特許第6185658号(P6185658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185658電子式遮断要素、特に接触器の劣化を決定するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185658
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】電子式遮断要素、特に接触器の劣化を決定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/05 20060101AFI20170814BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20170814BHJP
   G01R 31/327 20060101ALI20170814BHJP
   G01R 31/333 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02H3/05 B
   H01H9/54 C
   G01R31/32 E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-516974(P2016-516974)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公表番号】特表2016-535564(P2016-535564A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014069124
(87)【国際公開番号】WO2015043941
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】102013219243.6
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ザルツィガー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ガランブ、ゲルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】アンジツェック、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】プロープスト、デュラン
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−178438(JP,A)
【文献】 実開平05−011277(JP,U)
【文献】 特開2010−166644(JP,A)
【文献】 特開2012−063246(JP,A)
【文献】 特開昭54−159669(JP,A)
【文献】 特開2012−59632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/00
31/24−31/25
31/327−31/34
H01H9/54−9/56
47/00−47/36
H02H1/00−3/07
99/00
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素(6)の劣化を決定する方法であって、以下の工程、即ち、
a)劣化カウンタNwearを開始する工程と、
b)前記電気回路の放時に前記電子式遮断要素(6)を通って流れていた電流の値Iを決定する工程と、
c)前記電流の前記値Iから、電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する工程と、
d)電流に依存する前記劣化値Nwear(I)を利用して前記劣化カウンタNwearを更新する工程と、
e)前記電気回路の閉鎖時に前記電子式遮断要素(6)で存在する電圧差の値ΔUを決定する工程と、
f)前記電圧差の前記値ΔUから、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する工程と、
g)電圧に依存する前記劣化値Nwear(ΔU)を利用して前記劣化カウンタNwearを更新する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記電子式遮断要素(6)について、当該電子式遮断要素(6)の開放及び/又は閉鎖の寿命の回数を示す基準数Nmechが分かっており、前記電子式遮断要素(6)の、電に依存する開放及び/又は閉鎖の寿命の回数を示す数Nbreak(I)で、前記基準数Nmechを除算することにより、前記電流に依存する劣化値Nwear(I)が定められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子式遮断要素(6)について、当該電子式遮断要素(6)の開放及び/又は閉鎖の寿命の回数を示す基準数Nmechが分かっており、前記電子式遮断要素(6)の、電圧に依存する開放及び/又は閉鎖の寿命の回数を示す数Nmake(ΔU)で、前記基準数Nmechを除算することにより、前記電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)が決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子式遮断要素(6)の寿命限界値が定められることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記劣化カウンタNwearが、前記電子式遮断要素(6)の前記寿命限界値に達し又は当該寿命限界値を超えた瞬間に、アクションが開始されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電子式遮断要素(6)は、接触器であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電子式遮断要素(6)は、電気自動車又はハイブリッド自動車のバッテリのための接触器であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータプログラムが、プログラム可能なコンピュータ装置で実行される場合に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
電気回路を開放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素(6)の劣化を決定する装置であって、前記電気回路の開放時に前記電子式遮断要素(6)を通って流れていた電流の値Iを定める装置(3)を備え、
前記電気回路の開放時に前記電子式遮断要素(6)を通って流れる前記電流の前記値Iから電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する装置(8)と、
定められた前記電流に依存する劣化値Nwear(I)を積算する装置と、
前記電気回路の閉鎖時に前記電子式遮断要素(6)で存在する電圧差の値ΔUを決定する装置と、
前記電圧差の前記値ΔUから電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する装置と、を有する、装置。
【請求項10】
前記装置は、電圧源(15)の電圧を定める装置(16)を備え、
前記装置(8)は、前記電圧源(15)での電圧と、前記電圧源(15)の内部抵抗と、から、前記電気回路の開放時に前記電子式遮断要素(6)を通って流れる前記電流の前記値Iを定めるよう構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電子式遮断要素(6)の劣化を決定するための及び/又は請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成された装置を備えた、バッテリ管理システム(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を解放及び遮断するよう構成された電子式遮断要素の劣化を決定するための方法及び装置に関する。
【0002】
さらに、本発明の主題は、特に本方法を実行するよう構成されたコンピュータプログラム及びバッテリ管理システムである。
【背景技術】
【0003】
独国特許第102008018709号明細書は、電磁接触器の開閉周期の回数を保存し呼び出す方法を示している。ここでは、開閉周期の総数が読み出され、判定ユニットによって、開閉周期の総数が装置固有のパラメータ又は仮引数よりも大きいかが検査される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に基づいて、電気回路を解放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素の劣化を決定する方法であって、以下の工程、即ち、
a)劣化カウンタNwearを開始する工程と、
b)電気回路の解放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを決定する工程と、
c)電流の値Iから、電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する工程と、
d)電流に依存する劣化値Nwear(I)を利用して劣化カウンタNwearを更新する工程と、
を含む、上記方法が構想される。
【0005】
開閉周期を単純に数えるだけでは、遮断器、リレー、又は接触器のような電子式遮断要素の実際の劣化を表すことは出来ない。本発明では、開閉周期の回数が単純にカウントされるのではなく、電子式遮断要素の劣化が、作動過程によって厳密に再現される(nachbilden)。従って、上記工程b)〜d)は、好適に電子式遮断要素によって電気回路が解放されるごとに実行される。
【0006】
本方法は、特に、電流が電子式遮断要素の開放時に通常流れる電気回路内で使用される電子式遮断要素に特に適している。電子式遮断要素が解放されている間に電流が流れる場合には、機械的負荷のみが掛かるよりも強い負荷が接点に掛かり、これにより、電子式遮断要素の故障が早い時期に起こったり、安全面での重大な問題が生じたりする可能性があることが、本発明に基づいて認識された。電子式遮断器の劣化については、接点を経由する電流に決定的に原因があり、従って第一に、電子式遮断要素の開放時の電流に原因がある。電子式遮断要素の劣化が進めば進むほど、電子式遮断要素が部分的又は完全に故障する確率が高くなる。電子式遮断要素の故障は、例えば接点同士が癒着するという具合に、即ち、電子式遮断要素が接点を解放すべきであるにもかかわらず、開放時に閉じられたままであるという具合に起こりうる。本発明の措置によって、有利に、電子式遮断要素が電気回路をいつでも解放出来ることが実現され、これにより危険な状況が回避される。
【0007】
劣化カウンタNwearの更新とは、当該劣化カウンタNwearの値を最新の状態にすること(Update)と称してもよい。一実施形態によれば、解放ごとに、定められた劣化値Nwear(I)が劣化カウンタNwearに加算される。従って、劣化カウンタNwearは、遮断要素の消耗についての一種の積立口座(Beitragskonto)のようなものである。劣化カウンタNwearに単純に劣化値Nwear(I)を加算する代わりに、時間成分も考慮することが可能であり、例えば、時間の経過につれて、劣化値Nwear(I)が、開始時よりも大きく重み付けされることが構想されてもよい。その際に、時間成分を考慮する際の関数関係は、階段関数に順じてもよいが、線形関数的、多項式関数的、又は指数関数的であってもよい。
【0008】
本方法は主に、例えばバッテリパックのような第1の部品が接触器によって駆動部、補助発電機、充電プラグ等の他の部品と接続されているハイブリッド自動車又は電気自動車で適用される。上記他の部品は、単相若しくは多相の交流電圧又はパルス状の直流電圧をバッテリ電圧から生成する装置を介して電力供給される。電気回路を解放するということは、電子部品を互いに分離するということを意味している。本発明の措置によって有利に、電子式遮断要素が上記部品をいつでも確実に互いに分離出来ることが実現され、これにより危険な状況が回避される。本方法によって、停止時に遮断要素に作用する様々な電流の実際の負荷が考慮される。
【0009】
従属請求項に記載される措置によって、有利に、独立請求項に示された方法の有利な発展形態及び改善策が可能である。
【0010】
幾つかの実施形態によれば、電子式遮断要素について、当該電子式遮断要素の開放及び/又は閉鎖の回数を示す基準数Nmechが分かっている。この基準数Nmechは、電子式遮断要素の製造行者によって提供可能であり、電子式遮断要素の寿命を示している。基準数Nmechは、例えば、電子式遮断要素のデータシートから知ることが出来る。電気回路内での定義された電流について確実に可能な解放の回数を示す数Nbreak(I)で、基準数Nwearを除算することにより、電流に依存する劣化値Nwear(I)が決定される場合には、特に有利である。Nbreak(I)の値は、例えば、計算可能な関数従属性の形態により又は表形式で存在してもよく、その際に、以下の表1には、表形式による一例が示されている。本例では、Nmechは1.000.000である。
【0011】
【表1】
【0012】
上記の表には、例えば、7つの電流範囲が示されており、即ち、0Aでの所謂無電流での開放についての第1の範囲と、0〜15Aの電流での開放についての第2の範囲と、15〜150Aの電流での開放についての第3の範囲と、150〜300Aの電流での開放のための第4の範囲と、300〜500Aの電流での開放についての第5の範囲と、500〜1000Aの電流での開放についての第6の範囲と、1000〜1600Aの電流での開放についての第7の範囲と、が示されている。この表では、定義された電流範囲ごとに確実に可能な解放の回数を示す数Nbreak(I)と、ここでは基準数Nmechを数Nbreak(I)で除算することにより決定される、電流に依存する劣化値Nwear(I)と、が示されている。Nmechは、本例では、1.000.000回の開放に設定されている。7つの範囲の代わりに同様に良好に、より少なく又はより多い範囲が設けられること、及び、当該範囲の数及び限界値は、製造業者による実地試験の結果、製造業者による計算の結果、及び/又は、製造業者による表示であってもよいことは明らかである。
【0013】
好適な実施形態において、本方法は、以下の更なる工程、即ち、
e)電気回路の閉鎖時に電子式遮断要素で存在する電圧差の値ΔUを決定する工程と、
f)電圧差の値ΔUから、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する工程と、
g)電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を利用して劣化カウンタNwearを更新する工程と、
を有する。
【0014】
本方法は、電子式遮断要素の閉鎖時に当該電子式遮断要素で電圧差が存在する電流回路内で使用される電子式遮断要素に特に適している。上記の工程e)〜g)は、好適に、電子回路が閉鎖されるごとに実行される。
【0015】
電圧が掛かった状態で電気回路が閉鎖された際に電子式遮断要素の劣化を強める物理的過程は、閉鎖時の所謂接点跳動である。接点躍動の場合、接点は直ぐには閉鎖されず、材料の弾性によって、閉鎖後に接点が短時間で再び跳ね返り、その際に、電流が流れた状態で解放が起こる。劣化については、接触器の開放時に克服すべき、接点を経由する電流に決定的に原因があることが予期されるが、第2の要因も、即ち、接点の閉鎖時の電流の流れも、電子式遮断要素の劣化についてより厳密に述べる可能性を生むことが予期される。本発明の措置によって、電子式遮断要素の劣化を決定する際の遮断要素の閉鎖の影響を考慮に入れることが可能である。
【0016】
主要な適用ケースは、コンデンサを介して事前充電される電気回路である。電子式遮断要素の接続時に電圧差が存在する場合には、コンデンサの容量に基づき電子式遮断要素の閉鎖後に補正電流が流れ、この補正電流は、電子式遮断要素の内部抵抗の、克服すべき電圧差から決定されることが認識された。電子式遮断要素の接続時の補正電流によって、機械的負荷のみが掛かるよりも強い負荷が電子式遮断要素の接点に掛かり、電子式遮断要素の故障が早期に引き起こされる可能性がある。
【0017】
好適な実施形態によれば、電子式中断要素について、当該電子式中断要素の開放及び/又は閉鎖の回数を示す基準数Nmechが分かっている。基準数Nmechは、製造業者側による電子式遮断要素の寿命を示し、例えば、遮断器、リレー、又は接触器等の電子式遮断要素のデータシートから知ることが出来る。電子式中断要素の開放及び/又は閉鎖の、電圧に依存する回数を示す数Nmake(ΔU)で、基準数Nmechを除算することにより、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)が決定される場合には、特に有利である。Nmake(ΔU)の値は、例えば、計算可能な関数従属性の形態により又は表形式で存在してもよく、その際に、表2には、表形式による一例が示されている。本例でも、Nmechは1.000.000である。
【0018】
【表2】
【0019】
閉鎖時の克服すべき電圧について、ここでは例示的に5つの範囲が示されており、その際に、0V〜5Vの無電流又はほぼ無電流での閉鎖時の第1の範囲と、5V〜10Vの閉鎖についての第2の範囲と、10V〜100Vの閉鎖についての第3の範囲と、100V〜400Vの閉鎖についての第4の範囲と、が定義されている。表の更なる別の欄には、確実に可能な閉鎖の回数Nmake(ΔU)と、閉鎖ごとに劣化カウンタNwearに加算される、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)と、が示されている。5つの範囲の代わりに同様に良好に、より少なく又はより多い範囲が設けられること、及び、当該範囲の数及び限界値は、製造業者による実地試験の結果、製造業者による計算の結果、及び/又は、製造業者による表示であってもよいことは明らかである。
【0020】
好適な実施形態によれば、数Nmake(ΔU)が定められる際には、電気回路内のコンデンサの容量、及び/又は、抵抗の大きさが考慮される。従って、コンデンサが大きい場合、例えば、100μFよりも大きく、500μFよりも大きく、又は1mFよりも大きいコンデンサの場合で、かつ、抵抗が小さい場合には、大きな補正電流、例えば、数百アンペアの短時間の電流が流れるため、遮断要素に掛かる負荷が明らかに大きい。開放された瞬間の実際の電流と、電子式遮断要素の閉鎖前の電圧差と、コンデンサの容量と、予期される補正電流の大きさと、についての知識によって、個々の開閉周期ごとに電子式遮断要素の劣化を計算することが可能である。
【0021】
電子式中断要素の寿命限界値NEOLであって、寿命限界値に達した時点に電子式遮断要素が所望の電流において電流回路を未だ確実に解放できるように定義された上記寿命限界値NEOLを定めることは、特に有利である。寿命限界値NEOLは、例えば、製造業者による電子式遮断要素の寿命を示す基準数Nmechから、定義された電流値IEOLmaxでの最終開放時に得られる劣化値Nbreak(IEOLmax)を減算することによって決定される。これにより有利に、電子式遮断要素が早期には交換されず、該当する部品を確実に分離出来る限りは利用されることが保証される。
【0022】
本方法によって、電子式遮断要素が、先行する開閉動作に基づき、部品の接続後に、当該部品を再び確実に分離できる状態となることを常に推測することが可能となる。「確実に」(sicher)という概念は、ここでは及び本発明の範囲において一般に、一連のテスト、認可印等によって部品の挙動が期待出来ること、及び/又は、示された制限内での部品の使用が法律的に許可されていることを意味する。ネガティブな判定が下った場合には、制御ソフトウェア又は例えばバッテリ管理システムは、部品の接続さえ行わないことを決定できる。
【0023】
好適に、劣化カウンタNwearが電子式遮断要素の寿命限界値NEOLに達し又は当該寿命限界値NEOLを超えた瞬間に、アクションが開始される。このアクションは、例えば、エラー報知であってもよく、電気自動車又はハイブリッド自動車の場合には、運転者への表示であってもよく、又は、該当する部品の停止、又は、車両の始動の防止等を含んでもよい。同様に、車両が所謂リンプホーム(Limp−Home)モードに置かれることが構想されてもよく、このリンプホームモードでは、例えば、エンジンスピードが制限され、又は、ハイブリッド自動車の場合には、純粋な内燃機関駆動に切り替えられる。このようにして、電子式遮断要素は稼働が可能な状態でのみ使用されることが実現される。
【0024】
電子式遮断要素は、例えば遮断器、リレー、又はトランジスタであり、好適には、特に電気自動車又はハイブリッド自動車のバッテリのために使用可能な接触器である。特に有利に、本方法は、大電流での使用のため、10A、20A、又は50Aよりも大きい電流での使用のために設計された電子式遮断要素で利用される。この場合には、遮断要素の、電流に依存した消耗が特に考慮される。本方法の利用は、特に、電気自動車又はハイブリッド自動車で使用されるバッテリの場合に適している。このバッテリに対する要請には、例えば、バッテリが、50〜600Vの電圧を伝達すべきであるということが含まれる。適切なバッテリの種類の例には、全ての種類のリチウムイオンバッテリが含まれる。「バッテリ」及び「バッテリシステム」という概念は、本明細書では、通常の言語使用に合わせて、蓄電池又は蓄電池システムのために利用される。
【0025】
本発明に基づいて、さらに、コンピュータプログラムが、コンピュータ読み取りが可能なコンピュータ装置で実行される場合に本明細書に記載される方法のうちの1つがそれに従って実行されるコンピュータプログラムが提案される。コンピュータプログラムは、例えば、車両内に、電子式遮断要素の劣化を決定する装置及び/又はバッテリ管理システムを実装するためのモジュールであってもよい。コンピュータプログラムは、機械読み取りが可能な記憶媒体、例えば、永久記憶媒体若しくは上書き可能な記憶媒体に格納されてもよく、又は、コンピュータ装置の付属装置に、又は、取り外し可能なCD−ROM、DVD、又はUSBスティックに格納されてもよい。追加的又は代替的に、コンピュータプログラムは、例えばサーバのようにコンピュータ装置上にダウンロードのために提供されてもよく、例えば、インターネットのようなデータネットワークを介して、又は、電話線若しくは無線接続のような通信接続を介して提供されてもよい。
【0026】
本発明の更なる別の観点によれば、電気回路を解放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、電気回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを定めるための装置と、電流回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iから電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定するための装置と、定められた上記電流に依存する劣化値Nwear(I)を積算するための装置と、を備える。
【0027】
一実施形態によれば、電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、組み込まれた電流センサの測定範囲外に電流の値が存在する場合には電流も定めることが可能な装置を有する。このことは、電流源の電圧を定める装置が設けられ、当該装置が、電圧源の電圧と、電圧源の既知又は推測された内部抵抗と、から、電流回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを定めるよう構成されるという形で起こりうる。好適に、電圧源はバッテリシステムに相当する。測定範囲を超える場合には、バッテリシステムの既知の内部抵抗と、バッテリシステムでの電圧と、から、(短絡)電流が計算される。
【0028】
一実施形態によれば、電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、電流回路の閉鎖時の電子式遮断要素での電圧の値ΔUを定めるための装置と、電流回路の閉鎖時の電子式遮断要素での電圧の値ΔUから電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する装置と、を有する。
【0029】
本発明の更なる別の観点によれば、バッテリ管理システムは、電子式遮断要素の劣化を決定するための及び/又は以前に記載された方法のうちの1つを実施するよう構成されたこのような装置を有する。さらに、バッテリ管理システムは、個々のバッテリセル、個々のモジュール、又は、バッテリ全体の電圧、及び、個々のバッテリセル、個々のモジュール、又は、バッテリ全体の温度を定めるよう構成されてもよく、及び、当該電圧及び温度から、バッテリセルの充電状態(SOC=State of Charge、充電率)、バッテリセルの損傷状態(SOH=State of Health、劣化度)、及び、許容可能なバッテリ容量を定めるよう構成されてもよい。過負荷の場合、SOCウィンドウから外れる場合、又は、過剰温度の場合には、バッテリ管理システムは、システムの停止により又は停止指示の出力により、バッテリセルを守るよう構成されてもよい。危険な状況においてはバッテリ管理システムが接触器を介して残りの電気系統からバッテリセルを分離出来るシステム設計が存在するが、バッテリ管理システムは性能限界値のみ出力し他の制御装置が回路について決定しなければならない更なる別の設計も存在する。
【発明の効果】
【0030】
電子式遮断要素の開放中に電流が流れる場合には、機械的負荷のみが掛かる無電流での解放の際よりも強い負荷が接点に掛かり、このことによって、電子式遮断要素の故障が早い時期に起こったり、電気回路内で安全面での重大な問題が生じたりする可能性があることが分かった。本発明の措置によって有利に、再び確実に電気回路を解放出来る場合にのみ、電子式遮断要素が接続されるということが実現され、これにより危険な状況が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の実施例が図面に示され、以下の明細書の記載において詳細に解説される。
図1】電子式遮断要素を備えた電流回路を示す。
図2】2つの電子式遮断要素を備えた電気回路を示す。
図3】電流及び電圧に従って、確実に可能な解放又は閉鎖の回数を示すグラフを示す。
図4】電流及び電圧に従って、確実に可能な解放又は閉鎖の回数を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、電圧源15、例えばバッテリを、電気部品4から分離するよう構成された電子式遮断要素6を備えた電気回路1が示されている。図1は、電気回路の開放時に電子式遮断要素6を通って流れる電流を定める装置7を示しており、この装置7は、電流回路の開放時に電子式遮断要素6を通って流れる電流の値から、電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する装置8に結合されている。電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する装置8は、例えば、バッテリ管理システム9の構成要素であってもよい。電流に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する装置8は、劣化カウンタNwearを更新する装置12と接続されており、示される実施例では、この装置12もバッテリ管理システム9の構成要素である。
【0033】
さらに、電子式遮断要素6の劣化を決定する装置は、当該電子式遮断要素6の寿命限界値NEOLを定める装置13を有する。電子式遮断要素6の寿命限界値NEOLを定める装置13は、定義された電流値IEOLmaxにおいて最終的な開放が行われるように、電子式遮断要素6の寿命を、基準数Nmechから劣化値Nbreak(IEOLmax)を減算することで示すよう構成される。寿命限界値NEOLを定める装置13と、劣化カウンタNwearを更新する装置12と、から、データ及び/又は測定値を受信する更なる別の装置14は、劣化カウンタNwearが寿命限界値NEOLを超える場合にはアクションを開始するよう構成される。このアクションは、例えば、エラー通知の送信、車両の運転者への表示、該当する部品の停止、若しくは、車両の始動の防止、又は、車両のリンプホーム(Limp−Home)駆動モードを含んでもよい。
【0034】
図1は、さらに、電圧源15での電圧を定める装置16を示しており、この装置16は、電流を定める装置8に、データ及び/又は測定値を提供する。この好適な実施形態によれば、装置8は、電流を定める装置7の測定範囲外に電流の値が存在する場合には、電圧源15での電圧の推移から、電流も定めるよう構成される。装置7の測定範囲を超える場合には、装置8は、バッテリシステムの既知の内部抵抗と、電圧源15での電圧と、から電流を計算する。
【0035】
図2では、電気部品4のための事前充電回路が示されている。電流回路1は、図1に示された第1の遮断要素6の他に、更なる別の電子式遮断要素2を有する。上記電気回路はさらに、事前充電抵抗3と、コンデンサ5と、を備える。部品4と電圧源15との間の接続を閉鎖するためには、最初に要素2が閉鎖され、コンデンサ5が、事前充電抵抗3を介して小電流により同一の電圧レベルに置かれる。その後に、要素6は、低インピーダンスで接続を形成することが可能である。要素4と電圧源15との間の接続を分離するためには、電気部品4は、通常では、その電力消費を最低限まで削減し、これに応じて、電子式遮断要素6が解放される。駆動中には、電子式遮断要素6が閉鎖される前に、コンデンサ5一式を電圧に対して事前充電すること、又は、電子式遮断要素6が解放される前に、電流を最小値、理想的に0Aにすることは、常に可能な訳ではない。
【0036】
従って、電子式遮断要素6の劣化を決定する装置を備える図2に示される電子回路は、電気回路の閉鎖時に電子式遮断要素で存在する電圧差の値ΔUを決定する装置10をさらに有する。電圧差の値ΔUを決定する装置10は、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する装置11に結合され、この装置11は、電気回路の閉鎖時に電子式遮断要素で存在する電圧差の値ΔUから、電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を定める。電圧に依存する劣化値Nwear(ΔU)を決定する装置11は、劣化カウンタNwearを更新する装置12と接続され、当該装置12に、データ及び/又は測定値を提供する。
【0037】
図1と同様に、電気回路の開放時に電子式遮断要素6を通って流れる電流を定める装置7が存在し、この装置7は、電気回路の開放時に電子式遮断要素6を通って流れる電流の値から電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する装置8に結合されている。電流に依存する劣化値Nwear(I)を決定する装置8は、バッテリ管理システム9の構成要素であってもよい。電流に依存する劣化値Nwear)を決定する装置8は、劣化カウンタNwearを更新する装置12と接続され、当該装置12に、データ及び/又は測定値を提供する。
【0038】
さらに、電子式遮断要素6の劣化を決定する装置は、電子式遮断要素6の寿命限界値を定める装置13と、劣化カウンタNwearが寿命限界値NEOLを越えた場合にアクションを開始する更なる別の装置14と、を有する。
【0039】
示される実施形態には、有利に、図1に関して記載されたバッテリ15での電圧を定める装置16があってもよいが、図には示されていない。このような実施形態においても、装置8は、電流を定める装置7の測定範囲外に電流の値が存在する場合には、バッテリシステムでの電圧の推移から電流を定めるよう構成される。
【0040】
図3及び図4には、両対数グラフに、表1及び表2に示された値に対応する従属性が示されている。選択されたデータポイントが例示的に設けられている。このようなグラフは、例えば示されたポイントが適切に、例えば階段状又は線形状に補間されることで、関数従属性を提供するために用いられる。正確な関数的相関は、一連のテストの結果であってもよい。示されるデータポイントは、例えば、接触器、例えば、400Vの高電圧のために設計された接触器のデータシートから取られてもよい。
【0041】
本方法は、短い計算例で明確になり、その際、図3及び図4又は表1及び表2に係るNwear(I)とNwear(ΔU)との関数的関係が、当該計算例の基礎となる。電子式遮断要素が、寿命の終りに、例えば1600Aの電流で解放されるべき場合には、このことは、図3によれば、このような大電流の場合には、2回だけ遮断が確実に可能であることを意味している。この選択された例では、基準数Nmechは1.000.000であり、このことは、図3及び図4では、I=0A又はΔU=0Vの場合の値によって読み取られる。
【0042】
mechをNbreak(IEOLmax)により除算した商からNwear(IEOLmax)が得られ、以下のようになる。
【0043】
【数1】
【0044】
従って、寿命は以下のように得られる。

EOL=Nmech−Nwear(1.600A)=500.000
【0045】
電子式遮断要素の駆動中には、例えば以下のようなイベントが起こりうる。

I=0Aの際に40.000回の開放 40.000×Nwear(0A)=40.000
ΔU=0Vの際に40.000回の閉鎖 40.000×Nwear(0V)=0
I=20Aの際に1.000回の開放 1.000×Nwear(20A)=100.000
ΔU=5Vの際に1.000回の閉鎖 1.000×Nwear(5V)=10.000
I=500Aの際に2回の開放 2×Nwear(500A)=250.000
ΔU=400Vの際に10回の閉鎖 10×Nwear(400v)=100.000

合計:Nwear=500.000
【0046】
上記計算例では、寿命の終りNEOLに達し、アクションが実行される。
【0047】
本発明は、本明細書に記載される実施例及び当該実施例で強調される観点に制限されず、むしろ、特許請求の範囲内に示される範囲において、当業者による行為の枠組みに収まる複数の変更が可能である。
図1
図2
図3
図4