特許第6190732号(P6190732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190732
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】放熱板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20170821BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H05K7/20 D
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-15834(P2014-15834)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-142108(P2015-142108A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】米持 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 今朝幸
(72)【発明者】
【氏名】根来 修司
(72)【発明者】
【氏名】関 雅文
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−317478(JP,A)
【文献】 特開2007−12928(JP,A)
【文献】 特開2005−034857(JP,A)
【文献】 特開2009−121338(JP,A)
【文献】 特開2011−124251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部と、平面視で前記第1開口部よりも大きく開口され、前記第1開口部に連通する第2開口部とを備える開口部と、前記開口部の前記第2開口部の開口の周囲に形成され、前記第1開口部から前記第2開口部に向かう方向に起立する壁部と、平面視で前記第2開口部の開口に沿って形成される溝部とを有する板状の枠部と、
前記第1開口部内に配置される第1プレート部と、前記第2開口部内に配設され、平面視で前記第1プレート部よりも大きい第2プレート部とを有するプレート部と
を含み、
前記壁部は、前記第2開口部の内壁と前記溝部とによって構築されており、
前記第2開口部は、平面視で前記第2プレート部よりも大きく、前記第2開口部の前記内壁と、前記第2プレート部の外周壁との間に空間が形成されており、
前記プレート部は、前記第1開口部に前記第1プレート部が圧入固定され、かつ前記第2開口部の内部に向けて折り曲げられる前記壁部と前記第2プレート部の角部とが接触することによって前記枠部に保持されることを特徴とする、放熱板。
【請求項2】
前記第2プレート部は、前記第1開口部から表出する上面と、前記外周壁と、前記上面及び前記外周壁が交差する角部とを有し、前記壁部は、前記角部とのみ接触する、請求項1記載の放熱板。
【請求項3】
前記角部には面取りされたテーパ面が形成されており、前記壁部は前記角部の前記テーパ面と接触する、請求項1又は2記載の放熱板。
【請求項4】
前記空間の内部に充填される、充填材をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項記載の放熱板。
【請求項5】
前記プレート部は、表面に形成されるニッケルめっき層を有する、請求項1乃至4のいずれか一項記載の放熱板。
【請求項6】
第1開口部と、平面視で前記第1開口部よりも大きく開口され、前記第1開口部に連通する第2開口部とを備える開口部と、前記開口部の前記第2開口部の開口の周囲に形成され、前記第1開口部から前記第2開口部に向かう方向に起立する壁部と、平面視で前記第2開口部の開口に沿って形成される第1溝部とを有する板状の枠部と、
前記第1開口部内に配置される第1プレート部と、前記第2開口部内に配設され、平面視で前記第1プレート部よりも大きい第2プレート部とを有するプレート部と
を含み、
前記壁部は、前記第2開口部の内壁と前記第1溝部とによって構築されており、
前記第2開口部は、平面視で前記第2プレート部よりも大きく、前記第2開口部の前記内壁と、前記第2プレート部の外周壁との間に空間が形成されており、
前記プレート部は、前記第1開口部に前記第1プレート部が圧入固定され、かつ前記第2開口部の内部に向けて折り曲げられる前記壁部と前記第2プレート部の前記外周壁とが係合することによって前記枠部に保持されることを特徴とする、放熱板。
【請求項7】
前記第2プレート部は、前記第1開口部から表出する上面と、前記外周壁と、前記上面及び前記外周壁が交差する角部とを有し、前記壁部は、前記外周壁とのみ接触する、請求項6記載の放熱板。
【請求項8】
前記第2プレート部の前記外周壁には、前記第2プレート部の前記第1プレート部とは反対側の表面側から切り欠かれた段差部が形成されており、前記壁部は、前記外周壁の前記段差部に係合している、請求項7記載の放熱板。
【請求項9】
前記第2プレートの前記外周壁には第2溝部が形成されており、前記壁部は、前記外周壁の前記第2溝部に係合している、請求項7記載の放熱板。
【請求項10】
第1開口部と、平面視で前記第1開口部よりも大きく開口され、前記第1開口部に連通する第2開口部とを備える開口部と、前記開口部の前記第2開口部の開口の周囲に形成され、前記第1開口部から前記第2開口部に向かう方向に起立する壁部と、平面視で前記第2開口部の開口に沿って形成される溝部とを有する板状の枠部と、
前記第1開口部内に配置される第1プレート部と、前記第2開口部内に配設され、平面視で前記第1プレート部よりも大きい第2プレート部とを有するプレート部と
を含み、
前記壁部は、前記第2開口部の内壁と前記溝部とによって構築されており、
前記第2開口部は、平面視で前記第2プレート部よりも大きく、前記第2開口部の前記内壁と、前記第2プレート部の外周壁との間に空間が形成されており、
前記プレート部は、前記第1開口部に前記第1プレート部が圧入固定され、かつ前記第2開口部の内部に向けて折り曲げられる前記壁部と前記第2プレート部の角部とが接触することによって前記枠部に保持されることを特徴とする、放熱板と、
配線基板と、
前記配線基板に実装され、前記配線基板への実装面とは反対側の面が、前記第2プレート部の前記第2開口部から表出する面に接続される半導体素子と
を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、端部を相手部材にカシメ固定するカシメ部材がある。このカシメ部材では、前記カシメ部材の前記端部に、形状保持が必要な形状保持面を有する形状保持部と、カシメ加工するカシメ部と、該カシメ部と前記形状保持部の間に設けられ前記形状保持面の変形を防止する溝部が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−034857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のカシメ部材では、カシメ部の一部を相手部材側に屈曲させてカシメ固定することによってカシメ部が相手部材の表面の一部を覆うため、表面に他の部材又は素子等を実装する場合に、十分な実装面積を確保できない。このような実装面積の不足は、例えば、カシメ部材を放熱板として用いる場合には、十分な冷却性能が得られないという問題に繋がる。
【0005】
そこで、十分な実装面積を確保し、十分な冷却性能を有する放熱板及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の放熱板は、第1開口部と、平面視で前記第1開口部よりも大きく開口され、前記第1開口部に連通する第2開口部とを備える開口部と、前記開口部の前記第2開口部の開口の周囲に形成され、前記第1開口部から前記第2開口部に向かう方向に起立する壁部と、平面視で前記第2開口部の開口に沿って形成される溝部とを有する板状の枠部と、前記第1開口部内に配置される第1プレート部と、前記第2開口部内に配設され、平面視で前記第1プレート部よりも大きい第2プレート部とを有するプレート部とを含み、 前記壁部は、前記第2開口部の内壁と前記溝部とによって構築されており、前記第2開口部は、平面視で前記第2プレート部よりも大きく、前記第2開口部の前記内壁と、前記第2プレート部の外周壁との間に空間が形成されており、前記プレート部は、前記第1開口部に前記第1プレート部が圧入固定され、かつ前記第2開口部の内部に向けて折り曲げられる前記壁部と前記第2プレート部の角部とが接触することによって前記枠部に保持される。
【発明の効果】
【0007】
十分な実装面積を確保し、十分な冷却性能を有する放熱板及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の放熱板100を示す図である。
図2】実施の形態の放熱板100を示す斜視図である。
図3】実施の形態の放熱板100を示す斜視図である。
図4】実施の形態の放熱板100を示す断面図である。
図5】実施の形態の放熱板100のプレート130を枠部110の壁部116で固定する際の作業工程を示す図である。
図6】実施の形態の放熱板100に半導体素子200を実装した状態を示す図である。
図7】実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。
図8】実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。
図9】実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。
図10】実施の形態の変形例の放熱板100Fを示す斜視図である。
図11】実施の形態の変形例の放熱板100Fを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の放熱板及び半導体装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の放熱板100を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。図2及び図3は、実施の形態の放熱板100を示す斜視図である。図2(A)及び図3(A)は分解状態を示す斜視図であり、図2(B)及び図3(B)は完成状態を示す斜視図である。
【0011】
図4は、実施の形態の放熱板100を示す断面図であり、(A)は、図2(A)におけるA1−A1矢視断面とA2−A2矢視断面を示す図であり、(B)は、図2(B)におけるB−B矢視断面を示す図である。なお、図1乃至4では、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。
【0012】
放熱板100は、枠部110及びプレート130を含む。
【0013】
枠部110は、内周面111、112、接続面113、凹部114、溝部115、壁部116を有する。枠部110は、プレート130に使用される金属よりも硬度が高く、かつ、ばね性が高い金属製の部材であり、例えば、ステンレス鋼製である。
【0014】
枠部110は、平面視で矩形状の金属板の一方の面(Z軸正方向側の面)に凹部114を形成し、凹部114の底面114Aと、金属板の他方の面(Z軸負方向側の面)との間を貫通する開口部120を形成した形状を有する。枠部110は、平面視で矩形環状の部材である。
【0015】
内周面111及び112は、開口部120の周りを囲む面であり、XY平面に平行な接続面113によって接続されている。内周面111及び112と接続面113は、段差を形成している。
【0016】
開口部120は、開口部120Aと120Bを有し、開口部120Aは内周面111によって囲まれる部分であり、開口部120Bは内周面112によって囲まれる部分である。開口部120Bは、開口部120Aよりも平面視で大きい。このため、開口部120の周囲には、内周面111及び112と接続面113とによる段差が平面視で矩形環状に形成されている。
【0017】
凹部114は、底面114Aと側面114Bを有する。凹部114は、平面視で矩形状であり、底面114Aは、平面視で開口部120Bよりも大きい。凹部114は、枠部110のZ軸正方向側の面に、例えば、切削等の機械的な加工を施すことによって形成される。なお、開口部120は、一例として、凹部114を形成した後に、凹部114の底面114Aに貫通孔を形成することによって作製される。
【0018】
溝部115は、凹部114の底面114Aに、平面視で開口部120Bの矩形状の開口に沿って矩形環状に形成されている。溝部115は、断面視でV字状である。溝部115は、例えば、切削等の機械的な加工を施すことによって形成される。
【0019】
壁部116は、内周面112と凹部114の底面114Aとの間に形成され、Z軸正方向に起立している。壁部116は、底面114Aに平面視で矩形環状の溝として形成される溝部115よりも内側に位置し、平面視で開口部120Bを囲むように矩形環状の壁として形成される。壁部116は、例えば、枠部110に凹部114を形成した後に、凹部114の底面114Aに溝部115を作製することによって形成される。
【0020】
開口部120は、上述のように開口部120Aと120Bを有する。開口部120Aは第1開口部の一例であり、開口部120Bは第2開口部の一例である。また、開口部120のZ軸負方向側の開口(枠部110の表面110Aに形成される開口)は、第1開口の一例であり、開口部120のZ軸正方向側の開口(底面114Aに形成される開口)は、第2開口の一例である。
【0021】
開口部120Aには、プレート130のうちのプレート部130Aが圧入され、開口部120Bの内部には、プレート130のうちのプレート部130Bが配設される。
【0022】
プレート130は、プレート部130Aと130Bを有する。プレート部130Aと130Bは一体的に形成されている。プレート130は、金属製の部材であり、例えば、銅製の金属部材の表面に、ニッケルめっき層を形成したものである。このようなプレート130は、例えば、金属製の板状部材を加工し、電解めっき処理によって表面にニッケルめっき層を形成することによって作製することができる。
【0023】
プレート部130Aは、平面視でプレート部130Bよりも小さい。プレート部130Aは、図4(A)、(B)に示すようにX軸方向においてプレート部130Bの両端よりも内側に位置するとともに、Y軸方向においてもプレート部130Bの両端よりも内側に位置する。このため、プレート部130A及び130Bは、枠部110の内周面111及び112と接続面113とによって形成される段差に対応した段差を有する。
【0024】
プレート部130AのX軸方向及びY軸方向の長さは、それぞれ、開口部120AのX軸方向及びY軸方向の長さよりも若干長い。これは、プレート部130Aを開口部120Aに圧入することによって、プレート部130Aと枠部110とを固着させるためである。
【0025】
また、プレート部130Aの厚さは、開口部120Aの厚さに等しい。開口部120Aの厚さとは、枠部110の表面110Aと、接続面113との間の厚さである。このため、開口部120AにZ軸正方向側からプレート部130Aを圧入すると、プレート部130AのZ軸負方向側の表面130A1と、枠部110の表面110Aとは面一になる。このように面一の面を形成させるのは、放熱板100は、Z軸負方向側の面一の面(表面110A及び130A1)に、半導体素子等の放熱を伴う部材(例えば、表面にフィンが形成されたヒートシンク等)を実装するためである。
【0026】
プレート部130Bは、平面視でプレート部130Aよりも大きく、開口部120Bよりも小さい。また、プレート部130Bの厚さは、接続面113と底面114Aとの間の枠部110の厚さよりも少し薄い。これは次のような理由による。図4(A)に示すプレート130を枠部110の開口部120に挿入した後に、図4(B)に示すように、壁部116を開口部120の内側(平面視で見て開口部120の中心寄り)に折り曲げる。そして、内周面112の上端側をプレート部130Bの角部130B1に当接させることにより、壁部116でプレート部130Bを保持させる。このように壁部116で角部130B1を保持するため、プレート部130Bの平面視での大きさと、厚さとを上述のように設定する。
【0027】
また、このように壁部116を開口部120の内側に折り曲げるので、プレート部130Bを平面視で開口部120Bよりも小さくすることにより、プレート130を開口部120の内部に設置した状態で、プレート部130Bと内周面112との間に隙間(図4(B)参照)ができるようにしている。
【0028】
なお、角部130B1とは、板状のプレート部130Bのプレート部130Aと接合されている側とは反対側の表面130B2と側面130B3との境界の部分である。例えば、壁部116が少し凹むとともにプレート部130Bが変形せずに、壁部116がプレート部130Bを保持する場合には、角部130B1には、壁部116の凹みと当接する部分(表面130B2側の部分及び側面130B3側の部分)が含まれる。なお、このように壁部116に凹みが生じても、凹みによる表面130B2の減少分は無視できる程度の微小なものである。
【0029】
また、これとは逆に、プレート部130Bの角が少し凹むとともに壁部116が変形せずに、壁部116がプレート部130Bを保持する場合は、角部130B1は、プレート部130Bのうち壁部116と当接する部分を表す。ここで、プレート部130Bの角が少し凹むとは、例えば、角が面取りされたような形状に変形することをいい、面取りされたような形状の部分が角部130B1になる。なお、このようにプレート部130Bの角に凹みが生じても、凹みによる表面130B2の減少分は無視できる程度の微小なものである。
【0030】
また、壁部116とプレート部130Bの角との両方が少し凹む場合は、上述のように壁部116が少し凹む場合と、上述のようにプレート部130Bの角が少し凹む場合とを合わせて考えればよい。
【0031】
なお、上述のような放熱板100の枠部110とプレート130の各部の一例としての寸法は、次の通りである。
【0032】
枠部110のX軸方向とY軸方向の長さは、それぞれ、35mmと45mmであり、厚さ(Z軸方向の長さ)は2.2mmである。また、枠部110の表面110Aと接続面113との間の厚さは、0.8mmであり、接続面113と底面114Aとの間の厚さは1.0mmである。また、枠部110の底面114Aと表面110Bとの間の厚さは、0.4mmである。また、溝部115の深さは、V字形状の最も深い部分と、底面114Aとの間の深さで、0.4mmである。
【0033】
開口部120AのX軸方向とY軸方向の長さは、それぞれ、28mmと38mmであり、高さ(Z軸方向の長さ)は0.8mmである。また、開口部120BのX軸方向とY軸方向の長さは、それぞれ、29.2mmと39.2mmであり、高さ(Z軸方向の長さ)は1.0mmである。
【0034】
プレート部130AのX軸方向とY軸方向の長さは、それぞれ、28mmと38mmであり、厚さ(Z軸方向の長さ)は0.8mmである。ただし、プレート部130Aは開口部120A(X×Y=28mm×38mm)に圧入するため、X軸方向とY軸方向の長さは、28mmと38mmよりも圧入に必要な分だけ長くすればよい。このように圧入に必要な寸法は、プレート130と枠部110の金属材料や寸法等によって設定すればよいが、一例として、0.1mmである。
【0035】
プレート部130BのX軸方向とY軸方向の長さは、それぞれ、29mmと39mmであり、厚さ(Z軸方向の長さ)は0.7mmである。すなわち、図4(B)に示すようにプレート130を開口部120の内部に設置した状態では、プレート部130Bと内周面112との間には、X軸方向及びY軸方向ともに、幅0.1mmの空間(クリアランス)が生じる。また、プレート部130Bの上面は、枠部110の凹部114の底面114Aよりも0.3mm低いことになる。
【0036】
なお、図4(A)、(B)には、枠部110及びプレート130のXZ平面に平行な断面を示したが、上述の説明から分かるように、YZ平面に平行な断面の形状は、XZ平面に平行な断面の形状と同様である。枠部110及びプレート130は、X軸方向の長さよりもY軸方向の長さの方が長いため、YZ平面に平行な断面は、図4(A)、(B)に示すXZ平面に平行な断面よりも横方向に長くなる。
【0037】
ここで、図5を用いて、壁部116を折り曲げる工程について説明する。
【0038】
図5は、実施の形態の放熱板100のプレート130を枠部110の壁部116で固定する際の作業工程を示す図である。なお、図5(A)〜(C)には、図4に示す枠部110及びプレート130の右半分の部分を示す。
【0039】
まず、図5(A)に示すように、枠部110に対してプレート130の位置を合わせて、矢印で示すように、開口部120A及び120Bの内部にそれぞれプレート部130A及び130Bを入れる。
【0040】
次に、図5(B)に示すポンチ500を用いる。ポンチ500は、壁部116を図5(B)に示す状態から図5(C)に示す状態に折り曲げる治具であり、例えば、鉄又は超鋼(例えば、タングステンとカーバイドの合金)によって作製される板状の部材である。ポンチ500は、図5(B)に示す下面に凹部501と凸部502を有する。凹部501は、壁部116の先端を避けるために形成されており、凸部502は、壁部116の溝部115側の面に当接しながら溝部115に挿入されるように位置決めされている。凸部502は、断面視で直角三角形の楔状であり、斜辺に対応する部分が壁部116の溝部115側の面に当接する。
【0041】
図5(C)に示すように、このようなポンチ500の下面をプレート部130Bに対して位置合わせした状態でプレート部130Bの表面に当接させ、ポンチ500を図中下方向に押圧すると、凸部502の斜辺の部分が壁部116の溝部115側の面に当接するため、壁部116は図中において左側に倒れるように折り曲げられる。
【0042】
壁部116の図中左側の面がプレート部130Bの角部130B1に当接するまでポンチ500を押圧すれば、開口部120Aにプレート部130Aを圧入するとともに、壁部116でプレート部130Bの角部130B1を保持することができる。
【0043】
以上により、枠部110に対してプレート130を固定することができる。
【0044】
図6は、実施の形態の放熱板100に半導体素子200を実装した状態を示す図である。図6に示す放熱板100は、図4に示す放熱板100とは天地が逆の向きになっている。なお、図6では、放熱板100については、一部の構成要素にのみ符号を付し、その他の構成要素についての符号を省略する。
【0045】
実施の形態の放熱板100は、プレート130を放熱の経路として用いるため、熱伝導率の高い銅でプレート130を作製し、強度とばね性が高いステンレス鋼で枠部110を作製している。
【0046】
なお、枠部110にばね性の高い金属材料であるステンレス鋼を用いたのは次のような理由による。加熱、冷却時に、枠部110とプレート130との熱膨張係数の違いによって、プレート130の抜け又は緩み等が生じるおそれがある。このため、弾性(ばね性)を有する金属材料を枠部110に用いることにより、加熱・冷却時に壁部116でプレート130を確実に保持できるからである。
【0047】
図6に示すように、半導体素子200は、配線基板300の表面に形成される配線301にバンプ202を介して実装されている。配線基板300には、電子部品302も実装されている。なお、放熱板100、半導体素子200、及び配線基板300を含む装置は、半導体装置である。
【0048】
放熱板100は、図4に示す放熱板100とは天地が逆の向きの状態で、熱伝導材201を介して半導体素子200にプレート部130Bが接着されることにより、半導体素子200と熱的に接続される。なお、熱伝導材201としては、例えば、インジウム、熱伝導性を有するフィラーを含有する樹脂(シリコーン樹脂)等を用いることができる。
【0049】
このように、配線基板300に実装された半導体素子200に放熱板100を接続することにより、半導体素子200の発熱を放熱板100を介して放熱することができる。図6に示す放熱板100の(表面110A及び130A1の)上には、さらに、放熱フィン等を有するヒートシンクを設置することができる。
【0050】
ここで、プレート部130Bの半導体素子200に当接する面(図6中の下面)は、壁部116によって覆われていない。これは、壁部116がプレート部130Bの角部130B1を保持しており、半導体素子200に当接する表面130B2(当接面)を覆っていないからである。このため、表面130B2(当接面)に、半導体素子200に当接するのに十分な面積を確保することができる。換言すれば、プレート部130Bの表面130B2(当接面)は、半導体素子200を実装するための実装面であるため、実施の形態の放熱板100は、半導体素子200を実装するのに十分な面積を確保することができる。
【0051】
従って、実施の形態によれば、半導体素子200を冷却するのに十分な実装面積を有し、半導体素子200を効率的に冷却することができる放熱板100を提供することができる。
【0052】
近年は、スマートフォン端末機、又は、タブレット型のコンピュータ等の普及により、データセンタとしてのサーバの必要性がより高まっている。これにより、サーバに用いられるCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)は、マルチコア化(MCM(Multi Core Module)化)している。このため、CPU等の半導体素子を冷却する放熱板の構造が複雑化しており、プレス加工のみで作製することは困難になってきており、放熱板に開口部を形成し、より熱伝導率の高い金属プレートを開口部に取り付けるような構造が求められる場合がある。
【0053】
このような場合に、実施の形態の放熱板100を用いれば、枠部110とプレート130との材質が異なって熱膨張係数が異なっても、壁部116でプレートを枠部110に対して確実に固定でき、かつ、プレート130の実装面積が犠牲にならない。従って、半導体素子200を冷却するのに十分な実装面積を有し、半導体素子200を効率的に冷却することができる放熱板100を提供することができる。
【0054】
以下、図7乃至図11を用いて、実施の形態の放熱板100の変形例について説明する。
【0055】
図7は、実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。図7(A)、(B)には、図5と同様に、図4に示す枠部110及びプレート130の右半分の部分の断面を示し、図7(C)には、図1(A)に対応する平面図を示す。
【0056】
図7(A)に示すように、内周面112とプレート部130Bとの間の空間に、充填材400を封入してもよい。充填材400としては、例えば、はんだ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の弾性を有する材料を用いることができる。なお、充填材400は、開口部120にプレート130を挿入する前に、内周面112の表面に塗布しておけばよい。
【0057】
このような充填材400を用いることにより、枠部110に対するプレート130の取り付け強度をさらに向上させることができる。枠部110とプレート130との材質が異なるため、加熱、冷却時に熱膨張係数の違いによって、プレート130の抜け又は緩み等が生じるおそれがある。しかしながら、弾性を有する材料を充填材とすることで、プレート130の抜け、緩み等を抑制することができる。
【0058】
図7(B)に示すように、プレート部130Bの角部130B1に面取り部131Bを形成しておいてもよい。そして、ポンチ500(図5参照)を用いて壁部116を折り曲げて、壁部116を面取り部131Bに当接させてもよい。
【0059】
折り曲げた壁部116を面取り部131Bに当接させることにより、枠部110とプレート部130Bとが接する面積を増大できるので、枠部110に対するプレート130の取り付け強度をさらに向上させることができる。なお、面取り部131Bの大きさは、プレート部130Bの実装面積の減少が問題にならない程度にしておけばよい。
【0060】
図7(C)は、図1(A)に示す壁部116の変形例を示す。壁部116は、開口部120Bの開口に沿って矩形管状に形成されているが、一定間隔で配設される区間116Aのみを開口部120Bの内側に向けて折り曲げたものである。なお、壁部116の開口部120Bの四隅の部分のみを内側に折り曲げてもよい。
【0061】
また、図7(C)に示すように、開口部120Bの開口に沿って、一定間隔で配設される区間116Aのみを開口部120Bの内側に向けて折り曲げる場合は、充填材400(図7(A)参照)の充填を行いやすくなる。特に、枠部110にプレート130を挿入した後から、充填材400を充填することが可能になる。
【0062】
図8は、実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。図7(A)〜(C)には、図7と同様に、図4に示す枠部110及びプレート130の右半分の部分の断面を示す。
【0063】
図8(A)に示すように、枠部110の壁部116Bの高さを、凹部114の底面114Aの高さよりも高くしてもよい。図8(A)では、底面114Aの高さはH1であり、壁部116Bの高さはH2である。高さH2は、高さH1より高い。
【0064】
このような構成にすれば、例えば、壁部116Bよりも側面114B側に電子部品302(図6参照)を配置する際に、より高さの高い電子部品302を実装することができ、空間の有効利用を実現することができる。
【0065】
また、図8(A)に示すように、底面114Aよりも高い壁部116Bは、例えば、次のようにして実現してもよい。枠部110を形成するための金属板に凹部114を形成し、さらに溝部115を形成する。この時点では、底面114Aと壁部116Bの高さはH1で等しい。これは、図4(A)に示す底面114Aと壁部116Bとの高さの関係に等しい。
【0066】
そして、より大きな凸部502(図5参照)を有するポンチ500を用いて、図5(C)に示すようにポンチ500を押圧する際に、溝部115の周辺のステンレス鋼を壁部116Bとして寄せ集めながら壁部116Bを折り曲げる。このようにして壁部116Bを形成することにより、図8(B)に示すように、実質的な高さH2を有する壁部116Bを形成することができる。図8(B)では壁部116Bは折り曲げられているが、真っ直ぐに起こせば、実質的に図8(A)に示す高さH2の壁部116Bを折り曲げたことと等価になる。
【0067】
また、図8(C)に示すように、プレート部130Bの側面130B3に切り欠き部132Bによる段差を形成し、折り曲げられた壁部116Cが切り欠き部132Bによって形成される段差に係合するようにしてもよい。切り欠き部132Bは、プレート部130Bの角部130B1(図8(A)参照)に沿って、側面130B3に段差が生じるように、表面130B2側からプレート部130Bの角部130B1を削ることによって形成すればよい。この場合、折り曲げ後の壁部116Cの高さH3を底面114Aの高さH1よりも低くできるので、より高さの高い電子部品302を実装することができ、空間の有効利用を実現することができる。
【0068】
図9は、実施の形態の変形例による放熱板100を示す図である。図9(A)〜(C)には、図7及び図8と同様に、図4に示す枠部110及びプレート130の右半分の部分の断面を示す。
【0069】
図9(A)に示すように、壁部116Dをプレート部130Bの側面130B3にめり込ませてもよい。このような構成により、枠部110に対するプレート130の取り付け強度をさらに向上させることができる。なお、壁部116Dがプレート部130Bの側面130B3にめり込んでいることは、壁部116Dがプレート部130Bの側面130B3に係合していることの一例である。
【0070】
また、図9(B)に示すように、壁部116Dをプレート部130Bの側面130B3に、係合溝部134Bを形成しておき、図9(C)に示すように、係合溝部134Bの内部に壁部116Eの先端を係合させてもよい。このような構成により、枠部110に対するプレート130の取り付け強度をさらに向上させることができる。
【0071】
図10及び図11は、実施の形態の変形例の放熱板100Fを示す斜視図である。図10(A)及び図11(A)は分解状態を示す斜視図であり、図10(B)及び図11(B)は完成状態を示す斜視図である。
【0072】
図10及び図11に示す放熱板100Fは、枠部110Fとプレート130を含む。プレート130は、図2及び図3に示すプレート130と同様である。
【0073】
枠部110Fは、開口部120Fが形成されているが、図2及び図3に示す枠部110よりも、少なくともX軸方向及びY軸方向の長さが長い。ただし、開口部120Fの大きさは、図2及び図3に示す開口部120と同じである。
【0074】
すなわち、枠部110Fは、図2及び図3に示す枠部110と比べて、全体の大きさに対して開口部120Fの大きさが小さい。
【0075】
このように、枠部110Fは、その一部に開口部120Fが形成されるような構成であってもよい。
【0076】
以上、本発明の例示的な実施の形態の放熱板及び半導体装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
100、100F 放熱板
110、110F 枠部
111、112 内周面
113 接続面
114 凹部
115 溝部
116 壁部
116B、116C、116D 壁部
116A 区間
120、120A、120B、120F 開口部
130 プレート
130A、130B プレート部
130A1 表面
130B1 角部
130B2 表面
130B3 側面
131B 面取り部
132B 切り欠き部
134B 係合溝部
400 充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11