特許第6189747号(P6189747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189747ヒアルロン酸産生能を有する細胞シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189747
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生能を有する細胞シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20170821BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20170821BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20170821BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20170821BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20170821BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20170821BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20170821BHJP
   A61L 27/50 20060101ALN20170821BHJP
   A61L 27/60 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   C12N5/071
   C12N5/074
   C12N5/077
   C12N5/0775
   C12N5/079
   C12N5/0797
   A61L27/38 100
   !A61L27/50 300
   !A61L27/60
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-502378(P2013-502378)
(86)(22)【出願日】2012年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2012054987
(87)【国際公開番号】WO2012118097
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-58515(P2011-58515)
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501345220
【氏名又は名称】株式会社セルシード
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 洋章
(72)【発明者】
【氏名】坂井 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】篠原 康郎
(72)【発明者】
【氏名】武川 泰啓
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/069295(WO,A1)
【文献】 特開平09−224674(JP,A)
【文献】 特開2002−363081(JP,A)
【文献】 特開2009−089715(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/093151(WO,A1)
【文献】 Biomaterials,2007年,vol. 28,p. 745-749
【文献】 荒木 香代、他,眼組織および口腔粘膜上皮由来細胞の細胞シートの総合グライコーム解析,生化学,2011年 8月19日,(CD-ROM),Abstract 4T8a-7(4P-0005)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
A61L 27/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/SCISEARCH/CONFSCI/DISSABS(WPIDS)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医学・薬学予稿集全文データベース
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆したインサートを設置した温度応答性培養器材において、当該インサート上に細胞を播種し、ここで当該細胞は、生体から採取された幹細胞を0.5%以上で含む細胞であり、当該ポリマーの水和力が弱い温度域で当該細胞を培養し、シート状にし、その後、培養液の温度を当該ポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで当該細胞をシート状で剥離させ、ヒアルロン酸産生能を高めることを特徴とする、細胞シートの製造方法であって、
当該培養中に幹細胞の含有率を維持又は高める、前記製造方法。
【請求項2】
前記細胞が口腔粘膜細胞、角膜輪部上皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、軟骨細胞、滑膜細胞、表皮角化細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、乳腺上皮細胞のいずれか1つ、もしくは2種以上の細胞が混合したものである、請求項1記載の細胞シートの製造方法。
【請求項3】
剥離した細胞シートをさらに別の細胞シート上に積層化し、或いはその操作を繰り返すことで細胞シートを積層化する、請求項1又は2記載の細胞シートの製造方法。
【請求項4】
前記剥離において、細胞シートは、蛋白質分解酵素による処理を施されることなくインサートから剥離される、請求項1〜3のいずれか1項記載の細胞シートの製造方法。
【請求項5】
前記剥離において、培養終了時に培養細胞上にキャリアを密着させ、当該細胞シートをキャリアと共にインサートから剥離する、請求項1〜4のいずれか1項記載の細胞シートの製造方法。
【請求項6】
前記インサート上に播種する細胞の細胞数は0.4×10〜2.5×10個/cmである、請求項1〜5のいずれか1項記載の細胞シートの製造方法。
【請求項7】
前記0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、請求項1〜6のいずれか1項記載の細胞シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、薬学、生化学、生物学の分野において有用な細胞シート、製造方法及びその利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、患者本人の細胞を生体外で再生し移植するといった再生医療技術の研究開発が活発に行われている。対象となる臓器も皮膚、角膜、腎臓、肝臓、心臓等と実に多様で、また、術後の経過も格段に良くなり、医療の一技術としてすでに確立されつつある。一例として角膜移植をあげると、約50年前に日本にもアイバンクが設立され移植活動が始められた。しかしながら、未だにドナー数が少なく、国内だけでも角膜移植の必要な患者が年間約2万人いるのに対し、実際に移植治療が行える患者は約1/10の2000人程度でしかないといわれている。角膜移植というほぼ確立された技術があるにもかかわらず、ドナー不足という問題のため、次なる医療技術が求められているのが現状である。このような背景のもと、患者本人の正常な細胞を所望の大きさまで培養し移植しようとする技術が開発された。
【0003】
このような背景のもと、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養法が示されている。また、特許文献2には、この温度応答性細胞培養基材を利用して皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。温度応答性細胞培養基材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。特許文献3では、その技術をさらに発展させ、肝組織内に存在する実質細胞を細胞シートとすることで、従来技術では困難であった肝組織細胞機能を長期にわたり維持させられることが分かってきた。しかしながら、ヒアルロン酸産生能についてはこれまで何ら検討されていなかった。
【0004】
一方で、多数の成分を含む溶液試料の分離分析に、液体クロマトグラフィーが以前より使用されている。その際、疎水性分子の分析には逆相型カラム、親水性分子の分析には順相型カラムが用いられている。しかしながら、生体試料の場合、疎水性分子と親水性分子が混在しており、従って、このような生体試料を分離分析するには、通常、逆相型カラムを装着した装置と順相型カラムを装着した装置2台でそれぞれの分子を分析する必要があったり、或いは逆相型トラップカラムで疎水性分子のみを精製してから逆相型カラムを使って分析したり、逆に順相型トラップカラムで親水性分子のみを精製してから順相型カラムを使って分析する必要があり、分析作業が煩雑になる問題があった(非特許文献1〜3参照)。特に糖鎖分子については分析する方法が限られており、操作が煩雑とされ、以前より、より簡便で有効な分析が求められていた。
【0005】
そのような中、発明者らはこれまで詳細を解析することが困難であった糖タンパク質或いは糖ペプチドの糖鎖を精査できる技術を構築してきた。その中でグリコサミノグリカン(GAG)は、主に細胞膜、細胞外基質(ECM)にタンパク質結合型あるいは非結合型として存在する多糖で、その化学構造はウロン酸とへキソサミンからなる基本の二糖構造が繰り返され、種々の程度の硫酸化を受けるものとして知られている。そして、その構成二糖の違いにより、主にコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸、へパラン硫酸/へパリン、ヒアルロン酸の三種に分類される。コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸はグルクロン酸/イズロン酸(β1→3)N−アセチルガラクトサミン、へパラン硫酸/へパリンはグルクロン酸/イズロン酸(β1→4)N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸はグルクロン酸(β1→3)N−アセチルグルコサミンの二糖から構成される。また、硫酸化修飾の組み合わせにより非常に多様性に富んだ構造を有する。これらグリコサミノグリカンは、分子サイズの大きさや硫酸化のパターンの違いにより、特徴的な粘弾性に由来する物理化学的性質と様々な機能性タンパク質との相互作用を介する生物的性質を併せ持つ重要な生体物質として知られている。ここでの知見を上述の再生医療技術の構築に利用しようとする試みは、これまでに実施されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−211865号公報
【特許文献2】特開平05−192138号公報
【特許文献3】再公表2007−080990号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Anal. Chem., 75, 5628-5637 (2003)
【非特許文献2】Anal. Chem., 76, 6560-6565 (2004)
【非特許文献3】J. Proteome Res., 3, 556-566 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、再生医療を実施するにあたり、より好適な細胞シートを設計し、再生医療技術を確立することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規な細胞シート、製造方法及びその利用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、発明者らがこれまで構築してきた糖鎖解析技術を利用することで、生体内組織を構成する細胞を培養すると培養細胞が積極的にヒアルロン酸(以下、HAと示すことがある。)産生し始めることを見出した。そして、そのHA産生能は、培養細胞内の幹細胞含有率を高い状態で維持させるような特定の条件下で顕著に増加することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ヒアルロン酸を高産生する細胞シートを提供するものである。また、本発明は、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培養液をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで培養した細胞をシート状で剥離させ、ヒアルロン酸産生能を高める細胞シートの製造方法を提供するものである。本発明者らは、本発明は、細胞シートという世界に類のない新規な発想による細胞構造物を使ってはじめて実現する極めて重要な発明と考えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明で作製された細胞シートであれば、ヒアルロン酸を高効率に産生する。そのヒアルロン酸は、移植された細胞シートから生体へ作用し、間質組織の補強、細胞/細胞間の接着補強、角質化遅延、組織肥厚化促進等の生体にとって好ましい効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた口腔粘膜細胞とその細胞シートから産生されるヒアルロン酸(図中のHA)を測定した結果を示す図である。
図2】実施例1で得られた口腔粘膜細胞とその細胞シートから産生されるヒアルロン酸(図中のHA)量を比較した結果を示す図である。
図3】実施例2で得られた角膜上皮細胞とその細胞シートから産生されるヒアルロン酸(図中のHA)を測定した結果を示す図である。
図4】実施例2で得られた角膜上皮細胞とその細胞シートから産生されるヒアルロン酸(図中のHA)量を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に示される細胞シートとはヒアルロン酸を高効率に産生するものである。その細胞シートの製造方法は、器材表面上で培養し最終的に培養した細胞をシート状に回収することができれば特に限定されるものではないが、例えば、器材表面上に細胞接着能を有するタンパク質やペプチド、合成ポリマー、さらには温度応答性ポリマーを被覆し、その上で細胞を培養し、シート状の細胞として剥離する方法が挙げられる。その中で、温度応答性ポリマーを被覆した器材を例にとると、細胞は0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養することができる。その温度とは通常、細胞を培養する温度である37℃が好ましい。本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。その際、培養、剥離されるものが細胞であることから、分離が5℃〜50℃の範囲で行われるため、温度応答性ポリマーとしては、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)などが挙げられる。本発明に用いられる共重合のためのモノマー及びポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリ−N、N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N、N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、カルボキシメチルセルロースなどの含水ポリマーなどが挙げられるが、特に制約されるものではない。
【0014】
本発明で用いられる、上述の各ポリマーの基材表面への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。培養基材表面への温度応答性ポリマーの被覆量は、1.1〜2.3μg/cmの範囲が良く、好ましくは1.4〜1.9μg/cmであり、さらに好ましくは1.5〜1.8μg/cmである。1.1μg/cmより少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該ポリマー上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に2.3μg/cm以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。このような場合、温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆すれば、基材表面の温度応答性ポリマー被覆量は2.3μg/cm以上であっても良く、その際の温度応答性ポリマーの被覆量は9.0μg/cm以下が良く、好ましくは8.0μg/cm以下が良く、7.0μg/cm以下が好都合である。温度応答性ポリマーの被覆量が9.0μg/cmを超えると温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆しても細胞が付着し難くなり好ましくない。そのような細胞接着性タンパク質の種類は何ら限定されるものではないが、例えば、コラーゲン、ラミニン、ラミニン5、フィブロネクチン、マトリゲル等の単独、もしくは2種以上の混合物が挙げられる。また、これらの細胞接着性タンパク質の被覆方法は常法に従えば良く、通常、細胞接着性タンパク質の水溶液を基材表面に塗布し、その後その水溶液を除去しリンスする方法がとられている。本発明は、温度応答性培養皿を利用したなるべく細胞シートそのものを利用しようとする技術である。従って、温度応答性ポリマー層上の細胞接着性タンパク質の被覆量が極度に多くなっては好ましくない。温度応答性ポリマーの被覆量、並びに細胞接着性タンパク質の被覆量の測定は常法に従えば良く、例えばFT−IR−ATRを用いて細胞付着部を直接測る方法、あらかじめラベル化したポリマーを同様な方法で固定化し細胞付着部に固定化されたラベル化ポリマー量より推測する方法などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。
【0015】
本発明の方法において、培養した細胞シートを温度応答性基材から剥離回収するには、培養された細胞の付着した培養基材の温度を培養基材上の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって剥離させることができる。その際、培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞をより早く、より高効率に剥離、回収する目的で、基材を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
【0016】
以上のことを温度応答性ポリマーとしてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を例にとり説明する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖が凝集し、白濁する。逆に31℃以下の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆、固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃以下の温度では、基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できないほどの表面となり、培養中の細胞、もしくは細胞シートも冷却するだけで剥離させられることになる。
【0017】
被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外のポリマー化合物、セラミックス類など全て用いることができる。
【0018】
本発明における培養基材の形状は特に制約されるものではないが、例えばディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサートのような形態のもの、或いは平膜状のものなどが挙げられる。
【0019】
本発明において、温度応答性ポリマーが被覆された器材を利用した場合、細胞シートは培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された細胞シートは接着性蛋白質を有し、細胞をシート状に剥離させた際には細胞−細胞間のデスモソーム構造がある程度保持されたものとなる。このことにより、移植時において患部組織と良好に接着することができ、効率良い移植を実施することができるようになる。一般に蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜40%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間の基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものとなる。これに対して、本発明の細胞シートは、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に60%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。
【0020】
本発明において利用される細胞は、ヒアルロン酸を産生するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、口腔粘膜細胞、角膜輪部上皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、軟骨細胞、滑膜細胞、表皮角化細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、乳腺上皮細胞のいずれか1種の細胞、もしくは2種以上の細胞が混合したものが挙げられる。さらに、それぞれの細胞の幹細胞を含まれていても良い。その中でも口腔粘膜細胞、角膜輪部上皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、表皮角化細胞等の上皮系細胞がヒアルロン酸を活発に産生するため、それらが単独、もしくは他の細胞中に混合されたものが好都合である。また、幹細胞の利用は本発明であるヒアルロン酸の産生に大きく影響するものと考えられ好都合である。さらに、これらの細胞にその他の細胞が混合されても良い。これらの細胞の培養は、常法に従いそれぞれの細胞に適した培地、播種密度、培養期間で培養すれば良いが、その際、ヒアルロン酸の産生能を上げるには、培養細胞中の幹細胞含有率を下げないように実施することが重要である。そのような培養方法も特に限定されるものではないが、上皮系細胞の培養にフィーダー細胞を併用する方法等が挙げられる。本発明において、培養細胞中の幹細胞含有率は0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上、最も好ましくは8%以上である。
【0021】
本発明で用いられる細胞は、生体組織から直接採取した細胞、直接採取し培養系等で分化させた細胞、或いは細胞株が挙げられるがその種類は、何ら制約されるものではない。これらの細胞の由来は特に制約されるものではないが、例えば、ヒト、或いはラット、マウス、モルモット、マーモセット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、チンパンジーあるいはそれらの免疫不全動物等が挙げられるが、本発明の細胞をヒトの治療に用いる場合はヒト、ブタ、チンパンジー由来の細胞を用いる方が望ましい。
【0022】
本発明では、播種される細胞を酵素処理することで個々の状態とする必要がある。その際の処理方法については常法に従えば良く、何ら制約されるものではない。また、培養時に播種する細胞数は使用細胞の動物種によって異なるが、一般的に0.4×10〜2.5×10個/cmが良く、好ましくは0.5×10〜2.1×10個/cmが良く、さらに好ましくは0.6×10〜1.7×10個/cmが良い。播種濃度が0.4×10個/cmより低い場合、細胞の増殖が悪く、得られる細胞シートの機能の発現程度が悪化し、本発明を実施する点において好ましくない。
【0023】
かくして、本発明における細胞シートが得られる。本発明では、それらの複数枚が積層化されたものであっても良い。その積層化枚数は特に限定されるものではないが、積層回数は10回以下が良く、好ましくは8回以下、さらに好ましくは4回以下が良い。細胞シートを積層化するとシート単面積当たりの細胞密度が向上し、細胞シートとしての機能も向上し好ましい。
【0024】
本発明に用いる細胞シート積層体とは、細胞シート内へ血管を導入させるための血管内皮細胞や血管内皮前駆細胞等の細胞シート、或いは細胞シートの免疫隔離するための軟骨細胞シート等の別の細胞からなるシートと組み合わされた状態で積層化されたものでも良い。その際、2種以上の異なる細胞を利用すると異なる細胞間で相互作用し合い、より高い活性の細胞シートが得られ好ましい。また、その積層する位置、順番、積層回数は特に制約されるものではないが、被覆又は補填される組織に応じ、接着性の強い細胞シートを使用すること等で適宜変えられる。また、積層回数は10回以下が良く、好ましくは8回以下、さらに好ましくは4回以下が良い。その際、血管内皮細胞を選択したとき、細胞シート積層体内に血管網を構築させる方法で防ぐことができる。その血管網を構築する方法は特に限定されるものではないが、例えば積層体内にあらかじめ血管内皮細胞を混在させる方法、積層体を製造する際に血管内皮細胞シートを積層させる方法、あるいは細胞シート積層体を生体内に埋入して血管網を構築させる方法等が挙げられる。
【0025】
本発明における細胞シート積層体を作製する方法についても特に限定されるものではないが、例えば、培養細胞をシート状で剥離させ、必要に応じ培養細胞移動治具を用いて培養細胞シート同士を積層化させることで得られる。その際、培地の温度は、培養基材表面に被覆された前記ポリマーが上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記ポリマーが下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。また、使用される培養細胞移動治具は剥離した細胞シートを捕捉できるものであれば特に限定されるわけではなく、例えば多孔膜や紙、ゴム等の膜類や板類、スポンジ類等が挙げられ、積層化作業を行い易くするために柄の付いた治具に多孔膜や紙、ゴム等の膜類や板類、スポンジ類等を取り付けたものを利用しても良い。
【0026】
本発明では、細胞シートの機能を安定化させる意味で、細胞シートに対し合成ポリマー、或いは天然ポリマーを被覆させたり、常法に従ってマイクロカプセル化することもできる。その際のポリマーの被覆法、マイクロカプセル化方法、並びに使用される材料は何ら限定されるものではないが、通常、ポリビニルアルコール、ウレタン、セルロース及びその誘導体、キチン、キトサン、コラーゲン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコン等の材料を膜状、多孔膜状、不織布状、織布状として細胞シートに接触させて使用される。
【0027】
以上より、本発明における細胞シート積層体とは、温度応答性ポリマーが被覆された細胞培養基材上から剥離され、必要に応じて培養細胞移動治具を用いることで得られた培養細胞シートは、培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けておらず、培養時に形成される細胞−基材間の基底膜様蛋白質も酵素による破壊を受けておらず、また、細胞−細胞間のデスモソーム構造が保持され、構造的欠陥が少なく強度の高いものである。
【0028】
細胞シートを密着させる際に使用するキャリアは、本発明の細胞を保持するための構造物であり、例えば高分子膜または高分子膜から成型された構造物、金属性治具などを使用することができる。例えば、キャリアの材質として高分子を使用する場合、その具体的な材質としてはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース及びその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタン、ゼラチン等を挙げることができる。キャリアの形状は、特に限定されるものではない。
【0029】
本発明で得られた細胞シートを生体内の所定部位に移植することができる。その移植部位は生体内のいずれの場所でも良く特に限定されないが、例えば、眼球、皮膚組織、大網、腹腔内組織、腹膜下組織、関節、血管壁、筋肉、筋膜下組織、心臓弁組織等が挙げられる。その中で、特に大網は血管が豊富に存在し、かつ移植行為が容易な点で好ましい。その移植部位はあらかじめ血管誘導を施されていても、施されていなくても良く、特に限定されるものではない。ここで、血管誘導を施す方法も特に限定されるものではないが、例えば、血管増殖因子であるFGFをミクロスフィアに包埋し、このミクロスフィアの組成、大きさ、注入範囲を変えながら生体に8〜10日間作用させる方法、ポリエチレンテレフタレートメッシュを任意の大きさに切り、袋状のものを作製し、そのバッグの内側に、高濃度アガロース溶液に溶解させたFGFを入れ、8〜10日間後、そのバッグを除去することにより、血管誘導された空間を作製する方法などが挙げられる。
【0030】
本発明において移植される細胞シートは、基底膜様蛋白質を保持しており、生着性が極めて良好である。移植する際には目的に応じて細胞数を変えれば良く、移植する細胞がシート状の時には、その大きさや形状を変えることで細胞の種々の機能の活性度を変えることができる。
【0031】
ヒトに対し、本発明で示すところの細胞シートを利用すれば、移植された細胞シートはヒトの生体内でヒアルロン酸を長期間発現することとなり、そのヒアルロン酸は、移植された細胞シートから生体へ作用し、間質組織の補強、細胞/細胞間の接着補強、角質化遅延、組織肥厚化促進等の生体にとって好ましい効果が期待される。
【0032】
本発明において培養した細胞が産生したヒアルロン酸の定量の方法は特に限定されるものではなく、液体クロマトグラフィー(HPLC)法や質量(MS)分析法、MS/MS法、或いはそれらを2種以上組み合わせた方法でも良い。その中で、陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムを利用した高速液体クロマトグラフィーによって、少なくとも2種以上のグリコサミノグリカンを同時に分析する方法であれば、細胞表層に存在する他の糖鎖の情報も得ることができ好都合である。その際、陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相は、例えば、有機樹脂で構成されるコアの表面に共有結合した多数の非芳香族両性イオン基を有するものであることができる。このような固定相は、例えば、特表2002−529714号公報に記載されている。より具体的には以下に説明する。
【0033】
上記固定相における「有機樹脂」とは、合成あるいは天然由来の有機重合体あるいは共重合体を示し、モノあるいはオリゴビニールモノマーユニットの、例えば、スチレンとその付加誘導体、アクリル酸あるいはメタクリル酸、アルキル アクリレートとメタクリレート、ハイドロキシアルキル アクリレートとメタクリレート、アクリルアミドとメタクリルアミド、ビニルピリジンとその付加誘導体、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、アルキレン ジアクリレート、アルキレン ジメタクリレート、オリゴエチレン グリコール ジアクリレートとオリゴエチレン グリコール ジメタクリレートで5ケのエチレン グリコール 繰り返しユニットを持つものまで、アルキレン ビス(アクリルアミド)、ピペリジン ビス(アクリルアミド)、トリメチロールプロパン トリアクリレート、トリメチロールプロパン トリメタクリレート、ペンタエリスリオール トリアクリレートとテトラアクリレート、そして、これらの混合物からなる。また、それは、炭水化物の重合体である、アガロース、セルロース、デキストラン、キトサン、それらの交差結合誘導体であることもできる。このような有機樹脂は固定相のコア(核)となる。
【0034】
「非芳香族両性イオン基(zwitterionic non-aromatic group)」とは、同じペンダント状基に正と負の電価を同時に持つ、付加されたイオン性の非芳香族官能基に関し、結果としてその使用中の主な条件下で総電荷がないものを言う。この様な基は、バックボーンとなる重合体に直接的に結合されるモノマー単位として存在するか、あるいは、少なくとも部分的に非芳香族両性イオンモノマーユニットからなる直鎖あるいは交差結合した重合体あるいは共重合層で、結果としてバックボーン重合体に結合したペンダント状基のおのおのには多価の非芳香族両性イオン基があるものを言う。
【0035】
非芳香族両性イオン基は、非芳香族イオン基が生体高分子の分離に適用され得る水のpH領域において、解離或いは水素イオン付加平衡を行う事が出来るかによって"強"あるいは"弱"と分類される。非芳香族強イオン基の例としては、スルホン酸や4級アンモニウム基があり、一方弱イオン基の例としてはカルボキシル基やアルキル- あるいはハイドロキシアルキル-アミンがある。強/強 非芳香族両性イオン基の例としてスルホアルキルアンモニオベタイン類、スルホアルキルアルセノベタイン類、ホスホノアルキルアンモニオベタイン類、そしてホスホノアルキルアルセノベタイン類がある。弱/強 非芳香続両性イオンは、一つの強電荷と一つの弱電荷からなり、これは、基が両性イオン性であれば総電荷はゼロであり、或いは、弱イオン基が水素イオン付加しているか、陰イオン基として解離しているか或いは中間の形かで、正か負となる。弱/弱両性イオン基は、例として、a)中性側鎖をアルキルカップリングでα−アミノ基と結合したα−アミノ酸、或いはb)α位保護したアミノ酸で側鎖にある反応基で結合させ、電荷を持たない共有結合を形成し、その後、α−アミノ基を脱保護するものがあり、どちらの場合も、周囲のpHに依存して、正や負あるいは総電荷ゼロの電荷を持つことの出来る両性のペンダント状基を形成する。総電荷ゼロの状態においては、解離性であるか水素イオン付加され得るこれらの基は、反対電荷を一つずつ持つ両性イオンと中性/中性、非両性イオン型の間の平衡状態にある。
【0036】
ビニール系モノマーで強−強非芳香族両性イオン基を共有結合したものの例としては、3−(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンジメチルアンモニオ)−1−ブタンサルホネート,4−(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンジメチルアンモニオ)−1−ブタンサルホネート,2−メタクリルオキシエチルホスホリルクロリン,4−[(2−アクリルアミド−2−メチルプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタノエート,および3−[N−デシル,N−(2−メタクリルオキシエチル),N−メチル]アンモニオプロパンサルホネートがある。
【0037】
この様な非芳香族両性イオン基を形成する重合体化モノマーを以下では"両性イオンモノマー(zwitterionic monomer)"と呼ぶ。同様に、非芳香族両性イオン基を形成する多孔性選択吸着体を以下"多孔性両性イオン選択吸着体(porous zwitterionic sorbent)"と呼ぶ。
【0038】
重合体/共重合体の選択は重要ではなく、従って多くの異なった種類の有機樹脂を使うことができる。表面の密な両性イオン官能基によリ提供される静電的なバリアーは、その下にある分離担体が生体高分子と相互作用することを遮蔽する。従って有機樹脂の役目は主に非芳香族両性イオン基の為の安定な分離担体となることである。従って選ばれた有機樹脂が化学的手法を使って結合することが可能な反応基を表面に持っている限り、重合体/共重合体の選択は重要ではない。よって、多くの異なった種類の有機樹脂に対し、非芳香族両性イオン性ペンダント性基を結合することができる。
【0039】
具体的には、非芳香族両性イオンモノマーが、有機樹脂の選択吸着分離担体を構成するモノマーの中の一部として含まれることができ、多孔性の両性イオン吸着体を提供できる。
【0040】
選択吸着分離担体は多孔性である。より特定すれば、その孔の直径は、溶出溶液の全体の流路を与えるために、5〜50nmの範囲であることができ、好ましくは7〜40nmの範囲である。
【0041】
非芳香族両性イオン基は、例えば、グラフト重合法で、非芳香族両性イオン基を持つモノマーが、分離担体の表面に結合される。具体的には、非芳香族両性イオン基が、非芳香族両性イオン基をもつモノマーが架橋モノマーと一緒に重合させられることで、選択吸着分離担体の構造全部を構成することもできる。より具体的には、非芳香族両性イオン基が分離担体にアルキル基の活性化で結合され、そして、それは続いてω−ジアルキルアミノアルキルスルホン酸と反応させ、分離担体上に非芳香族両性イオン基を形成する。表面に結合された非芳香族両性イオンペンダント基が、この分野で知られた反応手法を使い、適切に活性化された選択吸着分離担体上にジアルキルアミン(オプションとしていずれかあるいは両方のアルキル置換基に水酸基を含む)を取り込み、次にアルキルスルホンを反応させることで得られる。ある特定の具体例では、選択吸着分離担体は一体型の多孔性ポリマーである。"非芳香族両性イオン基(zwitterionic non-aromatic group)"とは、一つの同定できるペンダント性基として有機樹脂分離担体に結合された官能基に関し、当該官能基は陰と陽のイオン電荷の両方を持つものとして特徴づけられ、有機樹脂分離担体上に、直接的に、或いは活性化をした後に有機樹脂分離担体上に存在する官能基を覆う反応によるか、或いはそれらの性質を持った官能機を持つモノマーを重合することにより有機樹脂分離担体に結合されたものである。
【0042】
選択吸着分離担体は、その有機樹脂の表面が適切な反応可能な官能基を持つことで活性化されたものであってもよい。そのような官能基としては、エポキシ基、塩化アルキル基あるいは臭化アルキル基のようなハロゲン化アルキル基、および、アミノアルキルスルホン酸のアミノ基をアルキル化できるもので、その反応で選択吸着分離担体上に共有結合した非芳香族両性イオン基を形成する事ができるものを言う。
【0043】
具体例としては、上記の反応の結果できる両性イオン基が、ω−スルホアルキル-トリアルキルアンモニウム(スルホベタイン)基であることで、ここでは、少なくともアンモニア基の一つのアルキル誘導基が選択吸着分離担体に共有結合で結合され、いずれかあるいは両方のアルキル基が水酸基を持つことができる場合を挙げることができる。
【0044】
陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムは、上述のZIC(Ziwitterionic Ion Chromatography)カラムであることができ、このカラムは市販品として入手可能である。ZICカラムは、従来は、無機の陰イオンおよび陽イオンや小さな有機分子イオンの分離に使用されていたが、本発明者らの検討の結果、驚くべきことに、分子量が大きい複数のグリコサミノグリカンを容易に分離することができることを見い出した。
【0045】
上記カラムに後述するグリコサミノグリカンの構成二糖類を含む試料を供給した後、このカラムに有機溶媒または有機溶媒と水または水溶液の混合物を供給することで、目的分子の分離を行うことができる。
【0046】
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン、ピリジン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等を用いることができ、特に、アセトニトリル、メタノールが好ましい。またはこれら有機溶媒は、単独で使用することができるが、2種以上を併用することもできる。
【0047】
有機溶媒と水または水溶液を併用する。水溶液の場合、水溶液の塩濃度やpHを調整することができる。水溶液が塩を含む場合、塩としては、例えば、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等を用いることができる。特に、質量分析計を検出器として用いる場合には、揮発性の酢酸アンモニウムや炭酸アンモニウム好ましい。また、これら塩は、単独で使用することができるが、2種以上を併用することもできる。
【0048】
有機溶媒と水または水溶液の混合物において、有機溶媒の濃度は例えば、40%以上であることができ、有機溶媒100%を用いることもできる。有機溶媒と水または水溶液の混合物または有機溶媒をカラムに送液し、目的分子を分離する。有機溶媒の濃度を分離分析時間中に、連続的にまたは断続的に変化させることもでき(一般に液体クロマトグラフィーで使用されているグラジエント法)、それにより分離分析の効率を高めることもできる。
【0049】
また、溶液の塩濃度やpH(また、必要に応じて温度も)最適化し、分離の効率(分離時間や分離能)を高めることができる。また、塩濃度やpHを分離分析時間中に連続的にまたは断続的に変化させること(グラジエント法)、分離分析の効率を高めることもできる。また、本方法においては、カラムから溶出した分子または分析した分子を少なくとも1回同じカラムにリサイクルすることができる。1回のカラム通過では分離が充分でない場合には、少なくとも1回、同じカラムに溶出液をリサイクルすることができる。リサイクルすることで、分離が不十分な2以上の成分の分離を促進することができる。
【0050】
かくして得られた陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムを利用した高速液体クロマトグラフィーを使って、少なくとも2種以上のグリコサミノグリカンを同時に分析することを特徴とするものである。その際、対象となるグリコサミノグリカンは特に限定されるものではないが、コンドロイチン硫酸或いはデルマタン硫酸からなる化合物類、ヘパラン硫酸或いはヘパリンからなる化合物類、ヒアルロン酸化合物類、ケラタン硫酸類等が挙げられる。本方法ではグリコサミノグリカンを構成する二糖類に分解した後に分析が行われる。ここで、コンドロイチナーゼABCのようなコンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸(CSとDS)及びへパラン硫酸とへパリン(HSとHP)由来の二糖を測定するために、CSとDSを両方切断するような酵素、或いはHSとHPを両方切断するような酵素を使用すると、二糖になるともともとのCSとDSを構成する二糖(量・質)、HSとHPを構成する二糖(量・質)の区別はできなくなる。しかしながら、グリコサミノグリカンを分解する酵素の種類を変えることで、CSとDSを構成する二糖の量・質の区別、HSとHPを構成する二糖単位の量・質の区別がつくようになる。その方法は何ら限定されるものではないが、例えば、上述のコンドロイチナーゼABC(CSとDSを両方切断する酵素)を用いた二糖分析の結果と、コンドロ一ナーゼAC I フラボ or AC II アルスロ(DSは切断せず、CSのみ切断する酵素)を用いた二糖分析の結果やコンドロ一ナーゼ B(CSは切断せずDSのみを切断)を用いた二糖分析の結果を照らし合わせることで、CSを構成する二糖の量・質、DSを構成する二糖の量・質が検討できるようになる。このことは、HSとHPも同様である。本方法であれば、従来技術では極めて煩雑であった分離、分析方法を著しく簡便にしかも効率良く分析できるようになる。本方法においては、これらのグリコサミノグリカンを2種類以上、同時に分析するものであり、そのグリコサミノグリカンの種類、及びその数は3種でも良く、また4種類でも良く、特に限定されるものではない。また、その目的分子であるグリコサミノグリカンの分子量も特に制限はないが、例えば、100から数百万の分子量を有するものが対象となる。
【0051】
本方法は、上述した被検物質であるグリコサミノグリカンを構成単位の二糖類まで分解させ、その二糖類をグライコブロッティングにより捕捉した後、酸処理することで遊離させ、続けて還元的アミノ化することで蛍光ラベル化したものを分析する必要がある。その構成単位の二糖類まで分解する方法については特に限定されないが、通常、コンドロイチナーゼABC (Proteus vulgaris)、コンドロ一ナーゼAC I フラボ (Flavobacterium heparinum)、コンドロ一ナーゼAC II アルスロ(Arthrobacter aurescens)、コンドロ一ナーゼB (Flavobacterium heparinum)、ヘパリナーゼ (Flavobacterium heparinum)、ヘパリチナーゼ (Flavobacterium heparinum)、ヒアルロニダーゼSD (Streptococcus dysgalactiae)、ケラタナーゼ (Pseudomonas sp.)、ケラタナーゼII (Bacillus sp.) 等の微生物由来の酵素が利用される。その際の酵素濃度、基質濃度、処理温度、処理時間等の条件は常法に従えば良く特に限定されるものでない。得られた二糖類は必要に応じて、ろ過、ゲルろ過、吸着カラム等を利用して精製しても問題なく、その際の処理条件も何ら限定されるものではない。
【0052】
本方法では、得られたグリコサミノグリカンを構成単位の二糖類に対して蛍光ラベル化する必要がある。その蛍光ラベル化までの工程は何ら限定されるものではないが、例えば当該二糖類に対して直接、蛍光ラベル化する方法、或いは当該二糖類をグライコブロッティング法にてヒドラジド基を有する担体表面に固定し、その後、酸処理を行ないながらこの担体から二糖類を遊離させ、還元末端(ヘミアセタール構造)を有する糖鎖の状態とさせ、引き続き、アミノ基を有する化合物によって還元的アミノ化することで糖鎖の還元末端が開環した状態とさせ、蛍光ラベル化する方法が挙げられる。ここで、グライコブロッティング法とは、ヒドラジド基含有ポリマービーズと糖鎖の還元末端との間をヒドラゾン形成によって糖鎖特異的に結合することを特徴とする糖鎖精製方法であり、糖鎖または糖鎖誘導体を生体試料より、簡単な操作で精製する技術である。その方法を実施するには通常、ヒドラジド基、アミノオキシ基等を有する担体表面が良く用いられ、その担体は再表2008−018170号公報に従って得られるものでも良く、既存のBlotGlyco(住友ベークライト社製)を利用しても良い。捕捉方法は、上述の担体をカラムに充填し二糖類が溶解した液体を通過させても良く、担体を二糖類の溶液中へ投与する方法でも良く、担体があらかじめ充填された反応容器内に二糖類の溶液を連続的に投入して撹拌を行っても良い。捕捉反応の条件は特に限定されるものではなない。
【0053】
本方法では、こうして得られた担体に捕捉された二糖類を酸処理によって遊離させる。その際に利用される酸としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸等が挙げられるが特に限定されるものではない。また、その際の酸濃度、処理温度、処理時間等の各処理条件は常法に従えば良く特に限定されるものでない。
【0054】
本方法では、その酸処理された二糖類を還元的アミノ化を行う必要がある。その際に利用される還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ボラン・ピリジンコンプレックス、ピコリンボラン等が挙げられるが特に限定されるものではない。また、その際の還元剤濃度、処理温度、処理時間等の各処理条件は常法に従えば良く特に限定されるものでない。また、その際に利用される蛍光ラベル化剤としては、2−アミノベンズアミド、2−アミノピリジン、2−アミノアクリドン、BIDIPY ヒドラジド、2−アミノベンズヒドラジド等が挙げられるが特に限定されるものではない。また、蛍光ラベル化剤の代わりに、PMP(1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン)等のようなUVラベル化剤を利用しても良い。また、その際の蛍光/UVラベル化剤濃度、処理温度、処理時間等の各処理条件は常法に従えば良く特に限定されるものでない。かくして、本方法の二糖類は蛍光/UVでラベル化した化合物となる。
【0055】
本方法は、生体由来試料からグリコサミノグリカンを二糖まで分解を行い、その二糖類を蛍光ラベル化したものを分析試料として利用すれば、両性イオンカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによって、複数のグリコサミノグリカンを1度の分析で同時に分離、分析ができるようになる。
【0056】
分離した分子の分析は、目的分子の種類に応じて適宜の方法を使用することができるが、例えば、質量分析(MS)及び/または核磁気共鳴(NMR)を用いることができる。質量分析(MS)及び/または核磁気共鳴(NMR)以外にも、紫外吸光光度計(UV)、エバポレイテイブ光散乱検出器(ELS)、電気化学検出器等を用いることができる。
【0057】
本方法においては、カラムから溶出した分子または分析した分子を、さらに分取することができる。目的分子を分取することで、分取した分子をさらに利用することができる。分取法としては、例えば、フラクションコレクター等を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0059】
[実施例1]
ウサギ(ニュージーランドホワイト種;日本チャールズリバー)をモデルとして、角膜が喪失されている場合を想定し、口腔粘膜上皮細胞をウサギから調製した。頬粘膜から、3〜5mm径の1断片を採取し、ディスパーゼ処理(1000U、4℃、4時間)、続けてトリプシン処理(0.25%、37℃、20分間)することで口腔粘膜細胞を得た。本培養細胞のコロニー形成率は0.3%と通常のウサギ口腔粘膜細胞より高い値を示した。得られた細胞を、別に作製した温度応答性培養器材(インサートタイプ、セルシード製)上に、インサート当たり5×10個、の細胞を播種した。インサートを設置する培養器材上には、常法に従ってマイトマイシンCによって増殖能をなくしたマウス3T3細胞をフィーダー細胞として培養した。口腔粘膜細胞の培養はDMEM/Ham’s 12(3:1、インヴィトロジェン製)に10%ウシ胎仔血清(FCS)ならびにインスリン(5μg/ml、インヴィトロジェン製)、コレラトキシン(1nM、和光純薬製)、ハイドロコルチゾン(0.4μg/ml、和光純薬製)、トリヨードチロニン(2nM/ml、MP BIOMEDICALS製)、トランスフェリン(5μg/ml、インヴィトロジェン製)、EGF(10ng/ml、インヴィトロジェン製)を添加した培地中で培養した。フィーダー細胞は、3T3は、2×10個の細胞を使用した。培養12日後に重層化した口腔粘膜細胞シートを温度応答性培養器材から冷却することで剥離させた。
【0060】
得られた細胞シートをクロロホルム/メタノール比率が2/1,1/1,1/2の順に超音波処理を行い脱脂した後、プロナーゼによるタンパク質の消化を行った。その後、80%エタノール/5%酢酸ナトリウムになるように試料を調製し、4度で2時間静置した。その後、遠心処理によりペレットを回収した。回収したペレットを、コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris)、ヘパリナーゼ(Flavobacterium heparinum)、ヘパリチナーゼ(Flavobacterium heparinum)、ヒアルロニダーゼSD(Streptococcus dysgalactiae)により、グリコサミノグリカンを分解した後、グライコブロッティング法による精製と還元的アミノ化による蛍光ラベル化を行い、ZIC−HILICカラムにより分離・分析を行った。両性イオン性カラムは、ZIC−HILIC(2x150mm)を用いた。ZICカラムの固定相は、シリカ表面にN,N−ジメチル,N−メタクリオイルオキシエチル,N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインを共有結合させたものである。溶離液A(ミリQ水)、溶離液B(アセトニトリル)、溶離液C(200mM 酢酸アンモニウム)を用い、A/B/C=5/90/5(0min)→A/B/C=13/82/5(20min)→A/B/C=35/60/5(60min)のグラジエント溶出法を用いた。流速は0.2mL/minで一定であり、カラムオーブンによりカラム温度は30℃に保った。蛍光検出は、励起波長 330nm、蛍光波長 420nmで測定した。絶対量は添加した内標の量から見積もった。この結果から、培養細胞に含まれるHAが顕著に増加していることが分かった。
【0061】
[実施例2]
ウサギ(ニュージーランドホワイト種;日本チャールズリバー)をモデルとして、角膜が喪失されている場合を想定し、角膜上皮細胞をウサギから調製した。眼球組織から、強角膜片を作製し、ディスパーゼ処理(3.0U、37℃、1時間)、続けてトリプシン処理(0.25%、37℃、15分間)することで角膜上皮細胞を得た。本培養細胞のコロニー形成率は3.5%と通常のウサギ角膜上皮細胞より高い値を示した。得られた細胞を、別に作製した温度応答性培養器材(インサートタイプ、セルシード製)上に、インサート当たり1×10個の細胞を播種した。インサートを設置する培養器材上には、常法に従ってマイトマイシンCによって増殖能をなくしたマウス3T3細胞をフィーダー細胞として培養した。角膜上皮細胞の培養はDMEM/Ham’s 12(3:1、インヴィトロジェン製)に10%ウシ胎仔血清(FCS)ならびにインスリン(5μg/ml、インヴィトロジェン製)、コレラトキシン(1nM、和光純薬製)、ハイドロコルチゾン(0.4μg/ml、和光純薬製)、トリヨードチロニン(2nM/ml、MP BIOMEDICALS製)、トランスフェリン(5μg/ml、インヴィトロジェン製)、EGF(10ng/ml、インヴィトロジェン製)を添加した培地中で培養した。フィーダー細胞は、3T3は、2×10個の細胞を使用した。培養12日後に重層化した角膜上皮細胞シートを温度応答性培養器材から冷却することで剥離させた。
【0062】
得られた細胞シートをクロロホルム/メタノール比率が2/1,1/1,1/2の順に超音波処理を行い脱脂した後、プロナーゼによるタンパク質の消化を行った。その後、80%エタノール/5%酢酸ナトリウムになるように試料を調製し、4度で2時間静置した。その後、遠心処理によりペレットを回収した。回収したペレットを、コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris)、ヘパリナーゼ(Flavobacterium heparinum)、ヘパリチナーゼ(Flavobacterium heparinum)、ヒアルロニダーゼSD(Streptococcus dysgalactiae)により、グリコサミノグリカンを分解した後、グライコブロッティング法による精製と還元的アミノ化による蛍光ラベル化を行い、ZIC−HILICカラムにより分離・分析を行った。両性イオン性カラムは、ZIC−HILIC(2x150mm)を用いた。ZICカラムの固定相は、シリカ表面にN,N−ジメチル,N−メタクリオイルオキシエチル,N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインを共有結合させたものである。溶離液A(ミリQ水)、溶離液B(アセトニトリル)、溶離液C(200mM 酢酸アンモニウム)を用い、A/B/C=5/90/5(0min)→A/B/C=13/82/5(20min)→A/B/C=35/60/5(60min)のグラジエント溶出法を用いた。流速は0.2mL/minで一定であり、カラムオーブンによりカラム温度は30℃に保った。蛍光検出は、励起波長 330nm、蛍光波長 420nmで測定した。絶対量は添加した内標の量から見積もった。この結果から、培養細胞に含まれるHAが顕著に増加していることが分かった。
【0063】
[実施例3]
実施例1で得られた口腔粘膜細胞シート1枚を、常法によってあらかじめ作製しておいた、ウサギ眼球の角膜輪部から幹細胞を取り除いた角膜幹細胞疲弊症モデルへ移植した。3週間後、患部を肉眼で観察したところ、口腔粘膜細胞シートは眼球に良好に生着しており、角膜の膨潤も認められなかった。その結果、移植部位の保湿性が高まり患部組織の状態が改善し、患部が効率良く治癒することが分かった。
【0064】
[実施例4]
実施例2で得られた角膜上皮細胞シート1枚を、常法によってあらかじめ作製しておいた、ウサギ眼球の角膜輪部から幹細胞を取り除いた角膜幹細胞疲弊症モデルへ移植した。3週間後、患部を肉眼で観察したところ、口腔粘膜細胞シートは眼球に良好に生着しており、角膜の膨潤も認められなかった。その結果、移植部位の保湿性が高まり患部組織の状態が改善し、患部が効率良く治癒することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明で作製された細胞シートを生体へ移植することで、損失した組織の再生をはかれるだけでなく、移植した細胞シートから産生されるHAにより移植側の組織状態の改善もはかれるようになる。患部に対し損失した組織を単純に形成させる従来型の再生医療技術から、患部の環境も改善させつつ損失した組織を再生するという次世代の再生医療技術を提供することができるようになる。
図1
図2
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図4