【実施例】
【0083】
以下、上述した計測装置10について具体的な数値等を用いて説明する。なお、以下の各例における計測装置は、水平方向に±31°、垂直方向に±24°の範囲の距離計測を行うものである。z=2000mmの位置における投影範囲は、水平方向に2400mm、垂直方向に1800mmとなる。また、各例では、隣り合う回折光の主光線間の角度Δθと0次回折光に対する1次回折光の角度とがおおよそ一致するため、Δθの値として、X方向またはY方向の1次回折光の回折角度のうち大きい方を採用している。ここで、例1から例8は実施例であり、例9と例10は比較例である。
【0084】
(例1)
まず、例1の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−1次〜1次、Y方向に−1次〜1次の間に分布している。
【0085】
本例の回折光学素子30の格子加工領域すなわち位相分布を発現させる領域は、4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが2.4μm、Y軸方向におけるピッチP
yが3.0μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0086】
図9(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図9(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図9(a)には、光スポットが縦に3列、横に3列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。
【0087】
本例の回折光学素子30の製造方法は以下のとおりである。まず、透明基板32として石英基板を用い、その石英基板32の表面上にレジストパターンを形成する。そしてそのレジストパターンに対してRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングを行う工程を複数回繰り返して、石英基板32の表面に凹凸パターンを形成する。これにより、波長が830nmの光において、1次回折光のX方向における回折角度が12°、Y方向における回折角度が16°となる本例における回折光学素子30を作製する。
【0088】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが20.0°である波長830nmの入射光を入射する。本例では、
図9(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図9(b)に、z=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0089】
図9(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図9(b)には、外周部から中心部に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図9(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.15である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.17である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.73Wである。
【0090】
(例2)
次いで、例2の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−2次〜2次、Y方向に−1次〜1次の間に分布している。
【0091】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが4.0μm、Y軸方向におけるピッチP
yが3.0μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0092】
図10(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図10(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図10(a)には、光スポットが縦に3列、横に5列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0093】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が20°、Y方向における回折角度が16°である。
【0094】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが16.0°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図10(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図10(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0095】
図10(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図10(b)には、照射範囲の外周形状が角部を面取りされた横長の長方形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図10(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.18である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.20である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.77Wである。
【0096】
(例3)
次いで、例3の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−4次〜4次、Y方向に−3次〜3次の間に分布している。
【0097】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが7.1μm、Y軸方向におけるピッチP
yが7.0μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0098】
図11(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図11(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図11(a)には、光スポットが縦に7列、横に9列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0099】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が6.7°、Y方向における回折角度が6.9°である。
【0100】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが6.9°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図11(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図11(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0101】
図11(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図11(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図11(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.30である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.34である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.86Wである。
【0102】
(例4)
次いで、例4の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−8次〜8次、Y方向に−6次〜6次の間に分布している。
【0103】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが13.5μm、Y軸方向におけるピッチP
yが12.9μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0104】
図12(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図12(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図12(a)には、光スポットが縦に13列、横に17列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0105】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が3.5°、Y方向における回折角度が3.7°である。
【0106】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが3.7°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図12(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図12(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0107】
図12(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図12(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図12(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.38である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.40である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.89Wである。
【0108】
(例5)
次いで、例5の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−16次〜16次、Y方向に−12次〜12次の間に分布している。
【0109】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが26.2μm、Y軸方向におけるピッチP
yが24.8μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0110】
図13(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図13(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図13(a)には、光スポットが縦に25列、横に33列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0111】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が1.8°、Y方向における回折角度が1.9°である。
【0112】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが1.9°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図13(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図13(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0113】
図13(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図13(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図13(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.40である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.43である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.90Wである。
【0114】
(例6)
次いで、例6の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−32次〜32次、Y方向に−24次〜24次の間に分布している。
【0115】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが51.5μm、Y軸方向におけるピッチP
yが48.5μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0116】
図14(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図14(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図14(a)には、光スポットが縦に49列、横に65列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0117】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が0.9°、Y方向における回折角度が1.0°である。
【0118】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが1.0°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図14(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図14(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0119】
図14(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図14(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図14(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.39である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.43である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.90Wである。
【0120】
(例7)
次いで、例7の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−16次〜16次、Y方向に−12次〜12次の間に分布している。
【0121】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが26.2μm、Y軸方向におけるピッチP
yが24.8μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0122】
図15(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図15(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図15(a)には、光スポットが縦に25列、横に33列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0123】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が1.8°、Y方向における回折角度が1.9°である。
【0124】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが1.4°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図15(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図15(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0125】
図15(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布は振動的に変化している。なお、
図15(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されているが、光量が変化する境界領域の形状がきれいな丸ではなくジグザク線で描いた丸のようになっており、中心から周辺までの間の変化量の比率が一定でない分布が示されている。なお、細かな視点で見れば中心から周辺までの間の変化量の比率が一定でなくても、近隣領域間での光の強度差はそれほど大きくないため、平均すれば一様に中心に向かうにつれて光量が大きくなっている分布とみなせる。
図15(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.34である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.44である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.84Wである。
【0126】
(例8)
次いで、例8の計測装置10について説明する。本例の計測装置10が備える回折光学素子30により発生する回折光の次数(m
x、m
y)は、X方向に−16次〜16次、Y方向に−12次〜12次の間に分布している。
【0127】
本例の回折光学素子30の格子加工領域は4mm×4mmであり、この4mm×4mm領域内に、X軸方向におけるピッチP
xが26.2μm、Y軸方向におけるピッチP
yが24.8μmの基本ユニット31が2次元的に配置されている。
【0128】
図16(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。本例の回折光学素子30の基本ユニット31における位相分布は、平行光を入射したときに投影面上に
図16(a)に示すような回折光の分布を発生させるよう、反復フーリエ変換法により計算されている。なお、
図16(a)には、光スポットが縦に25列、横に33列の格子状に配された光スポットパターンが示されている。本例では、光スポットパターンのピンクッション型の歪をそのままにしているが、次数分布を補正して歪を取り除くことも可能である。
【0129】
本例の回折光学素子30の製造方法は、例1における回折光学素子30と同様である。本例の回折光学素子30は、波長が830nmの光に対する、1次回折光のX方向における回折角度が1.8°、Y方向における回折角度が1.9°である。
【0130】
本例の計測装置10では、上述の回折光学素子30に対して、平行光である波長830nmの光束を入射し、出射側に平行光を入射した場合に広がり角φが1.9°となる拡散板を配置する。本例でも
図16(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図16(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0131】
図16(b)に示すように、本例の計測装置10では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図16(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図16(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.40である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.44である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.90Wである。
【0132】
(例9)
次に、例9の計測装置について説明する。本例の計測装置は、回折光学素子30の代わりに単一の回折光を出射する回折光学素子を用いて、所定の投影範囲に光を照射させる。
【0133】
図17(a)は、本例の回折光学素子に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。なお、
図17(a)には、1つの光スポットが領域の中心部に配された光スポットパターンが示されている。
【0134】
本例の計測装置では、上述の回折光学素子に広がり角φが37.5°の波長830nmの発散光を入射する。本例では、
図17(a)の単一の回折光122の光量の積算値を1Wとする。
図17(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0135】
図17(b)に示すように、本例の計測装置では、投影範囲内の光量の分布はなめらかに変化している。なお、
図17(b)には、照射範囲の外周形状が丸形状であって、中心に向かうにつれて光量が大きくなる分布が示されている。
図17(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.16である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.17である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.67Wである。
【0136】
本例では、投影範囲の周辺に無駄な照射が多く行われるため、上述の例1から例8と比べて光の利用効率が低下しているのがわかる。また、上述の例1から例8と比べて、中心部において強い光量を得られる領域範囲が狭く、中心付近の領域における変化量も大きくなっているのがわかる。
【0137】
(例10)
次いで、例10の計測装置について説明する。本例では、上述の例5に用いた回折光学素子30を用いる。
【0138】
図18(a)は、本例の回折光学素子30に対して波長830nmの平行光を入射した場合に投影面上に投影される回折光の分布を示す図である。なお、
図18(a)に示す回折光の分布は、
図13(a)に示す回折光の分布と同じである。
【0139】
本例の計測装置では、上述の回折光学素子30に対して、広がり角φが1.0°である波長830nmの入射光を入射する。本例でも
図18(a)の各回折光122の光量の積算値を1Wとし、各回折光122の強度は一様であるとする。
図18(b)に、そのときのz=2000mmにおけるx=−2000mm〜2000mm、y=−1500mm〜1500mmの範囲に照射される光の放射照度の分布(単位:W/cm
2、1マスの大きさ40mm×30mmの長方形)を示す。
【0140】
図18(b)に示すように、本例の計測装置では、投影範囲内の光量の分布は振動的に変化している。なお、
図18(b)には、照射範囲の外周形状が糸巻き状すなわち横長の長方形における各辺の中心部が若干凹んだ形状であって、その領域内に明暗の縞模様(横縞)が生じている分布が示されている。
図18(b)において、投影範囲内の最大の放射照度に対する最小の放射照度の比は0.12である。また、z=2000mmにおける投影範囲において4隅の80mm角領域の光量の平均値と中心部における80mm角領域の光量の平均値の比は0.46である。また、投影範囲に入射される光量の積算値は0.84Wである。
【0141】
本例では、回折光学素子30に入射する光の広がり角が不十分なために、中心部においても近隣領域間での強度差の大きい強度分布となっているのがわかる。
【0142】
なお、
図19は、各例のパラメータをまとめて示す説明図である。また、
図20は、例1から例7、例9、例10の水平方向の放射照度の分布をまとめて示す説明図である。なお、
図20(a)に、例1から例6、例9の水平方向の放射照度の分布をまとめて示し、
図20(b)に、例5、例7、例10の水平方向の放射照度の分布をまとめて示している。
【0143】
図20(a)に示されるように、投影範囲外に漏れる光量を小さくするためには、発生させる回折光の数は、例2の回折光の数である15点よりも大きい方がよいといえる。また、入射光の広がり角φは例2での広がり角16°よりも小さい方が好ましい。また、
図20(b)に示されるように、入射光の広がり角度φが、φ>0.5Δθをより十分に満たす方が投影範囲に照射される光の強度分布をより均一にできる。例えば、例10は、φ>0.5Δθを満たしているために、水平位置が投影範囲内となる−1200mm〜1200mmの範囲内においてほぼ1.50E−05以上の放射照度を維持しているものの、例5および例7に比べて近隣領域間での強度差の大きい強度分布となっている。なお、例5は、例10に比べて近隣領域間での強度差が小さい強度分布となっている。また、例7は、例5に比べてさらに近隣領域間での強度差が小さい強度分布となっている。