特許第6189700号(P6189700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189700
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   H01L21/78 N
   H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-208400(P2013-208400)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-73028(P2015-73028A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】前田 勉
(72)【発明者】
【氏名】源田 悟史
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−228794(JP,A)
【文献】 特開2012−190977(JP,A)
【文献】 特開2003−174077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハの加工方法であって、
裏面側を露出した状態でウエーハを環状フレームの開口に粘着テープを介して固定し、ウエーハユニットを形成するウエーハユニット形成ステップと、
該粘着テープを介してウエーハユニットのウエーハをチャックテーブルの保持面で吸引保持するウエーハユニット保持ステップと、
該チャックテーブルに保持されたウエーハユニットのウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、該分割予定ラインに沿った改質層をウエーハ内部に形成する加工ステップと、
該加工ステップを実施した後に、該環状フレームを保持して搬送する搬送手段で該チャックテーブルからウエーハユニットを搬出する搬出ステップと、
搬出ステップを実施した後に、ウエーハユニットのウエーハに外力を付与し、該改質層を起点にウエーハを分割する分割ステップと、を少なくとも備え、
該搬出ステップでは、該保持面から流体を噴出させて該粘着テープと該保持面との密着を解除する密着解除ステップを実施後、該ウエーハユニットを該チャックテーブルから搬出し、
前記ウエーハユニット保持ステップでは、前記保持面より低い位置で前記環状フレームを固定し、
前記搬出ステップでは、該環状フレームを該保持面より高い位置に上昇させた後に、前記密着解除ステップを実施することを特徴とするウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI、微小電気機械システム(MEMS)等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
このようなデバイスは、近年まで切削ブレードを用いた切削装置によって分割加工がされていた。しかし、切削ブレードは、20〜40μm程度の幅で分割溝を形成して分割するため、分割予定ラインにある程度の幅を要しデバイスの取れ個数が制限されてしまうこと、切削水で切削屑を除去しながら加工するため、切削水の飛散によって破損してしまうMEMSデバイスやLow−k層の剥離無き切断は切削装置での加工が難しい、等の理由によりレーザー光線を用いたレーザー加工装置による加工が活発に行われるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−166002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削装置やレーザー加工装置では、ウエーハをフレームに固定したウエーハユニットの状態で加工する事が多い。ウエーハユニットの状態でチャックテーブルに粘着テープ(ダイシングテープ)を介してウエーハを吸引固定すると、チャックテーブルの保持面の微細な凹凸に粘着テープが倣って密着してしまい、保持面からウエーハを引きはがすように搬出してしまう場合がある。その場合、既に改質層が形成されているウエーハでは意図せぬ割れを発生させてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、その目的は、既に改質層が形成されているウエーハの意図せぬ割れの発生を抑制できるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、表面に複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハの加工方法であって、裏面側を露出した状態でウエーハを環状フレームの開口に粘着テープを介して固定し、ウエーハユニットを形成するウエーハユニット形成ステップと、該粘着テープを介してウエーハユニットのウエーハをチャックテーブルの保持面で吸引保持するウエーハユニット保持ステップと、該チャックテーブルに保持されたウエーハユニットのウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、該分割予定ラインに沿った改質層をウエーハ内部に形成する加工ステップと、該加工ステップを実施した後に、該環状フレームを保持して搬送する搬送手段で該チャックテーブルからウエーハユニットを搬出する搬出ステップと、搬出ステップを実施した後に、ウエーハユニットのウエーハに外力を付与し、該改質層を起点にウエーハを分割する分割ステップと、を少なくとも備え、該搬出ステップでは、該保持面から流体を噴出させて該粘着テープと該保持面との密着を解除する密着解除ステップを実施後、該ウエーハユニットを該チャックテーブルから搬出し、前記ウエーハユニット保持ステップでは、前記保持面より低い位置で前記環状フレームを固定し、前記搬出ステップでは、該環状フレームを該保持面より高い位置に上昇させた後に、前記密着解除ステップを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明のウエーハの加工方法によれば、チャックテーブルの保持面と粘着テープとの密着を解除するために、保持面から流体を噴出する。このために、ウエーハを保持面から無理に引きはがすことで発生する割れを抑制することができる。したがって、既に改質層が形成されているウエーハの意図せぬ割れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法が施されるウエーハを示す斜視図であり、図1(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット形成ステップで形成されたウエーハユニットの斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット保持ステップの概要を示す斜視図であり、図2(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット保持ステップにより保持されたウエーハユニットなどの断面図である。
図3図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工ステップの概要を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの搬送手段をウエーハユニットの環状フレームに対向させた状態を示す断面図である。
図5図5(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの環状フレームを保持した搬送手段を上方に移動させた状態を示す断面図であり、図5(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの保持面から流体を噴出させた状態を示す断面図であり、図5(c)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップのウエーハユニットをチャックテーブルから搬出した状態を示す断面図である。
図6図6(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の分割ステップの概要を示す断面図であり、図6(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の分割ステップでウエーハを分割した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
実施形態に係るウエーハの加工方法を、図1から図6に基づいて説明する。図1(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法が施されるウエーハを示す斜視図、図1(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット形成ステップで形成されたウエーハユニットの斜視図、図2(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット保持ステップの概要を示す斜視図、図2(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハユニット保持ステップにより保持されたウエーハユニットなどの断面図、図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工ステップの概要を示す断面図、図4は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの搬送手段をウエーハユニットの環状フレームに対向させた状態を示す断面図、図5(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの環状フレームを保持した搬送手段を上方に移動させた状態を示す断面図、図5(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップの保持面から流体を噴出させた状態を示す断面図、図5(c)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の搬出ステップのウエーハユニットをチャックテーブルから搬出した状態を示す断面図、図6(a)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の分割ステップの概要を示す断面図、図6(b)は、実施形態に係るウエーハの加工方法の分割ステップでウエーハを分割した状態を示す断面図である。
【0013】
実施形態に係るウエーハの加工方法(以下、単に加工方法と呼ぶ)は、図1に示すウエーハWを加工する加工方法であって、ウエーハWにレーザー光線L(図3に示す)を照射して内部に改質層K(図3等に示す)を形成して個々のデバイスチップDT(図6等に示す)に分割する方法である。なお、本実施形態に係る加工方法により個々のデバイスチップDTに分割される加工対象としてのウエーハWは、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWは、図1に示すように、表面WSに複数の分割予定ラインSによって区画された各領域にデバイスチップDTを構成するデバイスDが形成されている。デバイスDとして、IC(integrated circuit)、LSI(large scale integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微少電気機械システム)が、各領域に形成される。また、ウエーハWの表面WSには、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)などの表面膜が積層されている。
【0014】
なお、改質層Kとは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0015】
実施形態に係る加工方法は、ウエーハユニット形成ステップと、ウエーハユニット保持ステップと、加工ステップと、搬出ステップと、分割ステップとを少なくとも備える。
【0016】
ウエーハユニット形成ステップでは、図1(a)に示すように、デバイスDが形成された表面WSの裏側の裏面WRを露出した状態で、図1(b)に示すように、ウエーハWを環状フレームFの開口に粘着テープTを介して固定する。図1(b)に示すウエーハユニットWUを形成する。そして、ウエーハユニット保持ステップに進む。
【0017】
ウエーハユニット保持ステップでは、ウエーハWにレーザー光線Lを照射するレーザー加工装置10のチャックテーブル11(図2(a)に示す)のポーラス状の保持面11a上に、粘着テープTを介してウエーハユニットWUのウエーハWを載置する。チャックテーブル11に図示しない真空吸引経路を介して接続された真空吸引源により保持面11aを吸引して、図2(b)に示すように、粘着テープTを介してウエーハユニットWUのウエーハWの表面WS側をチャックテーブル11の保持面11aで吸引保持する。また、ウエーハユニット保持ステップでは、チャックテーブル11の周囲に設けられかつ保持面11aよりも低い位置のクランプ部12を図示しないエアーアクチュエータにより駆動して、クランプ部12でウエーハWの周囲の環状フレームFを挟持する。こうして、ウエーハユニット保持ステップでは、クランプ部12により、保持面11aよりも低い位置で環状フレームFを固定する。そして、加工ステップに進む。
【0018】
加工ステップでは、レーザー加工装置10の図示しない撮像手段が取得した画像に基いて、アライメントを遂行する。その後、チャックテーブル11とレーザー光線照射手段13とを相対的に移動手段により移動させながら、図3に示すように、チャックテーブル11に保持されたウエーハユニットWUのウエーハWの裏面WRからウエーハWに対して透過性を有する波長(例えば、1064nm)のレーザー光線LをウエーハWの内部に集光点を合わせて分割予定ラインSに沿って照射する。そして、分割予定ラインSに沿った改質層KをウエーハW内部に形成する。そして、搬出ステップに進む。なお、加工ステップでは、真空吸引源により保持面11a上にウエーハWを吸引保持している。
【0019】
搬出ステップでは、加工ステップを実施した後に、図4に示すように、クランプ部12の環状フレームFの挟持を解除し、真空吸引源による吸引を停止する。そして、環状フレームFを保持して搬送する搬送手段20の吸着部21を環状フレームFに対向させる。そして、搬送手段20を下降させて、吸着部21に環状フレームFを吸着して、保持した後、図5(a)に示すように、粘着テープTが保持面11aから剥がれない程度に、搬送手段20及びウエーハユニットWUを上昇させる。図5(a)では、搬送手段20が、環状フレームFを保持面11aよりも若干高い位置に上昇させる。なお、搬送手段20を環状フレームFに対向させ、環状フレームFを上昇させる際に、真空吸引源による吸引を実施していてもよい。
【0020】
その後、搬出ステップでは、チャックテーブル11に接続された図示しない流体噴出源により保持面11aから流体としての加圧された気体を噴出させて、図5(b)に示すように、粘着テープTと保持面11aとの密着を解除する密着解除ステップを実施する。粘着テープTと保持面11aとが間隔をあけて平行になるように保つ。その後、図5(c)に示すように、搬送手段20によりウエーハユニットWUをチャックテーブル11から搬出する。なお、密着解除ステップでは、流体としての加圧された液体を噴出させてもよく、加圧された気体と液体とを同時に噴出させてもよい。そして、分割ステップに進む。
【0021】
分割ステップでは、搬出ステップを実施した後に、搬送手段20によりウエーハユニットWUを図6に示す分割装置30に搬送し、図6(a)に示すように、環状フレームFを分割装置30のクランプ部31に挟持し、押圧部材32を粘着テープTに当接させる。そして、図6(b)に示すように、押圧部材32を上昇させて、ウエーハWが貼着された粘着テープTを半径方向に拡張して、ウエーハユニットWUのウエーハWに半径方向に拡大する外力を付与する。そして、改質層Kを起点に、分割予定ラインSに沿って個々のデバイスチップDTにウエーハWを分割する。その後、分割されたデバイスチップDTは、粘着テープTから取り外されて、次工程に搬送される。
【0022】
実施形態に係る加工方法によれば、チャックテーブル11の保持面11aと粘着テープTとの密着を解除するために、保持面11aから流体としての加圧された気体を噴出する。このために、加工方法によれば、ウエーハWを保持面11aから無理に引きはがすことで発生する割れを抑制することができる。したがって、加工方法によれば、既に改質層Kが形成されているウエーハWの意図せぬ割れの発生を抑制することができる。
【0023】
また、通常、ウエーハユニット保持ステップでは、加工の際にレーザー光線照射手段13に衝突しないように環状フレームFを保持面11aより低い位置に固定する。しかしながら、この状態のまま保持面11aから加圧された気体を大量に噴出するとウエーハWが貼着された粘着テープTがドーム状(半球状)に膨らんだ形状になってしまう。その際、改質層Kが形成され脆くなったウエーハWが意図しないタイミングと意図しない方向に割れてしまう恐れもあった。
【0024】
そこで、加工方法によれば、改質層Kの形成後に密着解除ステップを実施する際、予め環状フレームFを保持面11aより高い位置に上昇させておく。このために、加工方法によれば、粘着テープTがドーム状に変形してウエーハWを反らせてしまい、意図しないタイミングと意図しない方向に割れてしまう事を抑制することが可能となった。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
11 チャックテーブル
11a 保持面
20 搬送手段
D デバイス
F 環状フレーム
K 改質層
L レーザー光線
S 分割予定ライン
T 粘着テープ
W ウエーハ
WS 表面
WR 裏面
WU ウエーハユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6