(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189952
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】窒化ケイ素材料の選択的な研磨のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20170821BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20170821BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170821BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20170821BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
H01L21/304 621D
B24B37/00 H
【請求項の数】26
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-521754(P2015-521754)
(86)(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公表番号】特表2015-528036(P2015-528036A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】US2013049786
(87)【国際公開番号】WO2014011678
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】13/546,552
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ワード
【審査官】
小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−318952(JP,A)
【文献】
特表2006−520530(JP,A)
【文献】
特開2007−311779(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/091330(WO,A2)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0067952(KR,A)
【文献】
特表2008−519466(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/081503(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0152309(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/067844(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0077189(KR,A)
【文献】
国際公開第2009/131133(WO,A1)
【文献】
特開2008−112990(JP,A)
【文献】
特開2011−023448(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0118760(US,A1)
【文献】
特開2010−135792(JP,A)
【文献】
特表2010−515257(JP,A)
【文献】
特表2012−503880(JP,A)
【文献】
Electochemical and Solid-State Letters,Vol.8, No.8,p.G218-G221 (2005).
【文献】
Journal of The Electochemical Society,Vol.156, No.12,p.H936-H943 (2009).
【文献】
Journal of The Electochemical Society,Vol.157, No.9,p.H869-H874 (2010).
【文献】
Electochemical and Solid-State Letters,Vol.7, No.12,p.G327-G330 (2004).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
B24B 3/00 − 3/60
B24B 21/00 −39/06
H01L 21/304
H01L 21/463
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的機械的研磨(CMP)プロセスにおいて窒化ケイ素含有基材を研磨するのに好適な酸性水性研磨組成物であって、
(a)0.01wt%〜10wt%の少なくとも1種の粒子状セリア研削剤と、
(b)10ppm〜100,000ppmの少なくとも1種の非ポリマー不飽和窒素複素環化合物と、
(c)0ppm〜100,000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(d)0ppm〜200,000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマーと、
(e)それらのための水性キャリアーと、
を含み、
該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物が、1,3−ビス(4−ピリジル)プロパン、2−フェニル−1,3−ジ(4−ピリジニル)−2−プロパノール、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−1,2−エタンジオール、および、1−エチルピリジニウムクロライド、1−ベンジルピリジニウムブロマイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムイオダイド、4−メチル−1−プロピルピリジニウムイオダイド、1−エチル−4−(メトキシカルボニル)ピリジニウムイオダイド、1,4−ジメチルピリジニウムイオダイド、パラコートジクロライド、1−(4−ピリジル)ピリジニウムクロライド、エチルバイオロジェン(viologen)ジイオダイド、p−キシレンビス(N−ピリジニウムブロマイド)、および1,1’−テトラメチレンビス(ピリジニウムクロライドから選択される化合物を含み、
該ポリオキシアルキレンポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、
組成物。
【請求項2】
該研削剤が、該組成物中に0.05wt%〜5wt%の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該カチオン性ポリマーが、該組成物中に10ppm〜10,000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物が、該組成物中に10ppm〜10,000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該ポリオキシアルキレンポリマーが、該組成物中に200ppm〜100,000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該ポリオキシアルキレンポリマーが、300〜1500の範囲のエチレングリコールモノマー単位の平均数を含むポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム置換ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、第四級アンモニウム置換アクリレートポリマー、第四級アンモニウム置換メタクリレートポリマー、または先のカチオン性ポリマーのいずれかの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物が、4,4’−トリメチレンジピリジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該セリア研削剤が、焼成セリアを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
該水性キャリアーが、脱イオン水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該組成物が、2〜6の範囲のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
化学的機械的研磨(CMP)プロセスにおけるポリケイ素に対し窒化ケイ素の選択的な除去に好適な酸性水性研磨組成物であって、
(a)0.05wt%〜5wt%の少なくとも1種の粒子状セリア研削剤と、
(b)10ppm〜10,000ppmの4,4’−トリメチレンジピリジンと、
(c)ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、第四級アンモニウム置換アクリレートポリマー、第四級アンモニウム置換メタクリレートポリマー、または先のカチオン性ポリマーのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、0〜10,000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(d)ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される、0ppm〜20,000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマーと、
(e)それらのための水性キャリアーと、
を含み、
該組成物が3〜5の範囲のpHを有する、組成物。
【請求項14】
基材の表面を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法であって、該方法が請求項1に記載の組成物を用いて該基材の該表面を研削することを含み、使用される該組成物が、0.01wt%〜2wt%の該セリア研削剤と、10ppm〜1000ppmの該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物と、0ppm〜1000ppmの該カチオン性ポリマーと、0ppm〜2000ppmの該ポリオキシアルキレンポリマーとを含む、方法。
【請求項15】
該基材の該表面が、窒化ケイ素、ポリケイ素、および二酸化ケイ素を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基材の表面を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法であって、該方法が請求項11に記載の組成物を用いて該基材の該表面を研削することを含み、使用される該組成物が、0.01wt%〜2wt%の該セリア研削剤と、10ppm〜1000ppmの該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物と、0ppm〜1000ppmの該カチオン性ポリマーと、0ppm〜2000ppmの該ポリオキシアルキレンポリマーを含む、方法。
【請求項17】
該基材の該表面が、窒化ケイ素、ポリケイ素、および二酸化ケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリケイ素の除去に対して基材の表面から窒化ケイ素を選択的に除去するための化学的機械的研磨(CMP)方法であって、該方法が、
(a)窒化ケイ素およびポリケイ素含有基材の表面と、研磨パッドおよび酸性水性CMP組成物とを接触させることと、
(b)該研磨パッドと該基材との間の該表面と該CMP組成物の一部分との接触を該表面から窒化ケイ素を研削するのに充分な時間の間維持しながら、該研磨パッドと該基材との間で相対的な動きを生じさせることと、
の各ステップを含み、
ここで該CMP組成物が、
(i)0.01wt%〜2wt%の少なくとも1種の粒子状セリア研削剤と、
(ii)10ppm〜1000ppmの少なくとも1種の非ポリマー不飽和窒素複素環化合物と、
(iii)0ppm〜1000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、
(iv)0ppm〜2000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマーと、
(v)それらのための水性キャリアーと、
を含み、
該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物が、1,3−ビス(4−ピリジル)プロパン、2−フェニル−1,3−ジ(4−ピリジニル)−2−プロパノール、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−1,2−エタンジオール、および、1−エチルピリジニウムクロライド、1−ベンジルピリジニウムブロマイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムイオダイド、4−メチル−1−プロピルピリジニウムイオダイド、1−エチル−4−(メトキシカルボニル)ピリジニウムイオダイド、1,4−ジメチルピリジニウムイオダイド、パラコートジクロライド、1−(4−ピリジル)ピリジニウムクロライド、エチルバイオロジェン(viologen)ジイオダイド、p−キシレンビス(N−ピリジニウムブロマイド)、および1,1’−テトラメチレンビス(ピリジニウムクロライドから選択される化合物を含み、
該ポリオキシアルキレンポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、
方法。
【請求項19】
該ポリオキシアルキレンポリマーが、該組成物中に200ppm〜2000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該ポリオキシアルキレンポリマーが、300〜1500の範囲のエチレングリコールモノマー単位の平均数を含むポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
該カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム置換ポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
該カチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、第四級アンモニウム置換アクリレートポリマー、第四級アンモニウム置換メタクリレートポリマー、または先のカチオン性ポリマーのいずれかの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
該非ポリマー不飽和窒素複素環化合物が、4,4’−トリメチレンジピリジンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
該セリア研削剤が、焼成セリアを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
該CMP組成物が、2〜6の範囲のpHを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
該基材の該表面が、二酸化ケイ素をまた含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研磨組成物および方法に関する。さらに特に、この発明は、窒化ケイ素含有基材を研磨するための方法およびそのための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路のための半導体ウェハーは、典型的にはケイ素またはガリウムヒ素等の基材を含み、その上に複数のトランジスターが形成されている。トランジスターは、基材および基材上の層中のパターニング領域によって基材に化学的かつ物理的に接続されている。トランジスターおよび層は、幾つかの形態の酸化ケイ素(SiO
2)から主としてなる層間絶縁膜(ILDs)によって分離されている。トランジスターは、周知のマルチレベルの相互に接続の使用を通して、相互に接続されている。典型的なマルチレベルの相互接続は、以下の材料:チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、アルミニウム銅(Al−Cu)、アルミニウムケイ素(Al−Si)、銅(Cu)、タングステン(W)、ドープされたポリケイ素(ポリ−Si)、および種々のそれらの組み合わせの1種または2種以上からなる積み重なった薄膜からなる。さらに、トランジスターまたはトランジスターの群は、多くの場合、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、および/またはポリケイ素等の絶縁材料を用いて充填したトレンチの使用を通して相互から単離している。半導体製造の間に、前記の材料の種々の層は、ウェハー上に回路の種々の構成部分を形成するために除去されることが好ましく、これは典型的には化学的機械的研磨(CMP)によって達成される。
【0003】
基材の表面のCMPのための組成物および方法は、周知技術である。(例えば、集積回路製造のための)半導体基材の表面のCMPのための(研磨スラリー、CMPスラリー、およびCMP組成物としてまた知られている)研磨組成物は、典型的には、研削剤、種々の添加物化合物、およびその同類のものを含む。
【0004】
従来のCMP技術において、基材キャリアーまたは研磨ヘッドは、キャリアー集成体上に取り付けられ、そしてCMP装置中の研磨パッドと接触して配置される。キャリアー集成体は、制御可能な圧力を基材に提供し、研磨パッドに対して基材を駆動する。パッドおよびキャリアーは、その取り付けられた基材と共に、相互に対して相対的に動かされる。パッドおよび基材の相対的な動作は、基材の表面を研削するように働いて、基材表面から材料の一部分を除去し、それによって基材を研磨する。基材表面の研磨は、典型的には、研磨組成物の化学的活性(例えば、CMP組成物中に存在する酸化剤、酸、塩基、または他の添加物によって)および/または研磨組成物中で懸濁された研削剤の機械的な活性によって、さらに助けられる。典型的な研削剤材料は、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化スズを含む。
【0005】
通常、CMPは、表面の同時に起こる化学的かつ機械的研削、例えば、その上に第1の層が形成されている平面でない第2の層の表面を暴露するための、積層している第1の層の研削を含む。一つのそうしたプロセスがBeyerらの米国特許第4、789、648号明細書に記載されている。簡潔に言うと、Beyerらは、被覆している第1の層の材料の表面が被覆している第2の層の上部表面と共平面になるまで第2の層より速い速度で第1の層を除去するために研磨パッドおよびスラリーを使用するCMPプロセスを開示する。化学的機械的研磨のさらに詳細な説明は、米国特許第4、671、851号明細書、米国特許第4、910、155号明細書および米国特許第4、944、836号明細書に見出される。
【0006】
Nevilleらの米国特許第5、527、423号明細書は、例えば、水媒体中に懸濁された高純度の微細金属酸化物粒子を含む研磨スラリーと金属層の表面とを接触させることによって、金属層を化学的機械的に研磨する方法を記載する。代わりに、研削剤材料は、研磨パッド中に取り込まれることができる。Cookらの米国特許第5、489、233号明細書は、表面織地またはパターンを有する研磨パッドの使用を開示し、そしてBruxvoortらの米国特許第5、958、794号明細書は、固定された研削剤研磨パッドを開示する。
【0007】
公知のCMPスラリー組成物は、限定された目的のためには典型的には好適であるが、多くの従来の組成物は、受け入れ難い研磨速度およびそれに対応したウェハー製造における使用される絶縁体材料の除去のための受け入れ難い選択性を示す。さらに、多くの公知の研磨スラリーは、下地をなす膜のために貧弱なフィルム除去特性を生成し、または貧弱な製造収率となる有害なフィルム腐食を生じる。
【0008】
集積回路機器のための記述が進歩するにつれて、従来の材料は新規かつ異なる様式で使用されて、進歩した集積回路に必要な性能のレベルを達成する。特に、窒化ケイ素、酸化ケイ素、およびポリケイ素は、種々の組み合わせで使用されて、新規かつさらに複雑な機器形状を達成する。通常、構造の複雑さおよび性能の特徴は、異なる用途にわたって変化する。窒化ケイ素、酸化ケイ素およびポリケイ素材料の除去速度をCMPの間に調整または合わせて特別なIC機器の研磨要求を満たすことを可能にする方法および組成物への継続的なニーズがある。
【0009】
例えば、多くのIC機器用途のために急速な窒化ケイ素除去速度を達成することへの継続的なニーズがある。従来の研磨スラリーは、シャロートレンチアイソレーション(STI)におけるような「窒化ケイ素上で止まる(stop on)」用途のための設計であった。典型的なSTIスラリーは、高pHおよび高研削剤濃度でシリカ研削剤を使用して妥当な窒化ケイ素除去速度を達成する。高い研削剤粒子濃度の使用は、研磨される機器中での高レベルの擦り傷欠陥と関連してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
比較的高い速度での窒化ケイ素の除去を提供し、そしてポリケイ素に対する窒化ケイ素の選択的な除去のための新規な研磨方法および組成物を開発することへの継続したニーズがある。本発明は、これらの継続的なニーズに対処する。本発明のこれらおよび他の利点、ならびに追加の発明の特徴は、本明細書中に提供された本発明の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化学的機械的研磨(CMP)プロセスにおける基材の表面からの窒化ケイ素の除去に好適な(例えば、2〜6のpHを有する)酸性水性研磨組成物を提供する。この組成物は、少なくとも1種の粒子状セリア研削剤と、少なくとも1種の非ポリマー不飽和窒素複素環(UNH)化合物と、任意選択的に少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、任意選択的にポリオキシアルキレンポリマーと、水性キャリアーとを含むか、本質的に成るか、またはからなる。このカチオン性ポリマーは、好ましくは、ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、第四級アンモニウム置換アクリレートポリマー、第四級アンモニウム置換メタクリレートポリマー、または2種または3種以上のそうしたカチオン性ポリマーの組み合わせから選択される。さらに好ましくは、このカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム置換ポリマーまたは第四級アンモニウム置換ポリマーとポリ(4−ビニルピリジン)等のポリ(ビニルピリジン)ポリマーとの組み合わせを含む。UNH化合物は、5員環または6−員環中に並べられた炭素原子および窒素原子からなる複素環構造(環は2つの炭素原子、2つの窒素原子、または炭素原子と窒素原子の間に少なくとも1つの二重結合を含む)を含む有機化合物である。好ましくは、複素環は、(アルキル化窒素を有するピリジン化合物、すなわち、ピリジニウム基を含む)ピリジン基、ピラゾール基、ピラジン基、ピリジジン(pyridizine)基、およびその同類のもの等のヘテロ芳香族基である。一種の好ましいタイプのUNH化合物は、ピリジン化合物である。
【0012】
1つの好ましい態様において、CMP組成物は、(a)0.01〜10wt% (質量%)の少なくとも1種の粒子状セリア研削剤(例えば、焼成セリア)と、(b)10〜100、000ppmの少なくとも1種の非ポリマーのUNH化合物(例えば、4、4'−トリメチレンジピリジン)と、(c)0〜100、000百万分の一(ppm)の少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、(d)0〜200、000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマーと、(e)それらのための水性キャリアーとを含むか、から本質的に成るか、からなる。
【0013】
別の好ましい態様では、CMP組成物は、2〜6のpHを有し、そして(a)0.05〜5wt%の少なくとも1種の粒子状セリア研削剤、(b)10〜10、000ppmの4、4’−トリメチレンジピリジンと、(c)ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、第四級アンモニウム置換アクリレートポリマー、第四級アンモニウム置換メタクリレートポリマー、または先のカチオン性ポリマーのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、10〜10、000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマーと、(d)ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される、200〜20、000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマーと、(e)それらのための水性キャリアーとを含むか、本質的に成るか、からなる。
【0014】
いくつかの好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、200〜2000、さらに好ましくは、300〜1500モノマー単位の範囲のエチレングリコールモノマー単位の平均数を有するポリ(エチレングリコール)ポリマー(すなわち、PEG)を含むか、から本質的に成るか、からなる。他の好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−末端キャップポリ(プロピレングリコール)、すなわち、PEG−PPG−PEGブロックコポリマー等のポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロックコポリマーを含む。
【0015】
別の形態では、本発明は、本明細書中に記載されたCMP組成物を用いて窒化ケイ素含有基材を研磨し、ポリケイ素に対して窒化ケイ素を選択的に除去するための化学的機械的研磨方法を提供する。好ましい方法は、基材表面の少なくとも一部分を研削するのに充分な時間の間、パッドと基材との間の表面と研磨組成物の一部分とを接触させながら、窒化ケイ素含有基材の表面と研磨パッドおよび水性研磨組成物とを接触させ、そして研磨パッドと基材との間に相対的な動きを生じさせるステップを含むか、から本質的に成るか、からなる。研磨組成物は、本明細書中に記載されたように、使用の際に、0.01〜2wt%のセリア研削剤と、10〜1000ppmの非ポリマーのUNH化合物と、0〜1000ppmのカチオン性ポリマーと、0〜2000ppmのポリオキシアルキレンポリマーと、水性キャリアーとを含む。
【0016】
本発明の組成物は、高い窒化ケイ素除去速度、低いポリケイ素除去速度、および低くから高くに調整できる酸化ケイ素除去速度の利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の選択された組成物を用いてブランケットウェハーを研磨することによって得られた酸化ケイ素(酸化物)、ポリケイ素(ポリSi)、および窒化ケイ素(窒化物)のための除去速度のグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、窒化ケイ素を含有する表面を研磨するための組成物および方法を提供する。好ましい態様では、本発明の組成物は、0.01〜10wt%の少なくとも粒子状のセリア研削剤と、10〜100、000ppmの少なくとも1種の非ポリマーのUNH化合物と、0〜100、000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー(好ましくは少なくとも10ppm)と、0〜200、000ppmの少なくとも1種のポリオキシアルキレンポリマー(好ましくは少なくとも10ppm)とを含む酸性水性キャリアーを含む。
【0019】
粒子状のセリア研削剤は、0.01〜10wt%の範囲の濃度で研磨組成物中に存在できる。好ましくは、セリアは、0.05〜5wt%の範囲の濃度でCMP研磨組成物中に存在する。使用の際に、セリア研削剤は、好ましくは、0.01〜2wt%、さらに好ましくは、0.05〜0.5wt% (例えば、0.1〜0.3wt%)の濃度で存在する。研削剤粒子は、好ましくは、周知技術であるレーザー光散乱技術によって決定されるように、30nm〜200nm、さらに好ましくは、75nm〜125nmの範囲の平均粒径を有する。好ましくは、セリアは、焼成セリアを含むか、から本質的に成るか、からなる。任意選択的に、セリアは、水和したセリアを含むことができるか、から本質的に成ることができるか、からなることができる。
【0020】
粒子状研削剤は、望ましくは、研磨組成物中に懸濁されており、さらに具体的に言うと、研磨組成物の水性キャリアー成分中に懸濁されている。研削剤が研磨組成物中に懸濁される場合、好ましくはコロイド的に安定である。用語「コロイド」は、液体キャリアー中での研削剤粒子の懸濁液をいう。「コロイド安定性」は、長い間その懸濁液を保つことをいう。この発明内容において、セリア懸濁液が100mL目盛り付きのシリンダーに入れられ、そして2時間の間攪拌なしで静置させられた場合、目盛り付きのシリンダー(g/mLを単位とする[B])の底50mLの粒子の濃度と、目盛り付きのシリンダー(g/mLを単位とする[T])の上部50mLの粒子の濃度との差を、研削剤組成物中での(g/mLを単位とする[C])粒子の全濃度で割った値が0.5以下(すなわち、([B]−[T])/[C]≦0.5)である場合、セリア懸濁液は、コロイド的に安定と考えられる。([B]−[T])/[C]の値は、望ましくは0.3以下、および好ましくは0.1以下である。
【0021】
本明細書中で使用される場合および付属の請求項において、用語「焼成セリア」は、水和した酸化セリウムまたは分解性前駆体塩または炭酸セリウムカーボネート、水酸化セリウム、およびその同類のもの等の塩の混合物を加熱(焼成)することによって生成されるセリウム(IV)オキサイド材料をいう。水和した酸化セリウムの場合、材料は、酸化セリウム材料から水和水を除去するのに充分な温度(例えば、600℃以上の温度)において加熱される。前駆体塩の場合、塩は、前駆体の分解温度(例えば、600℃以上)で加熱されてCeO
2(セリア)を生成し、そして存在するかまたは生成される場合があるなんらかの水を同時に放出する。セリアは、当該技術分野で知られているように必要に応じて、LaおよびNd等の安定化量のドーパント材料を含むことができる。典型的には、焼成セリア粒子は、高度の結晶である。焼成セリアを調製する方法は周知技術である。組成物中での研削剤の濃度は、0.01〜10wt%(wt%)、好ましくは0.05〜5wt%である。
【0022】
好ましくは、組成物中の研削剤の濃度は、本方法における使用の時点で、0.01〜2wt%、さらに好ましくは、0.05〜0.5wt%の範囲にある。組成物中での少なくとも1種のカチオン性ポリマーの濃度は、0(好ましくは10ppm)〜100、000ppm、さらに好ましくは、10ppm〜10、000ppmの範囲である。使用の時点で、組成物は、好ましくは、0(好ましくは10ppm)〜1000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含み、さらに好ましくは、10ppm〜100ppmのそれぞれのカチオン性ポリマーが存在する。非ポリマーのUNH化合物の濃度は、10〜100、000ppm、好ましくは10〜1000ppmの範囲である。好ましくは、組成物は、使用の時点で、10〜300ppmの非ポリマーのUNH化合物、さらに好ましくは、10〜100ppmの非ポリマーのUNH化合物を含む。好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、組成物中に、10〜200、000ppm、さらに好ましくは、200〜100、000ppmの範囲の濃度で存在する。使用の時点で、組成物は、好ましくは、10ppm〜2000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、さらに好ましくは、200ppm〜1000ppmのポリオキシアルキレンポリマーを含む。
【0023】
本発明の組成物は、酸性であり、そして好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜5の範囲にあるpHを有する。組成物の酸性度は、任意の無機酸または有機酸であることができる、酸性成分を含むバッファー材料を含むことによって達成でき、そして/または維持されることができる。いくつかの好ましい態様では、酸性成分は、無機酸、カルボン酸、有機ホスホン酸、酸性複素環化合物、それらの塩、または2種または3種以上の先のものの組み合わせであることができる。好適な無機酸の非限定の例は、塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、亜硫酸、およびテトラホウ酸、またはそれらの任意の酸性塩を含む。好適なカルボン酸の非限定の例は、モノカルボン酸(例えば、酢酸、安息香酸、フェニル酢酸、1−ナフトエ酸(1−naphthoic acid)、2−ナフトエ酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マンデル酸、およびその同類のもの)、およびポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、2、3、4−ブタンテトラカルボン酸、イタコン酸、およびその同類のもの)、またはそれらの任意の酸性塩を含む。好適な有機ホスホン酸の非限定の例は、ホスホノ酢酸、イミノジ(メチルホスホン酸)、DEQUEST(商標)2000LCブランドのアミノトリ(メチレンホスホン酸)、およびDEQUEST(商標)2010ブランドのヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、(いずれもSolutiaから入手可能である)、またはそれらの任意の酸性塩を含む。好適な酸性複素環化合物の非限定の例は、尿酸、アスコルビン酸、およびその同類のもの、またはそれらの任意の酸性塩を含む。
【0024】
いくつかの態様において、カチオン性ポリマー成分は、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ビニルピリジンコポリマー、およびその同類のもの等のポリ(ビニルピリジン)ポリマーを含むか、から本質的に成るか、からなる。本発明の組成物および方法中で有用なビニルピリジンコポリマーは、少なくとも1種のビニルピリジンモノマー(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、または両者)を含むコポリマーおよび非イオン性モノマーおよびカチオン性モノマーから選択される少なくとも1種のコモノマーを含む。非イオン性コモノマーの非限定の例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、およびスチレンを含む。カチオン性コモノマーの非限定の例は、ジアリルアミン、ジメチルジアリルアミン、2−ビニル−N−メチルピリジニウムハロゲン化物(例えば、クロライド)、4−ビニル−N−メチルピリジニウムハロゲン化物(例えば、クロライド)、2−(ジエチルアミノエチル)スチレン、2−(N、N−ジエチルアミノエチル)アクリレート、2−(N、N−ジエチルアミノエチル)メタクリレート、N−(2−(N、N−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−(N、N−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、先のもののいずれかの塩(例えば、塩酸塩)、先のもののいずれかのN−四級化誘導体(例えば、N−メチル四級化誘導体)、およびその同類のものを含む。さらに、コポリマーが全体的なカチオン電荷を保持するようにアニオン性モノマーのカチオン性モノマーに対する比がなっている限り、比較的小さい比率のアニオン性モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、およびその同類のもの)をコポリマーに含むことができる。
【0025】
いくつかの他の態様において、カチオン性ポリマー成分は、第四級アンモニウム置換アクリレートまたはメタクリレートポリマー等の第四級アンモニウム置換ポリマーを含むか、から本質的に成るか、からなる。そうした第四級アンモニウム置換アクリレートまたはメタクリレートポリマーの非限定の例は、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物)ポリマー、ポリ(アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物)ポリマー、ポリ(メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムハロゲン化物)ポリマー、ポリ(アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムハロゲン化物)ポリマー、およびその同類のものを含む。好ましくは、第四級アンモニウム基のハロゲン化物対イオンは、クロライドである。
【0026】
カチオン性ポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。典型的には、研磨組成物は、5kDa以上(例えば、10kDa以上、20kDa以上、30kDa以上、40kDa以上、50kDa以上、または60kDa以上)のカチオン性ポリマーの質量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含む。研磨組成物は、好ましくは、100kDa以下(例えば、80kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、または50kDa以下)の分子量を有するカチオン性ポリマーを含む。好ましくは、研磨組成物は、5kDa〜100kDa (例えば、10kDa〜80kDa、10kDa〜70kDa、または15kDa〜70kDa)の分子量を有するカチオン性ポリマーを含む。
【0027】
ポリ(アルキレングリコール)としてまた知られているポリオキシアルキレン成分は、複数のオキシアルキレンモノマー単位(すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびその同類のもの等のアルキレングリコールモノマー単位)を含むホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ブロックまたはランダムコポリマー)であることができる。例えば、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)コポリマー(EO/POブロックコポリマー)、およびその同類のものであることができる。ポリオキシアルキレンポリマーは、好ましくは、平均して、20〜2000モノマー単位(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびその同類のもの)、さらに好ましくは、200〜2000モノマー単位(例えば、300〜1500モノマー単位)を含む。そうしたポリマーは、しばしば業界内でポリマーのタイプおよびモノマー単位の平均数、例えば、ポリ(エチレングリコール)−300、略称PEG−300で呼ばれる(これは、300エチレングリコール(CH
2CH
2O)単位の平均を有し、したがって300×44=13200ダルトンの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)ポリマーをいう)。
【0028】
1つの好ましい態様において、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリオキシエチレンポリマー、すなわち、ポリ(エチレングリコール)ポリマーである。他の好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、PEG−PPG−PEGブロックコポリマー、例えば、BASFからのPLURONIC L31(これは、約1100〜1200の数平均分子量を有し、そして16のプロピレングリコール単位の平均を有するPPGコア、そのそれぞれの終端上を2のエチレングリコールモノマー単位の平均でキャップしていると報告されている)等のポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)コポリマーブロックコポリマーを含む。
【0029】
非ポリマー不飽和窒素複素環化合物は、5員環または6員環中に並べられた炭素原子および窒素原子からなる複素環構造(この環は2つの炭素、2つの窒素、または炭素と窒素との間に少なくとも1つの二重結合を含む)を含む任意の有機化合物であることができる。そうした非ポリマー不飽和窒素複素環化合物の非限定の例は、ピリジン化合物(例えば、ピリジン、1、3−ビス(4−ピリジル)プロパン、
2−フェニル−1、3−ジ(4−ピリジニル)−2−プロパノール、1、2−ビス(4−ピリジル)エタン、1、2−ビス(4−ピリジル)−1、2−エタンジオール、およびその同類のもの)、ピリジニウム化合物、(例えば、1−エチルピリジニウムクロライド、1−ベンジルピリジニウムブロマイド、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム、ヨウ化4−メチル−1−プロピルピリジニウム、ヨウ化1−エチル−4−(メトキシカルボニル)ピリジニウム、ヨウ化1、4−ジメチルピリジニウム、二塩化パラコート、1−(4−ピリジル)ピリジニウムクロライド、二ヨウ化エチルバイオロジェン(viologen)、p−キシレンビス(N−ピリジニウムブロマイド)、1、1’−テトラメチレンビス(ピリジニウムクロライド)、およびその同類のもの等のピリジニウム塩(例えばハロゲン化物塩))、ピアゾール(pyazole)化合物、ピラジン化合物、およびピリダジン化合物を含む。いくつかの好ましい態様では、非ポリマーのUNH化合物は、ピリジン化合物、特に(1、3−ビス(4−ピリジル)プロパンとしてもまた知られている)4、4'−トリメチレンジピリジンを含むか、から本質的に成るか、からなる。
【0030】
本発明の組成物および方法は、ポリケイ素の除去にかけての有用な窒化ケイ素除去速度および窒化ケイ素の除去のための選択性を提供する。本発明の組成物はまた、異なる濃度のカチオン性ポリマー、非ポリマーのUNH化合物、およびEO/POブロックコポリマーを利用することによって主として酸化ケイ素除去の異なる速度を提供するように調整できる。いくつかの特に好ましい態様において、窒化ケイ素またはポリケイ素ブランケットウェハーの研磨が、テーブルトップCMP研磨機上において、それぞれ、3ポンド/平方インチ(psi)の下方力、100回転/分(回転/分)のプラテン速度、101回転/分のキャリアー速度、およびD100研磨パッドを用いて150ミリリッター/分(mL/分)の研磨スラリー流量の場合、窒化ケイ素の除去速度は、700オングストローム/分(Å/分)以上であり、かつ(典型的には100Å/m未満)150Å/m未満のポリケイ素除去である。酸化ケイ素の除去速度は、典型的にはポリ(ビニルピリジン)および/または非ポリマーのUNH化合物の濃度、およびPLURONIC(商標)L31(BASF)等のEO/POブロックコポリマーの存在または不存在による同じ条件下で100Å/分〜2000Å/分の範囲である。カチオン性ポリマーおよび非ポリマーのUNH化合物の濃度がより低いと、典型的には酸化ケイ素除去速度が穏やかになり、一方、酸化ケイ素除去速度は、カチオン性ポリマーおよび非ポリマーのUNH化合物の量を高めることで高くなる傾向がある。EO/POブロックコポリマー(例えば、500ppmのPLURONIC(商標)L31)の存在は、3〜5のpH値において低い酸化ケイ素除去速度を与える傾向がある。
【0031】
本発明の研磨組成物は、任意選択的に(例えば、金属成分等の半導体表面の成分を酸化するために)1種または2種以上の酸化剤を含むことができる。本発明の研磨組成物および方法における使用のために好適な酸化剤は、制限なく、過酸化水素、パーサルフェート塩(例えば、アンモニウムモノパーサルフェート、アンモニウムジパーサルフェート、カリウムモノパーサルフェート、およびカリウムジパーサルフェート)、パーアイオデート塩(例えば、カリウムパーアイオデート)、それらの塩、およびそれらの2種または3種以上の組み合わせを含む。好ましくは、酸化剤は、半導体CMP技術分野で周知であるように、半導体ウェハー中で存在する1種または2種以上の選択された金属性または半導体材料を酸化するのに充分な量で組成物中に存在する。
【0032】
本発明の研磨組成物はまた、任意選択的に、金属錯化剤、腐食防止剤、粘度改質剤、殺生剤、およびその同類のもの等の研磨組成物中に通常含まれる好適な量の1種または2種以上の他の添加物材料を含むことができる。
【0033】
好ましい態様において、研磨組成物は、殺菌性量の殺生剤(例えば、ロームアンドハースから入手可能なKATHON(商標)殺生剤等のイソチアゾリノン組成物)をさらに含む。
【0034】
水性キャリアーは、任意の水性溶媒、例えば、水、水性メタノール、水性エタノール、それらの組み合わせ、およびその同類のものであることができる。好ましくは、水性キャリアーは、主に脱イオン水を含む。
【0035】
本発明の研磨組成物は、その多くが当業者に知られている任意の好適な技術によって調製できる。研磨組成物は、バッチまたは連続的プロセスで調製できる。通常、研磨組成物は、これらの成分を任意の順序で組み合わせることにより調製できる。用語「成分」は、本明細書中で使用される場合、個々の成分(例えば、セリア、酸、UNH化合物、ポリマー、バッファー、酸化剤、およびその同類のもの)、および成分の任意の組み合わせを含む。例えば、セリア研削剤は、ポリマー成分と混合した水中に分散でき、そしてこの成分を研磨組成物中に取り込むことができる任意の方法により混合できる。典型的には、酸化剤は、利用される場合、組成物がCMPプロセスにおける使用のために準備ができるまで研磨組成物に加えられず、例えば、酸化剤は、研磨開始のちょうど前に加えられることができる。pHは、必要に応じて、酸または塩基の添加により任意の好適な時間においてさらに調整できる。
【0036】
本発明の研磨組成物はまた、濃縮物として提供されることができ、これは使用の前に適当な量の水性溶媒(例えば、水)を用いて希釈されることを目的とする。そうした態様では、研磨組成物濃縮物は、適当な量の水性溶媒を用いて濃縮物の希釈により、研磨組成物のそれぞれの成分が使用のための適当な範囲内の量で研磨組成物中に存在できるであろうような量で水性溶媒中に分散したまたは溶解された種々の成分を含むことができる。
【0037】
本発明はまた、例えば、ポリケイ素の除去に対し窒化ケイ素の選択的な除去のための、窒化ケイ素基材を化学的機械的に研磨する方法をまた提供する。この方法は、(i)本明細書中に記載されたように、窒化ケイ素含有基材の表面と、研磨パッドおよび本発明の研磨組成物とを接触させることと、(ii)パッドと基材表面との間の研磨組成物の少なくとも一部分を保持しながら、相互に対して研磨パッドおよび基材の表面を動かすこと、それによって表面の少なくとも一部分を研削し、基材を研磨することを含む。
【0038】
本発明の研磨組成物は、任意の好適な基材を研磨するために使用でき、そして窒化ケイ素を含む基材、および窒化ケイ素およびポリケイ素および/または酸化ケイ素を含む基材を研磨するために特に有用である。本発明の組成物は、過度の擦り傷欠陥を避けるのに充分低い研削剤レベルで比較的高い窒化ケイ素除去速度を提供する。特に、CMP組成物の調合物およびpHは、窒化ケイ素除去速度を変更するように変えることができる。さらに、窒化ケイ素除去の相対的な速度は、ポリケイ素および酸化ケイ素の除去のための速度を超える。この選択性は、比較的狭い酸化物線幅を有する今日の半導体材料の研磨における使用のためのさらなる資産である。
【0039】
本発明の研磨組成物は、化学的機械的研磨装置と連動した使用のために特に適する。典型的には、CMP装置は、プラテン(これは使用の際に動いており、そして軌道、直線および/または巡回する動きの結果速度を有する)、プラテンと接触している研磨パッドおよび(動いている場合)プラテンに対する動き、および研磨パッドの表面に接触させ、そして研磨パッドの表面に対して動かすことによって研磨される基材を保持するキャリアーを含む。基材の研磨は、研磨パッドおよび本発明の研磨組成物と接触して基材を配置すること、そして次に基材に対して研磨パッドを動かし、基材の少なくとも一部分を研削し基材を研磨することによって、起こる。
【0040】
任意の好適な研磨表面(例えば、研磨パッド)を使用して本発明の研磨組成物を用いて基材を平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドは、例えば、織布および不織研磨パッド、溝を有するまたは溝を有さないパッド、多孔質または無孔性パッド、およびその同類のものを含む。さらに、好適な研磨パッドは、種々の密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮に反発する能力、および圧縮係数の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーは、例えば、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形化された製品、およびそれらの混合物を含む。
【0041】
望ましくは、CMP装置は、その多くが当該技術分野で知られているin situ研磨終点検出システムをさらに含む。加工対象物の表面から反射された光または他の放射線を分析することによって研磨プロセスを検査し、そして監視するための技術が当該技術分野で知られている。そうした方法は、例えば、Sandhuらの米国特許第5、196、353号明細書、Lustigらの米国特許第5、433、651号明細書、Tangの米国特許第5、949、927号明細書、およびBirangら米国特許第5、964、643号明細書に記載されている。望ましくは、研磨される加工対象物に対する研磨プロセスの進行の検査または監視は、研磨終点の決定、すなわち、特別な加工対象物に対する研磨プロセスをいつ終了させるかの決定を可能にする。
【0042】
以下の例は、本発明のある面をさらに具体的に示すが、もちろん、いかなる様式においてもその範囲を限定すると解してはならない。本明細書中および以下の例および請求項で使用される場合、部/百万分の一(ppm)として報告される濃度は、(例えば、1キログラムの組成物当たりミリグラムの成分としての)組成物の質量によって割った対象の活性成分の質量に基づく。
【実施例】
【0043】
例1
この例は、カチオン性ポリマーおよび非ポリマーのUNH化合物の窒化ケイ素の除去、ポリケイ素、および酸化ケイ素への効果を具体的に示す。
【0044】
研磨組成物は、D100研磨パッドを用いたMirra200mm CMP装置上の窒化ケイ素、酸化ケイ素、およびポリケイ素ブランケットウェハーを化学的機械的に別々に研磨するために使用された。それぞれの研磨組成物は、pH4の脱イオン水中に0.2wt%焼成セリア(Advanced Nano Products Co.、Ltd.、「ANP」、100nmの平均粒径)の水性スラリーを含んでいた。CMP組成物の追加の成分を表1に示し、ここで「Quat」は、Alco Chemical(Alco 4773)からのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)をいい; p(4−PV)は、ポリ(4−ビニルピリジン)をいい; TMDPは4、4'−トリメチレンジピリジンをいい;そしてPEG1450は、1450ダルトンの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)をいう。
【表1】
【0045】
それぞれの組成物は、窒化ケイ素、ポリケイ素、およびプラズマ増強テトラエチルオルトシリケート誘導二酸化ケイ素(PETEOS)の200mm直径ブランケットウェハーを、3psiの下方力(DF)、101回転/分の研磨ヘッド速度(HS)、100回転/分のプラテン速度(PS)、および150mL/分のスラリー流量で別々に研磨するように使用した。窒化ケイ素(窒化物)、ポリケイ素(ポリSi)およびPETEOS(酸化物)でのÅ/分で観察された除去速度(RR)を表2および
図1に示す。
【表2】
【0046】
表2および
図1における結果は、第四級アンモニウム置換ポリマーまたはポリ(ビニルピリジン)および第四級アンモニウム置換ポリマーの組み合わせを含む本発明の組成物が特定の研磨条件下で、非常に良好な窒化物除去速度(>800Å/分)、低いポリケイ素除去速度(<110Å/分)、および中〜高の酸化物除去速度(371〜1407Å/分)を提供することを示した。TMDPを用いた組成物は、非ポリマーのUNH化合物(754Å/分)を有さない組成物と比較して、高められた窒化物除去速度894〜908Å/分)を有した。ポリ(4−ビニルピリジン)を含むが、第四級アンモニウム置換ポリマーを有さない組成物は、低い窒化物除去速度を提供した。
【0047】
例2
ポリ(4−ビニルピリジン)を有さない追加の調合物の評価を、POLITEX(商標)パッドを用いたMirra研磨機で、3psiの下方圧力、101回転/分の研磨ヘッド速度(HS)、100回転/分のプラテン速度(PS)、および150mL/分のスラリー流量で行った。それぞれの試験された組成物を、例1の脱イオン水中焼成セリアを用いて調製し、そしてこの組成物はpH4を有した。調合物の種々の成分の濃度を表3に示し、一方、窒化物、ポリケイ素および酸化物で観察されたÅ/分での研磨速度を表4に示す。表3および表4のそれぞれにおいて、略称は例1で使用されたものと同じである。
【表3】
【表4】
【0048】
表4中のデータに示すように、全ての組成物は、高い酸化物除去速度を示した。800Å/分未満である第四級ポリマーのない対照(2A、2E、2Fおよび2H)と比較すると、第四級ポリマーを含む本発明の組成物での除去速度は、全て1000Å/分超であった。本発明の全ての組成物は100Å/分未満の低いポリケイ素除去速度をまた示した。
【0049】
例3
この例は、本発明のCMP組成物中に、PEG1450に加えてEO/POブロックコポリマーを含む効果を具体的に示す。評価を、D100パッドを用いたMirra研磨機で、3psiの下方圧力、101回転/分の研磨ヘッド速度(HS)、100回転/分のプラテン速度(PS)、および150mL/分のスラリー流量で行った。それぞれの試験された組成物を、例1におけるように脱イオン水中焼成セリアを用いて調製し、そしてこの組成物は、例えば3Kおよび3L(これらはpH2.3を有した)を除きpH4を有した。調合物の種々の成分の濃度を表5中に示し、一方、窒化物、ポリケイ素および酸化物でのÅ/分での観察された研磨速度を表6に示した。表5および表6のそれぞれにおいて、L31は、PLURONIC(商標) L31界面活性剤(BASF)をいい、そして残りの略称は例1で使用されたものと同じである。
【表5】
【表6】
【0050】
表6中の結果は、ポリケイ素に対する窒化物の除去での高いレベルの選択性を示した。窒化物除去速度は、0.1wt%セリアのみを用いてさえ、全て1000Å/分超であった。pH4では、EO/POブロックコポリマーを含むと酸化物除去速度が驚く程さらに低下し、そして酸化物より窒化物のより大きな選択性を提供し、一方、pH2.3(例3Kおよび3L)では、酸化物除去速度は、1300Å/分超であった。