(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189619
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】リングアンプ
(51)【国際特許分類】
H03F 3/347 20060101AFI20170821BHJP
H03K 19/0948 20060101ALI20170821BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20170821BHJP
H03F 3/345 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
H03F3/347
H03K19/0948
H03F3/34 B
H03F3/345 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-77647(P2013-77647)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-204225(P2014-204225A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】松浦 良
【審査官】
緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−295094(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0204926(US,A1)
【文献】
HERSHBERG, Benjamin ,Ring Amplifiers for Switched-Capacitor Cuircuit,ISSCC 2012 SESSION 27 / DATA CONVERTER TECHNIQUES / 27.2,米国,IEEE,2012年,p. 460, 右欄第 21-41 行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
H03K 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインバータを縦列接続したリングアンプにおいて、
出力段のインバータのMOSトランジスタを駆動する第1のインバータを備え、
該第1のインバータが、
一端が第1の電源端に接続され、他端が出力に接続され、ゲートが入力に接続される第1のMOSトランジスタと、
一端が前記出力に接続され、ゲートが前記入力に接続される第2のMOSトランジスタと、
一端が第2の電源端に接続され、他端が前記第2のMOSトランジスタの他端に接続される抵抗体とを備え、
前記第1のインバータの入力に接続され、直流カットされる第1のコンデンサと、前記第1のインバータの入出力間を短絡する第1のスイッチと、前記抵抗体と並列に接続され、サンプルフェーズでON状態となるように制御される第3のMOSトランジスタと
を備えていることを特徴とするリングアンプ。
【請求項2】
前記抵抗体を、ホールドフェーズでのみON状態となるように制御される第2のスイッチに置き換えることを特徴とする請求項1に記載のリングアンプ。
【請求項3】
前記第1のスイッチ及び前記第3のMOSトランジスタが間欠的にHighレベルになるサンプリングパルスでON状態となり、前記第2のスイッチが前記サンプリングパルス及びホールドフェーズでON状態となることを特徴とする請求項1に記載のリングアンプ。
【請求項4】
前記第1のスイッチ及び前記第3のMOSトランジスタが間欠的にHighレベルになるサンプリングパルスでのみON状態となることを特徴とする請求項2に記載のリングアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッドゾーン付加方法を用いたリングアンプに関し、より詳細には、デッドゾーン電圧の生成を不要とするリングアンプ(Ring Amplifier)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の節電意識の高まりから、電化製品を構成するICにおいても消費電力の削減に対する要求が厳しくなってきている。特に、ICの中でも消費電力の多いものの1つとして、高速動作を行う演算増幅器が挙げられる。例えば、映像系のICでは、数十MHzの動作レートで映像信号を増幅、デジタル化する必要があるため、それらを駆動する演算増幅器の消費電力は、IC全体の消費電力のかなりの割合を占めている。そのため、これらの演算増幅器の消費電力を削減する試みが、世界中で数多く研究されている。
そのような状況下において、2012年の2月に行われたISSCCでは、インバータを3段直列に接続したオシレータタイプの演算増幅器(以下、リングアンプ)が報告されている(非特許文献1参照)。このリングアンプは、小さなインバータのみで構成されているため、非常に低消費電力で動作させることが可能である。
【0003】
図1は、従来のリングアンプをスイッチトキャパシタ回路に適用した場合の基本的な回路構成図である。リングアンプ1と、このリングアンプ1が駆動する負荷容量CLと、リングアンプ1の入力Vinと出力Vout間に接続された積分容量Cfと、一端がリングアンプ1の入力Vinに接続され、他端がスイッチSW1とSW2とに接続されたサンプリング容量Csと、リングアンプ1の入力Vinとアナログコモン電圧Vcとの間に接続されたスイッチSW3とからなり、SW1の他端には、入力信号Vsignalが接続され、SW2の他端には、アナログコモン電圧が接続されている。
【0004】
図2は、従来のリングアンプの回路構成図である。この従来のリングアンプは、入力VinとインバータINV1との間に接続された直流カット用容量C1と、インバータINV1の入出力間に接続されたスイッチSW5と、インバータINV1の出力と、インバータINV2A、INV2Bそれぞれとの間に接続された直流カット用容量C2,C3と、インバータINV2Aの入力にオフセット電圧Vof1を与えるためのスイッチSW6と、インバータINV2Bの入力にオフセット電圧Vof2を与えるためのスイッチSW7と、出力がリングアンプの出力VoutとなるインバータINV3とから構成されている。INV3を構成するPMOSMPのゲートには、インバータINV2Aの出力が接続され、NMOSMNのゲートには、インバータINV2Bの出力が接続されている。
【0005】
次に、
図1及び
図2を用いて、リングアンプの動作について説明する。
スイッチトキャパシタ回路は、大きくサンプルフェーズφ1とホールドフェーズφ2の2つの位相を繰り返すことで動作を行う。φ1の位相の時、
図1のスイッチSW1,SW3,SW4が短絡し、SW2は開放される。これにより、サンプル容量Csには、入力信号Vsignalがサンプルされ、積分容量Cfは、両端がアナログコモン電圧となって初期化される。
【0006】
一方、リングアンプ1内では、
図2のスイッチSW5,SW6,SW7が短絡する。これにより、容量C1には、インバータINV1の閾値電圧がサンプルされ、容量C2には、オフセット電圧Vof1がサンプルされ、容量C3には、オフセット電圧Vof2がサンプルされる。ここで、オフセット電圧Vof1は、インバータINV2Aの閾値電圧よりも数十mV小さい電圧であり、オフセット電圧Vof2は、インバータINV2Vの閾値電圧よりも数十mV大きい電圧となっている。
【0007】
これに対して、φ2の位相になると、
図1のスイッチSW2が短絡され、スイッチSW1,SW3,SW4が開放され、
図2のスイッチSW5,SW6,SW7が開放される。リングアンプ1は、インバータINV1,INV2(2A,2B),INV3が直列に3段接続された構成であるため、容量Cfにより負帰還が形成される。通常、インバータを3段直列に並べただけでは、それぞれのインバータの帯域が近いため位相余裕が取れず、負帰還を掛けたときに発振動作を引き起こす。
【0008】
しかしながら、リングアンプ1では、2段目のインバータINV2A,INV2Bの入力にデッドゾーンと呼ばれるオフセットを付加することで、出力段のインバータINV3に不感帯を持たせているため、まずはインバータ動作によって高速に最終到達値に近づき、最終到達値付近(不感帯内)になると、最終段のインバータINV3はオフ状態、もしくは非常に帯域が小さい状態となり、発振することなく最終値に収束する。このため、リングアンプ1は、小さなインバータを数個用いるだけでアンプを形成することが可能なため、非常に低消費電力化が可能である。
【0009】
なお、3段のインバータで構成されたリングオシレータを有する電圧制御発振回路については、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1に記載のものは、広い発振周波数範囲を有し、かつ電源ノイズの影響を抑制することが可能な電圧制御発振回路に関するもので、この電圧制御発振回路は、制御電圧に応じて駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路と、駆動電圧の供給を受けて動作するリングオシレータ回路とを備え、駆動電圧生成部は、電源電圧の供給を受けて動作する演算増幅器によって形成される帰還回路を用いて駆動電圧を生成する。したがって、電源電圧に重畳された高周波成分、すなわち、ノイズの影響を抑制して、位相変動の小さい出力クロックを安定的に生成することができるというものである。
【0010】
また、特許文献2に記載のものは、入力電圧の可変範囲において、出力周波数の特性がほぼ直線となるVCOを備えたPLL回路に関するもので、電圧値の高い第2電源電圧で動作する電圧電流変換回路によって入力電圧が電流に変換され、この変換された電流を、第2電源電圧で動作する第1カレントミラー回路及び第2カレントミラー回路を介して、第2電源電圧よりも電圧が低い第1電源電圧で動作する第3カレントミラー回路とPMOSトランジスタの各ゲートにそれぞれ出力し、更に第3カレントミラー回路からNMOSトランジスタの各ゲートにそれぞれ出力するようにしたものである。
また、リングアンプにおいて、デッドゾーン電圧を付加する別の手法として、2段目のインバータINV2A、INV2Bに新たにNMOSトランジスタ、PMOSトランジスタを追加する手法が報告されている(非特許文献2参照)。
【0011】
図3は、
図2とは異なる手法でデッドゾーン電圧を付加する従来のリングアンプの回路構成図である。
図2との違いは、インバータINV1の出力と、インバータINV2A及びINV2Bとの間に接続された直流カット用容量C2,C3を除去、及びインバータINV2Aの入力にオフセット電圧Vof1を与えるためのスイッチSW6と、インバータINV2Bの入力にオフセット電圧Vof2を与えるためのスイッチSW7をそれぞれ除去している。そして、INV2Aを構成するNMOSトランジスタMN2とGNDの間に新たにNMOSトランジスタMN4を、INV2Bを構成するPMOSトランジスタMP3と電源電圧の間に新たにPMOSトランジスタMP4をそれぞれ追加している。MN4のゲートには参照電圧VRPが印加され、MP4のゲートには参照電圧VRNが印加される。
【0012】
次に、
図3を用いて、従来のリングアンプの動作について説明する。
サンプルフェーズφ1では、スイッチSW5が短絡し、容量C1にはインバータINV1の閾値電圧がサンプルされる。インバータINV2A及びINV2BのサイズがINV1と同等、若しくは等倍であった場合、INV2A及びINV2Bのゲートには、それぞれのインバータの閾値電圧とほぼ等しい電圧が印加される。しかし、INV2Aの出力電圧は、追加したNMOSトランジスタMN4の出力抵抗の影響で、閾値電圧よりも数百mV高い電圧となる。逆にINV2Bの出力電圧は、追加したPMOSトランジスタMP4の出力抵抗の影響で、閾値電圧よりも数百mV低い電圧となる。従って、ホールドフェーズφ2では、
図2のリングアンプと同様に、出力段のインバータINV3に不感帯を持たせることが可能となる。
【0013】
図2では、INV2A及びINV2Bの入力から出力にかけての利得はそれぞれ20dB程度あるのに対し、
図3では、INV2AのVRP及びINV2BのVRNから出力にかけての利得はそれぞれ−12dB程度しかない。つまり、
図3のリングアンプの構成は、デッドゾーンを与えるための印加電圧に求められるばらつきの大幅な緩和が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−111449号公報
【特許文献2】特開2003−69390号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ISSCC 2012 Session 27.2 Ring Amplifiers for Switched−Capacitor Circuits
【非特許文献2】Oregon State University Libraries Ring Amflification for Switched−Capacitor Circuits
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述したリングアンプでは、デッドゾーンを与えるために参照電圧を別途用意する必要がある。上述した特許文献1には、広い発振周波数範囲を有し、かつ電源ノイズの影響を抑制することが可能な電圧制御発振回路が開示されているものの、本発明のようなデッドゾーン付加方法を用いてデッドゾーン電圧の生成を不要とするリングアンプについては何ら開示されていない。また、上述した特許文献2には、入力電圧の可変範囲において、出力周波数の特性がほぼ直線となるVCOを備えたPLL回路が開示されているものの、本発明のようなデッドゾーン付加方法を用いてデッドゾーン電圧の生成を不要とするリングアンプについては何ら開示されていない。さらに、非特許文献1及び2にも、本発明の要旨となる構成については何ら開示されていない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、デッドゾーン付加方法を用いてデッドゾーン電圧の生成を不要とするリングアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数のインバータ(INV1,INV2(2A,2B),INV3)を縦列接続したリングアンプにおいて、出力段のインバータ(INV3)のMOSトランジスタ(MP1,MN1)を駆動する第1のインバータ(INV2A,INV2B)を備え、該第1のインバータ(INV2A,INV2B)が、一端が第1の電源端に接続され、他端が出力に接続され、ゲートが入力に接続される第1のMOSトランジスタ(MP2,MN3)と、一端が前記出力に接続され、ゲートが前記入力に接続される第2のMOSトランジスタ(MN2,MP3)と、一端が第2の電源端に接続され、他端が前記第2のMOSトランジスタ(MN2,MP3)の他端に接続される抵抗体(MN4,MP4)とを備え
、前記第1のインバータ(INV2A,INV2B)の入力に接続され、直流カットされる第1のコンデンサ(C2,C3)と、前記第1のインバータ(INV2A,INV2B)の入出力間を短絡する第1のスイッチ(SW6,SW7)と、前記抵抗体(MN4,MP4)と並列に接続され、サンプルフェーズでON状態となるように制御される第3のMOSトランジスタ(MN5,MP5)とを備えていることを特徴とする。
(図5;実施例2)
【0018】
また、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記抵抗体(MN4,MP4)を、ホールドフェーズでのみON状態となるように制御される第2のスイッチ(MN4,MP4)に置き換えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記第1のスイッチ(SW6,SW7)及び前記第3のMOSトランジスタ(MN5,MP5)が間欠的にHighレベルになるサンプリングパルスでON状態となり、前記第2のスイッチ(MN4,MP4)が前記サンプリングパルス及びホールドフェーズでON状態となることを特徴とする。(
図7;実施例3)
また、請求項
4に記載の発明は、請求項
2に記載の発明において、前記第1のスイッチ(SW6,SW7)及び前記第3のMOSトランジスタ(MN5,MP5)が間欠的にHighレベルになるサンプリングパルスでのみON状態となることを特徴とする。(
図7;実施例3)
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、デッドゾーン付加方法を用いてデッドゾーン電圧の生成を不要とするリングアンプを実現することができ、デッドゾーンを与えるために、新たにデッドゾーン電圧を生成する必要が無いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来のリングアンプをスイッチトキャパシタ回路に適用した場合の基本的な回路構成図である。
【
図3】
図2とは異なる手法でデッドゾーン電圧を付加する従来のリングアンプの回路構成図である。
【
図4】本発明に係るリングアンプの実施例1を説明するための回路構成図である。
【
図5】本発明に係るリングアンプの実施例2を説明するための回路構成図である。
【
図6】本発明に係るリングアンプの実施例2を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【
図7】本発明に係るリングアンプの実施例3を説明するための回路構成図である。
【
図8】本発明に係るリングアンプの実施例3を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図4は、本発明に係るリングアンプの実施例1を説明するための回路構成図である。
図2及び
図3に示した従来例との差異を明確にするために、スイッチトキャパシタ回路の構成は、
図1と同様とし、リングアンプ内の構成だけ、本発明のリングアンプに置き換えて以下に説明する。
本実施例1のリングアンプは、複数のインバータINV1,INV2(2A,2B),INV3を縦列接続したリングアンプで、出力段のインバータINV3のMOSトランジスタMP1,MN1を駆動する第1のインバータINV2A,INV2Bを備えている。
【0024】
この第1のインバータINV2A,INV2Bは、一端が第1の電源端に接続され、他端が出力に接続され、ゲートが入力に接続される第1のMOSトランジスタMP2,MN3と、一端が出力に接続され、ゲートが入力に接続される第2のMOSトランジスタMN2,MP3と、一端が第2の電源端に接続され、他端が第2のMOSトランジスタMN2,MP3の他端に接続される抵抗体MN4,MP4とを備えている。
【0025】
本実施例1のリングアンプと
図3に示す従来のリングアンプの違いは、トランジスタMN4のゲートに印加する電圧をVRPからVDDへ、トランジスタMP4のゲートに印加する電圧をVRNからVSSへ、それぞれ変更している点である。
図3に示すリングアンプと同等のデッドゾーンを付加する場合は、トランジスタMN4及びMP4のサイズを小さくし、出力抵抗を揃えればよい。
以上のように、本発明によるデッドゾーン負荷方法では、参照電圧VRP及びVRNを新たに生成することなく、リングアンプにデッドゾーンを付加することが可能となる。
【実施例2】
【0026】
図5は、本発明に係るリングアンプの実施例2を説明するための回路構成図である。
図4との違いは、インバータINV1の出力とインバータINV2Aの入力部の間に接続され直流カットされる容量C2と、インバータINV1の出力とインバータINV2Bの入力部の間に接続され直流カットされる容量C3と、インバータINV2A及びINV2Bの入出力間を短絡するSW6及びSW7と、トランジスタMN4と並列に接続されゲートに制御信号φ1が印加されるトランジスタMN5と、トランジスタMP4と並列に接続されゲートに制御信号φ1Bが印加されるトランジスタMP5とを備えている点である。また、トランジスタMN5及びMP5は、トランジスタMN4及びMP4に対して、十分大きいサイズである。
【0027】
つまり、本実施例2のリングアンプは、第1のインバータINV2A,INV2Bの入力に接続され、直流カットされる第1のコンデンサC2,C3と、第1のインバータINV2A,INV2Bの入出力間を短絡する第1のスイッチSW6,SW7と、抵抗体MN4,MP4と並列に接続され、サンプルフェーズでON状態となるように制御される第3のMOSトランジスタMN5,MP5とを備えている。
また、抵抗体MN4,MP4を、ホールドフェーズでのみON状態となるように制御される第2のスイッチMN4,MP4に置き換えることを可能にしている。
【0028】
図6は、本発明に係るリングアンプの実施例2を説明するためのタイミングチャートを示す図で、図示しない制御部で生成される制御信号φ1、φ1B、φ2、φ2Bの出力タイミングをタイミングチャートに示す図である。φ1Bはφ1の反転信号を、φ2Bはφ2の反転信号を表す。
図6に示すように、制御信号φ1がHighレベルであるときには、制御信号φ2はLowレベルになる。また、制御信号φ1がLowレベルであるときには、制御信号φ2はHighレベルになるが、互いにノンオーバーラップの関係にある。
【0029】
φ1がHighレベルのとき、すなわちサンプルフェーズのとき、スイッチSW5、SW6、SW7が短絡し、トランジスタMN5、MP5がONする。インバータINV1は入出力が短絡され、閾値電圧が容量C1にサンプルされる。同様に、インバータINV2A及びINV2Bも入出力が短絡されるが、トランジスタMN5及びMP5のサイズが十分大きいため、その出力抵抗はほとんど無視できる。従って、INV2A及びINV2Bの閾値電圧がそれぞれ容量C2、C3にサンプルされる。
【0030】
φ2がHighレベルのとき、すなわちホールドフェーズのとき、スイッチSW5、SW6、SW7は開放し、トランジスタMN5、MP5がOFFする。このとき、トランジスタMN5がOFFしたことで、INV2Aの電流パスはMP2、MN2、MN4となる。INV2Aの入力はサンプル時と同じ閾値電圧付近にもかかわらず、電流パスであるMN4の出力抵抗の影響で、出力電圧は閾値電圧より数百mV高くなってしまう。同様に、インバータINV2Bの出力電圧は、INV2Bの閾値電圧より数百mV低くなってしまう。従って、第1の実施例と同様にリングアンプにデッドゾーンを付加することができる。
【0031】
実施例1では、インバータINV2A及びINV2Bのゲートに、インバータINV1の閾値電圧を印加していたのに対し、実施例2ではインバータINV2A及びINV2Bのゲートに、INV2Aの閾値電圧及びINV2Bの閾値電圧を印加している。従って、製造上のばらつきによってインバータ間の閾値が変動しても、第2の実施例ではその影響を全く受けずに、設計通りの特性を有することができる。
図5では、トランジスタMN4及びMP4のゲートにそれぞれVDD、VSSを印加しているが、これはそれぞれφ2、φ2Bであっても良い。
【実施例3】
【0032】
図7は、本発明に係るリングアンプの実施例3を説明するための回路構成図である。
図5との違いは、スイッチSW6、SW7の制御を制御信号φ3で行っている点と、トランジスタMN4及びMP4のゲートにそれぞれ制御信号φ4、φ4Bが印加されている点と、トランジスタMN5、MP5のゲートにそれぞれ制御信号φ3、φ3Bが印加されている点である。
つまり、本実施例3のリングアンプは、第1のスイッチSW6,SW7及び第3のMOSトランジスタMN5,MP5が間欠的にHighレベルになるサンプリングパルスでON状態となり、第2のスイッチMN4,MP4がサンプリングパルス及びホールドフェーズでON状態となる。
【0033】
図8は、本発明に係るリングアンプの実施例3を説明するためのタイミングチャートを示す図で、図示しない制御部で生成される制御信号φ1、φ2、φ3、φ3B、φ4、φ4Bの出力タイミングをタイミングチャートに示す図である。φ1Bはφ1の反転信号を、φ2Bはφ2の反転信号を表す。
【0034】
図8に示すように、制御信号φ1がHighレベルであるときには、制御信号φ2はLowレベルになる。また、制御信号φ1がLowレベルであるときには、制御信号φ2はHighレベルになるが、互いにノンオーバーラップの関係にある。制御信号φ3は、制御信号φ1と同期して、立ち上がり及び立下り動作を行うが、その周期はφ1のN倍である(Nは自然数)。制御信号φ4は、制御信号φ2と同期して、立ち上がり及び立下り動作を行うが、制御信号φ3がHighのときは制御信号φ4もHighである。また、図示しないが、制御信号φ4は、制御信号φ3がHighのときの前後のφ2がHighの期間にまたがって、常にHighレベルであっても構わない。
【0035】
φ3がHighレベルのとき、すなわち、サンプルフェーズのときは、実施例2におけるサンプルフェーズと同じ状態なので割愛する。
次に、φ2がHighレベルのとき、すなわちホールドフェーズのときも、実施例2におけるホールドフェーズと同じ状態なので割愛する。
【0036】
次に、φ1がHighレベルのとき、スイッチSW6、SW7は直前のホールドフェーズと同様に開放しており、トランジスタMN4、MP4、MN5、MP5も全てOFF状態になる。容量C2及びC3には、前回のサンプルフェーズでサンプルしたINV2A及びINV2Bの閾値電圧が保持されているため、次のホールドフェーズでの動作はサンプルをした直後の動作とほとんど相違ない。つまり、容量C2及びC3へのサンプル動作は、リーク電流によって大幅な電位変動が起きない程度に実施すれば問題なく、サンプルフェーズ毎に実施する必要はない。
【0037】
このとき、第2のインバータINV2A及びINV2Bには、電源電圧からGNDまでの電流パスが形成されないため、貫通電流が流れない。さらに、インバータINV2AはGNDに通じるパスが切れるため、出力はHighレベルとなり、出力段のトランジスタMP1はOFFする。同様に、インバータINV2Bは電源電圧に通じるパスが切れるため、出力はLowレベルとなり、出力段のMN1はOFFする。従って、サンプル時のリングアンプの消費電流を大幅に削減することが可能となる。
図7では、トランジスタMN4及びMP4のゲートにそれぞれφ4、φ4Bを印加しているが、これはそれぞれφ2、φ2Bであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 リングアンプ
INV1、INV2A、INV2B、INV3 インバータ
Cs,Cf,C1乃至C3 容量
SW1乃至SW7 スイッチ
MP1乃至MP5 PMOSトランジスタ
MN1乃至MN5 NMOSトランジスタ