【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 平成25年5月22日 掲載資料名 第50回日本伝熱シンポジウム講演論文集(電子版) 掲載アドレス http://www.ifs.tohoku.ac.jp/ ̄maru/nhts2013/pdfs/F111.pdf 〔刊行物等〕 集会名 第50回日本伝熱シンポジウム 開催場所 ウェスティンホテル仙台および仙台トラストシティ(宮城県仙台市青葉区一番町1−9−1) 開催日 平成25年5月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1空調流路を通過した空気を空調用空気として供給すると共に前記第2空調流路を通過した空気を排気として排出する除湿冷房運転と、前記加湿暖房運転とを択一的に切り換える運転切替手段を備える請求項1に記載の空調装置。
前記熱交換器が、前記第1空調流路を通流する空気と前記第2空調流路を通流する空気とを対向流で熱交換させる対向流型熱交換器である請求項1〜4の何れか一項に記載の空調装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の空調装置にあっては、特に、冬季において、コジェネレーションシステムの熱が給湯や床暖房等に利用されることが多くなり、加熱器23に導かれる熱媒の保有する熱が不足するという課題がある。
尚、加熱器23で熱不足が生じる他の要因としては、加熱器23での熱媒と空気との温端温度差に起因するエクセルギーの損失が大きいことが挙げられる。
ここで、エクセルギーとは、ある系から仕事として取り出せるエネルギーのことであり、エクセルギー損失とは、当該仕事を取り出す際に、エントロピーの増大により伝熱や燃焼などの過程において必ず発生する有効仕事に変換できないエネルギーのことをいう。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来にない空調回路構成を採用することにより、特に、冬季で熱不足が発生する状況(冬季に空調に使用できる熱が限定される状況)であっても、エクセルギー損失の低減を図ることができながら、実用に耐え得る加湿暖房運転を実行可能な空調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための空調装置は、
空気が通流する吸湿部と再生部との間で通気性吸湿体からなるデシカントロータを回転駆動させて当該空気の除湿及び加湿を行うロータ部と、
前記ロータ部の前記再生部を通過する前の空気を外部から導かれる熱媒により加熱する第1加熱器とを備え、
空気を、前記ロータ部の前記吸湿部を通過した後の空気と熱交換させる熱交換器と、前記第1加熱器と、前記ロータ部の前記再生部とに通過させ空調用空気として供給する加湿暖房運転を実行可能な空調装置であって、その特徴構成は、
空気を加湿する第1加湿器と、
前記ロータ部の前記吸湿部を通過した後の空気を、前記第1加熱器を通過した後の熱媒により加熱する第2加熱器と、
空気を前記ロータ部の前記吸湿部と前記第2加熱器と前記熱交換器とに記載順に通過させる第1空調流路と、空気を前記第1加湿器と前記熱交換器と前記第1加熱器と前記ロータ部の前記再生部とに記載順に通過させる第2空調流路とを備え、
前記第2空調流路を通流した空気を空調用空気として供給すると共に前記第1空調流路を通流した空気を排気として排出する加湿暖房運転を実行可能に構成されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、第1加熱器に加えて、第1空調流路を通流する空気を、第1加熱器を通過した後の熱媒により加熱する第2加熱器を備えているから、第2加熱器では、第1空調流路を通流する空気が熱媒の保有する熱を回収することにより、当該熱は、その下流側の熱交換器にて第2空調流路を通流する空気に伝熱される。そして、このように加熱された当該第2空調流路を通流する空気が、さらに第1加熱器にてさらに加熱されて、当該第2空調流路を流れる空気が保有する熱が、ロータ部の再生部の再生の用に供されることとなる。つまり、熱媒(外部から空調装置内に導入され、系外から熱を供給する熱媒)の側からみると、その保有する熱が、第1加熱器に加えて、第2加熱器でも回収(利用)されることとなり、当該回収(利用)された熱が、第2空調流路を通流する空気に伝達され、デシカントロータの再生の用に供される。結果、熱媒が系外に捨てる熱、即ち、利用されることなく系の外部へ放熱される熱の量を低減でき、エクセルギー損失の低減を図ることができる。
一方、第1加熱器での空気と熱媒との熱交換に着目すると、第1加熱器における熱媒と空調用空気との温端温度差を低減して、エクセルギー損失を低減することができる。結果、冬季で熱媒の保有する熱が不足する場合であっても、適切に加湿暖房運転を実行することができる。
尚、熱媒の保有する熱不足が生じていない状況にあっては、熱媒の流量を低減することができ、この場合でも、エクセルギー損失の低減を図ることができる。
以上より、デシカントロータを用いた空調装置において、新たな回路構成を採用することにより、エクセルギー損失を低減できると共に、特に、冬季で熱不足が発生する状況であっても、実用に耐える加熱暖房運転を実行可能な空調装置を実現できる。
【0008】
本発明の空調装置の更なる特徴構成は、
前記第1空調流路を通過した空気を空調用空気として供給すると共に前記第2空調流路を通過した空気を排気として排出する除湿冷房運転と、前記加湿暖房運転とを択一的に切り換える運転切替手段を備える点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、除湿冷房運転をも実行することができ、運転切替手段により、除湿冷房運転と加湿暖房運転とを択一的に切り換えて、年間を通じて適切な空調を実行可能な空調装置を実現できる。
【0010】
本発明の空調装置の更なる特徴構成は、
前記第1空調流路は、前記第2加熱器をバイパスするバイパス路を備え、
前記第2加熱器をバイパスするバイパス路に空気を通流させるバイパス状態と、前記第2加熱器を通過する非バイパス状態とを択一的に切り換える通流状態切替手段を備え、
前記通流状態切替手段は、前記除湿冷房運転時に前記バイパス状態に切り換え、前記加湿暖房運転時に前記非バイパス状態に切り換える点にある。
【0011】
上述した空調装置にあっては、除湿冷房運転時において、第1空調流路を通流する空気(空調用空気として供給される空気)が、ロータ部の除湿部を通過して除湿され、第2加熱器にて加熱され、熱交換器における熱交換により降温した後、空調対象空間に供給される。
即ち、除湿冷房運転で、第1空調流路を通流する空気(空調用空気として供給される空気)の除湿よりも降温を優先させる場合には、第2加熱器での加熱を行わないことが好ましい。
上記特徴構成によれば、通流状態切替手段により、除湿冷房運転時には、第1空調流路を通流する空気(空調用空気として供給される空気)を、第2加熱器をバイパスするバイパス状態にできるから、空調用空気としての空気の温度を、不要に昇温させることなく低温の状態を保った状態で、空調対象空間へ供給できる。
尚、除湿冷房運転時であっても、降温よりも除湿を優先させる場合には、ロータ部の再生部へなるべく高温の空気を通過させることが好ましいため、第1空調流路を通流する空気(空調用空気として供給される空気)が第2加熱器を通過させる非バイパス状態として、当該第2加熱器にて第1空調流路を通流する空気が回収した熱を、熱交換器にて、ロータ部の再生部へ導かれる第2空調流路を通流する空気に伝熱させる構成を採用することもできる。
【0012】
本発明の空調装置の更なる特徴構成は、
前記第1加湿器とは別に空気を加湿する第2加湿器を備え、
前記除湿冷房運転時に、前記第1空調流路を通過した後の空気を前記第2加湿器にて加湿冷却する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、除湿冷房運転時に、除湿よりも降温を優先させる場合には、第1空調流路を通過した後の空気(空調用空気としての空気)を、第2加湿器にて加湿冷却することができ、十分に降温された空気を、空調用空気として空調対象空間へ供給することができる。
【0014】
本発明の空調装置の更なる特徴構成は、
前記熱交換器が、前記第1空調流路を通流する空気と前記第2空調流路を通流する空気とを対向流で熱交換させる対向流型熱交換器である点にある。
【0015】
通常、ロータ部を備える空調装置にあっては、設置スペースの制約等の関係で、第1空調流路を通過する空気と第2空調流路を通過する空気との熱交換器に、クロスフィン型の熱交換器が採用される。しかしながら、当該クロスフィン型の熱交換器では、温端温度差が大きくなるため、エクセルギー損失が大きくなるという問題があった。
上記特徴構成によれば、熱交換器として比較的大きい伝熱係数を有する対向流型熱交換器を採用することで、温端温度差を減少させ、エクセルギー損失を低減することができる。尚、ここで、対向流型熱交換器とは、例えば、二重管式熱交換器で内管の内部と内管と外管との間とに対向流で空気を通流させ熱交換する熱交換器を意味することとする。
【0016】
本発明の空調装置の運転方法は、
前記第1加熱器に導かれる熱媒の温度を、前記第2空調流路で前記第1加熱器を通過する空気の温度よりも高く設定すると共に、前記第2加熱器に導かれる熱媒の温度を、前記第1空調流路で前記第2加熱器を通過する空気の温度よりも高く設定する点を特徴とする。
【0017】
上記特徴構成の如く、熱媒の温度を設定することにより、第1加熱器において熱媒の保有する熱を第2空調流路を通流する空気へ適切に伝熱させることができると共に、第2加熱器において熱媒の保有する熱を第1空調流路を通流する空気へ適切に伝熱させることができ、空調装置を適切に働かせることができる。
尚、上記温度設定に係る制御に関しては、実体上は、第1加熱器及び第2加熱器を通過する熱媒の流量を調整することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の空調装置100は、従来にない回路構成を採用することにより、特に、冬季で熱不足が発生する状況でも、エクセルギー損失を低減して、実用に耐え得る加熱暖房運転を実行可能なものであり、以下その実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の空調装置100は、空気の通流状態を切り換え可能な第1四方切替弁31及び第2四方切替弁32を備えており、当該第1四方切替弁31と第2四方切替弁32とを対応して切り換えることにより、
図1に示す除湿冷房運転時の回路状態と、
図3に示す加湿暖房運転時の回路状態とを切り換え可能に構成されている。当該第1四方切替弁31及び第2四方切替弁32が、運転切替手段として働く。
以下、本発明の空調装置100の基本的な構成、第1空調流路R1、第2空調流路R2の構成及び働きについて順に説明し、その後、除湿冷房運転及び加湿暖房運転について説明する。
本発明の空調装置100は、基本的な構成として、空気に直接水を噴霧して加湿可能な第1加湿器24、第2加湿器41、空気が通流する吸湿部10bと再生部10aとの間で通気性吸湿体からなるデシカントロータ11を回転駆動させて当該空気の除湿及び加湿を行うロータ部10と、熱媒の熱により空気を加熱する第1加熱器25及び第2加熱器22と、室外空気OA又は室内空気RAを吸入すると共に空調用空気SA又は排気VAとして吹出する第1ファン21及び第2ファン26と、室外空気OAと室内空気RAとを熱交換させる対向流型熱交換器23とを備えて構成されている。
【0020】
尚、第1加熱器25及び第2加熱器22には、エンジンや燃料電池等のコージェネレーションシステム(図示せず)の排熱を回収した熱媒を通流する熱媒流路R3が、記載の順に熱媒を循環させるように配設されている。
【0021】
ロータ部10に設けられるデシカントロータ11は、モータ等の回転駆動部12により、回転される回転駆動軸に中心部が固定されて比較的ゆっくりした所定の回転速度で回転駆動し、後述する第1空調流路R1及び第2空調流路R2に配設される吸湿部10b及び再生部10aを横断する姿勢で配設された円盤状又は円柱状の部材として構成されている。当該デシカントロータ11は、回転駆動軸に沿う方向に貫通する多数の通路が形成されたハニカム状に形成されており、吸湿部10b及び再生部10aにおいて、空気がデシカントロータ11を貫通して通過する。当該デシカントロータ11は、ゼオライト、シリカゲル、及び活性炭等の公知の吸着材を担持して、通気性吸着体とされている。
このようなデシカントロータ11を備えたロータ部10は、吸湿部10bに、比較的低温の空気が通過することにより、当該空気がデシカントロータ11の吸湿時の放熱作用による温度上昇を伴って除湿され、それによりデシカントロータ11は空気の水分を吸着した状態(吸湿状態)となる。その水分を吸着したデシカントロータ11の部分が、上記回転駆動により再生部10aに移動することになる。
一方、当該再生部10aに比較的高温の空気が通過することで、その空気はデシカントロータ11の放湿時の吸湿作用による温度低下を伴って加湿され、それによりデシカントロータ11は、上記吸着した水分を脱着させた状態(乾燥状態)となり、再生されることとなる。当該再生されたデシカントロータ11の部分が、上記回転駆動により吸湿部10bに移動することになる。
このようにして、ロータ部10は、吸湿部10b及び再生部10aを通過する夫々の空気の除湿と加湿とを行うことができるように構成されている。
【0022】
第1空調流路R1は、第1ファン21から送り出された空気を、ロータ部10の吸湿部10b、第2加熱器22及び対向流型熱交換器23に通過させる状態で構成されている。そして、この第1空調流路R1を通過した後に、第2加湿器41を通過する。ここで、第1空調流路R1は、
図1、3に示される回路図において、第1四方切替弁31と第2四方切替弁32との間に設けられる。
一方、第2空調流路R2は、第2ファン26にて吸入される空気を、第1加湿器24、対向流型熱交換器23、第1加熱器25、及びロータ部10の再生部10aに順に通過させる状態で設けられる。ここで、第2空調流路R2は、
図1、3に示される回路図において、第1四方切替弁31と第2四方切替弁32との間に設けられる。
【0023】
熱媒流路R3では、第1加熱器25に導かれる熱媒の温度が、第2空調流路R2で第1加熱器25に導かれる空気の温度よりも高く、第2加熱器22に導かれる熱媒の温度が、第1空調流路R1で第2加熱器22に導かれる空気の温度よりも高くなるように、図示しない制御装置により制御されている。
説明を追加すると、制御装置は、実質的には、熱媒流路R3を通流する熱媒の流量を制御することで、第1加熱器25、及び第2加熱器22での熱媒の温度を上述の温度に設定する。
これにより、第2加熱器22では、第1空調流路R1を通流する空気が常に熱媒の保有する熱を回収する(加熱される)ことにより、当該熱は、対向流型熱交換器23にて第2空調流路R2を通流する空気に伝熱され、当該第2空調流路R2を通流する空気が、さらに第1加熱器25にて加熱されて、当該第2空調流路R2の保有する熱が、ロータ部10の再生部10aでのデシカントロータ11の再生の用に供されることとなる。つまり、熱媒の側からみると、その保有する熱が、空調装置100の第1加熱器25に加えて、第2加熱器22でも回収されることとなり、当該回収された熱が、第2空調流路R2を通流する空気に伝達され、デシカントロータ11の再生の用に供されるから、利用されることなく系の外部へ排熱される熱の量を低減でき、エクセルギー損失の低減を図ることが可能な構成となっている。
【0024】
〔除湿冷房運転〕
除湿冷房運転では、図示しない制御装置による制御により、第1四方切替弁31と第2四方切替弁32とを、
図1に示す回路状態へと切り替えられる。これにより、室外空気OAは、第1空調流路R1を通流して空調され、第2加湿器41にて加湿冷却された後に空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)へ導かれる。一方、室内空気RAは、第2空調流路R2を通流した後に排気として空調対象空間の外部へ導かれる。
説明を追加すると、室外空気OAは、第1四方切替弁31を通過した後に、第1ファン21で圧送され、ロータ部10の吸湿部10bにて吸湿時の放熱作用による温度上昇を伴って除湿され、第2加熱器22にて熱媒との熱交換により加熱され、対向流型熱交換器23にて室内空気RAと熱交換して降温し、第2四方切替弁32を通過し、第2加湿器41にて加湿冷却された後に、低湿・低温の空調用空気SAとして空調対象空間へ導かれる。
一方、室内空気RAは、第1四方切替弁31を通過した後に、第1加湿器24にて加湿冷却され、対向流型熱交換器23にて室外空気OAと熱交換して昇温し、第1加熱器25にて熱媒との熱交換により加熱されて十分に昇温された状態で、ロータ部10の再生部10aを通過することで、当該再生部10aに位置するデシカントロータ11の部位を再生した後、第2ファン26にて圧送されて排気VAとして空調対象空間の外部へ排出される。
【0025】
〔除湿冷房運転における空調性能〕
当該除湿冷房運転の除湿冷房性能を、シミュレーションにより評価する。空調する空間は、床面積が107m
2、天井高さ4.2mの空間とした。
図2に示されるP1〜P10は、
図1における回路上のP1〜P10に対応しており、
図2の空気線図では、各P1〜P10における気体の状態(温度、絶対湿度、相対湿度)を示している。
シミュレーションを行う条件としては、室内空気RAが、温度27℃、絶対湿度10.3g/kgDA、相対湿度47%とし、室外空気OAが、温度35℃、絶対湿度13.9g/kgDA、相対湿度40%とし、室内空気RA及び室外空気OAの流量(換気流量)が、347m
3/hとする。
空調装置100を構成する各機器の条件としては、第1ファン21及び第2ファン26の消費電力を夫々150Wとし、その断熱効率をモータ効率を含め50%とし、ロータ部10のデシカントロータ11の除湿効率を75%とし、対向流型熱交換器23の伝熱係数を700W/Kとし、第1加熱器25及び第2加熱器22の伝熱係数を125W/Kとし、第1ファン21の揚程を780Paとし、第2ファン26の揚程を720Paとし、第1加湿器24の水噴霧量を0.10kg/hとし、第2加湿器41の水噴霧量を0.57kg/hとし、熱媒の導入温度を70℃、循環流量を3.4L/minとする。
【0026】
上記条件でシミュレーションを行った結果、
図2の空気線図に示すように、室内空気RAが加湿・昇温されて排気VAとして排出されるのに伴って、室外空気OAが、除湿・冷却され、温度26.9℃、絶対湿度9.8g/kgDA、相対湿度45%、風量336m
3/hの空調用空気SA(
図2でP5における空気)として空調対象空間(図示せず)に導かれることとなった。尚、当該シミュレーションにおいて、ロータ部10の吸湿部10bにおける除湿量(
図2でP1―P2での除湿量)は、2.16kg/h(正味除湿量は1.59kg/h)となり、熱媒の戻り温度は、61.8℃となり、熱媒熱負荷は2135Wとなった。
【0027】
一方、
図8に示す従来技術においても同様のシミュレーションを行った。尚、
図8は加湿暖房運転時の回路状態を示すものであるが、第1四方切替弁31、第2四方切替弁32を回転させて除湿冷房運転時の回路状態としたものを前提として、当該シミュレーションを行った。シミュレーションの条件は、熱交換器23の伝熱係数が190W/Kとする点、及び第2加熱器22を設けない点以外は、上述の条件と同様である。
当該シミュレーションの結果、
図8に示す従来技術では、空気線図には示さないが、室外空気OAが、除湿・冷却され、温度31.4℃、絶対湿度10.1g/kgDA、相対湿度37.3%、風量341m
3/hの空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)に導かれることとなった。尚、当該シミュレーションにおいて、ロータ部10の吸湿部10bにおける除湿量は、1.89kg/h(正味除湿量は1.32kg/h)となり、熱媒の戻り温度は、61.6℃となり、熱媒熱負荷は1978Wとなった。
【0028】
これらの結果より、熱媒の導入温度及び循環流量が同一である場合、本発明の空調装置100によれば、
図8に示す従来技術に比べ、空調用空気SAの温度を4.5℃低下させることができ、除湿量も270g/kgDA増加させることができるといえる。
【0029】
〔加湿暖房運転〕
加湿暖房運転では、図示しない制御装置による制御により、第1四方切替弁31と第2四方切替弁32とを、
図3に示す回路状態へと切り替えられる。これにより、室外空気OAは、第2空調流路R2を通流して空調され、空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)へ導かれる。一方、室内空気RAは、第1空調流路R1を通流した後に排気VAとして空調対象空間の外部へ導かれる。
説明を追加すると、室外空気OAは、第1四方切替弁31を通過した後に、第1加湿器24にて加湿冷却され、対向流型熱交換器23にて室内空気RAと熱交換して昇温し、第1加熱器25にて熱媒との熱交換により加熱されて十分に昇温され、ロータ部10の再生部10aにて放湿時の吸熱作用による温度低下を伴って加湿され、第2ファン26にて圧送されて第2四方切替弁32を通過した後、空調用空気SAとして空調対象空間へ供給される。
一方、室内空気RAは、第1四方切替弁31を通過した後に、第1ファン21で圧送され、ロータ部10の吸湿部10bにて吸湿時の放熱作用による温度上昇を伴って除湿され、第2加熱器22にて熱媒との熱交換により加熱され、対向流型熱交換器23にて室外空気OAと熱交換して降温し、第2四方切替弁32を通過した後に、排気VAとして空調対象空間の外部へ排出される。
【0030】
〔加湿暖房運転における空調性能〕
当該除湿冷房運転の除湿冷房性能を、シミュレーションにより評価する。
図4に示されるP1〜P9は、
図3における回路上のP1〜P9に対応しており、
図4の空気線図では、各P1〜P9における気体の状態(温度、絶対湿度、相対湿度)を示している。
以下、シミュレーションを行う条件につき、上記除湿冷房運転のシミュレーションの条件と異なるものについて示す。
加湿暖房運転のシミュレーションの条件は、室内空気RAが、温度16.8℃、絶対湿度5.3g/kgDA、相対湿度45%とし、室外空気OAが、温度7.0℃、絶対湿度2.3g/kgDA、相対湿度39%とし、室内空気RA及び室外空気OAの流量(換気流量)が、347m
3/hとする。
空調装置100を構成する各機器の条件としては、第1ファン21の揚程を780Paとし、第2ファン26の揚程を700Paとし、第1加湿器24の水噴霧量を0.10kg/hとし、熱媒の導入温度を60℃、循環流量を1.7L/minとする。
【0031】
上記条件でシミュレーションを行った結果、
図4の空気線図に示すように、室内空気RAが除湿・降温されて排気VAとして排出されるのに伴って、室外空気OAが、加湿・昇温され、温度36.0℃、絶対湿度5.6g/kgDA、相対湿度15%、風量382m
3/hの空調用空気SA(
図4でP5における空気)として空調対象空間(図示せず)に導かれることとなった。尚、当該シミュレーションにおいて、ロータ部10の再生部10aにおける加湿量(
図2でP4―P5での除湿量)は、1.34g/h(正味除湿量は1.44kg/h)となり、熱媒の戻り温度は、36.8℃となり、熱媒熱負荷は2722Wとなった。
【0032】
一方、
図8に示す従来技術においても同様のシミュレーションを行った。シミュレーションの条件は、熱交換器23の伝熱係数を190W/Kとする点、第2加熱器22を設けない点、及び第2ファン26の揚程を717Paとする点以外は、上述の条件と同様である。
当該シミュレーションの結果、
図8に示す従来技術では、空気線図には示さないが、室外空気OAが、除湿・冷却され、温度30.9℃、絶対湿度5.4g/kgDA、相対湿度20%、風量373m
3/hの空調用空気SAとして空調対象空間(図示せず)に導かれることとなった。尚、当該シミュレーションにおいて、ロータ部10の再生部10aにおける加湿量は、1.24kg/h(正味除湿量は1.34kg/h)となり、熱媒の戻り温度は、38.8℃となり、熱媒熱負荷は2897Wとなった。
【0033】
これらの結果より、熱媒の導入温度及び循環流量が同一である場合、本発明の空調装置100によれば、
図8に示す従来技術に比べ、空調用空気SAの温度を5.1℃上昇させることができ、加湿量も100g/kgDA増加させることができるといえる。
【0034】
次に、当該加湿暖房運転において、本発明と従来技術でのエクセルギーサンキーダイアグラムを比較したものを
図5に示す。ここで、エクセルギーとは、ある系から仕事として取り出せるエネルギーのことであり、エクセルギー損失とは、当該仕事を取り出す際に、エントロピーの増大により伝熱や燃焼などの過程において必ず発生する有効仕事に変換できないエネルギーのことをいう。
当該ダイアグラムを、加熱器でのエクセルギー損失の観点でみると、従来技術の加熱器でのエクセルギー損失は446Wであり、本発明の加熱器(第1加熱器の95Wと第2加熱器66Wとの合計)でのエクセルギー損失は161Wであるから、エクセルギー損失の低減率は、(445W−161W)/445W≒65%となることがわかる。これにより、同様の負荷で加湿暖房運転を行う場合、熱媒の循環量を従来技術に比べて約45%まで減らすことが可能となる。
【0035】
〔第2実施形態〕
第1実施形態に係る空調装置100にあっては、除湿冷房運転時において、第1空調流路R1を通流する空気(空調用空気として供給される空気)が、ロータ部10の吸湿部10bを通過して除湿され、第2加熱器22にて加熱され、対向流型熱交換器23における熱交換により降温し、第2加湿器41にて加湿冷却され、空調用空気SAとして空調用空間に供給される。しかしながら、除湿冷房運転時で、第1空調流路R1を通流する空気(空調用空気として供給される空気)の除湿よりも降温を優先させる場合には、当該空気を第2加熱器22での加熱を行わないことが好ましい。
当該第2実施形態では、第1空調流路R1において、第2加熱器22をバイパスするバイパス路R4を備えると共に、第1空調流路R1を通流する空気の通流状態を、バイパス路R4の側に通流するバイパス状態と、第2加熱器22の側に通流する非バイパス状態との間で択一的に切り換える三方弁42を備えている。
これにより、除湿冷房運転時には、図示しない制御装置により、三方弁42が、第1空調流路R1を通流する空気が第2加熱器22をバイパスするバイパス状態に切り換え制御され、第1空調流路R1を通流する空気が第2加熱器22にて不要に昇温させることを回避し、空調用空気SAの温度を、比較的低温に維持する。
ここで、上記三方弁42及びその開閉状態を制御する制御装置が、通流状態切替手段として働く。
尚、当該第2実施形態においても、加湿暖房運転時には、第1空調流路R1を通流する空気が第2加熱器22を通過する非バイパス状態とし、熱媒の保有する熱を第2加熱器22でも十分に回収し、エクセルギー損失を低減する。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、室外空気OAと室内空気RAとを熱交換する熱交換器23は、そこでの温端温度差を減少させて、エクセルギー損失を低減するべく、伝熱係数の高い対向流型の熱交換器を採用した。しかしながら、ある程度のエクセルギー損失の低減を許容できる場合には、当該熱交換器23は、クロスフィン型の熱交換器等を採用することもできる。
【0037】
(2)上記第2実施形態では、第1空調流路R1を通流する空気を第2加熱器22をバイパスさせるバイパス状態と、バイパスさせない非バイパス状態とを、択一的に切り換え可能な構成において、除湿冷房運転時にあっては、第2加熱器22をバイパスするバイパス状態とする例を示した。
しかしながら、本発明にあっては、第1空調流路R1を通流する室外空気OAが第2加熱器22で回収した熱は、対向流型熱交換器23で回収され、ロータ部10の再生部10aにてデシカントロータ11の再生の用に供される。即ち、第1空調流路R1を通流する室外空気OAが、第2加熱器22で回収した熱が多いほど、デシカントロータ11の再生が促進されるため、第1空調流路R1を通流する室外空気OAが、ロータ部10の吸湿部10bでのデシカントロータ11により吸湿される吸湿量が多くなる。
従って、除湿冷房運転において、降温よりも除湿を優先させる場合には、バイパス状態としても構わない。
また、三方弁42は、第1空調流路R1を通流する空気を、第2加熱器22の側とバイパス路R4の側とで択一的に切り換えるのではなく、要求される除湿量・降温量に応じて、空気の一部を第2加熱器22の側へ導き、空気の残部をバイパス路R4の側へ導く流量調整機能を有するものを採用することができる。
【0038】
(3)本発明の空調装置100は、加湿暖房運転と除湿冷房運転とが切替可能な空調装置に限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、第1四方切替弁31及び第2四方切替弁32を含まず、加湿暖房運転のみを行う空調装置をも含むものである。
当該構成においても、加湿暖房運転においては、上述の実施形態で説明したように、エクセルギー損失の低減を図ることができる。