特許第6188063号(P6188063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188063金属パターン形成用インク組成物及び金属パターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188063
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】金属パターン形成用インク組成物及び金属パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/34 20060101AFI20170821BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20170821BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C23C18/34
   C23C18/40
   H05K3/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-144585(P2013-144585)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-31577(P2014-31577A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-155426(P2012-155426)
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
(72)【発明者】
【氏名】能木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 徹平
(72)【発明者】
【氏名】内田 博
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 研二
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−253794(JP,A)
【文献】 特開昭62−196378(JP,A)
【文献】 特開2004−190109(JP,A)
【文献】 特開2004−204265(JP,A)
【文献】 特開2011−026698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
H05K 3/10− 3/26
C09D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射による金属パターン形成用インク組成物であって、金属塩および/または金属錯体と、還元剤とを含み、
前記還元剤が、1級アミン、2級アミン、3級アミンの少なくとも一つを含み、
前記金属塩および/または金属錯体が、蟻酸を除く炭素数が4以下の有機酸の銅塩、銅メトキシド、銅ケトイミン、ネオデカン酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、硝酸銅(三水和物)、チオ硫酸銅、テトラアンミン銅(II)硝酸塩、硝酸ニッケル(六水和物)、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩、酢酸コバルト、硝酸コバルト、ヘキサアンミンコバルト(III)硝酸塩の少なくとも一つを含み、
前記金属塩および/または金属錯体に対する前記還元剤のモル比(還元剤/(金属塩および/または金属錯体))が1〜2であることを特徴とする金属パターン形成用インク組成物。
【請求項2】
前記蟻酸を除く炭素数が4以下の有機酸の銅塩が酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、シュウ酸銅の少なくとも一つである請求項1に記載の金属パターン形成用インク組成物。
【請求項3】
前記金属塩および/または金属錯体が酢酸銅、硝酸銅(三水和物)、硝酸ニッケル(六水和物)、硝酸コバルトの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項に記載の金属パターン形成用インク組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の金属パターン形成用インク組成物を基板上に印刷して該インク組成物パターンを形成し、前記インク組成物パターンにパルス光を照射することにより加熱焼成し金属パターンを形成する、ことを特徴とする金属パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パターン形成用組成物及び金属パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体、金属等の導電パターンを形成するには、例えば導電性粒子が分散されたインク組成物(導電性インク)を使用して基板上にインクパターンを印刷し、インクパターン中の導電性粒子を焼結して導電パターンとすることが考えられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、基板に接着剤を塗布して接着層をコーティングし、接着層がコーティングされた基板に撥水層をコーティングし、接着層及び撥水層がコーティングされた基板に導電性インクを印刷し、印刷された導電性インクの焼結及び接着層の硬化を行う技術が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、熱硬化性樹脂で形成された絶縁パターンを備えた基材の上から金属微粒子を散布して該絶縁パターン上に金属微粒子を付着させ、上記絶縁パターンを加熱して溶融し、上記金属微粒子を絶縁パターン上に固着させ、絶縁パターン以外の基材の表面に付着した金属微粒子を除去することにより電子部品を製造する装置が開示されている。
【0005】
特許文献1の方法では、焼結条件が200℃で1時間の加熱であり(特許文献1の第0044段落)、特許文献2の方法では、絶縁パターンの加熱温度が150〜200℃である(特許文献2の第0028段落等)が、一般に基板上の導電性パターンや絶縁パターンを加熱する際には、基板ごと加熱するので、使用できる基板が高い耐熱性を有するもの、例えばビスマレイミドトリアジン化合物を含むBT樹脂などの高耐熱性熱硬化樹脂等に限られる。
【0006】
そこで、特許文献3〜5に記載のように、ナノ粒子を含むインク組成物を用いて、光照射やマイクロ波加熱により金属配線に転化させようとの試みがあった。光エネルギーやマイクロ波を加熱に用いる方法は、インク組成物(ナノ粒子)のみを加熱でき、耐熱温度が上記樹脂よりも低い樹脂を基板に使用できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−75911号公報
【特許文献2】特開2005−203396号公報
【特許文献3】特表2008−522369号公報
【特許文献4】国際公開2010/110969号パンフレット
【特許文献5】特表2010−528428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の光照射による焼結技術においては、インク組成物中に金属またはその酸化物のナノ粒子が含有されており、金属塩、金属錯体を金属膜形成用の主成分として使用するものではなかった。
【0009】
本発明の目的は、金属塩、金属錯体を金属膜形成用の主成分として使用した金属パターン形成用組成物及び金属パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一実施形態は、光照射による金属パターン形成用組成物であって、金属塩および/または金属錯体と、還元剤とを含むことを特徴とする。
【0011】
上記金属塩および/または金属錯体の金属が、銅、ニッケルまたはコバルトであることを特徴とする。
【0012】
上記還元剤が、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミンの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記金属塩および/または金属錯体が、蟻酸銅(四水和物)、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、シュウ酸銅等の炭素数が4以下の有機酸の銅塩、銅メトキシド、銅ケトイミン、ネオデカン酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、硝酸銅(三水和物)、チオ硫酸銅、テトラアンミン銅(II)硝酸塩、蟻酸ニッケル、硝酸ニッケル(六水和物)、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、ヘキサアンミンコバルト(III)硝酸塩の少なくとも一つを含むことを特徴とする。蟻酸銅(四水和物)、酢酸銅、硝酸銅(三水和物)、蟻酸ニッケル、硝酸ニッケル(六水和物)、蟻酸コバルト、硝酸コバルトを含むことがより好ましい。
【0014】
また、本発明の他の実施形態は、金属パターン形成方法であって、上記いずれかの金属パターン形成用組成物を基板上に印刷して該組成物パターンを形成し、前記組成物パターンにパルス光を照射することにより加熱焼成し金属パターンを形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属塩、金属錯体を主成分として使用して金属パターンを基板にダメージを与えることなく簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】パルス光の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を説明する。
【0018】
本実施形態にかかる金属パターン形成用組成物は、金属塩または金属錯体と還元剤とを混合して作製する。金属塩または金属錯体は粉体であってもよいし、液体であってもよい。また、還元剤としては、アンモニアまたはアミン溶液のほかにエタノール、水等を混合してもよい。なお、上記金属パターン形成用組成物には金属酸化物ナノ粒子を併用してもよい。
【0019】
上記還元剤としては、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミンの少なくとも一つを含むことが好ましい。1級アミンとしては、例えばn−ブチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エタノールアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、例えばジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、2,2’−イミノジエタノール(ジエタノールアミン)等が挙げられ、3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0020】
また、上記金属塩、金属錯体としては、例えば、銅、ニッケルまたはコバルトの金属塩、金属錯体が挙げられる。より具体的には、炭素数が4以下の有機酸の銅塩(蟻酸銅(四水和物)、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、シュウ酸銅等)、銅メトキシド、銅ケトイミン、ネオデカン酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、硝酸銅(三水和物)、チオ硫酸銅、テトラアンミン銅(II)硝酸塩、蟻酸ニッケル、硝酸ニッケル(六水和物)、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、ヘキサアンミンコバルト(III)硝酸塩等を使用することができる。より好ましくは、蟻酸銅(四水和物)、酢酸銅、硝酸銅(三水和物)、蟻酸ニッケル、硝酸ニッケル(六水和物)、蟻酸コバルト、硝酸コバルトである。有機酸の塩、錯体を用いる場合は、炭素数が少ない方が少ないエネルギーで還元、焼結が進行しやすい傾向があり、また、塩、錯体中の金属含有量が高いため、炭素数が1または2のものがより好ましく、炭素数が1のものがさらに好ましいが、これらに限定されるものではない。蟻酸銅は四水和物でなくてもよく、硝酸銅は三水和物でなくてもよく、硝酸ニッケルは六水和物でなくてもよい。なお、金属錯体としてアンモニアを配位子として有するアンミン錯体、例えばテトラアンミン銅(II)硝酸塩、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩、ヘキサアンミンコバルト(III)硝酸塩等を用いる場合は、配位子のアンモニアが還元剤の機能を有するため還元剤を別途使用しなくてもよい。
【0021】
これらの金属塩または金属錯体は酸化物粒子や金属粒子の原料に使われるので、対応する粒子を使うよりも安価であるし、金属間化合物のような機能性金属化合物を作製する場合には、均一に量論比で反応させることが出来る。
【0022】
本実施形態に係る金属パターン形成用組成物を使用して基板上に適宜なパターン等を印刷し、パルス光を照射することにより、金属パターン(導電パターン)を形成することができる。基板上に金属パターン形成用組成物のパターンを形成するには、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、マスキング印刷等の方法により、所望のパターン(基板表面全面に金属パターン形成用組成物のベタパターンを形成する場合を含む)を形成する。
【0023】
上記基板は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリイミド等の樹脂をフィルム状に形成したもの又は紙が挙げられるが、材料はこれらに限定されず、基板として使用できる材料であればよい。また、基板の厚さは、10μm〜3mmであるのがよい。基板の厚みとしてはあまりに薄いとフィルム強度がなくなるために好ましくなく、厚いほうは特に制限はないがフレキシブル性が必要な場合にはあまりに厚いものは使えない。そのためにフィルムの厚さとしては、10μm〜3mm、フレキシブル性、入手の容易性も考慮するとより好ましくは16μm〜288μmである。
【0024】
次に、上記基板上に形成した金属パターン形成用組成物のパターンにパルス光を照射して金属パターン形成用組成物に含まれる金属塩、金属錯体を金属に還元、焼結し、金属パターンを形成する。
【0025】
本明細書中において「パルス光」とは、光照射期間(照射時間)が短時間の光であり、光照射を複数回繰り返す場合は図1に示すように、第一の光照射期間(on)と第二の光照射期間(on)との間に光が照射されない期間(照射間隔(off))を有する光照射を意味する。図1ではパルス光の光強度が一定であるように示しているが、1回の光照射期間(on)内で光強度が変化してもよい。上記パルス光は、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュランプを備える光源から照射される。このような光源を使用して、上記基板に堆積された金属ナノワイヤにパルス光を照射する。n回繰り返し照射する場合は、図1における1サイクル(on+off)をn回反復する。なお、繰り返し照射する場合には、次パルス光照射を行う際に、基材を室温付近まで冷却できるようにするため基材側から冷却することが好ましい。
【0026】
パルス光の1回の照射期間(on)としては、5マイクロ秒から1秒、より好ましくは20マイクロ秒から10ミリ秒の範囲が好ましい。5マイクロ秒よりも短いと焼結が進まず、金属パターン形成用組成物のパターンを焼結する効果が低くなる。また、1秒よりも長いと光劣化、熱劣化による基板等への悪影響のほうが大きくなる。パルス光の照射は単発で実施しても効果はあるが、上記の通り繰り返し実施することもできる。繰返し実施する場合、照射間隔(off)は20マイクロ秒から30秒、より好ましくは2000マイクロ秒から5秒の範囲とすることが好ましい。20マイクロ秒よりも短いと、連続光と近くになってしまい一回の照射後に放冷される間も無く照射されるので、基材が加熱され温度が高くなって劣化する可能性がある。また、30秒より長いと、放冷が進むのでまったく効果が無いわけはないが、繰り返し実施する効果が低減する。なお、上記パルス光の照射には、0.5Hz以上で動作する光源を使用することができる。また、上記パルス光としては、1pm〜1mの波長範囲の電磁波を使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0028】
実施例1
市販されている和光純薬工業社製の蟻酸銅四水和物、酢酸銅、硝酸銅三水和物を用いてインク組成物(金属パターン形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0029】
各化合物に対して等モル量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)とエタノール(化合物の質量に対して1.5倍の質量)を添加、または、各化合物に対して2倍のモル量の2,2−イミノジエタノール(ジエタノールアミン)(和光純薬工業社製) とエタノール(化合物の質量に対して1.5倍の質量)を添加した後、ミキサー(あわとり練太郎(登録商標)ARV−310、シンキー製)を用いて良く混合してインク組成物を調製した。インクの外観を表1に示す。
【0030】
次に、ポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ各インク組成物を35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて240V、照射期間(on)1400μ秒、3.03J/cmで配線全体が金属色になるまで複数回から数十回(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)パルス光を照射した。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。パルス光の照射回数と焼成後の1cmあたりの抵抗値を表2に示す。各インク組成物を使用して形成した配線は、パルス光の照射後、銅色の配線に変化して通電した。抵抗値は、三和電機計器株式会社製テスター(商品名:デジタルマルチメータ)を用い、上記配線上で2端子法により1cm間隔を取り測定した。その結果、全て30Ω以下であり、良好な導電性が得られた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実施例2
室温で液体のネオデカン酸銅インク(金属パターン形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0034】
ネオデカン酸銅インクの合成方法は、以下の通りである。水酸化ナトリウム450mg(11.25mモル)を水5mlに溶かし、撹拌下、バーサティック10(登録商標)(ネオデカン酸(RCCOOHで表される飽和カルボン酸の異性体混合物(R,R,Rは各々アルキル基を表し、R,R,Rの炭素数の合計が8))、酸価321mg/g)2gを加えた。30分撹拌し、分離層のないことを確認し、これに硝酸銅3水和物1.36g(5.63mモル)を3mlの水に溶かしたものを加え、撹拌した。遊離してきた濃緑青オイルをジエチルエーテル(和光純薬工業社製)で抽出し、濃縮してネオデカン酸銅インクを調製した。
【0035】
このネオデカン酸銅インクを、ポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて230V、照射期間(on)1200μ秒、2.41J/cmで配線全体が金属色になるまで5回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射(計12.1J/cmのエネルギーの光照射)した。なお、照射した光のエネルギー(12.1J/cm)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。作製した銅配線について、実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した結果、100Ωであった。
【0036】
実施例3
シュウ酸銅粉末を合成し、この粉末とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水で分散したインク(金属層形成用組成物の一例)を調製し、銅配線の作製を行った。
【0037】
シュウ酸銅粉末の合成方法は、以下の通りである。水酸化ナトリウム200mg(5mモル)を水3mlに溶かし、撹拌下、シュウ酸225mg(2.5mモル)を加えた。この時、発熱があるものの、そのまま30分間撹拌し、放冷で室温にした。完溶していないが、これに硝酸銅3水和物604mg(2.5mモル)を1mlの水に溶かしたものを加え、30分撹拌した。析出している淡青色の沈殿物を濾取し水洗乾燥し、シュウ酸銅粉末を得た。次に、得られたシュウ酸銅粉末とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水を質量比1:0.7:10で分散したシュウ酸銅インクを作製した。
【0038】
このシュウ酸銅インクをポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2cmにマスキング印刷し、10分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて200V、照射期間(on)1800μ秒、2.42J/cmで配線全体が金属色になるまで5回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射(計12.1J/cmのエネルギーの光照射)した。なお、照射した光のエネルギー(12.1J/cm)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。作製した銅配線について、実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した結果、80Ωのであった。
【0039】
実施例4
市販されている和光純薬工業社製の硝酸ニッケル六水和物粉末を用いて金属錯体インク(金属(磁性体)パターン形成用組成物の一例)を調製し、磁性体の作製を行った。
【0040】
硝酸ニッケル六水和物に対して2倍のモル量の2,2’−イミノジエタノール(ジエタノールアミン)(和光純薬工業社製)とエタノール200μLを添加した後、ミキサー(あわとり練太郎(登録商標)ARV−310、シンキー製)を用いてよく混合してNi系金属錯体インクを作製した。金属錯体インクの外観は、濃青透明である。この金属錯体インクを用いて実施例1から3と同様にポリイミド基板へマスキング印刷し、その配線の形状をうまく保つため、Novacentrix社製PulseForge3300を用い、マルチパルス(0.01秒間隔に280Vで100μ秒、100μ秒、100μ秒、200μ秒、500μ秒、100μ秒、100μ秒パルス光を照射)を10回、その後シングルパルス(250V、照射期間(on)1400μ秒)を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)20回与えて、計101.9J/cmのエネルギーの光照射を行い、配線を形成した。なお、照射した光のエネルギー(101.9J/cm)は、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。パルス光照射後の上記配線の膜厚は、レーザー顕微鏡による測定で略15μmであった。実施例1同様1cmあたりの抵抗値を測定した配線の抵抗値は540Ωであり、磁石にもつくことを確認した。
【0041】
参考例1
市販のシーアイ化成社製CuOナノ粒子NanoTek(登録商標)を用い、アミン系物質が有りまたは無しのインクを用意し、銅配線の作製を試み、CuOの還元力を配線の外観と電気抵抗値測定によって確認した。
【0042】
CuOナノ粒子(平均粒子径48nm(カタログ値))とジエタノールアミン(和光純薬工業社製)および水を質量比1:0.3:1.2で分散したインクA、または、CuOナノ粒子とエタノールを質量比1:1で分散したインクB、CuOナノ粒子と水を質量比1:1で分散したインクCを作製した。各インクをポリイミド基板(厚み70μm、カプトン(登録商標)300H、東レ・デュポン社製)上へ35μm厚のポリイミドテープ(アズワン社製、PIST−01)で幅3mm、長さ2mmにマスクキング印刷し、1分風乾後、Novacentrix社製PulseForge3300を用いて配線全体が変色するまで複数回パルス光を(各パルスを0.1秒〜2秒間隔で)照射した。配線焼成時の総エネルギーと実施例1同様測定した1cmあたりの配線の抵抗値を表3に示す。なお、総エネルギーは、PulseForge3300の菅球にかける電圧から装置が自動的に算出し表示するエネルギー値の積算値である。アミン系物質を用いた際、一番還元力が強く、低抵抗値を得られている。
【0043】
【表3】
図1