【実施例1】
【0014】
本発明の実施例について、以下
図1乃至5を用いて説明する。
【0015】
本発明の実施例に係るプラズマ処理装置1を
図1に示す。
図1は、本発明の実施例に係るにプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す図である。
【0016】
プラズマ処理装置1は、真空容器内部に配置された真空処理室2を備えている。また、真空容器下部は図示していないがターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有する排気装置と連結されている。また、円筒形を有した真空容器の上方及び周囲には、図示していない高周波電力が供給される同軸ケーブルとアンテナ或いはマイクロ波を伝播する導波管等の電界の発生手段またはソレノイドコイル等の磁界の発生手段が配置されて、電界または磁界が真空処理室2内部に供給可能に構成されている。
【0017】
本実施例のプラズマ処理装置1の真空容器の外側側壁は、図示しない別の真空容器と、開口であるゲートを介して連結されている。試料であるウエハ4が、当該別の真空容器内部の減圧された搬送室内を搬送されて真空処理室2との間でやり取りされる。
【0018】
また、真空処理室2の下部の中央部には、ウエハ4が円筒形状を有してその上面に載せられる試料台5が配置されている。さらに、真空容器は、図示していないガス供給用の供給管と連結され、ガス供給管は真空処理室2の上部または天井面に配置された複数のガス導入孔と連通されている。
【0019】
試料4が搬送室内から図示しないロボットアーム等の搬送装置の先端部上に載せられ保持されて、ゲートを通して真空処理室2内部に搬入され、試料台5の上方でこれに受け渡される。この後、ロボットアームが真空処理室2から退出してゲートがゲートバルブにより気密に閉塞されて真空処理室2内部が密封される。
【0020】
さらに、ウエハ4はその載置面である試料台5の誘電体で構成された上面において静電気により吸着されて保持される。ウエハ4の裏面と試料台5の載置面との間にはHe等の熱伝達用のガスが供給されてウエハ4と試料台5との間の熱伝導が促進されている。
【0021】
真空処理室2内部にはガス導入孔からガス源に連結されたガス供給管を通して供給された処理用のガスが導入されると共に、排気装置の動作により真空処理室2内部が排気されて、真空処理室2内部がガスの供給の量速度と排気の量速度とのバランスにより半導体ウエハ等の基板状の試料の処理に適した真空度の圧力まで減圧される。この状態で、真空処理室2内部に電界または磁界の発生手段から電界または磁界が供給され、処理用ガスの粒子が励起されプラズマ3が形成される。試料台5上のウエハ4の上面に予め形成された複数の膜が積層された膜構造がこのプラズマ3に含まれる荷電粒子或いは高い反応性を有する粒子(活性粒子)によりエッチングされる。
【0022】
このプラズマ3に含まれる励起された粒子は高くされたエネルギーを光として放出するため、プラズマ3は発光を生じている。真空処理室2の上方の天井面であって真空容器の上部には、このプラズマの発光を受けて検知するための受光器等透光性部材を有した受光器8が配置されている。プラズマ3の発光は、直接もしくはウエハ上面で反射された後、受光器8に受光され、これに電気的、光学的に連結あるいは接続されたエッチング量検出装置9に信号として伝達される。
【0023】
図2を用いて、本実施例でエッチング処理される膜構造の典型的な例を説明する。
図2は、
図1に示すプラズマ処理装置がエッチング処理の対象とするウエハ上の膜構造を模式的に示す図である。
【0024】
図2(A)に示すように、本実施例の処理対象の膜構造は、被処理膜であるポリシリコン膜201とその下方に境を接して配置された膜層である下地膜である酸化膜202とシリコン基板203とを有し構成されている。このような構成の膜構造に対して入射するプラズマからの光は、各膜間の境界あるいは界面部で反射して反射光を発生する。この反射光には、ポリシリコン膜201表面で反射する反射光221とポリシリコン膜201と酸化膜202の境界で反射する反射光222と酸化膜202とシリコン基板203の境界で反射する反射光223が存在する。
【0025】
これらの反射光の間には光路差が生じるため干渉光が形成される。また、エッチングの進行に伴い被処理膜であるポリシリコン膜201の膜の厚さは減少するため、各反射光の光路差は変化してその光の波長毎にその強度の変化の周期が異なる干渉現象が発生する。このように強度が変化する干渉光は、
図1の真空処理室2の上部でプラズマ3に面している受光器8を介して、エッチング量検出装置9の分光器10に伝達される。エッチング量検出装置9は、伝達された干渉光に係る信号から干渉光の強度の値及びその変化の量を検出し、その結果に基づいて被処理膜であるポリシリコン膜201のエッチング深さや残り膜厚さ等エッチング量や処理の終点への到達の判定を行う。
【0026】
図1に示すように、本実施例のエッチング量検出装置9は、分光器10、第1デジタルフィルタ12、微分器13、第2デジタルフィルタ14、微分波形比較器1 15、微分波形パターンデータベース1 16、微分波形比較器2 17、微分波形パターンデータベース2 18、これら微分波形比較器の結果に基づき割合を求める適合係数算出器19、適合係数算出器19が算出した適合係数を用いて適合パターンデータベースを作成する適合パターンデータベース作成器20、適合パターンデータベース21、微分波形比較器3 22、この微分波形比較器3 22からの出力に基づいて被処理膜の残膜厚さを算出しこれを時系列に記録する残膜厚さ時系列データ記録器23と、この残膜厚さ時系列データ記録器23により記録された残膜厚さの時系列データを用いて現在の残膜厚さの値を算出する回帰分析器24、現在の残膜厚さの値からエッチングの終了を判定する終点判定器25、及び終点判定器25の判定結果を表示する表示器26を備えている。
【0027】
なお、本実施例のエッチング量検出装置9は、表示器26を除き、各々が複数の機能の各々を奏するマイクロプロセッサ等の半導体デバイスを含む検出用ユニットが有線または無線の通信回線で接続されたものでもよく、これら複数の機能を奏することのできる1つの半導体デバイスで構成されていても良い。半導体デバイスを含む用の検出用ユニットは、マイクロプロセッサ等の演算器と、外部と信号を通信するための通信インターフェースと、信号、データやソフトウエアを記憶するRAM,ROM、あるいはハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ等の記憶装置が通信可能に接続されて構成されている。
【0028】
真空処理室2内に形成されたプラズマ3の発光はウエハ4の上面で反射され受光器8を通して分光装置10に伝達される。受光器8からの信号を受けた分光装置10では、干渉光の信号は所定の周波数に分光され各々の波長の強度がデジタル信号に変換されて出力される。
【0029】
分光器10により、ウエハ4の処理中の任意の時刻におけるサンプリング信号として出力された複数の特定波長の信号は時系列データyijとして図示しないRAM等の記憶装置に記憶される。この時系列データyijは第1デジタルフィルタ12に伝達されて平滑化処理され、平滑化時系列データYijとしてRAM等の記憶装置に記憶される。
【0030】
次に、平滑化時系列データYijは微分器13に伝達され、その時間微分(微係数)値(1次微分値あるいは2次微分値)の時系列データdijが算出されRAM等の記憶装置に記憶される。微係数値の時系列データdijは第2デジタルフィルタ14により平滑化処理され、平滑化微係数時系列データDijとしてRAM等の記憶装置に記憶される。そしてこの平滑化微係数時系列データDijから干渉光の強度の微分値の波長依存性を示す(波長をパラメータとする)微分波形のパターン(実パターン)が求められる。
【0031】
ここで、平滑化微係数時系列データDiの算出について説明する。本実施例では、デジタルフィルタ回路12として例えば2次バタワース型のローパスフィルタが用いられる。2次バタワース型のローパスフィルタにより平滑化処理される平滑化時系列データYiは式(1)により求められる。
【0032】
Yi = b1・yi + b2・yi-1 + b3・yi-2 ? [ a2・Yi-1 + a3・Yi-2] ・・・(1)
ここで係数b、aはサンプリング周波数およびカットオフ周波数により数値が異なる。また、本実施例でのデジタルフィルタの係数値は例えば a2=-1.143、a3=0.4128、b1=0.067455、b2=-0.013491、b3=0.067455(サンプリング周波数10Hz、カットオフ周波数1Hz)が用いられる。2次微係数値の時系列データdiは微分器13により5点の時系列データYiの多項式適合平滑化微分法を用いて式(2)から以下のように算出される。
【0033】
j=2
di = Σwj・Yi+j ・・・(2)
j=-2
ここで重み係数wに関して w−2=2、w−1=−1、w0=−2、w1=−1、w2=2である。
前記微係数値の時系列データdiを用いて平滑化微係数時系列データDiはデジタルフィルタ回路14としては、例えば2次バタワース型ローパスフィルタにより式(3)から以下のように算出される。
【0034】
Di = b1・di + b2・di-1 + b3・di-2 ? [ a2・Di-1 + a3・Di-2] ・・・(3)
微分波形パターンデータベース1 16には、所定の膜厚さを有した下地の酸化膜上方に配置されたエッチング量測定の対象となる被処理膜であるポリシリコンのエッチング処理中の残り膜厚さの量(残膜量)に対する干渉光の強度の微分波形パターンデータ値P1sjが、ウエハ4の処理に先立って予め記憶されている。微分波形比較器1 15においては、ウエハ4の処理中に実際に得られた干渉光に係る微分波形データである実パターンと微分波形パターンデータベース1 16に記憶されていた微分波形パターンデータ値P1sjとが比較されて、両パターン同士の差の値が算出される。
【0035】
同様に、微分波形パターンデータベース2 18には、前記微分波形パターンデータベース1 16とは異なる所定の膜厚さを有した下地の酸化膜上方に配置されたエッチング量測定の対象となる被処理膜であるポリシリコンの残膜量に対する干渉強度の微分波形パターンデータ値P2sjが予め設定されている。微分波形比較器2 17においては、ウエハ4の処理中に実際に得られた干渉光に係る微分波形データである実パターンと微分波形パターンデータベース2 18に記憶されていた微分波形パターンデータ値P2sjとが比較されて、両パターン同士の差の値が算出される。本実施例では、微分波形パターンデータベース1 16と微分波形パターンデータベース2 18とに記憶され、残膜量の厚さの検出に用いるものとして登録される微分波形データの各々は、任意の範囲でばらつく下地膜である酸化膜202の膜厚さの上限および下限値またはこれらに近い値の膜厚さを有した酸化膜202の上方に配置されたエッチング量測定の対象となる被処理膜であるポリシリコンのエッチング処理中の残り膜厚さの量(残膜量)に対する干渉光の強度の微分波形パターンデータが用いられている。
【0036】
一方、
図2の(B)は、下地膜である酸化膜211、212の膜の厚さが異なるウエハの断面を示している。LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により成膜された酸化膜は膜の厚さの再現性が低いことが知られておりその再現性はおよそ10%程度といわれている。
【0037】
このように下地膜である酸化膜211、212の膜の厚さが異なった場合に問題が生じる。被処理膜であるポリシリコンの残膜量が同じ場合でも、下地膜である酸化膜211、212の膜の厚さが異なる場合、
図2の(C)に示すように下地膜である酸化膜と基板との境界で反射した光223とその他の反射光221、222との光路差は異なることになる。干渉においては、この光路差により干渉光の強度の極大極小が決まるため、同じポリシリコン膜201の厚さでも干渉光の強度の値は異なるものとなり、干渉光の強度に基づいて膜厚さを精度良く検出することが困難となる。
【0038】
図3に、光の波長700nmで被処理膜がポリシリコンで下地膜である酸化膜の膜厚値が50nm、60nm、70nmであった場合のポリシリコンの残り膜厚に対する干渉強度の変化を図示する。
図3は、
図2に示す膜構造に係る干渉光の強度の値と下地膜の厚さとの関係を示すグラフである。
【0039】
図3に示すように、下地酸化膜の膜厚値が異なると干渉光の強度の変化が異なるものとなる。干渉光の強度の極小値は、下地酸化膜の膜厚値が異なるウエハではポリシリコン膜の残り膜厚が異なる。これは、光干渉を利用した残り膜厚判定を行う装置にとって下地膜酸化膜の膜厚値によって、判定精度が悪くなることを意味している。
【0040】
本実施例では、下地の酸化膜202の膜厚さの値の異なる膜構造をエッチング処理に対応する微分波形データベースを微分波形パターンデータベース1 16および微分波形パターンデータベース2 18に各々記憶しておき、これらのデータベースに記憶されたデータを基本データベースとして組み合わせて新たにパターンデータ或いはそのデータベースを作成しそのパターンデータを膜厚さの検出に用いることにより、下地の酸化膜202の膜厚さの値がばらついた場合でも、その上方のポリシリコン膜201の膜厚さあるいは終点を精度良く判定することが出来る。
図1では、微分波形パターンデータベースは2つ表示しているが、2つ以上であっても良い。
【0041】
以下に、本実施例において、異なる膜厚さの酸化膜211,212の各々に応じた微分波形データベースに記憶されたパターンデータを基本データとして組み合わせて膜厚さ検出用の微分波形を算出する構成を説明する。微分波形比較器1 15および微分波形比較器2 17の各々では、微分波形データベース1 16、微分波形データベース2 18各々に記憶された微分波形データのパターンと、半導体デバイスを製造する製品用のウエハ4の処理中に得られた微分波形データの実パターンとの最小残差σs1(t)とσs2(t)とが求められる。本例の残差は以下に示すように各時系列データ値の自乗誤差の大きさを用いている。
【0042】
この最小残差σs1(t)とσs2(t)との値が伝達された適合係数算出器19では、この二つの最小残差の比を適合係数α(t)を以下の式(4)を用いて算出して出力する。
【0043】
α(t)= σs2(t)/( σs1(t)+ σs2(t)) ・・・(4)
適合パターンデータベース作成器20は、受信した適合係数α(t)の値と微分波形パターンデータ値P1sj及びP2sjとを用いて、適合パターンデータベース21を以下の式(5)で作成して記憶装置に出力して記憶させる。
【0044】
NDBsj=α(t)・P1sj + (1-α(t))・P2sj ・・・(5)
次に、微分波形比較器3 22が、適合パターンデータベース21と実パターンとを比較し、任意の時刻におけるポリシリコン膜の残り膜厚(瞬時膜厚)を求め残膜厚さ時系列データ記録器23に格納する。回帰分析器24は、残膜厚さ時系列データ記録器23に記録された現時点(任意の時刻)と過去の複数の時刻での残り膜厚(瞬時膜厚)を用いて、回帰演算により現在の残り膜厚(計算膜厚)を算出する。
【0045】
この回帰演算により算出された結果としての残り膜厚が終点判定器25に伝達され、終点判定器25が予め設定された目標残厚さ値と現在の残り膜厚(計算)を比較して目標残膜厚さ値を現在の残り膜厚(計算)以下であるかを判定する。目標以下であると判定された場合には、被処理膜のエッチング量が所定値になった(修訂に到達した)ものと判定されてエッチング処理を終了する指令をプラズマ処理装置1に送信する。さらに、その判定の結果が表示器26に伝達され、液晶或いはCRTを有する表示器26上に表示に当該結果が表示され使用者に報知される。なお、表示器26には、プラズマ処理装置1の運転、動作中の異常や動作のエラーの情報も報知される。
【0046】
次に
図4のフローチャートを用いて、
図1のエッチング量検出装置9でエッチング処理を行う際に被処理膜のエッチング量を求める手順について説明する。
図4は、
図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置のエッチング量を検出する動作の流れを示すフローチャートである。主に、エッチング量検出装置9の動作の流れを示している。
【0047】
本実施例では、ウエハの4処理に先立って、被処理膜であるポリシリコン膜201の目標の残り膜厚さの値とその検出あるいは判定に用いる微分波形パターンデータベース1 16と微分波形パターンデータベース2とに記憶されたパターンデータの設定を行う(ステップ300)。この2つ微分波形パターンデータベースで選択されたパターンデータとしては、下地層の酸化膜202が異なる膜厚さであるものを選択し設定する。
【0048】
また、本実施例では比較する微分波形パターンデータベースは2つであるが、2つ以上であっても良い。3つ以上の微分波形パターンデータベースを用いる場合には、上記の最小残差σsi(t)のより小さいものから2つを選択して式(4)によって適合係数α(t)を求めても良い。
【0049】
次に、真空処理室2内においてウエハ4の処理を開始して得られる干渉光のサンプリング(たとえば0.1〜0.5秒毎に)を開始する(ステップ301)。この際、エッチング処理の開始に伴いサンプリング開始命令が出される。エッチングの進行に従って変化する多波長の発光強度が、エッチング量検出装置9の分光器10に伝達されその光検出器により所定の周波数毎に光の強度に応じた電圧の光検出信号として検出され出力される。
【0050】
分光器10の光検出信号はデジタル変換され、任意の時刻に対応付けられたデータ信号としてのサンプリング信号yijが取得される。次に、分光器10からの多波長出力信号yijが第1段目のデジタルフィルタ回路12により平滑化され、任意の時刻の時系列データYijが算出される(ステップ302)。
【0051】
次に、微分器13に時系列データYijが伝達され、S-G法(Savitzky-Golay method)により時系列の微係数dijが算出される(ステップ303)。すなわち、微分処理(S-G法)により信号波形の係数(1次または2次)diが検出される。
【0052】
微係数dijが、第2段目のデジタルフィルタ回路14に伝達され、平滑化(smoothing)微係数時系列データDijが算出される(ステップ304)。得られた平滑化微係数時系列データDijは、微分波形比較器1 15及び微分波形比較器2 17に伝達される。
【0053】
微分波形比較器1 15においては、σs(t)=√(Σ(Dij-P1sj)2/j)値の算出し最小のσs1(t)がされる(ステップ305)。同様に、微分波形比較器2 17においてはσs(t)=√(Σ(Dij-P2sj)2/j)値の算出し最小のσs2(t)が算出される(ステップ306)。ステップ305,307は並行して実施されても良い。得られたσs1(t)とσs2(t)とが適合係数算出器19に伝達されて、これらから適合係数α(t)= σs2(t)/( σs1(t)+ σs2(t))が算出される(ステップ307)。
【0054】
適合パターンデータベース作成器20に得られた適合係数α(t)が伝達され、微分波形パターンデータベース1 16に設定された微分波形データパターン値及び微分波形パターンデータベース2 18に設定された微分波形データパターン値とを用いて、式(5)により適合微分波形パターンデータベース21が作成され記憶装置に記憶される(ステップ308)。微分波形比較器3 22が、ステップ308で作成した適合微分波形パターンデータベース21のデータ値とステップ304で作成した平滑化微係数時系列データDijから得られた微分波形パターンである実パターンのデータとをパターンマッチングし、最も適合したパターンデータとして最小の残差となる適合微分波形パターンデータベース21のデータに対応する残り膜厚さを当該任意の時刻(現時刻)での瞬時膜厚データZiとして算出する(ステップ309)。
【0055】
ステップ309で残膜厚さ時系列データ記録器23において記録された瞬時膜厚時系列データZiと処理中の過去の複数の時刻での瞬時膜厚時系列データZiとを用いて、回帰分析器24により現在の計算膜厚値が算出され記憶される(ステップ310)。すなわち、回帰分析器24の演算により、1次回帰直線Y=Xa・t+Xb (Y:残膜量、t:エッチング時間、Xa:Xaの絶対値がエッチング速度、Xb:初期膜厚)が求められ、この回帰直線から現時刻でのエッチング量(または残膜量)が算出され記憶装置に記憶される(ステップ310)。
【0056】
なお、ステップ309において、比較した結果実パターンの適合微分波形パターンデータとの最小の残差が、予め定めた閾値以上であった場合には、当該最小の残差となる適合微分波形パターンデータに対応する膜厚さを現時刻での瞬時膜厚データZiとして記憶せずにおくこともできる。また、過去の処理中の時刻(例えば現時刻の直前のサンプリング時刻)の瞬時膜厚データZiや上記回帰演算したものを代わりに現時刻の瞬時膜厚Ziとしてステップ310における回帰分析器24での演算を行っても良い。
【0057】
現在の被処理膜の残膜量が予め設定した目標残膜厚さ値(ステップ300で設定)と比較され、目標残膜厚さ値以下と判定されると、目標に到達したと判定され、エッチング処理を終了させる信号がプラズマ処理装置1に発信される。到達していないと判断された場合は、ステップ302の処理に戻る(ステップ311)。エッチングの深さ等エッチング量が判定され(ステップ311)これが十分であると判定されたならば、最後にサンプリング終了の設定を行う(ステップ312)。
【0058】
ステップ311で目標に到達したと判定された場合に、エッチング処理を終了させる制御だけでなく、次のステップのエッチング処理を行うようにプラズマ処理装置1に指令を発信しても良い。例えば、処理速度を低減させたオーバーエッチング処理や、エッチング処理対象の膜が複数の膜層から構成されている場合には下層の膜層に適したものにプラズマ処理装置1の運転条件を変更して当該処理を実施しても良い。
【0059】
図5、本実施例による効果を示す。
図5は、
図1に示す実施例においてエッチング処理されたウエハの効果を示すグラフである。
【0060】
本図では、下地酸化膜の厚さが60nmのウエハをエッチングした時の結果を示している。
図5のOx50nmは下地酸化膜の厚さが50nmの微分波形パターンデータベース単独とのマッチング結果を、Ox70nmは下地酸化膜の厚さが70nmの微分波形パターンデータベース単独とのマッチング結果を、適合DBは本発明による結果であり、下地酸化膜厚の厚さが50nmと70nmのものをそれぞれ微分波形パターンデータベース1 16と微分波形パターンデータベース2 18に設定し、パターンマッチングした結果である。
【0061】
図5の(B)は
図5(A)を被処理膜の残り膜厚30nm付近で拡大したものである。
図5(B)のOx70nmである下地酸化膜の厚さが70nmの微分波形パターンデータベース単独とのマッチング結果の場合、49.5秒でポリシリコンの残膜量30nmを下回ったことを検出する。
【0062】
図5(B)のOx50nmである下地酸化膜の厚さが50nmの微分波形パターンデータベース単独とのマッチング結果の場合、50.5秒でポリシリコンの残膜量30nmを下回ったことを検出する。
図5(B)の適合DBである下地酸化膜厚の厚さが50nmと70nmのものをそれぞれ微分波形パターンデータベース1と微分波形パターンデータベース2に設定した本発明アルゴリズムでの処理結果では50.0秒でポリシリコンの残膜量30nmを下回ったことを検出している。
【0063】
図5の(B)では適合DBはOx50nmとOx70nmのちょうど中間に位置しており、下地酸化膜の膜厚が60nmの場合の膜厚推移を示している。また下地酸化膜の膜厚が50nmの結果が、ポリシリコンの残膜量30nmに最も遅く到着していることがわかる。これは
図3に示した干渉強度の極小値が下地酸化膜厚の膜厚値に依存し下地酸化膜の厚さが70nm、60nm、50nmとなるにつれて極小値はポリシリコンの残膜量が多くなっていることと相関が取れる。
【0064】
また、以上の説明の通り、本実施例において下地酸化膜厚の厚さの情報を下地酸化膜厚の生産管理にも使用することが出来る。