【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に基づいて、電気回路を解放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素の劣化を決定する方法であって、以下の工程、即ち、
a)劣化カウンタN
wearを開始する工程と、
b)電気回路の解放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを決定する工程と、
c)電流の値Iから、電流に依存する劣化値N
wear(I)を決定する工程と、
d)電流に依存する劣化値N
wear(I)を利用して劣化カウンタN
wearを更新する工程と、
を含む、上記方法が構想される。
【0005】
開閉周期を単純に数えるだけでは、遮断器、リレー、又は接触器のような電子式遮断要素の実際の劣化を表すことは出来ない。本発明では、開閉周期の回数が単純にカウントされるのではなく、電子式遮断要素の劣化が、作動過程によって厳密に再現される(nachbilden)。従って、上記工程b)〜d)は、好適に電子式遮断要素によって電気回路が解放されるごとに実行される。
【0006】
本方法は、特に、電流が電子式遮断要素の開放時に通常流れる電気回路内で使用される電子式遮断要素に特に適している。電子式遮断要素が解放されている間に電流が流れる場合には、機械的負荷のみが掛かるよりも強い負荷が接点に掛かり、これにより、電子式遮断要素の故障が早い時期に起こったり、安全面での重大な問題が生じたりする可能性があることが、本発明に基づいて認識された。電子式遮断器の劣化については、接点を経由する電流に決定的に原因があり、従って第一に、電子式遮断要素の開放時の電流に原因がある。電子式遮断要素の劣化が進めば進むほど、電子式遮断要素が部分的又は完全に故障する確率が高くなる。電子式遮断要素の故障は、例えば接点同士が癒着するという具合に、即ち、電子式遮断要素が接点を解放すべきであるにもかかわらず、開放時に閉じられたままであるという具合に起こりうる。本発明の措置によって、有利に、電子式遮断要素が電気回路をいつでも解放出来ることが実現され、これにより危険な状況が回避される。
【0007】
劣化カウンタN
wearの更新とは、当該劣化カウンタN
wearの値を最新の状態にすること(Update)と称してもよい。一実施形態によれば、解放ごとに、定められた劣化値N
wear(I)が劣化カウンタN
wearに加算される。従って、劣化カウンタN
wearは、遮断要素の消耗についての一種の積立口座(Beitragskonto)のようなものである。劣化カウンタN
wearに単純に劣化値N
wear(I)を加算する代わりに、時間成分も考慮することが可能であり、例えば、時間の経過につれて、劣化値N
wear(I)が、開始時よりも大きく重み付けされることが構想されてもよい。その際に、時間成分を考慮する際の関数関係は、階段関数に順じてもよいが、線形関数的、多項式関数的、又は指数関数的であってもよい。
【0008】
本方法は主に、例えばバッテリパックのような第1の部品が接触器によって駆動部、補助発電機、充電プラグ等の他の部品と接続されているハイブリッド自動車又は電気自動車で適用される。上記他の部品は、単相若しくは多相の交流電圧又はパルス状の直流電圧をバッテリ電圧から生成する装置を介して電力供給される。電気回路を解放するということは、電子部品を互いに分離するということを意味している。本発明の措置によって有利に、電子式遮断要素が上記部品をいつでも確実に互いに分離出来ることが実現され、これにより危険な状況が回避される。本方法によって、停止時に遮断要素に作用する様々な電流の実際の負荷が考慮される。
【0009】
従属請求項に記載される措置によって、有利に、独立請求項に示された方法の有利な発展形態及び改善策が可能である。
【0010】
幾つかの実施形態によれば、電子式遮断要素について、当該電子式遮断要素の開放及び/又は閉鎖の回数を示す基準数N
mechが分かっている。この基準数N
mechは、電子式遮断要素の製造行者によって提供可能であり、電子式遮断要素の寿命を示している。基準数N
mechは、例えば、電子式遮断要素のデータシートから知ることが出来る。電気回路内での定義された電流について確実に可能な解放の回数を示す数N
break(I)で、基準数N
wearを除算することにより、電流に依存する劣化値N
wear(I)が決定される場合には、特に有利である。N
break(I)の値は、例えば、計算可能な関数従属性の形態により又は表形式で存在してもよく、その際に、以下の表1には、表形式による一例が示されている。本例では、N
mechは1.000.000である。
【0011】
【表1】
【0012】
上記の表には、例えば、7つの電流範囲が示されており、即ち、0Aでの所謂無電流での開放についての第1の範囲と、0〜15Aの電流での開放についての第2の範囲と、15〜150Aの電流での開放についての第3の範囲と、150〜300Aの電流での開放のための第4の範囲と、300〜500Aの電流での開放についての第5の範囲と、500〜1000Aの電流での開放についての第6の範囲と、1000〜1600Aの電流での開放についての第7の範囲と、が示されている。この表では、定義された電流範囲ごとに確実に可能な解放の回数を示す数N
break(I)と、ここでは基準数N
mechを数N
break(I)で除算することにより決定される、電流に依存する劣化値N
wear(I)と、が示されている。N
mechは、本例では、1.000.000回の開放に設定されている。7つの範囲の代わりに同様に良好に、より少なく又はより多い範囲が設けられること、及び、当該範囲の数及び限界値は、製造業者による実地試験の結果、製造業者による計算の結果、及び/又は、製造業者による表示であってもよいことは明らかである。
【0013】
好適な実施形態において、本方法は、以下の更なる工程、即ち、
e)電気回路の閉鎖時に電子式遮断要素で存在する電圧差の値ΔUを決定する工程と、
f)電圧差の値ΔUから、電圧に依存する劣化値N
wear(ΔU)を決定する工程と、
g)電圧に依存する劣化値N
wear(ΔU)を利用して劣化カウンタN
wearを更新する工程と、
を有する。
【0014】
本方法は、電子式遮断要素の閉鎖時に当該電子式遮断要素で電圧差が存在する電流回路内で使用される電子式遮断要素に特に適している。上記の工程e)〜g)は、好適に、電子回路が閉鎖されるごとに実行される。
【0015】
電圧が掛かった状態で電気回路が閉鎖された際に電子式遮断要素の劣化を強める物理的過程は、閉鎖時の所謂接点跳動である。接点躍動の場合、接点は直ぐには閉鎖されず、材料の弾性によって、閉鎖後に接点が短時間で再び跳ね返り、その際に、電流が流れた状態で解放が起こる。劣化については、接触器の開放時に克服すべき、接点を経由する電流に決定的に原因があることが予期されるが、第2の要因も、即ち、接点の閉鎖時の電流の流れも、電子式遮断要素の劣化についてより厳密に述べる可能性を生むことが予期される。本発明の措置によって、電子式遮断要素の劣化を決定する際の遮断要素の閉鎖の影響を考慮に入れることが可能である。
【0016】
主要な適用ケースは、コンデンサを介して事前充電される電気回路である。電子式遮断要素の接続時に電圧差が存在する場合には、コンデンサの容量に基づき電子式遮断要素の閉鎖後に補正電流が流れ、この補正電流は、電子式遮断要素の内部抵抗の、克服すべき電圧差から決定されることが認識された。電子式遮断要素の接続時の補正電流によって、機械的負荷のみが掛かるよりも強い負荷が電子式遮断要素の接点に掛かり、電子式遮断要素の故障が早期に引き起こされる可能性がある。
【0017】
好適な実施形態によれば、電子式中断要素について、当該電子式中断要素の開放及び/又は閉鎖の回数を示す基準数N
mechが分かっている。基準数N
mechは、製造業者側による電子式遮断要素の寿命を示し、例えば、遮断器、リレー、又は接触器等の電子式遮断要素のデータシートから知ることが出来る。電子式中断要素の開放及び/又は閉鎖の、電圧に依存する回数を示す数N
make(ΔU)で、基準数N
mechを除算することにより、電圧に依存する劣化値N
wear(ΔU)が決定される場合には、特に有利である。N
make(ΔU)の値は、例えば、計算可能な関数従属性の形態により又は表形式で存在してもよく、その際に、表2には、表形式による一例が示されている。本例でも、N
mechは1.000.000である。
【0018】
【表2】
【0019】
閉鎖時の克服すべき電圧について、ここでは例示的に5つの範囲が示されており、その際に、0V〜5Vの無電流又はほぼ無電流での閉鎖時の第1の範囲と、5V〜10Vの閉鎖についての第2の範囲と、10V〜100Vの閉鎖についての第3の範囲と、100V〜400Vの閉鎖についての第4の範囲と、が定義されている。表の更なる別の欄には、確実に可能な閉鎖の回数N
make(ΔU)と、閉鎖ごとに劣化カウンタN
wearに加算される、電圧に依存する劣化値N
wear(ΔU)と、が示されている。5つの範囲の代わりに同様に良好に、より少なく又はより多い範囲が設けられること、及び、当該範囲の数及び限界値は、製造業者による実地試験の結果、製造業者による計算の結果、及び/又は、製造業者による表示であってもよいことは明らかである。
【0020】
好適な実施形態によれば、数N
make(ΔU)が定められる際には、電気回路内のコンデンサの容量、及び/又は、抵抗の大きさが考慮される。従って、コンデンサが大きい場合、例えば、100μFよりも大きく、500μFよりも大きく、又は1mFよりも大きいコンデンサの場合で、かつ、抵抗が小さい場合には、大きな補正電流、例えば、数百アンペアの短時間の電流が流れるため、遮断要素に掛かる負荷が明らかに大きい。開放された瞬間の実際の電流と、電子式遮断要素の閉鎖前の電圧差と、コンデンサの容量と、予期される補正電流の大きさと、についての知識によって、個々の開閉周期ごとに電子式遮断要素の劣化を計算することが可能である。
【0021】
電子式中断要素の寿命限界値N
EOLであって、寿命限界値に達した時点に電子式遮断要素が所望の電流において電流回路を未だ確実に解放できるように定義された上記寿命限界値N
EOLを定めることは、特に有利である。寿命限界値N
EOLは、例えば、製造業者による電子式遮断要素の寿命を示す基準数N
mechから、定義された電流値I
EOLmaxでの最終開放時に得られる劣化値N
break(I
EOLmax)を減算することによって決定される。これにより有利に、電子式遮断要素が早期には交換されず、該当する部品を確実に分離出来る限りは利用されることが保証される。
【0022】
本方法によって、電子式遮断要素が、先行する開閉動作に基づき、部品の接続後に、当該部品を再び確実に分離できる状態となることを常に推測することが可能となる。「確実に」(sicher)という概念は、ここでは及び本発明の範囲において一般に、一連のテスト、認可印等によって部品の挙動が期待出来ること、及び/又は、示された制限内での部品の使用が法律的に許可されていることを意味する。ネガティブな判定が下った場合には、制御ソフトウェア又は例えばバッテリ管理システムは、部品の接続さえ行わないことを決定できる。
【0023】
好適に、劣化カウンタN
wearが電子式遮断要素の寿命限界値N
EOLに達し又は当該寿命限界値N
EOLを超えた瞬間に、アクションが開始される。このアクションは、例えば、エラー報知であってもよく、電気自動車又はハイブリッド自動車の場合には、運転者への表示であってもよく、又は、該当する部品の停止、又は、車両の始動の防止等を含んでもよい。同様に、車両が所謂リンプホーム(Limp−Home)モードに置かれることが構想されてもよく、このリンプホームモードでは、例えば、エンジンスピードが制限され、又は、ハイブリッド自動車の場合には、純粋な内燃機関駆動に切り替えられる。このようにして、電子式遮断要素は稼働が可能な状態でのみ使用されることが実現される。
【0024】
電子式遮断要素は、例えば遮断器、リレー、又はトランジスタであり、好適には、特に電気自動車又はハイブリッド自動車のバッテリのために使用可能な接触器である。特に有利に、本方法は、大電流での使用のため、10A、20A、又は50Aよりも大きい電流での使用のために設計された電子式遮断要素で利用される。この場合には、遮断要素の、電流に依存した消耗が特に考慮される。本方法の利用は、特に、電気自動車又はハイブリッド自動車で使用されるバッテリの場合に適している。このバッテリに対する要請には、例えば、バッテリが、50〜600Vの電圧を伝達すべきであるということが含まれる。適切なバッテリの種類の例には、全ての種類のリチウムイオンバッテリが含まれる。「バッテリ」及び「バッテリシステム」という概念は、本明細書では、通常の言語使用に合わせて、蓄電池又は蓄電池システムのために利用される。
【0025】
本発明に基づいて、さらに、コンピュータプログラムが、コンピュータ読み取りが可能なコンピュータ装置で実行される場合に本明細書に記載される方法のうちの1つがそれに従って実行されるコンピュータプログラムが提案される。コンピュータプログラムは、例えば、車両内に、電子式遮断要素の劣化を決定する装置及び/又はバッテリ管理システムを実装するためのモジュールであってもよい。コンピュータプログラムは、機械読み取りが可能な記憶媒体、例えば、永久記憶媒体若しくは上書き可能な記憶媒体に格納されてもよく、又は、コンピュータ装置の付属装置に、又は、取り外し可能なCD−ROM、DVD、又はUSBスティックに格納されてもよい。追加的又は代替的に、コンピュータプログラムは、例えばサーバのようにコンピュータ装置上にダウンロードのために提供されてもよく、例えば、インターネットのようなデータネットワークを介して、又は、電話線若しくは無線接続のような通信接続を介して提供されてもよい。
【0026】
本発明の更なる別の観点によれば、電気回路を解放及び閉鎖するよう構成された電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、電気回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを定めるための装置と、電流回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iから電流に依存する劣化値N
wear(I)を決定するための装置と、定められた上記電流に依存する劣化値N
wear(I)を積算するための装置と、を備える。
【0027】
一実施形態によれば、電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、組み込まれた電流センサの測定範囲外に電流の値が存在する場合には電流も定めることが可能な装置を有する。このことは、電流源の電圧を定める装置が設けられ、当該装置が、電圧源の電圧と、電圧源の既知又は推測された内部抵抗と、から、電流回路の開放時に電子式遮断要素を通って流れる電流の値Iを定めるよう構成されるという形で起こりうる。好適に、電圧源はバッテリシステムに相当する。測定範囲を超える場合には、バッテリシステムの既知の内部抵抗と、バッテリシステムでの電圧と、から、(短絡)電流が計算される。
【0028】
一実施形態によれば、電子式遮断要素の劣化を決定する装置は、電流回路の閉鎖時の電子式遮断要素での電圧の値ΔUを定めるための装置と、電流回路の閉鎖時の電子式遮断要素での電圧の値ΔUから電圧に依存する劣化値N
wear(ΔU)を決定する装置と、を有する。
【0029】
本発明の更なる別の観点によれば、バッテリ管理
システムは、電子式遮断要素の劣化を決定するための及び/又は以前に記載された方法のうちの1つを実施するよう構成されたこのような装置を有する。さらに、バッテリ管理
システムは、個々のバッテリセル、個々のモジュール、又は、バッテリ全体の電圧、及び、個々のバッテリセル、個々のモジュール、又は、バッテリ全体の温度を定めるよう構成されてもよく、及び、当該電圧及び温度から、バッテリセルの充電状態(SOC=State of Charge、充電率)、バッテリセルの損傷状態(SOH=State of Health、劣化度)、及び、許容可能なバッテリ容量を定めるよう構成されてもよい。過負荷の場合、SOCウィンドウから外れる場合、又は、過剰温度の場合には、バッテリ管理システムは、システムの停止により又は停止指示の出力により、バッテリセルを守るよう構成されてもよい。危険な状況においてはバッテリ管理システムが接触器を介して残りの電気系統からバッテリセルを分離出来るシステム設計が存在するが、バッテリ管理システムは性能限界値のみ出力し他の制御装置が回路について決定しなければならない更なる別の設計も存在する。