【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)、ナノ科学を基盤とした革新的製造技術の創成、液晶性有機半導体材料の開発、実用化に向けた液晶性有機トランジスタ材料の開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
【化1】
(式中、R
1は芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、或いは下記式(2)又は(3)で表される基から選ばれる基、
【化2】
【化3】
(Ar
1は芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、Ar
2は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、R’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基。))
R
2は、無置換か置換基を有する炭素数1〜19のアルキル基、又は炭素数2〜19のアルケニル基である。)
(1)下記式(4)
【化4】
で表される化合物を塩素化、臭素化、又はヨウ素化して、下記式(5)
【化5】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
で表される化合物を得る第1工程、
(2)前記式(5)で表される化合物と、R
1Y(R
1は前記と同じもの、Yは脱離基を表す。)で表される化合物とのカップリング反応により、一般式(6)
【化6】
(式中、R
1は前記と同じものを表す。)
で表される化合物を得る第2工程、
(3)前記一般式(6)で表される化合物と、R
2COZ(Zは塩素原子又は臭素原子を表す。)との反応により、一般式(7)
【化7】
(式中、R
1及びR
2は前記と同じものを表す。)
で表される化合物を得る第3工程、
(4)前記一般式(7)で表される化合物を還元する第4工程、
の各工程を有することを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
置換基を有する炭素数1〜19のアルキル基、又は炭素数2〜19のアルケニル基が、ハロゲン原子を有する炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数2〜19のアルケニル基、スルホン酸エステル基を有する炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数2〜19のアルケニル基、アルコキシ基を有する炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数2〜19のアルケニル基、水酸基或いは保護基で保護された水酸基を有する炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数2〜19のアルケニル基、及びスルファニル基を有する炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数2〜19のアルケニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコンや多結晶シリコンを用いてなる薄膜トランジスタ(TFT)が、液晶表示装置や有機EL表示装置などのスイッチング素子として広く用いられている。しかし、これらシリコンを用いたTFTは、製造設備が高価な上、高温下で成膜されるため、耐熱性に乏しいプラスチック基板には展開できない。これを解決するために、シリコン半導体に代えて、有機半導体をチャネル半導体層に用いた有機TFTが提案されている。
【0003】
一般に、有機半導体はシリコン半導体に比べ、キャリア移動度が低く、その結果、TFTの応答速度が遅くなることが実用化の課題であったが、近年、アモルファスシリコン同等の移動度の有機半導体が開発されてきた。中でも、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(BTBT)誘導体は、キャリア移動度が10
0cm
2/Vs<の報告もあり、有望な有機半導体のひとつである。
例えば、特許文献1などに、シリコン半導体と同等の移動度を示す2,7−置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン骨格(以下、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンをBTBTと略する)を有する化合物が見出され、その応用展開が図られている。
しかしながら、高い移動度の目的物を得るためには、6工程を要し、収率も低い(約10%)。
【0004】
BTBT誘導体の中でも、例えば、R
1がデシル基、R
2がフェニル基であるBTBT誘導体は、分子配置の秩序性が高い、高次の液晶相を経由して結晶化するため、印刷成膜でも煩雑な熱処理を必要とせず、高い移動度の膜を容易に形成することができる。
しかし、この化合物は、BTBT骨格を異なる2つの置換基で修飾しなければならないため、合成経路が煩雑となり、高収率で目的物を得ることができなかった。
【0005】
【化1】
【0006】
BTBT誘導体の製造方法は、種々の文献、特許公報によって知られている。例えば、特許文献2には、(化2)のような予め置換基を有するベンゼン環で置換されたアルキン化合物の環化反応により目的物を得る方法が記載されている。
【0007】
【化2】
【0008】
本特許文献の請求の範囲には、(化2)におけるR
1とR
2が異なるBTBT誘導体は記載されているが、実施例にはR
1とR
2が同一のものであるBTBT誘導体を得る方法が記載されているのみであり、本発明のようなR
1とR
2が異なるBTBT誘導体の製造法については具体的な記載はない。
【0009】
また、特許文献3には、ベンズアルデヒド誘導体とハロゲン化剤、及び硫黄化合物との反応により、BTBT誘導体を得る方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2の記載事項と同様に、本特許文献の請求の範囲には、(化1)におけるR
1とR
2が異なるBTBT誘導体は記載されているが、実施例にはR
1とR
2が同一のものであるBTBT誘導体を得る方法が記載されているのみであり、本発明のようなR
1とR
2が異なるBTBT誘導体の製造法については具体的な記載はない。
【0010】
非特許文献1には、ハロゲン原子が置換されたベンゾチオフェンから、3工程を経て、2塩化[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの製造方法が記載されているが、2,7置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン誘導体の製造方法については記載がない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の製造方法について説明する。本発明の製造スキームは次の通りである。
【0032】
(式中、R
1は芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、或いは下記式(2)又は(3)で表される基から選ばれる基、
【0034】
【化13】
(Ar
1は芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、Ar
2は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、R’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基。)
R
2は、無置換か置換基を有する炭素数1〜19のアルキル基、又は炭素数2〜19のアルケニル基、、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
【0035】
ここで、前記R
1の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフテニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、クォーターフェニル基などの炭素数6〜24の単環または多環式芳香族炭化水素基等;
複素芳香族基としては、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基など、5員環または6員環の複素芳香族基や、該複素芳香族基にベンゼンが縮合した多環式複素芳香族基等;
を挙げることができる。
【0036】
炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基における炭素数2〜20のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基等;
【0037】
炭素数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、メチルペンテニル基、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセンなどの直鎖、分岐、環状のアルケニル基等;
を挙げることができ、これらの基は、芳香族炭化水素基又は複素芳香族基の任意の位置に置換が可能である。
【0038】
ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基としては、4−ペンタフルオロプロピルフェニル基、4−ヘプタフルオロブチルフェニル基、4−ノナフルオロペンチルフェニル基、4−ペンタデカフルオロオクチルフェニル基、4−ノナデカフルオロデシルフェニル基、5−ノナフルオロペンチル−2−チエニル基など、前記芳香族炭化水素基または複素芳香族基が前記ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基等を挙げることができる。
【0039】
炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基としては、4−(2−エトキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−オクチルオキシエチル)フェニル基、4−(3−n−オクチルオキシプロピル)フェニル基、4−(3−n−テトラデシルオキシプロピル)フェニル基、4−(4−n−オクチルオキシブチル)フェニル基、4−(6−n−デシルオキシヘキシル)フェニル基、4−(10−n−ブトキシデシル)フェニル基、5−(2−n−ヘキシルオキシエチル)−2−チエニル基など、前記芳香族炭化水素基または複素芳香族基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基等を挙げることができる。
【0040】
炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基としては、4−メチルスルファニルプロピルフェニル基、4−ブチルスルファニルプロピルフェニル基、4−ドデシルスルファニルプロピルフェニル基、5−メチルスルファニルプロピル−2−チエニル基など、前記芳香族炭化水素基または複素芳香族基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基等を挙げることができる。
【0041】
炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基としては、N−メチルアミノプロピルフェニル基、N−ブチルアミノプロピルフェニル基、N−ドデシルアミノプロピルフェニル基、N−メチルアミノプロピル−2−チエニル基など、前記芳香族炭化水素基または複素芳香族基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基等を挙げることができる。
一般式(2)におけるAr
1としては、上記R
1に例示した芳香族炭化水素基、複素芳香族基、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、ハロゲン原子を有する炭素数2〜20のアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルコキシアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基を置換基として持つ芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられる。
次に、一般式(3)におけるAr
2は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい複素芳香族基であれば、特に制限はないが、例えば以下のものを挙げることができる。
フェニレン基、ナフチレン基、アズレニレン基、アセナフテニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ナフタセニレン基、フルオレニレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、ペリレニレン基、ビフェニレン基、p−ターフェニレン基、クォーターフェニレン基などの炭素数6〜24の単環または多環式芳香族炭化水素基、
トリレン基、キシリレン基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基、ブチルフェニレン基、メチルナフチレン、9,9‘−ジヘキシルフルオレニレン基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数1〜10のアルキル基で置換されたアルキル置換芳香族炭化水素基、
フルオロフェニレン基、クロロフェニレン基、ブロモフェニルン基など、前記の芳香族炭化水素基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素基などが挙げられる。
更に、チエニレン、ピリジレンなどの複素芳香族基や、これらが置換された複素芳香族基も使用することができる。また、一般式(3)におけるR‘としては、水素原子、上記R
1で例示した炭素数1〜20のアルキル基、上記Ar
1で例示した置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられる。
【0042】
一方、R
2における炭素数1〜19のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基;
【0043】
炭素数2〜19のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、メチルペンテニル基、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセンなどの直鎖、分岐、環状のアルケニル基等;
【0044】
ハロゲン原子を有する炭素数1〜19のアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨード原子を有するアルキル基を挙げることができ、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヨードエチル基、6−フルオロヘキシル基、6−クロロヘキシル基、6−ブロモヘキシル基、6−ヨードヘキシル基、10−フルオロデシル基、10−クロロデシル基、10−ブロモデシル基、10−ヨードデシル基、18−フルオロステアリル基、18−クロロステアリル基、18−ブロモステアリル基、18−ヨードステアリル基などの末端ハロゲン化アルキル基;トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロメチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル基など、前記炭素数1〜19のアルキル基の水素原子の一部をハロゲン原子で置換されたアルキル基等;
【0045】
アルコキシ基で置換された炭素数1〜19のアルキル基としては、アルキル基に置換が可能なアルコキシ基で置換されたアルキル基を挙げることができ、例えば、2−メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−イソプロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、2−n−ヘキシルオキシエチル基、2−(2’−エチルブチルオキシ)エチル基、2−n−ヘプチルオキシエチル基、2−n−オクチルオキシエチル基、2−(2’−エチルヘキシルオキシ)エチル基、2−n−デシルオキシエチル基、2−n−ドデシルオキシエチル基、2−n−テトラデシルオキシエチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、2−メトキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ペンチルオキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、3−(2’−エチルブトキシ)プロピル基、3−n−オクチルオキシプロピル基、3−(2’−エチルヘキシルオキシ)プロピル基、3−n−デシルオキシプロピル基、3−n−ドデシルオキシプロピル基、3−n−テトラデシルオキシプロピル基、3−シクロヘキシルオキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、4−n−プロポキシブチル基、4−イソプロポキシブチル基、4−n−ブトキシブチル基、4−n−ヘキシルオキシブチル基、4−n−オクチルオキシブチル基、4−n−デシルオキシブチル基、4−n−ドデシルオキシブチル基、5−メトキシペンチル基、5−エトキシペンチル基、5−n−プロポキシペンチル基、5−n−ペンチルオキシペンチル基、6−メトキシヘキシル基、6−エトキシヘキシル基、6−イソプロポキシヘキシル基、6−n−ブトキシヘキシル基、6−n−ヘキシルオキシヘキシル基、6−n−デシルオキシヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、7−メトキシヘプチル基、7−エトキシヘプチル基、7−イソプロポキシヘプチル基、8−メトキシオクチル基、8−エトキシオクチル基、9−メトキシノニル基、9−エトキシノニル基、10−メトキシデシル基、10−エトキシデシル基、10−n−ブトキシデシル基、11−メトキシウンデシル基、12−メトキシドデシル基、12−エトキシドデシル基、12−イソプロポキシドデシル基、14−メトキシテトラデシル基、シクロヘキシルオキシエチル基、シクロヘキシルオキシプロピル基などの直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基等;
【0046】
炭素数1〜19のスルファニル基で置換されたアルキル基としては、アルキル基に置換が可能なアルキルスルファニル基で置換されたアルキル基を挙げることができ、例えば、メチルスルファニルプロピル基、エチルスルファニルプロピル基、ブチルスルファニルプロピル基、ドデシルスルファニルプロピル基などのアルキルスルファニルアルキル基、2−メチルスルファニルエチル基、2−エチルスルファニルエチル基、2−n−プロピルスルファニルエチル基、2−イソプロピルスルファニルエチル基、2−n−ブチルスルファニルエチル基、2−n−ヘキシルスルファニルエチル基、2−(2’−エチルブチルスルファニル)エチル基、2−n−ヘプチルスルファニルエチル基、2−n−オクチルスルファニルエチル基、2−(2’−エチルヘキシルスルファニル)エチル基、2−n−デシルスルファニルエチル基、2−n−ドデシルスルファニルエチル基、2−n−テトラデシルスルファニルエチル基、2−シクロヘキシルスルファニルエチル基、2−メチルスルファニルプロピル基、3−メチルスルファニルプロピル基、3−エチルスルファニルプロピル基、3−n−プロピルスルファニルプロピル基、3−イソプロピルスルファニルプロピル基、3−n−ブチルスルファニルプロピル基、3−n−ペンチルスルファニルプロピル基、3−n−ヘキシルスルファニルプロピル基、3−(2’−エチルブチルスルファニル)プロピル基、3−n−オクチルスルファニルプロピル基、3−(2’−エチルヘキシルスルファニル)プロピル基、3−n−デシルスルファニルプロピル基、3−n−ドデシルスルファニルプロピル基、3−n−テトラデシルスルファニルプロピル基、3−シクロヘキシルスルファニルプロピル基、4−メチルスルファニルブチル基、4−エチルスルファニルブチル基、4−n−プロピルスルファニルブチル基、4−イソプロピルスルファニルブチル基、4−n−ブチルスルファニルブチル基、4−n−ヘキシルスルファニルブチル基、4−n−オクチルスルファニルブチル基、4−n−デシルスルファニルブチル基、4−n−ドデシルスルファニルブチル基、5−メチルスルファニルペンチル基、5−エチルスルファニルペンチル基、5−n−プロピルスルファニルペンチル基、5−n−ペンチルスルファニルペンチル基、6−メチルスルファニルヘキシル基、6−エチルスルファニルヘキシル基、6−イソプロピルスルファニルヘキシル基、6−n−ブチルスルファニルヘキシル基、6−n−ヘキシルスルファニルヘキシル基、6−n−デシルスルファニルヘキシル基、4−メチルスルファニルシクロヘキシル基、7−メチルスルファニルヘプチル基、7−エチルスルファニルヘプチル基、7−イソプロピルスルファニルヘプチル基、8−メチルスルファニルオクチル基、8−エチルスルファニルオクチル基、9−メチルスルファニルノニル基、9−エチルスルファニルノニル基、10−メチルスルファニルデシル基、10−エチルスルファニルデシル基、10−n−ブチルスルファニルデシル基、11−メチルスルファニルウンデシル基、12−メチルスルファニルドデシル基、12−エチルスルファニルドデシル基、12−イソプロピルスルファニルドデシル基、14−メチルスルファニルテトラデシル基、シクロヘキシルスルファニルエチル基、シクロヘキシルスルファニルプロピル基などの直鎖、分岐または環状のアルキルスルファニルアルキル基等;
を挙げることができる。
また、上記記載のR
2は、一般式(1)で表される化合物の有機半導体特性を低下しないものであれば、更に置換基を有しても良い。
【0047】
具体的な一般式(1)に係る化合物を例示すると以下の通りである。
【0055】
次に、具体的な製造方法について説明する。
(一般式(5)で表される化合物の製造)
一般式(5)で表される化合物は、BTBTとハロゲン化剤とを反応することにより得ることができる。ハロゲン化剤は、公知慣用のものを使用すればよく、ヨウ素化剤としては、例えば、ヨウ素、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、ビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフルオロボラート、1−クロロ−2−ヨードエタン、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ヨードサッカリン、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素等が挙げられる。
臭素化剤としては、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、臭素、N−ブロモアセトアミド、2−ブロモ−2−2−シアノ−N,N−ジメチルアセトアミド、N−ブロモフタルイミド、N−ブロモサッカリン、N−ブロモスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸、テトラブチルアンモニウムトリブロミド等挙げられる。
塩素化剤としては、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨウ素塩、次亜塩素酸tert−ブチル、N−クロロフタルイミド、N−クロロスクシンイミド等が挙げられる。
ハロゲン化剤の添加量は、BTBTに対して、0.5〜3当量が好ましい。0.5当量以上であれば、目的とする一般式(5)で表される化合物の生成量が多くなり、3当量以下であると、芳香環に対する選択性が高いため好ましい。より好ましくは0.7〜2.0当量であり、さらに好ましくは0.8〜1.5当量である。
反応溶媒としては、ハロゲン化剤と反応しない溶媒であればよく、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸、硫酸等を用いることができる。反応温度は−78℃から150℃の温度で反応を行うことができる。反応速度から、−30℃以上が好ましく、異性体などの副生成物の抑制には、70℃以下であることが好ましい。より好ましくは、−20〜60℃である。
また、臭素化された化合物に、ヨウ化カリウムなどを添加しヨウ素に置換することもできる。
一般式(5)で表される化合物は、反応終了後の混合液を水や次亜塩素酸ソーダ水溶液などにより、ハロゲン化剤を抽出除去することにより得ることができる。また、この反応ではBTBTの2位がハロゲン化された化合物の他に、他置換位置がハロゲン化された異性体や、ジハロゲン体などの副生成物が得られることがある。高純度に一般式(5)で表される化合物を得るためには、再結晶、カラムや昇華等の公知慣用の精製方法により、精製しても構わない。一方、この段階で精製すると、一般式(5)で表される化合物の収率が低下することもあるため、精製が容易な次工程以降で精製することが好ましい。
【0056】
(一般式(6)で表される化合物の製造)
一般式(6)で表される化合物は、一般式(5)で表される化合物と、種々のホウ素化合物、エチニルアリール化合物、又はハロゲン化アリール化合物などと、公知慣用のクロスカップリング反応することにより得ることができる。クロスカップリング反応としては、鈴木−宮浦カップリング、園頭カップリング、溝呂木・ヘック反応、熊田−玉尾カップリングなど公知慣用の方法が適用でき、これらの反応条件や触媒等については、例えば、Chemical Review第95巻2457−2483頁(1995年)やChemical Review第111巻1417−1492頁(2011年)などの総説や、クロスカップリング反応−基礎と産業応用−(シーエムシー出版)などの成書に記載されている方法、条件が適用できる。
使用できるホウ素化合物としては、例えば、フェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸、2−メチルフェニルボロン酸、4−tert−ブチルフェニルボロン酸、3−メトキシフェニルボロン酸、4−フェノキシフェニルボロン酸、2−クロロ−4−メチルフェニルボロン酸、4−(フェニルエチニル)フェニルボロン酸、2−チエニルボロン酸、3−チエニルボロン酸、2−フリルボロン酸、3-フリルボロン酸、4−(フェニルエチニル)フェニルボロン酸、ベンゾチオフェン−2−イル−ボロン酸、2−ベンゾフラニルボロン酸、5−インドリルボロン酸、3−キノリンボロン酸や上記ボロン酸化合物のホウ酸ピナコールエステル等が挙げられる。上記のホウ素化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)で表される化合物に対し、0.5〜5当量であれば良い。0.5当量を下回ると、一般式(6)で表される化合物の収率が低くなり、5当量以上になると、生産コストが高くなる。収率とコストのバランスから、上記ホウ素化合物の使用量は0.8〜3.0当量が好ましく、0.9〜2当量であることが更に好ましい。
エチニルアリール化合物としては、例えば、エチニルベンゼン、2−エチニルナフタレン、1−エチニルナフタレン、1−エチニル−4−イソプロピルベンゼン、2−エチニル−1,4−ジメチルベンゼン、9−エチニルフェナントレン、エチニルアニリン、(4−エチニルフェニル)メタノール、3−エチニルフェノール、1−エチニル−4−ペンチルベンゼン、1−ブロモ−4−エチニルベンゼン、1−ブロモ−3−エチニルベンゼン、4−エチニル−1−フルオロ−2−メチルベンゼン、1−エチニル−2,4−ジフルオロベンゼン、5−エチニル−1,2,3−トリフルオロベンゼン、ベンジル−4−エチニルフェニルエーテル、1−エチニル−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−エチニルチオフェン、2−エチニル−3−メチルチオフェン、5−エチニル−2、3−ジメチルチオフェン、2−エチニル−5−エチニルチオフェン、2−クロロ−5−エチニルチオフェン、2−ブロモ−5−エチニルチオフェン、2−エチニルピリジン、3−エチニルピリジン、4−エチニルピリジンなどが挙げられる。上記のエチニルアリール化合物の使用量に特に制限はないが、一般式(5)で表される化合物に対し、0.5〜5当量であれば良い。0.5当量を下回ると、一般式(6)で表される化合物の収率が低くなり、5当量以上になると、生産コストが高くなる。収率とコストのバランスから、上記エチニルアリール化合物の使用量は0.8〜3.0当量が好ましく、0.9〜2当量であることが更に好ましい。
一般式(5)で表される化合物とホウ素化合物とを反応させる場合、使用できるパラジウム触媒としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)、アリルパラジウム(II)クロライドダイマー、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリ−tert.−ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、酢酸パラジウム、パラジウム/炭素、などが挙げられ、窒素、アルゴン等の不活性ガス下、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど塩基と作用させることにより一般式(6)で表される化合物を製造することができる。パラジウム触媒の使用量は、一般式(5)で表される化合物に対し、0.0001〜0.2当量が好ましく、反応速度とコストの点から、0.0005〜0.15当量であることがより好ましく、0.001〜0.1当量であることが更に好ましい。
また、反応溶媒や反応温度も公知慣用の条件であれば特に制限はなく、反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、THF、メチルグライム、DMF、トルエン、キシレン等が挙げられる。反応温度としては、上記反応が進行する条件であれば良く、−20〜180℃、好ましくは室温〜120℃である。
一般式(5)で表される化合物とエチニルアリール化合物を反応させる場合は、公知慣用の条件であれば特に制限はなく、例えば、触媒として上記記載のパラジウム触媒、塩基、溶媒、温度で、ヨウ化銅等の銅化合物を作用させることにより一般式(6)で表される化合物を製造することができる。
一般式(6)で表される化合物を高純度に得るためには、反応生成物を精製することが好ましい。精製は再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華法など公知慣用の方法が適用できる。一例を示すと、セライトや活性炭などの吸着剤や、市販されているメタルスカベンジャーなどで触媒を吸着させ、ろ過後、再結晶する方法が挙げられる。
メタルスカベンジャーとしては、例えば、ポリスチレンやシリカゲルに担持させたReaxa社製のQuadraPureシリーズ、富士シリシア化学(株)製のスカベンジャーシリカ、SILICYCLE社製のSiliaMetSシリーズ、Biotage社製のSi−TMT、Si−Thiol、Si−trisamine、Sc−X−2/3などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。・
再結晶に使用できる溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、リグロインなどの炭化水素系溶媒、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、メチルグライムなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。
【0057】
(一般式(7)で表される化合物の製造)
一般式(7)で表される化合物は、一般式(6)で表される化合物と脂肪族カルボン酸クロライド又は脂肪族カルボン酸無水物を、フリーデルクラフツアシル化反応することにより得ることができる。触媒、溶媒、反応温度などの条件は、Chemical Review第55巻229−281頁(1955年)等に記載の公知慣用のものが適用できる。
脂肪族カルボン酸クロライドとしては酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、ペンタン酸クロライド、ヘキサン酸クロライド、ヘプタン酸クロライド、オクタン酸クロライド、ノナン酸クロライド、デカン酸クロライド、ドデカン酸クロライド、テトラデカン酸クロライド、ヘキサデカン酸クロライド、オクタデカン酸クロライドなどの炭化水素系カルボン酸クロライド、2−(デシルチオ)アセチルクロライド、8−(エチルチオ)オクタン酸クロライドなどの含硫黄系脂肪族カルボン酸クロライド、2−(デシルオキシ)アセチルクロライド、8−(エチルオキシ)オクタン酸クロライドなどの含酸素系脂肪族カルボン酸クロライド、4−クロロ酪酸クロライド、4−ブロモ酪酸クロライド、4−ヨード酪酸クロライド、6−クロロヘキサン酸クロライド、6−ブロモヘキサン酸クロライド、6-ヨードヘキサン酸クロライドなどのハロゲン原子を有する炭化水素系カルボン酸クロライドなどが挙げられる。
上記カルボン酸クロライドは、市販されているものの他に、プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸などのカルボン酸を、塩化チオニルやオキサリルクロライド等と反応したものを用いても構わない。
また、脂肪族カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ヘキサン酸、無水デカン酸などが挙げられる。
カルボン酸クロライドやカルボン酸無水物の使用量は、目的とする化合物が得られる範囲であれば特に制限はないが、一般式(6)で表される化合物に対して0.5〜3.0当量であることが好ましい。0.5当量以上であれば一般式(7)で表される化合物の収率が高くなり、3.0当量以下であれば副反応を抑制しながら反応時間を短縮することができる。収率の点からは、カルボン酸クロライドやカルボン酸無水物の使用量が0.7〜2.0当量であることがより好ましく、0.8〜1.5当量であることが更に好ましい。
触媒としては、例えば、塩化錫、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化チタン、臭化鉄などが挙げられ、その使用量に特に制限はないが、一般式(6)で表される化合物に対して0.5〜20当量であることが好ましい。触媒使用量が多すぎると後処理が煩雑になることを加味すると、高収率で目的物を得るためには、より好ましくは0.7〜10当量であり、さらに好ましくは、0.8〜7当量である。
また、溶媒としては、反応に影響しない非芳香族系溶媒であれば何れも使用でき、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒などが使用できる。
反応温度は、目的物が得られれば特に制限はない。−100℃以上であれば反応が進行し、100℃以下であれば副生成物を抑制することができる、収率と反応時間の点から、より好ましくは−90〜70℃であり、更に好ましくは−80℃〜50℃である。
また、上記の含硫黄系脂肪族カルボン酸クロライドや含酸素系脂肪族カルボン酸クロライドで置換された一般式(7)で表される化合物を得る場合には、ハロゲン原子を有する炭化水素系カルボン酸クロライド、或いはp−トルエンスルホニル基等のスルホン酸エステル基を有する炭化水素系カルボン酸クロライド等と、一般式(6)で表される化合物とをフリーデルクラフツアシル化反応した後、アルコール系化合物やチオール系化合物とのウイリアムソン反応等により、エーテル化又はチオエーテル化することもできる。
【0058】
(一般式(1)で表される化合物の製造)
一般式(1)で表される化合物は、一般式(7)で表される化合物のカルボニル基を還元することにより得ることができる。還元方法としては、Pd/Cや銅などを触媒とする接触還元、ヒドラジンを使用するウォルフ・キッシュナー反応、ホウ素−エーテル錯体による還元等、公知慣用の方法が適用できる。中でも、高圧容器などの特別な設備を必要とせず、選択的且つ簡便に反応できることから、ウォルフ・キッシュナー反応で還元することが好ましい。
代表的な反応条件としては、一般式(7)で表される化合物に対して、ヒドラジン水和物1〜20当量、ジエチレングリコール中、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、tert.ブトキシカリウムなどの塩基触媒を0.5〜10当量使用し、100℃〜250℃で行う。反応溶液を冷却し、析出した沈殿物を再結晶することにより、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。反応溶媒としてはジメチルスルホキシドなども使用しても構わなく、上記の条件に限定されず、Chemical Review第65巻51−68頁(1965年)等に記載の公知慣用の条件が適用できる。
再結晶に使用できる溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、リグロインなどの炭化水素系溶媒、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、メチルグライムなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、更に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)2−オクチル−7−フェニルBTBTの合成
【0061】
【化21】
【0062】
特開2010−275192号公報に記載の方法で得たBTBT 4.45g(18.5mmol)、クロロホルム400mL、臭素3.58g(22.4mmol)をクロロホルム20mLに溶解した溶液を加え、室温で3日間反応した。次いで、反応液に1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50mLを加えて撹拌し、有機相を分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液50mLで洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去して2−ブロモBTBTの混合物を得た。
【0063】
次に、前記の2−ブロモBTBTの混合物に、フェニルホウ酸3.4g(27.9mmol)、炭酸カリウム6.3g(46mmol)、ジオキサン400mL、蒸留水50mLを加え、フラスコ内をアルゴンで20分間置換後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.0g(0.9mmol)トリt−ブチルホスフィン4.3ml(4.3mmol)を加え、3時間加熱還流した。冷却後、蒸留水400mLを加え、不溶分をろ集、水洗し、さらにメタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン)により、反応生成物から原点成分を除去して2−フェニルBTBTの混合物4.04gを得た後、さらにトルエン60mLで再結晶して2−フェニルBTBT3.23g(BTBTからの収率56%)を得た。
1H−NMR(CDCl
3):8.14ppm(d,J=1.6Hz,1H)、7.95ppm(d,J=7.0Hz,1H)、7.94ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.90ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.71ppm(dd,J=7.0and1.6Hz,1H)、7.70ppm(dd,J=7.2and1.4Hz.2H)、7.49ppm(t,J=7.2Hz,2H)、7.47ppm(t,J=8.2Hz,1H)、7.42ppm(t,J=8.2Hz,1H)、7.35ppm(tt,J=7.2and1.4Hz,1H)
【0064】
続いて、2−フェニルBTBT0.76g(2.4mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し、−10℃に冷却した。塩化アルミニウム1.0g(7.5mmol)を粉末のまま一度に加え、−10℃で15分間撹拌した。−78℃に冷却後、オクタノイルクロリド0.41mL(2.4mmol)を5分かけて滴下し、同温で5時間、更に−40℃で1時間撹拌した。反応液に水100mLを添加した後、減圧下、ジクロロメタンを留去し、1mol/L塩酸20mLを加えた後、クロロホルム100mLで抽出し、有機相を分取した。有機相を濃縮後、残渣をトルエン80mLで再結晶することにより、2−(オクチル−1−オン)−7−フェニルBTBTの淡黄色結晶、0.81g得た(収率77%)。
1H−NMR(CDCl
3):8.57ppm(d,J=1.5Hz,1H)、8.16ppm(d,J=1.3Hz,1H)、8.07ppm(dd,J=8.4and1.3Hz,1H)、7.99ppm(d,J=8.4Hz,1H)、7.94ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.74ppm(dd,J=8.2and1.5Hz.1H)、7.71ppm(dd,J=7.2and1.3Hz.2H)、7.50ppm(t,J=7.2Hz,2H)、7.40ppm(tt,J=7.2and1.0Hz,1H)、3.08ppm(t,J=7.0Hz,2H)、1.81ppm(m,2H)、1.47−1.29ppm(8H)、0.90ppm(t,J=6.8Hz,3H)
【0065】
最後に、2−(オクチル−1−オン)−7−フェニルBTBT0.60g(1.36mmol)、ジエチレングリコール40mL、蒸留水1mLの混合物に、水酸化カリウム0.4g(7.0mmol)、ヒドラジン一水和物1.0g(30mmol)を加えた。150℃に加熱して1時間、更に230℃まで昇温させ、デカンターを用いて反応系から水分を除去しながら、5時間撹拌した。室温まで冷却後、蒸留水50mLを加えて析出した固形物をろ集し、トルエン10mLで再結晶することにより、2−オクチル−7−フェニルBTBTの白色結晶0.49g得た(収率84%)。BTBTからの総収率は、36%であった。
1H−NMR(CDCl
3):8.12ppm(d,J=1.5Hz,1H)、7.91ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.79ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.73ppm(s,1H)、7.69ppm(m,3H)、7.49ppm(t,J=7.4Hz.2H)、7.38ppm(tt,J=7.4and1.7Hz.1H)、7.29ppm(dd,J=8.0and1.5Hz,1H)、2.77ppm(t,J=7.6Hz,2H)、1.70ppm(m,2H)、1.41−1.24ppm(10H)、0.88ppm(t,J=6.9Hz,3H)
【0066】
(比較例1)特許文献1に記載の製造方法
BTBT15.0g(62.5mmol)をジクロロメタン750mLに加え、窒素ガス雰囲気下で−10℃になるまで攪拌した。次に塩化アルミニウム33.6g(252.1mmol)を加え、−70℃まで降温した。−70℃到達後、オクタノイルクロリド10.2g(63.0mmol)を20分かけて滴下し、3.5時間撹拌した。反応液を蒸留水400mLに添加した後、ジクロロメタン200mLを加え、分液ロートへ移送した。下層を蒸留水300mLで2回分液洗浄した後、有機層を濃縮した。析出物をトルエン30mLに加熱溶解後、室温で再結晶して、2−(オクチル−1−オン)−BTBTの黄色結晶、16.5g得た(収率75%)。
【0067】
次いで、2−(オクチル−1−オン)−BTBT18.5g(50.6mmol)、85.5%水酸化カリウム8.64g(131.8mmol)、ヒドラジン一水和物16.0g(319.4mmol)をジエチレングリコール760 mLに加え、窒素雰囲気下、100℃で1時間後撹拌した。その後、170℃まで昇温させ、デカンターを用いて反応系から水分を除去しながら、4時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応溶液中に析出した固形物をろ過して回収し、水、エタノールの順に洗浄した。洗浄後の固形物を70度で真空乾燥して、2−オクチル−BTBT17.5g得た(収率98%)。
次に、2−オクチル−BTBT 4.58g(13mmol)を320mLのジクロロメタンに溶解後−50℃に冷却し、発煙硝酸の1.2Mジクロロメタン溶液24mLを30分かけて滴下した。−50℃で更に2時間撹拌した後、26mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した。分液して下層を取り、10%食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮乾固して粗生成物を得た。この固体を2‐ブタノンから再結晶し、2−オクチル−7−ニトロBTBTの黄色結晶、3.46g(収率、67%)を得た。
【0068】
更に、2−オクチル−7−ニトロBTBT 2.38g(6mmol)、錫粉末1.84gを酢酸30mLに懸濁し、約70℃で加熱、撹拌下、濃塩酸5.4mLをゆっくりと滴下した。さらに100℃で1時間反応後、10℃以下に冷却し固体を濾取した。この固体をクロロホルム約100mLに分散し、濃アンモニア水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固し粗製固体を得た。この固体をシリカゲルカラム(クロロホルム/シクロヘキサン=1/1、1%トリエチルアミンを添加)で分離精製し、石油ベンジンから再結晶して微灰色の2−アミノ−7−オクチルBTBT 1.59g(収率、72%)を得た。
【0069】
続いて、2−アミノ−7−オクチルBTBT 1.47g(4mmol)にジクロロメタン60mLを加え、−15℃冷却下、トリフルオロボレート・エーテル錯体864mg、亜硝酸t‐ブチル504mgを滴下した。約1時間で反応温度を5℃まで上げた後、沃素1.6g、沃化カリウム1.32g、沃化テトラブチルアンモニウム100mgのジクロロメタン−THF混液(1:2)12mLの溶液を加えた。加熱環流下、8時間反応した後、クロロホルムで希釈し、10%チオ硫酸ナトリウム、5M水酸化ナトリウム、10%食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した。得られた濃褐色の粗製固体をシリカゲルカラム(クロロホルム/シクロヘキサン=1/1)で精製し、クロロホルム−メタノールから結晶化した。次いでリグロインから再結晶し、2−デシル−7−ヨードBTBT860mgを得た(収率、45%)。
【0070】
最後に、2−ヨード−7−オクチルBTBT 239mg(0.5mmol)にジオキサン8mL、2Mリン酸三カリウム0.5mL、4−(フェニルエチニル)フェニルホウ酸ピナコールエステル183mg(0.6mmol、アルドリッチ)を加え、アルゴンガスを20分間バブリングした後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム30mg(0.025mmol、東京化成工業),トリシクロヘキシルホスフィン13mg(0.045mmol、和光純薬工業)を加え、95℃で22時間加熱撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈し、10%食塩水で洗い、下層を濃縮乾固して粗製固体を得た。この固体をキシレンから再結晶し、2−オクチル−7−フェニルBTBT133mg(収率、63%)を得た。BTBTからの総収率は10.1%であった。
1H−NMR(CDCl
3):8.12ppm(d,J=1.5Hz,1H)、7.91ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.79ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.73ppm(s,1H)、7.69ppm(m,3H)、7.49ppm(t,J=7.4Hz.2H)、7.38ppm(tt,J=7.4and1.7Hz.1H)、7.29ppm(dd,J=8.0and1.5Hz,1H)、2.77ppm(t,J=7.6Hz,2H)、1.70ppm(m,2H)、1.41−1.24ppm(10H)、0.88ppm(t,J=6.9Hz,3H)
【0071】
以上のように、本発明の方法は、従来技術に比較して、出発物質であるBTBTから高収率で目的とする一般式(1)で表される化合物とすることができることが明らかである。