【文献】
Emily E. Gallagher, et al.,"Properties and performance of EUVL pellicle membranes",Proceedings of SPIE,2015年,vol.9635,96350X-1〜96350X-8
【文献】
S. Y. Zhou, et al.,"Instability of two-dimensional graphene: Breaking sp2 bonds with soft x rays",PHYSICAL REVIEW B,2009年,vol.80,121409-1〜121409-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
[00037]
図1は、本発明の一実施形態に係るソースコレクタモジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)MAを支持するように構成され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、反射投影システム)PSと、を備える。
【0024】
[00038] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0025】
[00039] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0026】
[00040] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定機能層に対応する場合がある。
【0027】
[00041] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0028】
[00042] 照明システムなどの投影システムは、使われている露光放射にとって、あるいは真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含むことができる。EUV放射に対して真空を用いることが望ましいことがある。というのは、ガスは放射を吸収し過ぎる場合があるからである。従って、真空壁および真空ポンプを用いて、真空環境をビーム経路全体に提供することができる。
【0029】
[00043] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)である。
【0030】
[00044] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0031】
[00045]
図1を参照すると、イルミネータILは、ソースコレクタモジュールSOから極端紫外線(EUV)放射ビームを受ける。EUV放射を生成する方法としては、材料を、EUV範囲(EUV範囲は、およそ13nmおよびおよそ6〜7nmの波長を含むとみなされる)の1つ以上の発光線と結合された少なくとも1つの元素、例えば、キセノン(Xe)、リチウム(Li)、スズ(Sn)、ガドリニウム(Gd)、またはテルビウム(Tb)を有するプラズマ状態に変換することが含まれるが、必ずしもこれに限定されない。レーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれることが多いそのような方法において、燃料をレーザビームで照射することによって、必要なプラズマを生成することができる。燃料は、例えば、必要な線発光素子を有する材料の小滴、流れ、またはクラスタとすることができる。ソースコレクタモジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを供給するための
図1に示されないレーザを含むEUV放射システムの一部であってよい。結果として得られるプラズマは、出力放射、例えばEUV放射を放出し、この出力放射は、ソースコレクタモジュール内に配置される放射コレクタを使用して集光される。例えば、CO
2レーザを使用して燃料励起のためのレーザビームを供給する場合、レーザおよびソースコレクタモジュールは、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、放射ビームは、レーザからソースコレクタモジュールへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が、DPP源と呼ばれることが多い放電生成プラズマEUVジェネレータである場合、放射源は、ソースコレクタモジュールの一体部分とすることもできる。
【0032】
[00046] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセット視野ミラーデバイスおよびファセット瞳ミラーデバイスといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0033】
[00047] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。
【0034】
[00048] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
1.ステップモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
2.スキャンモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0035】
[00049] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0036】
[00050]
図2は、ソースコレクタモジュールSOと、照明システムILと、投影システムPSとを備えるリソグラフィ装置100をより詳細に示している。ソースコレクタモジュールSOは、真空環境をソースコレクタモジュールSOの囲い構造220内に維持することができるように構築および配置される。
【0037】
[00051] レーザLAは、燃料供給源200から供給される、キセノン(Xe)、スズ(Sn)、またはリチウム(Ln)などの燃料内にレーザビーム205を介してレーザエネルギーを堆積させるように配置され、それによって電子温度が数10eVの高電離プラズマ210が生成される。イオンの脱励起および再結合中に生成されたエネルギー放射は、プラズマから放出され、近法線入射コレクタ光学系COによって集光され、集束される。
【0038】
[00052] コレクタ光学系COによって反射された放射は、仮想放射源点IFに集束される。仮想放射源点IFは、一般に中間焦点と呼ばれ、ソースコレクタモジュールSOは、中間焦点IFが囲い構造220の開口221に、または開口221の付近に位置するように配置される。仮想放射源点IFは放射放出プラズマ210の像である。
【0039】
[00053]
図2に示すソースコレクタモジュールSOはLPP放射源を備えるが、ソースコレクタモジュールは、あらゆる適切な放射源を備えてよく、例えば、DPP放射源を備えてよい。DPP放射源は、放電を、ガスまたは蒸気、例えば、Xeガス、Li蒸気またはSn蒸気内に送るように構成され、それによってEUV放射を放出する非常に高温のプラズマを生成する。かすめ入射コレクタなどのコレクタ光学系が、EUV放射を集光し、そのEUV放射を中間焦点に集束させるように構成され得る。中間焦点は、ソースコレクタモジュールの囲い構造の開口に、または開口の付近に位置し得る。
【0040】
[00054] 中間焦点IFを通過した後、放射は照明システムILを横切る。照明システムILは、パターニングデバイスMAにおける放射ビーム21の所望の角度分布およびパターニングデバイスMAにおける放射強度の所望の均一性を与えるように配置されたファセット視野ミラーデバイス22およびファセット瞳ミラーデバイス24を含み得る。パターニングデバイスMAで放射ビーム21が反射されると、パターン付きビーム26が形成され、パターン付きビーム26は、投影システムPSによって、反射エレメント28および30を介して、基板テーブルWTによって保持された基板W上に結像される。
【0041】
[00055] 一般に、図示されたエレメントより数の多いエレメントが照明システムILおよび投影システムPSに存在してよい。さらに、図示されたミラーより数の多いミラーが存在してよい。例えば、
図2に示すものと比較して、投影システムPS内に追加の1つ〜6つの反射エレメントが存在してよい。
【0042】
[00056] 燃料からイオン化されたプラズマが生じることで、放射が生成されるだけでなく、望ましくない汚染粒子も生成される。スズ(Sn)が燃料として使用される場合、この汚染粒子は、毎秒約1000の割合で生成され得る。汚染粒子は、最大約150ナノメートルのサイズを有することがあり、また、最大約500ナノメートルのサイズを有することがある。汚染粒子は、毎秒、最高約100メートルの速度を有することがあり、毎秒、最高約1000メートルの速度を有することがある。
【0043】
[00057] 異なる速度で生成された汚染粒子は、プラズマ210からの異なる経路をとり得る。例えば、比較的高速の汚染粒子は、ソースコレクタモジュールSOによって生成された放射ビームと同一方向に進む場合がある。さらに、一部の比較的高速の汚染粒子は、この粒子も放射ビームの経路をたどるように、コレクタ光学系COに当たって跳ね返り得る。比較的高速で移動する汚染粒子が放射ビームの経路をたどる場合、汚染粒子は、照明システムIL内のミラーデバイス22、24から跳ね返ってパターニングデバイスMAに到達し得る。
【0044】
[00058] 比較的低速で移動する汚染粒子は、ブラウン運動を経て、従ってソースコレクタモジュールSOおよびイルミネータモジュールILの低圧環境を介して、パターニングデバイスMAに向かって、ドリフトすることがある。さらに、
図2に示すような一部のリソグラフィ装置において、イルミネータモジュールILおよび/またはソースコレクタモジュールSOは、ガス流導管32を備え得る。ガス流導管32は、照明モジュールIL内の分子汚染を低減させるようにガスを排出させ得る。分子汚染は、リソグラフィ装置内のリフレクタ(または他の光コンポーネント)の表面上の分子の堆積(放射ビームによって引き起こされた分子の解離生成物)であり得る。分子は、リソグラフィ装置自体の内側から生じ得る。例えば、分子は、リソグラフィ装置のコンポーネントから、リソグラフィ装置内で使用された潤滑剤から、またはリソグラフィ装置内の電子システムから生じ得る。ガス流導管32を介して排出されたガスは、原子水素であり得る。いくつかの実施形態において、ガスはガス導管32内に排出されてパターニングデバイスMAに向かう方向に進み得る。この場合、ガス導管32を通るガスの移動によって、パターニングデバイスMAに向けて比較的低速の汚染粒子が運ばれ得る。
【0045】
[00059] 一部のリソグラフィ装置において、(毎時間1粒子未満の小さい数であっても)汚染粒子がパターニングデバイスMAに到達すると、これはリソグラフィ装置の結像性能に悪影響を及ぼすおそれがある。パターニングデバイスMAが汚染粒子で汚染されると、パターニングデバイスMAを交換または洗浄する必要があり得る。パターニングデバイスMAを交換または洗浄するために、リソグラフィ装置の動作を停止する必要があり得る。リソグラフィ装置のいかなる休止時間もリソグラフィ装置の出力の低下を招き、従ってリソグラフィ装置の収益性を低下させるであろう。リソグラフィ装置の収益性のいかなる低下も望ましくないことが理解されよう。
【0046】
[00060]
図3は、
図2の34が示す、リソグラフィ装置の一部の概略断面を示している。
図3に示すリソグラフィ装置の一部は、高速移動汚染粒子および低速移動汚染粒子がともにパターニングデバイスMAに到達するのを防ぐことができる。
図3に示すリソグラフィ装置の一部は、ガス導管32の一部を画定する第1壁部材36および第2壁部材38を備える。第1壁部材36および第2壁部材38は、それぞれ、開口40、42を備える。開口40、42は、リソグラフィ装置の放射ビーム21の光軸OAである共通軸を共有する。第1壁部材36の開口40は、開口40にわたって固定される気密膜44を備えて、第1壁部材36の一方側から他方側へガスが開口40を通過することを防止する。
【0047】
[00061] 第1壁部材36および第2壁部材38は、それらの間に少なくとも1つのガス流路が存在するように互いに離されている。
図3に示す実施形態において、光軸OAの両側に2つのガス流路46が存在する。ガス流路46によって、ガス導管32の内側からガス導管32の外側(ガス導管32の外側は48によっておおむね示されている)にガスが流れることが可能になる。ガス導管32の内側からガス導管の外側48へのガスの経路は、矢印50によっておおむね示されている。ガス流路46は、粒子トラップ構造52によって画定される。粒子トラップ構造52は、複数のプレート52aを備える。プレート52aは、光軸OAに平行な方向に延在し、第1壁部材36と第2壁部材38とから交互に延在する。プレート52aは互いに離され、かつ光軸OAに垂直な方向に重なるように互いにかみ合って延在する。従って、粒子トラップ構造52のプレート52aによって、ガス導管32の内側からガス導管32の外側48にガスが流れる通視線経路が存在しないことが確実となる。プレート52aは、ガスが間接的な経路をたどるように粒子トラップ構造52を通してガス流を閉じ込める。この場合、間接的な経路は蛇行経路、すなわち、ガス導管32の外側48に向かって進みながら何度も方向を変える経路である。例えば、この経路は、ガス導管32の外側48に向かって進みながら少なくとも4回方向を変え得る。経路の方向転換は急なものであり得る。本実施形態において、蛇行経路は犂耕体的 (boustrophedonic)であり、これは、ガス導管32の外側48に向かって進みながらガスが1方向に流れ、次に反対方向に曲がって進むことを意味する。(使用中、光軸OAに平行な)各プレート52aの長さが隣接するプレート52aとプレート52aとの間の間隔の約10倍である実施形態においては、そのような隣接するプレート対は、汚染粒子の約90%がその隣接するプレート対の間を通過することを防ぎ得る。いくつかの実施形態において、粒子トラップ構造が汚染粒子のレベルを6桁または7桁低減させることは有利であり得る。これらの実施形態において、少なくとも5つの隣接プレート対(すなわち、10のプレート)を用いることが望ましい場合がある。あらゆる適切な数のプレートを用いてよいことが理解されよう。例えば、2〜100のプレートであってよい。いくつかの実施形態において、曲面プレート(すなわち、隣接プレート対の間のギャップを通る通視線が存在しないプレート)の使用は、平面プレートと比較して、隣接プレート対の間を通過することが防がれる汚染粒子の割合を増加させ得る。当然ながら、所与の割合の汚染粒子が汚染トラップ構造を通過するのを防ぐために(平面プレートと比較して)少ない曲面プレートの対が必要となり得ることになる。
【0048】
[00062] 使用中、開口40、42は、放射ビームが開口40、42を通過する(膜44の通過を含む)ようにリソグラフィ装置内に配置される。膜44の材料および厚さは、放射ビーム21が膜44を通過することが可能であるように選択される。本発明のいくつかの実施形態においては、膜44は、100%の入射放射が膜44を通過することを可能にしないことが理解されよう。また、膜44の材料および厚さは、膜44がもはや気密でない程度までの膜44の劣化を引き起こさずに、放射ビーム21の方向に高速で進む汚染粒子が膜44に当たることができるように選択される。
【0049】
[00063] また、膜44は、膜44がもはや気密でない程度に劣化せずに、多数の高速移動汚染粒子の膜44に対する衝突によって引き起こされた圧力に耐えることができる。例えば、膜は、Sn粒子によって生成された約1GPa〜10GPaの圧力に耐える必要があり得る。衝突頻度は、毎秒およそ1000回の衝突であり得ると考えられる。高速移動汚染粒子のサイズは、約150ナノメートル〜約1μmの範囲内であり得る。粒子は、毎秒約100メートル〜毎秒約1000メートルの速度で進み得る。さまざまな速度で膜44に衝突するさまざまな異なるサイズの粒子が存在し得ることが理解されよう。さらに、膜44への高速移動汚染粒子の衝突頻度は、時間とともに一定でない場合がある。
【0050】
[00064] ガス導管32内で放射ビーム21と同一方向に進んでいる高速移動汚染粒子が、54で示されている。(54で示されるような)放射ビームと同一方向に移動している高速移動汚染粒子は、膜44と衝突し、(56が示すように)膜44にひっかかるか、膜44から跳ね返る(図示せず)。膜44から跳ね返る高速移動汚染粒子は、跳ね返るとエネルギーを失うことがある。このエネルギー損失によって、膜から跳ね返る高速移動汚染粒子が、ガス導管32内で移動し続ける低速移動汚染粒子になり得る。高速移動汚染粒子が低速移動汚染粒子になると、その後、それらは粒子トラップ構造52内に閉じ込められ得る。
【0051】
[00065] 膜の材料の例としては、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、イットリウム(Y)、シリコン(Si)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、ニオビウム(Nb)、ルテニウム(Ru)、およびカーボン(C)が含まれる。使用され得る膜44の厚さ範囲の例は、約10ナノメートル〜約500ナノメートルである。例えば、膜44は、約100ナノメートルの厚さとすることができる。膜を形成するために使用され得る材料の別の例は、グラフェンである。劣化無しで高速移動汚染粒子との衝突に耐えることが求められる膜44の少なくとも強度によるが、グラフェンの単一シートが用いられ得る。あるいは、複数のグラフェンシートを含むグラフェン層またはグラフェンフレークの複合物が用いられ得る。膜44は特定の材料の単一層であってよく、または多数の層であってよいことが理解されよう。それらの層は異なる材料から形成され得る。
【0052】
[00066] 前述のとおり、ガスは、ガス導管32の内部からガス導管の外部48まで粒子トラップ構造52を介して流れる。ガス導管32の内部からガス導管の外部48へのガス流は、58が示すような低速移動汚染粒子を運び得る。ガスは粒子トラップ構造52を介する間接的な経路をとる必要があるので、ガス導管32の内部からガス導管の外部48へのガス経路は、まっすぐな経路より長い。(より短く直接的なガス流路と比較して)長く間接的な経路は、間接的なガス流路46(この場合、第1壁部材36、第2壁部材38、およびプレート52a)を画定する壁のより大きい表面積によって画定される。この、ガスが間接的な流路に沿って進む際にさらされる間接的なガス流路46を画定する壁のより大きい表面積によって、ガス内の低速移動汚染粒子が接触するより大きい表面積が与えられる。間接的なガス流路を画定する壁の増加した表面積によって、(直接的な流路と比較して)ガス内の低速移動汚染粒子が間接的な流路を画定する壁に接触する可能性が高まる。粒子トラップ構造52内の間接的なガス流路46を画定する壁の1つに低速移動汚染粒子が接触すると、低速移動汚染粒子は壁に寄りかかるようになり得る。粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁の1つに寄りかかることになった粒子が60で示されている。粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁によって低速移動汚染粒子が捕捉されるので、粒子トラップ構造52を通過したガスから汚染粒子が無くなる(これは矢印62によって示されている)。
【0053】
[00067] 上述のとおり、粒子トラップ構造52の間接的な経路は、ガス導管32の外側48に向かって進む間に何度も方向を変える。粒子トラップ構造の間接的な流路の方向変化は、急なものであり得る。粒子トラップ構造52の間接的な経路の急な方向変化によって、流路の急な方向変化に起因してガスが急な方向変化をする際に、汚染粒子が間接的なガス流路46を画定する壁に接触する可能性が高まり得る。間接的なガス流路46を画定する壁に汚染粒子が接触する可能性を高めることによって、ガスが運ぶ低速移動汚染粒子が、粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁の1つに寄りかかるようになる。このように、間接的な流路の急な方向変化によって、粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46が画定する壁によって汚染粒子が捕捉される可能性が高まり得る。当然ながら、間接的な流路46の急な方向変化によって、汚染粒子がガス導管の外側48まで進む可能性が低くなり得ることになる。
【0054】
[00068] 高速移動汚染粒子が膜を通過することを防ぐのに十分な(また、膜が気密でなくなるのを防ぐのに十分な)材料および厚さで形成された膜と、低速移動汚染粒子を収集するように構成された粒子トラップ構造との組合せによって、高速移動汚染粒子および低速移動汚染粒子がともにパターニングデバイスMAに到達するのを防ぐことが可能なリソグラフィ装置がもたらされることが分かる。
【0055】
[00069] 本発明の上記実施形態は単なる例として説明され、そのような例によって本発明の範囲が限定されるべきでないことが理解されよう。さらに、発明の範囲を逸脱することなく本発明の上記実施形態にさまざまな変更を加えてもよいことが理解されよう。
【0056】
[00070] 前述のとおり、膜44は、高速移動汚染粒子および低速移動汚染粒子を透過させないあらゆる適切な材料から形成され得る。実際には、これは、膜44が気密であることを意味する可能性がある。しかし、汚染粒子が膜を通過できないのであれば、膜がガスを透過させ得ることは発明の範囲内にある。膜の材料は、高速移動汚染粒子および低速移動汚染粒子の両方を透過させない膜44の能力が低下しないように、高速移動汚染粒子との多数の衝突に耐えることが可能でなければならない。膜の材料は、リソグラフィ装置の放射ビーム21が放射源SOからパターニングデバイスMAまで膜を通過することを可能にしなければならない。
【0057】
[00071] 説明した実施形態において、粒子トラップ構造52のプレート52aは、通常平らである。プレート52aは、あらゆる適切な形状を有し得ることが理解されよう。例えば、プレートは、非平面であってよく、および/または湾曲していてよい。プレートは、あらゆる適切な材料から形成され得る。粒子トラップ構造が用いられる雰囲気において反応しない材料からプレート52aが形成されることは有利であり得る。例えば、粒子トラップ構造が高水素雰囲気において用いられる場合、適切な反応しない材料には、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、酸化シリコン(SiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)が含まれる。
【0058】
[00072] 上述の実施形態の粒子トラップ構造52によって画定された間接的なガス流路46は蛇行している(特に、犂耕体的である)が、間接的なガス流路を形成するあらゆる適切な構造が用いられ得ることが理解されよう。例えば、経路は、迷路のようであってよい。粒子トラップ構造は、あらゆる適切な形態をとり得ることがさらに理解されよう。粒子トラップ構造は、チャンバの内側(この場合、ガス導管32)からチャンバの外側へのガス流を可能にすると同時に、ガス内の汚染粒子がチャンバの内側からチャンバの外側まで通過することを実質的に防ぐことができる必要がある。可能な粒子トラップ構造の別の例は、ガスを透過させるもののガス内の汚染粒子は透過させないスポンジ状材料である。適切なスポンジ状材料の例としては、金属から形成されたスポンジ状材料が含まれる。スポンジ状材料を構成するために用いられる材料は、その材料が一部を成す粒子トラップ構造が使用される雰囲気において反応しないことが望ましい。例えば、粒子トラップ構造(および、従ってスポンジ状材料)が水素雰囲気で使用される場合、適切な反応しない金属としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、およびモリブデン(Mo)が含まれる。スポンジ状材料は、複数のキャビティを画定する格子を含む。スポンジ状材料は、ガスが間接的な経路に沿ってチャンバの内側からチャンバの外側へ流れることを可能にし得る。スポンジ状材料を通るガスの経路は間接的である。というのは、ガスは、スポンジ状材料内の一連の隣接するキャビティを通って非直線経路を進むからである。
【0059】
[00073] 上述の実施形態の粒子トラップ構造において、ガス内の低速移動汚染粒子は、粒子トラップ構造52を介して間接的なガス流路46を画定する壁に付着することが理解されよう。粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁に対する汚染粒子の付着は、汚染粒子と壁部材との間のファンデルワールス力によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁にくっつく汚染粒子の能力を向上させる物質で、粒子トラップ構造を被覆することが望ましい場合がある。例えば、壁は、接着剤などで被覆されてよい。また、いくつかの実施形態において、粒子トラップ構造は、粒子トラップ構造52の間接的なガス流路46を画定する壁に対するガス内の汚染粒子の付着を改善するように、加熱され得る。
【0060】
[00074] 上述の実施形態において、膜44は、2つの別々の粒子トラップ構造52に隣接している。本発明のリソグラフィ装置は、1つの粒子トラップ構造のみを備えてよく、あるいは、3つ以上の粒子トラップ構造を備えてもよいことが理解されよう。さらに、あらゆる粒子トラップ構造が膜から離れた位置に配置され得る。
【0061】
[00075] 別の態様によれば、放射ビームを生成するように構成された放射源と、放射ビームにパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するように構成されたパターニングデバイスを支持するように構成されたサポートと、放射源とサポートと(そして、パターニングデバイスがサポートによって支持されている場合、パターニングデバイスと)の間に位置するチャンバとを含むリソグラフィ装置を提供することが可能である。チャンバは、放射ビームを反射するように構成された少なくとも1つの光コンポーネントを収容し、チャンバは、放射源からの放射が該光コンポーネントを通過してパターニングデバイスおよび膜に到達することを可能にするように構成される。膜は、放射ビームが膜を通過することを可能にするように構成され、また、汚染粒子が膜を通過することを防ぐように構成される。膜は、グラフェンを含み、またはグラフェンから形成される。膜がチャンバの一部を画定することは必要でなく、膜が放射ビームの経路に位置することも必要でない。そのような態様において、膜は、デブリを形成する粒子からパターニングデバイスを保護するように構築および配置されたペリクルを形成し得る。膜は、スペクトル純度フィルタとしても使用され得る。
【0062】
[00076] 上述の実施形態において、膜および粒子トラップ構造は、照明システムIL内においてパターニングデバイスMAに最も近いガス導管32の端に配置される。この場合である必要はない。例えば、膜および粒子トラップ構造は、中間焦点IFに最も近いガス導管32の端に位置決めされ得る。それに加えて、または、その代わりに、膜および粒子トラップ構造は、ソースモジュールMO内、例えば、コレクタと中間焦点IFとの間の位置に配置され得る。さらなる別の実施形態において、膜は、照明システムILの一部(膜は、照明システム内の中間光学系、およびパターニングデバイスである)および投影システムPSの一部(膜は、投影システム内の中間光学系、およびパターニングデバイスでもある)の両方を形成し得る。この実施形態において、膜は、パターニングデバイスを照明システムおよび投影システムの両方から分離する。膜は、パターニングデバイスが位置するチャンバを部分的に画定し得る。この実施形態において、放射ビームは膜を2度通過することになることが理解されよう。1度は照明システムからパターニングデバイスへ進むときであり、1度はパターニングデバイスから投影システムに進むときである。照明システムおよび投影システムの各々は、膜によって部分的に画定されたチャンバを備え得る。膜は、ソースモジュールSOの後に、かつ照明システムILの光学系の前に設けられ得る。
【0063】
[00077] また、本発明に係るリソグラフィ装置は2つ以上の膜を備え得ることが理解されよう。
【0064】
[00078] グラフェンから形成された膜は、リソグラフィ装置内のあらゆる適切な位置に設けられてよい。膜は、例えば、汚染粒子がリソグラフィ装置を通過するのを阻止するように構成され得る。
【0065】
[00079] 前述のとおり、本発明の膜を形成する際に用いる適切であり得る物質は、グラフェンとすることができる。グラフェンは、一般にハニカム結晶格子の炭素原子の平面シートである。グラフェンは、他の固体材料と比較して、極端紫外線に対して高い透過性を示す。こうした特性のために、グラフェンは、ペリクルやスペクトル純度フィルタを形成するためにも用いられ得る。
【0066】
[00080] EUV放射とともに用いられてきた公知のペリクルには、シリコン/ルビジウム(Si/Ru)材料から形成されたペリクルが含まれる。これらの材料は、該材料が壊れやすい(すなわち、機械的に堅牢でない)という事実によって望ましくないことが分かっており、また、かなりの透過損失を被ることが分かっている。Si/Ru材料製のペリクルのロバスト性の欠如のために、これらの材料は脆く、従って、リソグラフィ装置において取り扱うことおよび配置することが非常に難しい。さらに、Si/Ru材料の機械的ロバスト性の欠如は、該材料から形成されたペリクルが、デブリがレチクルに到達するのを防ぐようにその完全性を維持することができない場合がある、またはリソグラフィ装置内の環境要因に耐えることができない場合がある、ということを意味し得る。そのような環境要因には、リソグラフィ装置内の圧力傾度および/または温度変化が含まれ得る。前述のとおり、Si/Ru材料は、かなり大きい透過損失を被ることが分かっている。こうした透過損失は、入射するEUV放射の50%を上回り得る。ペリクルに起因するいかなる透過損失も、リソグラフィ装置内の基板に到達する放射の減少を招くことになる。これは、リソグラフィ装置の結像性能の低下の原因となり得る。
【0067】
[00081]
図4は、グラフェンペリクル64を示している。ペリクル64は、レチクル68から一定の距離をおいたところでペリクル64を保持するペリクルフレーム66によって支持される。レチクル68はリソグラフィ装置の焦点面に位置し、パターニングデバイスの一例である。
【0068】
[00082] ペリクルの使用は、デブリ(例えば、汚染物質または塵粒子)がレチクルに接触するのを防ぐ方法として知られている。レチクルに載るようになるいかなるデブリも、リソグラフィ装置の結像性能の大幅な低下を引き起こし得る。というのは、レチクル(および、従ってレチクルと接触しているデブリ)はリソグラフィ装置の焦点面に存在するからである。前述のとおり、ペリクルは、デブリがレチクルに到達するのを防ぐ。ペリクルに載るようになるいかなるデブリもリソグラフィ装置の焦点面に存在することにならず、従って、デブリがレチクルに載るようになった場合と比較して、リソグラフィ装置の結像性能の低下ははるかに少なくなる。
【0069】
[00083] EUV放射とともに用いられるペリクルとしてのグラフェンの使用は、特に有利であり得る。
図4に示すペリクル64は、単一のグラフェンシートである。グラフェンシートは、機械的に堅牢であり、これは、デブリ粒子がレチクル68に到達するのを防ぐことができることを意味する。さらに、グラフェンシートのペリクル64は、(13.5ナノメートルおよび6.7ナノメートルの両方の)該ペリクルに入射するEUV放射の約99%を透過させることができると考えられている。グラフェンが炭素原子の単一原子層から形成されるという事実のために、グラフェンの特性は実質的に均一である。例えば、グラフェンシートの厚さおよび組成は、シート全体にわたって実質的に均一であり得る。これは有利であり得る。というのは、ペリクルの光学的特性は、ペリクルのいかなる一部についても実質的に同一であるからである。これは、ひいては、ペリクルを通過する放射ビームのすべての部分が同様にペリクルによって影響を受けることを意味する。当然ながら、ペリクルは放射ビームのパターニングに影響を及ぼさず、従ってペリクルが一部を形成するリソグラフィ装置の結像性能は悪影響を受けない場合がある。
【0070】
[00084] 一実施形態において、単一のグラフェンシートからペリクル64を形成する代わりに、ペリクルは、互いの上に位置する複数のグラフェン層から形成される。これによって、ペリクル64は、向上した強度およびロバスト性を備え得る。例えば、11以上のグラフェン層または51以上のグラフェン層を用いてペリクル64を形成してよい。複数のグラフェン層から形成されたペリクルは、単一のグラフェンシートから形成されたペリクルより高い強度を有し得る。複数層から形成される場合、ペリクルの透過率は低下し得るが、それにもかかわらず、ペリクルはなお、ペリクルがEUVリソグラフィ装置内で用いられることを可能にするのに十分な高透過率を有し得る。100のグラフェン層の透過率は、13.5ナノメートルで85%であり、6.7ナノメートルで95%であり得る。100のグラフェン層の厚さは、およそ30ナノメートルである。ペリクル64は、単一のグラフェン層同士を積み重ねることによって、またはグラフェン層の積重ねをエピタキシャル成長させることによって形成され得る。
【0071】
[00085] ペリクル64を形成するグラフェンの使用には、高機械的強度、(厚さと組成の両方の点での)高均一度、EUV放射に対する高透過性、および高熱安定性(すなわち、リソグラフィ装置内で起こり得る温度変化によって実質的には影響を受けない)を含むいくつかの利点がある。加えて、グラフェンは、およそ1500℃までの温度に耐えることができる。グラフェンの機械的強度によって、グリッドを用いてペリクルを支持する必要が回避され、従って、グリッドが生じさせるであろうEUV放射の不均一性が回避される。一実施形態において、グリッドを用いてグラフェンに対する何らかのサポートが設けられ得る。
【0072】
[00086] グラフェンの機械的強度は、ペリクルを比較的容易に扱うことができることを意味する。例えば、ペリクルの縁が取り付けられるサポート部材上に、グラフェンを含むペリクルを位置決めすることができ、該ペリクルはリソグラフィ装置内の所望の位置に置かれ得る。ペリクルは、サポート部材およびペリクルを取り外し、新しいサポート部材およびペリクルと取り替えることによって、定期的に取り替えられ得る。また、グラフェンは、均一の態様で(必要に応じて)グラフェンがドープされることを可能にする実質的に平らな面を有する。当該技術分野で知られているように、グラフェンをドープすることによってグラフェンの特定の特性が変わり得る。いくつかのペリクルにおいて、グラフェンをドープすることによって、スペクトル純度フィルタが望ましい光学的特性および/または機械的特性、例えば、より高い放射透過率および/またはより高い機械的強度を示すことが可能になり得る。
【0073】
[00087]
図5は、ペリクル64の第2実施形態を示している。この実施形態において、ペリクル64はグラフェンシートから形成されるのではなく、ペリクル64を成す層を形成するグラフェンフレークの不規則配列から形成される。グラフェンフレークは、異なる形状およびサイズを有し得る(例えば、最大で約100マイクロメートルのサイズであり得る)。グラフェンフレークは、ファンデルワールス力によって結び付く。グラフェンフレーク70から形成されたペリクル64は、より多いグラフェンエッジを含むので、単一のグラフェンシートより均一でない厚さおよび平らでない面を有することがあり、リソグラフィ装置において水素および酸素に対してより高い反応性を示すことがある。グラフェンフレーク70からペリクル64を形成する利点は、該ペリクルがグラフェンシートと同様の性能を減少したコストでもたらすことである。
【0074】
[00088]
図6に示すペリクル64は、ペリクル64が以下の交互の層、すなわち、サポート材料、グラフェンシート、サポート材料、グラフェンシート、サポート材料)の積重ねから形成されるように、サポート材料74の層と層との間に挟まれた2つのグラフェンシート72を備えている。グラフェン72に加えてサポート材料74を用いることによって、ペリクル64の機械的特性が向上するという利点がもたらされ得る。グラフェンは拡散防止バリアとして機能し得る。
【0075】
[00089] サポート材料層74は、温度および機械的応力などのリソグラフィ装置内の他の環境要因からグラフェンシートを保護し得ることが理解されよう。いくつかの実施形態において、サポート材料の層によってEUV放射のかなりの量がそれらの層を通過することが可能になることが望ましい場合がある。また、
図6に示すペリクル64の実施形態はサポート材料層74間に挟まれた2つのグラフェンシートを備えるものの、あらゆる数のグラフェンシート72およびサポート支持層74が用いられ得ることが理解されよう。加えて、グラフェンシート72の代わりに、(上述のとおり)グラフェンフレークも用いられ得る。
【0076】
[00090] グラフェン層またはグラフェンフレークが設けられた材料層をペリクルが備え得るということが考えられる。
【0077】
[00091] グラフェンは、スペクトル純度フィルタの構築においても用いられ得る。リソグラフィ装置内の公知の放射源(例えば、レーザ生成プラズマ(LPP)源)は、帯域内放射(基板をパターニングするために用いられ得る)および帯域外放射を生じさせ得る。帯域内放射は、例えば、極端紫外線(EUV)であり得る一方、帯域外放射は、赤外線であり得る。赤外線は、約0.8μm〜約1000μmの範囲の波長を有する。例えば、赤外線は、約10μmの波長を有し得る。帯域外放射は、帯域内放射を基板まで誘導する同一のリフレクタによって反射され得る。帯域外放射は基板に悪影響を及ぼし得るので、リソグラフィ装置によって基板上に反射されることが望ましくない場合がある。例えば、帯域外放射が赤外線である場合、赤外線は基板を加熱させ得る。基板の加熱によって基板は膨脹し得る。基板の膨張は、リソグラフィ装置の結像性能の低下を招くおそれがある。例えば、放射ビームへの基板の連続した露光は、互いにそろわないことがある。これは、オーバーレイ問題と呼ばれる場合がある。あるいは、帯域内放射がEUV放射である場合、帯域外放射は深紫外線(DUV)であり得る。DUV放射もまた、リソグラフィ装置の結像性能の低下を引き起こし得る。例えば、DUV放射は、基板上に結像されたパターンをぼかし得る。
【0078】
[00092] スペクトル純度フィルタは、リソグラフィ装置を介して基板に至る帯域外放射(例えば、赤外線および/またはDUV放射)の透過を抑制する公知の手段である。公知のスペクトル純度フィルタは、帯域外放射の透過を防ぐ(すなわち、吸収および/または反射によって)ために用いられる材料が有用な帯域内EUV放射の透過を防ぐためにも用いられることを欠点としている。スペクトル純度フィルタによる帯域内放射の吸収量は、スペクトル純度フィルタの厚さの増加とともに増加するので、EUV放射とともに用いられる公知のスペクトル純度フィルタは、EUV放射の吸収を最小限にするように薄い(厚さ50〜100ナノメートル)。これらのスペクトル純度フィルタが非常に薄いという事実のために、該スペクトル純度フィルタは非常に壊れやすいことがある(すなわち、低い機械的強度を有する)。従って、リソグラフィ装置においてそのようなスペクトル純度フィルタを取り扱うことおよび配置することは非常に難しい。さらに、公知のスペクトル純度フィルタの厚さの最小化にもかかわらず、公知のスペクトル純度フィルタに対するEUV放射の透過率は、約50%未満であり得る。そのようなスペクトル純度フィルタに対するEUV放射の低透過率は望ましくないことがある。というのは、基板に到達するEUV放射の低下した強度がリソグラフィ装置の低下した結像性能の原因となり得るからである。
【0079】
[00093] 前述のとおり、グラフェンは、高い機械的強度を有し、かつかなりのEUV放射が透過することを可能にする材料である。
図7は、グラフェンシート78を含むスペクトル純度フィルタ76を示している。グラフェンシート78は、スペクトル純度フィルタフレーム80上に配置される。グラフェンシート78は、帯域外放射抑制構造82を支持する。帯域外放射抑制構造82は、帯域外放射がスペクトル純度フィルタを透過することを抑制できる単一層または多層構造を備え得る。
図7は、スペクトル純度フィルタに入射する放射ビームAを示している。入射する放射ビームは、帯域内放射および帯域外放射の両方を含み得る。帯域内放射Bは、帯域外放射抑制構造82およびグラフェンシート78を通過し、パターニングデバイス、そして基板まで進み得る。帯域外放射は、帯域外放射抑制構造82によって吸収され(帯域外放射の吸収は図示せず)、またはCが示すようにスペクトル純度フィルタ76から反射され得る。グラフェンシート78は、潜在的に薄い帯域外放射抑制構造82を支持するように機能し、従って、リソグラフィ装置においてスペクトル純度フィルタをより取り扱いしやすくさせ、配置しやすくさせる。加えて、グラフェンは酸素を透過させないので、帯域外放射抑制構造82の酸化を防ぎ得る。帯域外放射抑制構造の酸化を防ぐことが望ましい場合、帯域外放射抑制構造82の両面は、グラフェンで被覆され得る。
【0080】
[00094]
図8は、
図7に示すスペクトル純度フィルタと同様のスペクトル純度フィルタを示している。この実施形態において、
図7に示すスペクトル純度フィルタのグラフェンシート78は、グラフェンフレーク84に取って代わられる。グラフェンフレーク84は、異なる形状およびサイズのフレークがファンデルワールス力によって互いに結合する層を形成する不規則配列であり得る。いくつかのスペクトル純度フィルタにおいて、グラフェンフレークは、グラフェンシートと比較して有利であり得る。これは、グラフェンフレークがグラフェンシートより高価でないことがあり、より加工しやすいことがあり得るからである。
【0081】
[00095] スペクトル純度フィルタは、例えば、遮断することになっている放射の波長より小さいピッチを有するグリッドを備え得る。例えば、グリッドは、およそ5ミクロンのピッチを有してよく、およそ10ミクロンより長い波長を有する赤外線を遮断するために用いられ得る。グリッドは、例えば、六角セル(例えば、ハニカムグリッドの形態を有する)から形成され得る。六角セルを形成するリブは、例えば、およそ500ナノメートルの厚さであり得る。グリッドは、例えば、赤外線によって生成された実質的な熱負荷に耐えることができ、かつ高放射率を有する、タングステンなどの金属から形成され得る。タングステングリッドの外面は、大気中に存在する場合、例えば、EUVリソグラフィ装置の組み立て中、酸化して酸化タングステンを形成する。EUVリソグラフィ装置が動作している場合、赤外線にさらされると、酸化タングステンはグリッドから蒸発することになる。酸化タングステンの一部は、EUVリソグラフィ装置の光学面上に堆積する場合があり、反射率が低下し、それによって基板上への投影に利用可能なEUV放射の強度が低下する。従来の洗浄技術では、光学面から酸化タングステンを除去することはできない。従って、グリッドからの酸化タングステンがEUVリソグラフィ装置を汚染するのを防ぐことが望ましい。
【0082】
[00096] タングステングリッドの酸化からの保護および/またはグリッドからの酸化タングステンの脱ガスの防止のためにグラフェンが用いられ得る。
図9は、スペクトル純度フィルタ76が、タングステングリッド77(または何らかの他の適切な金属から形成されたグリッド)と、グリッドの両面に設けられたグラフェン層79とを備える実施形態の断面を概略的に示している。グラフェンは、タングステングリッド77がまったく露出しないように塗布され得る。グラフェン層79は、酸素を透過させず、従って、タングステングリッド77の酸化を防ぐ。グラフェン層79は、例えば、タングステングリッド77に対するグラフェンシートとして塗布され得る。これは、タングステングリッドが真空状態にある場合(例えば、酸化タングステン層がタングステングリッド上に存在しない場合)になされ得る。グラフェン層79が所定の位置に存在すると、スペクトル純度フィルタ76は大気にさらされてよい。グラフェン層79はタングステングリッド77の酸化を防ぎ、従って、酸化タングステン層がタングステングリッド上に堆積するのを防ぐ。
【0083】
[00097] グラフェン層79は、グリッドを構成するセル(例えば、ハニカム構造の場合、六角セル)を封止し得る。この結果、セル内の圧力は、セル外の圧力と大幅に異なり得る。例えば、セル内に真空が存在し、セル外に大気圧が存在し得る。グラフェン層79は、圧力差から生じる力に耐えるのに十分に強いことになる(単一のグラフェン原子シートは、5ミクロンのピッチのグリッドに対して真空から気圧までの圧力差を保持し得る)。
図9に概略的に示すように、グラフェン層79は、圧力差の結果として、内側に湾曲し得る。
【0084】
[00098]
図10に概略的に示す別の実施形態において、グラフェン層をタングステングリッドの両側に設ける代わりに、グラフェンを用いてグリッドの個別のリブを取り囲む。スペクトル純度フィルタ76は、タングステン(または他の適切な金属)から形成されたグリッド77を備え、該グリッドの各リブは、グラフェン81によって取り囲まれる。グラフェン81は、タングステングリッド77が大気に全くさらされないように塗布され、従って、タングステングリッドの酸化を防ぎ、かつ、酸化タングステン層がタングステングリッド上に堆積するのを防ぐ。
【0085】
[00099]
図10に示す実施形態は、例えば、グラフェンフレークをグリッド77上にスパッタリングすることによって形成され得る。あるいは、グラフェンシートをグリッド77上に設け、そして、グラフェンが砕けてグリッドのリブに付着するように空気を吹き付けることによってグラフェンシートを砕く。
【0086】
[000100] タングステングリッドのスペクトル純度フィルタは、限られた寿命を有し得る。限られた寿命の主な理由は、グリッドが高温である(これはリソグラフィ装置の動作中に起こる)場合にタングステン粒子が生じることである。タングステン粒子は、グリッドが最終的に砕け得る程度にグリッドを壊れやすくする。
【0087】
[000101] 一実施形態において、スペクトル純度フィルタグリッドにおけるタングステン粒子の発生は、グリッドをタングステン/グラフェン多層構造として構築することによって防止または低減され得る。そのような多層構造におけるグラフェンは、大きいタングステン粒子の発生を防ぐバリアとして機能する。グラフェンは、タングステン融解温度などのタングステンの特性に対して著しい影響を及ぼさない。タングステン/グラフェン多層構造を構成するリブ77から形成されるグリッドを備えるスペクトル純度フィルタ76の例が
図11に概略的に示されている。タングステン粒子がリブの幅を超えるサイズを有することができないようにタングステン粒子の発生を制限するために、スペクトル純度フィルタのタングステン層の厚さは、リブ77の幅より小さくされ得る。例えば、リブは、500ナノメートルの厚さであってよい。タングステン層は、100ナノメートル以下の厚さであってよく、また、50ナノメートル以下の厚さであってよい。グラフェン層は、例えば、1ナノメートル未満の厚さであってよい。
【0088】
[000102] グラフェンおよび他の適切な材料(例えば、レニウムなどの他の適切な金属)を含む多層グリッド構造が、スペクトル純度フィルタを形成するために用いられ得る。
【0089】
[000103] 一実施形態において、多層構造を用いてスペクトル純度フィルタグリッドを形成する代わりに、グリッドは、グラフェンおよびタングステンの混合物から形成され得る。これは、例えば、グラフェンをタングステンと混合し、そしてグラフェンおよびタングステンをともに光コンポーネント(例えば、EUVリソグラフィ装置の光コンポーネント)上にスパッタリングすることによって、達成され得る。グラフェンおよびタングステンの混合物からスペクトル純度フィルタグリッドを形成することは、タングステン粒子の発生を低減するのに役立ち得る。良好な耐熱性および高放射率などのタングステンの望ましい特性を保持するために、グラフェンよりタングステンを多く用いることが望ましい場合がある。タングステンに対するグラフェンの割合は、比較的低くてよく、例えば、5%以下、また、1%以下であってよい。
【0090】
[000104] グラフェンおよび他の適切な材料(例えば、他の適切な金属)の混合物を同等の態様で用いてスペクトル純度フィルタを形成し得る。
【0091】
[000105] 場合によっては、タングステン粒子は、グリッド77から分離し、EUVリソグラフィ装置内の汚染を引き起こし得る。例えば、
図9および/または
図10に示すように、グラフェンは、グリッド77を被覆し、またはグリッドの構成要素を取り囲むために用いられ得る。これが行われる場合、グラフェンは、タングステン粒子がEUVリソグラフィ装置を汚染するのを防ぐバリアとして機能し得る。
【0092】
[000106]
図12は、多層構造を有するスペクトル純度フィルタを備える実施形態を示している。このスペクトル純度フィルタは、6つの交互の層、すなわち、3つのグラフェンシート層78および3つの帯域外放射抑制構造層82を含む。従って、このスペクトル純度フィルタは、
図7に示す3つのスペクトル純度フィルタの積重ねと見なすことができる。この実施形態は、
図7に示す実施形態と比較して有利であり得る。というのは、帯域外放射抑制層82の大きい総厚さを複数のグラフェンシート層78によって支持することができるからである。多数のグラフェンシート層78を帯域外放射抑制構造層82の間に設けるという事実のために、スペクトル純度フィルタは、単一の帯域外放射抑制層と単一のグラフェンシート層とを有するスペクトル純度フィルタと比較して、高い機械的強度を有し得る。この実施形態において、グラフェンシート層78は上述のとおりグラフェンフレークから形成された層に取って代わられ得ることが理解されよう。
【0093】
[000107] (例えば、
図12に示す態様で)グラフェンを用いてスペクトル純度フィルタを強化する利点は、スペクトル純度フィルタの高放射率が大きく変化しないことである。スペクトル純度フィルタの高放射率は有用である。というのは、高放射率によってスペクトル純度フィルタが効率的に熱を放射することが可能になり、従って、スペクトル純度フィルタが、そうでない場合と比較して、リソグラフィ装置の動作中、低温にとどまることが可能になるからである。
【0094】
[000108]
図13および
図14は、グラフェンフレーク84から形成された支持層を備える、さらなるスペクトル純度フィルタを示している。両方の場合において、グラフェンフレーク84の層は、帯域外放射抑制構造82上に配置される。グラフェンフレーク84から形成された層上に配置されるのは、グリッド構造86である。グリッドのピッチは、上述のとおり、帯域外放射(例えば、赤外線)の透過を実質的に防ぐように選択され得る。グリッドのピッチは、例えば、5ミクロンとすることができる。
【0095】
[000109]
図13に示すスペクトル純度フィルタのグリッド86は、(例えば、タングステンから形成された)サポート構造88と、帯域外放射を反射する反射コーティング90とを含む。帯域外放射が(例えば、10.6μmの)赤外線である場合に使用され得るコーティングの例は、モリブデン(Mo)である。反射コーティング90は、グリッドのピッチとともに機能して赤外線を遮断し得る。グリッドは、寸法を有し得る。
【0096】
[000110]
図11に示すスペクトル純度フィルタのグリッド構造は、帯域外放射を反射する材料から形成される。帯域外放射が(例えば、10.6μmの)赤外線である場合、帯域外放射を反射する材料の例は、高伝導率を有する金属である。そのような金属の例には、Al、Au、Ag、およびCuが含まれる。
【0097】
[000111] 帯域外放射を反射する(または帯域外放射を吸収するが透過させない)グリッド構造と組み合わせて、
図12に示すスペクトル純度フィルタ構造と同様のスペクトル純度フィルタ構造が用いられ得ることが理解されよう。これは、例えば、かなりの量の赤外線が存在し得るLPP放射源において有用であり得る。
図12に示すスペクトル純度フィルタと同様のスペクトル純度フィルタが、DPP放射源においてグリッド構造無しで用いられてよく、ここで赤外線は、ほとんど、またはまったく存在しない場合がある。例えば、帯域外放射の透過を防ぐグリッド構造が、
図12に示すスペクトル純度フィルタの上に設けられ得る。そのようなスペクトル純度フィルタの1つの可能な実施形態は、5μmの間隔を有するグリッド(10.6μmの波長を有する帯域外赤外線を抑制するグリッド)を備えている。また、該スペクトル純度フィルタは、3つのグラフェン層を備え、各グラフェン層は、3つのグラフェン層の厚さのグラフェンシートである(1つのグラフェン層の厚さは約0.34nmであり、従って、3層の厚さのグラフェンシートの厚さは約1nmである)。スペクトル純度フィルタは、シリコン、ジルコニウム、またはモリブデンから形成された3つの帯域外放射抑制層をさらに備え、各層は、約3nmの厚さを有する。他の実施形態において、スペクトル純度フィルタは、4つ以上の(または2つの)グラフェン層および帯域外抑制層を備え得る。各グラフェン層は、4つ以上(または2つの)グラフェンシートを備え得る。
【0098】
[000112] 上述の実施形態のスペクトル純度フィルタの特徴は、組み合わせられ得る。例えば、(例えば、
図10に示すように)構成要素がグラフェンによって取り囲まれるタングステングリッドは、帯域外放射の反射率上昇をもたらすモリブデンの外層を備え得る。
【0099】
[000113] 帯域外抑制構造は、帯域外放射を吸収および/または反射すると同時に帯域内放射の透過を可能にすることができるあらゆる材料を含み得ることが理解されよう。使用され得る材料の例としては、タングステン(W)、シリコン(Si)、およびジルコニウム(Zr)が含まれる。
【0100】
[000114] 多層ミラー、例えば、EUVリソグラフィ装置で用いられる多層ミラーを構築する際にグラフェンが用いられ得る。多層ミラーは、モリブデンまたはタングステンなどの金属の複数の交互の層、およびシリコンなどのスペーサから形成され、これらの層は、構造的サポートを提供する基板上に形成される。層の対の厚さは、反射される放射の波長(例えば、13.5nmのEUV放射)の半分に等しくてよい。各層の対から散乱する放射の強め合う干渉により、多層ミラーは放射を反射する。
【0101】
[000115] 多層ミラーにおいて、隣接する層と層との間に(例えば、モリブデン層とシリコン層との間に)明確な境界を設けることが望ましい。時間の経過に伴う拡散が、隣接する層と層との間で、それらの間の境界が明確でなくなるように起こり得る。この拡散は、リソグラフィ装置の動作中に加熱されるミラーに部分的に起因し得る。グラフェンは、隣接する層と層との間に配置された反射防止層として用いられる場合があり、グラフェンはそれら隣接する層と層との間の明確な境界を維持するように作用する。
【0102】
[000116] グラフェンは、反射防止層として用いられるのに適している。というのは、グラフェンは不透過性であり、EUV放射をほとんど吸収しないように薄層(例えば、厚さ1nm未満)で設けられ得るからである。グラフェンは高温(例えば、約1500℃まで)に耐えることができるので、多層ミラーが従来の多層ミラーより高い温度に耐えることを可能にし得る。従来の多層ミラーは、例えば、約100℃の温度で破損し得る。EUVリソグラフィ装置内のスペクトル純度フィルタが故障した場合、リソグラフィ装置の多層ミラーに入射する赤外線は、100℃を超える温度まで多層ミラーを急速に加熱する場合があり、それが、交換する必要がある程度に多層ミラーに損傷を与える。多層ミラーが耐えることができる最高温度を、グラフェンを用いて上昇させることによって、過熱による多層ミラーへの損傷の可能性が低減する。
【0103】
[000117] グラフェンを用いて多層ミラーが従来の多層ミラーより高い温度に耐えることが可能になることによって、従来は用いることができなかった位置において多層ミラーを用いることが可能になる。例えば、多層ミラーは、スペクトル純度フィルタの前方で用いられ得る。例えば、多層ミラー(またはミラー)はEUV放射源SO内のコレクタとして用いられ得る。
【0104】
[000118] 多層ミラーの一実施形態が
図15に概略的に示されている。多層ミラーは、モリブデン94およびシリコン96(または他の適切な材料)の交互の層が設けられる基板92を備えている。グラフェン98の層がモリブデン94の各層とシリコン96の各層との間に設けられる。グラフェン層は、例えば、厚さ1nm未満であってよく、または他の厚さを有し得る。
【0105】
[000119] 多層ミラーは、例えば、(例えば、化学気相成長を用いて)モリブデン層またはシリコン層を基板上に成長させ、グラフェンシートを該層上に手動で塗布し、次の層を成長させることなどによって構築され得る。
【0106】
[000120] 多層ミラーの外層の酸化を防ぐために多層ミラーの最外層上にルテニウム層を設けることは従来のやり方である。ルテニウム層は、大気にさらされると自然に酸化し、EUVリソグラフィ装置の動作中にも酸化する。この酸化は、約1%ミラーの反射率を低下させる場合があり、これは、リソグラフィ装置内のEUV放射強度の重大な損失を引きこすのに十分であり得る(この損失は装置の各ミラーについて累積的なものである)。酸化は、水素イオンを用いる洗浄によってミラーから除去することができる。しかし、洗浄中に除去することができない残留物がミラー上に残ることがある。この残留物は、時間とともにミラー上に堆積し、それによってミラーの寿命が縮まる。
【0107】
[000121] 一実施形態において、グラフェン層は、ルテニウム層(または他のキャッピング層)の代わりに、多層ミラーの最外層として設けられ得る。グラフェンは酸素を透過させないので、多層ミラーの外層の酸化を防ぐ。
【0108】
[000122] 多層ミラー内で(または最外層上の層と層との間で)グラフェンを用いることは、有利である。というのは、グラフェンを均一の厚さ(例えば、単一層)で設けることができ、従って、ミラーが反射した放射を歪ませないからである。同様の利点は、スペクトル純度フィルタの両側に設けられたグラフェン層に当てはまり得る(
図9を参照)。
【0109】
[000123] グラフェンは、非常に薄い層(例えば、単一層で0.34ナノメートル)として設けられ得るという利点を呈し、この場合、EUV放射に対して高い透過性を示す(例えば、0.34ナノメートルの厚さに対しておよそ99.8%の透過性)。さらに、グラフェンは、EUVリソグラフィ装置で生じ得る温度まで加熱される際に安定している。さらなる利点は、グラフェンは広く利用可能であり、比較的大きい表面積にわたって塗布することができることである。
【0110】
[000124] グラフェンの別の利点は、水素イオンに対して化学的に耐性があり、それによってグラフェンが損なわれずにEUVリソグラフィ装置内の洗浄を行うことが可能になる。また、ルテニウムと比較して、グラフェンは、スズや亜鉛が付着しないという利点を有する。水素イオンを用いて洗浄を行う場合、スズおよび亜鉛は、ミラーのルテニウム外層に付着する傾向があることがある(スズおよび亜鉛はリソグラフィ装置の他の部分から生じる)。これは、容易に除去することができない残留物を形成し得る。これは、ミラーの寿命を制限するおそれがある。というのは、ミラーが時間とともにより低い反射性を示し得るからである。しかし、スズおよび亜鉛は、グラフェンにくっつく傾向がない。従って、ミラーへの残留物の堆積は回避され、ミラーの寿命は延び得る。
【0111】
[000125] グラフェンを上述したが、グラフェン派生物質を、EUVリソグラフィ装置のミラー、スペクトル純度フィルタなどにおいて用いてよい。グラフェン派生物質としては、例えば、グラフェン、弗化グラフェン、臭化グラフェン、塩化グラフェン、および沃化グラフェンが含まれる。グラフェンおよびグラフェン派生物質は、すべて、炭素SP2結合塩基を有する膜であるという点で共通する。化学的特性は異なり得るものの、グラフェン派生物質の機械的特性は、グラフェンの機械的特性と同一または同様であり得る。弗化グラフェンは、EUV放射によって照明される際にグラフェン結合より崩壊に左右されない結合を有するという利点を呈し得る。この理由から、弗化グラフェンは、グラフェンの代わりに本発明の実施形態において用いられ得る。
【0112】
[000126] グラフェンは、SP2結合炭素の単一層を含んでよく、あるいは、SP2結合炭素の積み重なった複数層、または主にSP2結合炭素の積み重なった複数層を含んでよい。
【0113】
[000127] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0114】
[000128] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0115】
[000129] 「レンズ
」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0116】
[000130] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。