(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極板と負極板とが、セパレータを介して積層された複数個の積層群を有する非水電解質二次電池において、少なくとも一つの前記積層群の正負極板合剤層厚みが、その他の前記積層群の正負極板合剤層厚みよりも薄い非水電解質二次電池であって、
前記複数個の積層群が並ぶ方向の中心付近に位置する1以上の前記積層群に含まれる前記正負極板合剤層厚みが、前記複数個の積層群が並ぶ方向の最外積層群に含まれる正負極板合剤層厚みよりも薄く、
前記複数個の積層群が並ぶ方向の中心付近に位置する前記1以上の積層群に含まれる正極板及び負極板枚数が、前記最外積層群に含まれる正極板及び負極板の枚数よりも多いことを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。実施の形態の構成を説明するために、実施の形態で使用できる正極板、負極板、セパレータ及び電解液について説明する。
【0015】
(1)正極板
正極板は、正極活物質と結着材とを含有する正極活物質層を、正極集電板上に形成して作製される。具体的には、正極活物質と結着材、並びに必要に応じて導電材及び増粘材等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電板に圧着するか、または、これらの材料を液体媒体に溶解、分散させてスラリーとして正極集電板に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層が正極集電板上に形成させる。
【0016】
正極活物質としては、リチウムを挿入脱離、溶解析出可能な公知のリチウムと遷移金属の複合酸化物を単独または2種以上とを混合したものを用いることができる。リチウム金属と遷移金属の複合酸化物の例としては、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、リチウム燐酸鉄等が挙げられる。これらの複合酸化物は、単相のもの、遷移金属の一部を異種元素で置換したもの、または表面を酸化物や炭素でコーティングしたものでもよい。
【0017】
正極用導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0018】
正極活物質層の製造に用いる結着材としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解または分散する材料であれば良い。結着材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子; SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム) 、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子; スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1 ,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子; ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体、等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。好ましくは、正極の安定性の観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体、等のフッ素系高分子が良い。塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
【0019】
正極集電板の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料; カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0020】
正極集電板の形態は特に制限されるものではなく、公知の形態を任意に用いることができる。具体例としては、金属材料の場合は、金属箔、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。炭素質材料の場合は、炭素板、炭素薄膜、等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。金属箔の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm 以下である。金属箔がこの範囲よりも薄いと、集電板として必要な強度が不足する場合がある。逆に、金属箔がこの範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0021】
(2)負極板
負極板は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む負極合剤が、負極集電板の両面に塗布されている。負極活物質としては、炭素質材料、酸化スズ、チタン酸リチウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、スズやケイ素等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料またはリチウム複合酸化物を用いるのが安全性の点から好ましい。
【0022】
前記金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であれば特には制限されるものではないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点から好ましい。
【0023】
炭素質材料としては、非晶質炭素、天然黒鉛、天然黒鉛に乾式のCVD(Chemical Vapor Deposition)法や湿式のスプレイ法で形成される被膜を形成した複合炭素質材料、エポキシやフェノール等の樹脂原料、若しくは石油や石炭から得られるピッチ系材料を原料として焼成して造られる人造黒鉛、非晶質炭素材料などの炭素質材料、又は、リチウムと化合物を形成することでリチウムを吸蔵放出できるリチウム金属、リチウムと化合物を形成し、結晶間隙に挿入されることでリチウムを吸蔵放出できるケイ素、ゲルマニウム、スズなど13族元素の酸化物若しくは窒化物を用いることができる。
【0024】
また、負極合剤には負極活物質以外にも、導電材として性質の異なる炭素質材料を2種以上含有しても良い。
【0025】
負極集電板としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電板としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から銅が好ましい。負極集電板の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは金属箔、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔を負極集電板として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合は、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
【0026】
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子; シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用して用いても良い。
【0027】
(3)セパレータ
セパレータは、両極間を電子的に絶縁する所定の機械的強度を有し、イオン透過度が大きく、かつ、正極板に接する側における酸化性と負極側における還元性への耐性を兼ね備える樹脂が用いられる。このような樹脂としては、オレフィン系ポリマーが用いられる。具体的には、非水系電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、例えばポリプロピレン及びポリエチレンの少なくとも一つを材質として含む多孔性シートを用いるのが好ましい。樹脂セパレータの形態としては、薄膜形状で、孔径が0.01〜1μm、厚みが15〜50μmの微多孔性フィルム等が好適に用いられる。また、樹脂セパレータの空孔率は、30〜50%が好ましく、35〜45%がより好ましい。なお、本例の樹脂セパレータ(厚みが15〜50μmの樹脂セパレータ)は、1枚のセパレータで構成してもよく、2枚以上のセパレータを重ねて構成してもよい。
【0028】
(4)電解液
本例のリチウムイオン二次電池で用いる電解液は、リチウム塩と、これを溶解する非水系溶媒とから構成されており、さらに添加剤を含有しても良い。
【0029】
リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用非水系電解液の電解質として公知のリチウム塩が用いられ、例えば次のものが挙げられる。
【0030】
・無機リチウム塩:LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6等の無機フ
ッ化物塩;LiClO
4、LiBrO
4、LiIO
4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl
4等の無機塩化物塩等がある。
【0031】
・含フッ素有機リチウム塩:F
3SO
3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF
3SO
2)
3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF
5(CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
3)
3]、Li[PF
5(CF
2CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
2CF
3)
3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等がある。
【0032】
・オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等がある。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これらの中でも、溶媒に対する溶解性、二次電池に用いた場合の充放電特性、出力特性、サイクル特性等を総合的に判断すると、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)が好ましい。
【0033】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、特に制限はないが、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、その上限は、通常2mol/L以下、好ましくは1.8mol/L以下、より好ましくは1.7mol/L以下である。濃度が低すぎると、電解液の電気伝導率が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、リチウムイオン二次電池の性能が低下する場合がある。
【0034】
非水系溶媒としては、リチウムイオン二次電池用非水系電解液の電解質として公知の非水系溶媒が用いられ、例えば次のものが挙げられる。
【0035】
・環状カーボネート:環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4 である。具体的には例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0036】
・鎖状カーボネート:鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5 が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状カーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
【0037】
・鎖状エステル:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0038】
・環状エーテル:テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0039】
・鎖状エーテル:ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
【0040】
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用するのが好ましい。
【0041】
前記添加材としては、リチウムイオン二次電池用非水系電解液の添加材として用いられ得ることが知られている添加材であれば特に制限はないが、例えば次のものが挙げられる。
【0042】
・窒素及び/ 又は硫黄を含有する複素環化合物:窒素及び/ 又は硫黄を含有する複素環化合物としては特に限定はないが、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル− 2−ピロリジノン、1,5−ジメチル−2−ピロリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、1−シクロヘキシル−2−ピロリジノン等のピロリジノン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、3−シクロヘキシル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1−メチル−2−ピペリドン、1−エチル−2−ピペリドン等のピペリドン類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン類;スルホレン;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト等のサルファイト類;1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン等のスルトン類等が挙げられる。
【0043】
・環状カルボン酸エステル:環状カルボン酸エステルとしては、特に限定はないが、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、α−メチル-γ-ブチロラクトン、α−エチル-γ-ブチロラクトン、α−プロピル-γ-ブチロラクトン、α−メチル−γ−バレロラクトン、α−エチル−γ−バレロラクトン、α,α−ジメチル-γ-ブチロラクトン、α,α-ジメチル−γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン等が挙げられる。
【0044】
・フッ素含有環状カーボネート:フッ素含有環状カーボネートとしては、特に限定はないが、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0045】
・その他分子内に不飽和結合を有する化合物:ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、プロピルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、アリルプロピルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジメタリルカーボネート等のカーボネート類; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等のエステル類; ジビニルスルホン、メチルビニルスルホン、エチルビニルスルホン、プロピルビニルスルホン、ジアリルスルホン、アリルメチルスルホン、アリルエチルスルホン、アリルプロピルスルホン等のスルホン類; ジビニルサルファイト、メチルビニルサルファイト、エチルビニルサルファイト、ジアリルサルファイト等のサルファイト類;ビニルメタンスルホネート、ビニルエタンスルホネート、アリルメタンスルホネート、アリルエタンスルホネート、メチルビニルスルホネート、エチルビニルスルホネート等のスルホネート類; ジビニルサルフェート、メチルビニルサルフェート、エチルビニルサルフェート、ジアリルサルフェート等のサルフェート類等が挙げられる。
【0046】
その他、上記の添加剤としては、求められる機能に応じて後述する公知の添加剤を用いても良い。例えば、過充電防止材としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
【0047】
また、例えば負極皮膜形成材としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。好ましくは、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらは2種類以上併用して用いても良い。
【0048】
また、例えば正極保護材としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルサルファイト、ジエチルサルファイト、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、ジメチルサルフェート、ジエチルサルフェート、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド等が挙げられる。好ましくは、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、ジメチルスルホンが挙げられる。これらは2種類以上併用して用いても良い。
【0049】
[電池構造]
以下、図面を参照して本発明の非水電解質二次電池の集電構造及び二次電池の実施の形態の構成を詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した非水電解質二次電池としてのリチウムイオン二次電池1の一部破断正面図である。なお、本実施の形態では、理解を容易にするため、一部の部品の厚み寸法を誇張して描いており、また極板の枚数を実際よりも少なく描いている。
【0050】
図1に示すように、本実施の形態のリチウムイオン二次電池1は、極板群3と、極板群3を内部に収容するステンレス製で角型の電池容器5とを備えている。電池容器5は、一方の端部が開口する電池缶7と、電池蓋9とを備えており、極板群3を電池缶7に挿入した後、電池缶7の開口周縁部と、電池蓋9の周縁部とを溶接することで密閉されている。
【0051】
電池蓋9には、アルミニウム製の正極端子11及び銅製の負極端子13が固定されている。正極端子11及び負極端子13は、電池蓋9の蓋板を貫通して電池容器5の外部に突出する螺子付きの端子部11a及び13aと、電池容器内に配置される図示しない正極集電体及び負極集電体とをそれぞれ有している。螺子付きの端子部11a及び13aには、正極端子用ナット21及び負極端子用ナット23が螺合されている。正極端子11及び負極端子13と電池蓋9の間には、円環状の内側パッキン15がそれぞれ設けられている。電池蓋9の外側には、電池蓋9を介して内側パッキン15と対向する位置に、円環状の外側パッキン17と、端子ワッシャ19とが重ねられた状態で設けられている。正極端子11及び負極端子13は、内側パッキン15、外側パッキン17、端子ワッシャ19を介して、ネジ部の先端に設けられた正極端子用ナット21及び負極端子用ナット23により、電池蓋9にそれぞれ固定されている。電池蓋9の正極端子11及び負極端子13が設けられた部分は、内側パッキン15及び外側パッキン17により、電池容器5内の密閉・封止状態を確保している。
【0052】
電池蓋9には、ステンレス箔を溶接したガス排出弁9a及び注液口9bが配設されている。ガス排出弁9aは、電池内圧上昇時にステンレス箔が開裂して内部のガスを放出する機能を有している。注液口9bからは、図示しない非水電解質が注入される。
【0053】
正極板35の正極集電板の一端には、正極タブ35aが形成されている。負極板37の負極集電板の一端には、負極タブ37aが形成されている。複数枚の正極板25の複数の正極タブ35aが重ねられて正極集電タブ層27が形成されており、複数枚の負極板37の複数の負極集電タブ37aが重ねられて負極集電タブ層33が形成されている。セパレータ39は正極板35と負極板37とが積層状態で接触することを阻止できる大きさを有している。
【0054】
正極端子11の正極集電体には、正極側押さえ板25との間に正極集電タブ層27を挟んだ状態で、正極側押さえ板25に攪拌接合用工具を回転させながら押し付けることにより撹拌接合部29を形成することにより、正極集電タブ層27が正極集電体に取り付けられている。また、負極端子13の負極集電体には、負極側押さえ板31との間に負極集電タブ層33を挟んだ状態で、負極側押さえ板31に攪拌接合用工具を回転させながら押し付けることにより撹拌接合部29を形成することにより、負極集電タブ層33が負極集電体に取り付けられている。
【0055】
図2は、電池缶7を取り除いた状態のリチウムイオン二次電池1の斜視図であり、
図3は、極板群3の右側面図である。なお
図2及び
図3においては、理解を容易にするために各構成部材を模式的に示している。そのため、
図2及び
図3に示した各構成部材は、実際の極板群の構成部材とは、形状及び寸法等が異なる。本実施の形態では、極板群3は複数の積層群3a、3b、3c、3dを備えている。積層群3a、3b、3c、3dは、それぞれ正極板35とセパレータ39と負極板37とが積層されて構成されている。
図2は、積層群が4個の場合の実施形態である。本実施の形態においては、積層群の数を2〜8個とすることが好ましく、積層群の数を3〜6個とすることがより好ましい。また、極板群3が有する正極板の枚数と負極板の枚数は、それぞれ150〜300枚の範囲であることが好ましく、180〜250枚の範囲であることがより好ましい。1つの積層群が有する正極板の枚数及び負極板の枚数は、それぞれ20〜80枚とすることが好ましく、30〜70枚とすることがより好ましく、40〜60枚とすることが更に好ましい。
【0056】
本実施の形態において、1枚の正極板に形成された正極活物質層の正極合剤の厚み及び1枚の負極板に形成された負極活物質層の負極合剤の厚み(集電体除く)は、それぞれ100μm〜300μmであることが好ましく、120〜250μmであることがより好ましく、140〜200μmであることが更に好ましい。
【0057】
本願明細書において、正負極板合剤層厚みとは、1組の正極板の正極活物質層及び負極板の負極活物質層の合計厚みを意味し、正負極板合剤層厚みが薄いとは、1組の正極板への正極合剤及び負極板への負極合剤(正負極合剤)の塗布量が少ないことを意味する(集電体の厚みは含まない。)。即ち、正極板および負極板の合剤密度は各々で全て同じであり、密度の変更により厚みを変化させることとは異なる。また、厚みを薄くすると同時に極板枚数を増やしている。このため、電池反応に関与する物質の総量は変わらず、反応面積が増大するので、電池容量を損なうことなく、長寿命かつ高出力化出来る。
【0058】
極板群3を構成する積層群3a、3b、3c、3dの数を
図2のように4とした場合、積層群3b及び積層群3cの少なくとも一方の正負極板合剤層厚さを積層群3aおよび積層群3dの正負極板合剤層よりも薄くし、極板構成枚数を増やすことで、充放電時の熱分布を平準化すると共に、正極板と負極板の極間距離を狭め、かつ対向面積を広げることにより、長寿命かつ高出力になる傾向になる。ここで、最外積層群3a及び3dの正負極板合剤層厚さが、(最外積層群3a及び3dの間に挟まれた)内側の積層群3b及び3cの正負極板合剤層厚さより厚いことがより好ましい。すなわち最外積層群3a及び3dに含まれる極板の枚数が、内側の積層群3b及び3cに含まれる極板の枚数よりも少なくなるのが好ましい。
【0059】
最外積層群3a及び3dに用いられる極板の正負極板合剤層厚さと内側の積層群3b及び3cに用いられる極板の正負極板合剤層厚さとの差は、5〜30μmであることが好ましく、6〜25μmであることが更に好ましい。
【0060】
なお、
図3においては、図示を簡単にするために、積層群3a、3b、3c、3dの正極板と負極板とセパレータを省略しているが、70〜120Ah程度の容量を想定した本実施の形態のリチウムイオン二次電池1では、実際には、数百枚の正極板と数百枚の負極板と数百枚のセパレータが積層されて極板群3が構成されている。
【0061】
正極にリチウム含有複合酸化物、負極に炭素質材料を用いた非水電解質二次電池において極板枚数が200枚以上で一層大きな効果を得られるが、正極板と負極板とが、セパレータを介して積層された積層群を有する非水電解質二次電池であれば同様の効果を示すものである。
【0062】
なお正極タブ35aを束ねた正極集電タブ層27は、独立した接続用集電板を介して正極端子11の正極集電体に電気的に接続する方法を用いる場合には、正極集電タブ層27の一端を接続用集電板の一端に超音波溶接やレーザー溶接等を用いて接合し、接続用集電板を正極集電体に接続すればよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施の形態による具体的な実施例を図面とともに説明する。
【0064】
本実施例で用いるために作製した電池は、本発明を実施するための形態で説明した電池と同様に作成したものを用いた。
【0065】
[正極板]
正極板は、集電体にアルミニウム箔、正極活物質として金属酸化物のマンガン酸リチウム、結着剤にポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)、導電材にアセチレンブラックを用いて作製した。
【0066】
[負極板]
負極板は、集電体に銅箔、負極活物質として黒鉛、結着剤にPVDFを用いた。
【0067】
[セパレータ]
セパレータは、ポリエチレン多孔質材料を用いた。
【0068】
[電解液]
電解液は、リチウム塩にLiBF4を、非水系溶媒にはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒を、添加剤にビニレンカーボネート(VC)を用いた。
【0069】
(実施例1)
正極板は204枚、負極板は208枚を用いて、4つの積層群を作製した。積層群3aおよび3dは正極板50枚、負極板は51枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは170μmである。積層群3bおよび3cは正極板52枚、負極板は53枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは163μmである。これらの積層群を備えた電池1を作製し、実施例1の試験電池とした。
【0070】
(実施例2)
正極板は208枚、負極板は212枚を用いて、4つの群を作製した。積層群3aおよび3dは正極板50枚、負極板は51枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは170μmである。積層群3bおよび3cは正極板54枚、負極板は55枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは157μmである。これらの積層群を備えた電池1を作製し、実施例2の試験電池とした。
【0071】
(実施例3)
正極板は216枚、負極板は220枚を用いて、4つの群を作製した。積層群3aおよび3dは正極板50枚、負極板は51枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは170μmである。積層群3bおよび3cは正極板58枚、負極板は59枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは146μmである。これらの積層群を備えた電池1を作製し、実施例3の試験電池とした。
【0072】
(比較例1)
正極板は200枚、負極板は204枚を用いて、4つの群を作製した。積層群3a、3b、3c、3dは各々、正極板50枚、負極板は51枚であり、1組の正負極板の合剤層厚みは170μmである。これらの積層群を備えた電池1を作製し、比較例1の試験電池とした。
【0073】
以下、本発明の実施例と比較例とについて比較を行った要素について列挙する。
【表1】
【表2】
【0074】
これらの電池を充放電した際の結果を表3に纏めた。充電は4.1Vの定電圧で最大電流を50Aとした。放電は500Aで電圧が3Vに至るまで行った。放電容量維持率は初回放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率とした。これらの結果は2個の電池の平均値である。
【表3】
【0075】
積層体の中心側に位置する積層群3bおよび3cの厚みが薄くなるほど電極温度の最高温度と最低温度の差が小さくなり、放電容維持率が高くなることがわかる。
【0076】
なお、上記実施例及び比較例では積層群を4群作製したが、上述の積層群の並びであれば、何群作製しても構わない。
【0077】
また、上記実施の形態では、リチウムイオン電池について説明をしたが、他の非水電解質二次電池に本発明を適用できるのは勿論である。