(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、下記構造式(1)
【0016】
【化2】
(式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に光重合性官能基、光重合性官能基を有する構造部位、又は水素原子であって、かつ、少なくとも一方は光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位である。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるビカルバゾール化合物(B)とを必須の成分として含有することを特徴とする。これら両化合物を併用することにより、塗工に適した低粘度を有し、かつ、その硬化物における屈折率の高い活性エネルギー線硬化型組成物となる。
【0017】
前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)は、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート、メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明のフェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)は、これらの化合物をそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。このうち、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びメタフェニルベンジル(メタ)アクリレートは、25℃での液体の屈折率が1.57以上であり、かつ、粘度が30mPa・s以下であり、比較的高屈折率でありながら、低粘度を示す点で好ましい。また、パラフェニルベンジルアクリレートは常温で固体であるが、40℃での液体の屈折率が1.59以上と非常に高い値を示す点で好ましい。
【0018】
本発明では、組成物の低粘度性と、硬化物の高屈折率性とを高いレベルで兼備できることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート、メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。その際の配合比は、低粘度でありながら、硬化物における屈折率が十分に高いラジカル重合性組成物が得られることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びメタフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとのモル比[{〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕+〔メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕}/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が55/45〜10/90の範囲となるように用いることが好ましい。
【0019】
更に、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートは、より製造が簡便であるため、これらを併用することが特に好ましい。その際の配合比は、低粘度でありながら、硬化物における屈折率が十分に高いラジカル重合性組成物が得られることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとのモル比[〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が、55/45〜10/90の範囲であることが好ましい。
【0020】
前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の製造方法は、例えば、ビフェニルメタノールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法(方法1)や、クロロメチルビフェニル、ブロモメチルビフェニルのようなハロゲン化メチルビフェニルと、(メタ)アクリル酸のカリウム、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩とを反応させる方法(方法2)、ビフェニル、ハロゲン化水素、及びホルムアルデヒド誘導体を反応させて得られる反応混合物を、更に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩と反応させる方法(方法3)等が挙げられる。
【0021】
前記方法3について、ビフェニルとホルムアルデヒドとの反応割合は、ビフェニル1モルに対し、ホルムアルデヒドを1〜25モルの範囲で用いることが好ましい。ホルムアルデヒドはホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどいずれの形態で用いても良い。前記ハロゲン化水素は濃塩酸や塩化水素ガス等が挙げられ、ビフェニルに対して過剰のモル比で使用することが好ましい。反応は酸触媒条件下で行われることが好ましく、用いる酸触媒は、例えば、硫酸、リン酸、ポリリン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノクロロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛などのルイス酸等が挙げられる。必要に応じてジメトキシエタン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸等の有機溶媒中で反応させても良く、反応温度は60〜180℃の範囲であることが好ましい。
【0022】
このような方法により前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)を製造する場合、フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の他、ビス[(メタ)アクリロイルメチル]ビフェニル(A’)やビフェニル構造がメチレンを介して結節された分子構造を有するビフェニル化合物(A”)等が副生することがある。この場合、反応生成物100質量部中のフェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の含有量は30〜95質量部の範囲であることが好ましく、35〜85質量部の範囲であることがより好ましい。また、反応生成物100質量部中のビス[(メタ)アクリロイルメチル]ビフェニル(A’)の含有量は5〜70質量部の範囲であることが好ましく、15〜65質量部の範囲であることがより好ましい。更に、反応生成物100質量部中の前記ビフェニル構造がメチレンを介して結節された分子構造を有するビフェニル化合物(A”)の含有量は0.5〜30質量部の範囲であることが好ましく、1〜25質量部の範囲であることがより好ましい。
【0023】
また、このような方法により前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)を製造する場合、反応生成物中に未反応原料のビフェニルが残る場合がある。この場合、本願発明所望の効果である高屈折率かつ低粘度の組成物が得られることから、反応生成物100質量部中のビフェニルの含有量は0.5〜15質量部の範囲であることが好ましく、1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0024】
反応生成物中の各成分の含有率を測定する方法は、例えば、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、ゲルパーミネーションクロマトグラフなどが挙げられる。
【0025】
前記ビス[(メタ)アクリロイルメチル]ビフェニル(A’)は、例えば、2,2’−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル、3,3’−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル、2,4’−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル、2,4−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル、2,6−ビス(アクリロイルメチル)−1,1’−ビフェニル等が挙げられる。
【0026】
前記ビフェニル構造がメチレンを介して結節された分子構造を有するビフェニル化合物(A”)は、分子構造中に含まれるビフェニル構造単位の数が2〜5の範囲であることが好ましい。ビフェニル化合物(A”)の重合度を同定する方法は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで反応生成物から前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)や前記ビス(アクリロイルメチル)ビフェニル(A’)を除いた成分を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)や高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC―MS)を用いて分析する方法が挙げられる。
【0027】
前記ビカルバゾール化合物(B)は、下記構造式(1)
【0028】
【化3】
(式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に光重合性官能基、光重合性官能基を有する構造部位、又は水素原子であって、かつ、少なくとも一方は光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位である。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表される通り、カルバゾール構造の1−位炭素原子と3−位炭素原子が結合した構造を有する。このような化合物は結晶化し難く、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)等の他の化合物との相溶性も高い上、硬化物における屈折率が飛躍的に高い特徴を有する。
【0029】
前記構造式(1)中のR
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。中でも、他の化合物との相溶性に優れ、硬化物における屈折率の高い化合物となることから、R
1又はR
2のどちらか一方が水素原子であることが好ましい。また、R
1、R
2の他の一方は、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、塩素原子、又は臭素原子のいずれかであることが好ましい。
【0030】
前記構造式(1)中のX
1及びX
2は、それぞれ独立に光重合性官能基、光重合性官能基を有する構造部位、又は水素原子である。前記光重合性官能基は、例えば、ビニル基、アクリロイル基等のラジカル重合性官能基;グリシジル基、2−メチルグリシジル基等の光カチオン重合性官能基が挙げられる。
【0031】
一方、前記光重合性官能基を有する構造部位は、例えば、3−メチルオキセタニル-メチル基、3−エチルオキセタニル-メチル基等の光カチオン重合性基を持つ構造部位、および下記構造式(2)
【0032】
【化4】
(式中、R
3は炭素原子数2〜6のアルキレン基を、R
4は水素原子又はメチル基を表し、nは0〜10の整数である。)
で表される(メタ)アクリロイル基含有構造部位等のラジカル重合性官能基を持つ構造部位等が挙げられる。
【0033】
前記(メタ)アクリロイル基含有構造部位は、具体的には、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン基、(メタ)アクリロイルオキシプロピレン基、(メタ)アクリロイルポリオキシプロピレン基などが挙げられる。これらの中でも反応性に優れ、また、硬化物における屈折率が高くなる点から(メタ)アクリロイルオキシエチル基が好ましい。
【0034】
また、上記したラジカル重合性官能基と光カチオン重合性官能基とを比較した場合には、硬化性に優れる点からラジカル重合性官能基であることが好ましい。更に、前記構造式(1)中のX
1及びX
2の一方は、前記した通り、水素原子であってもよいが、本発明ではX
1及びX
2が共に光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位であることが硬化性に優れる点から好ましい。
【0035】
斯かるビカルバゾール化合物の具体例としては、例えば、前記構造式(1)中のX
1及びX
2がビニル基であるものは、下記構造式(I−1)〜(I−5)
【0036】
【化5】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0037】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、アクリロイル基を有するものは、下記構造式(II−1)〜(II−5)
【0038】
【化6】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0039】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、メタクリロイル基を有するものは、下記構造式(III−1)〜(III−5)
【0040】
【化7】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0041】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、アクリロイルオキシエチル基を有するものは、下記構造式(IV−1)〜(IV−5)
【0042】
【化8】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0043】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、メタクリロイルオキシエチル基を有するものは、下記構造式(V−1)〜(V−5)
【0044】
【化9】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0045】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、グリシジル基を有するものは、下記構造式(VI−1)〜(VI−5)
【0046】
【化10】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0047】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、2−メチルグリシジル基を有するものは、下記構造式(VII−1)〜(VII−5)
【0048】
【化11】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0049】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2として、3−エチルオキセタニルメチル基を有するものは、下記構造式(VIII−1)〜(VIII−5)
【0050】
【化12】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるものが挙げられる。
【0051】
本発明では、これらの中でも、前記構造式(1)中のX
1及びX
2がビニル基である前記構造式(I−1)〜(I〜5)で表される化合物、前記構造式(1)中のX
1及びX
2がアクリロイル基である前記構造式(II−1)〜(II〜5)で表される化合物、前記構造式(1)中のX
1及びX
2がメタクリロイル基である前記構造式(III−1)〜(III〜5)で表される化合物、前記構造式(1)中のX
1及びX
2がアクリロイルオキシエチル基である前記構造式(IV−1)〜(IV〜5)で表される化合物が、硬化性に優れる点から好ましい。
【0052】
また、ビカルバゾール化合物(B)は、その芳香核上に置換基を有していない化合物が、高屈折率という観点から好ましく、従って前記構造式(I−1)、(II−1)、(III−1)で表されるものがとりわけ好ましい。
【0053】
前記ビカルバゾール化合物(B)は、例えば、下記構造式(3)
【0054】
【化13】
(式中、R’はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
であらわされる1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾールを活性炭素の存在下に酸化反応させることにより下記構造式(4)
【0055】
【化14】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるビカルバゾール中間体(b1)を得る工程(以下「工程1」と略記する)と、該中間体(b1)の窒素原子上に光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位を導入する工程(以下「工程2」と略記する)とを経る方法にて製造することができる。
【0056】
前記工程1で用いる活性炭素は、それ単体で使用してもよいが、該活性炭素にパラジウム触媒等の触媒を担持させた所謂Pd−C触媒として用いてもよい。反応温度は特に限定されないが、反応が早く進行することから、比較的高温の140〜180℃の範囲であることが好ましい。
【0057】
前記工程1の反応は有機溶媒中で行うことが好ましく、ここで使用できる有機溶媒としては、ベンゼン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0058】
前記工程1において、下記構造式(5)
【0059】
【化15】
(式中R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるカルバゾール中間体(b2)が副生することがあるが、その場合には、工程1の反応生成物中のカルバゾール中間体(b2)の含有率が15質量%以下となるまで精製することが好ましい。
【0060】
前記ビカルバゾール中間体(b1)の窒素原子上に光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位を導入する工程2は、導入する官能基によって反応方法が異なるが、例えば、ビニル基を導入する場合には、工程1の反応生成物に対して、エチレンカーボネートを反応させ、生成した末端水酸基を、塩化パラトルエンスルホナートと反応させてトシル化し、次いで、塩基性触媒の存在下に脱トシル化の反応を行い、ビニル基を生成させる方法が挙げられる。
【0061】
また、アクリロイル基を導入する場合には、工程1の反応生成物に対して、3−クロロプロピオンニルクロリドを反応させて3−クロロプロピオニル基を導入し、次いで、塩基性触媒下に二重結合を生成させる方法が挙げられる。
【0062】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2を構成する光重合性官能基を有する構造部位として、前記構造式(2)で表される構造部位を導入する場合には、工程1の反応生成物にアルキレンカーボネートを反応させ、更に、必要により定法によってアルキレンオキシドを反応させて、末端に水酸基を生成させ、次いで、塩基性触媒の存在下に(メタ)アクリル酸を反応させる方法が挙げられる。
【0063】
また、前記構造式(1)中のX
1及びX
2を構成する光重合性官能基を有する構造部位として、3−メチルオキセタニル-メチル基、3−エチルオキセタニル-メチル基等のオキセタニル基を有する構造部位を導入する場合には、工程1の反応生成物に、3−クロロメチル−3−アルキルオキセタンを塩基性触媒下に反応させる方法が挙げられる。
【0064】
このような方法でビカルバゾール化合物(B)を得る場合、前記ビカルバゾール化合物(B)の他、下記構造式(6)
【0065】
【化16】
(式中、X
1は、光重合性官能基、光重合性官能基を有する構造部位、又は水素原子であって、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、臭素原子、又は塩素原子である。)
で表されるカルバゾール化合物(B’)が副生することがある。この場合、反応生成物100質量部中のカルバゾール化合物(B’)の含有量は30質量%以下であることが好ましい。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、前記ビカルバゾール化合物(B)との配合割合は、塗工に適した低粘度を有し、かつ、その硬化物における屈折率が高いという効果がより顕著なものとなることから、両者の質量比[(A)/(B)]が10/90〜99/1の範囲であることが好ましく、30/70〜90/10の範囲であることが特に好ましい。
【0067】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)及びビカルバゾール化合物(B)の他、その他の化合物(C)を含有しても良い。
【0068】
ここで用いるその他の化合物(C)は、エポキシ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格含有ジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレート、単官能型(メタ)アクリレートモノマー、多官能型(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0069】
前記エポキシ(メタ)アクリレートは、具体的には、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸又はその無水物を反応させて得られるものであり、前記エポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキノン、カテコール等の2価フェノールのジグリシジルエーテル;3,3’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジオール等のビフェノール化合物のジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、ビナフトール、ビス(2,7−ジヒドロキシナフチル)メタン等のナフトール化合物のポリグリジシルエーテル;4,4’,4”−メチリジントリスフェノール等のトリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂
【0070】
前記ビフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0071】
前記ビフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール化合物と、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、最終的に得られる組成物における硬化物の屈折率が高くなる点から、分子構造中に芳香環骨格を有するものが好ましい。とりわけ、より高い屈折率を示し、かつ、高温高湿条件下であっても、プラスチックフィルム基材に対し高い付着性を示す硬化塗膜が得られることから、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は前記ナフトール化合物のポリグリシジルエーテルが好ましく、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0073】
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、より高屈折率かつ高硬度の硬化物が得られることから、エポキシ当量が160〜1,000g/eqの範囲であるものが好ましく、165〜600g/eqの範囲であるものがより好ましい。
【0074】
前記フルオレン骨格含有ジ(メタ)アクリレートは、具体的には、下記構造式(7)
【0075】
【化17】
(式中、Xは水素原子又はメチル基であり、m及びnはそれぞれ独立に0〜5の整数である。)で表される化合物が挙げられる。
【0076】
前記したポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、その分子構造中にポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖等のポリオキシアルキレン構造を有するものであり、例えば、エチレンオキシドユニット数4〜15のポリエチレングリコールのジアクリレート、エチレンオキシドユニット数4〜15のポリエチレングリコールのモノアクリレート、プロピレンオキシドユニット数4〜15のポリプロピレングリコールのジアクリレート、プロピレンオキシドユニット数4〜15のポリプロピレングリコールのモノアクリレート、エチレンオキサイド変性グリセロールトリアクリレート(EOユニット数3〜10)、プロピレンオキサイド変性グリセロールトリアクリレート(POユニット数3〜10)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EOユニット数4〜20)、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(POユニット数4〜20)、エチレンオキシドユニット数4〜15のビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、及びプロピレンオキシドユニット数4〜15のビスフェノールのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート等が挙げられる。
【0077】
次に、その他単官能型(メタ)アクリレート系モノマーとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、ナフチルチオエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート等の一官能型(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
また、多官能型(メタ)アクリレート系モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の2官能型(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性したジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート等の3官能型(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
ここで、エポキシ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格含有ジ(メタ)アクリレート、又はポリオキシアルキレン構造を有するアクリレート化合物を用いる場合、その配合割合は、重合成分中10〜70質量%の割合であることが好ましい。また、その他の単官能型(メタ)アクリレート系モノマー、又はその他の多官能型(メタ)アクリレート系モノマーを用いる場合、その配合割合は、重合成分中10〜70質量%の割合であることが好ましい。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、更にラジカル重合開始剤(D)を含有する。該ラジカル重合開始剤は、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0081】
これらラジカル重合開始剤の市販品は、例えば、「イルガキュア−184」、「イルガキュア−149」、「イルガキュア−261」、「イルガキュア−369」、「イルガキュア−500」、「イルガキュア−651」、「イルガキュア−754」、「イルガキュア−784」、「イルガキュア−819」、「イルガキュア−907」、「イルガキュア−1116」、「イルガキュア−1664」、「イルガキュア−1700」、「イルガキュア−1800」、「イルガキュア−1850」、「イルガキュア−2959」、「イルガキュア−4043」、「ダロキュア−1173」(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、「ルシリンTPO」(ビーエーエスエフ社製)、「カヤキュア−DETX」、「カヤキュア−MBP」、「カヤキュア−DMBI」、「カヤキュア−EPA」、「カヤキュア−OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア−10」、「バイキュア−55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア−PDO」、「クオンタキュア−ITX」、「クオンタキュア−EPD」(ワードブレンキンソップ社製)等が挙げられる。
【0082】
前記ラジカル重合開始剤は、十分な硬化性を発現するために、本願発明の活性エネルギー線硬化型組成物100質量部に対し、0.05〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を光重合にて硬化させる場合には、前記ラジカル重合開始剤に併せて種々の光増感剤を添加しても良い。前記光増感剤は、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物等が挙げられ、これらは単独で使用しても二種類以上を併用しても良い。これら光増感剤を添加する場合の添加量は、本願発明の活性エネルギー線硬化型組成物100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましい。
【0084】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他各種の添加剤を含有しても良い。各種の添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤等が挙げられる。これら添加剤を添加する場合の添加量は、添加剤の効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲で、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物100質量部に対し、0.01〜40質量部の範囲であることが好ましい。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、高速塗工条件下であっても該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が金型の細部にまで欠点なく行渡るものとなる点で、6,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させる際に照射する該活性エネルギー線は、例えば、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、コックロフトワルトン型加速器、バンデグラフ型電子加速器、共振変圧器型加速器、絶縁コア変圧器型、ダイナミトロン型、リニアフィラメント型および高周波型などの電子線発生装置を用いて本発明の硬化性組成物を硬化させることができる。また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯等の水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハイトランプ等により照射し、硬化させることができる。この際の紫外線の露光量は0.1〜1000mJ/cm
2の範囲であることが好ましい。
【0087】
一方、加熱によって硬化させる場合、60〜250℃の温度領域に加熱することによって硬化させることができる。
【0088】
本発明の本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は、高屈折率を示し、柔軟性にも優れ、裁断時に割れや欠けが生じ難いものである。このような特徴を生かし、例えば、眼鏡レンズ、デジタルカメラ用レンズ、フレネルレンズ、及びプリズムレンズ等のプラスチックレンズ、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズムレンズ、LED封止材料、太陽光電池用コーティング材等の各種光学材料に好適に使用することができ、これらのなかでも特に、液晶基板用プリズムレンズ等のプラスチックレンズ用に適している。
【0089】
前記液晶基板用プリズムレンズとは、シート状成形体の片面に微細なプリズム形状部を複数有するものであって、通常、液晶表示素子の背面(光源側)に、該素子側にプリズム面が向くように配設され、更に、その背面に導光シートが配設されるように用いられるシート状レンズ、或いは前記プリズムレンズがこの導光シートの機能を兼ねているシート状レンズである。
【0090】
ここで該プリズムレンズのプリズム部の形状は、プリズム頂角の角度θが70〜110°の範囲であることが、集光性に優れ輝度が向上する点から好ましく、特に75〜100°の範囲、中でも80〜95°の範囲であることが特に好ましい。
【0091】
また、プリズムのピッチは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下の範囲であることが、画面のモアレ模様の発生防止や、画面の精細度がより向上する点から好ましい。また、プリズムの凹凸の高さは、プリズム頂角の角度θとプリズムのピッチの値によって決定されるが、好ましくは50μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、プリズムレンズのシート厚さは、強度面からは厚い方が好ましいが、光学的には光の吸収を抑えるため薄い方が好ましく、これらのバランスの点から50μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて前記プリズムレンズを製造する方法は、例えば、該組成物をプリズムパターンが形成された金型あるいは樹脂型等の成形型に塗布し、組成物の表面を平滑化した後に透明基材を重ね合わせ、該透明基材側から活性エネルギー線を照射し、硬化させる方法が挙げられる。
【0093】
ここで用いる透明基材は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなるプラスチック基材や、ガラス等が挙げられる。
【0094】
前記方法で得たプリズムシートは、そのまま使用することもできるし、透明基材を剥離してプリズムレンズ単独の状態で使用してもよい。透明基材上にプリズム部を形成したまま使用する場合には、プリズムレンズと透明基材との接着性を高める目的で、透明基材表面にプライマー処理等の接着性向上処理を施しておくことが好ましい。
【0095】
一方、透明基材を剥離して使用する場合には、該透明基材が容易に剥離できるように、透明基材の表面をシリコーンやフッ素系の剥離剤で処理をしておくことが好ましい。
【0096】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を前記プリズムレンズ用途等の光学材料に用いる場合には、その硬化物の屈折率は1.5500以上であることが好ましく、1.5700以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0098】
製造例1 フェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)の製造
・クロロ中間体の合成
攪拌機、冷却管、温度計、塩化水素ガス導入装置を具備した5L4つ口フラスコに、ジフェニル709g、パラホルムアルデヒド276g、酢酸1381g、濃塩酸958gを仕込み、80℃まで昇温した。仕込み溶液が80℃であることを確認後、木下式ガラスボールフィルターを使って塩化水素ガスを20g/hr速度で仕込み溶液に導入した。仕込み溶液への塩化水素ガスの溶解が飽和であることを確認後、リン酸1061gを1時間かけて滴下し、更に、30時間反応を行った。反応終了後、直ちに反応溶液から下層を取り除き、有機層にトルエン2.3kgを添加し、有機層を400gの12.5%水酸化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した。有機層を留去後、クロロ中間体を白色固体として908g得た。
・アクリレート化
上記で得られた中間体908gを反応溶媒であるジメチルホルムアミド1603gに溶解し、炭酸カリウム372gおよびメトキノンを全量に対して300ppmになるように添加した。中間体溶液を40℃に昇温後、アクリル酸323gを1.5時間で中間体溶液に滴下した。滴下終了後、2時間かけて80℃まで昇温し、80℃にて3時間加熱撹拌した。得られた溶液に水3.4kgおよびトルエン1.8kgを添加し抽出を行った後、有機層を水層が中性になるまで洗浄した。有機層を濃縮して液状のフェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)を995g得た。
・フェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)の分析
得られたフェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)の25℃における液屈折率は1.592であり、粘度は30mPa・sであった。フェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)100質量部中に含まれる各成分の含有量を、ガスクロマトグラムを用いて測定したところ、フェニルベンジルアクリレートが65.2質量部、ビス(アクリロイルメチル)ビフェニルが18.6質量部、ビフェニル構造がメチレンを介して結節された分子構造を有するビフェニル化合物が2.3質量部、ビフェニルが5.8質量部含まれており、残りの8.1質量部にはビフェニル以外の未反応原料等が含まれていた。また、フェニルベンジルアクリレートの異性体の質量比(モル比も同等)[〔オルトフェニルベンジルアクリレート〕/〔メタフェニルベンジルアクリレート〕/〔パラフェニルベンジルアクリレート〕]は20/1/79であった。
【0099】
フェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)のガスクロマトグラム分析条件は以下の通り。
機器:島津社製「GC−2010」
カラム:島津社製「Zebron ZB−5」
条件:Heキャリアガス、流量1.47mL/min、カラムオーブン50℃、気化室300℃、昇温範囲50℃から300℃(25℃/min)
【0100】
製造例2 ビカルバゾール化合物(B−1)の製造
・1,3’−ビカルバゾール中間体の製造
1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾール300g(1.75モル)、活性炭素300g、1,2−ジクロロベンゼン2500gを反応容器に仕込み、140〜170℃の温度条件下、エアーバブリング(120〜150L/hr)を行いながら36時間反応させた。高速液体クロマトグラフィーにて原料の1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾールが全て消費されていることを確認した後、ろ過により活性炭素を除去し、生成物を濃縮した。濃縮物を70℃で3時間かけてエタノールで洗浄し、懸濁液をろ過、乾燥して粗生成物を得た。粗成生物をカラムクロマトフラフィーで精製した後、室温で3時間かけてジクロロメタンで洗浄し、純度90質量%の1,3’−ビカルバゾール中間体8.7gを得た(ここで、残余の10質量%はカルバゾールであった)。
・アクリレート化
先で得た純度90質量%の1,3’−ビカルバゾール中間体5.0g(15mmol)を、3−クロロプロピオンニルクロリド45.4g(358mmol)に懸濁し、発生する塩化水素ガスを窒素気流で排出しながら130℃、8時間反応させた。反応混合物を室温に冷却し、トルエン200mlのトルエンを加えて生成物を溶解させた。水で2回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で1回、飽和塩化ナトリウム溶液で1回の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘプタン:酢酸エチル=9:1)で精製し、6.5gの白色結晶の9,9’−ビス(3−クロロプロピオニル)−1,3’−ビカルバゾールを得た。
次いで、300mlの三口フラスコに、6.0gの9,9’−ビス(3−クロロプロピオニル)−1,3’−ビカルバゾールと0.2gの4−メトキシフェノールを、60mlのトルエンに溶解した。この溶液に、2.37gのトリエチルアミン(23.4mmol)を撹拌しながら添加し、その後60℃で4時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却し、200mlのトルエンを加え、飽和塩化ナトリウム水で1回、2%塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水で1回、飽和塩化ナトリウム水で1回の順で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘプタン:酢酸エチル=9:1)で精製し、5.1gの白色結晶の9,9’−ジアクリロイル−1,3’−ビカルバゾール[以下「ビカルバゾール化合物(B−1)」と略記する]を得た。ビカルバゾール化合物(B−1)の1H−NMRのチャートを
図1に示す。1H−NMRはd6−DMSO溶液にしたサンプルを、Bruker社製「Avance400」(400MHz)を用いて測定した。ビカルバゾール化合物(B−1)のマススペクトルを測定した結果、m/z440,386,332のピークを確認した。マススペクトルはAgilent Technologies社製「5937 MSD EI」にて測定した。
【0101】
実施例1、2、比較例1、2
以下の要領で活性エネルギー線硬化型組成物を調整し、その粘度と屈折率、及び硬化性を測定した。結果を表1に示す。
◆活性エネルギー線硬化型組成物の調整
各配合成分を表1に示す割合で配合し、活性エネルギー線硬化型組成物を得た。表中の各成分の詳細は以下の通り。
PBA(A−1):製造例1で得たフェニルベンジルアクリレート組成物(A−1)
VBIC(B−1):製造例2で得たビカルバゾール化合物(B−1)
開始剤:チバスペシャルティーケミカルズ社製「ルシリンTPO」
フルオレン:新中村工業株式会社製「A−BPEF」 9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン
【0102】
◆粘度の測定
得られた活性エネルギー線硬化型組成物の粘度を、E型回転粘度計(東機産業株式会社製「RE80U」)を使用し、25℃条件下で測定した。
【0103】
◆屈折率の測定
得られた活性エネルギー線硬化型組成物の屈折率を、アッべ屈折率計(アタゴ社製「NAR−3T」)を使用し、25℃条件化で測定した。
【0104】
◆硬化性の確認
実施例1、2で調整した活性エネルギー線硬化型組成物について、これをクロムメッキ処理金属板上に塗布し、その上からPETフィルムを重ね、活性エネルギー線硬化型組成物層が50μmとなるように調整した。PETフィルム側から高圧水銀灯により500mJ/cm
2の紫外線を照射し、積層体を得た。積層体から金属板及びPETフィルムを剥離し、活性エネルギー線硬化型組成物が十分に硬化していることを確認した。
【0105】
【表1】
塗工に適した低粘度を有し、かつ、その硬化物における屈折率の高い活性エネルギー線硬化型組成物、その硬化物、及びプラスチックレンズを提供する。フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、下記構造式(1)
は、それぞれ独立に光重合性官能基、光重合性官能基を有する構造部位、又は水素原子であって、かつ、少なくとも一方は光重合性官能基又は光重合性官能基を有する構造部位である。R