(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の表面に積層された機能層に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを構成する機能層に形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射することにより機能層をアブレーション加工し、機能層を分割予定ラインに沿って切断するレーザー加工溝を形成する機能層切断工程と、
該機能層切断工程が実施されたウエーハを構成する機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持し、ウエーハを構成する基板の裏面側から分割予定ラインと対応する領域に切削ブレードを位置付けて機能層に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、
該切削溝形成工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともに、該保護部材を剥離するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面が貼着されたダイシングテープを拡張してデバイス間を広げるテープ拡張工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
該切削溝形成工程においては機能層を切断した該レーザー加工溝の底に達しない該切削溝を形成し、該拡張工程においてはダイシングテープを拡張してウエーハを個々のデバイスに分割する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
該切削溝形成工程においては機能層を切断した該レーザー加工溝の底に達する該切削溝を形成することにより、ウエーハを個々のデバイスに分割する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された機能層によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスが格子状に形成された分割予定ラインによって区画されており、この分割予定ラインに沿って分割することによって個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
近時においては、IC、LSI等の半導体デバイスの処理能力を向上するために、シリコン等の基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)が積層された機能層によって半導体デバイスを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0004】
このような半導体ウエーハの分割予定ラインに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定して30μm程の厚さに形成されている。
【0005】
しかるに、上述したLow−k膜は、切削ブレードによって切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードにより分割予定ラインに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達しデバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、分割予定ラインに沿ってレーザー加工溝を形成して機能層を分断し、このレーザー加工溝に切削ブレードを位置付けて切削ブレードと半導体ウエーハを相対移動することにより、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断するウエーハの分割方法が下記特許文献1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献1に記載されたように半導体ウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射することにより分割予定ラインに沿ってレーザー加工溝を形成して機能層を分断し、このレーザー加工溝に切削ブレードを位置付けて半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断するウエーハの分割方法は、次のような問題がある。
(1)レーザー加工溝の幅が十分であってもレーザー加工溝の側面に付着した溶融物に切削ブレードが接触して突発的にデバイスの外周に欠けが生ずる。
(2)レーザー加工溝を形成する際に機能層の除去が不十分であると切削ブレードのズレや倒れが発生してデバイスの機能層に剥離が生じる。
(3)切削ブレードの幅を超える範囲でレーザー加工溝を形成するために、分割予定ラインの幅を広くする必要があり、ウエーハに形成されるデバイスの数が減少する。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、基板の表面に積層された機能層に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、上記問題を解消して個々のデバイスに分割することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術的課題を解決するため、本発明によれば、基板の表面に積層された機能層に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを構成する機能層に形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射することにより機能層をアブレーション加工し、機能層を分割予定ラインに沿って切断するレーザー加工溝を形成する機能層切断工程と、
該機能層切断工程が実施されたウエーハを構成する機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持し、ウエーハを構成する基板の裏面側から分割予定ラインと対応する領域に切削ブレードを位置付けて機能層に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、
該切削溝形成工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともに、該保護部材を剥離するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面が貼着されたダイシングテープを拡張してデバイス間を広げるテープ拡張工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0011】
上記切削溝形成工程においては機能層を切断したレーザー加工溝の底に達しない切削溝を形成し、上記拡張工程においてはダイシングテープを拡張してウエーハを個々のデバイスに分割する。
また、上記切削溝形成工程においては機能層を切断したレーザー加工溝の底に達する切削溝を形成することにより、ウエーハを個々のデバイスに分割する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるウエーハの加工方法においては、ウエーハを構成する機能層に形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射することにより機能層をアブレーション加工し、機能層を分割予定ラインに沿って切断するレーザー加工溝を形成する機能層切断工程と、機能層切断工程が実施されたウエーハを構成する機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、保護部材貼着工程が実施されたウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持し、ウエーハを構成する基板の裏面側から分割予定ラインと対応する領域に切削ブレードを位置付けて機能層に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、切削溝形成工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともに、保護部材を剥離するウエーハ支持工程と、ウエーハ支持工程が実施されたウエーハを構成する基板の裏面が貼着されたダイシングテープを拡張してデバイス間を広げるテープ拡張工程とを含んでいるので、次の作用効果が得られる。
(1)レーザー加工工程によるアブレーション加工によって機能層に形成されるレーザー加工溝の側面に溶融物が付着しても、レーザー加工溝を切削ブレードで切削しないので、切削ブレードの接触によって突発的にデバイスの外周に欠けが生じるという問題が解消する。
(2)レーザー加工工程によるアブレーション加工における機能層の除去が不十分であっても、基板の裏面側から形成された切削溝にレーザー加工溝が達すればウエーハを個々のデバイスに分割することができ、レーザー加工溝を切削ブレードで切削しないので、機能層に剥離が生じるという問題が解消する。
(3)切削ブレードの幅を超える幅のレーザー加工溝を形成する必要がないので、分割予定ラインの幅を狭くすることができ、ウエーハに形成することができるデバイスの数を増大することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるウエーハの加工方法について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1の(a)および(b)には、本発明によるウエーハの加工方法によって個々のデバイスに分割される半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。
図1の(a)および(b)に示す半導体ウエーハ2は、厚みが例えば140μmのシリコン等の基板20の表面20aに絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層21が形成されており、この機能層21に格子状に形成された複数の分割予定ライン22によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス23が形成されている。なお、図示の実施形態においては、機能層21を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっており、厚みが10μmに設定されている。
【0016】
上述した半導体ウエーハ2を分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法について説明する。
先ず、半導体ウエーハ2を構成する機能層21に形成された分割予定ライン22に沿ってレーザー光線を照射することにより機能層21をアブレーション加工し、機能層21を分割予定ライ22に沿って切断するレーザー加工溝を形成する機能層切断工程を実施する。この機能層切断工程は、
図2に示すレーザー加工装置3を用いて実施する。
図2に示すレーザー加工装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32と、チャックテーブル31上に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって
図2において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって
図2において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0017】
上記レーザー光線照射手段32は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング321を含んでいる。ケーシング321内には図示しないパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング321の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器322が装着されている。なお、レーザー光線照射手段32は、集光器322によって集光されるパルスレーザー光線の集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(図示せず)を備えている。
【0018】
上記レーザー光線照射手段32を構成するケーシング321の先端部に装着された撮像手段33は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0019】
上述したレーザー加工装置3を用いて、半導体ウエーハ2を構成する機能層21に形成された分割予定ライン22に沿ってレーザー光線を照射することにより機能層21をアブレーション加工し、機能層21を分割予定ライ22に沿って切断するレーザー加工溝を形成する機能層切断工程について、
図2および
図3を参照して説明する。
先ず、上述した
図2に示すレーザー加工装置3のチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、機能層21の表面21aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない加工送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0020】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン22と、該分割予定ライン22に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された分割予定ライン22に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0021】
上述したアライメント工程を実施したならば、
図3の(a)で示すようにチャックテーブル31をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン22を集光器322の直下に位置付ける。このとき、
図3の(a)で示すように半導体ウエーハ2は、分割予定ライン22の一端(
図3の(a)において左端)が集光器322の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段32の集光器322からパルスレーザー光線LBを照射しつつチャックテーブル31を
図3の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、
図3の(b)で示すように分割予定ライン22の他端(
図3の(b)において右端)が集光器322の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。このレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを分割予定ライン22の表面付近に合わせる。
【0022】
次に、チャックテーブル31を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)に分割予定ライン22の間隔だけ移動する。そして、レーザー光線照射手段32の集光器322からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル31を
図3の(b)において矢印X2で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめ、
図3の(a)に示す位置に達したらパルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。
【0023】
上述した機能層切断工程を実施することにより、
図3の(c)に示すように半導体ウエーハ2には機能層21を切断したレーザー加工溝210が形成される。そして、上述した機能層切断工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン22に沿って実施する。
【0024】
なお、上記機能層切断工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の波長 :355nm
繰り返し周波数 :200kHz
出力 :2W
集光スポット径 :φ6μm
加工送り速度 :500mm/秒
【0025】
次に、上記機能層切断工程の他の実施形態について、
図4を参照して説明する。
図4に示す実施形態は、上記機能層切断工程を実施することによって形成されたレーザー加工溝210が、半導体ウエーハ2を構成する機能層21を分断するとともに基板20の表面20aを僅かに超えて形成された例である。
【0026】
上述した機能層切断工程を実施したならば、半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、
図5の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21aに、デバイス23を保護するため保護部材4を貼着する(保護部材貼着工程)。なお、保護部材4は、ポリエチレンフィルム等の樹脂シートやガラス基板等の剛性を有するハードプレートを用いることができる。
【0027】
次に、上記保護部材貼着工程が実施された半導体ウエーハ2の保護部材4側をチャックテーブルに保持し、半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面側から分割予定ライン22と対応する領域に切削ブレードを位置付けて機能層21に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程を実施する。この切削溝形成工程は、
図6に示す切削装置5を用いて実施する。
図6に示す切削装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を切削する切削手段52と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を撮像する撮像手段53を具備している。チャックテーブル51は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって
図6において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0028】
上記切削手段52は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持された回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の先端部に装着された切削ブレード523を含んでおり、回転スピンドル522がスピンドルハウジング521内に配設された図示しないサーボモータによって矢印523aで示す方向に回転せしめられるようになっている。切削ブレード523は、アルミニウムによって形成された円盤状の基台524と、該基台524の側面外周部に装着された環状の切れ刃525とからなっている。環状の切れ刃525は、基台524の側面外周部に粒径が3〜4μmのダイヤモンド砥粒をニッケルメッキで固めた電鋳ブレードからなっており、図示の実施形態においては厚みが40μmで外径が52mmに形成されている。
【0029】
上記撮像手段53は、スピンドルハウジング521の先端部に装着されており、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0030】
上述した切削装置5を用いて切削溝形成工程を実施するには、
図6に示すようにチャックテーブル51上に上記保護部材貼着工程が実施され半導体ウエーハ2に貼着された保護部材4側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保護部材4を介して半導体ウエーハ2をチャックテーブル51上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル51に保持された半導体ウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル51は、図示しない加工送り手段によって撮像手段53の直下に位置付けられる。
【0031】
チャックテーブル51が撮像手段53の直下に位置付けられると、撮像手段53および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2の切削すべき領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段53および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン22と対応する領域と、切削ブレード523との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削ブレード523による切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された分割予定ライン22と対応する領域に対しても、同様に切削ブレード523による切削位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ2の分割予定ライン22が形成されている機能層21の表面21aは下側に位置しているが、撮像手段53が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、ウエーハを構成する基板20の裏面20bから透かして分割予定ライン22を撮像することができる。
【0032】
以上のようにしてチャックテーブル51上に保持されている半導体ウエーハ2の分割予定ライン22と対応する領域を検出し、切削領域のアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル51を切削領域の切削開始位置に移動する。このとき、
図7の(a)で示すように半導体ウエーハ2は切削すべき分割予定ライン22と対応する領域の一端(
図7の(a)において左端)が切削ブレード523の直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。
【0033】
このようにしてチャックテーブル51即ち半導体ウエーハ2が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード523を
図7(a)において2点鎖線で示す待機位置から矢印Z1で示すように下方に切り込み送りし、
図7の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、
図7の(a)および
図7の(c)に示すように切削ブレード523の下端が半導体ウエーハ2を構成する機能層21に至らない位置(例えば、機能層21が積層されている基板20の表面20aから裏面20b側に5〜10μmの位置)に設定されている。
【0034】
次に、切削ブレード523を
図7の(a)において矢印523aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル51を
図7の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、チャックテーブル51が
図7の(b)で示すように分割予定ライン22に対応する位置の他端(
図7の(b)において右端)が切削ブレード523の直下より所定量左側に位置するまで達したら、チャックテーブル51の移動を停止する。このようにチャックテーブル51を切削送りすることにより、
図7の(d)で示すように半導体ウエーハ2の基板20には裏面20bから表面20a側に一部201を残して切削溝220が形成される(切削溝形成工程)。即ち、この実施形態においては、切削溝220は機能層21を切断したレーザー加工溝210の底に達していない。
【0035】
次に、切削ブレード523を
図7の(b)において矢印Z2で示すように上昇させて2点鎖線で示す待機位置に位置付け、チャックテーブル51を
図7の(b)において矢印X2で示す方向に移動して、
図7の(a)に示す位置に戻す。そして、チャックテーブル51を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)に分割予定ライン22の間隔に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべき分割予定ライン22に対応する領域を切削ブレード523と対応する位置に位置付ける。このようにして、次に切削すべき分割予定ライン22に対応する領域を切削ブレード523と対応する位置に位置付けたならば、上述した切削溝形成工程を実施する。
【0036】
なお、上記切削溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
切削ブレード :外径52mm、厚さ40μm
切削ブレードの回転速度:30000rpm
切削送り速度 :50mm/秒
【0037】
上述した切削溝形成工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン22に対応する領域に実施する。
【0038】
次に、上記切削溝形成工程の他の実施形態について、
図8を参照して説明する。
図8に示す実施形態は、上記
図4に示すようにレーザー加工溝210が機能層21を切断するとともに基板20の表面20aを僅かに超えて形成された半導体ウエーハ2に対して上記切削溝形成工程を実施した例であり、レーザー加工溝210の底に達する切削溝220が形成される。従って、半導体ウエーハ2は個々のデバイス23に分割される。
【0039】
次に、切削溝形成工程が実施された半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bにダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともに、保護部材4を剥離するウエーハ支持工程を実施する。このウエーハ支持工程について、
図9を参照して説明する。
図9に示すウエーハ支持工程は、上記切削溝形成工程が実施されたチャックテーブル51上において実施する。即ち、
図9の(a)および(b)に示すようにウエーハを収容する大きさの開口部61を備えた環状のフレーム6の裏面に開口部61を覆うように外周部が装着されたダイシングテープ60の表面60a(粘着層が設けられ粘着面が形成されている)を切削溝形成工程が実施されたチャックテーブル51に保持されている半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bに貼着する。そして、
図9の (c)に示すように半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面に貼着されている保護部材4を剥離する。
【0040】
上述したようにウエーハ支持工程を実施したならば、半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面が貼着されたダイシングテープ60を拡張してデバイス間を広げるテープ拡張工程を実施する。このテープ拡張工程は、
図10に示すテープ拡張装置7を用いて実施する。
図10に示すテープ拡張装置7は、上記環状のフレーム6を保持するフレーム保持手段71と、該フレーム保持手段71に保持された環状のフレーム6に装着されたダイシングテープ60を拡張するテープ拡張手段72と、ピックアップコレット73を具備している。フレーム保持手段71は、環状のフレーム保持部材711と、該フレーム保持部材711の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ712とからなっている。フレーム保持部材711の上面は環状のフレーム6を載置する載置面711aを形成しており、この載置面711a上に環状のフレーム6が載置される。そして、載置面711a上に載置された環状のフレーム6は、クランプ712によってフレーム保持部材711に固定される。このように構成されたフレーム保持手段71は、テープ拡張手段72によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0041】
テープ拡張手段72は、上記環状のフレーム保持部材711の内側に配設される拡張ドラム721を具備している。この拡張ドラム721は、環状のフレーム6の内径より小さく該環状のフレーム6に装着されたダイシングテープ60に貼着される半導体ウエーハ2の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム721は、下端に支持フランジ722を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段72は、上記環状のフレーム保持部材711を上下方向に進退可能な支持手段723を具備している。この支持手段723は、上記支持フランジ722上に配設された複数のエアシリンダ723aからなっており、そのピストンロッド723bが上記環状のフレーム保持部材711の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ723aからなる支持手段723は、
図11の(a)に示すように環状のフレーム保持部材711を載置面711aが拡張ドラム721の上端と略同一高さとなる基準位置と、
図11の(b)に示すように拡張ドラム721の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。
【0042】
以上のように構成されたテープ拡張装置7を用いて実施するテープ拡張工程について
図11を参照して説明する。即ち、半導体ウエーハ2が貼着されているダイシングテープ60が装着された環状のフレーム6を、
図11の(a)に示すようにフレーム保持手段71を構成するフレーム保持部材711の載置面711a上に載置し、クランプ712によってフレーム保持部材711に固定する(フレーム保持工程)。このとき、フレーム保持部材711は
図11の(a)に示す基準位置に位置付けられている。次に、テープ拡張手段72を構成する支持手段723としての複数のエアシリンダ723aを作動して、環状のフレーム保持部材711を
図11の(b)に示す拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材711の載置面711a上に固定されている環状のフレーム6も下降するため、
図11の(b)に示すように環状のフレーム6に装着されたダイシングテープ60は拡張ドラム721の上端縁に接して拡張せしめられる(テープ拡張工程)。この結果、ダイシングテープ60に貼着されている半導体ウエーハ2には放射状に引張力が作用するため、
図7の(d)で示すように半導体ウエーハ2の基板20に裏面20bから表面20a側に一部201を残して切削溝220が形成されている場合には、残存した一部201が破断されるとともにデバイス間に間隔Sが形成される。また、
図8に示すように半導体ウエーハ2を構成する機能層21を分断するとともに基板20の表面20aを僅かに超えて形成されたレーザー加工溝210の底に達する切削溝220が形成され半導体ウエーハ2が個々のデバイス23に分割されている場合には、個々のデバイス23に分離されるとともにデバイス間に間隔Sが形成される。
【0043】
次に、
図11の(c)に示すようにピックアップコレット73を作動してデバイス23を吸着し、ダイシングテープ60から剥離してピックアップし、図示しないトレーまたはダイボンディング工程に搬送する。なお、ピックアップ工程においては、上述したようにダイシングテープ60に貼着されている個々のデバイス23間の隙間Sが広げられているので、隣接するデバイス23と接触することなく容易にピックアップすることができる。
【0044】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。上述した実施形態においてはウエーハを構成する機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施した後に、ウエーハを構成する基板の裏面側から分割予定ラインと対応する領域に切削ブレードを位置付けて機能層に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程を実施した例を示したが、保護部材貼着工程を実施した後、切削溝形成工程を実施する前にウエーハを構成する基板の裏面を研削してウエーハを所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施してもよい。