(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1タンク部の前記処理対象液内において、前記スラッジの一部が下部に集まることにより、前記スラッジの多い領域が形成される、請求項1に記載のクーラント再生装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るクーラント再生装置1について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るクーラント再生装置1の概略構成を示す図である。例えば、クーラント再生装置1は、製品の製造工程において使用された使用済みクーラントを再利用できるように再生処理するための装置である。使用済みクーラントとしては、シリコン材料を切断する際に発生するシリコン切削屑を含む使用済みシリコンクーラントを例示できるが、これに限られない。
【0012】
具体的に、シリコンクーラントは、例えば、ワイヤーソー切断装置を利用してブロック状のシリコンインゴット(シリコン材料)を予め規定されたサイズに切断するスライシング工程において用いられる。スライシング工程で使用されるクーラントは、例えばジエチレングリコール、水、その他添加剤などを含む液体が用いられるが、これに限られない。スライシング工程で使用された後の使用済みクーラントSには、シリコン切削屑が含まれる。使用済みクーラントSは、クーラント再生装置1によって再利用可能な状態に再生された再生クーラントS1と、シリコン切削屑を含むスラッジS2とに分離される。
【0013】
図1に示すように、クーラント再生装置1は、原液タンク10と、処理タンク11と、遠心分離機12と、膜分離ユニット13と、濾過液タンク14と、再生液タンク15と、制御部4とを備えている。また、クーラント再生装置1は、複数の配管90〜99と、複数のポンプP1〜P4とを備えている。なお、クーラント再生装置1は、
図1に示す具体例に限定されるものではなく、必要に応じて、一部のタンク、一部の配管、一部のポンプなどを省略することもできる。
【0014】
原液タンク10は、回収された使用済みクーラントSを貯留するための容器である。原液タンク10には、原液タンク10に接続された配管90を通じて使用済みクーラントSが流入する。また、原液タンク10内に貯留されている使用済みクーラントSは、ポンプP1が設けられた配管91を通じて処理タンク11(具体的には、処理タンク11の第1タンク部11A)に送られる。
【0015】
処理タンク11は、原液タンク10から送液された使用済みクーラントSを貯留するための容器である。本実施形態に係るクーラント再生装置1では、処理タンク11は、第1タンク部11Aと、第2タンク部11Bとを備える。
【0016】
本実施形態では、第1タンク部11A内の処理対象液は、原液タンク10から流入する使用済みクーラントSと、遠心分離機12から流入するドレン液と、膜分離ユニット13から流入する濃縮液とを含む混合液である。すなわち、第1タンク部11Aに流入するこれらの液は、何れもスラッジの含有量が高い液、すなわちSS(suspended substance)濃度が高い液である。したがって、第1タンク部11A内の処理対象液は、全体としてSS濃度が高い。
【0017】
また、第2タンク部11B内の処理対象液は、第1タンク部11Aから流入する処理対象液と、遠心分離機12から流入する遠心分離液とを含む混合液である。遠心分離液は、スラッジの含有量が低い液、すなわちSS濃度が低い液である。また、第1タンク部11Aから流入する処理対象液は、後述するように第1タンク部11Aにおけるスラッジの少ない領域から流入する液である。したがって、第2タンク部11B内の処理対象液は、全体としてSS濃度が低い。
【0018】
処理タンク11を中心とした液の流れは次の通りである。第1タンク部11A内の処理対象液は、ポンプP2が設けられた配管92を通じて遠心分離機12に送られる。遠心分離機12は、処理対象液を遠心分離液とスラッジとに分離する。遠心分離液は、遠心分離機12における遠心分離処理によってスラッジの含有量が低減された液である。
【0019】
遠心分離機12において遠心分離処理された遠心分離液は、配管93を通じて第2タンク部11Bに戻される。遠心分離機12において分離されたスラッジS2は、遠心分離機12から排出される。また、第1タンク部11Aには、配管94を通じて遠心分離機12からのドレン液が戻される。ドレン液は、例えば遠心分離機12の内部を洗浄することによって生じる液(廃液)である。具体的に、遠心分離機12の内部は、例えば処理タンク11に貯留されている処理対象液が遠心分離機12の内部に供給されて散布されることによって洗浄される。したがって、ドレン液は、かたまり(ダマ)になったスラッジを比較的多く含んでいる。
【0020】
第2タンク部11B内の処理対象液は、ポンプP3が設けられた配管95を通じて膜分離ユニット13に送られる。膜分離ユニット13は、処理対象液を膜濾過液と濃縮液とに分離する。膜濾過液は、膜分離ユニット13の膜を通過してスラッジが除去された液である。濃縮液は、膜分離ユニット13における膜分離処理によって膜濾過液と分離された液(スラッジの含有量が多い液)であり、シリコン切削屑を含む。濃縮液は、かたまり(ダマ)になったスラッジS2を比較的多く含んでいる。
【0021】
膜分離ユニット13において膜分離処理された膜濾過液は、配管97を通じて濾過液タンク14に送られる。膜分離ユニット13において膜分離処理された濃縮液は、配管96を通じて第1タンク部11Aに戻される。
【0022】
濾過液タンク14は、膜分離ユニット13において膜分離処理された膜濾過液S1(回収液S1)を貯留する容器である。膜分離ユニット13の濾液用開口13cから流出した膜濾過液S1は、配管97を通じて濾過液タンク14に送られる。
【0023】
再生液タンク15は、濾過液タンク14から送液された膜濾過液S1(回収液S1)を貯留する容器である。濾過液タンク14内の膜濾過液S1は、ポンプP4が設けられた配管98を通じて再生液タンク15に送られる。再生液タンク15に貯留された膜濾過液S1(回収液S1)は、配管99を通じて次工程(例えばシリコンインゴットのスライシング工程など)に送られ、再利用される。
【0024】
遠心分離機12は、回転体(回転釜)の回転軸の方向が上下方向に向いた縦型タイプの装置(縦型遠心分離機)であるが、これに限られず、例えば回転体の回転軸の方向が水平方向に向いた横型タイプの装置(横型遠心分離機)などであってもよい。
【0025】
膜分離ユニット13は、処理対象液を膜濾過液と、濃縮液とに分離するクロスフロータイプであるが、これに限られない。膜分離ユニット13は、例えば細長い形状の筐体内に中空糸膜が設けられた構造を採用できるが、これに限られない。膜分離ユニット13は、使用済みクーラントSから切削屑などを除去することができるものであればよく、中空糸膜以外の他の分離膜が筐体内に設けられた構造であってもよい。
【0026】
膜分離ユニット13には、配管接続部13a,13bを通じて液が出入りする。また、膜分離ユニット13の筐体の側面には、筐体の内部空間(中空糸膜の外側空間)と筐体外部とを連通させる濾液用開口13cが形成されている。中空糸膜を通して濾過された膜濾過液は、この濾液用開口13cを通して筐体の外部に導出される。
【0027】
膜分離ユニット13を使用することによって、中空糸膜を通過した膜濾過液S1と、中空糸膜を通過することのできなかったシリコン切削屑を含む濃縮液とに分離することができる。なお、この濾液用開口13cを利用して、逆洗用流体を膜分離ユニット13内に導入することができるように構成されていてもよい。逆洗時に逆洗用流体を膜分離ユニット13内に導入する場合には、例えば配管97に設けられる図略のポンプを用いることができる。また、逆洗時に逆洗用流体を膜分離ユニット13内に導入するために別途設けられた図略の配管とポンプを用いてもよい。
【0028】
また、膜分離ユニット13は、送液方向を切り換える機構を備える。具体的に、この送液方向切換機構は、複数の弁13vと、これらの弁13vを接続する配管13pとを備える。制御部4によって弁13vの開閉動作が制御されることによって、膜分離ユニット13内を流れる液の送液方向を切り換えることができる。
【0029】
本実施形態では、第2タンク部11Bの処理対象液が膜分離ユニット13に送られる配管95に1つ又は複数の除去機構が設けられている。
図1の実施形態では、除去機構として、ストレーナー21と、スラッジ微粒化機構22とが設けられている。
【0030】
ストレーナー21は、処理対象液から固形成分を取り除くための網状部を有する。本実施形態では、ストレーナー21は、ポンプP3よりも上流側に設けられている。
【0031】
スラッジ微粒化機構22は、処理対象液が内部を流れる際の衝突によるエネルギー、剪断力などによって、スラッジのかたまりを微粒化するためのものである。スラッジ微粒化機構22としては、例えば吉田機械興業株式会社製「ダマトリ」などを用いることができる。
【0032】
制御部4は、図略の中央演算処理装置(CPU)、メモリなどを備える。制御部4は、クーラント再生装置1の動作を制御する。具体的に、制御部4は、遠心分離機12の回転体の回転動作、複数のポンプP1〜P4の動作などを制御する。
【0033】
次に、処理タンク11の具体的な構造について説明する。
図2に示すように、本実施形態では、第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、互いに別体の容器である。ただし、第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、例えば
図3及び
図4に示すように1つの容器内を隔壁Wによって分けることによって形成されていてもよい。また、本実施形態では、
図2に示すように、第1タンク部11A及び第2タンク部11Bのそれぞれは、円柱形状を呈しているが、これに限られず、例えば直方体形状などの他の形状であってもよい。
【0034】
第1タンク部11Aでは、処理対象液内においてスラッジS2の多い領域とスラッジS2の少ない領域とが形成される。具体的に、第1タンク部11Aの処理対象液内において、スラッジS2の比重が液の比重よりも大きいことによってスラッジの一部が下部領域Lに集まることにより、スラッジS2の多い領域が形成されている。
図2は、第1タンク部11Aの底部にスラッジS2の一部が沈殿している状態を示している。
【0035】
第1タンク部11Aの処理対象液内では、下部領域Lにおけるスラッジの含有量は、上部領域Hにおけるスラッジの含有量よりも多い。また、本実施形態では、下部領域Lにおけるスラッジの含有量は、高さ方向の中部領域Mにおけるスラッジの含有量よりも多く、中部領域Mにおけるスラッジの含有量は、上部領域Hにおけるスラッジの含有量よりも多い。なお、
図2では、下部領域Lは、第1タンク部11A内の下端部(底面)から上端部(オーバーフローする位置)までの高さを3等分した領域のうちの最も下の領域であり、上部領域Hは、上記のように3等分した領域のうちの最も上の領域であり、中部領域Mは、下部領域Lと上部領域Hとの間の領域である(後述する
図3に示す変形例1においても同様である。)。
【0036】
第1タンク部11Aの処理対象液のうち上部領域Hの処理対象液が第2タンク部11Bに流入する。具体的には、本実施形態では、第2タンク部11Bは、第1タンク部11Aよりも低い位置に配置されている。そして、第1タンク部11Aからオーバーフローした処理対象液が第2タンク部11Bに流入する。
【0037】
図2に示すように第1タンク部11Aと第2タンク部11Bが互いに別体の容器である場合には、第1タンク部11Aにおける上部領域Hにある処理対象液を、例えば次のようにして第2タンク部11Bに流入させることができる。
【0038】
例えば、第1タンク部11Aは、第1タンク部11Aにおける上部領域Hの処理対象液が第1タンク部11Aの側壁の上縁からオーバーフローして第1タンク部11Aの外に流出するように構成されていてもよい。この場合、第1タンク部11Aの側壁の上縁には、処理対象液がオーバーフローする部位となるノッチ(例えばV字状のノッチ)が設けられていてもよい。
【0039】
また、第1タンク部11Aは、第1タンク部11Aにおける上部領域Hの処理対象液が、第1タンク部11Aの上壁又は側壁に設けられた開口を通じてオーバーフローして第1タンク部11Aの外に流出するように構成されていてもよい。
【0040】
そして、第1タンク部11Aの外に流出した処理対象液は、例えば、前記側壁の上縁又は前記開口から前記第2タンク部11Bに向かって延びる配管を通じて第2タンク部11Bに流入してもよい。また、前記側壁の上縁又は前記開口からオーバーフローした処理対象液が流下する位置に第2タンク部11Bが設けられている場合には、上記のような配管を省略することもできる。
【0041】
図2に示すように、第2タンク部11B内には、処理対象液を撹拌する撹拌機構23が設けられていてもよい。
【0042】
図3は、処理タンク11の変形例1を示す概略図であり、
図4は、処理タンク11の変形例2を示す概略図である。これらの変形例1,2では、処理タンク11の第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、処理タンク11内を隔壁Wによって分けることによって形成されている。
【0043】
変形例1では、第1タンク部11Aからオーバーフローした処理対象液が第2タンク部11Bに流入する。
図3に示すように、変形例1では、処理タンク11内に設けられた隔壁Wの上縁は、処理タンク11の側壁の上縁よりも低い位置(処理タンク11の上壁よりも低い位置)に設けられている。これにより、第1タンク部11Aにおける上部領域Hの処理対象液は、隔壁Wの上縁をオーバーフローして第2タンク部11Bに流入することができる。
【0044】
変形例2では、隔壁Wに1つ又は複数の貫通孔Aが設けられており、第1タンク部11Aの処理対象液は、貫通孔Aを通じて第2タンク部11Bに流入する。変形例2では、貫通孔Aは、上部領域Hに設けられている。
【0045】
図5は、処理タンク11の変形例3を示す概略図であり、
図6は、処理タンク11の変形例4を示す概略図である。
図5に示す変形例3では、処理タンク11の第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、互いに別体の容器である。
図6に示す変形例4では、処理タンク11の第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、処理タンク11内を隔壁Wによって分けることによって形成されている。これらの変形例3,4では、第1タンク部11Aの処理対象液のうち上部領域Hの処理対象液が配管100に設けられたポンプP5によって第2タンク部11Bに流入する。すなわち、変形例3,4では、第1タンク部11A内の上部領域Hにある処理対象液をポンプP5によって抜き取り、配管100を通じて第2タンク部11Bに流入させる。
【0046】
なお、
図4に示す変形例2及び
図6に示す変形例4では、下部領域Lは、隔壁Wの下端部から上端部までの高さを3等分した領域のうちの最も下の領域であり、上部領域Hは、上記のように3等分した領域のうちの最も上の領域であり、中部領域Mは、下部領域Lと上部領域Hとの間の領域である。また、
図5に示す変形例3では、下部領域Lは、第1タンク部11A内の下端部(底面)から上端部(天面)までの高さを3等分した領域のうちの最も下の領域であり、上部領域Hは、上記のように3等分した領域のうちの最も上の領域であり、中部領域Mは、下部領域Lと上部領域Hとの間の領域である。
【0047】
[実施形態のまとめ]
本実施形態では、第1タンク部11Aと第2タンク部11Bとが設けられ、第1タンク部11AにおけるスラッジS2の少ない領域の処理対象液が第2タンク部11Bに流入し、流入した処理対象液が膜分離ユニット13に流入する。すなわち、この構成では、例えば
図7に示す参考例のクーラント再生装置のように処理タンクとして1つのタンク111のみが設けられている場合に比べて、膜分離ユニット13に流入する処理対象液に含まれるスラッジS2の量を低減することができる。これにより、使用済みクーラントを再生処理するためのクーラント再生装置1における膜分離ユニット13において膜の詰まりが生じるのを抑制することができる。
【0048】
なお、膜分離ユニット13における膜の詰まりを抑制する目的で、例えば膜分離ユニット13の上流側に複数の遠心分離機を設けるという手段も考えられる。しかし、遠心分離機から排出されるスラッジには比較的多くのクーラントが含まれている。したがって、複数の遠心分離機を設けると、クーラントの回収率が低下する。これに対し、本実施形態では、遠心分離機12は1つだけ設ける一方で、上記のように第1タンク部11Aと第2タンク部11Bとを設けることによって膜分離ユニット13における膜の詰まりを抑制するので、複数の遠心分離機を設ける場合に比べてクーラントの回収率の低下を抑制することができる。ただし、本実施形態におけるクーラント再生装置1には、複数の遠心分離機12が設けられていてもよい。
【0049】
本実施形態では、第1タンク部11Aの処理対象液内において、スラッジS2の一部が下部領域Lに集まることにより、スラッジS2の多い領域が形成されるのが好ましい。この構成では、第1タンク部11Aの処理対象液内においてスラッジS2の一部が下方に沈んで集まることによってスラッジS2の多い領域が形成される。そして、これに伴って、処理対象液内の高さ方向の中央付近や上部にはスラッジS2の少ない領域が形成される。
【0050】
そして、この場合には、第1タンク部11Aの処理対象液のうち上部領域Hの処理対象液が第2タンク部11Bに流入するのが好ましい。すなわち、処理対象液内においてスラッジS2の多い領域が下部に形成される場合には、処理対象液内の上部領域ではスラッジS2が少なくなりやすい。したがって、上部領域Hの処理対象液を第2タンク部11Bに流入させることによって、第2タンク部11B内の処理対象液に含まれるスラッジS2の量をより効果的に低減できる。なお、第1タンク部11Aの処理対象液のうち上部領域Hの処理対象液が第2タンク部11Bに流入する形態としては、
図2〜
図6に示す種々の形態が例示できるが、これらに限られない。
【0051】
本実施形態では、第1タンク部11Aからオーバーフローした処理対象液が第2タンク部11Bに流入する。すなわち、処理対象液内においてスラッジS2の多い領域が下部に形成される場合には、第1タンク部11Aからオーバーフローする処理対象液に含まれるスラッジS2の量は少なくなる。したがって、オーバーフローする処理対象液を第2タンク部11Bに流入させることによって、第2タンク部11B内の処理対象液に含まれるスラッジS2の量をより効果的に低減できる。
【0052】
本実施形態では、膜分離ユニット13は、処理対象液を膜濾過液とスラッジS2の濃縮液とに分離し、濃縮液は、第1タンク部11Aに戻される。この構成では、スラッジS2が比較的多く含まれる濃縮液が第2タンク部11Bではなく第1タンク部11Aに戻されるので、第2タンク部11Bに含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0053】
本実施形態では、原液としての使用済みクーラントは、第1タンク部11Aに流入する。この構成では、スラッジS2が多く含まれる原液が第2タンク部11Bではなく第1タンク部11Aに戻されるので、第2タンク部11Bに含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0054】
本実施形態では、クーラント再生装置1は、処理対象液を遠心分離液とスラッジS2とに分離する遠心分離機12を備え、遠心分離液は、第2タンク部11Bに戻される。この構成では、遠心分離機12によってスラッジS2と分離された遠心分離液、すなわちスラッジS2の量が少ない遠心分離液を、第1タンク部11Aを経ずに、第2タンク部11Bに直接戻す。これにより、クーラント再生装置1における液の循環系において、第1タンク部11Aを経て第2タンク部11Bに流入する処理対象液の量を低減することができる。第1タンク部11Aを経て第2タンク部11Bに流入する処理対象液の量を低減することができると、スラッジの含有量が多い第1タンク部11A内の処理対象液とともに第2タンク部11Bに流入するスラッジの量を低減することができる。その結果、第2タンク部11Bの処理対象液に含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0055】
本実施形態では、遠心分離機12には、第1タンク部11Aの処理対象液が流入する。この構成では、遠心分離機12においては、処理対象液に含まれるスラッジS2の量が多い方が遠心分離の効率がよい。したがって、この構成では、第2タンク部11Bの処理対象液が遠心分離機12に流入する場合に比べて、遠心分離機12における遠心分離の効率を高めることができる。また、この構成では、第1タンク部11Aの処理対象液が遠心分離機12に送られるので、第1タンク部11Aから第2タンク部11Bに流入する処理対象液の量を低減できる。その結果、第2タンク部11Bの処理対象液に含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0056】
本実施形態では、遠心分離機12からのドレン液は、第1タンク部11Aに戻される。ドレン液は、例えば遠心分離機12において、内部の洗浄などが行われた際に排出される廃液であり、かたまり(ダマ)になったスラッジS2を比較的多く含んでいる。したがって、この構成のようにドレン液を第1タンク部11Aに戻すことにより、第2タンク部11Bに含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0057】
本実施形態では、クーラント再生装置1は、第2タンク部11Bの処理対象液が膜分離ユニット13に送られる流路においてスラッジS2の一部を除去するための除去機構を備えている。この構成では、膜分離ユニット13への流路に除去機構が設けられているので、膜分離ユニット13に送られる処理対象液に含まれるスラッジS2の量をさらに低減できる。
【0058】
本実施形態では、クーラント再生装置1は、流路に設けられたポンプP3を備え、除去機構がポンプP3よりも上流側に設けられており、ポンプP3の負荷の上昇に基づいて除去機構の閉塞状態(除去機構の詰まりの度合い)が検知される。すなわち、ポンプP3が除去機構よりも下流側に設けられている場合には、除去機構にスラッジS2が溜まるにつれて、ポンプP3の負荷が上昇する。このようなポンプP3の負荷の上昇に基づいて除去機構におけるスラッジS2の溜まり具合を検知できる。
【0059】
本実施形態では、クーラント再生装置1は、第2タンク部11Bに設けられ、処理対象液を撹拌する撹拌機構を備えている。この構成では、第2タンク部11Bの処理対象液にもスラッジS2は含まれており、そのようなスラッジS2が第2タンク部11Bの底部(具体的には底部の角)に溜まると、それがかたまり(ダマ)となることが考えられる。そこで、この構成では、第2タンク部11Bの処理対象液を撹拌機構によって撹拌することによって、第2タンク部11Bの底部にスラッジS2が溜まるのを抑制できる。
【0060】
本実施形態では、膜分離ユニット13を逆洗することによって排出された液は、第1タンク部11Aに戻される。この構成では、スラッジS2のかたまりを含むことのある逆洗時の排出液が第1タンク部11Aに戻されるので、第2タンク部11Bの処理対象液に含まれるスラッジS2が多くなるのを抑制できる。
【0061】
本実施形態では、膜分離ユニット13は、送液方向を切り換える機構を備えている。この構成では、膜分離ユニット13において送液方向を切り換えることによって、膜分離ユニット13における詰まりをさらに抑制できる。
【0062】
本実施形態では、第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、互いに別体の容器である。この構成のように第1タンク部11Aと第2タンク部11Bが別体である場合、各タンク部の形状、大きさなどの設計の自由度が高まる。例えば、タンク部が角柱形状である場合、タンク部の底部の角などにスラッジS2が溜まってそのまま滞留することがあるが、タンク部を円柱形状にすることによって、そのようなスラッジS2の滞留を抑制できる。
【0063】
変形例1,2では、第1タンク部11Aと第2タンク部11Bは、容器内を隔壁によって分けることによって形成されている。
【0064】
[その他の変形例]
以上、本発明の実施形態に係るクーラント再生装置1について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0065】
例えば、第1タンク部11Aの処理対象液内において、スラッジS2の一部が下部領域に集まることにより、スラッジの多い領域が形成される場合を例示したが、これに限られない。例えば、スラッジの比重が液の比重と同程度である場合や小さい場合には、例えば第1タンク部11A内に設けられたフィルターなどの捕獲手段によってスラッジS2を局所的に集めた領域(スラッジの多い領域)を形成することもできる。この場合、第1タンク部11A内において、捕獲手段から離れた領域(例えば捕獲手段よりも下流側の領域)は、スラッジの少ない領域となる。
【0066】
前記実施形態では、膜分離ユニット13が処理対象液を膜濾過液と濃縮液とに分離するクロスフロータイプである場合を例示したが、これに限られず、濃縮液の分離がなされない全濾過タイプであってもよい。
【0067】
前記実施形態では、遠心分離機12による遠心分離液が第2タンク部11Bに戻される場合を例示したが、これに限られず、遠心分離液は、第1タンク部11Aに戻されてもよい。
【0068】
前記実施形態では、除去機構及び撹拌機構が設けられる場合を例示したが、除去機構及び撹拌機構の一方又は両方を省略してもよい。前記実施形態では、膜分離ユニットを逆洗することによって排出された液が第1タンク部11Aに戻される場合を例示したが、このような逆洗は省略可能である。また、前記実施形態では、膜分離ユニット13が、送液方向を切り換える機構を備える場合を例示したが、この機構を省略することもできる。
【0069】
第1タンク部11Aの液面高さを検知する検知機、及び第2タンク部11Bの液面高さを検知する検知機の一方又は両方を設けてもよい。検知機によって検知される液面高さに応じて、例えば原液タンク10から処理タンク11への原液の補充のタイミングを制御することができる。
【0070】
また、第1タンク部11Aの底部には、この底部に沈殿するスラッジS2を第1タンク部11Aの外に排出するための排出口が設けられていてもよい。この場合、排出口に接続される配管には、この配管を開閉するための開閉弁が設けられていてもよい。第1タンク部11Aの底部に多くのスラッジS2が溜まると、開閉弁が開状態とされて排出口を通じてスラッジS2が第1タンク部11Aの外に排出される。
【0071】
また、前記実施形態では、クーラント再生装置1が遠心分離機12と膜分離ユニット13とを備える場合を例示したが、遠心分離機12に代えて例えばフィルタープレスが設けられていてもよい。この場合、処理タンク11(具体的には第1処理タンク部11A)に貯留されている処理対象液は、フィルタープレスに供給され、フィルタープレスにおいて分離液とスラッジ(ケーキ)とに分離される。分離された分離液は、処理タンク11(例えば第2処理タンク部11B)に戻され、スラッジはフィルタープレスから排出される。
【0072】
ここで、前記実施形態について概説する。
【0073】
前記実施形態のクーラント再生装置は、スラッジを含む処理対象液が貯留され、前記処理対象液内において前記スラッジの多い領域と前記スラッジの少ない領域とが形成される第1タンク部と、前記第1タンク部における前記スラッジの少ない領域の処理対象液が流入する第2タンク部と、前記第2タンク部から流入する前記処理対象液から膜濾過液を分離する膜分離ユニットと、を備える。
【0074】
この構成では、第1タンク部と第2タンク部とが設けられ、第1タンク部におけるスラッジの少ない領域の処理対象液が第2タンク部に流入し、流入した処理対象液が膜分離ユニットに流入する。すなわち、この構成では、例えば
図7に示す参考例のクーラント再生装置のように処理タンクとして1つのタンク111のみが設けられている場合に比べて、膜分離ユニットに流入する処理対象液に含まれるスラッジの量を低減することができる。これにより、使用済みクーラントを再生処理するためのクーラント再生装置における膜分離ユニットにおいて膜の詰まりが生じるのを抑制することができる。
【0075】
前記クーラント再生装置では、前記第1タンク部の前記処理対象液内において、前記スラッジの一部が下部に集まることにより、前記スラッジの多い領域が形成されるのが好ましい。この構成では、第1タンク部の処理対象液内においてスラッジの一部が下方に沈んで集まることによってスラッジの多い領域が形成される。そして、これに伴って、処理対象液内の高さ方向の中央付近(中部)や上部にはスラッジの少ない領域が形成される。
【0076】
そして、この場合には、前記第1タンク部の前記処理対象液のうち上部の処理対象液が前記第2タンク部に流入するのが好ましい。すなわち、処理対象液内においてスラッジの多い領域が下部に形成される場合には、処理対象液内の上部ではスラッジが少なくなりやすい。したがって、上部の処理対象液を第2タンク部に流入させることによって、第2タンク部内の処理対象液に含まれるスラッジの量をより効果的に低減できる。なお、第1タンク部の処理対象液のうち上部の処理対象液が第2タンク部に流入する形態としては、例えば前述した
図2〜
図6に示す種々の形態を挙げることができる。
【0077】
前記クーラント再生装置において、前記第1タンク部からオーバーフローした前記処理対象液が前記第2タンク部に流入するのが好ましい。すなわち、処理対象液内においてスラッジの多い領域が下部に形成される場合には、第1タンク部からオーバーフローする処理対象液に含まれるスラッジの量は少なくなる。したがって、オーバーフローする処理対象液を第2タンク部に流入させることによって、第2タンク部内の処理対象液に含まれるスラッジの量をより効果的に低減できる。
【0078】
前記クーラント再生装置において、前記膜分離ユニットは、前記処理対象液を前記膜濾過液とスラッジの濃縮液とに分離し、前記濃縮液は、前記第1タンク部に戻されるのが好ましい。この構成では、スラッジが比較的多く含まれる濃縮液が第2タンク部ではなく第1タンク部に戻されるので、第2タンク部に含まれるスラッジが多くなるのを抑制できる。
【0079】
前記クーラント再生装置は、前記処理対象液を遠心分離液とスラッジとに分離する遠心分離機を備え、前記遠心分離液は、前記第2タンク部に戻されるのが好ましい。この構成では、遠心分離機によってスラッジと分離された遠心分離液、すなわちスラッジの量が少ない遠心分離液を、第1タンク部を経ずに、第2タンク部に直接戻す。これにより、クーラント再生装置における液の循環系において、第1タンク部を経て第2タンク部に流入する処理対象液の量を低減することができる。その結果、第2タンク部の処理対象液に含まれるスラッジが多くなるのを抑制できる。
【0080】
前記クーラント再生装置において、前記遠心分離機には、前記第1タンク部の前記処理対象液が流入するのが好ましい。この構成では、遠心分離機においては、処理対象液に含まれるスラッジの量が多い方が遠心分離の効率がよい。したがって、この構成では、第2タンク部の処理対象液が遠心分離機に流入する場合に比べて、遠心分離機における遠心分離の効率を高めることができる。また、この構成では、第1タンク部の処理対象液が遠心分離機に送られるので、第1タンク部から第2タンク部に流入する処理対象液の量を低減できる。その結果、第2タンク部の処理対象液に含まれるスラッジが多くなるのを抑制できる。
【0081】
前記クーラント再生装置において、前記遠心分離機からのドレン液は、前記第1タンク部に戻されるのが好ましい。ドレン液は、例えば遠心分離機において、内部の洗浄などが行われた際に排出される廃液であり、かたまり(ダマ)になったスラッジを比較的多く含んでいる。したがって、この構成のようにドレン液を第1タンク部に戻すことにより、第2タンク部に含まれるスラッジが多くなるのを抑制できる。
【0082】
前記クーラント再生装置は、前記第2タンク部の前記処理対象液が前記膜分離ユニットに送られる流路において前記スラッジの一部を除去するための除去機構を備えているのが好ましい。
【0083】
この構成では、膜分離ユニットへの流路に除去機構が設けられているので、膜分離ユニットに送られる処理対象液に含まれるスラッジのかたまりの量をさらに低減できる。
【0084】
そして、前記クーラント再生装置は、前記流路に設けられたポンプを備え、前記除去機構が前記ポンプよりも上流側に設けられており、前記ポンプの負荷の上昇に基づいて前記除去機構の閉塞状態(除去機構の詰まりの度合い)が検知されるのが好ましい。すなわち、ポンプが除去機構よりも下流側に設けられている場合には、除去機構にスラッジが溜まるにつれて、ポンプの負荷が上昇する。このようなポンプの負荷の上昇に基づいて除去機構におけるスラッジの溜まり具合を検知できる。
【0085】
前記クーラント再生装置において、前記第1タンク部と前記第2タンク部は、互いに別体の容器であるのが好ましい。この構成のように第1タンク部と第2タンク部が別体である場合、各タンク部の形状、大きさなどの設計の自由度が高まる。例えば、タンク部が角柱形状である場合、タンク部の底部の角などにスラッジが溜まってそのまま滞留することがあるが、タンク部を円柱形状にすることによって、そのようなスラッジの滞留を抑制できる。
【0086】
前記クーラント再生装置において、前記第1タンク部と前記第2タンク部は、容器内を隔壁によって分けることによって形成されていてもよい。
【0087】
前記実施形態のクーラント再生方法は、第1タンク部に貯留されたスラッジを含む処理対象液内において前記スラッジの多い領域と前記スラッジの少ない領域とを形成し、前記第1タンク部における前記スラッジの少ない領域の処理対象液を第2タンク部に流入させ、前記第2タンク部の処理対象液を膜分離ユニットに流入させ、膜分離ユニットにおいて処理対象液から膜濾過液を分離する。