(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、照明用の光源として、白熱電球や蛍光灯に比べ低消費電力で駆動可能な発光ダイオード(以下「LED」ともいう。)が注目されている。LEDは小型で耐衝撃性にも強く、球切れの心配がないといった利点がある。
【0003】
このような照明機器用の電源としては、家庭用電源等交流を電源として用いることが望まれる。一方、LEDは直流駆動素子であり、順方向の電流でのみ発光する。また、照明用途として現在多用されているLEDの順方向電圧V
fは3.5V程度である。LEDはV
fに達しなければ発光せず、逆にV
fを超えると過度の電流が流れてしまう特性を有する。したがってLEDに対しては直流による駆動が適しているといえる。
【0004】
この相反する条件に応えるため、交流電源を用いたLEDの駆動回路が、種々提案されている。例えば、変化する電圧値に応じてV
fの合計値を変化させるようにLEDを切り替える方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、
図9の回路図に示すように、多段に直列接続されたLEDをブロック161、162、163、164、165、166に分け、整流波形の入力電圧の電圧値に応じてLEDブロック161〜166の接続を、マイクロコンピュータで構成されたスイッチ制御部167で切り替えることで、段階的にV
fの合計値を変化させる。この結果、
図10のタイミングチャートに示す電圧波形のように、整流波形に対して複数の方形波でLEDを点灯できるため、単一の方形波のみでのONデューティに比べ、LEDの利用効率を改善できる。
【0005】
一方で本出願人は、複数のLED素子を直列接続してブロック化したLEDブロックを複数段、直列に接続した多段回路を、交流の全波整流で駆動するAC多段回路を開発した(特許文献2)。このAC多段回路は、
図11に示すように、交流電源APをブリッジ回路1102で全波整流し、LEDブロックの多段回路に対して印加する。LEDブロックの多段回路は、第一LEDブロック1111と、第二LEDブロック1112と、第三LEDブロック1113とを直列に接続している。第一LEDブロック1111の通電量に基づいて、第二LEDブロック1112をバイパスする第一バイパス経路BP1のON/OFFを第一LED電流制御トランジスタ1121Aで切り替え、また第一LEDブロック1111及び第二LEDブロック1112の通電量に基づいて、第三LEDブロック1113をバイパスする第二バイパス経路BP2のON/OFFを第二LED電流制御トランジスタ1122Aで切り替える。このAC多段回路は、電源効率を維持しつつ、LED利用効率及び力率を改善することができる。
【0006】
このAC多段回路の、電流波形を
図12に示す。この図に示すように電源周期に同期した階段状の電流波形を有する。しかしながら、この階段状電流波形は正弦波の電流に近い波形ではあるものの、階段状に変化するため高調波発生の原因となる。一方、負荷としてLEDに代えて白熱電球を使用した場合の電流波形は正弦波となるため、高調波の発生はない。なおIEC61000−3−2規格において照明機器はクラスCに分類されており、高調波の限度値が規定されている。特に25W以上の機器に適用される限度値は、25W以下の機器に比べて厳しく、
図11のAC多段回路では適合させることが困難である。
【0007】
また
図13に、特許文献1の発光ダイオード駆動方法による高調波電流の測定データの一例を示す。この図に示すように、高調波の次数が特に11,13,15次高調波において限度値を上回っており、不適合となる。
【0008】
このような課題を解決するために、本発明者らは
図3に示す発光ダイオード駆動装置1400を開発した。この発光ダイオード駆動装置は、交流電源APに接続可能で、該交流電源APの交流電圧を整流した整流電圧を得るための整流回路1402と、整流回路1402と接続される第一LED部1411と、第一LED部1411と直列に接続される第二LED部1412と、第二LED部1412と直列に接続される第三LED部1413と、第三LED部1413と直列に接続される第四LED部1414と、7第二LED部1412と並列に接続され、第一LED部1411への通電量を制御するための第一バイパス手段1421と、第三LED部1413と並列に接続され、第一LED部1411及び第二LED部1412への通電量を制御するための第二バイパス手段1422と、第三LED部1413と直列に接続され、第一LED部1411、第二LED部1412及び第三LED部1413への通電量を制御するための第四バイパス手段1424と、これら第一バイパス手段1421、第二バイパス手段1422及び第三バイパス手段1423を制御するための電流制御手段1430と、第一LED部1411から第三LED部1413が直列接続される出力ラインOL上を流れる電流量に基づく電流検出信号を検出するための電流検出手段1404と、整流回路1402から出力される整流電圧に基づいて、高調波抑制信号電圧を生成するための高調波抑制信号生成手段1406とを備える。この発光ダイオード駆動装置では、電流制御手段1430が、電流検出手段1404で検出されたLED電流の電流検出信号と、高調波抑制信号生成手段1406で生成された高調波抑制信号電圧とを比較して、高調波成分を抑制するように第一バイパス手段1421、第二バイパス手段1422及び第四バイパス手段1424をそれぞれ制御する。これにより、入力側の高調波成分と、得られたLED駆動電流との対比によって、出力波形を調整する制御が可能となり、効果的な高調波成分の抑制が実現できる。
【0009】
この発光ダイオード駆動装置1400においては、高調波歪の発生が抑制され、正弦波に非常に近い電流波形でLEDを駆動することができる。また、光出力の波高率においても蛍光灯と同等かそれ以上で動作する。
【0010】
しかしながら、
図3の発光ダイオード駆動装置1400において入力される交流電源電圧が変動すると、LEDの応答特性が高いため、明るさの変動も追随してしまう結果、人の眼にちらつきとして認識されてしまうことがある。この原因として、以下の二点が考えられる。
【0011】
第一に、
図3の発光ダイオード駆動装置1400では、LED電流制御の基準信号を、交流電源APを全波整流して、高調波抑制信号生成手段1406の抵抗器で分圧することで得ている。このため、交流電源APの電圧が変動すると、基準信号が変動し、これがLED駆動電流の変動の原因となって、結果として明るさの変動となって現れてしまう。
【0012】
第二に、各LED部の点灯時間の変動が挙げられる。多段に接続された各LED部は、交流電源APの電圧が所定の電圧に達するまで点灯しないため、交流電源APの電圧が変動すると点灯時間も変動し、これがトータルの明るさの変動となって現れる。
【0013】
これらの点を改善するため、本願出願人は電源電圧とLEDの順方向電圧(V
f)との電圧差をピークホールドして、電流検出信号に重畳させ、LED動作電流に負帰還をかける方法を提案した。この方法では、負帰還のゲインを調整することにより、交流電源電圧の変動に関する上記二点の影響に対し、一括して対処できる。
【0014】
しかしながら、この方法では瞬時の電源電圧の変動に追随することができないという問題があった。また、電圧に対する明るさの変動は必ずしも直線的ではないため、負帰還による直線的な補正では正確に対処できないという問題もある。
【0015】
さらにこの発光ダイオード駆動装置1400においては、光出力の波高率改善のため、コンデンサ14111を電源投入時に初期充電する必要があるが、このとき負帰還の成分が電源電圧付近まで上昇し、このためLED電流がほとんど0に制御され、この電流を利用するコンデンサ充電がLED駆動手段によって制御される小さい電流のみとなり、点灯までに時間がかかるという問題が発生する。さらにまた、この発光ダイオード駆動装置1400は基準正弦波の大きさを調整することで、調光に対応させることが可能であるものの、調光を行うために基準電圧を小さくし、LED動作電流を小さくすると、この負帰還分が相対的に大きくなり、微妙な調整が困難になるという問題も発生する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光ダイオード駆動装置を例示するものであって、本発明は発光ダイオード駆動装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、さらに前記正弦波生成手段と電流制御手段の間に接続され、前記交流電源の電源周波数よりも十分高い周波数で、正弦波に対してパルス幅変調を行うPWM変調手段を備えることができる。
【0022】
また他の実施の形態によれば、さらに前記第四LED部に電流が通電される特定のタイミングを検出するための第四LED通電タイミング検出手段を備え、前記電源電圧同期信号生成手段で生成する電源電圧同期信号が、前記交流電源のゼロクロスのタイミングを検出した信号であり、前記PWM変調手段が、前記第四LED通電タイミング検出手段で検出される通電タイミングと、前記電源電圧同期信号生成手段で検出されたゼロクロスタイミングに基づいて、前記交流電源の電源電圧の変動を検出し、該電源電圧の変動に基づいてデューティ比を決定することができる。上記構成により、PWM変調手段が、第四LED部の通電タイミングと電源電圧のゼロクロスのタイミングからの時間t
0-4を計測して知ることができる電源電圧の変動をもとに、デューティ比を決定することができる。即ち、時間t
0-4が交流電源電圧の基準よりも長い場合は電圧が低いとしてデューティ比を高く、逆の場合は電圧が高いとしてデューティ比を低くして、正弦波電流制御の基準信号を加減することができる。この結果、各LED部の点灯時間の変動を抑え、出力光の明るさの変動を抑制できる。
【0023】
さらにまた他の実施の形態によれば、さらに前記PWM変調手段と電流制御手段の間に接続され、前記PWM変調手段でパルス幅変調された信号を積分して前記電流制御手段に供給するための積分手段を備えることができる。上記構成により、積分手段でもって、PWM周波数が重畳された正弦波を滑らかにし、電流制御手段に入力することができる。
【0024】
さらにまた他の実施の形態によれば、前記正弦波生成手段を、前記交流電源の電源電圧の変動の検出結果に基づいて、電源電圧が低い場合は
前記PWM変調手段のデューティ比を大きくし、電源電圧が高い場合は
前記PWM変調手段のデューティ比を小さくするよう制御することができる。
【0025】
さらにまた他の実施の形態によれば、さらに外部からの制御信号を受け付けるリモコン受信手段と、リモコン受信手段を駆動するためのリモコン受信定電圧電源と、前記第四LED部と接続され、前記リモコン受信定電圧電源に電力を供給するための第四電力取得手段とを備えることができる。
【0026】
さらにまた他の実施の形態によれば、さらに前記第一LED部と直列に接続される少なくとも一のLED素子を有する第三LED部と、前記第三LED部と接続され、前記リモコン受信定電圧電源に電力を供給するための第三電力取得手段とを備えるができる。上記構成により、交流電源の電源電圧が低くなり、第四電力取得手段で十分な電力を供給できない場合に、第三電力取得部から電力を供給することとして、リモコン受信定電圧電源の駆動に十分な電力供給が維持される。特に正弦波状の交流電源の特性に応じて、電源電圧が高い場合は、波形頂部近傍の余剰電力を用いて第四電力取得手段のみで十分な電力を供給できる一方、電源電圧が低い場合には波形の裾部の広い領域を利用して第三電力取得手段からも電力供給でき、タイミングに応じて電力供給を補完できる。
【0027】
さらにまた他の実施の形態によれば、さらに前記正弦波生成手段と接続され、該正弦波生成手段を駆動するための電力を供給する定電圧電源を備えており、前記第四電力取得手段が、前記定電圧電源に電力を供給することができる。上記構成により、リモコン受信手段を駆動するための電源を別途用意することなく、第四LED部に印加される余剰電力でもって駆動させることができ、回路の簡素化と省電力化を図ることができる。
【0028】
さらにまた他の実施の形態によれば、前記第四電力取得手段が、前記PWM変調手段に電力を供給することができる。上記構成により、PWM変調手段を駆動するための電源を別途用意することなく、第四LED部に印加される余剰電力でもって駆動させることができ、回路の簡素化と省電力化を図ることができる。
【0029】
さらにまた他の実施の形態によれば、前記第四LED通電タイミング検出手段が、前記第四LED部に電流が流れ始めるタイミングを通電タイミングとして検出することができる。
【0030】
さらにまた他の実施の形態によれば、前記第四LED
通電タイミング検出手段が、前記交流電源の電源電圧のピーク電圧を通電タイミングとして検出することができる。
【0031】
さらにまた他の実施の形態によれば、前記第四LED通電タイミング検出手段が、前記第四LED部に流れる電流の立ち下がりタイミングを通電タイミングとして検出することができる。
【0032】
各実施の形態に係る発光ダイオード駆動装置を高調波電流規格に適合させるためには、白熱電球と同様に正弦波の電流波形になるよう設計することが望まれる。そこで本実施の形態に係る発光ダイオード駆動装置では、LED電流制御手段の基準電圧に正弦波を重畳させることで、LED駆動電流波形を正弦波に近似した波形とし、25W以上の高調波電流規格に適合させた安価でコンパクトな発光ダイオード駆動装置を提供するものである。
(実施例1)
【0033】
図1Aに実施例1に係る発光ダイオード駆動装置100のブロック図を示す。この発光ダイオード駆動装置100は、整流回路2と、LED集合体10と、第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24と、電流制御手段30と、電流検出手段4とを備える。この発光ダイオード駆動装置100は、交流電源APに接続されて、整流回路2で交流電圧を整流した整流電圧(脈流電圧)を得る。また整流回路2の出力側において、複数のLED部で構成されたLED集合体10を、出力ラインOL上で直列に接続している。ここではLED部を4つ使用しており、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を直列に接続して、LED集合体10を構成している。さらに出力ラインOLには、LED集合体10と、LED駆動手段3と、電流検出手段4とを直列に接続している。
【0034】
また第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14には、各々一端に通電量を制御するための第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23が接続される。第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23は、それぞれLED部に対して並列に設けられ、他端を電流検出手段4の上流側と接続しており、各LED部への通電量を調整するバイパス経路を構成する。すなわち、第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23によってバイパスされる電流量を調整できるので、結果的に各LED部の通電量を制御できる。
図1Aの例では、第二LED部12と並列に第一バイパス手段21が接続され、第一バイパス経路BP1を形成する。また第三LED部13と並列に第二バイパス手段22が接続され、第二バイパス経路BP2を形成する。さらに第四LED部14と並列に第三バイパス手段23が接続され、第三バイパス経路BP3を形成する。なおここでいう並列接続とは、各LED部の両端と各バイパス手段が接続されていることを要さず、各バイパス手段の一端が各LED部の一端と接続されており、電流が分岐されるように構成されていれば足りる。例えば
図1Aの例では、第一バイパス手段21はその一端を第二LED部12の上流側と接続し、他端を出力ラインOL上で、電流検出手段4の上流側と接続している。このように各バイパス手段の並列接続とは、出力ラインOL上に接続された各LED部の電流を分岐させるような接続形態を指す意味で使用する。
(電流制御回路)
【0035】
またLED部の電流駆動を行う電流回路の制御用に電流制御回路が設けられる。
図1Aの回路例では、第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24と、電流制御手段30、電流制御信号付与手段5とで、一種の定電流回路が構成されており、この定電流回路の制御は電流制御手段30と電流制御信号付与手段5とで行われる。
(電流制御手段30)
【0036】
電流制御手段30は、電流制御信号付与手段5を介して第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24と接続されており、第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24のON/OFFや電流量連続可変といった動作を制御する。電流制御手段30は、電流検出手段4に接続されてLED集合体10の電流量をモニタし、その値に基づいて第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24の制御量を切り替える。
(第一LED部11〜第四LED部14)
【0037】
一方、各LED部は、一又は複数のLED素子を直列及び/又は並列に接続したブロックである。LED素子は、表面実装型(SMD)や砲弾型のLEDが適宜利用できる。またSMDタイプのLED素子のパッケージは、用途に応じて外形を選択でき、平面視が矩形状のタイプ等が利用できる。さらに、複数のLED素子をパッケージ内で直列及び/又は並列に接続したLEDをLED部として使用することも可能であることは言うまでもない。
【0038】
各LED部に含まれるLED素子の順方向電圧の加算値である小計順方向電圧は、直列接続されたLED素子の個数によって決まる。例えば順方向電圧3.6VのLED素子を6個使用する場合の小計順方向電圧は、3.6×6=21.6Vとなる。
【0039】
この発光ダイオード駆動装置100は、電流検出手段4で検出した電流値に基づいて、各LED部に対する通電量の制御を行う。いいかえると、整流電圧の電圧値でなく、現実に通電される電流量に基づいた電流制御であるため、LED素子の順方向電圧のばらつきに左右されず、適切なタイミングで正確なLED部の切り替えが実現され、信頼性の高い安定した動作が見込まれる。なお電流値の検出には、電流検出手段4等が利用できる。電流検出手段4には、抵抗器等が好適に利用できる。
【0040】
図1Aの例では、電流制御手段30が第一LED部11の通電量に基づいて、第一バイパス手段21による第一LED部11への通電制限量を制御する。具体的には、第一バイパス手段21及び第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24がそれぞれONの状態で、通電量に応じて、第一バイパス手段21は第一LED部11を電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12を共に駆動できる電圧に達すると、第二LED部12に電流が流れ始め、さらにその電流値が一定量を超えると、第一バイパス手段21はOFFとなる。さらに電流制御手段30が第一LED部11及び第二LED部12の通電量に基づいて、第二バイパス手段22による第一LED部11及び第二LED部12への通電制限量を制御する。具体的には、通電量に応じて第二バイパス手段22は第一LED部11と第二LED部12を電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13とを共に駆動できる電圧に達すると、第三LED部13に電流が流れ始め、さらにその電流値が一定量を超えると、第二バイパス手段22はOFFとなる。
【0041】
さらに電流制御手段30が第一LED部11、第二LED部12第、三LED部13の通電量に基づいて、第三バイパス手段23による第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13への通電制限量を制御する。具体的には、通電量に応じて第三バイパス手段23は第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13とを電流駆動する。その後入力電圧が上昇して、第一LED部11と第二LED部12と第三LED部13と第四LED部14を共に駆動できる電圧に達すると、第四LED部14に電流が流れ始め、さらにその電流値が一定量を超えると、第三バイパス手段23はOFFとなる。最後に第四バイパス手段24及び電流制御手段30は、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を通電量に応じて電流駆動させる。
【0042】
以上のように発光ダイオード駆動装置100は、家庭用電源等の交流電源APを用いて、その交流を全波整流した後に得られる周期的に変化する脈流電圧に合わせて、直列に配置されたLED素子を適切な個数だけ点灯させるように構成した複数の電流回路を備えており、各電流回路を各々適切に動作させるように複数のLED電流検出回路を動作させることができる。
【0043】
この発光ダイオード駆動装置100は、電流値の上昇に伴って第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14を順次通電させる。特に各LED部への通電量を電流制御によって制限することで、電流量に応じてLED部の通電量の制御を行うことができ、脈流電圧に対して効率よくLEDを点灯駆動できる。
【0044】
さらに
図1Aの例では、第四バイパス手段24と並列にLED駆動手段3が接続されており、第四バイパス手段24に流れる電流の一部をLED駆動手段3で分岐させることによって、LED駆動手段3が第四バイパス手段24の負荷を低減している。
(平滑化回路)
【0045】
さらに
図1Aに示す発光ダイオード駆動装置は、LED集合体10と並列に接続された平滑化回路を備える。平滑化回路は、LED集合体10の消灯期間を低減するための部材である。この平滑化回路は、例えば第一充放電コンデンサ111で構成される。
(第一充放電コンデンサ111への充電)
【0046】
第一充放電コンデンサ111の端子間電圧は、定常動作状態においては第一LED部11〜第四LED部14の全LEDの順方向電圧の和V
fallに等しくなる。したがって、入力電圧が第一LED部11〜第四LED部14が駆動される電圧に達すると充電が開始され、入力電圧が第一LED部11〜第四LED部14を、電流制御手段30より指示される電流値で駆動できない電圧まで下降(第一LED部11〜第三LED部13を駆動する状態に移行)すると充電を終了する。充電期間中、充電によりコンデンサ端子電圧が上昇するとV
fallも上昇するため、LED駆動電流が増加し、第一充放電コンデンサ111への充電電流は徐々に減少する。このコンデンサ充電電流とLED駆動電流が合成されて、電流制御手段30で正弦波電流に制御される。これにより、元来正弦波に近似した電流波形で制御されている発光ダイオード駆動装置全体の電流に影響することなく、第一充放電コンデンサ111の充電が行える。
(第一充放電コンデンサ111からの放電)
【0047】
一方で第一充放電コンデンサ111は、ここに溜まった電荷を、接続された第一LED部11〜第四LED部14に放電する。なお第一充放電コンデンサ111の充電電圧は、LED集合体10を構成する直列接続された第一LED部11〜第四LED部14の順方向電圧の和V
fallとなるので、コンデンサ充電時にLED集合体10に流れる電流以上の電流で第一充放電コンデンサ111が放電されることはない。
【0048】
さらに実施例1に係る発光ダイオード駆動装置は、正弦波生成手段61、PWM変調手段62、積分手段63、電源電圧同期信号生成手段64、第四LED通電タイミング検出手段65、正弦波生成手段用電源部66、調光制御部67、電源ピーク電圧計測部68を備えている。
(正弦波生成手段61)
【0049】
正弦波生成手段61は、交流電源電圧変動の影響を受けない電源で動作し、電源電圧同期信号生成手段64により生成される同期信号により交流電源APの電圧に同期した正弦波を出力する。この正弦波を正弦波電流制御の基準信号とすることにより、LED電流制御の基準信号を、交流電源APを全波整流して抵抗器で分圧することで得た場合に生じる、交流電源電圧の変動によって基準信号、すなわちLED駆動電流が変動して明るさが変動するという問題を解消できる。なお、ここでいう正弦波とは、交流電源APを全波整流した脈流波形をいい、正弦波生成手段用電源部66で生成された波形は、脈流波形に近似した形と同期された位相を持つものである。
(PWM変調手段62)
【0050】
次に、この正弦波をPWM変調手段62により、電源周波数より十分高い周波数でPWM変調する。PWMは、第四LED通電タイミング検出手段65で検出される、第四LED部に電流が流れ始めるタイミングを、電源電圧同期生成手段64によって生成される電源電圧のゼロクロスのタイミングからの時間t
0-4を計測して知ることができる電源電圧の変動をもとに、デューティ比を決定する。即ち、時間t
0-4が交流電源電圧の基準よりも長い場合は電圧が低いとしてデューティ比を高く、逆の場合は電圧が高いとしてデューティ比を低くし、正弦波電流制御の基準信号を加減する。このように負帰還ループを形成することで、各LED部の点灯時間が交流電源電圧の変動によって変動してトータルの明るさも変動される問題を抑制、解消できる。積分手段63は、PWM周波数が重畳された正弦波を滑らかにし、電流制御手段30に入力する。
【0051】
ここで正弦波作成のPWM変調の一例として、電源周波数60Hzに同期した制御用の正弦波を作成する場合を考える。電源周期の位相角1°毎をPWMに変換するとすれば、このPWM周波数は60(電源周波数)×360(1周期の角度)=21.6KHz以上でなくてはならない。仮に、21.6KHzのPWMとした場合、電源正弦波のゼロクロスを検出したときに、位相角0°、PWMのデューティを0として出力し、次のPWM波のデューティはsin1°≒1/57をPWMのデューティとして設定する。このように、1°毎にデューティを変えていく。その様子を
図14に示す。
【0052】
また正弦波のPWM変調に際して、後述する調光時の調光レベルや、補正レベルに従ってLED電流を調整するために、調整レベルに比例したデューティのPWM信号を出力し、これを用いて作成した正弦波をON/OFFし、再度変調する。この様子を、
図15の正弦波のPWM変調によるレベル調整波形に示す。この図では、PWMのハイレベルのときに正弦波をONし、ローレベルのときにOFFしている。このときのPWMのデューティは、正弦波レベルを変更しない限りは一定値であり、例えばMCUで制御した場合でも、正弦波作成時にレベル調整をするよりもMCUへの負担を軽減できる。
【0053】
なお、以上の例ではPWM変調手段62を用いてPWM変調を行う構成について説明したが、PWM変調は必ずしも必須でなく、これを省いても良い。例えば、正弦波生成の段階で、電圧変動に対する補正値を乗算することでも代用できる。この場合は、所定時間内に演算を処理できるよう、後述する通り正弦波生成手段61を構成するMCUの処理能力が要求される。
【0054】
このような構成によって、正弦波生成手段61が交流電源の電圧変動の影響を受けずに所望の大きさの正弦波を生成することから、高調波抑制、高力率、波高率改善などに影響を与えることなく、交流電源の電圧変動に対し、LED駆動電流の変動に起因して発光出力の明るさが変動する事態を抑制できる。
【0055】
なお以上の例では、LED部を第一LED部11〜第四LED部14の4個用いた発光ダイオード駆動装置を説明した。ただ、本発明はこの構成に限られず、LED部の数は複数であれば3以下、又は5以上の任意の数に設定できる。例えば
図1Bに示す変形例に係る発光ダイオード駆動装置100Bでは、LED部を第一LED部11と第四LED部14の2個とし、第一バイパス手段21と第四バイパス手段24でこれらの点灯を制御している。このように、要求される光量や波高率などの品質、消費電力やコストなどに応じて、適切な数のLED部が選択できる。
(実施例1の回路例)
【0056】
次に、
図1Aの発光ダイオード駆動装置100を半導体素子を用いて実現した具体的な回路の構成例を、
図2に示す。この発光ダイオード駆動装置100’は、交流電源APに接続された整流回路2としてダイオードブリッジを用いている。また交流電源APと整流回路2との間には、保護抵抗器81が設けられる。さらに整流回路2の出力側には、バイパスコンデンサ82が接続される。なお交流電源APと整流回路2との間には、図示しないが過電流阻止のためのヒューズとサージ防護回路を設けてもよい。
(交流電源AP)
【0057】
交流電源APは、100Vや200Vの商用電源が好適に利用できる。この商用電源の100V又は200Vは実効値であり、全波整流された整流波形の最大電圧は約141V又は282Vとなる。
(LED集合体10)
【0058】
LED集合体10を構成する各LED部は、相互に直列に接続すると共に、複数のブロックに分け、ブロック同士の境界からは端子を引き出して、第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24と接続している。
図2の例では、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14の4つのグループでLED集合体10を構成している。
【0059】
図2に示す各LED部11〜14は、一のLEDシンボルが複数のLEDチップを実装したLEDパッケージ1を表している。この例では、各LEDパッケージ1は、10個のLEDチップを実装している。各LED部の発光ダイオード接続数、あるいはLED部の接続数は、順方向電圧の加算値、すなわち直列接続されたLED素子の総数と、使用する電源電圧とで決定される。例えば商用電源を使用する場合は、各LED部のV
fの合計である合計順方向電圧V
fallが、141V程度、又はそれ以下となるように設定される。
【0060】
なおLED部は、一以上の任意の数のLED素子を備えている。LED素子は、一個のLEDチップや、複数個のLEDチップを一パッケージに纏めたものを利用できる。この例では、図示する一のLED素子として、それぞれ10個のLEDチップを含むLEDパッケージ1を使用している。
【0061】
また
図2の例では、4つのLED部のV
fを同一となるように設計している。ただこの例に限られず、上述の通りLED部の数は3以下、あるいは5以上としてもよい。LED部数を増やすことで、電流制御の数を増やしてより細かなLED部間の点灯切り替え制御が可能となる。さらに各LED部のV
fは同一としなくとも良い。
(第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24)
【0062】
第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24は、各LED部に対応して、電流駆動するための部材である。このような第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24としては、トランジスタ等のスイッチング素子で構成される。特にFETは、ソース−ドレイン間飽和電圧がほぼゼロであるため、LED部への通電量を阻害することがなく好ましい。ただ、第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24はFETに限定されるものでなく、バイポーラトランジスタ等でも構成できることはいうまでもない。
【0063】
図2の例では、第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24として、LED電流制御トランジスタを利用している。具体的には、第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14、LED駆動手段3には、それぞれ第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24である第一LED電流制御トランジスタ21B、第二LED電流制御トランジスタ22B、第三LED電流制御トランジスタ23B、第四LED電流制御トランジスタ24Bが接続される。各LED電流制御トランジスタは、その前段のLED部の電流量に応じて、ON状態や電流制御が切り替わる。LED電流制御トランジスタがOFFになると、バイパス経路に電流が流れなくなって、LED部に通電される。すなわち、各第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24によってバイパスされる電流量を調整できるので、結果的に各LED部の通電量を制御できることになる。
図2の例では、第二LED部12と並列に第一LED電流制御トランジスタ21Bが接続され、第一バイパス経路BP1を形成する。また第三LED部13と並列に第二LED電流制御トランジスタ22Bが接続され、第二バイパス経路BP2を形成する。さらに第四LED部14と並列に第三LED電流制御トランジスタ23Bが接続され、第三バイパス経路BP3を形成する。さらにまたLED駆動手段3と並列に第四LED電流制御トランジスタ24Bが接続され、第四バイパス経路BP4を形成し、第一LED部11、第二LED部12、第三LED部13及び第四LED部14への通電量を制御する。
(逆流防止ダイオード)
【0064】
また各バイパス経路には、逆流防止ダイオードが設けられている。具体的には、第一バイパス経路BP1には第一逆流防止ダイオード121が、第二バイパス経路BP2には第二逆流防止ダイオード122が、第三バイパス経路BP3には第三逆流防止ダイオード123が、第四バイパス経路BP4には第四逆流防止ダイオード124が、それぞれ設けられる。
【0065】
ここで第一LED部11は、並列に接続されたバイパス経路やバイパス手段を設けていない。第二LED部12と並列に接続された第一バイパス手段21が、第一LED部11の電流量を制御するからである。また第四LED部14については、第四LED電流制御トランジスタ24Bが電流制御を行う。
(LED駆動手段3)
【0066】
また
図2の例では、LED駆動手段3として抵抗器を設けている。この例では、第四バイパス手段である第四LED電流制御トランジスタ24Bと並列にLED駆動手段3を接続することで、電流量が大きくなる際に第四LED電流制御トランジスタ24Bに通電される電流をLED駆動手段3にバイパスして、第四LED電流制御トランジスタ24Bへの負荷を軽減するよう構成している。ただ、第四LED電流制御トランジスタ24Bに十分な電流耐性を持たせた場合は、LED駆動手段を省略してもよい。
(電流制御手段30B)
【0067】
電流制御手段は、各LED部と対応する第一バイパス手段21〜第四バイパス手段24が、適切なタイミングで電流駆動を行うよう制御する部材である。この電流制御手段は、正弦波生成手段61、PWM変調手段62、積分手段63により出力された正弦波を基準電圧として、バイパス手段の動作を制御する動作制御信号を出力する。これにより、電流検出手段4で検出する出力ラインOL上の電流量を、正弦波電圧と比例した値に制御できる。この結果、回路全体の入力電流は交流入力電圧に比例した波形となり、高調波の抑制が可能となる。
【0068】
図2の電流制御手段30Bにも、トランジスタ等のスイッチング素子が利用できる。特にバイポーラトランジスタは、電流量の検出に好適に利用できる。この例では電流制御手段30Bを、オペアンプで構成している。なお電流制御手段は、オペアンプに限定されるものでなく、コンパレータ、バイポーラトランジスタ、MOSFET等でも構成可能であるのはいうまでもない。
【0069】
図2の例では、電流制御手段30Bは、第一LED電流制御トランジスタ21B〜第四LED電流制御トランジスタ24Bの動作を制御する。すなわち、オペアンプ30Bが通電量の制御を行うことで、各LED電流制御トランジスタをOFF/電流制御/ONにそれぞれ切り替える。
(電流検出手段4)
【0070】
電流検出手段4は、LED部を直列接続したLED集合体10に通電される電流を電圧降下等により検出するための部材である。電流検出手段4で電流検出を行うことで、LED集合体10を構成する各LED部の電流駆動を行う。またこの電流検出手段4は、LEDの保護抵抗器としても機能する。さらに電流検出手段4で検出された電流検出信号に基づいて電流駆動を行うため、電流検出手段4は、電流回路の制御を行う電流制御手段30Bであるオペアンプと接続されている。この回路例では、第一バイパス手段21、第二バイパス手段22、第三バイパス手段23、第四バイパス手段24と電流制御手段30Bで、一種の定電流回路が構成される。
(電流制御信号付与手段5)
【0071】
さらに電流制御手段30Bと各バイパス手段との間には、電流制御信号付与手段5が介在されている。例えば第四バイパス手段24に付与する動作制御信号と第一バイパス手段21に付与する動作制御信号間には電位差が生じるので、電流制御信号付与手段5を設けることで第四バイパス手段24と第一バイパス手段21の動作の切り替えを確実に行うことが可能となる。電流制御信号付与手段5は、各LED電流制御トランジスタのON/OFFをどの電流のタイミングで行うかを規定する。ここでは、入力電圧の上昇に伴い、第一LED電流制御トランジスタ21B〜第四LED電流制御トランジスタ24Bの順でONされるよう、電流制御信号付与手段5として電流制御信号付与ツェナーダイオード5E、5F、5Gが設定、配置されている。なお
図2の例では、電流制御信号付与手段5をツェナーダイオードで構成しているが、抵抗器、ダイオード等とすることもできる。
【0072】
図2の回路例では、整流回路2で整流された入力電圧の上昇に伴い、第一LED部11から第二LED部12、第三LED部13、第四LED部14への順で、通電量の制御を行うことができる。また入力電圧の下降時には、逆の順序でLEDが消灯される。
(定電圧電源7)
【0073】
オペアンプ30Bは、定電圧電源7により駆動される。定電圧電源7は、オペアンプ電源用トランジスタ70、ツェナーダイオード71、ツェナー電圧設定抵抗器72で構成される。この定電圧電源7は、交流電源APを整流回路2で整流した後の整流電圧が、ツェナーダイオード71のツェナー電圧を超えている期間だけ、オペアンプ30Bに電源を供給する。この期間は、LED集合体10の点灯期間を包含するよう設定される。すなわち、LED集合体10の点灯中にオペアンプ30Bを動作させて、点灯を制御する。
【0074】
一方、オペアンプ30Bの−側入力端子には、電流検出抵抗器4で検出された電流検出信号である電圧が、抵抗器5Aを介して入力される。電流検出抵抗器4の電圧は、オペアンプ30Bの+側入力端子に印加される正弦波に沿って電流制御されるよう制御される。このように、正弦波に沿って電流制御動作を行うため、LED駆動電流が正弦波に近似された波形となる。
【0075】
なおLED部はそれぞれ、複数の発光ダイオード素子を相互に直列に接続して構成できる。これにより、整流電圧を複数の発光ダイオード素子で効果的に分圧できる上、発光ダイオード素子毎の順方向電圧V
fや温度特性のばらつきをある程度吸収して、ブロック単位での制御を均一化できる。ただ、LED部の数や各LED部を構成する発光ダイオード素子数等は、要求される明るさや入力電圧等によって任意に設定でき、例えばLED部を一の発光ダイオード素子で構成したり、LED部の数を多くしてより細かな制御を行うこと、あるいは逆にLED部を2つのみとして制御をシンプルにすることも可能であることは言うまでもない。
【0076】
また、上記構成ではLED部の構成数を4としたが、LED部の数を2又は3としたり、又は5以上とすることもできることはいうまでもない。特に、LED部の数を増やすことで、階段状の電流波形をより細かくした制御が可能となり、一層の高調波成分の抑制が可能となる。また
図2の例では、各LED部がON/OFFされる切り替え動作を、入力電流に対してほぼ均等に分割しているが、均等にする必要は必ずしも無く、異なる電流でLED部を切り替えてもよい。
【0077】
さらに上記の例では、LEDを4つのLED部に分け、各LED部がそれぞれ同一のV
fとなるよう構成しているが、同一のV
fでなくても良い。例えばLED部1のV
fをできるだけ低く、すなわちLED一個分の3.6V程度に設定できれば、電流の立ち上がりタイミングを早く、立下りタイミングを遅くできる。このことは、高調波を減少させるのにさらに有利となる。またこの方法を使用すれば、LED部の数とV
f設定を自由に選択でき、さらに電流波形を正弦波に近似できるため、より柔軟性を高めて高調波抑制を実現することが容易となる。
(正弦波生成手段61)
【0078】
一方
図2の回路例では、電流制御手段30Bをオペアンプ30Bで構成しており、このオペアンプ30Bは、正弦波生成手段61により制御される。正弦波生成手段61を構成する一例として、本回路ではマイクロコントローラ60(Micro Control Unit;以下、「MCU」という。)を使用している。このMCUは、
図2に示すように、内蔵する周辺ハードウェアを使用して、PWM変調手段62、電源電圧同期信号生成手段64、第四LED通電タイミング検出手段65の機能を奏することができる。
【0079】
電源電圧同期信号生成手段64により、電源電圧のゼロクロスを検出し、MCU60に入力する。このタイミングで、正弦波の位相角0°のデータをPWMで出力を開始する。交流電源電圧と同周期の正弦波位相角1°毎の時間を内蔵タイマーで計測し、その位相角の正弦波の値に従ってPWMのデューティ比を更新する。これを180°まで繰り返し、0°に戻す。また、電源電圧同期信号生成手段64によりゼロクロスを検出したときにも、0°に戻す。このように電源電圧に同期した正弦波を生成し、この正弦波で正弦波電流制御をすることで、高調波歪のない電流波形で駆動することができる。さらに、電源電圧変動に影響を受けない正弦波でもって、LEDを制御することが達成できる。次にオペアンプ出力30Bを第四LED通電タイミング検出手段65に入力し、上記ゼロクロスより第四LEDに電流が流れ始めるまでの時間t
0-4を計測する。電源電圧が低いときは、この時間t
0-4が長くなり、電源電圧が高いときは、時間t
0-4が短くなる。これを元に上記計測時間が長いときはPWM変調手段62のデューティ比を大きく、時間が短いときはデューティ比を小さくする。これによって、点灯時間変動の補正を行い、電源電圧の変動による光出力が変動する事態を抑制できる。
【0080】
次に、コンデンサ111の電源投入時の初期充電について、
図3を使って説明する。ここでコンデンサ111の初期端子間電圧は、前回点灯時から十分時間が経過し0Vとなっていると仮定する。また、コンデンサ111の端子電圧が、第一LED部11〜第四LED部14に直列に配置されたLEDの合計V
fと同電圧になるまでは、コンデンサ111に全電流が流れ、LEDは点灯しない。
【0081】
この回路に、交流電源APが投入されると、整流回路2によって全波整流された脈流によってコンデンサ111が充電開始される。上述の通り、端子間電圧が0Vであるので、電圧変動抑制信号送出手段1408に入力される電圧は、ほぼ脈流の電圧に等しい。定常動作中は、電圧変動抑制信号送出手段1408への入力は、脈流の電圧から、第一LED部11〜第四LED部14に直列に配置されたLEDのV
fを引いた電圧が入力されている。よって、オペアンプ30Bの負入力には高い電圧が入り、オペアンプの出力は定常動作時に比較して極端に低くなる。そのため、第四LED電流制御トランジスタ24Bのゲート電圧は低く、ドレイン電流はほぼ0mAとなる。このような状態で、コンデンサ111に充電する経路は、比較的低抵抗値のLED駆動手段3の抵抗と電流検出手段4の抵抗となる。
【0082】
しかし、LED駆動手段3の抵抗値は、この初期充電電流(突入電流)を抑制しながら、自身の抵抗の許容電力を守るため、小さくても数KΩとなってしまう。このとき、点灯までの時間は、実測によれば0.6秒程度となってしまう。
【0083】
また第四LED電流制御トランジスタ24Bの損失による発熱を分散させるために、LED駆動手段3として抵抗器を設けている。しかしながらこの抵抗器は、放熱に十分配慮した使用においては必ずしも必要でないところ、このLED駆動手段を削除すると点灯までにさらに数秒の時間がかかってしまう。
【0084】
これに対し本実施例では、
図2に示したように電圧変動抑制信号送出手段を必要としないため、どのような状況でも正弦波制御電流でコンデンサ111を充電することができ、より早く点灯することができる。さらに、電源投入時のみ許容できる最大電流を流して、コンデンサ充電を早くし、点灯までの時間を短縮することも可能である。
(調光制御部67)
【0085】
さらに発光ダイオード駆動装置は調光制御部67を備えており、これを用いて調光を行うことができる。ここで、調光制御部67を用いた調光動作について、
図1Aのブロック図及び
図2の回路図を参照しながら説明する。発光ダイオード駆動装置の調光は、基準正弦波のレベルを制御する方法が、制御が容易であり好ましい。
図2に示す発光ダイオード駆動装置においては、調光制御部67が外部の調光操作ボリューム67Aにより与えられる電圧に従って、PWM変調手段62を制御し、消灯から全点灯までを制御する。なお、電源投入のまま完全消灯を実施しようとすれば、オペアンプ30Bの出力が0Vとなるよう制御しても、LED駆動手段3の抵抗を経路とする電流がLEDに流れ、LEDが多少点灯してしまうので、LED駆動手段3を削除する必要がある。また
図2の例においては、調光のための外部からのコントロールを行う手段を、可変抵抗とした例を説明したが、この構成に限らず、例えば赤外線や無線を用いたリモコンでの制御も可能である。
【0086】
一方、従来の発光ダイオード駆動装置の回路図を示す
図3の例においても、調光は可能である。ただし、電流変動抑制信号送出手段1408から出力される信号は、電圧を基に生成されるので、調光で変化した正弦波制御電流に影響されず、常に一定の信号となる。このため、調光で正弦波制御電流が小さくなったときに相対的に電圧変動抑制信号が大きくなる結果、必要以上に正弦波制御電流を絞ってしまい、スムーズな制御ができない。これを回避するには、調光時は電圧変動抑制信号を切るか、あるいは負帰還のゲインを小さくしなければならなかった。また、この方法では調光時に電圧変動に対してLEDの明るさが変動してしまい、適切な補正ができないという問題もあった。これに対し、本実施例では、電流変動抑制信号送出手段を削除したことで、このような問題を回避して、電圧変動のない動作を実現できる。
(保護動作)
【0087】
次に、何れかのLED部がショートした場合の動作について説明する。LED部を構成する最小単位がV
f=3.5V程度であれば、数個がショートに至っても、電源効率が落ち、負荷の大きくなる21B〜24Bのトランジスタのいずれかの発熱が多少大きくなるだけで問題は起こらない。
【0088】
しかしながら、LEDの構成最小単位が、各LED部のV
f=30V程度となり、この内の一がショートに至れば、対応するトランジスタの損失が許容範囲を超えて発熱することが考えられる。この場合、実施例1に係る発光ダイオード駆動装置では、点灯時の電源ピーク電圧を計測する電源ピーク電圧計測部68に、ツェナーダイオード68Aで設定される電圧が入力される。ここで電源ピーク電圧計測部68は、電源電圧の最も高い、位相各90°で入力をサンプリングするよう設定されている。ここで、この入力電圧がツェナー電圧に達した場合に、PWM変調手段62のPWM出力のデューティ比を0として消灯するか、又は上記トランジスタが過熱しない程度にまで正弦波制御電流を絞ることで、このようなLED部のショートにも対応できる。
【0089】
また、何れかのLED部がオープンとなった場合は、LED部の最小構成単位の大小に拘わらず、そのLED部全体がオープンとなる。この場合も、オープンとなったLED部よりも回路図上で下流側に位置するLED部には電流が流れなくなり、通電されるLED部の制御にあたるトランジスタのみが動作して、損失を担うことになる。特に第二LED部12がオープンとなった場合、全てのトランジスタの損失が第一LED電流制御トランジスタ21Bに印加される状態となって、このトランジスタに高い耐圧性や耐熱性が要求されることとなる。このような場合は、電源ピーク電圧計測部68には、ほぼ0Vが入力される。よって、この場合も上述したショート時と同様の対応をすることができる。
(電源周波数の識別)
【0090】
次に、電源周波数の識別について説明する。正弦波生成手段61により正弦波を作成して電源周波数に同期させるためには、海外ではもちろん、日本国内においてさえも電源周波数を識別し、それに合わせて電源位相角を特定するためのタイマーカウンタを設定し直す必要がある。その方法として、例えば電源電圧同期信号生成手段64が出力する電源のゼロクロスの周期をタイマーカウンタで計測することが挙げられる。誤差範囲が大きいと云われる一般的なMCU内蔵発振器でも±2〜5%以内であるので、50Hzと60Hzの差16%の識別は可能である。さらに、このカウント値を180°あるいは360°の基準として、電源位相角決定するので、MCU内蔵発振器の誤差も打ち消すことができる。
(実施例2)
【0091】
MCUの構成は、上述した例に限らず、任意の構成とすることができる。ここで実施例2として、別のMCUの内蔵周辺ハードウェアの構成例を、実施例2として
図4に示す。また、その具体的な回路例を、
図5の回路図に示す。実施例2に係る発光ダイオード駆動装置では、PWM変調手段を省略し、正弦波生成手段61によって作成される正弦波そのもののレベルを変化させて、電源電圧変動補正と調光に対応させている。このハードウェア構成では、ソフトウェアの構成として3つの方法が可能である。
(実施例2−1)
【0092】
まず実施例2−1として、正弦波の位相角0°〜180°のデータ値を1組を配列として確保し、位相角毎にこれを参照しながら、電源電圧変動補正値、調光値を計算、出力する方法が挙げられる。この場合は、正弦波データを更新する位相角毎に計算が発生するので、MCUの処理速度がそれなりに要求される。
(実施例2−2)
【0093】
次に、実施例2−2について説明する。この場合は実施例2−1と同様、正弦波データ配列を1組持ち、補正値、調光値の計算を各データごとに行い、RAMにテーブルとして展開する。このテーブルを参照し、位相角毎の正弦波データの更新を行う。この場合、位相角毎の計算が発生しないため、MCUの処理速度はそれほど要求されないものの、補正値変更時にテーブル作成のために、大量の計算が発生して時間がかかる。
(実施例2−3)
【0094】
さらに実施例2−3の方法を説明する。この方法では、上記実施例では1組であった配列を、補正値、調光値の全てにわたって配列データとして持ち、補正値と調光値により選択された配列を参照する。この場合、MCUの処理速度はそれほど要求されないが、非常に大きなプログラムメモリが必要となる。
【0095】
このように、MCUを使用することで、商用電源周波数の地域間相違、LEDショート、オープン、発熱などに容易に対応させることが可能となる。
【0096】
以上のように、LED駆動電流の基準信号を、電源電圧変動に影響を受け難い安定したものとすることで、LED光出力変動も非常に少ないものとできる。例えば
図3に示したような、電源電圧から基準信号を作成する発光ダイオード駆動装置において電源電圧変動抑制を行わない場合と比較して、1/3程度に圧縮できる。また、MCUを使用することで、データ値による正確な補正を行うことができ、電源電圧変動をほぼ抑えられる。さらに調光機能を追加した場合は、このデータ値を変えることで、スムーズな調光を行える。
【0097】
以上の実施例1、2では、正弦波生成手段を実現するためにMCUを使用する例を説明した。ただ、本発明はこの構成に限られるものでなく、例えば正弦波生成手段を専用のハードウェアで設計することも可能である。特に実施例1の構成は、正弦波生成のみのハードウェアを用意し、PWMや他のハードウェアをMCUで構成すれば、非常に小型のパッケージで安価なMCUを使用することができ、コスト面で有利となる。
【0098】
また、以上の実施例では、正弦波の値の更新を電源位相角1°毎としたが、平滑用の積分回路の性能に応じて、任意の角度に設定できる。さらに上記の例では、電源電圧の変動の検出を、電源電圧ゼロクロスから第四LED部14の電流立上がりまでの時間を計測しているが、他に第一LED部〜第三LED部のどのLED部の電流立ち上がりまでの時間を計測しても構わない。さらにまた、以上の例では正弦波出力をPWMとしているが、DAコンバータあるいはアナログ回路による波形生成でも良いことはいうまでもない。
(電源回路の統合)
【0099】
さらに、このような発光ダイオード駆動装置を無線でON/OFFしたり、調光量を制御するために、リモコンで制御可能とすることもできる。このような場合に、上述したMCUやリモコンからの信号を受けるリモコン受信手段を構成するMCUを駆動させるための電源は、例えば5V程度が必要となり、従来は外部のACアダプタを使用したり、あるいは発光ダイオード駆動装置内に別途、シリーズレギュレータやスイッチングレギュレータ等の電源回路を内蔵させることにより、商用交流電源から電圧5V程度の直流を得ていた。
【0100】
しかしながら、外部にACアダプタを用意したり、あるいは内蔵の回路基板に同様の電源回路を実装することは、いずれも電源部品の体積が必要となり、小型で安価な発光ダイオード駆動装置を提供することの妨げとなる。また、上述した発光ダイオード駆動装置では正弦波制御電流によって高調波歪を排除しているが、一方でMCU用の電源は、この正弦波電流制御の蚊帳の外にある。したがって、LED駆動電流が大きい装置では、MCUの電流が相対的に小さくなり、高調波歪の規格に適合可能であるが、LED駆動電流が小さく、MCUの電流が相対的に大きくなると、高調波歪の規格に適合できない場合も生じ得る。このため、MCUの電力も、正弦波電流制御の範囲内で賄えるようにした電源が求められる。
【0101】
また、MCUの電源を、発光ダイオード駆動装置から外部に独立した回路として構成することは、要求される電力容量などに柔軟に対応できるという利点を備えるものの、一方では、発光ダイオード駆動装置の特徴である、高調波歪の規格をクリアできるという性能を低下させることになる。また、近年の安価で低消費電力といったMCUの特徴を考慮すると、高価なACアダプタや電源回路を使用するのは、製品の魅力としてのバランスを欠くことにも繋がる。このような事情に鑑みれば、発光ダイオード駆動装置の正弦波電流制御範囲内で電源供給を行うのが望ましいといえる。そこで、これらの電力を賄うためには、発光ダイオード駆動装置により駆動されているLEDの電流の一部を利用することが考えられる。しかしながら、安易にLED電流から分流することは、LED電流の低下、即ち照明の照度の低下を招くことになり、発光ダイオード駆動装置の電源効率を低下させることにもなる。
【0102】
以下、この点を
図6のグラフと
図8の回路図に基づいて、詳細に検討する。
図6は、後述する
図7の発光ダイオード駆動装置において、電源電圧と各段のLEDのV
fとの関係を示している。この図に示すように、交流の正弦波を全波整流された電源電圧に対し、LEDのV
fが発光ダイオード駆動装置の動作に従って、第一LED部11から第四LED部14まで駆動されるLED部の段数によって変化する。図において、電源電圧がLEDのV
fを上回る領域が各LED電流制御トランジスタが電流制御を受け持ち、損失を発生している部分である。即ち
図6のグラフ中にて斜線で示した領域aは第四LED電流制御トランジスタ24Bが、領域bは第三LED電流制御トランジスタ23BがLEDを正弦波電流駆動し、それぞれの損失の大部分をここで発生している。この領域の電力を利用し、MCU電力を賄うことができれば、発光ダイオード駆動装置の正弦波電流波形及び、電源効率に影響を与えることなく、MCUを駆動できる。
(実施例3)
【0103】
このような制御を実現するための発光ダイオード駆動装置を実施例3として、
図7のブロック図に、その回路の具体例を
図8に、それぞれ示す。実施例3に係る発光ダイオード駆動装置300では、
図7のブロック図に示すように、上述した実施例2に係る
図5で示す発光ダイオード駆動装置に対して、第三電力取得タイミング発生回路91、第四電力取得手段92、第三電力取得手段93、MCUリモコン受信定電圧電源94、消灯時・電源投入時用電源95、リモコン受信手段69が追加されている。この発光ダイオード駆動装置300では、外部のリモコンから赤外線や無線で外部操作信号をリモコン受信手段69で受けて、調光等、発光ダイオード駆動装置300の動作を制御することができる。以下、発光ダイオード駆動装置300の詳細を、
図6及び
図8に基づいて説明する。一般に、MCUの消費電力は様々であるが、ここでは5V、50mA、0.25W程度とする。
【0104】
図6で示す領域aから第四電力取得手段92により、
図8の回路図のコンデンサ92Cに充電し、リモコン受信手段69を駆動するためのMCUリモコン受信定電圧電源94に電力を供給する。領域aから取得できる電力は、交流電源の電源電圧が下がるに従って減少する。即ち領域aでは全LEDが点灯し、V
fが例えば最大124Vとした場合、電源電圧が90Vのピーク電圧は127Vであるので、その差は3Vとなり、5Vの電源にはなりえない。
【0105】
そこで、第三電力取得タイミング発生回路91、第三電力取得手段93により、
図6の領域bから電力を取得し、MCUリモコン受信定電圧電源94に電力を供給する。領域bは電源電圧が下がると領域が広がり、取得電力が増加する。このように、領域aと領域bは電源電圧の推移に対しそれぞれ、正比例、反比例の関係にあり、電力供給を補完しながら行える。
【0106】
次に電力量について考える。上述の通りMCUの消費電力を5V、50mA、0.25W程度としたとき、例えばLED電力30W程度の正弦波多段発光ダイオード駆動装置の実測では、領域aの電力(即ち第四LED電流制御トランジスタ24B)の損失、領域b(即ち第三LED電流制御トランジスタ23B)の損失は、それぞれ、90V→110Vに対し、0.3W→4W、1.6W→0.8Wのように変化する。仮にすべての損失を利用できたとして、損失を合計すると90Vでは1.9W,110Vでは4.8Wとなり消費電力の7倍→19倍の供給が可能となる。
(実施例3に係る発光ダイオード駆動装置の動作例)
【0107】
次に、
図8に示す実施例3の回路図に基づいて、発光ダイオード駆動装置300の動作例を説明する。ここでは全V
fを120Vとし、4つのLED部それぞれのV
fを30Vと仮定する。
(領域a)
【0108】
まず、領域aから電力を取得する動作について説明する。交流電源APの電源電圧が上がり120Vを越えると、第四LED部14までの全てのLEDに電源電圧により、電流が流れ始める。なお実際には、それ以前の電源電圧が低いときでも、コンデンサ111の放電電流による電流がLEDに流れてはいるが、ここでは無視する。
【0109】
電源電圧による第四LED電流が流れ始めると、ダイオード92Bを通って、コンデンサ92Cへの充電が開始される。ただし、コンデンサ92Cは、定常状態では、最低5Vの端子電圧を持つので、充電開始は早くても125Vとなる。コンデンサ92Cの端子電圧が上がり、コンデンサ93Cの端子電圧を越えると、ダイオード92Dを通って、定電圧電源トランジスタ94Aに電力を供給する。その後電源電圧がピークを過ぎ、コンデンサ92Cの端子電圧の方が高くなると、充電は終了する。さらにコンデンサ92Cの端子電圧が放電により下がり、コンデンサ93Cの端子電圧より低くなると、定電圧電源への供給も止まり、コンデンサ93Cが供給を開始する。コンデンサ92Cへの通電は、第四LED部14の電流ON/OFFがスイッチとなり、ダイオード92Bのみで、通電のタイミングは作られる。ただ、コンデンサ92Cの容量が大きすぎると、充電電流がそのときのLED電流を超えてしまい、正弦波制御電流を乱して高調波歪を増大させるので、充電電流がLED電流を超えない範囲でコンデンサ92Cの容量を設定する。
(領域b)
【0110】
次に、領域bから電力を取得する動作を説明する。電源電圧が90Vまで上昇すると、第一LED部11〜第三LED部13までの各LEDが駆動され、ダイオード123を通って第三LED電流制御トランジスタ23Bに流れる電流と、トランジスタ93A、ダイオード93Bを通って、コンデンサ93Cに充電する電流とに分かれる。このように分岐された電流は、再度合流し、電流検出抵抗器4を通るので、合計された電流がLED電流として所定の電流に制御される。このように、電源回路の有無に拘わらず、LED電流には変化はない。
【0111】
コンデンサ93Cへの充電開始は、初期端子電圧があるため、第三LED部13に電流が流れ始めるときより遅れる。コンデンサ93Cの端子電圧がコンデンサ92Cの端子電圧を上回ると、定電圧電源に供給を開始する。さらに電源電圧が上昇し、120Vを超えて第四LED部に電流が流れ、上記領域aからの電源取得が始まると、オペアンプ30Bの出力電圧は、その制御対象を第三LED電流制御トランジスタ23Bから第四LED電流制御トランジスタ24Bのトランジスタに移すため、階段状に降下する。トランジスタ91Cはこれを検出して、OFFとなる。このためトランジスタ93AもOFFして、コンデンサ93Cへの電流供給を停止する。ここで、トランジスタ93AがOFFせず、コンデンサ93Cへ供給を続けるとすると、
図6に示す領域cから電力を取得することになる。領域cはV
f波形の下にあり、LEDの点灯に使用している領域であるので、ここから電力を取得することはLED電力を減らし、電源効率の低下を招く。電源電圧がピークを過ぎ、90Vまで降下すると、オペアンプ30Bの出力が階段状に上昇し、トランジスタ91C、トランジスタ93Aの両トランジスタがONし、コンデンサ93Cに充電開始する。さらに電源電圧が60Vまで降下すると、第三LED部の電流が停止され、コンデンサ93Cへの電流供給も停止する。
【0112】
以上の動作の繰り返しによって、DC5VをMCUに供給することができる。なおこの例では、取り出す電力をDC5Vとしたが、MCUの動作電圧に応じて任意の電圧に設定することができる。
【0113】
また、発光ダイオード駆動装置が定常動作に入る前、及び消灯時にも、MCUに対し電力を供給する必要がある。コンデンサ111に初期充電を、LED駆動手段3の抵抗器を削除し、第四LED電流制御トランジスタ24Bの電流を制御して行う場合、発光ダイオード駆動装置はまだ定常動作に入っていない。また、消灯時のリモコン受付待機状態でMCUを動作し続ける場合、上記電源は動作していない。このときに、
図8の消灯時・電源投入時用電源95からMCUに電力を供給する。このときはMCUを極力消費電力の小さい状態で動作させ、100Vから5Vを供給する消灯時・電源投入時用電源95の損失を抑える。また、上記のMCUリモコン受信定電圧電源94の電圧よりも、消灯時・電源投入時用電源95の電圧を低く設定することで、上記電源が動作開始した後は、ダイオード95Dにより、電力供給を停止する。これにより、定常動作状態では上記電源の特性を邪魔することなく、高調波歪、電源効率を良好に保てる。
【0114】
なお第四電力取得手段92には、領域bからの電力取得手段にあるような、第三電力取得タイミング発生手段91のような手段を設けていない。ただ、このような手段を追加することで、コンデンサ92Cへの充電電流を完全にコントロールでき、上記動作説明で述べたコンデンサの容量に対する制限を排除できる。このことは、電解コンデンサ等の寿命を考慮し、コンデンサリップル電流の低減が必要な場合等において検討できる。これは、一般に容量の大きいものほど許容リップル電流が大きいので、寿命の長い製品設計ができるからである。
【0115】
またツェナーダイオード92E、抵抗器92F、92G、ダイオード92Hは、コンデンサ92Cへの突入電流が大きい場合を考慮したものであって、逆に小さい場合は省略することもできる。これは、電源投入時にコンデンサC111の充電電流が最初に流れるのを利用して、コンデンサ92Cを予備的に充電し、その後のLED集合体1に流れる突入電流を防止するためのものである。またこれは一例であって、その他の方法として、例えばダイオード92Bに直列に抵抗器を挿入することによっても突入電流を小さくできる。
【0116】
また、上記領域a、領域b以外に、第二、第一LED電流制御トランジスタにも同様の損失領域があるため、これらに対しても、上述した領域bからの電力取得と同様の回路を付加して、電力を得るように構成することも可能であることはいうまでもない。これによって、さらに大きな電力供給が要求される場合にも対応できる。
【0117】
以上のように、電力の取得を正弦波制御電流から、MCU用の駆動電流を取得することで、発光ダイオード駆動装置の外部に別電源を用意する構成に比べ、はるかに安価にMCUやリモコン用の電源回路を構成できる。またこの方法によれば電流制御トランジスタの損失電力を利用しているので、発光ダイオード駆動装置の電源効率の低下を抑制させてMCUを動作できる。さらにまた、このような駆動電力を供給を行いつつも、高調波歪の良好な特性に影響を与えることも回避できる。
【0118】
さらに、MCUには、正弦波生成手段61の他、他の機能を統合することもでき、これによって他の部材への電力供給としても利用できる。また、冷却用ファンや冷却用素子の電源として使用することもできる。これによって、各部材を駆動するための電源を別途用意することなく、余剰電力を利用して電力供給を確保でき、電源回路を配置するためのスペースの削減による回路の簡素化と省電力化を図ることができる。
【0119】
なお電源電圧変動を検出するタイミングは、第四LED通電タイミング検出手段65による第四LED電流の立ち上がりタイミング、すなわち第四LED部に電流が流れ始めるタイミングに限らず、他のLED部に電流が流れ始めるタイミングとすることもできる。また、第一〜第三LED電流立ち上がりタイミングとする他、各LED部における電流の立ち下がりタイミングを利用してもよい。さらにまた、交流電源の電源電圧のピーク電圧をAD変換し、電源電圧変動として検出することもできる。