放電終了信号を出力する段階は、強制放電開始信号の出力によってバッテリーパックPの温度が上昇し第2基準温度に到達した場合、または、バッテリーモジュールMの放電量が設定された基準放電量に到達した場合、予熱が完了したと判断して放電を終了させる信号を出力する段階である。
前記バランシング開始信号を出力する段階は、強制放電開始信号の出力によって複数のバッテリーモジュールMのうち一部のバッテリーモジュールMのみが放電し、複数のバッテリーモジュールM間に一定以上の充電状態の差が生じた場合、バランシングを行うための信号を出力する段階である。
【0035】
上述した本発明の一実施形態によるバッテリー予熱方法は、上述したように、一定条件下でバッテリーモジュールMに対する放電を誘発することでバッテリーパックPを予熱し、それにより自動車に優れた低温始動性をもたせることができる。
【0036】
一方、本発明の説明において、
図1に示された各構成要素は、物理的に区分される構成要素ではなく、論理的に区分される構成要素として理解されねばならない。
すなわち、本発明のそれぞれの構成要素は、本発明の技術思想を実現するための論理的な構成要素に該当するため、それぞれの構成要素が統合または分離しても本発明の論理構成による機能が実現できれば、本発明の範囲内であると解釈されねばならない。また、同一または類似の機能を果たす構成要素であれば、その名称の一致如何とは関係なく、本発明の範囲内であると解釈されねばならない。
【0037】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
10,20 バッテリー予熱システム
11 開放信号受信部
12 温度測定部
13 制御部
14 強制放電回路部
14a 強制放電スイッチ
14b 放電抵抗
15 バッテリー状態測定部
16 バランシング部
M バッテリーモジュール
P バッテリーパック
S スタータ