(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性ポリウレタンから製造された膨張可能な柔軟性チューブ部であって、当該チューブ部は、開口を有し、かつ、バルブのバルブベースの全周と、前記開口を囲んで接着接続され、柔軟性チューブ部の内部空間とシャフトの内部空間との間の接続が外部環境から封止され、
前記バルブは、管状のシャフトと、前記シャフトの一端の全周に接着接続されたバルブベースとを有し、
前記バルブベースが熱可塑性ポリウレタンから製造され、
前記シャフトが熱可塑性樹脂から製造され、
前記柔軟性チューブ部が、インナーチューブの製造に適したことを特徴とする膨張可能な柔軟性チューブ部。
シャフトの一端で各径方向にシャフトの外端からバルブベースが突出す程度が、シャフトの下端での直径の半分以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の膨張可能な柔軟性チューブ部。
バルブベースの下側を溶剤で濡らす工程と、次いで、バルブベースの下側を柔軟性チューブ部の表面に押圧する工程とを含む請求項1に記載の柔軟性チューブ部を製造する方法。
前記溶剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及び/又はテトラヒドロフランを含有する請求項11に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、従って、管状のシャフトと、当該シャフトの一端に、全周に亘って、接着して接続されたバルブベースとを有する、膨張可能な柔軟性チューブ部用のバルブを提供する。ここで、バルブベースは、熱可塑性ポリウレタンから製造されたものである。
【0012】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンから製造された、膨張可能な柔軟性チューブ部を導きだすものでもある。当該チューブ部は、開口(窓部)を有する。チューブ部は、その開口を囲み、かつ、実施形態1〜6のいずれかに係るバルブのバルブベースに全周囲を囲んで接着接続され、柔軟性チューブの内部空間とシャフトの内部空間との間の接続が周囲(大気)から密閉されている。
【0013】
本発明のバルブは、膨張可能な柔軟性チューブ部への取り付けに適している。前記柔軟性チューブ部は、閉ざされた環状の柔軟性チューブ又は両端が密閉されたチューブ部にも関係する。本発明では、バルブが管状シャフトと、熱可塑性ポリウレタンで製造されたバルブベースとを有する。バルブベースは、シャフトの一端に全周を囲んで接着して接続されている。
【0014】
表現「全周を囲んで」は、ここでは、バルブベースが完全に、隙間無く、シャフトの一端の全周を取り込むことを意味する。接着して接続(接着接続)の意味は、単なる連結を超え、接続がシャフト表面とバルブベースの材料間に、物理的及び/又は化学的相互作用により成分間に形成されるものである。
【0015】
本発明のバルブは、気体、特に空気が充填された、例えば、自転車、ハンドカート、モータ付乗り物又はトレーラーで知られたものの、柔軟性チューブ又は柔軟性チューブに適している。バルブシャフト及びバルブインサートの大きさは、好ましくは、公知のバルブのもの、例えば、シャフトの直径及び長さと関連して対応される。
【0016】
本発明の一実施形態では、シャフトは、金属材料から製造されたものであり、特に、鉄、鋼、真ちゅう又はアルミニウムである。シャフトは、異なる複数の材料で製造することも可能であり、例えば、真ちゅう製の低部と、アルミニウム製の上部とからなり、ここで、2つの部分は互いに強固に接続されたものである。これに関し、「低部」は柔軟性チューブに対面するように装着されたシャフト部分を意味し、ここで、「上部」は、柔軟性チューブの外側を向く。
【0017】
一実施形態では、シャフトは、アルミニウムから製造されたものであり、少なくともバルブベースに接続されたシャフト部は、その外周表面が陽極酸化されている。アルミニウム成分の電極酸化は公知であって、通常、腐食防止の目的で行われる。陽極酸化工程の間、例えば、陽極酸化部分を区別するために又はデザイン的な意味で、成分がしばしば着色される。シャフトの陽極酸化は、バルブベースに対するシャフトの接続に有利な効果を奏することが発見された。前記表面処理は、バルブベースの製造するものである熱可塑性ポリウレタンに対し、アルミニウムの良好な接着性を確実にする。
【0018】
好ましい実施形態では、バルブベースに対し接続された少なくともシャフト部が、バルブベースに対する接着性を改善するために、プラズマ処理される。
【0019】
他の好ましい実施形態では、シャフトは、熱可塑性樹脂から製造されたものである。主に、シャフトの円筒状(円柱状)又は部分的に円筒状(円柱状)の形状は、例えば、押出鋳型成形又は押出成形により製造することができる。通常、他のバルブ部品の取り付けに必要とされる、雌及び/又は雄ネジ山は、製造工程終了の前又はそれに続いて、即ち、回転の又はねじ切りの公知の方法を通して製造可能である。
【0020】
シャフトの製造に用いられる熱可塑性樹脂のじん性(toughness)及び延性(ductility)は、好ましくは、シャフトが低温で折れないことを確実にする。好適な熱可塑性樹脂の例は、スチレン、スチレンコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル(ポリオキシメチレン、ポリオレフィンなど)及びポリウレタンからなる群からの、強靭なグレード(tough grades)又はじん性が改良されたグレードである。特に好ましくは、マイナス30℃までの温度に適した熱可塑性樹脂である。アルミニウムシャフトと比較すると、熱可塑性樹脂から製造されるシャフトの特徴は、製造工程に要するエネルギーコストが非常に低く、製造時間がより短いことである。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、特に好ましい材料であり、硬化状態では、バルブシャフトとしての使用に必要な強度と、破損せずにシャフトが折れ曲がることを可能にする弾性を持つ。この種のバルブは、デザイン変形の広い多様性に関して有利であり、 利便性及び動作(すなわち、タイヤがポンプにより膨らむときの)に関しても有利である。
【0022】
好適な熱可塑性ポリウレタンは、例えば、ポリエステル又はポリエーテルを主原料とする。
【0023】
一実施形態によれば、熱可塑性ポリウレタンは、ショア硬度が、好ましくは70A〜95Dの範囲にあり、より好ましくは90A〜90Dの範囲、特に98A〜85Dの範囲にある。
【0024】
本発明の更なる実施形態によれば、熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、低硬度であり、バルブのシャフトは柔軟性がある。これは、特定の用途での、バルブの使用性を改善する。
【0025】
熱可塑性ポリウレタンは、良く知られている。製造工程は、(a)イソシアネートを(b)イソシアネートに対し反応性の化合物(数平均モル質量0.5×10
3 g/mol〜100×10
3 g/mol)並びに任意に(c)鎖延長剤(モル質量0.05×10
3g/mol〜0.499×10
3g/mol)と、任意に(d)触媒及び/又は(e)通常の助剤及び/又は添加剤の存在下で反応させる。
【0026】
成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対し反応性の化合物及び(c)鎖延長剤もまた、別々に又は一緒に定義される構造成分である。
【0027】
使用する有機イソシアネート(a)は、好ましくは脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族(araliphatic)及び/又は芳香族イソシアネートを含み、より好ましくは、トリ‐、テトラ‐、ペンタ‐、ヘキサ‐、ヘプタ‐及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2‐メチルペンタメチレン 1,5-ジイソシアネート、2‐エチルブチレン 1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン 1,5-ジイソシアネート、ブチレン 1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナート‐メチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン 1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン 2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート及び/又はジシクロヘキシルメタン 4,4‘-、2,4‘-及び2,2‘-ジイソシアネート、ジフェニルメタン 2,2‘-、2,4‘-及び/又は4,4‘-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン 1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン 2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3‘-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートを含む。更に好ましいイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又は1-イソシアナート-4-[(4-イソシアナートヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)である。特に好ましくは、4,4‘-MDIを使用する。
【0028】
イソシアネートに対し反応性である、使用する化合物(b)は、好ましくは、ポリエステロール又はポリエーテルオールであり、通常、まとめて用語「ポリオール」とも称する。前記ポリオールの数-平均モル質量は、0.5×10
3g/mol〜8×10
3g/mol、好ましくは0.6×10
3g/mol〜5×10
3g/mol、特に、0.8×10
3g/mol〜3×10
3g/molである。ポリオールの平均官能基数(functionality、官能性)は、好ましくは、1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に、2である。ポリオール(b)としては、第1級水酸基のみを有するものが好ましい。その平均モル質量は、DIN 55672−1に従い測定される。
【0029】
好ましく使用可能な鎖延長剤(c)は、脂肪族、芳香族脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物を含み、その化合物は、モル質量が0.05kg/mol〜0.499kg/mol、好ましくは二官能性化合物であって、例えば、ジアミン及び/又はアルカンジオール(アルキレン単位中に2〜10の炭素原子を持つ)であり、特に、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び/又はジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及び/又はデカアルキレングリコール(3〜8の炭素原子を持つ)であり、好ましくは、対応するオリゴ-及び/又はポリプロピレングリコールであり、ここでは、鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。化合物(c)が第1級水酸基のみを持つことが好ましい。
【0030】
一実施形態では、ジイソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネートに対し反応性の化合物(b)の水酸基と、鎖延長剤(c)との間の反応を特に促進させる触媒(d)は、第3級アミンであり、特に、トリエチレンアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N‘-ジメチルピペラジン、2−(ジメチル‐アミノ‐エトキシ)エタノール又はジアザビシクロ(2,2,2)オクタンである。他の好ましい実施形態では、これらはチタンエステル(titanic ester)、鉄化合物などの有機金属化合物であり、好ましくは、鉄(III)アセチルアセトネートであり、錫化合物は、好ましくは、錫ジアセテート、錫ジオクトエート(tin dioctoate)、錫ジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキル錫塩であり、好ましくは、ジブチル錫ジアセテート又はジブチル錫ジラウレートである。触媒(d)の好ましい使用量は、イソシアネートに対し反応性の化合物(b)100質量部につき、0.0001〜0.1質量部である。錫触媒、特に錫ジオクトエートを使用することが好ましい。
【0031】
通常の助剤(e)を、触媒(d)と一緒に構造成分(a)〜(c)に添加することも好ましい。例えば、界面活性剤、フィラー、難燃剤、核剤、酸化安定剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び顔料、並びに、任意に他の安定剤(例えば、加水分解、光、熱又は変色についてのもの)、無機及び/又は有機フィラー、補強剤、並びに可塑剤についても言及されるであろう。使用される好ましい加水分解安定剤は、オリゴマーの及び/又は高分子の脂肪族又は芳香族カルボジイミドである。本発明のTPUを、老化安定剤により、その老化から保護することが好ましい。本発明の目的に関し、安定剤は、プラスチック又はプラスチック混合物を、有害な環境影響から保護する添加剤である。その例は、一次又は二次酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、失活剤(quenchers)及び難燃剤である。商業的な安定剤の例は、「Plastics Additive Handbook」、第5版、H.Zweifel, ed.、Hanser Publishers、ミュンヘン、2001 ([1])、98-136頁に記載されている。
【0032】
原則、いかなる熱可塑性樹脂も、バルブシャフトの製造に適している。硬度は構造成分(a)〜(c)の使用により調整され、硬度レベルは、ここでは、比率(a)+(c):(b)で決定される。TPUのメルトインデックスは、構造成分(b)及び(c)の使用する量でのモル比の比較的広い範囲の使用により変更可能であり、ここで、鎖延長剤(c)の増量は溶融粘度を上昇させ、他方、メルトインデックスを低下させる。対応するTPUのショア硬度は、30A〜100Dであり、好ましくは、50A〜80D、特に好ましくは60A〜75Dである。
【0033】
熱可塑性ポリウレタンの製造における他の一般的な情報は、特に、下記の標準的なテキストで見出すことができる。:「ポリウレタンハンドブック」、Guenter Oertel、第2版、Hanser Publisher、ミュンヘン、421-433頁。低〜高結晶度のTPUの特定の製法は、EP0922552A1に見出すことが可能であり、その透明な外観については、EP1846465A1に見出すことができる。特に、透明なTPUは、例えば、WO2010/076224A1及びWO2007/118827A1に見出すことが可能であり、それらの内容がここで本出願に組み込まれる。
【0034】
バルブシャフトは、熱可塑性ポリウレタンから、例えば、押出鋳型成形又は押出成形により、及び/又は焼結プロセスにより製造される。好ましくは、押出鋳型成形(injection-molding)又は押出成形(extrusion)により製造することである。本発明によれば、キャップを固定するために、製造後のバルブのシャフトにねじ山(thread)を切り込むことも可能である。製造工程中で、例えば、押出鋳型成形を介したシャフトの製造工程で、ねじ山を形成することも可能である。
【0035】
従って、本発明は、上述したようなバルブの製造方法も導くものであり、シャフトが型内に配置され、バルブベースが型中のシャフトの周囲にキャスティング(鋳造)されて製造される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、軸方向に少なとも3mm程度、特に好ましくは少なくとも5mm程度、シャフトがバルブベースで囲まれる。バルブベースとシャフトとの間の接続を更に改良するために、好ましくは、バルブベースに接続したシャフト部に、外側の円管状表面から内側に及ぶ溝がある。一旦バルブベースがシャフト上に押し付けられると、バルブベースの材料が前記溝で充填され、従って、シャフトとバルブベースの間に付加的な連結(インターロック)が形成される。管表面から内側に向かって測定される溝の深さ及びその形状は、好ましくは、一方でバルブベースの材料が完全に溝を充填し、かつ、他方で、溝でのバルブベースの材料の厚さ十分な強度が残るように選択される。深さ0.1mm〜0.7mm、特に0.3mm〜0.5mmが、これらの要求の間で良好なバランスが取れることが分かった。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、バルブベースの寸法は、更に、シャフトの一端で各径(各ラジアル)方向にシャフトの外側端部を超えてバルブベースが突き出す程度が、シャフトの下端の径(直径)の少なくとも半分に該当する。特に好ましくは、シャフト端部の各径方向で、バルブベースがシャフトの外側端部を越えて突き出す程度は、シャフトのその下端の径に少なくとも相当する。例えば、シャフトのその下端の径が5mmの場合、シャフト端部の各径方向で、バルブベースがシャフトの外側端部を越えて突き出す程度は、好ましくは2.5mmであり、特に好ましくは少なくとも5mmである。この例のバルブベースの外径は、従って、好ましくは少なくとも10mm、特に好ましくは少なくとも15mmである。
【0038】
表現「軸方向」と「径方向」は、通常、円筒形状のシャフトの軸に関する。軸及び径方向での最小寸法は、一旦シャフトが柔軟性チューブ部に取り付けられると、シャフトが柔軟性チューブに対し、確実な連結を持ち、その連結を通る漏れがなく、例えば、空気が柔軟性チューブ内部から周囲へ漏れ出すことがない。
【0039】
柔軟性チューブ部に取り付けられるバルブベース接触領域は多様な形状とすることができる。一実施形態では、その形状は円であり、バルブベースは、従って、各径方向で同一程度に、シャフト下端でその外側端部から突き出る。他の実施形態では、接触領域は楕円径であり、突出の程度に関する上記最小寸法は、ここでは、横軸に関する。横軸は、楕円の短軸について使用される用語である。長軸は、縦軸についての用語である。バルブベースの接触領域の縦軸寸法は、好ましくは、その横軸寸法の1.5〜3倍である。
【0040】
バルブベースを柔軟性チューブ部上の楕円接触領域に固定する好ましい方法では、縦軸方向を、柔軟性チューブ部の縦軸方向と同じにする。柔軟性チューブ部の縦軸方向は、柔軟性チューブ部が使用可能なタイヤの走行方向に対応する。
【0041】
バルブベースを製造する材料として、弾性及び伸び性等の機械的特性が、柔軟性チューブ材料のそれらの特性と対応する熱可塑性ポリウレタンを選択することの効果が更に証明されている。バルブベースを製造し、そして、バルブベースが取り付けられる柔軟性チューブ部を製造するのに使用される材料が同一であることが特に有効である。適切な材料の選択により、膨らましのためのポンピングの間又は柔軟性チューブ部の作業の間の負荷の結果、材料の異なる特性が応力割れや分離現象を起こすおそれを、著し減少を達成することを可能にする。
【0042】
熱可塑性ポリウレタン製のバルブベースの製造方法及び出発材料は、熱可塑性ポリウレタンのバルブシャフト製造用の上記材料と対応する。
【0043】
バルブベースに関し、ショア硬度が40A〜70D、好ましくは50A〜50D、より好ましくは70A〜90Aの熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい。TPU製造は、有利には、上述した添加剤と共に潤滑剤を使用する。これらは、下記物質群から選択される:脂肪酸アミド、モンタン酸エステル(montanic esters)、グリセロール誘導体、ポリオレフィン及びそれらの組み合わせ。個別の化合物は、EP1826225A2及びそれに記載された文献に見出すことができる。加工助剤(processing aids)の含有量は、自転車インナーチューブに対するバルブシャフトの接着性を最大にするために、本発明の方法では最小化すべきである。全組成物に対する潤滑剤の割合は、0.001〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%とする。
【0044】
本発明のバルブを製造する好ましい方法は、シャフトを型に挿入する工程と、シャフト周囲で成型する工程の間に、型中でバルブベースを製造する工程とを有する。シャフトが金属製材料で製造された場合、少なくともシャフト部分を、バルブベースとの接続のために、前処理することが好ましく、特に、材料がアルミニウムを含む場合は陽極酸化を、又は、プラズマ処理を用いる。シャフトが熱可塑性ポリウレタンで製造された場合、バルブベースが製造された材料は、シャフト材料に対し良好な接着接続性を提供するので、前処理の必要性が非常に少ない。
【0045】
方法の好ましい実施形態では、バルブベースは、押出鋳型成形工程中で圧力下で製造される。シャフトは、型に挿入され、当該型は密閉され、そして、熱可塑性ポリウレタンが溶融状態でシャフトの下部に注入される。プラスチック組成物が硬化したら、最終バルブが型から複合部材の形で取り外される。ポリウレタン溶融物は、好ましくは、150〜250℃の温度で、100〜400barの型圧力で処理される。
【0046】
方法の他の実施形態では、バルブベースは、溶融の変わりに、ポリウレタンをベースとする成型システム(molding system)を使用して大気圧(周囲の圧力)で製造される成型システムは、1種以上の、特に2種の成分で製造される。この製造変形例は、溶融プロセスよりもより安価であるが、製造サイクル時間はより長時間かかる。
【0047】
成型システム用の出発材料は、本質的に、熱可塑性ポリウレタンの上記のものと同じである。主に使用される材料も、2よりも多い水酸基を持つポリオール及び/又は架橋剤であり、高機械的強度を持つ架橋ポリウレタンが製造される。好ましい架橋剤は、特にホット成型システムの場合、好ましくは別々に計量供給(metered)される短鎖グリコール又はジアミンである。成型システム及び対応する製造方法での更なる情報は、特に、下記標準的なテキストに見出すことができる:ポリウレタンハンドブック、Guenter Oertel編、第2版、Hanser Publisher、ミュンヘン、388−421頁。
【0048】
本発明は、更に、熱可塑性ポリウレタンから製造され、空気が柔軟性チューブ内に通る開口を持つ、膨張可能な柔軟性チューブ部を提供する。前記開口の近辺では、本発明のバルブのバルブベースに全周囲を囲んで柔軟性チューブ部が接着接続され、柔軟性チューブの内部空間とシャフトの内部空間との間が漏れの無い接続となる。柔軟性チューブ部を製造する好適な材料は、例えば、押出成型、射出成型又は吹き込み成型などのその製造方法と同様、公知である。
【0049】
本発明の内容では、柔軟性チューブ部の材料は、バルブ材料と同じ組成とすることができる。柔軟性チューブ部とバルブが異なる組成を持ち、又は異なる材料からなることも可能である。
【0050】
本発明の内容では、好ましくは、柔軟性チューブ及びバルブが熱可塑性ポリウレタンからなり、ここで、通常、柔軟性チューブ部及びバルブ用に使用する熱可塑性ポリウレタンの硬度は、同一ではない。
【0051】
開口を囲む柔軟性チューブ部表面及びバルブベースとの間の耐久性のある接続を製造する多様な方法がある。この目的に適した材料の例は、公知の接着剤、特にポリウレタンを主原料とする接着剤である。
【0052】
バルブを柔軟性チューブ部に接続する好ましい方法は、バルブベースの下側(裏面、底面)を溶剤で濡らし、バルブベースの下側を柔軟性チューブ部の表面に押し付ける工程を含む。バルブベースの硫酸化表面が柔軟性チューブ表面に押し付けられると、接着連結結合が起こるこの方法は、溶剤接着とも言う。特に好ましくは、溶剤が、エーテル、環状エーテル、アミン、アミド、アルコール及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される。特に、溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン及び/又はテトラヒドロフランを含む。上記物質の混合物も同様に好ましい。
【0053】
従って、本発明は、上記の柔軟性チューブ部を製造する方法も導き出し、当該方法は、バルブベースの下面を溶剤で濡らし、次いで、バルブベースの下面を柔軟性チューブ部の表面に押圧する工程を含む。
【0054】
他の好ましい変形例では、バルブベースと柔軟性チューブ部の間の接続は、溶接工程により形成される。熱溶接、高周波溶接又は超音波溶接が特に適している。
【0055】
従って、本発明は、上記柔軟性チューブ部を製造する方法にも関し、当該方法は、バルブベースを柔軟性チューブ部に溶接工程により接続し、特に、熱溶接、高周波溶接又は超音波溶接する工程を含む。
【0056】
本発明の範囲内では、得られる柔軟性チューブの膨張を可能にする穴を柔軟性チューブ部に形成し、続いて、バルブ又はバルブのシャフトをそれぞれ面一(flush)に穴に接続することが可能である。バルブを柔軟性チューブ部に先ず接続し、そして穴をバルブのシャフトを通じて形成することも可能である。
【0057】
本発明のバルブは、それを備えた柔軟性チューブと同様、単純でかつ低コストで製造可能である。一方ではバルブシャフトとバルブベースとの間の接続、例えば、バルブと柔軟性チューブとの間の接続は、強健で確実であり、本発明の主題は、従って、可能性のある使用の広い範囲にわたって適している。
【0058】
本発明に係るバルブ又は膨張可能な柔軟性チューブ部は、それぞれ、例えばインナーチューブの製造に適し、特に自転車(bike)用のインナーチューブの製造に適している。
【0059】
下記に本発明の実施形態が代表的に開示されているが、それは本発明を限定するものではない。本発明は、下記実施形態を含むものであって、それらは、ここで定義される各相互従属により示された実施形態の特定の組合せを含む。
【0060】
1)膨張可能な柔軟性チューブ部用のバルブであって、当該バルブは、管状のシャフトと、当該シャフトの一端の全周を囲んで接着接続されたバルブベースとを有し、当該バルブベースは熱可塑性ポリウレタンから製造されたもの。
【0061】
2)シャフトが熱可塑性樹脂、特に熱可塑性ポリウレタンから製造された実施形態1に係るバルブ。
【0062】
3)シャフトが金属材料、特に鉄、鋼又はアルミニウムから製造された実施形態1に係るバルブ。
【0063】
4)シャフトがアルミニウムから製造され、少なくともバルブベースに接続されたシャフト部の外側表面が陽極酸化された実施形態1に係るバルブ。
【0064】
5)バルブベースが、少なくとも3mm程度軸方向にシャフトを囲む実施形態1〜4のいずれか1つに係るバルブ。
【0065】
6)バルブベースの、シャフトの一端で各径方向に当該シャフトの外端を越えて突き出る程度が、少なくともシャフトの下端における径の半分である実施形態1〜5のいずれか1に係るバルブ。
【0066】
7)熱可塑性ポリウレタンから製造される膨張可能な柔軟性チューブ部であって、当該チューブ部は、開口を有し、実施形態1〜6のいずれか1に係るバルブのバルブベースに対し、その全周を囲み、かつ、上記開口を囲んで接着接続され、柔軟性チューブの内部空間とシャフトの内部空間との間の接続が、大気(外部の環境)から遮断されたもの。
【0067】
8)実施形態1〜6のいずれか1に係るバルブを製造する方法であって、当該方法が、シャフトを型に挿入する工程と、シャフト周囲で成型(金型で成形)する工程の間に当該型の内部でバルブベースを製造する工程とを含む方法。
【0068】
9)実施形態7に係る柔軟性チューブ部の製造方法であって、当該方法がバルブベースの下側を溶剤で濡らす工程と、次いでバルブベースの下側を柔軟性チューブ部の表面に押し当てる工程とを有する方法。
【0069】
10)実施形態9に係る方法であって、溶媒が、エーテル、環状エーテル、アミン、アミド、アルコール及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される方法。
【0070】
11)溶剤が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及び/又はテトラヒドロフランを含む実施形態10に係る方法。
【0071】
12)実施形態7に係る柔軟性チューブ部を製造する方法であって、当該方法が、溶接方法、特に、熱溶接、高周波溶接又は超音波溶接により、バルブベースを柔軟性チューブ部に接続する工程を含む方法。
【0072】
以下用いた例は本発明を更に説明するものである。基本の描写として考えられる、実施例と
図1のいずれも、例えば、特定の寸法又は成分の設計変更など本発明のいかなる限定を示すものではない。
図1は、本発明のバルブの図であり、当該バルブはシャフト10とバルブベース20とを有する。
【実施例】
【0073】
試験は、商業的に利用可能なスクラベランド式バルブシャフト(全長58mm、外径6mm)を使用した。バルブベース固定用のシャフト部の径は、約4mmの長さにわたって、7mm、より大きくした。この範囲の中間では、深さ0.5mmの、丸いU型の縦断面を持つ円周溝があった。
【0074】
<比較例>
アルミニウム製の上記寸法のバルブシャフトを、押出鋳型に挿入し、その型を密閉し、ショア硬度80Aの熱可塑性ポリウレタン(Elastollan 1180 A 10、BASFポリウレタン社製、レムフェルデ)をその材料上に注入し、バルブを形成した。溶融物が固体化後、直ちに、最終バルブ製品を型から取り出し、80℃で15時間貯蔵した。これは、材料の最終的な強度をもたらす。このように製造されたバルブでは、バルブベースがシャフトから容易に引き抜くことができた。接着が不十分であり、確実な安定をもたらす唯一の要因は、溝による連結であった。しかし、この連結は密閉をもたらしはしないので、例えば、自転車タイヤを膨らませるためのポンピングでの負荷圧力下の状態では、空気の漏れが回避できなかった。
【0075】
<本発明の実施例1>
比較例として記載した他のバルブシャフトを、同じプロセス条件で熱可塑性ポリウレタンに接続した。このシャフトはアルミニウム製で、完全に陽極酸化されたものである。このバルブでは、バルブベースとシャフトとの間の接着が、その結果のダメージがそこに残ることなく、バルブベースがシャフトから引き抜かれることがない程度に十分であった。シャフトとバルブベースとの間の接続は、耐久性があり、気密であった。
【0076】
<本発明の実施例2>
上記両方の試験で記載した他のバルブシャフトを、同じ条件で同じ熱可塑性ポリウレタンに接続した。シャフトはショア硬度75 Dの熱可塑性ポリウレタンから製造したものである。その長さは同様に58mmであり、その外径は6mmであった。2つのアルミニウムシャフトと対比すると、バルブベースを固定するための部分に膨張が起こらなかった。その下端から4mmの距離では、幅1mm、深さ約0.5mm、縦断面が長方形の溝があった。本発明の実施例の場合と同様に、バルブベースとシャフトとの間の接着が非常に良好であった。シャフトとバルブベースとの間の接続は耐久性があって、気密であった。
【0077】
上記3つの場合全てで、バルブベースは楕円径であって、その大きさは縦軸が40mm長さ、横軸が18mmの長さであった。その高さプロファイルは、
図1に質的(qualitatively)に描写されている。端部から始まり、その高さは徐々に増加し、シャフトの全高は5mmであった。シャフトを覆う部分のバルブベースの厚さは、約2〜0.5mmであり、ベースから上方へ離れるほど、シャフトの軸方向に沿って減少した。
【0078】
<本発明の実施例3>
バルブの内径と同じサイズの開口を商業的に利用可能な熱可塑性ポリウレタン製の自転車インナーチューブ (Firma Eclipse Microsystems社、エープマツィンゲン、スイス)に打ち抜いた。本発明実施例1として、本発明のバルブのベースを、溶媒としての液体テトラヒドロフランに1秒未満浸漬させた。バルブを、次いで、自転車インナーチューブの開口上中心に載せ、手動で材料に押圧した。15秒間後、バルブベース下側と柔軟性チューブ表面に接着があった。テトラヒドロフランを蒸発させる期間として、約60秒間室温で空気乾燥させ、接着の最終段階とした。バルブと柔軟性チューブとの間の接続は、気密で確かなものであった。