特許第6187569号(P6187569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187569
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】剥離剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20170821BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20170821BHJP
   C08F 20/24 20060101ALI20170821BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20170821BHJP
   C08L 71/02 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C08L33/04
   C08F20/24
   D21H27/00 A
   !C08L71/02
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-216675(P2015-216675)
(22)【出願日】2015年11月4日
(62)【分割の表示】特願2011-553873(P2011-553873)の分割
【原出願日】2011年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-65245(P2016-65245A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-30189(P2010-30189)
(32)【優先日】2010年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 広章
(72)【発明者】
【氏名】杉本 修一郎
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−012588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08F 20/24
C08L 33/04
D21H 27/00
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)に基づく構成単位および下記単量体(b)に基づく構成単位を有する含フッ素共重合体および媒体を含み、単量体(a)に基づく構成単位と単量体(b)に基づく構成単位の質量比(単量体(a)に基づく構成単位/単量体(b)に基づく構成単位)が1/1〜1/10であることを特徴とする剥離剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【請求項2】
前記単量体(b)が、ステアリル(メタ)アクリレートである請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体が、下記単量体(c)に基づく構成単位をさらに有する、請求項1または2に記載の剥離剤組成物。
単量体(c):ハロゲン化オレフィン。
【請求項4】
前記単量体(c)が、塩化ビニルである請求項3に記載の剥離剤組成物。
【請求項5】
前記含フッ素共重合体が、下記単量体(d)に基づく構成単位をさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の剥離剤組成物。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
【請求項6】
ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【請求項7】
前記媒体が、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびグリコールエステルからなる群から選ばれた1種以上の水系媒体である、請求項1〜6のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【請求項8】
前記含フッ素共重合体が媒体中に粒子として分散しており、含フッ素共重合体の平均粒子径が、10〜1000nmである、請求項1〜7のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【請求項9】
下記単量体(a)に基づく構成単位および下記単量体(b)に基づく構成単位を有する含フッ素共重合体および媒体を含み、
全ての単量体に基づく構成単位のうち、単量体(a)に基づく構成単位および単量体(b)に基づく構成単位の合計の割合が70〜100質量%であり、
単量体(a)に基づく構成単位の割合が1〜45質量%であることを特徴とする剥離剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【請求項10】
基材の表面が、請求項1〜9のいずれかに記載の剥離剤組成物で処理された剥離性物品。
【請求項11】
前記基材が紙、不織布及び樹脂からなる群より選ばれる1種以上である請求項10に記載の剥離性物品。
【請求項12】
下記単量体(a)と下記単量体(b)を含み、単量体(a)と単量体(b)の質量比(単量体(a)/単量体(b))が1/1〜1/10である単量体混合物を、重合開始剤存在下、共重合させる工程を有することを特徴とする剥離剤組成物の製造方法。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に剥離性を有する物品として、付箋紙、粘着シートやテープの粘着面の保護材、離型フィルム、離型紙などが知られている。物品の表面に剥離性を付与する方法としては、シリコーン系やフッ素系などの剥離剤組成物を用いて物品の表面を処理する方法が知られている。しかしながら、シリコーン系の剥離剤は、一般に剥離層を形成するシリコーン化合物が基材に付着しやすく、接着と剥離を繰り返し行う場合に問題となる。一方、フッ素系の剥離剤としては、炭素数8以上のポリフルオロアルキル基(以下、ポリフルオロアルキル基をR基と記す。)を有するリン酸エステル化合物等を媒体に溶解あるいは分散させた剥離剤組成物が知られている。また、炭素数5〜18の脂環族基を有するアクリレートと炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有するアクリレートを含む共重合体を含む剥離剤組成物も知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、最近、EPA(米国環境保護庁)によって、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基(以下、パーフルオロアルキル基をR基と記す。)を有する化合物は、環境、生体中で分解し、分解生成物が蓄積するおそれがある点、すなわち環境負荷が高い点が指摘されている。そのため、炭素数が6以下のR基を有する単量体に基づく構成単位を有し、炭素数が8以上のR基を有する単量体に基づく構成単位をできるだけ減らした含フッ素共重合体であって、かつ適度な接着性、剥離性を付与することができる剥離剤組成物が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37069公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、物品表面に適度な接着性、剥離性を付与でき、かつ環境負荷が低い剥離剤組成物、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の構成を有する剥離剤組成物、および剥離剤組成物の製造方法を提供する。
【0007】
[1]下記単量体(a)に基づく構成単位および下記単量体(b)に基づく構成単位を有する含フッ素共重合および媒体を含み、単量体(a)に基づく構成単位と単量体(b)に基づく構成単位の質量比(単量体(a)に基づく構成単位/単量体(b)に基づく構成単位)が1/1〜1/10であることを特徴とする剥離剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【0008】
[2]前記単量体(b)が、ステアリル(メタ)アクリレートである[1]に記載の剥離剤組成物。
[3]前記含フッ素共重合体が、下記単量体(c)に基づく構成単位をさらに有する、[1]または[2]に記載の剥離剤組成物。
単量体(c):ハロゲン化オレフィン。
[4]前記単量体(c)が、塩化ビニルである[3]に記載の剥離剤組成物。
【0009】
[5]前記含フッ素共重合体が、下記単量体(d)に基づく構成単位をさらに有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
[6]ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【0010】
[7]前記媒体が、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびグリコー
ルエステルからなる群から選ばれた1種以上の水系媒体である、[1]〜[6]のいずれ
かに記載の剥離剤組成物。
[8]前記含フッ素共重合体が媒体中に粒子として分散しており、含フッ素共重合体の
平均粒子径が、10〜1000nmである、[1]〜[7]のいずれかに記載の剥離剤組
成物。
[9]下記単量体(a)に基づく構成単位および下記単量体(b)に基づく構成単位を
有する含フッ素共重合体および媒体を含み、全ての単量体に基づく構成単位のうち、単量
体(a)に基づく構成単位および単量体(b)に基づく構成単位の合計の割合が70〜1
00質量%であり、単量体(a)に基づく構成単位の割合が1〜45質量%であることを特徴とする剥離剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
[10]基材の表面が、[1]〜[9]のいずれかに記載の剥離剤組成物で処理された剥離性物品。
[11]前記基材が紙、不織布及び樹脂からなる群より選ばれる1種以上である[10]に記載の剥離性物品。
[12]下記単量体(a)と下記単量体(b)を含み、単量体(a)と単量体(b)の質量比(単量体(a)/単量体(b))が1/1〜1/10である単量体混合物を、重合開始剤存在下、共重合させる工程を有することを特徴とする剥離剤組成物の製造方法。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基であり、
Yは、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)を有していてもよいアルキレン基、または単結合であり、
nは、1または2であり、
Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、
nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
−C(R)=CH・・・(3−1)、
−C(O)OC(R)=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)C(R)=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−C(R)=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは、0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剥離剤組成物は、物品表面に適度な接着性、剥離性を付与でき、かつ環境負荷が低い。また本発明の製造方法によれば、物品表面に適度な接着性、剥離性を付与でき、かつ環境負荷が低い剥離剤組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。また、本明細書においては、式(2)で表される基を基(2)と記す。他の式で表される基も同様に記す。また、本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、本明細書におけるR基は、アルキル基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基であり、R基は、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。また、本明細書における単量体は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
【0013】
<剥離剤組成物>
本発明の剥離剤組成物は、含フッ素共重合体と媒体を必須成分として含み、必要に応じて、界面活性剤、添加剤を含む。
(含フッ素共重合体)
本発明における含フッ素共重合体は、単量体(a)に基づく構成単位と、単量体(b)に基づく構成単位を必須構成単位として有し、必要に応じて、単量体(c)〜(e)に基づく構成単位を有する含フッ素共重合体である。
【0014】
単量体(a):
単量体(a)は、化合物(1)である。
(Z−Y)X ・・・(1)
Zは、炭素数が1〜6のR基、または下記基(2)である。
2m+1O(CFCF(CF)O)CF(CF)− ・・・(2)。
ただし、mは、1〜6の整数であり、dは、1〜4の整数である。
基の炭素数は、4〜6が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
Zとしては、下記の基が挙げられる。
F(CF
F(CF
F(CF
(CFCF(CF
【0015】
Yは、2価有機基または単結合である。
2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキレン基は、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)等を有していてもよい。
【0016】
Yとしては、下記の基が挙げられる。
−CH
−CHCH
−(CH
−CHCHCH(CH)−
−CH=CH−CH−等。
【0017】
nは、1または2である。
Xは、nが1の場合は、基(3−1)〜基(3−5)のいずれかであり、nが2の場合は、基(4−1)〜基(4−4)のいずれかである。
−CR=CH ・・・(3−1)
−COOCR=CH ・・・(3−2)
−OCOCR=CH ・・・(3−3)
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)
−OCH=CH ・・・(3−5)
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
−CH[−(CHC(R)=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OC(R)=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)C(R)=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、pは0〜4の整数である。
【0018】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、含フッ素共重合体の被膜の柔軟性、物品に対する含フッ素共重合体の接着性、媒体に対する溶解性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が1〜6のR基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1〜6のR基を有するメタクリレートがより好ましく、炭素数が4〜6のR基を有するメタクリレートが特に好ましい。
【0019】
単量体(b):
単量体(b)は、ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。アルキル基の炭素数が18以上であれば、剥離性が良好となる。アルキル基の炭素数が30以下であれば、相対的に融点が低く、ハンドリングしやすい。具体的には、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが好ましく、得られる剥離剤組成物の機械的安定性が優れることから特にベヘニルアクリレートが好ましい。単量体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても用いてもよい。単量体(b)として、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートを併用する場合、単量体(b)全体におけるベヘニル(メタ)アクリレートの含有割合は、5質量%以上とすることが好ましい。
【0020】
単量体(c):
単量体(c)は、ハロゲン化オレフィンである。単量体(c)に基づく構成単位を有することにより、含フッ素共重合体からなる被膜の強度が向上し、被膜と物品との接着性が向上する。
【0021】
ハロゲン化オレフィンとしては、塩素化オレフィンまたはフッ素化オレフィンが好ましく、具体的には、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンが挙げられる。含フッ素共重合体と物品との密着性および被膜強度を考慮した場合、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンが特に好ましい。
【0022】
単量体(d):
単量体(d)は、R基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体である。架橋しうる官能基としては、共有結合、イオン結合または水素結合のうち少なくとも1つ以上の結合を有する官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成できる官能基が好ましい。単量体(d)に基づく構成単位を有することにより、含フッ素共重合体の被膜の耐熱性や耐摩耗性が向上する。単量体(d)の炭素数は2〜50が好ましく、2〜12がより好ましい。
該官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましい。特に、エポキシ基、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、またはカルボキシル基が好ましい。
単量体(d)としては、(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が好ましい。
【0023】
単量体(d)としては、下記の化合物が挙げられる。
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体。
【0024】
3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0025】
メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド。
【0026】
t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルキシヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、アリル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−(2−ビニルオキサゾリン)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル。
【0027】
トリ(メタ)アリルイソシアヌレート(T(M)AIC、日本化成社製)、トリアリルシアヌレート(TAC、日本化成社製)、フェニルグリシジルエチルアクリレートトリレンジイソシアナート(AT−600、共栄社化学社製)、3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(テックコートHE−6P、京絹化成社製)。
【0028】
単量体(d)としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、ダイアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステルAT−600(共栄社化学社製)、またはテックコートHE−6P(京絹化成社製)が好ましい。
【0029】
単量体(e):
単量体(e)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、および単量体(d)を除く単量体である。単量体(e)に基づく構成単位を有することにより、含フッ素共重合体の被膜の耐熱性や耐摩耗性の向上、変色の抑制などの効果が得られる。
【0030】
単量体(e)としては、下記の化合物が挙げられる。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブテン、イソプレン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ビニルエチレン、ペンテン、エチル−2−プロピレン、ブチルエチレン、シクロヘキシルプロピルエチレン、デシルエチレン、ドデシルエチレン、ヘキセン、イソヘキシルエチレン、ネオペンチルエチレン、(1,2−ジエトキシカルボニル)エチレン、(1,2−ジプロポキシカルボニル)エチレン、メトキシエチレン、エトキシエチレン、ブトキシエチレン、2−メトキシプロピレン、ペンチルオキシエチレン、シクロペンタノイルオキシエチレン、シクロペンチルアセトキシエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヘキシルスチレン、オクチルスチレン、ノニルスチレン、クロロプレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン。
【0031】
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、メトキシ−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1,3−ジメチルブチルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート。
【0032】
クロトン酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、シトラコン酸アルキルエステル、メサコン酸アルキルエステル、トリアリルシアヌレート、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド、側鎖にシリコーンを有する(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、末端が炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート等。
【0033】
単量体(e)としては、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルへキシルなどのマレイン酸アルキルエステルが好ましい。
単量体(a)〜(e)は、各単量体の中から適宜1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
剥離強度とは、接着の強度を示す指標であり、接着物と被接着物を引き剥がす際に必要な単位幅あたりの平均荷重である。
【0035】
単量体(a)に基づく構成単位および単量体(b)に基づく構成単位の合計の割合は、剥離強度の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、70〜100質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、70〜80質量%が特に好ましい。
含フッ素共重合体における単量体(a)に基づく構成単位の割合は、剥離剤組成物の剥離強度の点から1〜45質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜20質量%が特に好ましい。
含フッ素共重合体における単量体(b)に基づく構成単位の割合は、剥離剤組成物の剥離強度の点から55〜99質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、55〜85質量%が特に好ましい。
含フッ素共重合体における単量体(c)に基づく構成単位の割合は、物品との密着性および被膜強度の点から0〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
含フッ素共重合体における単量体(d)に基づく構成単位の割合は、被膜の剥離強度、耐熱性や耐摩耗性の点から0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
含フッ素共重合体における単量体(e)に基づく構成単位の割合は、被膜の耐熱性や耐摩耗性の向上、変色の抑制などの効果の点から、0〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
【0036】
含フッ素共重合体における、単量体(a)に基づく構成単位と単量体(b)に基づく構成単位の質量比(単量体(a)に基づく構成単位/単量体(b)に基づく構成単位)は、1/1〜1/10である。好ましくは、1/2〜1/5であり、より好ましくは、1/2.5〜1/4である。
本発明における単量体に基づく構成単位の割合は、含フッ素共重合体の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出する。
【0037】
含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、40000以上であり、50000以上が好ましく、80000以上がさらに好ましい。含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)が40000以上であれば、動的撥水性、風乾後撥水性が良好となる。一方、含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、造膜性、保存安定性の観点から、1000000以下が好ましく、500000以下が特に好ましい。
フッ素共重合体の数平均分子量(Mn)は、20000以上が好ましく、30000以上が特に好ましい。一方、含フッ素共重合体の数平均分子量(Mn)は、500000以下が好ましく、200000以下が特に好ましい。
含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の分子量である。
【0038】
(媒体)
媒体としては、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、有機酸等が挙げられ、溶解性、取扱いの容易さの点から、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびグリコールエステルからなる群から選ばれた1種以上の水系媒体が好ましい。
【0039】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチルプロパノール、3−メチル−2−ブタノール、1,2−ジメチルプロパノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−へプタノール、2−へプタノール、3−へプタノール等が挙げられる。
【0040】
グリコール、グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコール、グリコールエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロブロモカーボン等が挙げられる。
【0042】
ハロゲン化エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、分離型ハイドロフルオロエーテル、非分離型ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。分離型ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル性酸素原子を介してR基またはパーフルオロアルキレン基、および、アルキル基またはアルキレン基が結合している化合物である。非分離型ハイドロフルオロエーテルとは、部分的にフッ素化されたアルキル基またはアルキレン基を含むハイドロフルオロエーテルである。
【0043】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、2−メチルブタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0044】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等が挙げられる。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0045】
窒素化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、りんご酸、乳酸等が挙げられる。
【0046】
媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。媒体を2種以上混合して用いる場合、水と混合して用いることが好ましい。混合した媒体を用いることにより、含フッ素共重合体の溶解性、分散性の制御がしやすく、加工時における物品に対する浸透性、濡れ性、溶媒乾燥速度等の制御がしやすい。
【0047】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられ、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、分散安定性の点から、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤または両性界面活性剤との併用、または、アニオン性界面活性剤の単独が好ましく、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との併用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との比(ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤)は、97/3〜40/60(質量比)が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との特定の組み合わせにおいては、含フッ素共重合体(100質量%)に対する合計量を、5質量%以下にできるため、剥離剤組成物の親水性が小さくなり、物品に優れた剥離性を付与できる。
【0048】
ノニオン性界面活性剤としては、界面活性剤s〜sからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0049】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルである。
界面活性剤sとしては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルが好ましい。界面活性剤sは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基またはポリフルオロアルキル基(以下、アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基およびポリフルオロアルキル基をまとめてR基と記す。)としては、炭素数が4〜26の基が好ましい。R基は、直鎖状で
あってもよく、分岐状であってもよい。分岐状のR基としては、2級アルキル基、2級アルケニル基または2級アルカポリエニル基が好ましい。R基は、水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0051】
基の具体例としては、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基(オクタデシル基)、ベヘニル基(ドコシル基)、オレイル基(9−オクタデセニル基)、ヘプタデシルフルオロオクチル基、トリデシルフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H−トリデシルフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0052】
ポリオキシアルキレン(以下、POAと記す。)鎖としては、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す。)鎖および/またはポリオキシプロピレン(以下、POPと記す。)鎖が2個以上連なった鎖が好ましい。POA鎖は、1種のPOA鎖からなる鎖であってもよく、2種以上のPOA鎖からなる鎖であってもよい。2種以上のPOA鎖からなる場合、各POA鎖はブロック状に連結されることが好ましい。
【0053】
界面活性剤s1としては、化合物(s11)がより好ましい。
10O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)H ・・・(s11
ただし、R10は、炭素数が8以上のアルキル基または炭素数が8以上のアルケニル基であり、rは、5〜50の整数であり、sは、0〜20の整数である。R10は、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0054】
rが5以上であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、剥離剤組成物の物品への浸透性が良好となる。rが50以下であれば、親水性が抑えられ、剥離強度が良好となる。
sが20以下であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、剥離剤組成物の基材への浸透性が良好となる。
【0055】
rおよびsが2以上である場合、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
10としては、直鎖状または分岐状のものが好ましい。
rは、10〜30の整数が好ましい。
sは、0〜10の整数が好ましい。
【0056】
化合物(s11)としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
1837O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)30H、
1835O−(CHCHO)30H、
1633O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)20H、
1225O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
(C17)(C13)CHO−(CHCHO)15H、
1021O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
13CHCHO−(CHCHO)15H、
13CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H。
【0057】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中に1個以上の炭素−炭素三重結合および1個以上の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、分子中に1個の炭素−炭素三重結合、および1個または2個の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤sは、分子中にPOA鎖を有してもよい。POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、POE鎖とPOP鎖とがランダム状に連結された鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とがブロック状に連結された鎖が挙げられる。
界面活性剤sとしては、化合物(s21)〜(s24)が好ましい。
【0058】
【化1】
【0059】
〜Aは、それぞれアルキレン基である。
uおよびvは、それぞれ0以上の整数であり、(u+v)は、1以上の整数である。
wは、1以上の整数である。
u、v、wが、それぞれ2以上である場合、A〜Aは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とを含む鎖が好ましい。POA鎖の繰り返し単位の数は、1〜50が好ましい。
【0060】
11〜R16は、それぞれ水素原子またはアルキル基である。
アルキル基としては、炭素数が1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
化合物(s22)としては、化合物(s25)が好ましい。
【0061】
【化2】
【0062】
ただし、xおよびyは、それぞれ0〜100の整数である。
化合物(s25)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(s25)としては、xおよびyが0である化合物、xとyとの和が平均1〜4である化合物、またはxとyとの和が平均10〜30である化合物が好ましい。
【0063】
界面活性剤s
界面活性剤sは、POE鎖と、炭素数が3以上のオキシアルキレンが2個以上連続して連なったPOA鎖とが連結し、かつ、両末端が水酸基である化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
該POA鎖としては、ポリオキシテトラメチレン(以下、POTと記す。)および/またはPOP鎖が好ましい。
【0064】
界面活性剤sとしては、化合物(s31)または化合物(s32)が好ましい。
HO(CHCHO)g1(CO)(CHCHO)g2H ・・・(s31)、
HO(CHCHO)g1(CHCHCHCHO)(CHCHO)g2H ・・・(s32)。
【0065】
g1は、0〜200の整数である。
tは、2〜100の整数である。
g2は、0〜200の整数である。
g1が0の場合、g2は、2以上の整数である。g2が0の場合、g1は、2以上の整数である。
【0066】
−CO−は、−CH(CH)CH−であってもよく、−CHCH(CH)−であってもよく、−CH(CH)CH−と−CHCH(CH)−とが混在したものであってもよい。
POA鎖は、ブロック状である。
【0067】
界面活性剤sとしては、下記の化合物が挙げられる。
HO−(CHCHO)15−(CO)35−(CHCHO)15H、
HO−(CHCHO)−(CO)35−(CHCHO)H、
HO−(CHCHO)45−(CO)17−(CHCHO)45H、
HO−(CHCHO)34−(CHCHH2CHO)28−(CHCHO)34H。
【0068】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中にアミンオキシド部分を有するノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、化合物(s41)が好ましい。
【0069】
【化3】
【0070】
17〜R19は、それぞれ1価炭化水素基である。
本発明においては、アミンオキシドを有する界面活性剤をノニオン性界面活性剤として扱う。
化合物(s41)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(s41)としては、含フッ素共重合体の分散安定性の点から、化合物(s42)が好ましい。
【0071】
【化4】
【0072】
20は、炭素数が6〜22のアルキル基、炭素数が6〜22のアルケニル基、炭素数が6〜22のアルキル基が結合したフェニル基、炭素数が6〜22のアルケニル基が結合したフェニル基、または炭素数が6〜13のフルオロアルキル基である。R20としては、炭素数が8〜22のアルキル基、または炭素数が8〜22のアルケニル基、または炭素数が4〜9のポリフルオロアルキル基が好ましい。
化合物(s42)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0073】
【化5】
【0074】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルからなるノニオン性界面活性剤である。
置換フェニル基としては、1価炭化水素基で置換されたフェニル基が好ましく、アルキル基、アルケニル基またはスチリル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0075】
界面活性剤sとしては、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテル、またはポリオキシエチレンモノ[(アルキル)(スチリル)フェニル〕エーテルが好ましい。
【0076】
ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルとしては、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オクチルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オレイルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(ノニル)(スチリル)フェニル]エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(オレイル)(スチリル)フェニル]エーテル等が挙げられる。
【0077】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオールの脂肪酸エステルからなるノニオン性界面活性剤である。
ポリオールとは、グリセリン、ソルビタン、ソルビット、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエーテル、ポリオキシエチレンソルビットエーテルを表わす。
【0078】
界面活性剤sとしては、ステアリン酸とポリエチレングリコールとの1:1(モル比)エステル、ソルビットとポリエチレングリコールとのエーテルとオレイン酸とのl:4(モル比)エステル、ポリオキシエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとステアリン酸との1:1(モル比)エステル、ポリエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとオレイン酸との1:1(モル比)エステル、ドデカン酸とソルビタンとの1:1(モル比)エステル、オレイン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステル、ステアリン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステルが挙げられる。
【0079】
界面活性剤s
界面活性剤がカチオン性界面活性剤を含む場合、該カチオン性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、置換アンモニウム塩形のカチオン性界面活性剤である。
【0080】
界面活性剤sとしては、窒素原子に結合する水素原子の1個以上が、アルキル基、アルケニル基または末端が水酸基であるPOA鎖で置換されたアンモニウム塩が好ましく、化合物(s71)がより好ましい。
[(R21]・X ・・・(s71)。
21は、水素原子、炭素数が1〜22のアルキル基、炭素数が2〜22のアルケニル基、炭素数が1〜9のフルオロアルキル基、または末端が水酸基であるPOA鎖である。4つのR21は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、4つのR21は同時に水素原子ではない。
【0081】
21としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
21が長鎖アルキル基以外のアルキル基の場合、R21としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
21が、末端が水酸基であるPOA鎖の場合、POA鎖としては、POE鎖が好ましい。
は、対イオンである。
としては、塩素イオン、エチル硫酸イオン、または酢酸イオンが好ましい。
【0082】
化合物(s71)としては、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0083】
界面活性剤s
界面活性剤が両性界面活性剤を含む場合、該両性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類または酢酸ベタインである。
【0084】
疎水基としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
界面活性剤sとしては、ドデシルベタイン、ステアリルベタイン、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0085】
界面活性剤s
界面活性剤として、界面活性剤sを用いてもよい。
界面活性剤sは、親水性単量体と炭化水素系疎水性単量体および/またはフッ素系疎水性単量体との、ブロック共重合体、ランダム共重合体、または親水性共重合体の疎水性変性物からなる高分子界面活性剤である。
【0086】
界面活性剤sとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートと長鎖アルキルアクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエーテルとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエステルとのブロックまたはランダム共重合体、スチレンと無水マレイン酸との重合物、ポリビニルアルコールとステアリン酸との縮合物、ポリビニルアルコールとステアリルメルカプタンとの縮合物、ポリアリルアミンとステアリン酸との縮合物、ポリエチレンイミンとステアリルアルコールとの縮合物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。
【0087】
界面活性剤sの市販品としては、クラレ社のMPポリマー(商品番号:MP−103、MP−203)、エルフアトケム社のSMAレジン、信越化学社のメトローズ、日本触媒社のエポミンRP、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−381、S−393)等が挙げられる。
【0088】
界面活性剤sとしては、媒体が有機溶剤の場合または有機溶剤の混合比率が多い場合、界面活性剤s91が好ましい。
界面活性剤s91:親油性単量体とフッ素系単量体とのブロック共重合体またはランダム共重合体(そのポリフルオロアルキル変性体)からなる高分子界面活性剤。
【0089】
界面活性剤s91としては、アルキルアクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキルビニルエーテルとフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
界面活性剤s91の市販品としては、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−383、SC−100シリーズ)が挙げられる。
【0090】
界面活性剤の組み合わせとしては、剥離剤組成物の剥離性に優れる点、得られた乳化液の安定性の点から、界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤s2と界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせが好ましく、界面活性剤sが化合物(s71)である上記の組み合わせがより好ましい。
界面活性剤の合計量は、含フッ素共重合体(100質量%)に対して1〜6質量%がより好ましい。
【0091】
(添加剤)
添加剤としては、浸透剤、消泡剤、吸水剤、帯電防止剤、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子(ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等。)、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂等。)、エポキシ硬化剤(イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド、スピログリコール等。)、熱硬化触媒、架橋触媒、合成樹脂、繊維安定剤等が挙げられる。
【0092】
(剥離剤組成物の製造方法)
本発明の剥離剤組成物は、たとえば、下記(i)または(ii)の方法で製造できる。
(i)界面活性剤、重合開始剤の存在下、媒体中にて単量体(a)、(b)、必要に応じて単量体(c)、(d)、(e)を含む単量体混合物を重合して含フッ素共重合体の溶液、分散液またはエマルションを得た後、必要に応じて、他の媒体、他の界面活性剤、添加剤を加える方法。
(ii)界面活性剤、重合開始剤の存在下、媒体中にて単量体(a)、(b)、必要に応じて単量体(c)、(d)、(e)を含む単量体混合物を重合して含フッ素共重合体の溶液、分散液またはエマルションを得た後、含フッ素共重合体を分離し、含フッ素共重合体に媒体、界面活性剤、必要に応じて添加剤を加える方法。
本発明における含フッ素共重合体の重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0093】
剥離剤組成物の製造方法としては、界面活性剤、重合開始剤の存在下、水系媒体中で単量体(a)、(b)、必要に応じて単量体(c)、(d)、(e)を乳化重合して含フッ素共重合体のエマルションを得る方法が好ましい。
含フッ素共重合体の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0094】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水系媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は20〜150℃が好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体混合物100質量部に対して、0.1〜1質量部が好ましく、0.3〜0.6質量部が特に好ましい。
【0095】
単量体の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。分子量調整剤としては、メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマ(CH=C(Ph)CHC(CHPh、Phはフェニル基である。)等が挙げられる。分子量調整剤の添加量は、単量体混合物100質量部に対して、0.1〜3質量部が好ましく、0.5〜1.5質量部が特に好ましい。
【0096】
単量体混合物における単量体(a)の含有割合は、剥離剤組成物の剥離強度の点から1〜45質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜20質量%が特に好ましい。
単量体混合物における単量体(b)の含有割合は、剥離剤組成物の剥離強度の点から55〜99質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、55〜85質量%が特に好ましい。
単量体混合物における単量体(c)の含有割合は、物品との密着性および被膜強度の点から0〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
単量体混合物における単量体(d)の含有割合は、被膜の剥離強度や耐熱性、耐摩耗性の点から0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
単量体混合物における単量体(e)の含有割合は、被膜の耐熱性や耐摩耗性の向上、変色の抑制などの効果の点から、0〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
【0097】
単量体混合物における、単量体(a)と単量体(b)の質量比(単量体(a)に基づく構成単位/単量体(b)に基づく構成単位)は、1/1〜1/10である。好ましくは、1/2〜1/5であり、特に好ましくは、1/2.5〜1/4である。
【0098】
本発明の剥離剤組成物は、含フッ素共重合体が媒体中に粒子として分散していることが好ましい。含フッ素共重合体の平均粒子径は、10〜1000nmが好ましく、10〜300nmがより好ましく、10〜200nmが特に好ましい。平均粒子径が該範囲であれば、界面活性剤、分散剤等を多量に用いる必要がなく、剥離性が良好であり、媒体中で分散粒子が安定に存在できて沈降することがない。前記平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定できる。
【0099】
本発明の剥離剤組成物の固形分濃度は、剥離剤組成物の製造直後は、剥離剤組成物(100質量%)中、25〜40質量%が好ましい。
基材を処理する場合には、製造直後の剥離剤組成物を上述の媒体にて希釈することが好ましい。
基材を処理する場合、本発明の剥離剤組成物の固形分濃度は、剥離剤組成物(100質量%)中、0.2〜5質量%が好ましい。
剥離剤組成物の固形分濃度は、加熱前の剥離剤組成物の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0100】
以上説明した本発明の剥離剤組成物にあっては、特定の構成単位の組み合わせからなるため、物品の表面に適度な剥離性を付与でき、かつ耐久性および風合いに優れる。
【0101】
<物品>
本発明の剥離剤組成物で処理することにより、不織布、樹脂、紙、皮革、金属、石、コンクリート、石膏、ガラス等様々な基材の表面に剥離性を付与することができる。なかでも、紙に適用することが好ましい。
【0102】
前記基材は、2つの異なる基材の間に剥離剤として用いる場合、紙とガラス、紙と繊維等が挙げられる。具体的には、付箋紙、粘着シートやテープの粘着面の保護材、離型フィルム、離型紙の製造などに用いることができる。
【0103】
本発明の剥離剤組成物で処理して得られた剥離紙は、剥離紙を一度接着させ、後に剥離させる相手方の基材はガラスや布であってもよい。
処理方法としては、たとえば、公知の塗工方法によって物品に剥離剤組成物を塗布または含浸した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0104】
本発明の物品の剥離強度は、物品に粘着テープや粘着成分を塗布した基材を貼り付けた際の接着性を示す指標であり、引張試験機などによって測定することができる。物品の剥離強度は、下記実施例記載の測定条件において、0.1〜0.6Nが好ましく、0.15〜0.5Nがより好ましい。剥離強度が0.6Nよりも大きいと基材と基材をはがす際に破れる可能性がある。一方、剥離強度が0.1Nより小さい場合には、基材同士を接着させる接着性が充分でなくなる。
【0105】
本発明の剥離剤組成物を用いて物品を処理すると、高品位な剥離性を物品に付与できる。また、表面の接着性に優れ、低温でのキュアリングでも剥離性を付与できる。また、摩擦による性能の低下が少なく、性能を安定して維持できる。特に、紙へ処理した場合は、低温の乾燥条件でも、優れた剥離剤に付与できる。樹脂、ガラスまたは金属表面などに処
理した場合には、物品への密着性が良好で造膜性に優れた被膜を形成できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜7は実施例、例8は比較例である。
【0107】
(略号)
単量体(a):
C6FMA:C13OC(O)C(CH)=CH
単量体(b):
BeA:ベヘニルアクリレート
StA:ステアリルアクリレート
単量体(c):
VCM:塩化ビニル
単量体(d):
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
NMAM:N−メチロールアクリルアミド
TAC:トリアリルシアヌレート
MOI−BP:2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体(昭和電工社製、カレンズMOI−BP)
単量体(e):
DOM:マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル。
【0108】
界面活性剤s
PEO−20:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王社製、エマルゲンE430、エチレンオキシド約26モル付加物。)の10質量%水溶液。
界面活性剤s
STMC:モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(ライオン社製、アーカード18−63)の10質量%水溶液。
界面活性剤s
P−204:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(日本油脂社製、プロノン204、エチレンオキシドの割合は40質量%。)の10質量%水溶液。
【0109】
分子量調整剤:
nDoSH:n−ドデシルメルカプタン、
重合開始剤:
VA−061A:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬社製、VA−061)の酢酸塩の10質量%水溶液。
媒体:
DPG:ジプロピレングリコール、
水:イオン交換水。
【0110】
[例1]
ガラス製ビーカーに、C6FMAの43.3g、BeAの146.4g、DOMの10.2g、HEMAの2.5g、nDoSHの2.5g、PEO−20の63.7g、P−204の12.7g、STMCの12.7g、DPGの76.4g、水の314.5gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて混合して混合液を得た。
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機(APVラニエ社製、ミニラボ)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液をステンレス製反応容器に入れ、40℃以下となるまで冷却した。VA−061の12.7gを加えて、気相を窒素置換した後、VCMの52.2gを導入し、撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、含フッ素共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合(質量比)を表2に示す。
【0111】
[例2〜8]
各単量体の種類または仕込み量を表1に示す量に変更した以外は、例1と同様にして共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合(質量比)を表2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
<剥離性の評価>
(基材の作成)
例1〜8の剥離剤組成物と10gの酸化デンプン(日本食品化工社製MS−3600)を80〜90gの水で希釈(剥離剤組成物の固形分濃度:2質量%)し、それをPPC用紙に塗布し、100℃で60秒間乾燥させた。希釈液の塗布量は約30g/mとした。
【0115】
(剥離性)
処理した基材に長さ25mmのポリエステルテープ(日東電工社製)を貼り付け、その上を2kgの圧着ローラーで2往復した。ポリエステルテープを貼り付けた基材を引っ張り試験機にセットし、剥離強度を評価した。引っ張り試験機の測定条件は、スピード300mm/分、つかみ幅25mm、剥離距離50mmとした。結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
<機械安定性の評価>
例4、6、7の剥離剤組成物を炭酸カルシウムにより硬度を150に調整した水で希釈し、アニオン物質としてディマフィックスES(明成化学工業社製)を添加した。このとき、剥離剤組成物の濃度は6g/L、アニオン物質の濃度は0.15g/Lとした。これらの混合液をホモミキサーにより撹拌後、黒色の織物でろ過し、沈殿物の発生程度を目視により良好なものを5点とし、1点までの5段階で評価した。結果は表4に示す。
【0118】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の剥離剤組成物は、紙、不織布、皮革製品、石材、コンクリート系建築材料等の剥離剤として有用である。
なお、2010年2月15日に出願された日本特許出願2010−030189号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。