(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
家畜の乳頭口を含む部分に貼り付けられる乳頭口保護パッチであって、弾性シートと該弾性シートの一方の面に積層された粘着剤層との積層体を含み、該積層体の2倍伸張引張応力が0.1〜5Nの範囲にあることを特徴とする乳頭口保護パッチ。
前記積層体は、少なくとも線対称の平面形状を有しており、且つ該線対称の軸となる縦軸線と該縦軸線に直交し且つ該積層体の縦軸方向最大長さを2等分する横軸線との交点を中心とする円形もしくは楕円形の乳頭口貼付け部と、該乳頭口貼付け部から外方に延びている複数の乳頭側面貼り付け部とを有しており、該乳頭口貼付け部は、少なくとも前記縦軸線または横軸線を間に挟んだ複数個所で外部に露出している請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
前記積層体の平面形状について、矩形状の仮想外接四辺形を形成した時、該外接四辺形の長辺の長さが30〜200mmの範囲にあり且つ短辺の長さが20〜150mmの範囲にある請求項4に記載の乳頭口保護パッチ。
前記積層体の粘着剤層とは反対側の表面に、剥離性の保護フィルムが積層されており、前記粘着剤層表面には、離型シートが貼り付けられている請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
請求項1に記載の乳頭口保護パッチを貼り付ける前に、殺菌消毒剤を乳頭口に塗布するか、又は殺菌消毒剤を乳管に注入する請求項12に記載の家畜の乳頭を保護する方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、全体として10で示されている本発明の乳頭口保護パッチ(以下、単に「乳頭パッチ」と呼ぶことがある)は、1で示される積層体を有するものであり、この積層体1は、弾性シート2と、弾性シート2の一方の面の全体にわたって積層された粘着剤層3との2層構造を有する。
【0020】
かかる乳頭パッチ10は、粘着剤層3を介して、
図2に示されているように乳頭口を覆うように乳頭に貼り付けられる。即ち、乳頭の内部には、乳管が延びており、乳頭の先端(下端部)が、乳管が外部に露出した乳頭口となっているため、この乳頭口を本発明の乳頭パッチ10で覆うことにより、乳頭口からの細菌等による感染を防止するわけである。
【0021】
従って、乳頭口保護の観点からは、この乳頭パッチ10は、上記の積層シート1のみから構成されていてもよいが、通常は、取扱い性の観点から、弾性シート2の他方の面には保護フィルム5が設けられており、粘着剤層3には、離型シート7が貼り付けられている。即ち、離型シート7を剥がした後、積層体1の粘着剤層3を
図2に示されているように貼付し、次いで、保護フィルム5を引き剥がし、この状態で積層体1が乳頭に固定されることとなる。
【0022】
(積層体1)
本発明において、上記の積層体1は、2倍伸張引張応力が0.1〜5N、特に0.2〜3N、最も好ましくは0.2〜1.0Nの範囲にあることが重要である。
この2倍伸張引張応力は、この積層体1の長さを2倍の長さに伸張させるために必要な応力であり、後述する実施例で示すように、引張試験機を用いて測定される。この応力には方向性はなく、何れの方向に2倍の長さに伸張させた場合にも、上記範囲の値を示すということである。
なお、2倍伸長引張応力を限定した理由は、以下の通りである。粘着剤層を有する積層体1は、乳頭に貼付する際、若干引延ばして貼付する場合がある。また、乳頭に貼付された後、家畜が動き回ったり、乳頭の大きさが変化して、貼付後の積層体1が引延ばされる場合がある。このように引延ばされることを考慮して、積層体1が2倍に伸長した時の応力を限定した。つまり、2倍に伸長した積層体1の応力を限定すれば、引延ばされることを想定した積層体1の乳頭への形状追随性を評価できる。
【0023】
即ち、積層体1が上記のような2倍伸張引張応力を示すということは、この積層体1が適度な弾性を示し、家畜の動作による乳頭の変形に応じて、伸張或いは収縮し、この乳頭の変形に追随することを意味する。例えば、積層体1の2倍伸張引張応力が上記範囲よりも小さいと、乳頭に貼り付けられた積層体1が過度に伸張することとなり、この結果、乳頭からの剥がれを生じ易くなってしまったり、破れやすくなってしまう。さらには、積層体1が柔らかすぎるため、乳頭へ貼付する操作が困難となる。また、2倍伸張引張応力が上記範囲よりも大きいと、積層体1の伸縮性が不十分となり、例えば家畜の動きによって乳頭が変形したとき、積層体1が乳頭の変形に追随せず、やはり乳頭からの剥がれが生じやすくなってしまう。
【0024】
また、かかる積層体1は、その厚みが11〜150μmとなる範囲で、2倍伸張引張応力が上述した範囲内に設定されていることが好ましい。この厚みが薄すぎると、乳頭への貼り付け作業を行い難くなり、さらに、使用済みの積層体1を乳頭からの引き剥がし作業が困難となるおそれもある。一方、積層体1の厚みが過度に厚いと、乳頭の変形に対する追随性が低下し、剥がれ易くなる傾向がある。
【0025】
さらに、乳頭の変形に対する追随性や貼付けの作業性をより高めるために、積層体1の引張弾性率が、1MPa以下、特に0.05〜0.5MPa以、最も好ましくは0.05〜0.3MPaの範囲にあることが好適である。
【0026】
(弾性シート2)
上記の積層体1を構成する弾性シート2は、この上に粘着剤層3を設けて積層体1としたときに、2倍伸張引張応力が上記範囲となるような弾性材料により形成される。
このような弾性材料としては、これに限定されるものではないが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、酢酸ビニル系エラストマー、軟質塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーの中でも、後述する保護フィルム5に対する粘着保持性に優れ、さらには、上記範囲の2倍伸張引張応力が得られるように物性を調整することが容易であることから、ポリウレタンが好適である。即ち、所定の範囲の2倍伸張引張応力を確保するためには、上記ポリマーについて、そのモノマー組成(共重合比)、結晶性、分子量、可塑剤含量などを適宜の範囲に調整し、且つ物性に応じてシートの厚みを調整すればよい。このような物性調整や厚み調整により2倍伸張引張応力を調整した場合、ポリウレタンにより弾性シート2を形成したときには、厚みを過度に薄くせずに、所定の2倍伸張引張応力を得ることができる。例えば、積層体1の厚みを前述した範囲内として2倍伸張引張応力を所定の範囲内とするためには、ポリウレタンを用いて弾性シート2を形成することもが最も好適である。このようなポリウレタン製の弾性シート2は、特に後述する保護フィルム5を格別に粘着剤などを使用せずに、直接粘着固定し得るという点でも有利である。
また、ポリウレタン製の弾性シート2を用いることにより、以下の利点もある。乳頭へ貼付した積層体1の最外面にある弾性シート2は、それ自体に粘着性があり、弾性シート2の面同士が接着し易い。そのため、積層体1に浮き・シワが入ったとしても、浮き・シワが入った部分の弾性シート2を、弾性シート2の乳頭に密着している部分に押圧するなどして接着させることにより、両者が強固に接着して、浮き・シワを低減できる。その結果、乳頭からの剥がれを少なくできるものと考えられる。
【0027】
このような弾性シート2の厚みは、後述する粘着剤層3が積層された積層体1の厚みが前述した範囲(11〜150μm)となるような厚みに設定され、粘着剤層3の厚みが薄いことを考慮して、通常、10〜100μmの範囲とするのがよい。
【0028】
また、この弾性シート2は、着色されていることが好適である。この着色により、積層体1が貼り付けられたことを、暗い牛舎内でも容易に視認することができ、貼り付け作業や貼付けの確認が容易となる。
さらには、弾性シート2を着色し、弾性シート2の色の違う複数の積層体1を準備することにより、以下のような使い方も可能となる。牛などは、通常、一頭に4つの乳頭が存在する。例えば、そのうち細菌等で完成されて治療が必要と思われる乳頭に貼付する積層体1と、正常な乳頭に貼付される積層体1との色を変えることにより、効率のよい治療が可能となる。また、治療が必要と思われる家畜と、健常な家畜とで、乳頭に貼付する積層体1の色を変えることもできる。
さらに、家畜の乳頭に積層体1を貼付した日によって積層体1の色を変えれば、例えば、牛などの家畜であれば、乾乳期に入ってから何日たったか等の管理がし易くなる。
つまり、色分けした積層体1を使用することにより、各家畜の状態を把握することもできるようになる。
【0029】
尚、弾性シート2が着色されている場合、後述する保護フィルム5に対する粘着性を高める上で、弾性シート2を着色された層と未着色の層との2層構造とし、未着色の層上に保護フィルム5を粘着固定することが望ましい。
【0030】
(粘着剤層3)
粘着剤層3は、上述した弾性シート2の一方の面に積層され、乳頭に対する貼付け面となるものである。
このような粘着剤層3は、弾性シート2に加え、乳頭に対しても接着性を示し、使用後には乳頭から速やかに引き剥がすことが可能な粘着力を示すようなものである限り、公知の粘着剤により形成されていればよい。
このような粘着剤は、絆創膏等に使用されているものであり、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系のものがあるが、特に家畜の乳頭に対して安全であり且つかぶれ等が生じないという点で、(メタ)アクリレート系の粘着剤が好適である。
【0031】
このような粘着剤層3は、乳頭への十分な接着性を確保できる程度の厚みを有するが、通常、積層体1の厚み(弾性シート2と粘着剤層3との合計厚み)が前述した11〜150μmの範囲となることを条件として、1〜50μm程度の厚みを有していることが好適である。
【0032】
(保護フィルム5)
弾性シート2の他方の面に積層されている保護フィルム5は、保管時での弾性シート2の変形を防止し、また、貼り付け作業時での弾性シート2同士の接着を防止し、貼り付け作業を容易に行うために設けられるものである。
即ち、本発明の乳頭パッチ10は、離型シート7を粘着剤層3から引き剥がし、保護フィルム5が設けられたままの状態で粘着剤層3の少なくとも一部を乳頭に貼付け、この状態で保護フィルム5が積層体1気相体1(弾性シート2)から引き剥がされ、次いで、手での押圧等により、粘着剤層3の全体が乳頭に粘着固定される。勿論、積層体1の大きさによっては、粘着剤層3の全体を乳頭に貼り付けた後、保護フィルム5が積層体1から引き剥がされる。
【0033】
従って、この保護フィルム5は、腰のあるものであり、弾性シート2よりも引張弾性率が大きいものでなければならない。このような観点から、保護フィルム5としては、各種熱可塑性樹脂のフィルム、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル製フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂フィルムなどが使用されるが、特に透明性を有するものが、弾性シート2(積層体1)の存在を認識できるという点で好適である。従って、透明性が優れている点で、保護フィルム5としては、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムが特に好適である。なお、かかるフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、および二軸延伸フィルムの何れのフィルムであってもよい。
【0034】
また、保護フィルム5は、粘着剤を用いて弾性シート2に積層することもできるが、粘着剤層3が乳頭に接着された状態で、粘着剤層3が乳頭から引き剥がれずに保護フィルム5を積層体1から引き剥がさなければならない。このため、粘着剤を用いての保護フィルム5の弾性シート2への積層は、粘着力の調整が必要となる。従って、保護フィルム5は、粘着剤を用いることなく弾性シート2に直接貼り付けることが、粘着力の調整を必要としないという点で望ましい。また、保護フィルム5を直接弾性シート2に貼り付けることができるという点で、この保護フィルム5は、前述したPET等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂フィルムであることが好適である。なお、該保護フィルム5は、コロナ処理等の表面処理が施されたものであっても、該表面処理が施されていないものであってもよい。該表面処理は、弾性シート2との密着性を勘案して適宜実施すればよい。
また、前記の通り、保護フィルム5は、粘着剤を介さずに弾性シート2と接合していることが好ましい。また、保護フィルム5の弾性シート2からはみ出している部分5aは、粘着剤を介さずに下記に詳述する剥離シート7と接合していることが好ましい。積層体1を乳頭に貼付する際には、先ず、下記に詳述する剥離シート7を剥がして、粘着剤層3を直接乳頭へ貼り付ける。その後、保護フィルム5を剥がすが、この際、剥がす保護フィルム5に粘着剤が付着していないことにより、保護フィルム5の剥離が容易になり、手などに保護フィルム5が付くことなく、操作性をより向上できる。
【0035】
また、この保護フィルム5の厚みは、弾性シート2からの引き剥がし作業を損なわない程度の適宜の厚みを有していればよいが、引き剥がし作業を容易に行うことができるという点で、
図1に示されているように、弾性シート2よりも若干大きいことが好ましい。即ち、弾性シート2からはみ出している部分5aを摘まんで、保護フィルム5を容易に引き剥がすことができるからである。そのため、該保護フィルム5の厚みは、弾性シート2の厚みを勘案して決定すればよいが、実際には、操作性を考慮すると、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることが好ましい。なお、該保護フィルム5の厚みの上限は、特に制限されるものではないが、操作性および経済性を考慮すると、300μmである。
【0036】
(離型シート7)
離型シート7は、製造時や保管時等において、粘着剤層3同士の接着を防止するためのものであり、乳頭への貼り付け作業時には引き剥がされるものである。
従って、この離型シート7は、未使用時に粘着剤層3に保持されているが容易に引き剥がし可能なものであればよく、例えばシリコーンペーパなどの離型紙である。
また、この離型シート7は、粘着剤層3を確実に覆うために、粘着剤層3よりも若干大きいものであるが、引き剥がし作業を容易に行うために、
図1に示されているように、中央部分に切り込み線7aが設けられており、中央部分で完全に分断されていることが望ましい。すなわち、剥離シート7が中央部分で完全に分断できることにより、以下のような貼付の仕方が可能となる。先ず、一方の剥離シート7を積層体1(保護フィルム5付き)から剥がし、剥がした部分の粘着剤層3を乳頭に貼り付ける。次いで、もう一方の剥離シート7を積層体1(保護フィルム5付き)から剥がし、もう一方の剥がした部分の粘着剤層3を乳頭に貼り付ける。このような多段階での貼付が可能となる。一回で剥離シート7を全て剥がして操作する場合には、家畜が動いたりした場合に、粘着剤層3同士が接着する可能性が高くなるが、多段階で貼付することにより、粘着剤層3同士が接着する可能性を低減できる。この多段階での貼付方法は、柔らかい弾性シート2を使用する本発明の積層体1を使用する場合に、特に適している。
そして、このような多段階の操作を行う場合であっても、保護フィルム5が粘着剤を有さない場合には、該保護フィルム5の剥離が容易となり、操作性を向上できる。
【0037】
(積層体の機能性)
上述した構造を有する本発明の乳頭パッチ10は、殺菌消毒剤、保湿剤、漏乳検査剤、忌避剤などの薬剤により所定の機能が加えられたものであってよい。
上記の薬剤は、上述した弾性シート2や粘着剤層3の機能を損なわない限りにおいて、弾性シート2や粘着剤層3中に配合されていてもよいし、弾性シート2や粘着剤層3の表面にコートされていてもよく、さらには、粘着剤層3がブリーディング性を有していることから、弾性シート2と粘着剤層3との界面に、これらの薬剤を塗布しておくこともできる。
【0038】
上記の殺菌消毒剤としては、例えば、ヨウ素化合物、銀、銅、亜鉛、チタン、鉄などの金属及び金属塩、茶葉粉末、ヒノキ粉末、キトサン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カプリル酸モノグリセリドなどの脂肪酸エステル、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、レゾルシン、トリクロロカルバニド、ハロカルバン、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素等を例示することができる。これらの中でも、ヒトあるいは家畜に対する皮膚刺激性や、殺菌消毒効果の持続性、及びコスト面における観点から、ヨウ素化合物及び銀が好適である。
ヨウ素化合物としては、例えばヨウ素、ポピドンヨウ素、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨードホルムなどが挙げられる。
【0039】
保湿剤としては、ワセリン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール類や、ピロリドンカルボン酸塩や乳酸塩、尿素やヒアルロン酸ナトリウムなどの天然保湿成分が挙げられる。
【0040】
漏乳検査剤としては、タンパク質や糖と反応し呈色する一般的な試薬を用いることができる。機能性付与剤層は、前記殺菌消毒剤、保湿剤、漏乳検査剤それぞれ単独の薬剤から形成されてもよいし、複数の薬剤から形成されてもよい。
【0041】
また、忌避剤は、所謂防虫剤であり、例えば、ユーカリオイル、菊酸、シトロネラ等の天然物由来成分、ピレトリン等の天然ピレスロイド、アレスリン等の合成ピレスロイドが挙げられる。
このような忌避剤は、一般に、弾性シート2の表面(粘着剤層3とは反対側の面)に塗布される。かかる忌避剤の使用により、アブやハチなどの牛に危害を加える昆虫から乳頭を保護することができる。
【0042】
(乳頭パッチ10による乳頭口保護の方法)
上述した本発明の乳頭パッチ10は、離型シート7が及び保護フィルム5が剥がされた状態で、
図2に示されているように、積層体1を、粘着剤層3を介して乳頭口を覆うように貼り付けて使用され、これにより、乳頭口を保護し、乳頭口からの細菌等の感染を防止し、乳房炎などの疾病を予防する。
このような乳頭への貼り付けに先立って、前述した殺菌消毒剤を乳頭口に塗布する或いは殺菌消毒剤を乳管に注入するという手段も採用することができる。
【0043】
(積層体1の形態)
上述した本発明の乳頭パッチ10は、積層体1の形状(平面形状)によって、乳頭口貼り付けタイプ(α)と乳頭側面貼り付けタイプ(β)に分類されることは、既に述べたとおりである。
【0044】
乳頭口貼り付けタイプ(α);
乳頭口貼り付けタイプ(α)の乳頭パッチ10は、
図3に示されているように、積層体1が、円形(
図3(a)参照)或いは楕円形(
図3(b)参照)の平面形状を有しており、このような積層体1は、前述したように、弾性シート2と粘着剤層3とから形成されており、さらに、弾性シート2の上には保護フィルム5が積層され、粘着剤層3には離型シート7が貼り付けられて販売される。
【0045】
このような積層体1は、乳頭口を完全に覆うようために必要な最小限の大きさを有するものであり(
図3参照)、最もシンプルな形態であり、この結果、乳頭に貼り付けた状態でシワが入り難いという利点がある。
例えば、この積層体1は、円の直径d或いは楕円の長軸dの長さが5〜40mm、特に10〜40mmの長さを有している。また、楕円形の場合には、その短軸d’の長さは、該長軸dの長さの50〜90%程度の長さであることが好ましく、絶対値であれば、短軸d’の長さは2.5mm以上であることが好ましく、さらには4mm以上であることが好ましい。
【0046】
また、このような乳頭口貼り付けタイプ(α)の乳頭パッチ10においては、
図4に示されているように、切り込み13が設けられていることが好ましい。この切り込み13は、複数(通常2〜4程度)設けられ、それぞれが円または楕円の中心に向かって延びており、これにより、乳頭の側面への貼り付け面積が小さいものの、乳頭の変形に対する追随性を高めることができ、また、弾性シート2を捲り易くすることができ、乳頭への貼り付け作業性や乳頭からの引き剥がし作業性を高めることができる。
【0047】
上記のような切り込み13は、積層体1が乳頭に貼り付けられたとき、切り込み13の部分に乳頭口が露出しない程度の大きさとすべきであり、例えば、上記円の直径d或いは楕円の長軸dの10〜40%程度とすることが好適である。
また、このような切り込み13の形成により乳頭に対する粘着力が低下しないように、切り込み13の各々の大きさ(面積)を適宜のものとすると同時に、乳頭に対する粘着力にムラが生じないように、複数の切り込み13は、対称的に配置されていることが望ましい。
【0048】
尚、
図4の例では、円形の積層体1に切り込み13を設けた例しか示されていないが、かかる切り込み13は、当然、楕円形状の積層体1にも設けることができる。
【0049】
乳頭側面貼り付けタイプ(β);
乳頭側面貼り付けタイプ(β)の乳頭パッチ10は、積層体1が全体として、非円形且つ非楕円形の平面形状を有しているが、その代表的な平面形状が
図5に示されている。
【0050】
上記の
図5から理解されるように、この積層体1は、前述した
図4に示されているような円形或いは楕円形部からなる乳頭口貼付け部21を有しており、さらに、この乳頭口貼付け部21から外方に延びている乳頭側面貼り付け部23(以下、単に側面貼り付け部と呼ぶ)を有している。
尚、
図5及び以降で説明する他の図において、中心部に位置する乳頭口貼付け部21と側面貼り付け部23とは異なるハッチングで示されているが、これは作図上判り易くするためであって、実際は、乳頭口貼付け部21と側面貼り付け部23とが明確に区分けされているものではなく、これらは、積層体1の全体の形状から認識されるものである。
【0051】
かかる積層体1は、乳頭口貼付け部21から外方に延びている側面貼り付け部23が設けられているため、乳頭の側面部分にもしっかりと粘着固定され、しかも乳頭の変形にも追随し得るため、乳頭からの剥がれがより確実に防止されるという利点がある。
また、離型シート7が剥がされた積層体1は、乳頭口貼付け部21を乳頭口に貼り付けた状態で、保護フィルム5を引き剥がしながら側面貼り付け部23を折り曲げながら乳頭側面に粘着固定される。従って、乳頭への貼り付け性も良好である。
【0052】
図5を参照して、この積層体1において、乳頭口貼付け部21を形成している円の直径または楕円形の長軸が、前述した
図4のタイプと同様、5〜40mm、特に10〜40mmの長さを有していることが望ましい。即ち、乳頭口貼付け部21をこのような大きさとすることにより、乳頭口を確実に覆い、保護することができる。なお、この乳頭口貼り付け部21は、前記乳頭口貼り付けタイプ(α)と同様の形状であることが好ましい。
【0053】
また、かかる積層体1は、側面貼り付け部23が複数形成されていることが望ましく、さらに、線対称の平面形状を有していることが望ましい。このような形態とすることにより、乳頭口を中心として、均等に積層体1を貼り付けることができる。
【0054】
上記のような平面形状においては、前記線対称の軸となる縦軸線Xと縦軸線Xに直交し且つ積層体1の縦軸方向最大長さを2等分する横軸線Yとの交点が、前述した乳頭口貼付け部21を形成する円(或いは楕円)の中心Oとなる。本発明では、このような乳頭口貼付け部21が、少なくとも前記縦軸線Xまたは横軸線Yを間に挟んだ複数個所で外部に露出するように、上記の側面貼り付け部23が形成されていることが好適である。
即ち、このように側面貼り付け部23を形成することは、隣り合う乳頭口貼付け部23の間に適当な間隔が形成されていることを意味し、これにより、隣り合う側面貼り付け部23が互いにくっつかないように折り曲げられ、貼り付け作業性が良好なものとなる。
【0055】
また、本発明においては、上記のような積層体1は、
図5の形態から理解されるように、直線同士が交わるコーナー部を有していない形態を有していることが望ましい。例えば、側面貼り付け部23を矩形状とすることもできるが、このような場合においても、そのコーナー部は、丸みを帯びており、コーナー部が尖った形状とすることを避けるべきである。このような尖った部分は、乳頭に貼り付けたとき、非常に捲れ易くなり、この部分から剥がれを生じ易くなるためである。
【0056】
さらに、上述した複数の側面貼り付け部23の少なくとも一つ、より好ましくは全てが外方に向かって広がった形状を有していることが望ましい。これにより、乳頭の側面に粘着固定される部分の面積が大きく、しかも、側面貼り付け部23の大きさによっては、乳頭の側面全体を完全に覆って乳頭パッチ10を粘着固定することができ、さらには、側面貼り付け部23を乳頭側面に沿って折り曲げたとき、この貼り付け部23が重なった状態でしっかりと乳頭側面に固定することができるからである。
【0057】
本発明においては、上記の積層体1について、矩形状の仮想外接四辺形(
図5においてQで示されている)を形成することができる。
図5から理解されるように、この仮想外接四辺形Qは、各辺のそれぞれが、積層体1に外接しているが、その長辺Q1の長さが30〜200mmの範囲にあることが好ましく、50〜150mmの範囲にあることがさらに好ましく、且つ短辺Q2の長さが20〜150mmの範囲にあることが好ましく、30〜100mmmの範囲にあることがさらに好ましい。要するに、積層体1は、上記のような大きさの仮想外接四辺形Qを形成することができるように、乳頭口貼付け部21及び乳頭側面貼り付け部23の大きさや形態を形成することが最も好適である。なお、当然のことであるが、長辺Q1と短辺Q2との長さは等しくなってもよい。
即ち、上記のような大きさの仮想外接四辺形Qを形成できるということは、この乳頭パッチ10は、乳頭の側面に巻きつけて粘着固定するものではなく、乳頭口に乳頭口貼付け部21を貼り付けた状態で側面貼り付け部23を折り曲げて乳頭側面に粘着固定されるものであること意味している。巻き付けて固定するタイプのものは、所謂長尺形状となるために、上記のような大きさの仮想外接四辺形Qを形成することはできない。
このような形態を有する本発明の保護パッチ10は、乳頭の側面に巻き付けて固定するものではないため、乳頭口に貼り付けられている部分にシワなどが発生し難く、乳頭口と積層体1(粘着剤層3)の間での空隙形成を有効に抑制することができ、乳頭口をしっかりと保護することができる。
【0058】
上述した乳頭側面貼り付けタイプ(β)における積層体1は、
図5に示される形態に限定されるものではなく、線対称の形状であることなど、前述した所定の条件を満足している限り、種々の形態を採り得る。このような他の形態の例を
図6〜10に示した。
【0059】
例えば、
図5における積層体1は、全体としてダンベル形状を有しており、線対称の軸線である縦軸線Xの方向に沿って、2つの側面貼り付け部23が互いに対向するように形成されている。
これに対して、
図6における積層体1は、全体として花弁状の形態を有しており、3つの同じ形状の側面貼り付け部23が形成されている。
図7における積層体1も、全体として花弁状の形態を有しているが、この場合は、4つの同じ形状の側面貼り付け部23が形成されており、全体として点対称の形状を有している。
図8における積層体1は、乳頭口貼付け部21が楕円形であり、2つの大きな側面貼り付け部23aと、2つの小さな側面貼り付け部23bとが形成されている。
図9における積層体1は、全体としてアンカー形状を有しており、矩形状に延びている側面貼り付部23aと、この側面貼り付部23aに対向する位置に、大きな裾広がりの側面貼り付け部23bが形成されている。
図10における積層体1は、全体としてH型形状を有しており、中心部分に円形の乳頭口貼付け部21が形成され、横軸線Yに沿って、矩形に近い形状の2つの側面貼り付け部23が、互いに対向する位置に形成されている。
なお、当然のことではあるが、
図6〜
図10で例示した形状の積層体1においても、矩形状の仮想外接四辺形(
図6〜10においてQで示されている)において、その長辺Q1の長さが30〜200mmの範囲にあり、且つ短辺Q2の長さが20〜100mmの範囲にあることが好適である。
【0060】
上述した
図5〜
図10の形態の何れの積層体1も、少なくとも線対称形状を有しており、且つ所定の仮想外接四辺形Qが形成されると共に、直線同士が交わる尖ったコーナー部は全く形成されていないことが理解されよう。
上記の仮想外接四辺形Qが所定の大きさとなる範囲で、貼り付け作業を行い易く、また、所定の保護期間経過後において、乳頭からの引き剥がし作業が行い易いように、側面貼り付け部23の数や大きさが適宜のものに設定される。
また、
図5〜
図10で例示したような乳頭側面貼り付けタイプ(β)において、矩形状の仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体1の面積は、40〜98%となることが好ましい。積層体1の面積が100%に近づくほど、短形状の該外接四辺形Qと同じ形状になるが、積層体1がこの面積範囲を満足することにより、作業性が向上し、かつ貼付後の浮き・シワ等の発生を抑制することができる。さらに作業性を向上させ、貼付後の積層体1の状態をよりよく保つためには、矩形状の仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体1の面積は、55〜95%となることがより好ましく、55〜80%となることが最も好ましい。
図5〜
図10は代表例であるが、乳頭側面貼り付けタイプ(β)の積層体1を用いることにより、家畜の個体差によらず、10日以上、好ましくは2週間程度、乳頭に密着して剥離し難く、確実に乳頭口を保護することができる。その結果、例えば、牛においては、乾乳期の感染をより確実に防ぐことが可能となる。
このような保護パッチ10(積層体1)は、例えば、
図11に示されているように、乳頭口貼付け部21が乳頭口を覆うように乳頭口に粘着固定され、側面貼り付け部23は、折り曲げられ、乳頭側面に粘着固定される。また、
図11に示されているように、側面貼り付け部23が大きく広がった形態のものでは、乳頭側面において、この側面貼り付け部23がオーバーラップした部分25が形成され、しっかりと乳頭側面に粘着固定されることとなる。このオーバーラップした部分25の最大幅Lは、乳頭の大きさ、形状等により最適値が異なるため、一概に限定できない。ただし、操作性が良好で、より確実に密着性を高め、シワを少なくするためには、該最大幅Lは、2mm以上45mm以下となることが好ましく、3mm以上30mm以下となることがより好ましく、3mm以上15mm以下となることがさらに好ましい。このオーバーラップした部分25は、乳頭に積層体1を貼付する際に、該積層体1を少し引伸ばして貼付することにより、形成することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例で行った各種測定は、以下の方法で行った。
【0062】
<2倍伸張引張応力の測定>
測定装置として、島津製作所製引張試験機(型番;EZ Test/EZ−SX)を用いた。
JIS K7127:1999に準じ、チャック間距離20mm、引張速度50mm/min、サンプル幅(積層体の幅)20mmの条件で、試料片の積層体について、2倍伸張時の引張応力及び引張弾性率を測定した。
なお、積層体は粘着剤層を有しているため、粘着剤層同士を張り合わせた2枚の積層体について、2倍伸張時の引張応力値の半分の値を、1枚の積層体の引張応力として求めた。
【0063】
<疑似乳頭での貼付試験>
図12に示すような哺乳バケツ用乳首(天然ゴム製)を疑似乳頭として用い、上記方法で作製した乳頭口保護パッチを疑似乳頭先端部に貼付し、貼付直後、および貼付後(7日後)の乳頭口上でのシワの状態を目視評価した。
尚、
図12における数値の単位はmmである。
【0064】
<疑似乳頭での細菌数測定>
上述のように、疑似乳頭先端部に乳頭口保護パッチを貼付後(7日後)の疑似乳頭先端部を、酪農家より入手した牛舎の敷料に使用されている土状物に約10秒間浸漬させた。
その後、試料片である乳頭口保護パッチを疑似乳頭先端部が汚染されないように慎重に剥離し、乳頭口保護パッチを貼付けていた乳頭口に当たる部分約1cm
2を綿棒(Promedia ST−25、エルメックス社製)によりふき取り、10mLの生理食塩水に綿棒を浸漬させた。
その内の1mLを培地(好気性菌用培地、6400AC、3M社製)に滴下し、37℃で48時間培養した。培養後、培地中のコロニー数をカウントし、1個の細菌が1個のコロニーを形成すると仮定し、コロニー数から上記10mLの生理食塩水中の細菌数を、下記式より算出した。
コロニー数×10=細菌数
求めた細菌数を以下の基準に従い評価した。一般的には、1000個/cm
2未満であれば清潔に保たれていると判断できる。その結果を以下の基準で判断した。
◎:細菌数が100個/cm
2未満。
細菌数が極めて少なく、パック内部が極めて清浄に保たれている。
○:細菌数が100個/cm
2以上1000個/cm
2未満。
細菌数が少なく、パック内部が清潔に保たれている。
△:細菌数が1000個/cm
2以上10000個/cm
2未満。
細菌数はやや多めだが、外部の細菌数よりは少ない。
×:10000個/cm
2以上。
細菌数が多く、パックによる細菌数低減効果が確認できない。
なお、外部の細菌数(土の中にいる細菌数)は、ばらつきがあるものの概ね10000個/cm
2以上である。
【0065】
<実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価>
ホルスタイン種の乳牛3頭を用い、各乳牛の乳頭4か所の先端部(乳頭口)に、試料片である保護パッチ(積層体)を
図2に示すように貼付し、粘着維持性を評価した。
尚、今回試験を実施したホルスタイン種の牛3頭は、全て乾乳牛である。また、乳牛の個体差を考慮し、保護パッチを貼りつける乳牛を7日後に入れ替えて粘着維持性を評価した。なお、保護パッチを貼りつける前に、乳頭先端部に付着した汚れや皮脂をウェットティッシュで拭き取りを行った。
保護パッチの付着状態を、下記の基準に従って4段階で評価した。
3:乳頭からの保護パッチの剥離や浮が見られない。
2:保護パッチの端部が浮いた状態にある。
1:保護パッチの端部が完全に剥離している。
0:保護パッチ全体が完全に剥離している。
【0066】
<積層体>
実施例及び比較例において、以下の表1に示す積層体A、B、Cを、保護パッチとして用いた。
なお、積層体A、B、Cの粘着剤層は、何れもアクリル系粘着剤を用いて形成されている。
【表1】
【0067】
<実験1>
以下の実験は、タイプ(α)の乳頭パッチの評価のために行ったものである。
【0068】
<実施例1−1>
表1における積層体Aをカッティングし、直径dが15mmの円形の乳頭口保護パッチ(タイプ(α)の乳頭パッチ)を作製した。
この乳頭パッチについて、疑似乳頭を用いての乳頭貼付試験を行ったところ、貼付直後、貼付後(7日後)であってもシワは観察されなかった。さらに、前述した方法で、疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表3に示した。
尚、比較のために、積層体Aを直径50mmの円形に切り出し、これを疑似乳頭に貼り付けたところ、若干乳頭曲面貼付部にシワが発生した。このシワは、最外層の弾性シート2同士を接着させることにより目立たなくした。
【0069】
<実施例1−2>
実施例1−1で作製された円形の積層体に、
図4のように切り込み部を4箇所入れた乳頭パッチ(タイプ(α))を作製した。切り込み部は、切り込み長さ2mm、切り込み幅1mmとして、切り込み部が等間隔になるように配置した。得られた乳頭パッチを使用して、疑似乳頭での貼付試験及び細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
【0070】
<実施例1−3>
積層体Bを使用した以外は、実施例1−1と同様に乳頭パッチを作製し、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
【0071】
<実施例1−4>
積層体Aをカッティングして、直径30mmの円形の乳頭パッチ(タイプ(α))を作製した以外は、実施例1−1と同様に、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
【0072】
<比較例1−1>
積層体Cを使用した以外は、実施例1−1と同様に乳頭パッチを作製し、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表3に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
<実験2>
以下の実験は、タイプ(β)の乳頭パッチの評価のために行ったものである。
【0076】
<実施例2−1>
表1における積層体Aを使用して、
図5に示す線対称形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは80mm、短辺Q2の長さは55mm、とした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は77%であった。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例1−1と同様に、疑似乳頭貼付試験を行い、その結果を表4に示した。尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約8mmであった。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表5に示した。
【0077】
尚、このパッチ粘着維持性評価試験において、このパッチの乳頭貼付け作業は、非常に容易に行うことができた。
この実施例2−1の貼り付け作業性を基準として、他の実施例についての貼り付け作業性の評価も行ったが、その評価基準は、以下のとおりである。
◎:実施例2−1と同レベルで貼付け作業を容易に行うことができた。
〇:実施例2−1ほどではないが、問題なく貼付け作業を行うことができた。
△:乳頭への貼り付けは問題なく行うことができたが、乳頭側面部に対する貼付け作業性に難があった。
尚、比較のために、側面貼り付け部23の最大幅(短辺Q2)の長さを少し短くし、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25が形成されず、側面貼り付け部23間に7mm程度の隙間が形成するような大きさとしたとき、この保護パッチについて実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行うと、7日を過ぎると、乳頭からの剥離が生じるようになった。
【0078】
<実施例2−2>
表1における積層体Aを使用して、
図6に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは20mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは90mm、短辺Q2の長さは80mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は62%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは45mmとした。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約13mmであった。
【0079】
<実施例2−3>
表1における積層体Aを使用して、
図7に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは20mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは90mm、短辺Q2の長さは90mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は67%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは45mmとした。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約11mmであった。
【0080】
<実施例2−4>
表1における積層体Aを使用して、
図8に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、楕円形の乳頭口貼付け部21の長軸dの長さは35mm、仮想外接四辺形の辺Q1及びQ2の長さは何れも90mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は80%であった。
また、側面貼り付け部23aの最大幅wは50mm、側面貼り付け部23bの最大幅wは25mmとした。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約14mmであった。
【0081】
<実施例2−5>
表1における積層体Aを使用して、
図9に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1は100mm、短辺Q2は80mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は50%であった。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約5mmであった。
【0082】
<実施例2−6>
表1における積層体Bを使用して、
図5に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは80mm、短辺Q2の長さは55mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は77%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは40mmとした。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約8mmであった。
<実施例2−7>
表1における積層体Aを使用して、
図10に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは100mm、短辺Q2の長さは60mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は92.5%であった。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、
図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約9mmであった。
【0083】
<比較例2−1>
表1における積層体Cを使用した以外は、実施例2−1と全く同様の形状の乳頭パッチ(
図5の形態)を作製した。
この乳頭パッチについて、
図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
本発明の乳頭口保護パッチは、家畜の乳頭口を含む部分に貼り付けられるものであり、弾性シート2と弾性シート2の一方の面に積層された粘着剤層3との積層体1を含み、積層体1の2倍伸張引張応力が0.1〜5Nの範囲にあることを特徴とする。