(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図面において、同等の構成要素には同等の符号を付す。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各座標軸が示す方向は、全図に共通する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る偏光板1は、フィルム状の偏光子7と、偏光子7に重なる複数の光学フィルム(3,5,9,13)と、を備える。偏光子7及び複数の光学フィルム(3,5,9,13)のいずれも、四角形である。複数の光学フィルム(3,5,9,13)とは、第一保護フィルム5、第二保護フィルム9、第三保護フィルム3、及び離型フィルム13(セパレータ)である。つまり、偏光板1は、偏光子7、第一保護フィルム5、第二保護フィルム9、第三保護フィルム3、及び離型フィルム13を備える。偏光板1は、第二保護フィルム9と離型フィルム13との間に位置する粘着層11も備える。偏光子7の一方の表面には第一保護フィルム5が重なっており、偏光子7の他方の表面には第二保護フィルム9が重なっている。第一保護フィルム5には第三保護フィルム3が重なっている。つまり、第一保護フィルム5は、偏光子7と第三保護フィルム3との間に位置する。第二保護フィルム9には、粘着層11を介して、離型フィルム13が重なっている。換言すると、第二保護フィルム9は、偏光子7と粘着層11との間に位置する。
【0019】
偏光板1の一方の表面(第一表面)は、第三保護フィルム3から構成される。偏光板1の他方の表面(第二表面)は、離型フィルム13から構成される。
図2に示す偏光板1の断面は、偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)に垂直である。換言すると、
図2に示す偏光板1の断面は、Y軸に垂直であり、ZX面に平行である。換言すると、
図2に示す偏光板1の断面は、偏光板1の受光面に垂直である。
【0020】
偏光板1には、偏光板1を貫通する穴(貫通穴21)が形成されている。貫通穴21は、偏光板1の表面(XY平面)に略垂直であり、偏光子7及び複数の光学フィルム(3,5,9,13)の積層方向(Z軸方向)に略平行である。偏光板1の表面に平行な方向(XY平面方向)における貫通穴21の形状は、例えば、
図3に示すように円である。貫通穴21の内壁は、平滑ではなくてもよい。
【0021】
貫通穴21の鉛直度は、0.00以上0.32未満である。以下では、
図2に基づき、鉛直度を説明する。
【0022】
図2に示す偏光板1の断面は、偏光板1の表面に垂直であり、且つ円形の貫通穴21の中心軸を含む。偏光板1の一方の表面(第一表面)に位置し、且つ貫通穴21の縁に相当する第一光学フィルム(例えば、第三保護フィルム3)の端部を、第一端部3eと定義する。偏光板1の他方の表面(第二表面)に位置し、且つ貫通穴21の縁に相当する第二光学フィルム(例えば、離型フィルム13)の端部を、第二端部13eと定義する。第一端部3e及び第二端部13eのいずれも、偏光板1の表面に垂直な同一断面上に位置する。偏光板1の表面に平行な方向(XY平面方向)における、第一端部3eと第二端部13eとの距離を、aと定義する。偏光板1の厚み(例えば、厚みの平均値)を、bと定義する。鉛直度は、a/bと定義される。鉛直度は、a’/bと定義されてもよい。a’は、偏光板1の表面に平行な方向における、第一端部3e’と第二端部13e’との距離である。第一端部3e’とは、上記の第一端部3eの向かい側に位置する別の第一端部である。第二端部13e’とは、上記の第二端部13eの向かい側に位置する別の第二端部である。a/bは、a’/bと等しくてよい。a/bは、a’/bと異なっていてもよい。a/bが、a’/bと異なる場合、a/b、及びa’/bのいずれも、0.00以上0.32未満である。上記の定義に適合する限り、偏光板1の任意の断面においてa及びbを測定してよく、a及びbそれぞれの測定値からa/bを計算すればよい。偏光板1の任意の複数の断面において鉛直度a/bを計算する場合、算出された複数の鉛直度a/bのうち最大値が、0.00以上0.32未満であればよい。a、a’、b、及びb’は、例えば、光学顕微鏡を用いた偏光板1の断面の観察に基づき、測定すればよい。
【0023】
貫通穴21の鉛直度a/bが、0.32未満であることにより、光漏れが抑制される。貫通穴21の鉛直度a/bが0.32以上である場合、貫通穴21内に露出する偏光子7の断面(端面)において、光の屈折等に起因する光漏れが顕著になる。貫通穴21の鉛直度a/bは、0.00以上0.30以下、0.00以上0.28以下、0.00以上0.27以下、0.05以上0.30以下、0.05以上0.28以下、又は0.05以上0.27以下であってよい。鉛直度a/bが小さいほど、光漏れが抑制され易い。したがって、aはゼロであることが最も好ましい。つまり、鉛直度a/bはゼロであることが最も好ましい。鉛直度a/bがゼロであることは、貫通穴21が偏光板1の表面(第一表面及び第二表面)に対して完全に垂直であることを意味する。
【0024】
偏光板1の厚みbは、例えば、10μm以上1200μm以下、10μm以上500μm以下、10μm以上300μm以下、又は10μm以上200μm以下であってよい。第一端部と第二端部との距離a又はa’は、a/bが0.00以上0.32未満である限り、任意の値であってよい。
【0025】
貫通穴21の両端の開口部が、一対の同心円である場合、鉛直度は、以下のように定義されてもよい。貫通穴21の一端(開口部)の内径(直径)を、d1と定義する。貫通穴21の他端(開口部)の内径(直径)を、d2と定義する。このとき、貫通穴21の鉛直度は、(d1−d2)/2bの絶対値と定義されてよい。この定義は、上記の定義(a/b)と矛盾しない。つまり、(d1−d2)/2の絶対値は、a又はa’に等しい。d1及びd2は、例えば、光学顕微鏡を用いた偏光板1の両表面の観察に基づき、測定すればよい。
【0026】
貫通穴21の周囲には、偏光解消部23が形成されている場合がある。偏光解消部23は、貫通穴21の形成過程において、偏光子7又は偏光子7に重なる光学フィルム(3,5,9,13)の化学的な変質によって生じる。偏光解消部23は、第一表面(例えば、第三保護フィルム3の表面)に沿って形成されていてよい。偏光解消部23は、第一表面の裏側にある第二表面(例えば、離型フィルム13の表面)に沿って形成されていてもよい。偏光解消部23は、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において連続的又は不連続的に存在していてよい。つまり、偏光解消部23は、偏光板1の表面からの深さを有していてよい。言い換えれば、偏光解消部23は、3次元的に分布していてよい。例えば、偏光解消部23は、貫通穴21の全体を囲む筒状の部分であってよい。偏光解消部23は、光漏れの一因である。偏光解消部23における光漏れは、偏光子7又は偏光子7に重なる光学フィルム(3,5,9,13)の化学的組成の変化に起因する。例えば、偏光子7を構成するポリビニルアルコール又は色素分子(ヨウ素を含む化合物)の配向性の乱れによって、偏光解消部23における光漏れが起こる。
【0027】
偏光板1の貫通穴21の周囲における偏光解消部23の幅Wは、0.00μm以上32μm未満である。
図3に示すように、偏光解消部23の幅Wとは、偏光板1の表面に平行な方向における偏光解消部23の幅である。ここで、「偏光板1の表面」とは、第一表面(例えば、第三保護フィルム3の表面)であってよく、第一表面の裏側にある第二表面(例えば、離型フィルム13の表面)であってもよい。偏光板1の第一表面に垂直な方向において観察される偏光解消部23の幅Wが0.00μm以上32μm未満であり、且つ、偏光板1の第二表面に垂直な方向において観察される偏光解消部23の幅Wが0.00μm以上32μm未満であってよい。偏光解消部23の幅Wは、XY平面方向における偏光解消部23の幅と言い換えてもよい。偏光板1は略透明であるため、第二表面側(離型フィルム13の表面側)に位置する偏光解消部23が、第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)から観察されてよい。つまり、第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)で観察される偏光解消部23は、必ずしも第一光学フィルム(第三保護フィルム3)に形成されているわけではない。また、偏光板1の内部に位置する偏光解消部23が、第一表面側又は第二表面側から観察されてもよい。第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)に位置している偏光解消部23が、第二表面側(離型フィルム13の表面側)から観察されてよい。つまり、第二表面側(離型フィルム13の表面側)で観察される偏光解消部23は、必ずしも第二光学フィルム(離型フィルム13)に形成されているわけではない。偏光板1は略透明であるため、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において偏光板1の表面を観察した際に、3次元的に分布する偏光解消部23が、重なり合った状態で見えてよい。つまり、貫通穴21の周囲において3次元的に分布する偏光解消部23が、偏光板1の表面(XY平面)における2次元の正射影(例えば、貫通穴21を囲む環)として観察されてよい。
【0028】
偏光解消部23の幅Wが32μm未満であることにより、光漏れが抑制される。偏光解消部23の幅Wが32μm以上である場合、偏光解消部23における光漏れが顕著になる。偏光板1の偏光解消部23の幅Wは、0.00μm以上20μm以下、0.00μm以上19μm以下、又は0.00μm以上18μm以下であってよい。偏光解消部23の幅Wが小さいほど、光漏れが抑制され易い。したがって、偏光解消部23の幅Wは0.00μmであることが最も好ましい。つまり、偏光解消部23はないことが最も好ましい。貫通穴21の周囲における偏光解消部23の幅Wは、0.00μm以上32μm未満の範囲内である限り、一定でなくてよい。偏光解消部23の幅Wが一定でない場合、偏光解消部23の幅Wの最大値が、32μm未満である。
【0029】
貫通穴21の周囲には、亀裂25が形成されている場合がある。亀裂25は、第一表面(第三保護フィルム3の表面)に沿って形成されていてよい。亀裂25は、第一表面の裏側にある第二表面(離型フィルム13の表面)に沿って形成されていてもよい。亀裂25は、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において連続的又は不連続的に形成されていてよい。つまり、亀裂25は、偏光板1の表面からの深さを有していてよい。言い換えれば、亀裂25は、3次元的に分布していてよい。
【0030】
偏光板1の貫通穴21の周囲における亀裂25の数は、単位長さ1mmあたり、0以上3以下であってよい。「単位長さ1mm」とは、貫通穴21の縁に平行であり、且つ長さが1mmである直線又は曲線である。例えば、貫通穴21の形状が円である場合、単位長さとは、貫通穴21の円形の縁に平行な円弧である。「亀裂25の数」とは、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において観察される亀裂25のうち、単位長さ1mmと交わる亀裂25の個数である。第一表面(例えば、第三保護フィルム3の表面)において観察される亀裂25を数えてよい。第一表面の裏側にある第二表面(例えば、離型フィルム13の表面)において観察される亀裂25を数えてもよい。偏光板1の第一表面において観察される亀裂25の数が、単位長さ1mmあたり、0以上3以下であり、且つ、偏光板1の第二表面において観察される亀裂25の数が、単位長さ1mmあたり、0以上3以下であってよい。偏光板1は略透明であるため、第二表面側(離型フィルム13の表面側)に位置する亀裂25が、第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)から観察されてよい。つまり、第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)で観察される亀裂25は、必ずしも第一光学フィルム(第三保護フィルム3)に形成されているわけではない。また、偏光板1の内部に位置する亀裂25が、第一表面側又は第二表面側から観察されてもよい。第一表面側(第三保護フィルム3の表面側)に位置している亀裂25が、第二表面側(離型フィルム13の表面側)から観察されてよい。つまり、第二表面側(離型フィルム13の表面側)で観察される亀裂25は、必ずしも第二光学フィルム(離型フィルム13)に形成されているわけではない。偏光板1は略透明であるため、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において偏光板1の表面を観察した際に、3次元的に分布する亀裂25が、重なり合った状態で見えてよい。つまり、3次元的に分布する亀裂25が、偏光板1の表面(XY平面)における2次元の正射影として観察されてよい。偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において重なり合う複数の亀裂25が、偏光板1の表面においては一つの亀裂25として見えてよい。つまり、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において重なり合う複数の亀裂25が、偏光板1の表面においては一つの亀裂25として数えられてよい。
【0031】
亀裂25の数が3以下である場合、光漏れが更に抑制され易い。亀裂25の長さlは、0μm以上50μm未満であってよい。亀裂25の長さlは、偏光板1の表面に垂直な方向(Z軸方向)において観察される亀裂25の長さであり、亀裂25の一方の端部と貫通穴21の縁との最短距離である。亀裂25の長さlは、第一表面(例えば、第三保護フィルム3の表面)において測定されてよい。亀裂25の長さlは、第一表面の裏側にある第二表面(例えば、離型フィルム13の表面)において測定されてもよい。偏光板1の第一表面において測定される亀裂25の長さlが0μm以上50μm未満であり、且つ、偏光板1の第二表面において測定される亀裂25の長さlが0μm以上50μm未満であってよい。亀裂25の長さlが50μm未満である場合、視認される程度の光漏れが更に抑制され易い。亀裂25の数が少なく、亀裂25が短いほど、光漏れが更に抑制され易い。また、亀裂25の数が少なく、亀裂25が短いほど、偏光板1の機械的強度が高く、画像表示装置の製造過程における偏光板1の破損が抑制され易い。したがって、亀裂25はないことが最も好ましい。
【0032】
貫通穴21の直径d(内径d1又はd2)は、例えば、50〜5000μmであってよい。
【0033】
本実施形態に係る偏光板1の製造方法は、
フィルム状の偏光子と、複数の光学フィルムと、を重ねて、積層体を形成する工程と、
積層体にエキシマレーザーのパルス波を照射して、積層体を貫通する穴(貫通穴21)を形成する工程と、を備え、
エキシマレーザーの出力が、20W未満であり、
エキシマレーザーのスポットの外周部分の強度が、スポットの強度の極大値の80%より大きく、
エキシマレーザーの集光径が、50μmよりも大きく、
エキシマレーザーの繰り返し周波数が、1000Hz未満である。
本実施形態では、上記積層体においてエキシマレーザーが照射された部分に、貫通穴21が形成される。以下では、各工程について詳しく説明する。
【0034】
積層体は、偏光子7と各光学フィルム(3,5,9,13)との貼合、又は光学フィルム同士の貼合を繰り返すことにより得られる。なお、粘着層11は、例えば、第二保護フィルム9の表面に粘着剤を塗布することによって形成されてよい。
【0035】
エキシマレーザーは、下記のいずかであってよい。
F
2レーザー(発振波長:157nm)
ArFレーザー(発振波長:193nm)
KrFレーザー(発振波長:248nm)
XeClレーザー(発振波長:308nm)
XeFレーザー(発振波長:351nm)
【0036】
エキシマレーザーの発振波長は、他のレーザーの発振波長よりもはるかに短い。例えば、CO
2レーザーの発振波長は、9.4μm又は10.6μmである。波長が短いエキシマレーザーを積層体に照射する場合、偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)を構成する高分子が瞬時に分解・昇華し易く、エキシマレーザーの照射に伴う積層体の加熱が抑制される。したがって、鉛直度が小さい貫通穴21が瞬時に形成され易く、熱に起因する偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)の化学的な変質も抑制される。一方、波長が長いレーザーを積層体に照射する場合、レーザーが照射された部分において、温度は上昇し易いが、偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)を構成する高分子の分解・昇華は起き難い。つまり、レーザーの照射により加熱された部分が溶融・変形することによりはじめて、貫通穴が形成される。したがって、仮にエキシマレーザーよりも波長が長いレーザーを用いる場合、貫通穴の鉛直度を制御し難く、偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)の化学的な変質によって偏光解消部が形成され易い。
【0037】
エキシマレーザーの出力は、1W以上20W未満である。エキシマレーザーの出力が20W以上である場合、貫通穴21の周囲において亀裂25が形成され易く、偏光解消部23の幅Wが大きくなり易い。エキシマレーザーの出力は、5W以上8W以下であってよい。
【0038】
図4に示すように、エキシマレーザーのスポットLSは円形である。エキシマレーザーのスポットLSの中心Lcを通る直線に沿ったエキシマレーザーのスポットLSの強度分布IDは、トップハット型である。スポットLSは、エキシマレーザーの進行方向に垂直なエキシマレーザーの断面と言い換えてよい。トップハット型のエキシマレーザーを用いて形成した貫通穴の鉛直度は、強度分布がガウス型であるエキシマレーザーを用いて形成した貫通穴の鉛直度に比べて、小さくなり易い。エキシマレーザーのスポットLSの外周部分Leの強度ILeは、スポットLSの強度の極大値ILcの80%より大きく、ILcの100%以下である。換言すれば、(ILe/ILc)×100が、80%より大きく100%以下である。換言すれば、{(ILc−ILe)/ILc}×100が、0%以上20%未満である。ILcは、強度分布IDにおける平坦部(トップ部)の強度の平均値と言い換えてよい。ILcは、スポットLSの中心Lcの強度と言い換えてもよい。ILeがILcの80%以下である場合、鉛直度a/bが大きくなり易い。換言すると、(ILe/ILc)×100が80%以下である場合、鉛直度a/bが大きくなり易い。換言すると、{(ILc−ILe)/ILc}×100が20%以上である場合、鉛直度a/bが大きくなり易い。ILeは、ILcの90%以上95%以下であってよい。換言すると、(ILe/ILc)×100が、90%以上95%以下であってよい。換言すると、{(ILc−ILe)/ILc}×100は、5%以上10%以下であってよい。強度ILe及び強度ILcの単位は、例えば、W/m
2であってよい。
【0039】
エキシマレーザーの集光径と同程度の直径dを有する貫通穴21を形成する場合、エキシマレーザーの集光径は、50μmよりも大きく、2000μm以下である。エキシマレーザーの集光径が50μm以下である場合、鉛直度a/bが大きくなり易い。エキシマレーザーの集光径とは、エキシマレーザーのスポットLSの直径と言い換えてよい。エキシマレーザーの集光径は、600μm以上1000μm以下であってよい。エキシマレーザーの集光径は、貫通穴21の直径dと一致しなくてよい。例えば、積層体の表面における所定の領域を、集光径が小さいエキシマレーザーで走査することにより、エキシマレーザー集光径よりも大きい直径dを有する貫通穴21を形成してもよい。
【0040】
エキシマレーザーの繰り返し周波数は、10Hz以上1000Hz未満である。エキシマレーザーの繰り返し周波数が1000Hz以上である場合、亀裂25が形成され易く、偏光解消部23も形成され易い。エキシマレーザーの繰り返し周波数は、100Hz以上500Hz以下であってよい。
【0041】
エキシマレーザーが照射された表面側(例えば、第三保護フィルム3側)の貫通穴21の内径は、その反対側(例えば、離型フィルム13側)の貫通穴21の内径よりも大きい傾向がある。
【0042】
偏光子7は、延伸、染色及び架橋等の工程によって作製されたフィルム状のポリビニルアルコール系樹脂であってよい。偏光子7の詳細は以下の通りである。
【0043】
例えば、まず、フィルム状のポリビニルアルコール系樹脂を、一軸方向又は二軸方向に延伸する。一軸方向に延伸された偏光子7の二色比は、高い傾向がある。延伸に続いて、ヨウ化カリウム等を含む染色液を用いて、ポリビニルアルコール系樹脂をヨウ素又は二色性色素(ポリヨウ素)によって染色する。染色液は、ホウ酸、硫酸亜鉛、又は塩化亜鉛を含んでいてもよい。染色前にポリビニルアルコール系樹脂を水洗してもよい。水洗により、ポリビニルアルコール系樹脂の表面から、汚れ及びブロッキング防止剤が除去される。また水洗によってポリビニルアルコール系樹脂が膨潤する結果、染色の斑(不均一な染色)が抑制され易い。染色後のポリビニルアルコール系樹脂を、架橋のために、架橋剤の溶液(例えば、ホウ酸の水溶液)で処理する。架橋剤による処理後、ポリビニルアルコール系樹脂を水洗し、続いて乾燥する。以上の手順を経て、偏光子7が得られる。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、又は、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)であってよい。酢酸ビニルと共重合する他の単量体は、エチレンの他に、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、又はアンモニウム基を有するアクリルアミド類であってよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、アルデヒド類で変性されていてもよい。変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、又はポリビニルブチラールであってよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールの脱水処理物、又はポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルムであってよい。延伸前に染色を行ってもよく、染色液中で延伸を行ってもよい。延伸された偏光子7の長さは、例えば、延伸前の長さの3〜7倍であってよい。
【0044】
偏光子7の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下、又は4μm以上30μm以下であってよい。一般的に、薄い偏光子7が一軸方向に延伸されている場合、穴開け工程又はチップカット工程において、延伸方向に沿った亀裂25が形成され易い。しかし、エキシマレーザーを用いた上記の穴開け工程により、亀裂25の形成を抑制することができる。
【0045】
第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9は、透光性を有する熱可塑性樹脂であればよく、光学的に透明な熱可塑性樹脂であってもよい。第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9を構成する樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、又はこれらの混合物若しくは共重合体であってよい。第一保護フィルム5の組成は、第二保護フィルム9の組成と全く同じであってよい。第一保護フィルム5の組成は、第二保護フィルム9の組成と異なっていてもよい。
【0046】
鎖状ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体であってよい。鎖状ポリオレフィン系樹脂は、二種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体であってもよい。
【0047】
環状オレフィンポリマー系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂)は、例えば、環状オレフィンの開環(共)重合体、又は環状オレフィンの付加重合体であってよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、例えば、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってよい。共重合体を構成する鎖状オレフィンは、例えば、エチレン又はプロピレンであってよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、上記の重合体を不飽和カルボン酸若しくはその誘導体で変性したグラフト重合体、又はそれらの水素化物であってもよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、例えば、ノルボルネン又は多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂であってよい。
【0048】
セルロースエステル系樹脂は、例えば、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース(TAC))、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート又はセルロースジプロピオネートであってよい。これらの共重合物を用いてもよい。水酸基の一部が他の置換基で修飾されたセルロースエステル系樹脂を用いてもよい。
【0049】
セルロースエステル系樹脂以外のポリエステル系樹脂を用いてもよい。ポリエステル系樹脂は、例えば、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体であってよい。多価カルボン酸又はその誘導体は、ジカルボン酸又はその誘導体であってよい。多価カルボン酸又はその誘導体は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はナフタレンジカルボン酸ジメチルであってよい。多価アルコールは、例えば、ジオールであってよい。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はシクロヘキサンジメタノールであってよい。
【0050】
ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、又はポリシクロヘキサンジメチルナフタレートであってよい。
【0051】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介して重合単位(モノマー)が結合された重合体である。ポリカーボネート系樹脂は、修飾されたポリマー骨格を有する変性ポリカーボネートであってよく、共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0052】
(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA));メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(例えば、MS樹脂);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)であってよい。
【0053】
偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち少なくとも一方の光学フィルムが、トリアセチルセルロース(TAC)を含んでよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち少なくとも一方の光学フィルムが、環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)を含んでよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち少なくとも一方の光学フィルムが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を含んでよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)の両方が、トリアセチルセルロースを含んでもよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち一方のフィルムが、トリアセチルセルロースを含み、偏光子7を挟む一対の光学フィルムのうち他方のフィルムが、環状オレフィンポリマーを含んでもよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち一方のフィルムが、トリアセチルセルロースを含み、偏光子7を挟む一対の光学フィルムのうち他方のフィルムが、ポリメタクリル酸メチルを含んでもよい。偏光子7を挟む一対の光学フィルム(第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9)のうち一方のフィルムが、環状オレフィンポリマー系樹脂を含み、偏光子7を挟む一対の光学フィルムのうち他方のフィルムが、ポリメタクリル酸メチルを含んでもよい。TAC、COP系樹脂又はPMMAから構成される光学フィルムが偏光子7に接する場合、従来の加工方法によって貫通穴21の鉛直度a/bを低減し、且つ偏光解消部23及び亀裂25の形成を抑制することは困難である。しかし、エキシマレーザーを用いた上記の穴開け工程により、貫通穴21の鉛直度a/bを低減し、且つ偏光解消部23及び亀裂25の形成を抑制する。
【0054】
偏光子7又は各光学フィルム(3,5,9,又は13)のガラス転移温度Tgは、100〜180℃、又は108〜180℃であってよい。光学フィルム(3,5,9,又は13)がトリアセチルセルロース(TAC)からなる場合、光学フィルム(3,5,9,又は13)のガラス転移温度Tgは、160〜180℃であってよい。光学フィルム(3,5,9,又は13)が環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)からなる場合、光学フィルム(3,5,9,又は13)のガラス転移温度Tgは、126〜136℃であってよい。光学フィルム(3,5,9,又は13)がポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる場合、光学フィルム(3,5,9,又は13)のガラス転移温度Tgは、108〜136℃であってよい。偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)のガラス転移温度Tgが100℃以上である場合、偏光板1は耐熱性に優れ、エキシマレーザーの照射に伴う熱に起因する偏光板1の変形が抑制され易い。
【0055】
第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9は、滑剤、可塑剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、及び酸化防止剤からな群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含んでよい。
【0056】
第一保護フィルム5の厚みは、例えば、5μm以上90μm以下、5μm以上80μm以下、又は5μm以上50μm以下であってよい。第二保護フィルム9の厚みも、例えば、5μm以上90μm以下、5μm以上80μm以下、又は5μm以上50μm以下であってよい。
【0057】
第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9は、位相差フィルム又は輝度向上フィルムのように、光学機能を有するフィルムであってよい。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムが得られる。
【0058】
第一保護フィルム5は、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。第二保護フィルム9も、接着層を介して、偏光子7に貼合されていてよい。接着層は、ポリビニルアルコール等の水系接着剤を含んでよく、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでもよい。
【0059】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線を照射されることにより、硬化する樹脂である。活性エネルギー線は、例えば、紫外線、可視光、電子線、又はX線であってよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であってよい。
【0060】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、一種の樹脂であってよく、複数種の樹脂を含んでもよい。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂は、カチオン重合性の硬化性化合物、又はラジカル重合性の硬化性化合物を含んでよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤を含んでよい。
【0061】
カチオン重合性の硬化性化合物は、例えば、エポキシ系化合物(分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物)、又はオキセタン系化合物(分子内に少なくとも一つのオキセタン環を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、ラジカル重合性の二重結合を有するビニル系化合物であってもよい。
【0062】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、又は溶剤等を含んでよい。
【0063】
粘着層11は、例えば、アクリル系感圧型接着剤、ゴム系感圧型接着剤、シリコーン系感圧型接着剤、又はウレタン系感圧型接着剤などの感圧型接着剤を含んでよい。粘着層11の厚みは、例えば、2μm以上500μm以下、2μm以上200μm以下、又は2μm以上50μm以下であってよい。
【0064】
第三保護フィルム3を構成する樹脂は、第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9を構成する樹脂として列挙された上記の樹脂と同じであってよい。第三保護フィルム3の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。
【0065】
離型フィルム13を構成する樹脂は、第一保護フィルム5又は第二保護フィルム9を構成する樹脂として列挙された上記の樹脂と同じであってよい。離型フィルム13の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。
【0066】
本発明に係る画像表示装置は、例えば、液晶表示装置又は有機EL表示装置等であってよい。例えば、
図5に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置30は、液晶セル10と、液晶セル10の一方の表面(第一表面)に重なる偏光板1a(第一偏光板)と、液晶セル10の他方の表面(第二表面)に重なる別の偏光板1b(第二偏光板)と、を備える。
図5に示す偏光板1a及び1bは、離型フィルム13及び第三保護フィルム3を備えない点を除いて、
図1及び2に示す偏光板1と同じである。偏光板1a(第一偏光板)は、粘着層11を介して、液晶セル10の第一表面に貼着されている。偏光板1a(第一偏光板)は、液晶セル10の第一表面に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子7と、偏光子7に重なる第一保護フィルム5と、を有する。別の偏光板1b(第二偏光板)は、粘着層11を介して、液晶セル10の第二表面に貼着されている。別の偏光板1b(第二偏光板)は、液晶セル10の第二表面に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子7と、偏光子7に重なる第一保護フィルム5と、を有する。液晶セル10と、一対の偏光板1a及び1bとが、液晶パネル20を構成する。液晶パネル20と、バックライト(面光源装置)その他の部材とが、液晶表示装置30を構成する。バックライトその他の部材は、
図5において省略する。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0068】
偏光板の形状は、用途に応じた様々な形であってよい。ここで、偏光板の形状とは、
図1〜3のZ方向(偏光板1の表面に垂直な方向)から見た偏光板全体の形状である。例えば、偏光板の形状は、四角形以外の多角形であってよい。例えば、偏光板は、円形、楕円形、又は不定形であってもよい。偏光板の外縁は、直線(複数の辺)のみからなっていってよい。ここで、偏光板の外縁とは、
図1〜3のZ方向(偏光板の表面に垂直な方向)から見た偏光板の外縁である。偏光板の外縁は、曲線のみからなっていってよい。偏光子7及び各光学フィルム(3,5,9,13)それぞれの形状も、用途に応じた様々な形であってよい。
【0069】
偏光板1の表面に平行な方向(XY平面方向)における貫通穴の形状は、偏光板の用途に応じた様々な形であってよい。貫通穴の形状は、円以外であってよい。例えば、貫通穴の形状は、楕円形、多角形、又は不定形であってよい。複数の貫通穴21が偏光板1に形成されていてよい。形が同じである複数の貫通穴が、偏光板1に形成されていてよい。互いに形が異なる複数の貫通穴が、偏光板1に形成されていてよい。偏光板1における貫通穴の位置は、限定されない。例えば、偏光板1が円形である場合、貫通穴は、偏光板1の表面の中心(円の中心)に形成されていてよい。
【0070】
偏光板が備える光学フィルム(偏光子に重なる光学フィルム)の枚数は限定されない。偏光板が備える光学フィルムの枚数が1枚であってよい。例えば、
図1及び2に示す偏光板1は、第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9のうち、いずれか一方の保護フィルムを備えないものであってもよいし、両方の保護フィルムを備えないものであってもよい。例えば、
図5に示す偏光板1a(第一偏光板)及び偏光板1b(第二偏光板)のうちいずれか一方の偏光板あるいは両方の偏光板が、第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9のうち、いずれか一方の保護フィルムを備えなくてもよい。
図5に示す偏光板1a(第一偏光板)及び偏光板1b(第二偏光板)のうちいずれか一方の偏光板あるいは両方の偏光板が、両方の保護フィルムを備えなくてもよい。
【0071】
離型フィルムが、粘着層を介して、偏光板の両面に配置されていてもよい。
【0072】
偏光板が備える光学フィルムは、反射型偏光フィルム、防眩機能付フィルム、表面反射防止機能付フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、視野角補償フィルム、光学補償層、タッチセンサー層、帯電防止層又は防汚層であってもよい。
【0073】
偏光板が、ハードコート層をさらに備えてもよい。例えば、偏光板1が、第一保護フィルム5が、ハードコート層と偏光子7との間に位置してよく、ハードコート層は、第一保護フィルム5と第三保護フィルム3との間に位置してよい。この場合、第一保護フィルム5が、トリアセチルセルロースを含んでよい。ハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度)は、H以上5H以下、又は2H以上5H以下であってよい。鉛筆硬度は、日本工業規格(JIS K 5400)に基づく。鉛筆硬度が上記範囲になるハードコート層は、偏光板1の製造過程において傷付き難い。しかし、ハードコード層は硬くて脆いので、従来の加工方法によって貫通穴を形成する場合、亀裂がハードコート層に形成され易い。しかし、エキシマレーザーを用いた上記の穴開け工程により、ハードコート層における亀裂の形成を抑制することができる。
【0074】
ハードコート層は、例えば、微細な凹凸形状が表面に設けられたアクリル系樹脂フィルムから構成される層である。ハードコート層は、例えば、有機微粒子又は無機微粒子を含有する塗膜から形成されてよい。この塗膜を、凹凸形状を有するロールに押し当てる方法(たとえばエンボス法等)を用いてもよい。有機微粒子又は無機微粒子を含有しない塗膜を形成後、この塗膜を、凹凸形状を有するロールに押し当てる方法を用いてもよい。
無機微粒子は、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等であってよい。また、有機微粒子(樹脂粒子)は、例えば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子等であってよい。
無機微粒子又は有機微粒子を分散させるためのバインダー成分は、高硬度(ハードコート)となる材料から選定されればよい。バインダー成分は、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等であってよい。生産性、硬度などの観点から、バインダー成分としては、紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。
ハードコート層の厚みは、例えば、2μm以上30μm以下、又は3μm以上30μm以下であってよい。ハードコート層の厚みが2μm以上ある場合、ハードコート層の十分な硬度が得られ易く、ハードコート層の表面がより傷付き難い。ハードコート層の厚みが30μm以下である場合、ハードコート層がより割れ難くなり、ハードコート層の硬化収縮に因る偏光板の湾曲(カール)が抑制され易く、生産性が向上し易い傾向がある。
【0075】
偏光子7の厚みが30μm以下であり、且つ偏光子7の単体透過率Tが42.5以上であり、且つ偏光子7の偏光度Pが99.9以上であってよい。従来、偏光子が薄くて単体透過率及び偏光度が大きい場合、偏光板に形成された貫通穴の周囲において光漏れが認識され易かった。しかし、エキシマレーザーを用いた上記の穴開け工程によって鉛直度の小さい貫通穴21を形成する場合、薄くて単体透過率及び偏光度が大きい偏光子7を備える偏光板1における光漏れを抑制することができる。
【0076】
偏光子7、第一保護フィルム5及び第二保護フィルム9の3つのフィルムから構成される積層体の水分率は、1.0〜5.0%、0.5〜5.5%、又は1.0〜5.0%であってよい。水分率が上記範囲内であることにより、加熱に伴う偏光板1の反りが抑制され易く、偏光板1における光漏れが更に抑制され易い。
【0077】
図1及び2に示す偏光板1では、第三保護フィルム3側(第一光学フィルム側)における貫通穴21の内径d1が、離型フィルム13側(第二光学フィルム側)における貫通穴21の内径d2よりも大きいが、第三保護フィルム3側(第一光学フィルム側)における貫通穴21の内径d1が、離型フィルム13側(第二光学フィルム側)における貫通穴21の内径d2よりも小さくてもよい。換言すれば、
図1及び2に示す偏光板1では、第一保護フィルム5側における貫通穴21の内径d1が、第二保護フィルム9側における貫通穴21の内径d2よりも大きいが、第一保護フィルム5側における貫通穴21の内径d1が、第二保護フィルム9側における貫通穴21の内径d2よりも小さくてもよい。
【0078】
偏光板1は、第三保護フィルム3及び離型フィルム13のうち一方又は両方を備えなくてもよい。例えば、第三保護フィルム3は、画像表示装置の製造過程において、偏光板1から剥離され、除去されてよい。つまり、第三保護フィルム3は、仮保護フィルムであってよい。離型フィルム13も、画像表示装置の製造過程において、偏光板1から剥離され、除去されてよい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
図1に示すような偏光子7及び光学フィルム(3,5,9,13)から構成される板状の積層体を形成した。積層体は、離型フィルム13と、離型フィルム13に重なる粘着層11と、粘着層11に重なる第二保護フィルム9と、第二保護フィルム9に重なる偏光子7と、偏光子7に重なる第一保護フィルム5と、第一保護フィルム5に重なる第三保護フィルム3と、を備えていた。偏光子7としては、延伸され、且つ染色されたフィルム状のポリビニルアルコールを用いた。第一保護フィルム5としては、ハードコート付きトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(凸版印刷(株)製の25KCHCN−TC)を用いた。第二保護フィルム9としては、環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)から構成されるフィルム(日本ゼオン(株)製のZF14−023−1350)を用いた。第三保護フィルム3としては、粘着剤付きPETプロテクトフィルム(藤森工業(株)製のAS3−304)を用いた。離型フィルム13としては、PET(リンテック(株)製のSP−PLR382050)を用いた。離型フィルム13の厚みは、38μmであった。粘着層11の厚みは、20μmであった。第二保護フィルム9の厚みは、23μmであった。偏光子7の厚みは、12μmであった。第一保護フィルム5の厚みは、32μmであった。第三保護フィルム3の厚みは、60μmであった。積層体全体の厚み(偏光板1の厚みbに相当する厚み)は、185μmであった。積層体全体の縦幅は、110mmであった。積層体全体の横幅は、60mmであった。
【0081】
エキシマレーザーのパルス波を、積層体の第三保護フィルム3側の表面に照射して、
図1及び2に示すような貫通穴21を積層体に形成した。以上の諸工程により、実施例1の偏光板1を得た。エキシマレーザーとしては、発振波長が193nmであるArFレーザーを用いた。エキシマレーザーの発振器としては、Mlase社製のMLIシリーズ(モデル1000)を用いた。エキシマレーザーの出力は、5Wに設定した。
図4に示すように、エキシマレーザーのスポットLSは円形であった。エキシマレーザーのスポットLSの外周部分Leの強度をILeと表記し、スポットLSの強度の極大値(平坦なトップ部の強度)をILcと表記するとき、{(ILc−ILe)/ILc}×100は、5%であった。以下では、{(ILc−ILe)/ILc}×100を、「密度分布」と呼ぶ。エキシマレーザーの集光径は、1000μmに設定した。エキシマレーザーの繰り返し周波数は、100Hzに設定した。
【0082】
図3に示すように、偏光板1の表面に平行な方向(XY平面方向)における貫通穴21の形状は、円であった。貫通穴21の第三保護フィルム3側の開口部と、貫通穴21の離型フィルム13側の開口部とは、一対の同心円であった。第三保護フィルム3側における貫通穴21(円形の開口部)の内径d1(直径)を測定した。また、離型フィルム13側における貫通穴21(円形の開口部)の内径d2(直径)も測定した。エキシマレーザーが照射された第三保護フィルム3側における貫通穴21の内径d1は、その反対側(離型フィルム13側)における貫通穴21の内径d2よりも大きかった。d1及びd2の測定値のいずれも、エキシマレーザーの集光径に近い値であった。d1及びd2の測定値から、貫通穴21の鉛直度である(d1−d2)/2bを計算した。実施例1の鉛直度は、0.06であった。
【0083】
エキシマレーザーが照射された第三保護フィルム3側の貫通穴21の周囲を、光学顕微鏡で観察した。この観察により、貫通穴21の周囲に形成されている亀裂のうち、長さlが50μm未満である亀裂の数と、長さlが50μm以上である亀裂の数とを数えようと試みた。なお、亀裂の個数の定義は上記の実施形態と同様であった。また、亀裂の長さlの定義は、上記の実施形態と同様であった。観察の結果、実施例1の偏光板1の貫通穴21の周囲には、長さlが50μm未満である亀裂がなかった。また、実施例1の偏光板1の貫通穴21の周囲には、長さlが50μm以上である亀裂もなかった。
【0084】
光学顕微鏡を用いた上記観察により、貫通穴21の周囲における偏光解消部23(変色部)の幅Wの測定を試みた。しかし、偏光板1の貫通穴21の周囲において、偏光解消部23はなかった。
【0085】
図6中の(a)及び(b)に示すように、バックライト64(面光源)の全面を、下側偏光板62で覆った。下側偏光板62は、実施例1の偏光板とは別の偏光板である。実施例1の偏光板(1s)の離型フィルム13を、下側偏光板62へ対面させた。実施例1の偏光板1sを、下側偏光板62の上に重ねて、実施例1の偏光板1sの吸収軸A1sを、下側偏光板62の吸収軸A62に直交させた。上側偏光板60を、実施例1の偏光板1sの上に重ねて、上側偏光板60の吸収軸A60を、実施例1の偏光板1sの吸収軸A1sに平行に配置した。上側偏光板60も、実施例1の偏光板とは別の偏光板である。
【0086】
実施例1の偏光板1sを上記のように配置した状態でバックライト64を点灯させ、実施例1の偏光板1sを目視で観察した。観察の結果、偏光板1sの貫通穴21sの周囲における光漏れはなかった。
【0087】
(実施例2〜7、比較例1〜4)
実施例6では、エキシマレーザーとして、ArFレーザーの代わりに、KrFレーザー(発振波長:248nm)を用いた。
【0088】
実施例7では、離型フィルム13、粘着層11及び第三保護フィルム3を備えないこと以外は実施例1の場合と同じ積層体を用いた。以下では、説明の便宜上、実施例7の偏光板の第二保護フィルム側を、実施例7の偏光板の「離型フィルム側」とみなす。実施例7の偏光板の第一保護フィルム側を、実施例7の偏光板の「第三保護フィルム側」とみなす。下記表1において、第三保護フィルムを「Pf」と表記し、離型フィルムを「Sp」と表記する。
【0089】
実施例2〜7及び比較例1〜4では、エキシマレーザーの出力、密度分布、集光径及び繰り返し周波数を下記表1に示す値に設定した。
【0090】
以上の事項を除いて実施例1と同様に、エキシマレーザーを用いて積層体に貫通穴を形成して、実施例2〜7及び比較例1〜4それぞれの偏光板を得た。
【0091】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜7及び比較例1〜4それぞれの偏光板の貫通穴の鉛直度を求めた。実施例2〜7及び比較例1〜4それぞれの鉛直度を下記表1に示す。
【0092】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜7及び比較例1〜4ごとに、エキシマレーザーが照射された第三保護フィルムの表面を観察して、貫通穴の周囲に形成されている亀裂の数を数え、各亀裂の長さを測定した。実施例2〜7及び比較例1〜4ごとに、亀裂の数を下記表1に示す。いずれの実施例においても、貫通穴の周囲に形成されていた亀裂の数は、3以下であった。いずれの実施例においても、貫通穴の周囲に形成されていた亀裂の長さは、50μm未満であった。
【0093】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜7及び比較例1〜4ごとに、第三保護フィルム側の表面を観察して、貫通穴の周囲における偏光解消部(変色部)の幅を測定した。実施例2〜7及び比較例1〜4ごとに、偏光解消部(変色部)の幅Wを下記表1に示す。いずれの実施例においても、偏光解消部(変色部)の幅は、32μm未満であった。
【0094】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜7及び比較例1〜4ごとに、偏光板の貫通穴の周囲における光漏れを検査した。検査結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】