特許第6188757号(P6188757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6188757均一系触媒作用を利用したアルコール・アミノ化による一級アミンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6188757
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】均一系触媒作用を利用したアルコール・アミノ化による一級アミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/14 20060101AFI20170821BHJP
   C07C 211/07 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 211/09 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 211/12 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 215/08 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 217/08 20060101ALI20170821BHJP
   C07D 307/52 20060101ALI20170821BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20170821BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   C07C209/14
   C07C211/07
   C07C211/09
   C07C211/12
   C07C213/02
   C07C215/08
   C07C217/08
   C07D307/52
   B01J31/24 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-179212(P2015-179212)
(22)【出願日】2015年9月11日
(62)【分割の表示】特願2013-557047(P2013-557047)の分割
【原出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2016-6114(P2016-6114A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】11157288.9
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シャウプ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ブッシュハウス
(72)【発明者】
【氏名】マリオン クリスティーナ ブリンクス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シェルヴィース
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ パシエロ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン−ペーター メルダー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン メアガー
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−153660(JP,A)
【文献】 特開昭63−002958(JP,A)
【文献】 特表2014−514265(JP,A)
【文献】 特許第5808437(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0165337(US,A1)
【文献】 特表2011−513322(JP,A)
【文献】 特表2011−530408(JP,A)
【文献】 特開2004−307412(JP,A)
【文献】 Lamb, Gareth W.; Watson, Andrew J. A.; Jolley, Katherine E.;,Borrowing hydrogen methodology for the conversion of alcohols into N-protected primary amines and in situ deprotection,Tetrahedron Letters ,2009年,50(26),3374-3377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質が水の離脱下でアンモニアとアルコール・アミノ化されることにより式(−CH2−NH2)の少なくとも1の官能基を有する一級アミンを製造する方法であって、その際アルコール・アミノ化は均一系触媒作用により、少なくとも1の錯体触媒の存在において行われ、該錯体触媒は周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)
【化1】
[式中、
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
非置換の、または少なくとも単置換されたN、O、P、
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−飽和複素環式化合物、および
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択され、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んでいる、前記一級アミンを製造する方法。
【請求項2】
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換のC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールを表し、
Aは、
非置換のN、O、P、
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−飽和複素環式化合物、および
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換のメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレンを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記錯体触媒が一般式(V)
【化4】
[式中、
1、R2、R3、R4は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
非置換または少なくとも単置換されたN、P、
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−飽和複素環式化合物、および
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
1、Y2は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、以下からなる群:F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルから選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記錯体触媒が一般式(VI)
【化6】
[式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、非置換または少なくとも単置換されたN、P、
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−飽和複素環式化合物、および
N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択され、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記錯体触媒が、ルテニウムおよびイリジウムの群から選択された少なくとも1の元素ならびにビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンである燐ドナー配位子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記錯体触媒が、ルテニウムならびにビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンである燐ドナー配位子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記錯体触媒が、イリジウムならびにビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンである燐ドナー配位子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記出発物質が、式(−CH2−OH)の官能基を少なくとも2つ含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
無極性の溶媒の存在においてアルコール・アミノ化が実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記無極性の溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシロール、メシチレン、THF、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、MTBE、ジグリムおよび1,2−ジメトキシエタンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルコール・アミノ化は20℃〜250℃で、および0.1〜20MPaの絶対全圧で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルコール・アミノ化が塩基の添加の下で行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)
【化8】
[式中、
A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Y1、Y2およびY3が請求項1に挙げられた意味を有し、かつnは、0または1を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒を、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質のアンモニアによるアルコール・アミノ化により、均一系触媒作用を利用した、式(−CH2−NH2)の少なくとも1の官能基を有する一級アミンの製造のために用いる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒の存在において、水の離脱下でのアンモニアによる一級アルコールのアルコール・アミノ化によって一級アミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一級アミンは、たとえば溶剤、安定剤として、キレート剤の合成用に、プラスチック、阻害剤、界面活性物質、燃料添加剤製造時の製造用出発物質として(米国特許第3,275,554A号明細書、独国特許出願公開第2125039A号明細書、独国特許出願公開第3611230A号明細書)、界面活性剤、医薬品および農薬、エポキシ樹脂用硬化剤、ポリウレタン触媒、四級アンモニウム化合物製造用中間生成物、可塑剤、腐食防止剤、合成樹脂、イオン交換樹脂、織物用助剤、染料、加硫促進剤および/または乳化剤など、多くの多様な用途を有する貴重な生成物である。
【0003】
一級アミンは現在、不均一系触媒作用によってアルコールをアンモニアによってアルコール・アミノ化することによって製造される。国際公開第2008/006752A1号パンフレットには、二酸化ジルコニウムおよびニッケルを含有する不均一系触媒の存在において一級アルコールをアンモニアによって反応させることによってアミンを製造する方法が記述されている。国際公開第03/051508A1号パンフレットは、特別な不均一系Cu/Ni/Zr/Sn触媒を使用したアルコールのアミノ化方法に関する。欧州特許出願公開第0 696 572A1号明細書により、アンモニアおよび水素によりアルコールをアミノ化するための、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ジルコニウムおよび酸化モリブデンを含有する不均一系触媒が公知である。上記文書での反応は、温度が150℃〜210℃の範囲内でおよびアンモニア圧力が30bar〜200barの範囲内で実施される。
【0004】
均一系触媒作用を利用したモノアルコールと一級アミンおよび二級アミンとのアミノ化は1970年代から知られているが、その場合主にルテニウム触媒またはイリジウム触媒が記述されている。均一系触媒作用を利用したアミノ化は、不均一系触媒作用を利用した反応と比較して、格段に低温である100℃から150℃で進行する。アルコールと一級アミンおよび二級アミンとの反応は、たとえば以下の刊行物、米国特許第3708539号明細書;Y. Watanabe, Y. Tsuji, Y. Ohsugi, Tetrahedron Lett. 1981, 22, 2667−2670; S. Baehn, S. Imm, K. Mevius, L. Neubert, A. Tillack, J. M. J. Williams, M. Beller, Chem. Eur. J. 2010, DOI:10.1002/chem.200903144;A. Tillack, D. Hollmann, D. Michalik, M. Beller, Tetrahedron Lett. 2006, 47, 8881−8885;D. Hollmann, S. Baehn, A. Tillack, M. Beller, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 8291−8294;A. Tillack, D. Hollmann, K. Mevius, D. Michalik, S. Baehn, M. Beller, Eur. J. Org. Chem. 2008, 4745−4750;M. H. S. A. Hamid, C. L. Allen, G. W. Lamb, A. C. Maxwell, H. C. Maytum, A. J. A. Watson, J. M. J. Williams, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 1766−1774;O. Saidi, A. J. Blacker, M. M. Farah, S. P. Marsden, J. M. J. Williams, Chem. Commun. 2010, 46, 1541−1543;A. Tillack, D. Hollmann, D. Michalik, M. Beller, Tet. Lett. 2006, 47, 8881−8885;A. Del Zlotto, W. Baratta, M. Sandri, G. Verardo, P. Rigo, Eur. J. Org. Chem. 2004, 524−529;A. Fujita, Z. Li, N. Ozeki, R. Yamaguchi, Tetrahedron Lett. 2003, 44, 2687−2690;Y. Watanabe, Y. Morisaki, T. Kondo, T. Mitsudo J. Org. Chem. 1996, 61, 4214−4218, B. Blank, M. Madalska, R. Kempe, Adv.Synth. Catal. 2008, 350, 749−750, A. Martinez−Asencio, D. J. Ramon, M. Yus, Tetrahedron Lett. 2010, 51, 325−327に述べられている。前述のシステムにおける最大の短所は、これらの方法によってアルコールの一級アミンおよび二級アミンによるアミノ化が二級アミンおよび三級アミンの生成下でのみ可能であることである。アルコールとアンモニアとの反応は、経済的に最も魅力的なアミノ化反応であるが、これらの論文には記述されていない。
【0005】
S. Imm, S. Baehn, L. Neubert, H. Neumann, M. Beller, Angew. Chem. 2010, 122, 8303−8306およびD. Pingen, C. Muller, D. Vogt, Angew. Chem. 2010, 122, 8307−8310には、ルテニウム触媒を使用して、シクロヘキサノールとアンモニアのような、均一系触媒作用を利用した二級アルコールのアミノ化が記述されている。欧州特許出願公開第0 320 269A2号明細書では、一級アリルアミンを得ながら、パラジウム触媒作用を利用した一級アリルアルコールのアンモニアによるアミノ化が開示されている。国際公開第2010/018570号パンフレットおよびC. Gunanathan, D. Milstein, Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8661−8664には、特別なルテニウム触媒を使用してアクリジンベースのピンセット型配位子による一級アルコールとアンモニアとの一級アミンへのアミノ化が記述されている。
【0006】
R. Kawahara, K.l. Fujita, R. Yamaguchi, J. Am. Chem. Soc. DOI:10.1021/ja107274wには、配位子としてCp*(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)およびアンモニアを有するイリジウム触媒を使用した一級アルコールのアンモニアによるアミノ化が記述されている。ここに記述された触媒システムを使用した一級アルコールとアンモニアの反応において、所望されない三級アミンが得られてしまう。
【0007】
欧州特許出願公開第0 234 401A1号明細書には、ルテニウムカルボニル化合物の存在においてジエチレングリコールとアンモニアとの反応が記述されている。欧州特許出願公開第0 234 401A1号明細書に記述された方法により、モノアミノ化生成物(モノエタノールアミン)が生成される。しかし不利なことには、副生成物として二級および三級アミン(ジ−およびトリエタノールアミン環状生成物(N−(ヒドロキシエチル)ピペラジンおよびΝ,Ν’−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン)が形成される。
【0008】
従来技術には均一系触媒作用を利用した一級アルコールの一級アミンへの転換方法が記述されているが、それにもかかわらず、より簡単で容易に入手可能なホスファン配位子による別の改良された製造方法に対して大きな需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,275,554A号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2125039A号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3611230A号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/006752A1号
【特許文献5】国際公開第03/051508A1号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0 696 572A1号明細書
【特許文献7】米国特許第3708539号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0 320 269A2号明細書
【特許文献9】国際公開第2010/018570号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 234 401A1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y. Watanabe, Y. Tsuji, Y. Ohsugi, Tetrahedron Lett. 1981, 22, 2667−2670
【非特許文献2】S. Baehn, S. Imm, K. Mevius, L. Neubert, A. Tillack, J. M. J. Williams, M. Beller, Chem. Eur. J. 2010, DOI:10.1002/chem.200903144
【非特許文献3】A. Tillack, D. Hollmann, D. Michalik, M. Beller, Tetrahedron Lett. 2006, 47, 8881−8885
【非特許文献4】D. Hollmann, S. Baehn, A. Tillack, M. Beller, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 8291−8294
【非特許文献5】A. Tillack, D. Hollmann, K. Mevius, D. Michalik, S. Baehn, M. Beller, Eur. J. Org. Chem. 2008, 4745−4750
【非特許文献6】M. H. S. A. Hamid, C. L. Allen, G. W. Lamb, A. C. Maxwell, H. C. Maytum, A. J. A. Watson, J. M. J. Williams, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 1766−1774
【非特許文献7】O. Saidi, A. J. Blacker, M. M. Farah, S. P. Marsden, J. M. J. Williams, Chem. Commun. 2010, 46, 1541−1543
【非特許文献8】A. Tillack, D. Hollmann, D. Michalik, M. Beller, Tet. Lett. 2006, 47, 8881−8885
【非特許文献9】A. Del Zlotto, W. Baratta, M. Sandri, G. Verardo, P. Rigo, Eur. J. Org. Chem. 2004, 524−529
【非特許文献10】A. Fujita, Z. Li, N. Ozeki, R. Yamaguchi, Tetrahedron Lett. 2003, 44, 2687−2690
【非特許文献11】Y. Watanabe, Y. Morisaki, T. Kondo, T. Mitsudo J. Org. Chem. 1996, 61, 4214−4218
【非特許文献12】B. Blank, M. Madalska, R. Kempe, Adv.Synth. Catal. 2008, 350, 749−750
【非特許文献13】A. Martinez−Asencio, D. J. Ramon, M. Yus, Tetrahedron Lett. 2010, 51, 325−327
【非特許文献14】S. Imm, S. Baehn, L. Neubert, H. Neumann, M. Beller, Angew. Chem. 2010, 122, 8303−8306
【非特許文献15】D. Pingen, C. Muller, D. Vogt, Angew. Chem. 2010, 122, 8307−8310
【非特許文献16】C. Gunanathan, D. Milstein, Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8661−8664
【非特許文献17】R. Kawahara, K.l. Fujita, R. Yamaguchi, J. Am. Chem. Soc. DOI:10.1021/ja107274w
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、水の離脱下で均一系触媒作用を利用した、一級アルコールのアンモニアによるアルコール・アミノ化による一級アミンの製造方法を提供することであり、ここでは錯体触媒がアクリジンベースでは使用されず、二級および三級アミンならびに環状アミンのような所望されない副生成物の生成が大幅に回避される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質が水の離脱下でアンモニアとアルコール・アミノ化されることにより式(−CH2−NH2)の少なくとも1の官能基を有する一級アミンを製造する方法によって解決され、その際アルコール・アミノ化は均一系触媒作用により、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)
【化1】
[式中、
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル基、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
i)非置換または少なくとも単置換されたN、O、P、C1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素およびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択されており、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
または
ii)式IIまたはIII
【化2】
[式中、
m、qは、互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
8、R9は、互いに独立に、C1−C10−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7およびN(R72の群(ここで、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択され、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は、単結合、NH、NR10、O、SまたはCR1112を表し、
10は、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリール、C5−C14−アリールオキシまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表す]の架橋基を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されており、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含む少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。
【発明の効果】
【0013】
驚くべきことに、本発明に従った方法で使用された、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒により、従来技術に記述されている方法と比較して、著しく優れた収率で一級アミンが得られることが確認された。加えてさらに、二級および三級アミンならびに環状アミンのような望ましくない副生成物の形成は大幅に抑止される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
出発物質
本発明による方法では、出発物質として式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有するアルコールが使用される。
【0015】
出発物質としては、上述した前提条件を満たすあらゆるアルコールが実際に適している。アルコールは直鎖、分岐または環式であってよい。これらのアルコールは、さらに、アルコール・アミノ化の反応条件下で不活性な挙動を示す置換基たとえばアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)を担持していてよい。出発物質として、本発明によりモノアルコールの他に、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有するジオール、トリオール、ポリオールおよびアルカノールアミンも使用してよい。
【0016】
本発明により使用されるモノアルコールは、ただ1つの、式(−CH2−OH)の官能基を有するアルコールである。本発明により使用し得るジオール、トリオールおよびポリオールは式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する官能基と1つまたは2つ以上の別のヒドロキシル基を有するアルコールである。本発明により使用し得るアルカノールアミンは、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基と別の一級、二級、または三級の少なくとも1のアミノ基を有する化合物である。
好適なアルコールはたとえば一般式(IV)
【化3】
[式中、
aは、水素、非置換または少なくとも単置換されたC1−C30−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールおよびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C14−ヘテロアリールの群(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7またはN(R72、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールおよびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C14−ヘテロアリールからなる群から選択され、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択される]である。
【0017】
好ましくはたとえば以下のアルコール:メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルヘキサノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェニル−エタノール、2−(p−メトキシフェニル)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシメチルフラン、ヒドロキシメチルフルフラール、乳酸およびセリンがアミノ化される。
【0018】
出発物質として、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有するすべての公知のジオールが使用され得る。出発物質として本発明による方法に使用され得るジオールはたとえば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,4−ブタンジオール(1,4−ブチレングリコール)、1,2−ブタンジオール(1,2−ブチレングリコール)、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、ポリエチレングリコール、1,2−ポリプロピレングリコールおよび1,3−ポリプロピレングリコールのようなポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ジエタノールアミン、1,4−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ジイソプロパノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、2,5−(ジメタノール)フラン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよびN−メチルジエタノールアミンである。2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランは2,5−(ジメタノール)フランとも呼ばれる。
【0019】
好ましくは、2つの、式(−CH2−OH)の官能基を有するジオールである。
【0020】
特に好ましいジオールは、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,4−ブタンジオール(1,4−ブチレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ポリプロピレングリコールおよび1,3−ポリプロピレングリコールのようなポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、2,5−(ジメタノール)フランおよびN−メチルジエタノールアミンである。
【0021】
出発物質として、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有するすべての公知のトリオールが使用され得る。出発物質として本発明による方法に使用され得るトリオールはたとえば、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびトリエタノールアミンである。
【0022】
好ましくは少なくとも2つの、式(−CH2−OH)の官能基を有するトリオールである。
【0023】
特に好ましいトリオールは、グリセリンおよびトリエタノールアミンである。
【0024】
出発物質として、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有するすべての公知のポリオールが使用され得る。出発物質として本発明による方法に使用され得るポリオールはたとえば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(ペンタエリトリトール)、ソルビトール、イノシトール、一級ヒドロキシル基(−CH2−OH)を持つ糖および重合体、たとえばグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、デオキシリボース、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミン、フコース、ラムノース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マルトースおよびアミロース、セルロース、澱粉およびキサンタンである。
【0025】
好ましくは少なくとも2つの、式(−CH2−OH)の官能基を有するポリオールである。
【0026】
特に好ましいポリオールは、セルロース、ポリビニルアルコールおよびグルコースである。
【0027】
出発物質として、少なくとも1つの一級ヒドロキシル基(−CH2−OH)を有するすべての公知のアルカノールアミンが使用され得る。出発物質として本発明による方法に使用され得るアルカノールアミンはたとえば、モノアミノエタノール、3−アミノプロパン−1−オール、2−アミノプロパン−1−オール、4−アミノブタン−1−オール、2−アミノブタン−1−オール、3−アミノブタン−1−オール、5−アミノペンタン−1−オール、2−アミノペンタン−1−オール、6−アミノヘキサン−1−オール、2−アミノヘキサン−1−オール、7−アミノヘプタン−1−オール、2−アミノヘプタン−1−オール、8−アミノオクタン−1−オール、2−アミノオクタン−1−オール、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−ブチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−プロパンジアミン、3−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、Ν,Ν−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチル−イソプロピルアミンおよびN,N−ジエチルエタノールアミンである。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの一級ヒドロキシル基(−CH2−OH)および式(−CH2−NH2)の少なくとも1つの一級アミノ基を有するアルカノールアミンである。
【0029】
特に好ましいアルカノールアミンはモノアミノエタノールである。
【0030】
錯体触媒
本発明による方法では、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素(IUPACに基づく命名法)および一般式(I)
【化4】
[式中、
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
i)非置換または少なくとも単置換されたN、O、P、C1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素およびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
または
ii)式IIまたはIII
【化5】
[式中、
m、qは、互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
8、R9は、互いに独立に、C1−C10−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7およびN(R72の群(ここで、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択され、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は、単結合、NH、NR10、O、SまたはCR1112を表し、
10は、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリール、C5−C14−アリールオキシまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表す]の架橋基を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されており、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒が使用される。
【0031】
Aは、本発明によれば、架橋基である。Aが、非置換または少なくとも単置換されたC1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、C3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素および、C5−C6−ヘテロ芳香族化合物および式(II)または(III)の架橋基から選択される場合において、(n=0)の場合には、架橋基の2つの水素原子が、隣接した置換基Y1およびY2への結合に代えられている。(n=1)の場合には、架橋基の3つの水素原子が隣接する置換基Y1、Y2およびY3への結合に代えられている。
【0032】
AがP(燐)であれば、燐は(n=0)の場合に隣接する置換基Y1およびY2との2つの結合を、およびC1−C4−アルキルおよびフェニルからなる群から選択された置換基との結合を形成する。(n=1)の場合、燐は隣接する置換基Y1、Y2およびY3と3つの結合を形成する。
【0033】
AがN(窒素)であれば、窒素は(n=0)の場合に隣接する置換基Y1およびY2と2つの結合を、およびC1−C4−アルキルおよびフェニルからなる群から選択された置換基との1つの単結合を形成する。(n=1)の場合、窒素は隣接する置換基Y1、Y2およびY3と3つの結合を形成する。
【0034】
AがO(酸素)であれば、n=0である。酸素は隣接する置換基Y1およびY2と2つの結合を形成する。
【0035】
周期系第8および9族の元素は、鉄、コバルト、ルテニウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウムを含んでいる。ルテニウムおよびイリジウムから選択された少なくとも1の元素を含む錯体触媒が好ましい。
【0036】
好ましい一実施形態では、本発明による方法は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒の存在において実施され、
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換のC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールを表し、
Aは、
i)非置換のC1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素およびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基を表し、
または
ii)式(II)または(III)
【化6】
[式中、
m、qは、互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
8、R9は、互いに独立に、C1−C10−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7およびN(R72の群(ここで、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択され、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は単結合、NH、NR10、O、SまたはCR1112を表し、
10は、非置換のC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールを表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換のC1−C10−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリール、C5−C14−アリールオキシまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールを表す]の架橋基を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換のメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレンを表す]。
【0037】
好ましい別の一実施形態では、本発明による方法は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(V)
【化7】
[式中、
1、R2、R3、R4は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
i)非置換または少なくとも単置換されたN、O、P、C1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素およびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
または
ii)式IIまたはIII
【化8】
[式中、
m、qは、互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
8、R9は、互いに独立に、C1−C10−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7およびN(R72の群(ここで、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択され、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は、単結合、NH、NR10、O、SまたはCR1112を表し、
10は、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリール、C5−C14−アリールオキシまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表す]の架橋基を表し、
1、Y2は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されており、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。
【0038】
好ましい別の一実施形態では、本発明による方法は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(VI)
【化9】
[式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、非置換または少なくとも単置換されたN、P、C1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素およびN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されており、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。
【0039】
好ましい別の一実施形態では、本発明による方法は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(V)
[式中、
1、R2、R3、R4は、互いに独立に、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはメシチルを表し、
Aは、
i)メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセンの群から選択された架橋基であるか、
または
ii)式(VII)または(VIII)
【化10】
[式中、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は、単結合、NH、O、SまたはCR1112を表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換のC1−C10−アルキルを表す]の架橋基を表し、
1、Y2は、互いに独立に、単結合、メチレンまたはエチレンを表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。
【0040】
本発明による方法は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(IX)または(X)
【化11】
[式中、
m、q、R1、R2、R3、R4、R8、R9、X1、X2およびX3は、前述の定義および優先が適用される]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。
【0041】
別の特に好ましい一実施形態では、本発明による方法は、ルテニウムおよびイリジウムの群から選択された少なくとも1の元素ならびに、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、2,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン(dcpe)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xantphos)、1,1’−[2,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル]ビス[1,1−ジフェニル]ホスフィン(t−Bu−Xantphos)、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンおよび1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン(Triphos)の群から選択された少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ、少なくとも1の錯体触媒の存在において実施される。さらに好ましくは、燐ドナー配位子は1,1’−[2,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4,5−ジイル]ビス[1,1−ジフェニル]ホスフィン(t−Bu−Xantphos)である。
【0042】
別のさらに特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、ルテニウムならびに4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xantphos)、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニル−ホスフィンおよび1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン(Triphos)の群から選択された少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒の存在において実施される。
【0043】
別の特に好ましい一実施形態では、本発明による方法は、イリジウムならびに4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xantphos)、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンおよび1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン(Triphos)の群から選択された少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒の存在において実施される。
【0044】
本発明の趣旨において、C1−C10−アルキルとしては、分岐、非分岐、飽和、不飽和の基が理解されることとする。好ましくは炭素原子数が1〜6のアルキル基(C1−C6−アルキル)である。より好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基(C1−C4−アルキル)である。
【0045】
飽和アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基およびヘキシル基である。
【0046】
不飽和アルキル基(アルケニル基、アルキニル基)は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基およびプロピニル基である。
【0047】
1−C10−アルキル基は、非置換であっても、または、F、Cl、Br、ヒドロキシ基(OH)、C1−C10−アルコキシ基、C5−C10−アリールオキシ基、C5−C10−アルキルアリールオキシ基、N、O、S、Oxoから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールオキシ基、C3−C10−シクロアルキル基、フェニル基、N、O、Sから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール基、N、O、Sから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロシクリル基、ナフチル基、アミノ基、C1−C10−アルキルアミノ基、C5−C10−アリールアミノ基、N、O、Sから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリールアミノ基、C1−C10−ジアルキルアミノ基、C10−C12−ジアリールアミノ基、C10−C20−アルキルアリールアミノ基、C1−C10−アシル基、C1−C10−アシルオキシ基、NO2、C1−C10−カルボキシ基、カルバモイル基、カルボキサミド基、シアノ基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、スルフィニル基、スルフィニルアミノ基、チオール基、C1−C10−アルキルチオール基、C5−C10−アリールチオール基またはC1−C10−アルキルスルホニル基からなる群から選択された1以上の置換基と置換されていてもよい。
【0048】
1−C10−アルキルに関する上記の定義は、C1−C30−アルキルおよびC1−C6−アルカンに準用される。
【0049】
3−C10−シクロアルキルとは、本願では飽和、不飽和の単環式および多環式の基が理解されることとする。C3−C10−シクロアルキルの例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基である。シクロアルキル基は、非置換であっても、または上記の、C1−C10−アルキルで定義された群から選択された1以上の置換基と置換されていてもよい。
【0050】
3−C10−シクロアルキルに関する上記の定義は、C3−C10−シクロアルカンに準用される。
【0051】
本願の趣旨において、C5−C14−アリールとは炭素数5〜14芳香族環系であると理解される。芳香族環系は、単環式または二環式であってよい。アリール基の例は、フェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルのようなナフチルである。アリール基は、上記C1−C10−アルキルで定義されたように、非置換であっても、1以上の置換基と置換されていてもよい。
【0052】
上で挙げられたC5−C14−アリールの定義は、C5−C14−芳香族炭化水素にも相応に適用される。
【0053】
本願の趣旨において、C5−C10−ヘテロアリールとはN、OおよびSの群から選択された少なくとも1のヘテロ原子を含む複素芳香族系と理解される。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であってよい。窒素が環原子の場合、本発明は含窒素ヘテロアリールのN−酸化物も含む。ヘテロアリールの例は、チエニル、ベンゾチエニル、1−ナフトチエニル、チアントレニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリニル、キノリニル、アクリジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、ピペリジニル、カルボリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリルである。ヘテロアリール基は、上記C1−C10−アルキルで定義されたように、非置換であっても、1以上の置換基と置換されていてもよい。
【0054】
5−C10−ヘテロアリールに関する上記の定義は、C5−C6−ヘテロ芳香族化合物に準用される。
【0055】
本願の趣旨において、N、OおよびSの群からの少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリルとは5〜10員環であると理解される。環系は単環または二環式であってよい。好適な複素環系の例は、ピペリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、ピペラジニル、インドリニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニルおよびテトラヒドロピラニルである。
【0056】
3−C10−ヘテロシクリルに関する上記の定義は、C3−C10飽和複素環式化合物に準用される。
【0057】
アルコール・アミノ化
均一系触媒は、直接その活性型においても、通常の前段階を前提として対応する配位子を添加しながら反応条件下においても、生成され得る。通常の前段階はたとえば[Ru(p−シメン)Cl22、[Ru(ベンゼン)Cl2n、[Ru(CO)Cl2n、[Ru(CO)3Cl22[Ru(COD)(アリル)]、[RuCl3*H2O]、[Ru(アセチルアセトネート)3]、[Ru(DMSO)4Cl2]、[Ru(PPh33(CO)(H)Cl]、[Ru(PPh33(CO)Cl2]、[Ru(PPh33(CO)(H)2]、[Ru(PPh33Cl2]、[Ru(シクロペンタジエニル)(PPh32Cl]、[Ru(シクロペンタジエニル)(CO)2Cl]、[Ru(シクロペンタジエニル)(CO)2H]、[Ru(シクロペンタジエニル)(CO)22、[Ru(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(CO)2Cl]、[Ru(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(CO)2H]、[Ru(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(CO)22、[Ru(インデニル)(CO)2Cl]、[Ru(インデニル)(CO)2H]、[Ru(インデニル)(CO)22、ルテノセン、[Ru(binap)Cl2]、[Ru(ビピリジン)2Cl222O]、[Ru(COD)Cl22、[Ru(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(COD)Cl]、[Ru3(CO)12]、[Ru(テトラフェニルヒドロキシ−シクロペンタジエニル)(CO)2H]、[Ru(PMe34(H)2]、[Ru(PEt34(H)2]、[Ru(PnPr34(H)2]、[Ru(PnBu34(H)2]、[Ru(PnOctyl34(H)2]、[IrCl3*H2O]、KIrCl4、K3IrCl6、[Ir(COD)Cl]2、[Ir(シクロオクテン)2Cl]2、[Ir(エテン)2Cl]2、[Ir(シクロペンタジエニル)Cl22、[Ir(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Cl22、[Ir(シクロペンタジエニル))(CO)2]、[Ir(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(CO)2]、[Ir(PPh32(CO)(H)]、[Ir(PPh32(CO)(Cl)]、[Ir(PPh33(Cl)]である。
【0058】
均一系触媒作用を利用したとは、本願の趣旨において、錯体触媒の触媒活性部分が少なくとも部分的に液状反応媒体中に溶解して存在していることとして理解される。均一系触媒作用の利用とは、本発明の趣旨において、錯体触媒の触媒活性部分が少なくとも部分的に液状反応媒体中に溶解して存在していることとして理解される。好ましい実施形態において、本方法で使用される錯体触媒は、それぞれ液状反応媒体中の総量を基準として、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは99%超が液状反応媒体中に溶解しており、最も好ましくは、錯体触媒は液状反応媒体中に全面的に溶解している(100%)。
【0059】
触媒の金属成分、好ましくは、ルテニウムまたはイリジウムの量は、それぞれ、液状反応媒体全体を基準として、一般に0.1〜5000質量ppmである。
【0060】
反応は、液相にて、一般に温度20℃〜250℃で行われる。好ましくは本発明による方法は温度範囲100℃〜200℃、特に好ましくは110℃〜160℃の範囲内で実施される。
【0061】
反応は、一般に、0.1〜20MPaの絶対全圧(これは、反応温度時の溶媒の固有圧力であっても、ガスたとえば窒素、アルゴンまたは水素の圧力であってもよい)にて実施可能である。好ましくは、本発明による方法は、0.5〜15MPaの絶対全圧にて、特に好ましくは1〜10MPaの絶対全圧にて実施される。
【0062】
平均反応時間は、通常15分〜100時間である。
【0063】
アミノ化剤(アンモニア)は、アミノ化されるヒドロキシル基に関して、化学量論量、化学量論を下回る量または化学量論を上回る量で使用することが可能である。
【0064】
好ましい実施形態において、アンモニアは、出発物質中の反応されるヒドロキシル基1モル当たり1.5倍〜250倍、好ましくは2倍〜100倍、特に2倍〜10倍の過剰モル量で使用される。より高い過剰量のアンモニアの使用も可能である。
【0065】
本発明による方法は、溶媒中でも溶媒なしでも実施し得る。溶剤としては、純粋な形もしくは混合物の形で使用可能な極性および無極性溶剤が適している。たとえば、本発明による方法には、無極性溶剤のみまたは極性溶剤のみを使用することができる。2またはそれを上回る数の極性の溶媒の混合または2またはそれを上回る数の無極性の溶媒の混合、または1またはそれを上回る数の極性の溶媒と1またはそれを上回る数の無極性溶媒の混合も可能である。また、生成物も、純粋な形の溶剤としてまたは極性溶剤または無極性溶剤との混合物の形の溶剤として使用可能である。
【0066】
無極性の溶媒として、たとえばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシロールおよびメシチレンのような飽和のおよび不飽和の炭化水素、およびTHF、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、MTBE(tert−ブチルメチルエーテル)、ジグリムおよび1,2−ジメトキシエタンのような直鎖状および環状エーテルが適している。好ましくはトルエン、キシロールまたはメシチレンが使用される。生成物の極性により、生成物も無極性の溶媒として反応のために使用され得る。
【0067】
極性の溶媒として、たとえば水、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、tert−アミルアルコールおよびアセトニトリルが適している。好ましくは水が使用される。水は、反応の際に反応水が生じる場合反応の前に加えられても、反応の後に追加の反応水として加えられてもよい。生成物の極性によっては、生成物も極性の溶媒として反応のために使用され得る。別の好ましい溶媒はtert−アミルアルコールである。
【0068】
液相での反応には、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質であるアンモニアが、場合により1以上の溶剤および、錯体触媒と共に反応器に装入される。
【0069】
アンモニア、出発物質、必要に応じて溶媒および錯体触媒の供給は、その際互いに同時にまたは別々に行なわれ得る。その際、反応は、連続式、セミバッチ式、バッチ式または溶剤としての生成物中に逆混合されるかあるいは逆混合されずに直通式に実施可能である。
【0070】
本発明による方法には、原理的に、所定の温度および所定の圧力での気/液反応に基本的に適したあらゆる反応器が使用可能である。気/液および液/液反応系向けの適切な標準反応器は、たとえば、K.D.Henkel, ”Reactor Types and Their Industrial Applications”, in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2005, Wiley−VCH VerlagGmbH & Co. KGaA, DOI:10.1002/14356007.b04_087,3.3章”Reactors for gas−liquidreactions”に示されている。一例として、攪拌槽型反応器、管型反応装置または気泡塔反応器を挙げておくこととする。
【0071】
アミノ化反応では、アンモニアと共に出発物質の少なくとも1つの一級ヒドロキシル基(−CH2−OH)が、一級アミノ基(−CH2−NH2)と置換され、その際それぞれ置換されたヒドロキシル基のモル当り、1モルの反応水が生じる。
【0072】
こうして一級ヒドロキシル基(−CH2−OH)を1つだけ有するアルカノールアミンの置換の際に、相応するジアミンが生じる。モノアミノエタノールの置換により、相応する1,2−エチレンジアミンが生じる。
【0073】
式(−CH2−OH)の官能基の他に別のヒドロキシル基を有する(ジオール)出発物質が反応する際、好ましくは1つの一級アルコール基(−CH2−OH)のみがアミノ化される。1,2−エチレングリコールの置換により、相応するモノエタノールアミンが生じる。両方のヒドロキシル基が1,2−エチレンジアミンを獲得しながらアミノ化されることも可能である。
【0074】
式(−CH2−OH)の官能基の他に2つの別のヒドロキシル基を有する(トリオール)出発物質の反応の際、好ましくは1つの一級アルコール基(−CH2−OH)のみがアミノ化される。2つのまたは3つのヒドロキシル基がアンモニアと、相応する一級ジアミンまたはトリアミンを置換することも可能である。一級モノアミン、ジアミンまたはトリアミンの生成はその際使用されるアンモニアの量と反応条件によって制御され得る。
【0075】
式(−CH2−OH)の官能基が3つを超えた別のヒドロキシル基を有する(ポリオール)出発物質の反応の際、好ましくは1つの一級アルコール基(−CH2−OH)のみがアミノ化される。2つ、3つまたはより多くのヒドロキシル基がアンモニアと、相応する一級モノアミン、ジアミン、トリアミンまたはポリアミンを置換することも可能である。一級モノアミン、ジアミン、トリアミンまたはポリアミンの生成はその際使用されるアンモニアの量と反応条件によって制御され得る。
【0076】
置換の際に生じる反応生成物は、通常相応するアミノ化生成物、場合により1以上の溶媒、錯体触媒、場合により置換されていない出発物質およびアンモニアならびに発生した反応水を含む。
【0077】
反応生成物から、場合により存在する余剰のアンモニア、場合により存在する溶媒、錯体触媒および反応水が除去される。得られたアミノ化生成物はさらに処理され得る。余剰のアンモニア、錯体触媒、場合により溶媒および場合により置換されていない出発物質は、アミノ化反応に返送可能である。
【0078】
アミノ化反応が溶媒なしで実施される場合、均一系錯体触媒は反応後に生成物中に溶解する。これは生成物中に残存するかまたは好適な方法で生成物から分離され得る。触媒の分離手段は、たとえば生成物と混合不可能な、触媒が配位子の好適な選択により生成物でよりよく溶解する溶媒による洗浄である。必要に応じて触媒は複数段階の抽出によって生成物から取り除かれる。抽出手段として、好ましくは目標反応のためにも好適な溶媒、トルエン、ベンゼン、キシロール、たとえばヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのようなアルカン、およびジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランのような非環式のまたは環式のエーテルが使用され、この溶媒は濃縮後に抽出された触媒と共に再び置換に使用され得る。触媒の除去は好適な吸収材料によっても可能である。反応が水と混合不可能な溶媒中で行われる場合、分離は生成物相に水を加えることによっても可能である。その際に触媒が好ましくは溶媒中に溶解している場合、触媒は溶媒と水性の生成物相から分離され、および必要に応じて再度使用される。これは好適な配位子を選択することによって引き起こされ得る。結果として生じる水性のモノアミン、ジアミン、トリアミン、またはポリアミンは、直接工業用アミン溶液として使用され得る。アミノ化生成物は、触媒の蒸留によって分離することも可能である。
【0079】
反応が溶媒中で行われる場合、溶媒はアミノ化生成物と混合可能であり、反応後に蒸留によって分離可能である。アミノ化生成物または出発物質との非混和領域を有する溶媒も使用可能である。このために好適な溶媒として、たとえばトルエン、ベンゼン、キシロール、たとえばヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのようなアルカン、および、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンのような直鎖状または環状のエーテルが挙げられる。好適なホスフィン配位子を選択することにより、触媒は好ましくは溶媒相に、つまり生成物を含んでいない相中に溶解する。ホスフィン配位子は、触媒がアミノ化生成物中に溶解するようにも選択され得る。その場合、アミノ化生成物は触媒の蒸留によって分離される。
【0080】
溶剤は、反応条件下でも出発物質および生成物と混じり合うことができ、冷却後に初めて、大半の触媒を含有した第2の液相を形成することができる。この特性を示す溶媒として、たとえばトルエン、ベンゼン、キシロール、たとえばヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのようなアルカンが挙げられるだろう。さらに触媒は溶媒と共に分離され、再度使用され得る。生成物相はこの変形例では水とも置き換え得る。生成物中に含まれる触媒の一部は続いてたとえばポリアクリル酸およびその塩、スルホン化ポリスチレンおよびその塩、活性炭、モンモリロナイト、ベントナイトならびにゼオライトのような好適な吸収材料によって分離されるかまたは生成物中に放置されてもよい。
【0081】
アミノ化反応は2相でも実施され得る。2相の反応手順による実施形態では無極性の溶媒として特にトルエン、ベンゼン、キシロール、たとえばヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのようなアルカンが適しており、親油性のホスフィン配位子との組み合わせで遷移金属触媒で行なわれ、これにより遷移金属触媒は無極性相中で集積される。生成物ならびに反応水および場合によって置換されなかった出発物質がこの化合物が集積された第2相を形成しているこの実施形態では、触媒の大部分が簡単な相分離によって生成物相から分離され、および再使用され得る。
【0082】
不揮発性の副生成物または置換されていない出発物質または反応時に生じたまたは反応後に抽出を向上させるために加えられた水が所望されない場合は、これらを問題なく生成物から蒸留によって分離することができる。
【0083】
また、反応時に形成された水を反応混合物から連続的に除去することも有利なことがある。反応水は、直接に蒸留によって反応混合物から除去するか、または適切な溶剤(共留剤)の添加下で共沸混合物としておよび水分離器を使用して分離するか、あるいは脱水助剤の添加によって除去することが可能である。
【0084】
塩基の添加は、生成物形成に好適な効果を及ぼすことがある。ここで、適切な塩基として、使用される金属触媒を基準として、0.01〜100モル当量の量にて使用可能な、水酸化アルカリ、アルカリ土類水酸化物、アルカリアルコレート、アルカリ土類アルコレート、アルカリ炭酸塩およびアルカリ土類炭酸塩を挙げておくこととする。
【0085】
本発明の別の対象は、周期系第8および9族から選択された少なくとも1の元素ならびに一般式(I)
【化12】
[式中、
nは、0または1を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C4−アルキルジフェニルホスフィン(−C1−C4−アルキル−P(フェニル)2)、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
Aは、
i)非置換または少なくとも単置換されたN、O、P、C1−C6−アルカン、C3−C10−シクロアルカン、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10飽和複素環式化合物、C5−C14−芳香族炭化水素またはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C6−ヘテロ芳香族化合物の群から選択された架橋基(ここで、置換基は、以下からなる群:C1−C4−アルキル、フェニル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7またはN(R72からなる群から選択され、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表し、
または
ii)式IIまたはIII
【化13】
[式中、
m、qは、互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
8、R9は、互いに独立に、C1−C10−アルキル、F、Cl、Br、OH、OR7、NH2、NHR7およびN(R72の群(ここで、R7はC1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)から選択され、
1、X2は、互いに独立に、NH、OまたはSを表し、
3は、単結合、NH、NR10、O、SまたはCR1112を表し、
10は、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリールまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表し、
11、R12は、互いに独立に、非置換または少なくとも単置換されたC1−C10−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C3−C10−シクロアルキル、C3−C10−シクロアルコキシ、N、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC3−C10−ヘテロシクリル、C5−C14−アリール、C5−C14−アリールオキシまたはN、OおよびSから選択された少なくとも1のヘテロ原子を含むC5−C10−ヘテロアリール(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH2およびC1−C10−アルキルからなる群から選択されている)を表す]の架橋基を表し、
1、Y2、Y3は、互いに独立に、単結合、非置換または少なくとも単置換されたメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン(ここで、置換基は、F、Cl、Br、OH、OR7、CN、NH2、NHR7、N(R72およびC1−C10−アルキルからなる群から選択され、R7は、C1−C10−アルキルおよびC5−C10−アリールから選択されている)を表す]の少なくとも1の燐ドナー配位子を含んだ錯体触媒の使用である。
これは均一系触媒作用を利用した、式(−CH2−NH2)の少なくとも1の官能基を有する一級アミンの製造のためであり、これは式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質のアンモニアによるアルコール・アミノ化による。
【0086】
錯体触媒を均一系触媒作用を利用した、式(−CH2−OH)の少なくとも1の官能基を有する出発物質のアンモニアによるアルコール・アミノ化によって式(−CH2−NH2)の少なくとも1の官能基を有する一級アミンの製造のために使用することには、本発明による方法に記述された定義および優先が適用される。
【0087】
本発明は以下の実施例によって明確に説明されるが、それに限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
実施例
本発明による触媒作用を利用したアンモニアによるアルコールのアミノ化のための通則:
配位子L、金属塩M、溶媒および提示されたアルコールをアルゴン雰囲気中、160mLのParrオートクレーブ(hte社、(特殊鋼V4A))内で磁石連結型傾斜板式攪拌機を使用して(撹拌速度:200〜500回転/分)で準備した。提示されたアンモニア量で、室温で予備凝縮するかまたはNH3ガスボンベから直接に計量添加した。水素を加えた場合は、反復差圧配量によって行なった。鋼製オートクレーブは記載温度に電熱昇温され、記載の時間にわたって、攪拌下(500回転/分)で加熱された(内部温度測定)。オートクレーブを室温に冷却して、減圧し、常圧にてアンモニアのガス放出を行なった後、反応混合物をGC(30m RTX5 Amin 0.32mm 1.5μm)を使用して分析した。各生成物の精製は、たとえば蒸留によって実施され得る。アミノ化の結果は、オクタノール(第1a表および第1b表)、1,4−ブタンジオール(第2表)、ジエチレングリコール(第3表)、1,9−ノナンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール(第4表)および1,2−ジメタノールフラン(第5表)がそれぞれ以下に挙げられる:
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】