(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層、粘着層、接着層がこの順で積層されたダイシング・ダイボンディング一体型テープにおける前記基材層及び前記粘着層として用いられるダイシングテープにおいて、
前記粘着層は、アクリル樹脂と、光開始剤と、架橋剤とを含んでおり(ただし、側鎖にシロキサン結合を持つフッ素系グラフト共重合体を含有する前記粘着層を除く)、
前記架橋剤の含有量は、前記アクリル樹脂100質量部に対して5〜9質量部である、
ダイシングテープ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、(メタ)アクリルエステルとは「アクリルエステル」及びそれに対応する「メタクリルエステル」を意味する。
【0019】
<ダイシング・ダイボンディング一体型テープ>
ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1は、半導体ウエハを半導体チップに個片化するダイシング用フィルムとしての機能と、個片化された半導体チップを支持基板に接続する際の接着層を半導体チップに付与する機能と、を一体的に有するフィルムである。
【0020】
図1は、本発明のダイシング・ダイボンディング一体型テープの好適な一実施形態を示す模式断面図である。このダイシング・ダイボンディング一体型テープ1は、基材層10、粘着層20及び接着層30がこの順で積層された構成からなる。基材層10及び粘着層20がダイシングテープであり、接着層30がダイボンディングテープである。以下、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を構成する各層について詳細に説明する。なお、ここでは粘着層20に照射する光として紫外線を採用する場合を挙げるが、紫外線の代わりに電子線及び/又は可視光線を採用してもよいし、紫外線と共に電子線及び/又は可視光線を採用してもよい。
【0021】
(基材層)
基材層10は、ダイシング時に半導体ウエハを支持する部分である。基材層10としては、既知のポリマーシート又はポリマーテープを用いることができる。基材層10を構成する好ましい化合物としては、ダイボンディング工程中にエキスパンド(放射状延伸)可能なものが挙げられる。具体的には、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらに可塑剤、シリカ、アンチブロッキング材、スリップ剤、帯電防止剤等を混合した混合物などが挙げられる。これらの混合物のなかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレンランダム共重合体及びポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体はヤング率、応力緩和性、融点等の特性に加えて、価格面、使用後の廃材リサイクル等の観点からも良好な基材であり、また紫外線による表面改質効果が得られやすいため、より好適である。なお、基材層10は、上記成分のうちの一種の成分からなるものでもよく、二種以上の成分からなるものでもよい。
【0022】
基材層10は、単層でも構わないが、必要に応じて異なる材質からなる層が積層された多層構造を有しても構わない。例えば、基材層10は、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレンランダム共重合体及びポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種を主成分として含む層を有し、この層が粘着層20と接するように設けられていることが好ましい。多層構造の基材層10は、多層押し出し法で異なる層を有する基材層を一度で作ってもよいし、インフレーション法、単層押し出し法等で作られたテープを接着剤を用いて貼り合わせる、又は熱溶着によって張り合わせる等の手法により得ることで製造できる。また基材層10には粘着層20との密着性を制御するため、必要に応じて、マット処理、コロナ処理などの表面粗化処理を施しても構わない。
【0023】
基材層10の厚さは、好ましくは50〜150μmであり、より好ましくは70〜140μmである。厚さが50μm未満であると、基材層10の剛性が低下し、粘着層20と接着層30とを剥離する際に剥離不良が発生しやすくなるとともに、基材層10自体の強度が低下するため、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1の使用時の取り扱いが困難となりやすい。他方、厚さが150μmを超えると、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1の全体の厚さが厚くなり過ぎ、使用時の取り扱いが困難となったり、リール状に巻回して保管することが困難となりやすい。
【0024】
(粘着層)
粘着層20は、紫外線照射前における破断伸びが140%より大きく200%以下であり、好ましくは150〜190%であり、より好ましくは150〜180%である。紫外線照射前における破断伸びが200%未満であると、ダイシング工程時の切削性が良好であるため、ピックアップ時に突き上げ量が小さい場合でも十分なピックアップ性が得られる。なお、紫外線照射前における破断伸びが140%以下であると、紫外線照射前における粘着層20の粘着力が低下し、被着体を固定する力が弱くなる。そのため、特に小チップサイズの被着体にダイシングを行う際に、リング剥れ及びチップ飛びが起こりやすい。
【0025】
粘着層20は、主成分をなすアクリル系共重合体と、架橋剤と、光開始剤とを含有する。以下、これらの成分について説明する。なお、本明細書における「主成分」とは、対象の層を構成する組成物100質量部に対して含有量が50質量部を超える成分を意味する。
【0026】
上記アクリル系共重合体は、主鎖に対して、少なくとも放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基をそれぞれ有する。
【0027】
アクリル系共重合体としてのアクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂(以下、「(メタ)アクリル系樹脂」という。)は、側鎖に不飽和結合を含有し且つ樹脂自体が粘着性を有するものであれば制限はない。このような樹脂を用いることで突き上げ量が低くても良好なピックアップ性を有する層を得ることができる。具体的に例示するのであれば、ガラス転移温度が−40℃以下、水酸基価が20〜150mgKOH/g、連鎖重合可能な官能基が0.3〜1.5mmol/g含まれ、且つ酸価が実質検出されず、重量平均分子量が30万以上である樹脂が挙げられる。このような構造を満足する(メタ)アクリル系樹脂を用いることで、ピックアップ性の優れた特性を有する粘着層20を得ることができる。
【0028】
このような特徴を有する(メタ)アクリル系樹脂は、既知の方法で合成することで得ることができるが、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、析出重合法、気相重合法、プラズマ重合法、超臨界重合法などが用いられる。また重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、イモーダル重合などの他、ATRP又はRAFTといった手法も用いることができる。この中でも、溶液重合法を用いてラジカル重合により合成することは、経済性の良さ、反応率の高さ、重合制御の容易さ等の他、重合で得られた樹脂溶液をそのまま用いて配合できるといった配合の簡便さもあるため好ましい。
【0029】
ここでは、溶液重合法を用いてラジカル重合により(メタ)アクリル系樹脂を得る方法を例に挙げ、詳細に説明する。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に用いられるモノマーとしては、一分子中に1個の(メタ)アクリル基を有するものであれば特に制限はないが、具体的に例示するのであれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(o−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(1−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(2−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−N−カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、これらのカプロラクトン変性体、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基を有する化合物;(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3−(2−エチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(2−メチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基を有する化合物;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基を有する化合物が挙げられ、これらを適宜組み合わせて目的とする組成物を得ることができる。
【0031】
更に必要に応じて、上述モノマーと共重合可能なスチレン、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−2−メチル−2−プロピルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−2−ペンチルマレイミド、N−3−ペンチルマレイミド、N−2−メチル−1−ブチルマレイミド、N−2−メチル−2−ブチルマレイミド、N−3−メチル−1−ブチルマレイミド、N−3−メチル−2−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−2−ヘキシルマレイミド、N−3−ヘキシルマレイミド、N−2−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−2−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−2−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−3−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−3−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−3−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−4−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−4−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−2,2−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−3,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−3,3−ジメチル−2−ブチルマレイミド、N−2,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−2,3−ジメチル−2−ブチルマレイミド、N−ヒドロキシメチルマレイミド、N−1−ヒドロキシエチルマレイミド、N−2−ヒドロキシエチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−1−プロピルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−1−プロピルマレイミド、N−3―ヒドロキシ−1−プロピルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−プロピルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−プロピルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−1−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−1−ブチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−1−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−ブチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−2−ブチルマレイミド、N−2−メチル−3−ヒドロキシ−1−プロピルマレイミド、N−2−メチル−3−ヒドロキシ−2−プロピルマレイミド、N−2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−1−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−1−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−1−ペンチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−1−ペンチルマレイミド、N−5−ヒドロキシ−1−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−ペンチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−2−ペンチルマレイミド、N−5−ヒドロキシ−2−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−3−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−3−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−1−プロピルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−1−プロピルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−1−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−4−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−5−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−6−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−1−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−5−ヘキシルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−6−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−1−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−3−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−4−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−5−ヘキシルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−6−ヘキシルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−4−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−2−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−4−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−4−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−4−メチル、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−3−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−4−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−メチル−5−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチルマレイミド、N−3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3−エチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3−エチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2−エチル−1−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−3−エチル−1−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−3−エチル−2−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−3−エチル−3−ブチルマレイミド、N−4−ヒドロキシ−3−エチル−4−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−2−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−3−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−3−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−4−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−3−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−4−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−ブチルマレイミド、N−2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−1−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−ブチルマレイミド、N−1−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−ブチルマレイミド等のアルキルマレイミド;N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド、N−2−メチルシクロヘキシルマレイミド、N−2−エチルシクロヘキシルマレイミド、N−2−クロロシクロヘキシルマレイミド等のシクロアルキルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2−エチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド等のアリールマレイミドなどを、適宜用いることができる。
【0032】
この中でも、C8〜C23の脂肪族エステルである(メタ)アクリルエステルから選ばれ、少なくとも1種を用いるのが好ましい。このようなモノマー成分を共重合して得られた(メタ)アクリル系樹脂はガラス転移温度が低いため、優れた粘着特性を示すだけでなく、疎水性相互作用が強いため紫外線又は電子線を照射した後においては、粘着層20と接着層30との界面における剥離性が優れるため好ましい。
【0033】
またこのような(メタ)アクリル系樹脂を得るために必要な重合開始剤としては、30℃以上の加熱によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限はないが、例えばメチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール;p−メンタンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2’−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
【0034】
また溶液重合の際に用いられる反応溶媒としては、(メタ)アクリル系樹脂を溶解し得るものであれば、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p−シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミドなどが挙げられ、更にこれらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。更に超臨界二酸化炭素などを溶媒に用いて重合することもできる。
【0035】
(メタ)アクリル系樹脂に、紫外線、電子線、及び/又は可視光線の照射によって反応し得る官能基を化学的に結合させることによって、感光性を付与することができる。ここでいう、紫外線、電子線、及び/又は可視光線の照射によって反応し得る官能基とは、具体的に例示するのであれば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタン基などが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル系樹脂に感光性を付与する方法としては、特に制限はないが、例えば上記の(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に、前もって付加反応し得る官能基、例えば水酸基、カルボキシル基、無水マレイル基、グリシジル基、アミノ基等を有するモノマーと共重合することで(メタ)アクリル系樹脂に付加反応可能な官能基を導入し、そこに少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物を付加反応させて側鎖にエチレン性不飽和基を導入することで、(メタ)アクリル系樹脂に感光性を付与することができる。
【0037】
このような化合物としては特に制限はなく、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基を有する化合物;(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3−(2−エチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(2−メチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基を有する化合物;メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基を有する化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、コハク酸(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、2−フタロイルエチル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレート、2−ヘキサヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸等のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する化合物などが挙げられる。
【0038】
これらの中でもコスト及び/又は反応性の観点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソシアン酸エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−ヘキサヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレートなどを用いて、(メタ)アクリル系樹脂と反応させ、感光性を付与することが好ましい。これらの化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、付加反応を促進する触媒を添加、又は反応中の二重結合の開裂を避ける目的のために重合禁止剤を添加することもできる。また更に好ましくは、OH基を含有する(メタ)アクリル系樹脂と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートから選ばれる少なくとも1種との反応物である。
【0039】
上記架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂に導入された水酸基、グリシジル基及びアミノ基などから選ばれる少なくとも1種と、これらの官能基と反応し得る官能基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、その構造には制限はない。このような架橋剤で形成される結合としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合などが挙げられる。その中でも架橋剤に、芳香族基含有のイソシアネート基を有する場合、紫外線照射量が増加しても、粘着層20と接着層30との間の剥離力が高くなりにくいため好ましい。
【0040】
粘着層20に含まれる架橋剤の量は、アクリル系共重合体100質量部に対して5〜9質量部であることが好ましい。架橋剤の量が5質量部未満であると、紫外線照射前における粘着層20の破断伸びが高くなり、ダイシング工程時の切削性が不十分となりやすい。これに加え、紫外線照射後における粘着層20と接着層30間の剥離力が十分に低下せず、ピックアップ工程時の突き上げ量を比較的大きく設定する必要が生じやすい。他方、架橋剤の量が9質量部を越えると、紫外線照射前における粘着層20の粘着力が弱くなる傾向にあり、半導体チップを固定する力が不十分となりやすい。このため、ダイシング工程時において、ダイボンディングシートの剥離に加えて、小チップサイズの半導体チップの場合、チップ飛びなどの不具合が生じやすくなる。
【0041】
架橋剤としては、架橋剤1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。このような化合物を用いると、(メタ)アクリル系樹脂に導入された水酸基、グリシジル基、アミノ基などと容易に反応し、強固な架橋構造を形成し、ダイボンディング工程後の半導体チップへの粘着層20の付着を抑制することができる。
【0042】
ここで、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する架橋剤とは、具体的に例示すれば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどのイソシアネート化合物が挙げられる。
【0043】
また更に上述のイソシアネート化合物と、1分子中に2つ以上のOH基を有する多価アルコール類を反応させることで得られるイソシアナート基含有オリゴマーを用いることもできる。そのようなオリゴマーを得る場合、1分子中に2つ以上のOH基を有する多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、架橋剤が、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、1分子中に3つ以上のOH基を有する多価アルコールの反応物であることが更に望ましい。このようなイソシアネート基含有オリゴマーを用いることで、粘着層20が緻密な架橋構造を形成し、ダイボンディング工程後の半導体チップへの粘着層20の付着を抑制することができる。
【0045】
上記光開始剤は、紫外線、電子線及び可視光線から選択される1種以上の光の照射によって上記アクリル系共重合体の連鎖重合を生じさせ得る活性種を発生するものであれば特に制限はなく、例えば、光ラジカル重合開始剤であっても、光カチオン重合開始剤であってもよい。連鎖重合可能な活性種としては、上記アクリル系共重合体の官能基と反応することで重合反応が開始されるものであれば特に制限はない。
【0046】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾインケタール;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のα−アミノケトン;1−[(4−フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタジオン−2−(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N−フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0047】
また、上述した2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つのトリアリールイミダゾール部位のアリール基の置換基は、同一で対称な化合物を与えてもよく、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また。ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン化合物と3級アミンとを組み合わせてもよい。
【0048】
光カチオン重合開始剤としては、例えばp−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムペンタフルオロヒドロキシアンチモネート等のトリアリールスルホニウム塩;トリフェニルセレノニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルセレノニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルセレノニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールセレノニウム塩;ジメチルフェナシルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジエチルフェナシルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のジアルキルフェナシルスルホニウム塩;4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のジアルキル−4−ヒドロキシ塩;α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステル、N−ヒドロキシイミドスルホネート、α−スルホニロキシケトン、β−スルホニロキシケトン等のスルホン酸エステルなどが挙げられるが、これらのカチオン重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。更に、適切な増感剤と組み合わせて用いることもできる。
【0049】
その中でも粘着層20に厳しい絶縁性及び絶縁信頼性が必要な場合は、光ラジカル開始剤を用いるのが好ましく、その中でも2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾインケタール;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン;ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N−フェニルグリシン、クマリンなどは、ダイシング・ダイボンディング一体型テープにおける保存安定性に優れるため好ましく、更に2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ベンゾフェノンは一般の紫外線遮光型蛍光灯の元での取り扱いが可能であり、イエロールーム等の設備が必要でないため更に好ましい。
【0050】
光開始剤の配合量は、目的とする粘着層20の厚さ及び/又は用いる光源によって最適値は異なるが、0.5〜1.5質量部であることが好ましい。光開始剤の量が0.5質量部未満であると紫外線照射後における接着層30との剥離力が十分に低下せず、ピックアップ時に突き上げ量が低い場合に不具合が発生しやすい。光開始剤の量が1.5質量部より大きいと、紫外線を1000mJ/cm
2照射した際に、粘着層20の分解が起こり接着層30との剥離力が高くなり、ダイボンディング工程時におけるピックアップ時に不具合が発生しやすい。
【0051】
粘着層20の厚さは、好ましくは5〜30μmである。厚さが5μm未満であると、紫外線照射前の粘着層20との接着層30との粘着力が低下して、ダイシング時に半導体素子が飛散する可能性がある。他方、厚さが30μmを超えると、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1としての全体の厚さが厚くなり過ぎ、使用時の取り扱いが困難となったり、リール状に巻回して保管することが困難となりやすい。
【0052】
光照射前における粘着層20のSUS基板に対するピール強度は、0.8N/25mm〜1.3N/25mmであることが好ましい。光照射前のピール強度を上記範囲とすることにより、光照射後における粘着層20と接着層30との間の粘着力を適度な範囲としやすくなる。よって、光照射後に実施するピックアップ工程において半導体チップのピックアップ性をより一層向上できる。
【0053】
(接着層)
接着層30は、ダイシング後に個片化された半導体チップを支持基板に接着・接続するためのものである。接着層30は、熱により硬化する熱硬化型の接着剤からなる層であり、エポキシ基含有アクリル共重合体、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤を含むことが好ましい。このような組成を有する接着層30は、半導体チップ/支持基板間、半導体チップ/半導体チップ間の接着性に優れ、また電極埋め込み性及び/又はワイヤー埋め込み性なども付与可能で、且つダイボンディング工程では低温で接着でき、短時間で優れた硬化が得られる、封止剤でモールド後は優れた信頼性を有する等の特徴があり好ましい。
【0054】
ここで、エポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などの二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することもできる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。更に、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0055】
またエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物を、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができるフェノール樹脂のようなものが挙げられる。
【0056】
フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−n−プロピルフェノール、m−n−プロピルフェノール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、o−ベンジルフェノール、p−ベンジルフェノール、o−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール等が例示される。これらのフェノール化合物は、単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0057】
フェノール樹脂の製造に用いられる2価の連結基であるキシリレン化合物としては、次に示すキシリレンジハライド、キシリレンジグリコール及びその誘導体が用いることができる。すなわち、α,α′−ジクロロ−p−キシレン、α,α′−ジクロロ−m−キシレン、α,α′−ジクロロ−o−キシレン、α,α′−ジブロモ−p−キシレン、α,α′−ジブロモ−m−キシレン、α,α′−ジブロモ−o−キシレン、α,α′−ジヨード−p−キシレン、α,α′−ジヨード−m−キシレン、α,α′−ジヨード−o−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−p−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−m−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−o−キシレン、α,α′−ジメトキシ−p−キシレン、α,α′−ジメトキシ−m−キシレン、α,α′−ジメトキシ−o−キシレン、α,α′−ジエトキシ−p−キシレン、α,α′−ジエトキシ−m−キシレン、α,α′−ジエトキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−n−プロポキシ−p−キシレン、α,α′−ジ−n−プロポキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−n−プロポキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−イソプロポキシ−p−キシレン、α,α′−ジイソプロポキシ−m−キシレン、α,α′−ジイソプロポキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−o−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−o−キシレンを挙げることができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
上記したフェノール化合物とキシリレン化合物を反応させる際には、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂のような、強酸性イオン交換樹脂類;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂のような、超強酸性イオン交換樹脂類(商品名:ナフィオン、Nafion、DuPont社製);天然及び合成ゼオライト類;活性白土(酸性白土)類などの酸性触媒を用い、50〜250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、且つ反応組成が一定になるまで反応させて得られる。反応時間は原料及び/又は反応温度にもよるが、おおむね1時間〜15時間程度であり、実際には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定すればよい。
【0059】
エポキシ基含有アクリル共重合体とは、エポキシ基含有アクリル共重合体は、エポキシ基を有するグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを0.5〜6質量%含む。高い接着力を得るためには、0.5質量%以上が好ましく、6質量%以下であればゲル化を抑制できる。上記エポキシ基含有アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)としては、−50℃以上30℃以下、更には−10℃以上30℃以下であることが好ましい。
【0060】
官能基モノマーとして用いるグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートの量は0.5〜6質量%の共重合体比である。つまり、本発明においてエポキシ基含有アクリル共重合体は、原料としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを、得られる共重合体に対し0.5〜6質量%となる量を用いて得られた共重合体をいう。その残部はメチルアクリレート、メチルメタクリレート等の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、及びスチレン、アクリロニトリルなどの混合物を用いることができる。これらの中でもエチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。混合比率は、共重合体のTgを考慮して調整することが好ましい。Tgが−10℃未満であるとBステージ状態での接着層又はダイシングダイボンドシートのタック性が大きくなる傾向があり、取り扱い性が悪化することがある。重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。このようなエポキシ基含有アクリル共重合体としては、例えば、HTR−860P−3(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有アクリル共重合体の重量平均分子量は10万以上であり、この範囲であると接着性及び耐熱性が高く、30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。300万以下であると、フロー性が低下することにより、半導体素子を貼付ける支持基板に必要に応じて形成された配線回路への充填性が低下する可能性を減らすことができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0062】
また接着層30には、更に必要に応じて、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類などの硬化促進剤を添加してもよい。このような硬化促進剤としては具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することもできる。
【0063】
また更に、接着層30には、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカなどが挙げられ、これらは、1種又は2種以上を併用することもできる。
【0064】
接着層30の厚さは、好ましくは5μm〜60μmである。厚さが5μm未満であると、半導体チップと支持基板60との接着力が不十分となりやすく、他方、60μmを超えると経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化への対応が不十分となりやすい。
【0065】
<ダイシング・ダイボンディング一体型テープの製造方法>
ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を製造する方法としては、基材層10としてポリマーテープ上に粘着層20及び接着層30を順次塗布して製造する方法、又は、粘着層20及び接着層30をそれぞれフィルム状としたものを張り合わせて製造する方法、等が挙げられる。
【0066】
粘着層20及び接着層30を順次塗布する場合は、同時塗工(多層塗工)又は逐次塗工で行うことができる。例えば、(i)基材層10上に粘着層20を積層した後、続いて、接着層30を積層する方法、(ii)基材層10上に粘着層20と接着層30とを同時に積層する方法、等が挙げられ、作業性の観点からは、(ii)の方法が好ましい。なお、上記塗工は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。
【0067】
粘着層20及び接着層30をそれぞれフィルム状としたものを張り合わせて積層する方法は、以下のような手順で行われる。まず、粘着層20及び接着層30の樹脂組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、これを別の基材フィルム上にそれぞれ塗布した後、加熱により溶剤を除去する。次いで、各樹脂組成物が塗布された基材フィルムを、粘着層20と、接着層30とが接触する状態で重ねながら加熱圧着することで層状フィルムを形成する。その後、層状フィルムの接着層30側の基材フィルムを剥離することによってダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を得ることができる。
【0068】
<半導体装置(半導体パッケージ)の製造方法>
次に、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を用いて半導体装置(半導体パッケージ)を製造する方法について説明する。
【0069】
図2(a)〜(f)及び
図3は、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を用いる半導体装置の製造方法の好適な一実施形態を説明するための断面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、上述のダイシング・ダイボンディング一体型テープ1の接着層30を半導体ウエハに貼り付ける貼り付け工程(ウエハラミネート工程)と、半導体ウエハW及び粘着層20、接着層30をダイシングするダイシング工程と、粘着層20に紫外線を照射する紫外線照射工程と、接着層30が付着した半導体素子を支持基材からピックアップするピックアップ工程と、半導体素子を接着層30を介して半導体素子搭載用の支持基板60に接着する接着工程とを備える。以下、図面を参照しながら、各工程について説明する。
【0070】
(貼り付け工程)
先ず、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を所定の装置に配置する。続いて、
図2(a)及び(b)に示されるように、半導体ウエハWの主面Wsに、接着層30を介してダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を貼り付ける。また、半導体ウエハWの回路面は、主面Wsとは反対側の面であることが好ましい。
【0071】
(ダイシング工程)
次に、
図2(c)に示されるように、半導体ウエハW、粘着層20及び接着層30をダイシングする。このとき、基材層10を途中までダイシングしてもよい。このように、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1は、ダイシングシートとしても機能する。ここで、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1における粘着層20は、紫外線照射前の破断伸びが140%より大きく200%以下である。そのため、ダイシング工程時の切削性が良好である。従って、ダイシングによって得る半導体素子Waが一辺1〜10mm程度(より好ましくは1〜5mm程度)の小チップであっても、ダイシング時におけるチップ飛びを抑制できる。
【0072】
(紫外線照射工程)
次に、
図2(d)に示されるように、粘着層20に紫外線を照射することにより粘着層20を硬化させ、粘着層20と接着層30との間の接着力を低下させる。本実施形態においては、波長200〜400nmの紫外線を用いることが好ましく、その照射条件としては、照度:30〜240mW/cm
2で照射量200〜500mJ/cm
2となるように照射することが好ましい。
【0073】
(ピックアップ工程)
紫外線を照射した後、
図2(e)に示されるように、基材層10をエキスパンドすることにより、切断により得られた各半導体素子を互いに離間させつつ、接着層30側からニードル42で突き上げられた接着層付き半導体素子50を吸引コレット44で吸引してピックアップする。上述のとおり、ダイシング工程における切削が良好に行われているため、突き上げ量が小さくても、接着層付き半導体素子50を十分にピックアップできる。なお、接着層付き半導体素子50は、半導体素子Waと接着層30aとを有する。接着層30aは接着層30を分割して得られるものである。ピックアップ工程にて基材層10をエキスパンドすることにより、接着層付き半導体素子50のピックアップ性をより向上させることができる。
【0074】
また、ニードル42による突き上げ量は、必要に応じて選択できる。更に、極薄ウエハに対しても十分なピックアップ性を確保する観点から、例えば、2段又は3段ピックアップ法を行ってもよい。また、本実施形態においては、吸引コレット44以外の方法によって接着層付き半導体素子50のピックアップを行うこともできる。
【0075】
(接着工程)
接着層付き半導体素子50をピックアップした後、
図2(f)に示されるように、接着層付き半導体素子50を、熱圧着により、接着層30aを介して半導体素子搭載用の支持基板60に接着する。
【0076】
接着層付き半導体素子50を接着層30aを介して支持基板60上に搭載した後、再び、接着層付き半導体素子50を、熱圧着により、接着層30aを介して半導体素子Waに接着するとしてもよい。これにより、複数の半導体素子Waを支持基板60上に搭載することができる。この場合、接着層30aの熱履歴は大きくなるが、本実施形態に係る接着層30aによれば、半導体素子Waと支持基板60との接着性を十分維持することができ、また、支持基板60の表面60aに形成された凹凸の凹部に対して接着層30aを十分良好に充填可能である。
【0077】
続いて、
図3に示されるように、必要に応じて半導体素子Waと支持基板60とをワイヤーボンド70により電気的に接続することが好ましい。このとき、半導体素子Wa、接着層30a及び支持基板60は、例えば、170℃で15〜60分程度加熱される。更に、ワイヤーボンディングにより接続した後、必要に応じて半導体素子Waを樹脂封止してもよい。樹脂封止材80を支持基板60の表面60aに形成し、他方、支持基板60の表面60aとは反対側の面に外部基板(マザーボード)との電気的な接続用として、はんだボール90を形成してもよい。
【0078】
なお、樹脂封止する際に接着層30aは半硬化の状態であることが好ましい。これにより、樹脂封止する際に支持基板60の表面60aに形成された凹凸の凹部に接着層30aをより良好に充填することができる。半硬化の状態とは、接着層30aが完全には硬化していない状態を意味する。半硬化の状態の接着層30aは半導体装置の製造過程における1回又は複数回の加熱処理を利用して最終的に加熱硬化させてもよい。
【0079】
以上の工程を経ることにより、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ1を用いて半導体装置100を製造することができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。なお、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。
【0081】
<実施例1>
(ダイシング・ダイボンディング一体型テープの作製)
[粘着層用アクリル樹脂の合成]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに酢酸エチル1000g、2−エチルヘキシルアクリレート650g、2−ヒドロキシエチルアクリレート350g、アゾビスイソブチロニトリル3.0gを配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。
【0082】
次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒として、ジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2−メタクリロキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズMOI:製品名)を100g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有するアクリル樹脂溶液を得た。
【0083】
この樹脂の酸価を、JIS K0070に従って、酸価と水酸基価を測定したところ、酸価は検出されなかった。水酸基価を求めたところ、121mgKOH/gであった。また得られたアクリル樹脂を60℃で一晩真空乾燥し、得られた固形分をエレメンタール社製全自動元素分析装置varioELにて元素分析し、窒素含有量から導入された2−メタクリロキシエチルイソシアネートの含有量を算出したところ、0.59mmol/gであった。また東ソー株式会社製SD−8022/DP−8020/RI−8020を使用し、カラムには日立化成株式会社製Gelpack GL−A150−S/GL−A160−Sを用い、溶離液にテトラヒドロフランを用いてGPC測定をした結果、ポリスチレン換算重量平均分子量は42万であった。
【0084】
[ダイシングテープの作製]
上述記載の方法で得られた連鎖重合可能な二重結合を有するアクリル樹脂溶液を固形分として100g、架橋剤として多官能イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL、固形分75%)を固形分として7.0g、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、イルガキュア184)を1.0g、更に総固形分含有量が27質量%となるように酢酸エチルを加え、10分間均一に撹拌して粘着層用ワニスを得た。
【0085】
片面が離型処理された幅350mm、長さ400mm、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートテープ上に、粘着剤用ワニスを、アプリケータを用いて粘着層の厚さが10μmとなるよう、ギャップを調整しながら塗工し、80℃で5分間乾燥した。
【0086】
基材層として、別途、300mm角、厚さ100μmのポリオレフィンテープを用い、ポリオレフィンテープと、上述粘着層付きポリエチレンテレフタレートテープの粘着層面を室温にて張り合わせ、ゴムロールで圧着させることで粘着層をポリオレフィンテープに転写した。その後、室温で3日間放置することでカバーテープ付きのダイシングテープを得た。
【0087】
[ダイボンディングテープ(接着層)の作製]
エポキシ樹脂としてYDCN−703(東都化成(株)製商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210、分子量1200、軟化点80℃)55質量部、フェノール樹脂としてミレックスXLC−LL(三井化学(株)製商品名、フェノール樹脂、水酸基当量175、吸水率1.8%、350℃における加熱重量減少率4%)45質量部、シランカップリング剤としてNUC A−189(日本ユニカー(株)製商品名、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)1.7質量部とNUCA−1160(日本ユニカー(株)製商品名、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)3.2質量部、フィラーとしてアエロジルR972(シリカ表面にジメチルジクロロシランを被覆し、400℃の反応器中で加水分解させた、メチル基などの有機基を表面に有するフィラー、日本アエロジル(株)製商品名、シリカ、平均粒径0.016μm)32質量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて撹拌混合し、更にビーズミルを用いて90分混練した。これにグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート3質量%を含むアクリルゴムHTR−860P−3(ナガセケムテックス(株)製商品名、重量平均分子量80万)を280質量部、及び硬化促進剤としてキュアゾール2PZ−CN(四国化成(株)製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)0.5質量部加え、攪拌混合し、真空脱気し、ワニスを得た。
【0088】
ワニスを厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートテープ上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が20μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアテープを備えたダイボンディングテープ(接着層)を作製した。
【0089】
[ダイシング・ダイボンディング一体型テープの作製]
上記のようにして得たキャリアテープを備えたダイボンディングテープ(接着層)を、キャリアテープごと直径220mmの円形にカットした。ダイボンディングテープを、カバーテープを剥離したダイシングテープの粘着層面に室温で貼り付け後、室温で1日放置した。その後、直径290mmの円形にダイシングテープをカットし、ダイシング・ダイボンディング一体型テープを得た。
【0090】
[粘着層の破断伸び率の測定]
破断伸び率の測定には、島津製作所製オートグラフ「AGS−1000」を用いた。紫外線照射前の粘着層を準備し、幅1cm、長さ8cmのサイズでサンプルを切り出した。このサンプルを用いてチャック間距離50mm、引っ張り速度300mm/minにて測定し、紫外線照射前の粘着層の破断伸び率を測定した。
【0091】
[ダイシングテープのSUS基板に対するピール強度の測定]
ダイシングテープのSUS基板に対するピール強度の測定には、島津製作所製オートグラフ「AGS−1000」を用いた。粘着層を有するダイシングテープを幅25mm、長さ100mmになるように切り出し、SUS板(SUS430BA)に貼り付けたものを紫外線照射前のサンプルとした。このサンプルに、ダイシングテープ側より紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離10cm)により500mJ/cm
2照射したものを、紫外線照射後のサンプルとした。これらのサンプルに対して、剥離角度90度、剥離速度200mm/minにて剥離を行い、紫外線照射前及び紫外線照射後それぞれにおいてのSUS基板に対するダイシングテープのピール強度を測定した。
【0092】
[ダイシング時の接着層の剥がれ及びチップ飛びの有無]
ダイシング(DC)時にダイシングテープから接着層(ダイボンディングテープ)の剥がれ及びチップ飛びの有無を評価した。一枚のウエハをダイシングした際に、接着層の剥がれ及びチップ飛びが一回も生じなかったものを「〇」、一回でも生じたものを「×」として評価した。
【0093】
[ピックアップ成功率の評価]
上述のように作製したダイシング・ダイボンディング一体型テープを70℃にてミラーウエハ(サイズ8インチ、厚さ50μm)にラミネートした。その後、(株)ディスコ製フルオートダイサーDF6361を用い、チップサイズ5mm角にてダイシングした。その際、カット方法はシングルカットとし、ブレードには、NBC−ZH−127F−SE−27HCBBを用い、ブレード回転数40000rpm、カット速度50mm/sec、ブレードハイトをミラーウエハへの切り込み30μmとして実施した。
【0094】
ダイシング後、ダイシング・ダイボンディング一体型テープの基材層側から粘着層に紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離10cm)を用いて500mJ/cm
2、又は、1000mJ/cm
2照射した。その後、ダイボンダー装置(NECマシナリー製、商品名CPS−100FM)によるピックアップ試験を行い、ピックアップチップ20個でのピックアップ成功率を求めた。このとき300μm以下の突き上げ量で、ピックアップ成功率が100%を達成できたものを「○」、ピックアップ成功率が100%を達成できなかったものを「×」として評価した。
【0095】
<実施例2〜6及び比較例1,2>
同様の条件で、架橋剤及び光開始剤の含有量のみを変更し、実施例2〜6及び比較例1,2を実施した。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示されるように、実施例1〜6で得られたダイシング・ダイボンディング一体型テープは、小チップサイズに対しても切削性が良く、チップ飛びがなく、ピックアップの突き上げ量が300μm以下であってもピックアップできた。
【0098】
但し、粘着層においてアクリル樹脂100質量部に対する光開始剤量の量が2.0質量部である実施例6では、紫外線照射量が500mJ/cm
2の時にはピックアップ性には問題が無かったが、紫外線照射量が1000mJ/cm
2の際に、ダイボンディング工程時においてピックアップ時に不具合が生じた。これは1000mJ/cm
2の紫外線照射により粘着層の分解が起こり接着層との間の剥離力が上昇したことが原因と推察される。
【0099】
一方、粘着層において、アクリル樹脂100質量部に対する架橋剤の量が3質量部である比較例1では、紫外線照射前における粘着層の破断伸びが高くなり、ダイシング工程時に切削性が悪くなった。また、ダイボンディング工程時において、紫外線照射後に接着層との剥離力が十分に低下せず、ピックアップ時にも不具合が生じた。
【0100】
また、粘着層において、アクリル樹脂100質量部に対する架橋剤の量が11質量部の比較例2では、ピックアップ性には問題が無かったが、ダイシング工程において接着層が部分的に粘着層から剥離し、チップ飛びが生じた。これは、架橋剤の量が過剰であるため紫外線照射前の粘着層の破断伸び率が低く、紫外線照射前における粘着層の粘着力が不十分であったことが原因と推察される。