特許第6189758号(P6189758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189758チタン含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189758
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】チタン含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20170821BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20170821BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
   G03F7/26 511
   H01L21/30 573
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-14302(P2014-14302)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-199429(P2014-199429A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-53971(P2013-53971)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】種田 義則
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−085893(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/012068(WO,A1)
【文献】 特開2012−194216(JP,A)
【文献】 特開2014−170220(JP,A)
【文献】 特開2010−085912(JP,A)
【文献】 特開2009−126940(JP,A)
【文献】 特開2004−179391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11,7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(A−1)で示されるチタン化合物、該一般式(A−1)で示されるチタン化合物のみの加水分解物、前記一般式(A−1)で示されるチタン化合物のみの縮合物、及び前記一般式(A−1)で示されるチタン化合物のみの加水分解縮合物から選ばれる1種類以上と、下記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールとの反応物であるチタン含有化合物、及び、
Ti(OR1A (A−1)
(式中、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
2A(OH) (A−2)
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20の2価の有機基である。)
(C)成分として、溶媒を含むものであり、
前記一般式(A−1)で示されるチタン化合物もしくは前記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコール、又はその両方が1つ以上の3級アルコール構造を含むものであることを特徴とするチタン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項2】
さらに、(B)成分として、下記一般式(B−1)で示されるシラン化合物、該一般式(B−1)で示されるシラン化合物の加水分解物、及び前記一般式(B−1)で示されるシラン化合物の加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物。
1Bb12Bb23Bb3Si(OR0B(4−b1−b2−b3) (B−1)
(式中、R0Bは炭素数1〜6の炭化水素基であり、R1B、R2B、R3Bは水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。また、b1、b2、b3は0又は1であり、1≦b1+b2+b3≦3である。)
【請求項3】
さらに、(B)成分として、1種以上の下記一般式(B−1)で示されるシラン化合物と、1種以上の下記一般式(B−2)で示される化合物との加水分解物もしくは縮合物、又は加水分解縮合物を含むものであることを特徴とする請求項に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物。
1Bb12Bb23Bb3Si(OR0B(4−b1−b2−b3) (B−1)
(式中、R0Bは炭素数1〜6の炭化水素基であり、R1B、R2B、R3Bは水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。また、b1、b2、b3は0又は1であり、1≦b1+b2+b3≦3である。)
L(OR4Bb4(OR5Bb5(O)b6 (B−2)
(式中、R4B、R5Bは炭素数1〜30の有機基であり、b4、b5、b6は0以上の整数、b4+b5+2×b6はLの種類により決まる価数であり、Lは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素を除くものである。)
【請求項4】
前記一般式(B−2)中のLが、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、タンタル、又はチタンのいずれかの元素であることを特徴とする請求項に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
前記一般式(B−1)中のR1B、R2B、R3Bのうちの一つ以上が酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
前記被加工体が、半導体回路の一部又は全部が形成されている半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜又は金属酸化窒化膜を有するものであることを特徴とする請求項又は請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン又はこれらの合金であることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記レジスト上層膜のパターン形成の方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法、及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を用いることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法に使用されるチタン含有レジスト下層膜形成用組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。さらなる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、さらに微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。さらに、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの量産が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、Fリソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。このArF液浸リソグラフィーは、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入されている。これにより高速スキャンが可能となり、さらにNA1.3級のレンズを使用することで45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0003】
その次の微細加工技術である32nmノードのリソグラフィー技術として、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー技術が候補に挙げられている。この技術の問題点は、レーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LER)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられており、現状、克服すべき問題が山積している。32nmノードのもう一つの候補として開発が進められていた高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。このように、汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0004】
そこで、既存のArF液浸露光技術の限界解像度を超える加工寸法を得るための微細加工技術の開発が加速されている。その技術の一つとして、ダブルパターニング技術が提案されている。このダブルパターニング技術としては、例えば、(1)第1の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔の第1のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて、第1の露光で得られたスペース部分にフォトレジスト膜の第2の露光と現像で第2のラインパターンを形成し、続いてハードマスクをドライエッチングで加工し、第1パターンと第2パターンを交互に形成する方法がある。これにより、露光パターンの半分のピッチでラインアンドスペースパターンを形成することが可能である。また、(2)第1の露光と現像でラインとスペースが3:1の間隔の第1のフォトレジストパターンを形成し、下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に第2の露光でパターンを形成し、それをマスクとしてハードマスクをドライエッチングで加工する方法もある。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工して、露光パターンの半分のピッチのパターンが形成できる。しかし、(1)の方法では、ハードマスクを2回形成する必要があり、(2)の方法ではハードマスクの形成は1回で済むが、ラインパターンに比べて解像が困難なトレンチパターンを形成する必要がある。
【0005】
その他の方法として、(3)ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明を用いてX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト材料を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンのすきまよりホールパターンを形成する方法(非特許文献1)が提案されている。さらに、レジストパターン、パターン転写された有機ハードマスクやポリシリコン膜などをコアパターンとして、その周りを低温でシリコン酸化膜を形成した後、ドライエッチング等でコアパターンを除去するスペーサ技術を用いて、1回のパターン露光でピッチを半分にする方法も提案されている。
【0006】
このように、上層にあるレジスト膜だけでは微細化が困難であり、レジスト膜の下層に形成されているハードマスクを利用しなければ微細化プロセスが成立しなくなってきている。このような状況下、レジスト下層膜としてのハードマスクを利用する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜、例えばケイ素含有レジスト下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチングによりレジスト下層膜にパターンを転写し、さらにレジスト下層膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板やスペーサプロセス用のコアとなる膜にパターンを転写する方法である。
【0007】
この様な多層レジスト法で使用されるものとして、ケイ素含有膜形成用組成物がよく知られている。例えば、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO膜(例えば、特許文献1等)やSiON膜(例えば、特許文献2等)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG(スピンオンガラス)膜(例えば、特許文献3等)や架橋性シルセスキオキサン膜(例えば、特許文献4等)等がある。
【0008】
また、これまで、多層膜レジスト法に使用できるレジスト下層膜について検討され、特許文献5や特許文献6などに示されているケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が提案された。しかしながら、近年のArF液浸リソグラフィーの解像度の限界を超えた半導体装置製造プロセスでは、前述したダブルパターニング等の複雑なプロセスが提案されており、従来型の有機膜とケイ素含有膜だけでは合理的なプロセス構築が困難になっている。そこで、より合理的な半導体装置製造プロセスの構築のため、現在実用化されている有機膜やケイ素含有膜に対してそれぞれエッチング選択性を有し、微細化されたパターンに対するパターン密着性を有する成分を含有する塗布膜が必要とされている。
【0009】
このような状況下、有機膜やケイ素含有膜に対するエッチング選択性を有する塗布膜として、様々な金属種を含有するレジスト下層膜が提案されている(特許文献7〜9)。例えば、特許文献7ではポリチタノキサンを用いたKrF露光パターニング評価は確認されているが、ArF液浸露光によるパターニング評価はされていない。特許文献8ではパターニング評価がされていないため、実際のパターニング性能は不明である。特許文献9では、チタンだけでなくジルコニウム含有レジスト下層膜が提案されているが、これも同様に、パターニング評価がされていないため実際の性能は不明である。従って、これらの塗布膜が微細化されたパターンに対する密着性を有するかは不明であった。
【0010】
また、上記のような特性を持つ塗布膜として、チタンアルコキシド類を含むものが提案されている。しかし、一般的に、チタンアルコキシド類はシリコンアルコキシド類に比べて、加水分解縮合したものにおいても、水分に対する反応性が高いことが知られている(特許文献10、非特許文献2)。このことは、半導体装置製造プロセスに使用した場合、製造装置に接続している間に特性が変化してしまうということを示しており、当該用途においては致命的な欠点となる。
【0011】
このように、従来の有機膜やケイ素含有膜に対するエッチング選択性、微細なパターンに対するパターン密着性、及び、製造装置に接続している期間においても塗布膜としての特性が変化することのない保存安定性を有する塗布膜が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−183194号公報
【特許文献2】特開平7−181688号公報
【特許文献3】特開2007−302873号公報
【特許文献4】特表2005−520354号公報
【特許文献5】特許4716037号公報
【特許文献6】特許5038354号公報
【特許文献7】特開平11−258813号公報
【特許文献8】特開2006−251369号公報
【特許文献9】特表2005−537502号公報
【特許文献10】特開2001−322815号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol.5377 p255(2004)
【非特許文献2】Solar Energy Materials 5(1981) 159−172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、製造装置に接続している期間においても、特性の変化がなく保存安定性に優れ、微細なパターンに対するパターン密着性に優れ、さらに従来の有機膜やケイ素含有膜とのエッチング選択性に優れたチタン含有レジスト下層膜を形成するためのチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、
(A)成分として、下記一般式(A−1)で示されるチタン化合物、該チタン化合物を加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるチタン含有化合物から選ばれる1種類以上に、下記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールを作用させて得られるチタン含有化合物、及び、
Ti(OR1A (A−1)
(式中、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
2A(OH) (A−2)
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20の2価の有機基である。)
(C)成分として、溶媒を含むチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【0016】
このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、製造装置に接続している期間においても、特性の変化がなく保存安定性に優れ、微細なパターンに対するパターン密着性に優れ、さらに従来の有機膜やケイ素含有膜とのエッチング選択性に優れたチタン含有レジスト下層膜を形成することができる。
【0017】
このとき、前記一般式(A−1)で示されるチタン化合物もしくは前記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコール、又はその両方が1つ以上の3級アルコール構造を含むものであることが好ましい。
【0018】
このような(A)成分であれば、保存安定性を向上させることができ、さらに、チタン含有レジスト下層膜の架橋反応を促進させる場合においても、その際の加熱をより低温域で行うことができる。
【0019】
さらに、前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物が、(B)成分として、1種以上の下記一般式(B−1)で示されるシラン化合物、該シラン化合物を加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるケイ素含有化合物から選ばれる1種類以上含むものであることが好ましい。
1Bb12Bb23Bb3Si(OR0B(4−b1−b2−b3) (B−1)
(式中、R0Bは炭素数1〜6の炭化水素基であり、R1B、R2B、R3Bは水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。また、b1、b2、b3は0又は1であり、1≦b1+b2+b3≦3である。)
【0020】
このように(B)成分をさらに加えることで、微細パターンに対するパターン密着性を向上させることができる。
【0021】
また、前記(B)成分が、1種以上の前記一般式(B−1)で示されるシラン化合物と、1種以上の下記一般式(B−2)で示される化合物とを加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるケイ素含有化合物であることが好ましい。
L(OR4Bb4(OR5Bb5(O)b6 (B−2)
(式中、R4B、R5Bは炭素数1〜30の有機基であり、b4、b5、b6は0以上の整数、b4+b5+2×b6はLの種類により決まる価数であり、Lは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素を除くものである。)
【0022】
このとき、前記一般式(B−2)中のLが、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、タンタル、又はチタンのいずれかの元素であることが好ましい。
【0023】
このような(B)成分であれば、従来の有機膜やケイ素含有膜に対するエッチング選択性を向上させることができる。
【0024】
また、前記一般式(B−1)中のR1B、R2B、R3Bのうちの一つ以上が酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であることが好ましい。
【0025】
このような(B)成分であれば、微細パターンに対するパターン密着性をより向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明は、
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0028】
本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてパターン形成を行うと、上記のように、有機下層膜や有機ハードマスクの組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなくレジスト上層膜で形成されたパターンを被加工体上に転写して形成することができる。
【0029】
このとき、前記被加工体が、半導体回路の一部又は全部が形成されている半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜又は金属酸化窒化膜を有するものであることが好ましい。
【0030】
さらに、前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン又はこれらの合金であることが好ましい。
【0031】
このように、本発明のパターン形成方法では、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0032】
また、前記レジスト上層膜のパターン形成の方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法、及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
【0033】
このような方法を用いることで、レジスト上層膜に微細なパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いることで、通常の製造装置に接続している長い期間においても、特性の変化、特に性能の低下がなく保存安定性に優れ、上部に形成された微細なパターンに対しては良好なパターン密着性を示し、また、上部に形成されたパターンと下部に形成された有機下層膜又は有機ハードマスクの両方に対して高いエッチング選択性を示すチタン含有レジスト下層膜を形成することができる。また、このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されるチタン含有レジスト下層膜は、架橋反応を促進させる場合においても、その際の加熱をより低温域で行うことができる。さらに、このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いるパターン形成方法であれば、レジスト上層膜に形成された微細なパターンをチタン含有レジスト下層膜、有機下層膜又は有機ハードマスクと順にエッチングして、サイズ変換差を生じさせることなくパターンを転写することができ、最終的に、有機下層膜又は有機ハードマスクをエッチングマスクとして被加工体を高い精度で加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の(A)成分の合成例(A−I)の熱質量減少の推移を示すグラフである。
図2】合成例(A−VI)の熱質量減少の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討したところ、有機基としてアルコキシ基を有するチタン化合物に2価又は3価のアルコールを作用させて得たチタン含有化合物をレジスト下層膜形成用組成物に用いれば、アルコキシ基による微細なパターンに対するパターン密着性、炭素分が少ないことによる従来の有機膜やケイ素含有膜とのエッチング選択性を有し、さらにチタン化合物をレジスト下層膜に用いる際に問題となる保存安定性が良好なレジスト下層膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0037】
即ち、本発明は、
(A)成分として、下記一般式(A−1)で示されるチタン化合物、該チタン化合物を加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるチタン含有化合物から選ばれる1種類以上に、下記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールを作用させて得られるチタン含有化合物、及び、
Ti(OR1A (A−1)
(式中、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
2A(OH) (A−2)
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20の2価の有機基である。)
(C)成分として、溶媒を含むチタン含有レジスト下層膜形成用組成物である。
【0038】
このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、パターン密着性、及びエッチング選択性に優れる炭素分の少ないチタン含有レジスト下層膜に、さらに、特別な製造装置を使用することなく長期間特性の変化することのないような保存安定性を付与することができる。
【0039】
また、本発明者らは、さらに、保存安定性の優れたレジスト下層膜を得るため、鋭意検討したところ、チタン含有化合物の末端有機基であるアルコキシ基に3級アルコール構造を入れることが効果的であることを見出した。
【0040】
即ち、前記一般式(A−1)で示されるチタン化合物もしくは前記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコール、又はその両方が1つ以上の3級アルコール構造を含むものであることが好ましい。
【0041】
通常、酸素原子を介してチタン原子に結合している有機基中の炭素原子は、その周りの骨格構造により溶媒に対する溶解性や熱に対する安定性が異なる。また、上記のチタン含有化合物の溶媒(特に有機溶媒)に対する溶解性は、有機基中に含まれる炭素原子又は作用させるアルコール中の炭素原子のとる骨格構造が、1級アルコール構造、2級アルコール構造、3級アルコール構造となる順に高くなり、3級アルコール構造が導入されていると、チタン含有化合物の有機溶媒に対する溶解性が向上し、チタン含有化合物の析出等が防止できる。また、上記のチタン含有化合物の熱分解温度は、上記炭素原子のとる骨格構造が、1級アルコール構造、2級アルコール構造、3級アルコール構造となる順に低くなり、3級アルコール構造が導入されていると、一般的な半導体装置製造プロセスで使用可能な100〜350℃の温度範囲で成膜が可能となる。
【0042】
従って、上記一般式(A−1)で示されるチタン化合物もしくは上記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコール、又はその両方に3級アルコール構造を導入すると、レジスト下層膜の保存安定性を向上させ、さらに、レジスト下層膜の架橋反応を促進させる場合、その際の加熱を低温域とすることが可能となる。
【0043】
本発明者らは、さらに、パターン密着性及びエッチング選択性のより優れたレジスト下層膜を得るため、鋭意検討したところ、エッチング選択性に優れる炭素分の少ないチタン含有レジスト下層膜の表層部分に、パターン密着性の良好な成分を偏在させた2層構造のレジスト下層膜が上記課題に対して最も効果的であることを見出した。
【0044】
このように2層構造の塗布膜を形成する方法として、例えば、フッ素原子を含有する低屈折率硬化皮膜を与え得る化合物とそれよりも表面自由エネルギーが大きい高屈折率硬化皮膜を与える化合物を構成成分とする反射防止皮膜形成組成物を用いると、可視光の反射を低減できる2層構造の反射防止膜を形成する方法が、特開2000−53921号公報に開示されている。これは、膜形成の段階で膜表面の自由エネルギーが最小となるように分子の自己的な配列と集合が進行し、相分離現象により2層構造が形成されたものと考えられる。この方法は一度の塗布で2層構造が形成されるものであり、反射率の低減と生産性とを両立する。しかしながら、ポリマーの自由エネルギーの差が適切ではない場合には相分離により2層構造が形成されるとは限らず、片方の相のマトリックスにもう片方の相のドメインが点在したいわゆる海島構造を生じることも多く、2層構造の反射防止膜を形成するためには、好適な材料の組み合わせを見出す必要がある。
【0045】
例えば、パーフルオロアルキル基やシロキサンを有する界面活性剤が、スピンコート後のレジスト膜表面に浮いてきて、表面を覆うことはよく知られている。これは、表面エネルギーの低いパーフルオロアルキル基やシロキサンが表面に配向することによって安定化することを利用している。この実例として、−C(CFOH構造を有する高分子化合物をフォトレジスト膜に添加すると膜表面に配向することが、特開2007−297590号公報に記載されている。
【0046】
本発明では、上記のチタン含有化合物に対して、さらにケイ素含有化合物を加えることで、海島構造を形成することなく、炭素分が少なくエッチング選択性の高いチタン含有レジスト下層膜表層にパターン密着性の良好なケイ素含有成分が分布する2層構造を形成することが可能となった。
【0047】
即ち、前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物が、さらに(B)成分として、1種以上の下記一般式(B−1)で示されるシラン化合物、該シラン化合物を加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるケイ素含有化合物から選ばれる1種類以上含むものであることが好ましい。
1Bb12Bb23Bb3Si(OR0B(4−b1−b2−b3) (B−1)
(式中、R0Bは炭素数1〜6の炭化水素基であり、R1B、R2B、R3Bは水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。また、b1、b2、b3は0又は1であり、1≦b1+b2+b3≦3である。)
【0048】
さらに(B)成分を添加すると、エッチング選択性に優れるチタン含有レジスト下層膜の表層部分に、パターン密着性に優れるケイ素含有膜が偏在した2層構造のレジスト下層膜を得ることができ、微細なパターンにおいてもレジスト上層膜パターンとのパターン密着性がさらに優れた下層膜となる。
【0049】
さらに、上記一般式(B−1)で示されるシラン化合物が、酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基を有するものであれば、レジスト下層膜とした際に上記のような有機基を含むケイ素含有化合物を表層に偏在させることができるため、レジスト上層膜として、化学増幅型レジスト膜を用いる場合、特に、ポジ型の化学増幅型レジスト膜のネガ現像プロセスに好適に用いることができる。
以下、各成分について詳述するが、本発明で用いる成分は下記に限定されるものではない。
【0050】
(A)成分
本発明の(A)成分の原料の一つとして、下記一般式(A−1)で示されるチタン化合物を挙げることができる。
Ti(OR1A (A−1)
(式中、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【0051】
上記一般式(A−1)で示されるチタン化合物は、チタン原子に結合する有機基に0又は1個の水酸基を有していても良く、水酸基を有する有機基としては、特に3級アルコール構造を有するものが好ましい。
【0052】
このようなチタン化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンアミロキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタン2−エチル−1,3−ヘキサンジオレート、チタン2−エチルヘキソキシド、チタンテトラヒドロフルフリルオキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2,4−ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2,4−ペンタンジオネートなどを例示できる。
【0053】
また、(A)成分の別の原料として、下記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールを挙げることができる。
2A(OH) (A−2)
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20の2価の有機基である。)
【0054】
上記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールとしては、以下のものを例示できる。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
【化4】
【0059】
【化5】
【0060】
【化6】
【0061】
このうち、(A−2)で示される2価又は3価のアルコールとしては、上記の例示の中で3級アルコール構造を含むものが好ましい。特に好ましいものとして以下のものを例示できる。
【化7】
【0062】
本発明の(A)成分は、上記一般式(A−1)で示されるチタン化合物、該チタン化合物を加水分解もしくは縮合、又は加水分解縮合して得られるチタン含有化合物から選ばれる1種類以上に、上記一般式(A−2)で示される2価又は3価のアルコールを作用させて得られるチタン含有化合物を含む。
【0063】
上記のようなチタン化合物、及び2価又は3価のアルコールを作用させて得られるチタン含有化合物(以下、まとめてチタンモノマーと呼ぶ)は、無触媒、酸又はアルカリ触媒の存在下、加水分解又は加水分解縮合して、チタン含有化合物を製造することができる。
【0064】
この時、酸触媒としては、無機酸、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、目的物を製造することができる。具体的な酸触媒としては、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、チタンモノマー1モルに対して好ましくは10−6〜10モル、より好ましくは10−5〜5モル、さらに好ましくは10−4〜1モルである。
【0065】
また、アルカリ触媒の存在下、チタンモノマーを加水分解縮合することで製造してもよい。このとき使用されるアルカリ触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、チタンモノマー1モルに対して好ましくは10−6モル〜10モル、より好ましくは10−5モル〜5モル、さらに好ましくは10−4モル〜1モルである。
【0066】
これらのチタンモノマーから加水分解又は加水分解縮合によりチタン含有化合物を得るときの水の量は、チタン含有化合物に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜10モルが好ましく、より好ましくは0.05〜5モル、さらに好ましくは0.1〜3モルを添加することが好ましい。10モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的であり、かつ、チタン含有化合物の安定性を損なうことがないため好ましい。
【0067】
操作方法として、触媒水溶液にチタンモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、チタンモノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は好ましくは0〜200℃、より好ましくは5〜150℃である。チタンモノマーの滴下時に5〜150℃に温度を保ち、その後20〜150℃で熟成させる方法が好ましい。
【0068】
また、別の反応操作としては、チタンモノマー又はチタンモノマーを含む有機溶媒に、水又は含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はチタンモノマー又はチタンモノマーを含む有機溶媒に添加してもよいし、水又は含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は好ましくは0〜200℃、より好ましくは5〜150℃である。チタンモノマーの滴下時に5〜150℃に温度を保ち、その後20〜150℃で熟成させる方法が好ましい。
【0069】
触媒水溶液に加えることのできる、又はチタン含有化合物を希釈することのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等及びこれらの混合物等が好ましい。
【0070】
尚、有機溶媒の使用量は、チタン含有化合物1モルに対して0〜1,000mlが好ましく、特に0〜500mlが好ましい。有機溶媒の使用量が1,000ml以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0071】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸、アルカリの量は、触媒で使用された酸、アルカリに対して0.1〜2当量が好ましく、中性になるものであれば、任意の物質でよい。
【0072】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールなどの種類によるが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは15〜150℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶媒及びアルコールなどの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールなどのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0073】
チタン含有化合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものとして、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジアミルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなどを例示できる。
【0074】
得られるチタン含有化合物の分子量は、チタン含有化合物の選択だけでなく、加水分解縮合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が100,000を超えるものを用いると、ケースによっては異物の発生や塗布斑が生じることがあり、好ましくは100,000以下、より好ましくは200〜50,000、さらには300〜30,000のものを用いることが好ましい。尚、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0075】
このような(A)成分を本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物に用いることで、長期において特性の変化がなく保存安定性に優れ、微細なパターンに対するパターン密着性に優れ、かつ、従来の有機膜やケイ素含有膜とのエッチング選択性に優れたチタン含有レジスト下層膜を形成することができる。また、このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたチタン含有レジスト下層膜は、架橋反応を促進させる場合においても、その際の加熱をより低温域で行うことができる。
【0076】
(B)成分
本発明は、レジスト上層膜パターンとチタン含有レジスト下層膜との間の微細パターンに対するパターン密着性を向上させるため、(B)成分としてケイ素含有化合物を添加してもよい。このケイ素含有化合物の原料の一つとしては、下記一般式(B−1)で示されるシラン化合物を挙げることができる。
1Bb12Bb23Bb3Si(OR0B(4−b1−b2−b3) (B−1)
(式中、R0Bは炭素数1〜6の炭化水素基であり、R1B、R2B、R3Bは水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。また、b1、b2、b3は0又は1であり、1≦b1+b2+b3≦3である。)
【0077】
上記一般式(B−1)示されるシラン化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリプロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリプロポキシシラン、t−ブチルトリイソプロポキシシラン、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピルトリプロポキシシラン、シクロプロピルトリイソプロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチルトリプロポキシシラン、シクロブチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリプロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリイソプロポキシシラン、シクロオクチルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリエトキシシラン、シクロオクチルトリプロポキシシラン、シクロオクチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリメトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリエトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリプロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリイソプロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリメトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリプロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリイソプロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリメトキシシラン、ビシクロヘプチルトリエトキシシラン、ビシクロヘプチルトリプロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリイソプロポキシシラン、アダマンチルトリメトキシシラン、アダマンチルトリエトキシシラン、アダマンチルトリプロポキシシラン、アダマンチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリイソプロポキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、トリルトリプロポキシシラン、トリルトリイソプロポキシシラン、アニシルトリメトキシシラン、アニシルトリエトキシシラン、アニシルトリプロポキシシラン、アニシルトリイソプロポキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェネチルトリプロポキシシラン、フェネチルトリイソプロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルジイソプロポキシシラン、ジsec−ブチルジメトキシシラン、ジsec−ブチルジエトキシシラン、ジsec−ブチルジプロポキシシラン、ジsec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジt−ブチルジメトキシシラン、ジt−ブチルジエトキシシラン、ジt−ブチルジプロポキシシラン、ジt−ブチルジイソプロポキシシラン、ジシクロプロピルジメトキシシラン、ジシクロプロピルジエトキシシラン、ジシクロプロピルジプロポキシシラン、ジシクロプロピルジイソプロポキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロブチルジエトキシシラン、ジシクロブチルジプロポキシシラン、ジシクロブチルジイソプロポキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジプロポキシシラン、ジシクロペンチルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジプロポキシシラン、ジシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルジメトキシシラン、ジシクロヘキセニルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニルジプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジメトキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジイソプロポキシシラン、ジシクロオクチルジメトキシシラン、ジシクロオクチルジエトキシシラン、ジシクロオクチルジプロポキシシラン、ジシクロオクチルジイソプロポキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジエトキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジプロポキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジイソプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジメトキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジエトキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジイソプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジメトキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジエトキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジイソプロポキシシラン、ジアダマンチルジメトキシシラン、ジアダマンチルジエトキシシラン、ジアダマンチルジプロポキシシラン、ジアダマンチルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルベンジルエトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン、ジメチルフェネチルエトキシシラン等を例示できる。
【0078】
また、上記一般式(B−1)で示されるシラン化合物は、ケイ素に結合する有機基のうちの一つ以上が酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有するものであることが好ましく、有機基上に加水分解性基として、下記構造で表された2個又は3個の酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有するものを使用できる。このような加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、シクロペントキシ基、ヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基を含んでいるものを挙げることができ、このような有機基としては以下のものを例示できる。尚、下記式中において、(Si)はSiとの結合箇所を示す。
【0079】
【化8】
【0080】
【化9】
【0081】
【化10】
【化11】
【0082】
また、(B)成分の原料の一つとして、下記一般式(B−2)で示される化合物を挙げることができる。
L(OR4Bb4(OR5Bb5(O)b6 (B−2)
(式中、R4B、R5Bは炭素数1〜30の有機基であり、b4、b5、b6は0以上の整数、b4+b5+2×b6はLの種類により決まる価数であり、Lは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素を除くものである。)
【0083】
このとき、上記一般式(B−2)中のLが、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、タンタル、又はチタンのいずれかの元素であることが好ましい。このような化合物としては、以下のものを例示できる。
【0084】
Lがホウ素の場合、ボロンメトキシド、ボロンエトキシド、ボロンプロポキシド、ボロンブトキシド、ボロンアミロキシド、ボロンヘキシロキシド、ボロンシクロペントキシド、ボロンシクロヘキシロキシド、ボロンアリロキシド、ボロンフェノキシド、ボロンメトキシエトキシド、ホウ酸、酸化ホウ素などを例示できる。
【0085】
Lがケイ素の場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシランなどを例示できる。
【0086】
Lがアルミニウムの場合、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアミロキシド、アルミニウムヘキシロキシド、アルミニウムシクロペントキシド、アルミニウムシクロヘキシロキシド、アルミニウムアリロキシド、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムメトキシエトキシド、アルミニウムエトキシエトキシド、アルミニウムジプロポキシエチルアセトアセテート、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウム2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなどを例示できる。
【0087】
Lがガリウムの場合、ガリウムメトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムプロポキシド、ガリウムブトキシド、ガリウムアミロキシド、ガリウムヘキシロキシド、ガリウムシクロペントキシド、ガリウムシクロヘキシロキシド、ガリウムアリロキシド、ガリウムフェノキシド、ガリウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシエトキシド、ガリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、ガリウムジブトキシエチルアセトアセテート、ガリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、ガリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、ガリウム2,4−ペンタンジオネート、ガリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなどを例示できる。
【0088】
Lがイットリウムの場合、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウムプロポキシド、イットリウムブトキシド、イットリウムアミロキシド、イットリウムヘキシロキシド、イットリウムシクロペントキシド、イットリウムシクロヘキシロキシド、イットリウムアリロキシド、イットリウムフェノキシド、イットリウムメトキシエトキシド、イットリウムエトキシエトキシド、イットリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、イットリウムジブトキシエチルアセトアセテート、イットリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、イットリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、イットリウム2,4−ペンタンジオネート、イットリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなどを例示できる。
【0089】
Lがゲルマニウムの場合、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムプロポキシド、ゲルマニウムブトキシド、ゲルマニウムアミロキシド、ゲルマニウムヘキシロキシド、ゲルマニウムシクロペントキシド、ゲルマニウムシクロヘキシロキシド、ゲルマニウムアリロキシド、ゲルマニウムフェノキシド、ゲルマニウムメトキシエトキシド、ゲルマニウムエトキシエトキシドなどを例示できる。
【0090】
Lがジルコニウムの場合、メトキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、プロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウム、フェノキシジルコニウム、ジルコニウムジブトキシドビス(2、4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)などを例示できる。
【0091】
Lがハフニウムの場合、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムブトキシド、ハフニウムアミロキシド、ハフニウムヘキシロキシド、ハフニウムシクロペントキシド、ハフニウムシクロヘキシロキシド、ハフニウムアリロキシド、ハフニウムフェノキシド、ハフニウムメトキシエトキシド、ハフニウムエトキシエトキシド、ハフニウムジプロポキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジプロポキシビス2,4−ペンタンジオネート、ハフニウムジブトキシビス2,4−ペンタンジオネートなどを例示できる。
【0092】
Lがビスマスの場合、メトキシビスマス、エトキシビスマス、プロポキシビスマス、ブトキシビスマス、フェノキシビスマスなどを例示できる。
【0093】
Lがスズの場合、メトキシスズ、エトキシスズ、プロポキシスズ、ブトキシスズ、フェノキシスズ、メトキシエトキシスズ、エトキシエトキシスズ、スズ2,4−ペンタンジオネート、スズ2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなどを例示できる。
【0094】
Lがリンの場合、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、トリメチルフォスフェイト、トリエチルフォスフェイト、トリプロピルフォスフェイト、五酸化ニリンなどを例示できる。
【0095】
Lがバナジウムの場合、バナジウムオキシドビス(2、4−ペンタンジオネート)、バナジウム2、4−ペンタンジオネート、バナジウムトリブトキシドオキシド、バナジウムトリプロポキシドオキシドなどを例示できる。
【0096】
Lがヒ素の場合、メトキシヒ素、エトキシヒ素、プロポキシヒ素、ブトキシヒ素、フェノキシヒ素などを例示できる。
【0097】
Lがアンチモンの場合、メトキシアンチモン、エトキシアンチモン、プロポキシアンチモン、ブトキシアンチモン、フェノキシアンチモン、酢酸アンチモン、プロピオン酸アンチモンなどを例示できる。
【0098】
Lがニオブの場合、メトキシニオブ、エトキシニオブ、プロポキシニオブ、ブトキシニオブ、フェノキシニオブなどを例示できる。
【0099】
Lがタンタルの場合、メトキシタンタル、エトキシタンタル、プロポキシタンタル、ブトキシタンタル、フェノキシタンタルなどを例示できる。
【0100】
Lがチタンの場合、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、チタンアミロキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2,4−ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2,4−ペンタンジオネートなどを例示できる。
【0101】
このように示されるモノマーを1種以上選択して、反応前又は反応中に混合して(B)成分を形成する反応原料とすることができる。
【0102】
(B)成分であるケイ素含有化合物は、例えば、モノマーを無機酸、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、加水分解縮合を行うことで製造することができる。
具体的に使用される酸触媒としては、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー1モルに対して好ましくは10−6〜10モル、より好ましくは10−5〜5モル、さらに好ましくは10−4〜1モルである。
【0103】
これらのモノマーから加水分解縮合によりケイ素含有化合物を得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜100モルが好ましく、より好ましくは0.05〜50モル、さらに好ましくは0.1〜30モルを添加することが好ましい。100モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的である。
【0104】
操作方法として、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜80℃である。モノマーの滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0105】
触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0106】
これらの溶媒の中で好ましいものは水溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0107】
尚、有機溶媒の使用量は、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましく、特に0〜500mlが好ましい。有機溶媒の使用量が1,000ml以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0108】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0109】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールなどの種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶媒及びアルコールなどの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールなどのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0110】
次に、反応混合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水とケイ素含有化合物を混合し、ケイ素含有化合物を有機溶媒で抽出する。このとき使用する有機溶媒としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0111】
さらに、水溶性有機溶媒と水難溶性有機溶媒の混合物を使用することも可能である。例えばメタノール+酢酸エチル、エタノール+酢酸エチル、1−プロパノール+酢酸エチル、2−プロパノール+酢酸エチル、ブタンジオールモノメチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、ブタンジオールモノエチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、ブタンジオールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、メタノール+メチルイソブチルケトン、エタノール+メチルイソブチルケトン、1−プロパノール+メチルイソブチルケトン、2−プロパノール+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、メタノール+シクロペンチルメチルエーテル、エタノール+シクロペンチルメチルエーテル、1−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、2−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、メタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等組み合わせが好ましいが、組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0112】
尚、水溶性有機溶媒と水難溶性有機溶媒との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶媒100質量部に対して、水溶性有機溶媒0.1〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部、さらに好ましくは2〜100質量部である。
【0113】
続いて、中性水で洗浄してもよい。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、ケイ素含有化合物溶液1Lに対して、0.01〜100Lが好ましく、より好ましくは0.05〜50L、さらに好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
その他に酸触媒を除去する方法として、イオン交換樹脂による方法や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物で中和したのち除去する方法を挙げることができる。これらの方法は、反応に使用された酸触媒に合わせて適宜選択することができる。
【0114】
このときの水洗操作により、ケイ素含有化合物の一部が水層に逃げ、実質的に分画操作と同等の効果が得られている場合があるため、水洗回数や洗浄水の量は触媒除去効果と分画効果を鑑みて適宜選択すればよい。
【0115】
酸触媒が残留しているケイ素含有化合物及び酸触媒が除去されたケイ素含有化合物溶液、いずれの場合においても、最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することでケイ素含有化合物溶液を得る。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき反応溶媒や抽出溶媒の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶媒の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0116】
このとき、溶媒が変わることによりケイ素含有化合物が不安定になる場合がある。これは最終的な溶媒とケイ素含有化合物との相性により発生するが、これを防止するため、安定剤として特開2009−126940号公報[0181]〜[0182]段落に記載されている環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを加えてもよい。加える量としては溶媒交換前の溶液中のケイ素含有化合物100質量部に対して0〜25質量部が好ましく、より好ましくは0〜15質量部、さらに好ましくは0〜5質量部であるが、添加する場合は0.5質量部以上が好ましい。溶媒交換前の溶液に必要であれば、環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加して溶媒交換操作を行えばよい。
【0117】
ケイ素含有化合物は、ある濃度以上に濃縮すると縮合反応が進行し、有機溶媒に対して再溶解不可能な状態に変化してしまう可能性がある。そのため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが好ましい。また、あまり薄くしなければ、溶媒の量が過大となることがないため経済的である。このときの濃度としては、0.1〜20質量%が好ましい。
【0118】
ケイ素含有化合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオールなどのモノアルキルエーテル誘導体である。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0119】
これらの溶媒が主成分であれば、補助溶媒として、非アルコール系溶媒を添加する事も可能である。この補助溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなどを例示できる。
【0120】
また、別の反応操作としては、モノマー又はモノマーを含む有機溶媒に、水又は含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー又はモノマーを含む有機溶媒に添加してもよいし、水又は含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0121】
有機溶媒を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0122】
有機溶媒の使用量は、前記の量と同様でよい。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、ケイ素含有化合物を得る。
【0123】
ケイ素含有化合物は、モノマーを塩基性触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造することができる。このとき使用される塩基触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して好ましくは10−6モル〜10モル、より好ましくは10−5モル〜5モル、さらに好ましくは10−4モル〜1モルである。
【0124】
これらのモノマーから加水分解縮合によりケイ素含有化合物を得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.1〜50モルを添加することが好ましい。50モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的である。
【0125】
操作方法として、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行っても良い。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは5〜80℃である。モノマーの滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0126】
塩基触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶媒としては、酸触媒水溶液に加えることのできるものとして例示した有機溶媒と同様のものが好ましく用いられる。尚、有機溶媒の使用量は、経済的に反応を行えるため、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。
【0127】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒で使用された塩基性物質に対して0.1〜2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0128】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶媒及びアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0129】
次に加水分解縮合に使用した触媒を除去するため、ケイ素含有化合物を有機溶媒で抽出する。このとき使用する有機溶媒としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルな及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0130】
次に加水分解縮合に使用した塩基触媒を除去するため、ケイ素含有化合物を有機溶媒で抽出する。このとき使用する有機溶媒としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。
さらに、水溶性有機溶媒と水難溶性有機溶媒の混合物を使用することも可能である。
【0131】
塩基触媒を除去する際に用いられる有機溶媒の具体例は、酸触媒を除去する際に用いられるものとして具体的に例示した上述の有機溶媒や、水溶性有機溶媒と水難性有機溶媒の混合物と同様のものを用いることができる。
【0132】
尚、水溶性有機溶媒と水難溶性有機溶媒との混合割合は、適宜選定されるが、難溶性有機溶媒100質量部に対して、水溶性有機溶媒0.1〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部、さらに好ましくは2〜100質量部である。
【0133】
続いて、中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、ケイ素含有化合物溶液1Lに対して、0.01〜100Lが好ましく、より好ましくは0.05〜50L、さらに好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0134】
洗浄済みのケイ素含有化合物溶液に最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することでケイ素含有化合物溶液を得る。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶媒の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶媒の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0135】
ケイ素含有化合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのモノアルキルエーテルである。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどが好ましい。
【0136】
また、別の反応操作としては、モノマー又はモノマーを含む有機溶媒に、水又は含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー又はモノマーを含む有機溶媒に添加しても良いし、水又は含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0137】
有機溶媒を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0138】
得られるケイ素含有化合物の分子量は、モノマーの選択だけでなく、重合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が100,000以下のものを用いれば、異物の発生や塗布斑が生じることがなく、好ましくは100,000以下、より好ましくは200〜50,000、さらには300〜30,000のものを用いることが好ましい。尚、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0139】
このような(B)成分を、本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物にさらに加えることで、前述の(A)成分と(B)成分とが分離して2層構造となり、即ち、レジスト下層膜の表層に(B)成分が偏在することになり、結果として、形成されるチタン含有レジスト下層膜の微細パターンに対するパターン密着性をより向上させることができる。
【0140】
(C)成分
本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物に含まれる(C)成分の溶媒としては、上記(A)、(B)成分を溶解できるものであれば特に限定されないが、上記(A)、(B)成分を作製する際に最終的に加える溶媒と同一のものであることが好ましい。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジアミルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなどを例示できる。
【0141】
その他の成分
本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物は、さらに光酸発生剤を添加してもよい。本発明で使用される光酸発生剤として、具体的には、特開2009−126940号公報の[0160]から[0179]段落に記載されている材料を添加することができる。
【0142】
本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物は、さらに熱酸発生剤を添加してもよい。本発明で使用される熱酸発生剤として、具体的には、特開2007−199653号公報の[0061]から[0085]段落に記載されている材料を添加することができる。
【0143】
さらに、本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物は、必要に応じて界面活性剤を添加することが可能である。このようなものとして、具体的には、特開2009−126940号公報の[0129]段落に記載されている材料を添加することができる。
【0144】
このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、チタン含有化合物を使用していながらも、長期において特性の変化がなく保存安定性に優れ、従来の有機膜やケイ素含有膜とのエッチング選択性に優れた(A)成分の編在する下層と、微細なパターンに対するパターン密着性に優れた(B)成分の編在する表層とを有するチタン含有レジスト下層膜を形成することができる。また、このようなチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたチタン含有レジスト下層膜は、架橋反応を促進させる場合においても、その際の加熱をより低温域で行うことができる。
【0145】
パターン形成方法
上記のようにして作製したチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いた本発明のパターン形成方法の一態様として、
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜にパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0146】
また、本発明のパターン形成方法の別の態様として、
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記チタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてチタン含有レジスト下層膜を形成し、該チタン含有レジスト下層膜上にレジスト上層膜形成用組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記チタン含有レジスト下層膜にパターンを転写し、該パターンが転写されたチタン含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクにパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0147】
本発明のパターン形成方法に用いる被加工体としては、半導体回路の一部又は全部が形成されている半導体装置基板、又は、半導体基板に被加工層(被加工部分)として、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの等を用いることができる。
【0148】
半導体基板としては、シリコン基板が一般的に用いられるが、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α−Si)、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられてもよい。
【0149】
被加工体を構成する金属としては、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、及びモリブデンのいずれか、あるいはこれらの合金を用いることができ、このような金属を含む被加工層としては、例えば、Si、SiO、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成することができる。
【0150】
本発明のパターン形成方法では、被加工体上に、有機下層膜、又は有機ハードマスクを形成することができる。このうち、有機下層膜は塗布型有機下層膜材料から回転塗布法等を用いて形成することができ、有機ハードマスクは炭素を主成分とする有機ハードマスクの材料からCVD法を用いて形成することができる。このような有機下層膜及び有機ハードマスクとしては、特に限定されないが、レジスト上層膜が露光によりパターン形成を行う場合は、十分な反射防止膜機能を発現するものが好ましい。このような有機下層膜又は有機ハードマスクを形成することで、サイズ変換差を生じさせることなくレジスト上層膜で形成されたパターンを被加工体上に転写することができる。
【0151】
本発明のパターンの形成方法に使用されるチタン含有レジスト下層膜は、前述のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物からスピンコート法等で被加工体上に作製することが可能である。スピンコート法の場合、スピンコート後、溶媒を蒸発させ、後述のレジスト上層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は100〜350℃の範囲内に設定することができ、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。このように、本発明では、架橋反応を促進させるためのベークを350℃以下で行うことができるため、デバイスへの熱ダメージを少なくすることができ、デバイスに用いる材質及び構造の選択の幅をより広くすることができる。
【0152】
また、本発明のパターン形成方法では、レジスト上層膜にパターンを形成する方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を好適に用いることができる。このような方法を用いることで、レジスト上層膜上に微細なパターンを形成することができる。
【0153】
レジスト上層膜形成用組成物としては、上記のレジスト上層膜にパターンを形成する方法に応じて適宜選択することができる。例えば、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィーを行う場合、レジスト上層膜形成用組成物としては、化学増幅型のフォトレジスト膜材料を用いることができる。このようなフォトレジスト膜材料としては、フォトレジスト膜を形成して露光を行った後に、アルカリ現像液を用いて露光部を溶解することによりポジ型パターンを形成するものや、有機溶媒からなる現像液を用いて未露光部を溶解することによりネガ型パターンを形成するものを例示できる。
【0154】
また、波長が300nm以下の光として、ArFエキシマレーザー光を用いてリソグラフィーを行う場合、レジスト上層膜形成用組成物としては、通常のArFエキシマレーザー光用レジスト組成物であればいずれも使用可能である。このようなArFエキシマレーザー光用レジスト組成物は多数の候補がすでに公知であり、公知の樹脂を大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA(CycloOlefinMaleicAnhydride)系、COMA−(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP(RingOpeningMethathesisPolymerization)系、ポリノルボルネン系等があるが、このうち、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は、側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能が他の樹脂系と比較して優れており、好ましく用いることができる。
【0155】
本発明のパターン形成方法は、レジスト下層膜のパターン密着性が優れているため、レジスト上層膜において微細なパターンを形成してもパターン倒れ等を起こすことがなく、また、有機膜やケイ素含有膜に対するエッチング選択性が優れているため、有機下層膜や有機ハードマスクの組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなくパターン転写することができる。
【0156】
また、本発明では、上記で例示されたパターン形成方法に限定されることはなく、より微細なパターンを形成するため、ダブルパターニングのような複数回のパターニング工程を含む方法を用いることができる。例えば、ダブルパターニングを行う場合は、有機下層膜又は有機ハードマスクに形成されたパターン上にあるチタン含有レジスト下層膜の残渣を剥離する工程を行うことが好ましい。
【0157】
本発明のチタン含有レジスト下層膜を剥離する方法としては、湿式剥離を例示できる。このような湿式剥離には、過酸化水素を含有した剥離液が好ましい。この時、剥離を促進するため、酸又はアルカリを加えてpH調整するとさらに好ましい。このpH調整剤としては、塩酸や硫酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸などの有機酸、アンモニア、エタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの窒素を含むアルカリ、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)などの窒素を含む有機酸化合物などを例示できる。
【0158】
湿式剥離は、好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは5℃〜60℃の剥離液を用意し、これに処理したい被加工基板が形成されているシリコンウエハーを浸漬するだけでよい。さらに必要であれば、表面に剥離液をスプレーしたり、ウエハーを回転させながら剥離液を塗布するなど、定法の手順により容易にチタン含有レジスト下層膜を除去することが可能である。
【0159】
このように、有機下層膜又は有機ハードマスクに形成されたパターンの上に残っているチタン含有レジスト下層膜の残渣を湿式剥離することで、ダメージなく被加工体、例えば、被加工層として形成された金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、及び金属酸化窒化膜等を露出させることが可能である。このように露出された膜の上であれば、次の加工プロセスを容易に施すことが可能である。
【0160】
このように、本発明は、ダブルパターニング等の微細なパターンを形成するための方法において、合理的なプロセスを提供することができる。
【実施例】
【0161】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。尚、下記例で%は質量%を示し、分子量測定はGPCによった。
【0162】
(A)成分の合成
[合成例A−I]
チタンテトライソプロポキシド284gの2−プロパノール(IPA)500g溶液に撹拌しながら、脱イオン水27gのIPA500g溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2,4−ジメチル−2,4−オクタンジオール180gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、さらに60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)を1200g加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−I]のMIBC溶液1000g(化合物濃度25%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,200であった。
続いて、[A−I]の熱質量減少を測定したところ、図1に示すように、常温における質量が100%であったところから、加熱により250℃になったところでは55%(質量減少−45%)、800℃となったところでは41%(質量減少−59%)となった。このうち、800℃における組成はTiOが100%であり、このことから、250℃におけるTi含有率を計算すると、
41%/55%×47.87/(47.87+16.00×2)=45%
となった。
従って、250℃で熱分解することで、Ti含有率が45%のチタン含有膜が得られることが明らかになった。
【0163】
[合成例A−II]
チタンテトライソプロポキシド284gのIPA500g溶液に撹拌しながら、脱イオン水27gのIPA500g溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2−メチル−2,4−ペンタンジオール120gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、さらに60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、MIBCを1200g加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−II]のMIBC溶液1000g(化合物濃度20%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0164】
[合成例A−III]
チタンテトラブトキシド340gの1−ブタノール(BOH)500g溶液に撹拌しながら、脱イオン水27gのBOH500g溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に3−メチル−1,3−ヘキサンジオール132gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、40℃で濃縮した後、さらに60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下PGMEA)を1200g加え、50℃、減圧下でBOHが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−III]のPGMEA溶液1000g(化合物濃度22%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,250であった。
【0165】
[合成例A−IV]
市販のチタンテトラブトキシドテトラマー243gのBOH500g溶液にピナコール130gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、40℃で濃縮した後、さらに60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、PGMEAを1200g加え、50℃、減圧下でBOHが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−IV]のPGMEA溶液1000g(化合物濃度22%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,150であった。
【0166】
[合成例A−V]
市販のチタンテトラブトキシドテトラマー243gのBOH500g溶液に2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール150gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、50℃で濃縮した後、さらに60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、PGMEAを1200g加え、50℃、減圧下でBOHが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−V]のPGMEA溶液1000g(化合物濃度24%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0167】
[合成例A−VI]
市販のチタンテトラブトキシドテトラマー243gとPGMEA757gを混合して、チタン含有化合物[A−VI]のPGMEA溶液1000gを得た。
続いて、[A−VI]の熱質量減少を測定したところ、図2に示すように、常温における質量が100%であったところから、加熱により250℃になったところでは62%(質量減少−38%)、800℃となったところでは33%(質量減少−67%)となった。このうち、800℃における組成はTiOが100%であり、このことから、250℃におけるTi含有率を計算すると、
33%/62%×47.87/(47.87+16.00×2)=32%
となった。
従って、250℃で熱分解することで、Ti含有率が32%のチタン含有膜が得られることが明らかになった。尚、図2に示すように、250℃付近での加熱における[A−VI]の熱質量減少は、図1で示した[A−I]の熱質量減少と比べて安定していなかった。
【0168】
(B)成分の合成
[合成例B−I]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物にメチルトリメトキシシラン68.1gを添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、PGMEA200gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及びPGMEA300gを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層を減圧で濃縮してケイ素含有化合物[B−I]のPGMEA溶液170g(化合物濃度20%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,500であった。
【0169】
[合成例B−II]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物にメチルトリメトキシシラン27.2g、テトラメトキシシラン22.8g及び2−(4−tertブトキシフェニル)エチルトリメトキシシラン44.8gの混合物を添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、PGMEA200gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及びPGMEA300gを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層を減圧で濃縮してケイ素含有化合物[B−II]のPGMEA溶液280g(化合物濃度20%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,400であった。
【0170】
[実施例、比較例]
上記合成例で得られた(A)成分としてのチタン含有化合物[A−I]〜[A−VI]、(B)成分としてのケイ素含有化合物[B−I]、[B−II]、溶媒を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、チタン含有レジスト下層膜形成用組成物をそれぞれ調製し、それぞれSol.1〜12とした。
【0171】
【表1】
【0172】
塗布膜エッチング試験
シリコンウエハー上に、チタン含有レジスト下層膜形成用組成物Sol.1〜12を回転塗布し、250℃で1分間加熱成膜して、膜厚35nmのチタン含有レジスト下層膜Film1〜12を作製した。さらに、比較例として、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)を塗布して300℃で60秒間加熱して膜厚200nm及びスピンオンハードマスクSHB−A940(ケイ素含有量43質量%)を塗布して250℃で60秒間加熱して膜厚40nmで形成した。
これらの膜を下記のエッチング条件(1)及び(2)でエッチング試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0173】
(1)CHF/CF系ガスでのエッチング試験
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(1):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 10sec
【0174】
(2)CO/N系ガスでのエッチング試験
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(2):
チャンバー圧力 2Pa
Upper/Lower RFパワー 1000W/300W
COガス流量 300ml/min
ガス流量 100ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 15sec
【0175】
【表2】
【0176】
チタン含有レジスト下層膜では、いずれの組成においてもCHF/CF系ガスを使用したドライエッチングにおいて、ケイ素含有ハードマスク材料であるSHB−A940対するエッチング選択性を有することがわかった。一方、CO/N系ガスを使用したドライエッチングにおいて、2価又は3価のアルコールを作用させていないFilm12はエッチング速度が速いことがわかった。CO/N系ガスを使用したドライエッチングにおいて、Film12のエッチング速度が速くなった理由としては、図2に示してある通り、下層膜の加熱形成時の分解が完全ではなく、その他のFilmに比べて膜内に炭素分が残留したことによるものと考えられる。
【0177】
ポジ型現像パターニング試験
シリコンウエハー上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)を塗布して300℃で60秒間加熱して、膜厚800nmで形成した。その上にチタン含有レジスト下層膜形成用組成物Sol.1〜12を塗布して250℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのチタン含有レジスト下層膜Film1〜12を作製した。続いて、当該チタン含有レジスト下層膜上に表3記載のポジ現像用ArFレジスト溶液(PR−1)を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト層を形成した。さらにフォトレジスト膜上に表4記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。次いで、これらをArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、50nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。続いて、(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でパターン倒れを、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−9380)で断面形状を測定した。その結果を表5に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
ArFレジストポリマー:P1
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化12】
酸発生剤:PAG1
【化13】
塩基:Q1
【化14】
【0180】
【表4】
【0181】
保護膜ポリマー:P2
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化15】
【0182】
【表5】
【0183】
表5に示されているように、いずれのチタン含有レジスト下層膜においても、ポジ現像では垂直形状な断面形状でライン幅が50nmまで倒れのないパターンを得ることができた。
【0184】
パターンエッチング試験
上記パターニング試験で作製したレジストパターンをマスクにしてチタン含有レジスト下層膜の加工を条件(3)でドライエッチングし、次いで条件(4)でドライエッチングしスピンオンカーボン膜にパターンを転写した。得られたスピンオンカーボンパターンの断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−9380)で確認した。その結果を表6に示す。
【0185】
(3)CHF/CF系ガスでのエッチング試験
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(3):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 30sec
【0186】
(4)CO/N系ガスでのエッチング試験
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(4):
チャンバー圧力 2Pa
Upper/Lower RFパワー 1000W/300W
COガス流量 300ml/min
ガス流量 100ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 200sec
【0187】
【表6】
【0188】
本発明のチタン含有レジスト下層膜はポジ現像を用いるパターン形成方法において、ハードマスクとして機能し、スピンオンカーボン膜にパターンを転写できることが判明した。一方、比較例1−1では、スピンオンカーボン膜にパターンを転写した際にテーパー形状が見られた。これは、比較例1−1のレジスト下層膜内の炭素分が他の下層膜に比べて多く残留しており、カーボン膜に対するエッチング選択性が低下したこと原因と考えられる。
【0189】
上記のことから、本発明のチタン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたチタン含有レジスト下層膜は、微細なパターンに対するパターン密着性と炭素含有ハードマスク及びケイ素含有ハードマスクの両方に対するエッチング選択性を示すことが明らかになった。また、このようなチタン含有レジスト下層膜を用いたパターン形成方法であれば、レジスト上層膜に形成された微細なパターンを、チタン含有レジスト下層膜、スピンオンカーボン膜の順に転写できることも明らかになった。
【0190】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2