特許第6185909号(P6185909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185909リチウム空気電池用電解液及びリチウム空気電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185909
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】リチウム空気電池用電解液及びリチウム空気電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20170814BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M12/06 G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-509087(P2014-509087)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2013056100
(87)【国際公開番号】WO2013150853
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-84120(P2012-84120)
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和幸
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 一郎
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−146283(JP,A)
【文献】 特開2011−023330(JP,A)
【文献】 特開2008−066202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される鎖状アルキルスルホン化合物及びスルホランを含有する有機溶媒とリチウム塩とを含有することを特徴とするリチウム空気電池用電解液。
【化1】
式(1)中、R、Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ独立し、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【請求項2】
有機溶媒は、式(1)で表される鎖状アルキルスルホン化合物の含有量が80質量%以上であることを特徴とする請求項1記載のリチウム空気電池用電解液。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリチウム空気電池用電解液と、空気極と、負極とを有することを特徴とするリチウム空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的安定性に優れ、耐電圧が高く、広い温度範囲において凝固や塩の析出がなく安定した液状を有するリチウム空気電池用電解液に関する。また、本発明は、該リチウム空気電池用電解液を用いて製造された、長期信頼性に優れ、充放電サイクル特性が良好なリチウム空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム空気電池は、空気中の酸素を正極活物質として用いた非水電池であり、負極のリチウム金属質量当りの理論貯蔵エネルギーは約11140Wh/kgにもなり、高いエネルギー密度を持つことが特徴である。このため、小型化及び軽量化が容易であり、現在広く使用されているリチウムイオン電池を超える高容量電池として注目されている。
【0003】
このようなリチウム空気電池としては、例えば、カーボンブラック等の導電性材料、二酸化マンガン等の触媒、及び、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤を有する空気極と、空気極の集電を行う空気極集電体と、負極活物質であるリチウムを含有する負極と、その集電を行う負極集電体と、非水電解液とを有するものが挙げられる。
【0004】
従来、リチウム空気電池の非水電解液には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒にLiPF等のリチウム塩を溶解させたものが用いられてきた。しかしながら、このような非水電解液を用いてリチウム空気電池を製作すると、電池の充放電過程で生じる酸素ラジカル等によって、有機溶媒が劣化したり、リチウム空気電池のケースに設けられた空気孔、即ち、正極へ酸素を取り入れるための孔を開放した状態では、環境温度の影響を受け、高温環境下での使用や保存により電解液溶媒が揮発したりすることにより、放電容量が著しく低下するという問題があった。また、リチウム空気電池の非水電解液には、広い温度範囲において凝固や塩の析出がなく安定した液状を有することも求められる。
【0005】
このような問題に対して、非水電解液として不揮発性のイオン液体を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、非水電解液空気電池の非水電解液に、特定の構造を有するイオン液体を用いる方法が開示されている。
しかしながら、リチウム空気電池の非水電解液にイオン液体を用いた場合、不揮発性の面では好ましいが、電池の充放電過程で生じる酸素ラジカル等によって、イオン液体が劣化する恐れがある。また、イオン液体は従来使われている有機溶媒と比べて製造コストが高く、精製が困難であるなどの製造上の問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−119278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、化学的安定性に優れ、耐電圧が高く、広い温度範囲において凝固や塩の析出がなく安定した液状を有するリチウム空気電池用電解液を提供することを目的とする。また、本発明は、該リチウム空気電池用電解液を用いて製造された、長期信頼性に優れ、充放電サイクル特性が良好なリチウム空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で表される鎖状アルキルスルホン化合物及びスルホランを含有する有機溶媒とリチウム塩とを含有するリチウム空気電池用電解液である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、R、Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ独立し、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【0011】
以下、本発明について詳述する。
本発明者は鋭意検討した結果、化学的安定性及び熱安定性に優れ、揮発性が低く、かつ、耐電圧が高い特定の鎖状アルキルスルホン化合物を含有する有機溶媒にリチウム塩を溶解させ、電池ケースに設けられた空気孔から非水電解液が揮発するのを抑制することにより、長期信頼性に優れ、充放電サイクル特性が良好なリチウム空気電池が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明のリチウム空気電池用電解液は、有機溶媒を含有する。
上記有機溶媒は、上記式(1)で表される鎖状アルキルスルホン化合物(以下、単に鎖状アルキルスルホン化合物ともいう)を含有する。上記鎖状アルキルスルホン化合物を含有することにより、本発明のリチウム空気電池用電解液は、化学的、電気的に安定なものとなる。更に、上記鎖状アルキルスルホン化合物を含有することにより、リチウム空気電池の長期信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記式(1)中、R、Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ独立し、互いに同一であってもよいし、異なってもよいが、融点が低くなることから、RとRとは、異なっていることが好ましい。R及び/又はRの炭素数が5以上であると、常温で固体を呈し、得られるリチウム空気電池用電解液は著しく粘度が高くなり、内部抵抗等の電池特性が悪化する。また、R及び/又はRの炭素数が多くなると、誘電率が低下して電解質の溶解度が低下する傾向にあるため、R、Rの炭素数は、3以下であることが好ましい。更に、R、Rは、結晶性が低くなって融点が低くなることから、分岐鎖状であることが好ましい。
【0014】
上記鎖状アルキルスルホン化合物の沸点は、リチウム空気電池に高耐熱性や高耐久性を付与するため、240℃以上であることが好ましい。
上記鎖状アルキルスルホン化合物の融点は、リチウム空気電池の低温での安定動作を保証するため、0℃以下であることが好ましい。
上記鎖状アルキルスルホン化合物の発熱開始温度は、リチウム空気電池の熱安定性を保証するため、200℃以上であることが好ましい。
上記鎖状アルキルスルホン化合物は、粘度が低いほどリチウム空気電池の内部抵抗を低くすることができ、25℃の条件で測定した粘度が10cP以下であることが好ましい。なお、本明細書において前記粘度は、円錐平板型回転粘度計で測定される値を意味する。
【0015】
上記鎖状アルキルスルホン化合物としては、具体的には例えば、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジプロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、エチルブチルスルホン、エチルイソブチルスルホン、エチルsec−ブチルスルホン等が挙げられる。上記鎖状アルキルスルホン化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
上記有機溶媒は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記鎖状アルキルスルホン化合物に加えて、他の有機溶媒を含有してもよい。他の有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、アセトニトリル、ポロピオニトリル、ブチロニトリル、ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、3−メチルスルホラン等が挙げられる。
【0017】
上記有機溶媒中の上記鎖状アルキルスルホン化合物の含有量の好ましい下限は80質量%である。上記鎖状アルキルスルホン化合物の含有量が80質量%未満であると、得られるリチウム空気電池が長期信頼性に劣るものとなることがある。上記鎖状アルキルスルホン化合物の含有量のより好ましい下限は90質量%である。
【0018】
本発明のリチウム空気電池用電解液は、電解質としてリチウム塩を含有する。
上記リチウム塩を構成するアニオンとしては、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO、C(Cが好ましい。なかでも、上記有機溶媒への溶解度が高く、電気化学的安定性に優れ、電解液としたときに高い導電率が得られるため、BF、PF、N(CFSOがより好ましい。これらのアニオンを有するリチウム塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0019】
本発明のリチウム空気電池用電解液におけるリチウム塩の濃度の好ましい下限は0.5mol/L、好ましい上限は3.0mol/Lである。上記リチウム塩の濃度が0.5mol/L未満であると、導電率が不足することがある。上記リチウム塩の濃度が3.0mol/Lを超えると、得られるリチウム空気電池用電解液の粘度が増大して含浸性が低下し、リチウム空気電池が電気特性に劣るものとなることがある。上記リチウム塩の濃度のより好ましい下限は0.65mol/L、より好ましい上限は2.0mol/Lである。
【0020】
本発明のリチウム空気電池用電解液は、以下の製造方法により調製することができる。
即ち、上記有機溶媒に、リチウム塩からなる電解質を加え、攪拌して完全に溶解したことを確認する。得られた電解液を脱水し、電解液中の水分を100ppm以下、好ましくは50ppm以下にまで減少させることで、目的とするリチウム空気電池用電解液が得られる。リチウム空気電池用電解液は、露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス等を用いて調製することができる。
【0021】
本発明のリチウム空気電池用電解液は、回転式粘度計を用いて、25℃の条件で測定した粘度が20cP以下であることが好ましい。リチウム空気電池用電解液の粘度が20cPを超えると、得られるリチウム空気電池の内部抵抗が高くなって電気特性が悪化することがある。
【0022】
このようにして調製したリチウム空気電池用電解液を使用することにより、リチウム空気電池を作製することができる。本発明のリチウム空気電池用電解液と、空気極と、負極とを有するリチウム空気電池もまた、本発明の1つである。本発明のリチウム空気電池は、本発明のリチウム空気電池用電解液を用いることにより、酸素ラジカル等による劣化を抑制することができ、かつ、電池ケースに設けられた空気孔から非水電解液が揮発するのを抑制することができるため、長期信頼性に優れたリチウム空気電池となる。
【0023】
図1は、本発明のリチウム空気電池の一例を示す概略断面図である。図1に示されるリチウム空気電池10は、構造の例示に過ぎず、リチウム空気電池の全体及び構造物の大きさや形は、リチウム空気電池の仕様に応じて変更される。
図1に示すように、本発明のリチウム空気電池10は、集電体が取り付けられた負極11と集電体が取り付けられた空気極14との間に電解質含有層13を有し、酸素透過体15で封じた構造をとり、電池ケース(図示せず)に収納される。図1に示した本発明のリチウム空気電池10は、負極11と電解質含有層13との間にセパレータ12を有するが、セパレータ12は必ずしも必要ではない。
以下、本発明のリチウム空気電池について、部材ごとに説明する。
【0024】
(1)電解質含有層
上記電解質含有層は、本発明のリチウム空気電池用電解液を含有する。
上記電解質含有層において、上記電解液は、液体状のまま用いられてもよいし、セルロースやガラス繊維等に含浸保持させた状態で用いられてもよい。
【0025】
本発明のリチウム空気電池において、本発明のリチウム空気電池用電解液は、空気極及び負極間でリチウムイオンの伝導を行う。
なお、本発明のリチウム空気電池は、安全性の観点から、本発明のリチウム空気電池用電解液と空気極、及び、本発明のリチウム空気電池用電解液と負極との間にセパレータを有することが好ましい。
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース等の高分子不織布や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の微多孔フィルムや、ガラス繊維の不織布等が挙げられる。
【0026】
(2)空気極
次に、本発明のリチウム空気電池における空気極について説明する。
本発明のリチウム空気電池における空気極としては、導電性材料を含有する空気極層と、該空気極層の集電を行う空気極集電体とを有するものが挙げられる。
【0027】
上記空気極層に用いられる導電性材料としては、例えば、カーボン材料等が挙げられる。
上記カーボン材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、メソポーラスカーボン等が挙げられる。
【0028】
上記空気極層における導電性材料の含有量の好ましい下限は10質量%、好ましい上限は99質量%である。上記導電性材料の含有量が10質量%未満であると、空気極での反応速度が低下することがある。上記導電性材料の含有量が99質量%を超えると、空気極層の機械的強度が低下することがある。上記導電性材料の含有量のより好ましい下限は20質量%、より好ましい上限は85質量%である。
【0029】
上記空気極層は、電極反応を促進させることを目的として、触媒を含有してもよく、上記導電性材料が触媒を担持していることが好ましい。
上記触媒としては、例えば、二酸化マンガン、二酸化セリウム等の無機化合物や、コバルトフタロシアニン等の有機化合物(有機錯体)等が挙げられる。
【0030】
上記空気極層における触媒の含有量の好ましい下限は1質量%、好ましい上限は90質量%である。上記触媒の含有量が1質量%未満であると、触媒効果が現れないことがある。上記触媒の含有量が90質量%を超えると、電極反応を阻害することがある。上記触媒の含有量のより好ましい下限は5質量%、より好ましい上限は50質量%である。
【0031】
上記空気極層は、導電性材料を固定化する結着材を含有していてもよい。
上記結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)等のゴムを上記結着材として用いてもよい。
【0032】
上記空気極層における結着材の含有量の好ましい下限は1質量%、好ましい上限は40質量%である。上記結着剤の含有量が1質量%未満であると、空気極層の機械的強度が低下したり、空気極層が集電体から剥離したりすることがある。上記結着剤の含有量が40質量%を超えると、空気極での反応速度が低下することがある。上記結着剤の含有量のより好ましい上限は10質量%である。
【0033】
上記空気極層は、空気と導電性材料との接触面積を大きくすることができるため、多孔質構造を有することが好ましい。
【0034】
上記空気極層の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、2μm〜500μmであることが好ましく、5μm〜300μmであることがより好ましい。
【0035】
上記空気極集電体は、上記空気極層の集電を行うものである。
上記空気極集電体の材料としては、例えば、金属材料、カーボン材料等が挙げられ、耐蝕性に優れ、電子伝導性に優れ、かつ、金属に比べて軽いため重量当たりのエネルギー密度が高くなることから、カーボン材料が好ましい。
【0036】
上記カーボン材料としては、例えば、カーボンファイバー(炭素繊維)、賦活カーボン(カーボン板を賦活したもの)等が挙げられる。なかでも、カーボンファイバーが好ましい。
上記金属材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、チタン等が挙げられる。
【0037】
上記空気極集電体の構造は、必要な電子伝導性を確保できれば特に限定されるものではなく、ガス拡散性を有する多孔質構造であってもよく、ガス拡散性を有しない緻密構造であってもよい。なかでも、酸素の拡散を速やかに行うことができるため、上記空気極集電体は、ガス拡散性を有する多孔質構造を有していることが好ましい。
【0038】
上記空気極集電体の厚さは、10μm〜1000μmであることが好ましく、20μm〜400μmであることがより好ましい。
また、本発明のリチウム空気電池においては、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていてもよい。
【0039】
(3)負極
次に、本発明における負極について説明する。
本発明のリチウム空気電池における負極としては、負極活物質を含有する負極層と、該負極層の集電を行う負極集電体とを有するものが挙げられる。
【0040】
上記負極活物質は、通常、リチウム金属を含有するものであり、例えば、リチウム金属単体、リチウム合金、リチウム金属酸化物、リチウム金属窒化物等が挙げられる。
上記リチウム合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等が挙げられる。
上記リチウム金属酸化物としては、例えば、リチウムチタン酸化物等が挙げられる。
上記リチウム金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等が挙げられる。
【0041】
上記負極層は、負極活物質のみを含有するものであってもよく、負極活物質の他に、導電性材料及び結着材の少なくとも一方を含有するものであってもよい。
例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極層とすることができ、負極活物質が粉末状である場合は、導電性材料及び結着材の少なくとも一方を有する負極層とすることができる。
なお、導電性材料及び結着材については、上述した「(2)空気極」に記載した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0042】
上記負極集電体は、上記負極層の集電を行うものである。
上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。
【0043】
上記負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ(グリッド)状等が挙げられる。
また、本発明のリチウム空気電池においては、後述する電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
【0044】
(4)電池ケース
次に、本発明に用いられる電池ケースについて説明する。
上記電池ケースの形状としては、上述した空気極、負極、非水電解質を収納することができれば特に限定されず、例えば、コイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等の形状が挙げられる。
【0045】
また、上記電池ケースは、大気開放型の電池ケースであってもよいし、密閉型の電池ケースであってもよいが、大気開放型の電池ケースであることが好ましい。上記大気開放型の電池ケースは、大気と接触可能な電池ケースである。
一方、電池ケースが密閉型電池ケースである場合は、電池ケースに、気体の供給管及び排出管を設けることが好ましい。この場合、供給・排出する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
【0046】
本発明のリチウム空気電池において、空気極上の大気接触部側には、酸素透過膜を配置することができる。この場合には、リチウム空気電池の空気極に酸素を供給しつつ、水分の浸入を防止することができる。上記酸素透過膜としては、空気中の酸素を透過させ、かつ、水分の浸入を防止できる撥水性の多孔質膜等を用いることができ、例えば、ポリエステルやポリフェニレンサルファイド等からなる多孔質膜が挙げられる。
【0047】
本発明のリチウム空気電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、二次電池であることが好ましい。
【0048】
本発明のリチウム空気電池を製造する方法は特に限定されず、一般的な金属空気電池の製造方法と同様にして製造することができる。例えば、露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で、電池ケース内に、負極活物質、セパレータをこの順に配置し、セパレータの上から、本発明のリチウム空気電池用電解液を注液した後、更にセパレータを配置し、空気極層をセパレータと対向させるように配置して封止する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明のリチウム空気電池の用途としては、例えば、車両搭載用途、定置型電源用途、家庭用電源用途等が挙げられる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、化学的安定性に優れ、耐電圧が高く、広い温度範囲において凝固や塩の析出がなく安定した液状を有するリチウム空気電池用電解液を提供することができる。また、本発明によれば、該リチウム空気電池用電解液を用いて製造された、長期信頼性に優れ、充放電サイクル特性が良好なリチウム空気電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明のリチウム空気電池の一例を示す概略断面図である。
図2参考例1〜3、実施例4、及び、比較例1で得られたリチウム空気電池用電解液を用いて行った充放電サイクル試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0053】
参考例1)
鎖状アルキルスルホン化合物であるエチルイソプロピルスルホン(EIPS、発熱開始温度222℃、沸点265℃、融点−11℃、粘度6cP(25℃))に、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を、濃度が1mol/Lとなるよう添加し、溶解させることにより、リチウム空気電池用電解液を得た。なお、リチウム空気電池用電解液の調製は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行い、得られたリチウム空気電池用電解液の水分値を測定し、50ppm未満であることを確認した。
なお、得られたリチウム空気電池用電解液は、−30℃まで冷却しても凝固や塩の析出がなく安定した液状であった。
【0054】
参考例2)
鎖状アルキルスルホン化合物であるエチルイソブチルスルホン(EIBS、発熱開始温度206℃、沸点261℃、融点−16℃、粘度4cP(25℃))に、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を、濃度が1mol/Lとなるよう添加し、溶解させることにより、リチウム空気電池用電解液を得た。なお、リチウム空気電池用電解液の調製は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行い、得られたリチウム空気電池用電解液の水分値を測定し、50ppm未満であることを確認した。
なお、得られたリチウム空気電池用電解液は、−30℃まで冷却しても凝固や塩の析出がなく安定した液状であった。
【0055】
参考例3)
鎖状アルキルスルホン化合物であるエチルプロピルスルホン(ENPS、発熱開始温度209℃、沸点260℃、融点22℃、粘度6cP(35℃))に、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を、濃度が1mol/Lとなるよう添加し、溶解させることにより、リチウム空気電池用電解液を得た。なお、リチウム空気電池用電解液の調製は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行い、得られたリチウム空気電池用電解液の水分値を測定し、50ppm未満であることを確認した。
なお、得られたリチウム空気電池用電解液は、−30℃まで冷却しても凝固や塩の析出がなく安定した液状であった。
【0056】
(実施例4)
エチルイソプロピルスルホン(EIPS)80重量部とスルホラン20重量部を混合して得られた溶媒に、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を、濃度が1mol/Lとなるよう添加し、溶解させることにより、リチウム空気電池用電解液を得た。なお、リチウム空気電池用電解液の調製は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行い、得られたリチウム空気電池用電解液の水分値を測定し、50ppm未満であることを確認した。
なお、得られたリチウム空気電池用電解液は、−30℃まで冷却しても凝固や塩の析出がなく安定した液状であった。
【0057】
(比較例1)
環状カーボネート化合物であるプロピレンカーボネート(PC、発熱開始温度73℃、沸点240℃)に、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を1mol/L濃度となるよう添加し、溶解させることにより、リチウム空気電池用電解液を得た。なお、リチウム空気電池用電解液の調製は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行い、得られたリチウム空気電池用電解液の水分値を測定し、50ppm未満であることを確認した。
【0058】
<評価>
(充放電サイクル試験)
参考例、実施例及び比較例で得られたリチウム空気電池用電解液を用いてリチウム空気二次電池を作製した。
なお、電池の組立は露点温度が−50℃以下に管理されたアルゴン循環型ドライボックス内で行った。また、宝泉社製の電気化学セルを電池ケースに用いた。
まず、電池ケースに、リチウム金属(本城金属社製、φ15mm、厚さ0.20mm)を配置した。次に、リチウム金属の上にポリプロピレン製のセパレータ(φ16mm、厚さ25μm)、石英繊維ペーパー(ワットマン社製、「QM−A」、φ16mm、厚さ0.45mm)を配置した。次に、セパレータの上から、上記の非水電解液を0.3mL注液した後、上記と同様のポリプロピレン製セパレータを配置した。次に、カーボンブラック(CABOT社製、「VULCAN XC72R」)90重量部とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10重量部と50容量%エタノール水溶媒とを有する組成物を、カーボンペーパー(空気極集電体、SGL社製、「SIGRACET GDL35BA」)上に、ガラス棒にて塗布、乾燥し、空気極層(φ15mm、目付質量10mg)を形成した。次に、得られた空気極層を、セパレータと対向させるように配置して封止し、評価用セルを得た。
次に、得られた評価用セルの空気極表面に、1mL/分の流速で酸素を通気した。次に、組立てた評価用セルに北斗電工社製の電池充放電装置(HJ1001SD8型)を接続して、下記の条件で充放電サイクル試験を行った。なお、充放電は放電スタートとし、25℃の環境下で充放電を行った。
充電条件:0.02mAの電流で電池電圧4.6Vになるまで充電を行う
放電条件:0.02mAの電流で電池電圧2.0Vになるまで放電を行う
得られた充放電サイクル試験の結果を図2に示す。放電容量は、空気極の部材(カーボンブラックとPTFE)の単位質量当りで比較を行った。図2に示されるように、プロピレンカーボネートを用いた比較例1のリチウム空気電池用電解液を用いた場合、2サイクル目以降、サイクル数が増加するに従って放電容量が著しく減少した。一方、鎖状アルキルスルホンを用いた実施例のリチウム空気電池用電解液を用いた場合、サイクル数が増加しても放電容量に大きな減少は見られず、比較例1のリチウム空気電池用電解液を用いた場合よりも良好なサイクル特性を示した。また、実施例及び比較例のリチウム空気電池用電解液の放電容量はほぼ同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、化学的安定性に優れ、耐電圧が高く、広い温度範囲において凝固や塩の析出がなく安定した液状を有するリチウム空気電池用電解液を提供することができる。また、本発明によれば、該リチウム空気電池用電解液を用いて製造された、長期信頼性に優れ、充放電サイクル特性が良好なリチウム空気電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 リチウム空気電池
11 負極
12 セパレータ
13 電解質含有層
14 空気極
15 酸素透過体
図1
図2