特許第6189567号(P6189567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6189567
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】タンパク質含有顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/04 20060101AFI20170821BHJP
   A23J 3/08 20060101ALI20170821BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20170821BHJP
   A23P 10/20 20160101ALI20170821BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20170821BHJP
【FI】
   A23J3/04
   A23J3/08
   A23J3/14
   A23P10/20
   A23L5/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-97507(P2017-97507)
(22)【出願日】2017年5月16日
【審査請求日】2017年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−313658(JP,A)
【文献】 特開2016−116494(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/123113(WO,A1)
【文献】 特開2001−346522(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/117958(WO,A1)
【文献】 特開昭58−004428(JP,A)
【文献】 特表2010−511393(JP,A)
【文献】 特表2015−519885(JP,A)
【文献】 特開昭56−023878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/00
A23P 10/20
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳タンパク質、卵タンパク質、及び植物性のタンパク質から選択された1種以上の第1のタンパク質を60質量%以上含む粉末原料を流動層造粒にて造粒しタンパク質含有顆粒を製造する方法であって、
前記粉末原料に、乳タンパク質、卵タンパク質、植物性のタンパク質から選択された1種以上の第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液を噴霧して造粒することを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記第1のタンパク質が乳タンパク質及び大豆タンパク質から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2のタンパク質が、ホエイタンパク質及び大豆タンパク質から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加水分解物が、ホエイタンパク質の加水分解物及び大豆タンパク質の加水分解物から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1のタンパク質、並びに第2のタンパク質及び/又はその加水分解物の起源が同一であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記噴霧液が、前記第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を3〜25質量%含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記粉末原料及び噴霧液の少なくとも何れかに、さらに乳化剤を添加することを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記タンパク質含有顆粒が、タンパク質を50質量%以上含有することを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の製造方法により製造されたタンパク質含有顆粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を含有する顆粒の製造方法に関する。特に、高含有率でタンパク質を含有し、水等に分散して飲用される顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特にスポーツ選手や運動負荷の高い人向けに、栄養補助食品としてタンパク質含有粉末が開発されている。
このようなタンパク質含有粉末は、水濡れ性が悪く、水に容易に溶解・分散しないで「ままこ」(ダマ)を形成するという問題があり、一度できてしまったダマは、丹念につぶさないと完全に溶解・分散させることは困難である。この問題は、主成分となるタンパク質粉末原料の影響であり、タンパク質含有率が高くなると、タンパク質含有粉末の水等への溶解性がより困難になる。
【0003】
タンパク質含有粉末の水等への溶解性を向上させる技術としては、乳化剤や糖類を添加することが知られている。
例えば、特許文献1には、ホエープロテイン含有顆粒に、乳化剤としてHLBが13〜18であるラウリン酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることにより、ダマの発生を抑制することができることが記載されている。 また、特許文献2には、オリゴ糖等の糖質を乳清タンパク質に添加することで、吸水性が向上し、液状食品に混合した時の「ままこ」状態が短時間で解消されること、さらに、乳清タンパクを顆粒状にすることで、より吸水性、分散性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/123113号パンフレット
【特許文献2】特開2006−149371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンパク質含有食品の飲用溶媒への溶解性を高める新規な技術を提供することを課題とする。
特に、砂糖や乳化剤の使用量を増やすなど食品中のタンパク質含有率を低減させることなく、タンパク質含有食品の水への溶解性を高めることに寄与する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究開発を行った結果、タンパク質を含有する粉末原料を造粒してタンパク質含有顆粒を製造する方法において、前記粉末原料に、タンパク質及び/又はその加水分解物を含有する噴霧液を噴霧して造粒すること、すなわちタンパク質及び/又はその加水分解物を、タンパク質を含有する粉末原料のバインダー(結着剤)として用いることにより、水への溶解性が高いタンパク質含有顆粒が得られることが分かった。
【0007】
前記課題を解決する本発明は、第1のタンパク質を含む粉末原料を流動層造粒にて造粒しタンパク質含有顆粒を製造する方法であって、前記粉末原料に第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液を噴霧して造粒することを特徴とする。
本発明のタンパク質含有顆粒の製造方法によれば、タンパク質含有顆粒の水への溶解性を高めることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記第1のタンパク質は、乳タンパク質及び大豆タンパク質から選択された1種以上である。
本発明の好ましい形態では、前記第2のタンパク質は、ホエイタンパク質及び大豆タンパク質から選択された1種以上である。
乳タンパク質及び大豆タンパク質は、水等の飲用溶媒に溶解して飲用するためのタンパク質として広く用いられているため、本発明においても好適である。
また、第2のタンパク質としてホエイタンパク質及び大豆タンパク質から選択された1種以上を用いることで、粉末原料の水への溶解性を高めることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記加水分解物は、ホエイタンパク質の加水分解物及び大豆タンパク質の加水分解物から選択された1種以上である。
第2のタンパク質としてホエイタンパク質の加水分解物及び大豆タンパク質の加水分解物から選択された1種以上を用いることで、タンパク質含有顆粒の水への溶解性を高めることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記第1のタンパク質、並びに第2のタンパク質及び/又はその加水分解物の起源は同一である。
このような形態とすることにより、製品に使用する原料数を削減しやすくなる。これにより、例えばアレルギー対応がしやすい、原料表示を簡素化できる、又は製造コストを抑えられる等の利点が得られる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記噴霧液が、前記第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を3〜25質量%含む。
噴霧液の前記第2のタンパク質及び/又はその加水分解物の濃度を前記範囲とすることで、タンパク質含有顆粒の良好な溶解性の効果を得ることができ、一方で、噴霧液の粘性を噴霧に適した範囲とすることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記粉末原料及び噴霧液の少なくとも何れかに、さらに乳化剤を添加する。
このような形態とすることで、タンパク質含有顆粒の溶解性をさらに高めることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記タンパク質含有顆粒が、タンパク質を50質量%以上含有する。
本発明の製造方法は、高含有率でタンパク質を含む顆粒の製造において、タンパク質以外の原料の含有量を極力低減させつつ、溶解性を高めることができる点で有用である。
【0014】
本発明のタンパク質含有顆粒は、本発明の製造方法により製造されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタンパク質含有顆粒の製造方法によれば、タンパク質含有顆粒の水への溶解性を高めることができる。特に、タンパク質含有顆粒中のタンパク質の含有率を低減させることなく、タンパク質含有顆粒の水への溶解性を高めることができる。
従って、本発明の製造方法は、タンパク質を50質量%以上含む栄養補助食品の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタンパク質含有顆粒の製造方法は、第1のタンパク質を含む粉末原料を流動層造粒にて造粒する方法である。本発明の製造方法では、前記粉末原料に、第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液を噴霧して造粒することを特徴とする。
以下、本発明の製造方法に用いる原料、及び製造方法に含まれる工程について説明する。
【0017】
(1)第1のタンパク質を含む粉末原料
第1のタンパク質としては、例えば、乳タンパク質、卵タンパク質等の動物由来のタンパク質、大豆タンパク質、エンドウマメタンパク質等の植物由来のタンパク質が挙げられる。乳タンパク質としては、ホエイやカゼインの各タンパク質成分が挙げられる。
粉末原料におけるタンパク質の総含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。このような粉末原料で特に溶解性の課題が存在するためである。
ホエイタンパク質を含む粉末原料として、WPC(ホエイタンパク濃縮物、タンパク質含有量が75〜85質量%)、WPI(ホエイタンパク分離物、タンパク質含有量が85質量%以上)が挙げられる。
カゼインタンパク質を含む粉末原料として、脱脂乳を分離して得られたカゼインカードを中和して得られるカゼインタンパク質の塩(カルシウム塩、ナトリウム塩等)を主体とする原料が挙げられる。
また、ホエイタンパク質及びカゼインタンパク質を含む粉末原料として、粉乳や脱脂粉乳が挙げられる。
大豆タンパク質を含む粉末原料として、濃縮大豆タンパク質(タンパク質含有量が60〜85質量%)、分離大豆タンパク質(タンパク質含有量が85質量%以上)が挙げられる。
これらの粉末原料は市販されているので、それらを適宜用いることができる。
【0018】
(2)第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液
第2のタンパク質としては、例えば、第1のタンパク質として前述したものを用いることができる。
第2のタンパク質としては、特に、乳タンパク質であるホエイタンパク質、植物タンパク質である大豆タンパク質、それらの加水分解物が好ましく用いられる。
第2のタンパク質及び/又はその加水分解物は、第1のタンパク質と同一であっても異なっていてもよいが、第1のタンパク質と起源を同一とするタンパク質を用いることで、原料の削減がしやすくなり、アレルギー対応がしやすい、原材料表示が簡素化される、又は製造効率を高めることができる等の利点を得ることができる。
【0019】
また、第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液を調製する際の第2のタンパク質を含む原料の少なくとも一部について、第1のタンパク質を含む粉末原料と同じとすることで、製品あたりの原料点数を相対的に少なくできるなど、製造効率の観点で好ましい。
【0020】
噴霧液の調製に用いられる溶媒としては、水が好ましい。噴霧液におけるタンパク質の含有量は、好ましくは3〜25質量%、さらに好ましくは3.5〜20質量%、特に好ましくは4〜15質量%である。このような範囲とすることで、噴霧しやすい粘性の噴霧液とすることができ、本発明の効果も得ることができる。
噴霧液として、WPC、WPI、濃縮大豆タンパク質、分離大豆タンパク質、これらのタンパク質原料を加水分解して得られる加水分解物から選ばれる原料を4〜25質量%、好ましくは5〜22質量%含む形態が挙げられる。
また、噴霧液には、砂糖等の糖類を0.5〜5質量%含む形態も好ましく挙げられる。
【0021】
(4)任意成分
粉末原料及び/又は噴霧液には、任意成分を添加することができる。
例えば、バインダー(結着剤)として、前述した第2のタンパク質及び/又はその加水分解物に加え、従来用いられている糖類もしくは糖アルコール、デンプンおよびその分解物、増粘多糖・ガム質類、セルロース誘導体、合成高分子等を用いることができる。これにより、溶解性を高めることができる。
【0022】
また、乳化剤を添加することもできる。乳化剤の種類は特に限定されないが、本発明の目的を阻害しない範囲で汎用される乳化剤を使用することができる。例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドが挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これにより、溶解性を高めることができる。
この場合、乳化剤の含有量は、粉末原料における含有量が好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜2.5質量%となるように添加する。
但し、乳化剤は、粉末原料又は噴霧液の何れかに添加してもよいし、両者に分けて添加してもよい。
乳化剤を噴霧液に添加する場合は、噴霧液における乳化剤の含有量が好ましくは0.05〜50質量%、さらに好ましくは0.2〜30質量%となるように添加する。
【0023】
また、本発明のタンパク質含有顆粒は、その用途に従い他の成分を含むことが出来る。例えば、糖類や食物繊維を含む糖質、酸味料や甘味料、増粘多糖・ガム質類、ミネラル、ビタミン類、アミノ酸やその他生体内機能性成分、香料等は適宜添加することができる。
【0024】
任意成分の含有量は、製造されるタンパク質含有顆粒におけるタンパク質の含有量が好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上となるように制限することが好ましい。
【0025】
(5)タンパク質含有顆粒の製造方法
本発明の製造方法では、前記粉末原料の造粒において、前述した噴霧液を噴霧する。
粉末原料と噴霧液の組み合わせとして、例えば、以下が好ましく挙げられる。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、ホエイタンパク質を含むWPI、WPC、及びカゼインタンパク質を含む原料から選ばれる粉末原料を用い、第2のタンパク質を含む噴霧液として、ホエイタンパク質を含むWPI、WPCなどの原料、及びこのような原料に加水分解処理を施した加水分解物から選ばれる原料の水溶液及び/又は分散液を用いる形態が好ましく挙げられる。
また、第1のタンパク質を含む粉末原料として、分離大豆タンパク質を用い、第2のタンパク質を含む噴霧液として、分離大豆タンパク質、及びその加水分解物から選ばれる原料の水溶液及び/又は分散液を用いる形態が好ましく挙げられる。
さらに、第1のタンパク質を含む粉末原料として、分離大豆タンパク質を用い、第2のタンパク質を含む噴霧液として、ホエイタンパク質を含むWPI、WPCなどの原料、及びこのような原料に加水分解処理を施した加水分解物から選ばれる原料の水溶液及び/又は分散液を用いる形態;
第1のタンパク質を含む粉末原料として、ホエイタンパク質を含むWPI、WPC、及びカゼインタンパク質を含む原料から選ばれる粉末原料を用い、第2のタンパク質を含む噴霧液として、分離大豆タンパク質、及びその加水分解物から選ばれる原料の水溶液及び/又は分散液を用いる形態も挙げられる。
【0026】
造粒は、流動層造粒にて行う。流動層造粒は、通常用いられる流動層造粒装置を用いて粉末原料を流動化させ、これに噴霧液を噴霧することで行うことができる。
噴霧液の噴霧による第2のタンパク質及び/又はその加水分解物の、前記第1のタンパク質に対する供給量は、好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜7質量%である。
また、その他の造粒条件は、前記粉末原料が含まれる粒子が、前記噴霧液に含まれる第2のタンパク質を介して凝集・会合し乾燥・造粒される条件であればよく、流動層造粒において通常行われる条件設定により調整することが可能である。
【0027】
(5)タンパク質含有顆粒
本発明のタンパク質含有顆粒は、前述した製造方法により製造されたものである。
本発明のタンパク質含有顆粒におけるタンパク質の含有量は、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
また、乳化剤の含有量は、好ましくは2.5質量%以下である。
なお、後述する実施例に示す通り、第1のタンパク質と第2のタンパク質を同一とした場合でも、溶解性の向上が得られていることから、本発明のタンパク質含有顆粒は、組成では特定できない特徴的な立体的構造を有しているものと考えられる。
本発明のタンパク質含有顆粒は、水、牛乳等の飲用溶媒に溶解して飲用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明について、実施例を示しながらより詳細に説明する。
【0029】
<実施例1〜3>
表1に示す仕込み量(質量%、以下同じ。)により、実施例1〜3のタンパク質を含む顆粒を製造した。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、ホエイタンパク濃縮物(タンパク質含有量75質量%)を用いた。
第2のタンパク質を含む噴霧液として、前記ホエイタンパク濃縮物の21質量%、10質量%、5質量%水溶液及び/又は分散液を用いた。
粉末原料と調製した噴霧液を用い、流動層造粒装置を用いて造粒を行った。
【0030】
【表1】
【0031】
<比較例1>
比較例1のタンパク質を含む顆粒は、実施例1において噴霧液に添加されたWPC3.8%を粉末原料に含め、実施例と同等の砂糖濃度になる様に調製した水溶液を噴霧液として用いた以外は実施例1と同様の方法により製造した。
【0032】
タンパク質を含む噴霧液を用いた造粒の効果を検証するために、得られた実施例と比較例の顆粒について、以下の方法により溶解性試験を行った。
4℃の水200mlに対して顆粒20gを加えて、撹拌機(IWAKI STIRRER SSR)にプロペラ型撹拌羽根を装着して、回転数360rpm、120s撹拌後、目開き0.71mmに通篩し、篩上に残った残渣をダマとし、その質量を測定した。溶解性については、比較例1に対する質量の増減率(%)を測定し評価した。表2に結果を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すとおり、実施例1と比較例1のタンパク質顆粒は、その組成は同一であるにもかかわらず、本発明の方法を用いた実施例1ではダマが少なかった。すなわち、タンパク質を含む噴霧液を用いて流動層造粒を行うことで、タンパク質の溶解性を向上させることができることが分かった。
また、実施例1〜3の顆粒は、何れも比較例1と比較しダマが少なかった。噴霧液におけるWPCの濃度は、5質量%〜21質量%とすることが好ましいことが分かった。
【0035】
<実施例4、5>
実施例1と同様にして、実施例4のタンパク質を含む顆粒を製造した。
実施例5のタンパク質を含む顆粒は、実施例4に用いた噴霧液におけるWPCを、ホエイペプチド(ホエイタンパク質の加水分解物、(製品名HY−7907(Arla Foods))に代えて同様に製造した。
また、比較例1と同様にして、比較例2のタンパク質を含む顆粒を製造した。
得られた顆粒について、攪拌時間を60sとした以外は、実施例1〜3についてと同様に溶解試験を行い、比較例2に対するダマの質量の増減率(%)を測定した。
結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
噴霧液にホエイペプチドを用いた実施例5においても、WPCを用いた実施例4と同様に比較例2に対して有意にダマを抑制することができた。
これより、造粒の際のバインダーとしては、WPCの他にその加水分解物も用いることができることが分かった。
【0038】
<実施例6>
表4に示す仕込み量により、実施例6のタンパク質を含む顆粒を製造した。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、ホエイタンパク分離物(タンパク質含有量85質量%)を用いた。
第2のタンパク質を含む噴霧液として、前記ホエイタンパク分離物の22質量%水溶液及び/又は分散液を用いた。
粉末原料と調製した噴霧液を用い、流動層造粒装置を用いて造粒を行った。
【0039】
【表4】
【0040】
<比較例3>
比較例3のタンパク質を含む顆粒は、実施例6において噴霧液に添加されたWPI5%を粉末原料に含め、実施例と同等の砂糖濃度になる様に調製した水溶液を噴霧液として用いた以外は実施例6と同様の方法により製造した。
【0041】
タンパク質を含む噴霧液を用いた造粒の効果を検証するために、得られた実施例と比較例の顆粒について、実施例1〜3についての試験方法と同様の方法により溶解性試験を行った。但し、攪拌条件は540rpm、60sとした。表5に結果を示す。
【0042】
【表5】
【0043】
第1のタンパク質及び第2のタンパク質としてWPIを用いた場合でも、ダマを抑制する効果が得られた。
【0044】
<実施例7>
表6に示す仕込み量により、実施例7のタンパク質を含む顆粒を製造した。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、実施例1で用いたホエイタンパク濃縮物とカゼインタンパク質のカルシウム塩を混合したもの(タンパク質含有量90質量%)を用いた。
第2のタンパク質を含む噴霧液として、前記ホエイタンパク濃縮物の21質量%水溶液及び/又は分散液を用いた。
粉末原料と調製した噴霧液を用い、流動層造粒装置を用いて造粒を行った。
【0045】
【表6】
【0046】
<比較例4>
比較例4のタンパク質を含む顆粒は、実施例7において噴霧液に添加されたWPC3.8%を粉末原料に含め、実施例と同等の砂糖濃度になる様に調製した水溶液を噴霧液として用いた以外は実施例7と同様の方法により製造した。
【0047】
タンパク質を含む噴霧液を用いた造粒の効果を検証するために、得られた実施例と比較例の顆粒について、実施例1〜3についての試験方法と同様の方法により溶解性試験を行った。但し、攪拌時間は60sとした。表7に結果を示す。
【0048】
【表7】
【0049】
第1のタンパク質としてWPCとカゼインタンパク質を組み合わせて用い、第2のタンパク質としてWPCを用いた場合には、極めて高いダマを抑制する効果が得られた。
【0050】
<実施例8>
表8に示す仕込み量により、実施例8のタンパク質を含む顆粒を製造した。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、分離大豆タンパク質(タンパク質含有量87質量%)を用いた。
第2のタンパク質を含む噴霧液として、分離大豆タンパク質の17質量%水溶液及び/又は分散液を用いた。
粉末原料と調製した噴霧液を用い、流動層造粒装置を用いて造粒を行った。
【0051】
【表8】
【0052】
<実施例9>
実施例9のタンパク質を含む顆粒は、実施例8における噴霧液に用いる分離大豆タンパク質を、大豆ペプチド(大豆タンパク質の加水分解物、(製品名 ハイニュートAM(不二製油))に代えて同様に製造した。
【0053】
<比較例5>
比較例5のタンパク質を含む顆粒は、実施例8において噴霧液に添加された分離大豆タンパク質3%を粉末原料に含め、実施例と同等の砂糖濃度になる様に調製した水溶液を噴霧液として用いた以外は実施例8と同様の方法により製造した。
【0054】
タンパク質を含む噴霧液を用いた造粒の効果を検証するために、得られた実施例と比較例の顆粒について、実施例1〜3についての試験方法と同様の方法により溶解性試験を行った。但し、4℃の水200mlに対し10gの顆粒を加え、攪拌条件は300rpm、30sとした。表9に結果を示す。
【0055】
【表9】
【0056】
第1のタンパク質及び第2のタンパク質として分離大豆タンパク質を用いた場合にも、極めて高いダマを抑制する効果が得られた。
また、第2のタンパク質として分離大豆タンパク質に代えて大豆ペプチド(加水分解物)を用いた場合にも、ダマを抑制する効果が得られた。
【0057】
<実施例10>
表10に示す仕込み量により、実施例10のタンパク質を含む顆粒を製造した。
第1のタンパク質を含む粉末原料として、前記分離大豆タンパク質を用いた。
第2のタンパク質を含む噴霧液として、前記WPCの17質量%水溶液及び/又は分散液を用いた。
粉末原料と調製した噴霧液を用い、流動層造粒装置を用いて造粒を行った。
【0058】
【表10】
【0059】
<比較例6>
比較例6のタンパク質を含む顆粒は、実施例10において噴霧液に添加されたWPC3%を粉末原料に含め、実施例と同等の砂糖濃度になる様に調製した水溶液を噴霧液として用いた以外は実施例10と同様の方法により製造した。
【0060】
タンパク質を含む噴霧液を用いた造粒の効果を検証するために、得られた実施例と比較例の顆粒について、実施例1〜3についての試験方法と同様の方法により溶解性試験を行った。但し、4℃の水200mlに対し15gの顆粒を加え、攪拌条件は300rpm、30sとした。表11に結果を示す。
【0061】
【表11】
【0062】
第1のタンパク質及び第2のタンパク質を異なる起源のタンパク質とした場合にも、高いダマを抑制する効果が得られた。
【0063】
<まとめ>
以上の実施例より、本発明のタンパク質を含む噴霧液を噴霧しながら流動層造粒による造粒を行うことで、溶解性が改善されたタンパク質を含む顆粒を製造することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、タンパク質を高含有率で含み、水等の飲用溶媒に溶解、分散して飲用される栄養機能食品の製造に利用できる。
【要約】
【課題】タンパク質含有食品の飲用溶媒への溶解性を高める新規な技術を提供する。
【解決手段】第1のタンパク質を含む粉末原料を流動層造粒にて造粒しタンパク質含有顆粒を製造する際に、前記粉末原料に、第2のタンパク質及び/又はその加水分解物を含む噴霧液を噴霧して造粒する。
【選択図】なし