【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0028】
実施例1
市販されている和光純薬工業社製の蟻酸銅四水和物、酢酸銅、硝酸銅三水和物を用いてインク組成物(金属パターン形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0029】
各化合物に対して等モル量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)とエタノール(化合物の質量に対して1.5倍の質量)を添加、または、各化合物に対して2倍のモル量の2,2−イミノジエタノール(ジエタノールアミン)(和光純薬工業社製) とエタノール(化合物の質量に対して1.5倍の質量)を添加した後、ミキサー(あわとり練太郎(登録商標)ARV−310、シンキー製)を用いて良く混合してインク組成物を調製した。インクの外観を表1に示す。
【0030】
次に、ポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ各インク組成物を35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて240V、照射期間(on)1400μ秒、3.03J/cm
2で配線全体が金属色になるまで複数回から数十回(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)パルス光を照射した。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。パルス光の照射回数と焼成後の1cmあたりの抵抗値を表2に示す。各インク組成物を使用して形成した配線は、パルス光の照射後、銅色の配線に変化して通電した。抵抗値は、三和電機計器株式会社製テスター(商品名:デジタルマルチメータ)を用い、上記配線上で2端子法により1cm間隔を取り測定した。その結果、全て30Ω以下であり、良好な導電性が得られた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実施例2
室温で液体のネオデカン酸銅インク(金属パターン形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0034】
ネオデカン酸銅インクの合成方法は、以下の通りである。水酸化ナトリウム450mg(11.25mモル)を水5mlに溶かし、撹拌下、バーサティック10(登録商標)(ネオデカン酸(R
1R
2R
3CCOOHで表される飽和カルボン酸の異性体混合物(R
1,R
2,R
3は各々アルキル基を表し、R
1,R
2,R
3の炭素数の合計が8))、酸価321mg/g)2gを加えた。30分撹拌し、分離層のないことを確認し、これに硝酸銅3水和物1.36g(5.63mモル)を3mlの水に溶かしたものを加え、撹拌した。遊離してきた濃緑青オイルをジエチルエーテル(和光純薬工業社製)で抽出し、濃縮してネオデカン酸銅インクを調製した。
【0035】
このネオデカン酸銅インクを、ポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて230V、照射期間(on)1200μ秒、2.41J/cm
2で配線全体が金属色になるまで5回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射(計12.1J/cm
2のエネルギーの光照射)した。なお、照射した光のエネルギー(12.1J/cm
2)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。作製した銅配線について、実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した結果、100Ωであった。
【0036】
実施例3
シュウ酸銅粉末を合成し、この粉末とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水で分散したインク(金属層形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0037】
シュウ酸銅粉末の合成方法は、以下の通りである。水酸化ナトリウム200mg(5mモル)を水3mlに溶かし、撹拌下、シュウ酸225mg(2.5mモル)を加えた。この時、発熱があるものの、そのまま30分間撹拌し、放冷で室温にした。完溶していないが、これに硝酸銅3水和物604mg(2.5mモル)を1mlの水に溶かしたものを加え、30分撹拌した。析出している淡青色の沈殿物を濾取し水洗乾燥し、シュウ酸銅粉末を得た。次に、得られたシュウ酸銅粉末とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水を質量比1:0.7:10で分散したシュウ酸銅インクを作製した。
【0038】
このシュウ酸銅インクをポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて200V、照射期間(on)1800μ秒、2.42J/cm
2で配線全体が金属色になるまで5回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射(計12.1J/cm
2のエネルギーの光照射)した。なお、照射した光のエネルギー(12.1J/cm
2)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。作製した銅配線について、実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した結果、80Ωのであった。
【0039】
実施例4
市販されている和光純薬工業社製の硝酸ニッケル六水和物粉末を用いて金属錯体インク(金属(磁性体)パターン形成用組成物の一例)を調製し、磁性体の作製を行った。
【0040】
硝酸ニッケル六水和物に対して2倍のモル量の2,2’−イミノジエタノール(ジエタノールアミン)(和光純薬工業社製)とエタノール200μLを添加した後、ミキサー(あわとり練太郎(登録商標)ARV−310、シンキー製)を用いてよく混合してNi系金属錯体インクを作製した。金属錯体インクの外観は、濃青透明である。この金属錯体インクを用いて実施例1から3と同様にポリイミド基板へマスキング印刷し、その配線の形状をうまく保つため、Novacentrix社製PulseForge3300を用い、マルチパルス(0.01秒間隔に280Vで100μ秒、100μ秒、100μ秒、200μ秒、500μ秒、100μ秒、100μ秒パルス光を照射)を10回、その後シングルパルス(250V、照射期間(on)1400μ秒)を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)20回与えて、計101.9J/cm
2のエネルギーの光照射を行い、配線を形成した。なお、照射した光のエネルギー(101.9J/cm
2)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した配線の抵抗値は540Ωであり、磁石にもつくことを確認した。
【0041】
参考例1
市販のシーアイ化成社製CuOナノ粒子NanoTek(登録商標)を用い、アミン系物質が有りまたは無しのインクを用意し、銅配線の作製を試み、CuOの還元力を配線の外観と電気抵抗値測定によって確認した。
【0042】
CuOナノ粒子(平均粒子径48nm(カタログ値))とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水を質量比1:0.3:1.2で分散したインクA、または、CuOナノ粒子とエタノールを質量比1:1で分散したインクB、CuOナノ粒子と水を質量比1:1で分散したインクCを作製した。各インクをポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2mmにマスクキング印刷し、1分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて配線全体が変色するまで複数回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射した。配線焼成時の総エネルギーと実施例1同様測定した1cmあたりの配線の抵抗値を表3に示す。なお、総エネルギーは、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。アミン系物質を用いた際、一番還元力が強く、低抵抗値を得られている。
【0043】
【表3】