(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190749
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】二連型LC用通信光検知用アダプタ及び二連型LC用通信光検知構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20170821BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20170821BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20170821BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/42
H01L31/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-77918(P2014-77918)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-200706(P2015-200706A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 香菜子
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06487327(US,B1)
【文献】
特開2009−145676(JP,A)
【文献】
特開2009−276627(JP,A)
【文献】
特開2011−003740(JP,A)
【文献】
特開2009−223149(JP,A)
【文献】
特表2011−522292(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0200294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/24 − 6/27
G02B 6/30 − 6/34
G02B 6/36 − 6/43
G02B 6/46 − 6/54
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二連型LCコネクタが嵌挿されたときに平行に配置された二つの光伝送路を構成すると共に、横断面で前記二つの光伝送路の中心を相互に結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置すると共に前記線分に対して垂直方向に開口して形成された光取出孔を有するアダプタ本体と、
前記アダプタ本体と一体的に形成されると共に前記二連型LCコネクタのフェルールが収容されるスリーブを保持するスリーブホルダと、
を備え、
前記スリーブホルダは、横断面で前記線分を0度として前記光取出孔に向かって0度から30度超120度未満までの範囲に亘って開口して形成された開口部を有することを特徴とする二連型LC用通信光検知用アダプタ。
【請求項2】
前記スリーブホルダは、内面に形成された光反射層を有する請求項1に記載の二連型LC用通信光検知用アダプタ。
【請求項3】
前記スリーブホルダは、前記スリーブの抜けを防止する爪部を有する請求項1又は2に記載の二連型LC用通信光検知用アダプタ。
【請求項4】
二連型LC用通信光検知用アダプタと、
前記二連型LC用通信光検知用アダプタに着脱自在に取り付けられる通信光検知器と、
を備え、
前記二連型LC用通信光検知用アダプタは、二連型LCコネクタが嵌挿されたときに平行に配置された二つの光伝送路を構成すると共に、横断面で前記二つの光伝送路の中心を相互に結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置すると共に前記線分に対して垂直方向に開口して形成された光取出孔を有するアダプタ本体と、前記アダプタ本体と一体的に形成されると共に前記二連型LCコネクタのフェルールが収容されるスリーブを保持するスリーブホルダと、を有し、前記スリーブホルダは、横断面で前記線分を0度として前記光取出孔に向かって0度から30度超120度未満までの範囲に亘って開口して形成された開口部を有し、
前記通信光検知器は、前記光取出孔に収容される受光素子が搭載された検知器本体を有することを特徴とする二連型LC用通信光検知構造。
【請求項5】
前記受光素子は、受光方向に開口された缶体と、前記缶体に収容された受光部と、を有する缶型フォトダイオードからなる請求項4に記載の二連型LC用通信光検知構造。
【請求項6】
前記受光部は、前記線分との距離が2.8mm以上3.2mm以下となる位置に配置される請求項4又は5に記載の二連型LC用通信光検知構造。
【請求項7】
前記缶体は、内面に形成された光反射層を有する請求項4から6の何れか一項に記載の二連型LC用通信光検知構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信光を検知して光伝送路の使用/不使用の状態を目視で確認するための二連型LC用通信光検知用アダプタ及び二連型LC用通信光検知構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信関連設備では、光伝送路の健全性を監視したり、人為的な通信用光コネクタの誤抜を防止したりすべく、不可視光領域にある通信光を検知して光伝送路の使用/不使用の状態(以下、通信状態という)を確認するための通信光検知技術が使用されている。
【0003】
この通信光検知技術を具現化したものとしては、光伝送路で伝送されている通信光の一部を漏洩光として取り出し、その漏洩光を受光素子で受光することにより、光伝送路で通信光が伝送されているか否かを検知し、人間が目視で確認することができる形態で光伝送路の通信状態を出力する通信光検知構造が知られている(例えば、特許文献1から特許文献4を参照)。
【0004】
通信光検知構造は、受光素子が搭載された検知器本体を有する通信光検知器と、漏洩光を受光素子に向けて取り出す光取出孔が形成されたアダプタ本体を有する通信光検知用アダプタと、を備えている。
【0005】
一般的に、通信用光コネクタには一芯一対の一連型SC(Simplex SC;SSC)コネクタが使用されているため、それに対応する通信光検知用アダプタとしては、一連型SC用通信光検知用アダプタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−145676号公報
【特許文献2】特開2010−231082号公報
【特許文献3】特開2011−013359号公報
【特許文献4】特開2011−013360号公報
【特許文献5】特開2013−228678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一連型SC用通信光検知用アダプタでは、近年の情報容量の増大に伴うアダプタの高密度実装には不向きであることから、二芯一対の二連型LC(Duplex LC;DLC)コネクタに対応し、一つのアダプタで二つの光伝送路を構成することができる二連型LC用通信光検知用アダプタの登場が待たれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、二連型LCコネクタに対応し、二つの光伝送路を構成することができ、しかも漏洩光を高感度で検知することが可能な二連型LC用通信光検知用アダプタ及び二連型LC用通信光検知構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、二連型LCコネクタが嵌挿されたときに平行に配置された二つの光伝送路を構成すると共に、横断面で前記二つの光伝送路の中心を相互に結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置すると共に前記線分に対して垂直方向に開口して形成された光取出孔を有するアダプタ本体と、前記アダプタ本体と一体的に形成されると共に前記二連型LCコネクタのフェルールが収容されるスリーブを保持するスリーブホルダと、を備え、前記スリーブホルダは、横断面で前記線分を
0度として前記光取出孔に向かって
0度から30度超120度未満までの範囲に亘って開口して形成された開口部を有する二連型LC用通信光検知用アダプタ
を提供する。
【0010】
前記スリーブホルダは、内面に形成された光反射層を有すると良い。
【0011】
前記スリーブホルダは、前記スリーブの抜けを防止する爪部を有すると良い。
【0012】
また、本発明は、二連型LC用通信光検知用アダプタと、前記二連型LC用通信光検知用アダプタに着脱自在に取り付けられる通信光検知器と、を備え、前記二連型LC用通信光検知用アダプタは、二連型LCコネクタが嵌挿されたときに平行に配置された二つの光伝送路を構成すると共に、横断面で前記二つの光伝送路の中心を相互に結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置すると共に前記線分に対して垂直方向に開口して形成された光取出孔を有するアダプタ本体と、前記アダプタ本体と一体的に形成されると共に前記二連型LCコネクタのフェルールが収容されるスリーブを保持するスリーブホルダと、を有し、前記スリーブホルダは、横断面で前記線分を
0度として前記光取出孔に向かって
0度から30度超120度未満までの範囲に亘って開口して形成された開口部を有し、前記通信光検知器は、前記光取出孔に収容される受光素子が搭載された検知器本体を有する二連型LC用通信光検知構造
を提供する。
【0013】
前記受光素子は、受光方向に開口された缶体と、前記缶体に収容された受光部と、を有する缶型フォトダイオードからなると良い。
【0014】
前記受光部は、前記線分との距離が2.8mm以上3.2mm以下となる位置に配置されると良い。
【0015】
前記缶体は、内面に形成された光反射層を有すると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二連型LCコネクタに対応し、二つの光伝送路を構成することができ、しかも漏洩光を高感度で検知することが可能な二連型LC用通信光検知用アダプタ及び二連型LC用通信光検知構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る二連型LC用通信光検知用アダプタを示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る二連型LC用通信光検知用アダプタを示すA−A線断面図である。
【
図3】本発明に係る二連型LC用通信光検知用アダプタを示すB−B線断面図である。
【
図5】本発明に係る二連型LC用通信光検知構造を示す斜視図である。
【
図6】通信光検知器を示す斜視図であって、斜め下方から見たときの通信光検知器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
先ず、本発明の好適な実施の形態に係る二連型LC用通信光検知用アダプタを説明する。
【0020】
図1から
図3に示すように、本発明の好適な実施の形態に係る二連型LC用通信光検知用アダプタ100は、二連型LCコネクタが嵌挿されたときに平行に配置された二つの光伝送路101,102を構成すると共に、横断面(A−A線断面)で二つの光伝送路101,102の中心C,Dを相互に結ぶ線分CDを底辺とする二等辺三角形CDEの頂点Eに位置すると共に線分CDに対して垂直方向103に開口して形成された光取出孔104を有するアダプタ本体105と、アダプタ本体105と一体的に形成されると共に二連型LCコネクタのフェルール106が収容されるスリーブ107を保持するスリーブホルダ108と、を備えている。
【0021】
二連型LC用通信光検知用アダプタ100は、アダプタ本体105の端部に嵌挿される二連型LCコネクタ等を相互に接続し、また後述する通信光検知器が二連型LC用通信光検知用アダプタ100に取り付けられているときに光取出孔104を通じて漏洩光を受光素子109に向けて取り出す機能を有している。
【0022】
この二連型LC用通信光検知用アダプタ100は、二連型LCコネクタ等を相互に接続する二連型LCアダプタに改良を加えたものであり、例えば、光通信関連設備にて使用されているラックパネルに多連的に搭載されて使用されることが多い。
【0023】
光伝送路101,102は外径が125μmの石英ガラス製等の光ファイバからなり、フェルール106は外径が1.25mmのジルコニア製等のLCフェルールからなり、スリーブ107は外径が1.78mmのジルコニア製等の割スリーブからなり、線分CDの長さ(二つの光伝送路101,102のピッチ間距離)は6.25mmである。これらの寸法は、LCコネクタ及びLCアダプタの規格に準じている。
【0024】
光取出孔104は、受光素子109が漏洩光以外の光を受光して光伝送路の通信状態を正確に確認することができなくなることを防止すべく、受光素子109を漏洩光以外の光から遮光するように収容し、また通信光検知器が二連型LC用通信光検知用アダプタ100に取り付けられているときに漏洩光を受光素子109に向けて取り出す機能を有している。
【0025】
ここで、漏洩光とは、光伝送路で伝送されている通信光の一部が光伝送路の途中に形成されている光取出部を通じて光伝送路の外部に取り出されてなる光を意味している。
【0026】
光取出部としては、例えば、特許文献1から特許文献3に記載された光検知用溝や特許文献5に記載された軸ズレ部等の公知の構造を採用することができるが、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0027】
なお、二連型LC用通信光検知用アダプタ100は、光取出孔104を閉鎖する蓋部材を更に備えていても構わない。これにより、光伝送路の通信状態を確認するとき以外は光取出孔104を閉鎖することができ、粉塵等の異物が光取出孔104に侵入することを防止することが可能となる。
【0028】
スリーブホルダ108は、横断面で線分CDを
0度として光取出孔104に向かって
0度から30度超120度未満(
図2では90度)
まで、より好ましくは
0度から60度以上90度以下
まで、最も好ましくは
0度から90度
までの範囲θに亘って開口して形成された開口部110を有している(
図2を参照)。これにより、漏洩光を受光素子109に向かって集中させることができるため、受光素子109で検知される漏洩光の光強度が高くなり、漏洩光を高感度で検知することが可能となる。
【0029】
また、スリーブホルダ108は、内面に形成された光反射層111を有していても良い(
図2を参照)。
【0030】
更に、スリーブホルダ108は、スリーブ107の抜けを防止する爪部112を有していることが好ましい(
図3を参照)。これにより、スリーブホルダ108が開口部110を有していても、スリーブ107がスリーブホルダ108から抜けないようにスリーブ107を確実に保持することが可能となる。
【0031】
ここで、受光素子109についても説明しておくと、受光素子109は、受光方向113に開口された缶体114と、缶体114に収容された受光部115と、を有する缶型フォトダイオードからなる。
【0032】
缶型フォトダイオードは、受光部115が漏洩光に対して透明な封止板116により封止されているため、受光部115が粉塵や湿気等の影響で損傷を受けることが殆ど無く、また受光部115が樹脂等により封止されている通常のフォトダイオードと比較して熱的な影響を受け難いことから、種々のフォトダイオードの中でも最も優れた信頼性を有している。
【0033】
缶体114は、内面に形成された光反射層117を有していることが好ましい。これにより、缶体114に向けて取り出された漏洩光を受光部115に集光することができるため、受光素子109で検知される漏洩光の光強度がより高くなり、漏洩光を更に高感度で検知することが可能となる。
【0034】
受光部115は、線分CDとの距離Lが2.8mm以上3.2mm以下となる位置に配置されることが好ましい。これにより、
図4に示すように、最も高い検知感度を基準としたときに検知感度の低下を最大で0.95倍に抑えることが可能となる。即ち、受光部115が線分CDとの距離Lが2.8mm以上3.2mm以下となる位置に配置されることにより、最も高い検知感度の95%以上の検知感度を保証することができる。
【0035】
封止板116は、漏洩光以外の光に対して不透明であることが好ましい。これにより、受光部115を漏洩光以外の光から遮光し、受光部115が漏洩光のみを確実に受光することができるため、光伝送路の通信状態をより正確に確認することが可能となる。
【0036】
次に、本発明の好適な実施の形態に係る二連型LC用通信光検知構造を説明する。
【0037】
図5に示すように、本発明の好適な実施の形態に係る二連型LC用通信光検知構造500は、二連型LC用通信光検知用アダプタ100と、二連型LC用通信光検知用アダプタ100に着脱自在に取り付けられる通信光検知器200と、を備えている。
【0038】
図6に示すように、通信光検知器200は、光取出孔104に収容される受光素子109が搭載された検知器本体201を有している。通信光検知器200としては、受光素子109以外の構成は、従来より知られているものを採用することができるが、受光素子109以外の構成についての説明は本発明の主旨から逸れるため、本明細書では詳細な説明を避ける。
【0039】
これまで説明してきたように、本発明によれば、二連型LCコネクタに対応し、二つの光伝送路101,102を構成することができ、しかも漏洩光を高感度で検知することが可能な二連型LC用通信光検知用アダプタ100及び二連型LC用通信光検知構造500を提供することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の具体例を説明する。
【0041】
スリーブホルダ108の開口部110の角度を
0度から30度
まで、
0度から60度
まで、
0度から90度
まで、及び
0度から120度
までの範囲に変更し、検知感度、スリーブ保持性、及びコネクタ接続安定性がどのように変化するのかを観察した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から分かるように、開口部110の角度が小さくなるほど、スリーブホルダ108からスリーブ107が抜け難くなり、また二連型LCコネクタを接続したときの安定性が向上するものの、検知感度は低下していく。
【0044】
これらの結果から、スリーブホルダ108は、横断面で線分CDを
0度として光取出孔104に向かって
0度から30度超120度未満
まで、より好ましくは
0度から60度以上90度以下
まで、最も好ましくは
0度から90度
までの範囲θに亘って開口して形成された開口部110を有していることが望ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0045】
100 二連型LC用通信光検知用アダプタ
101 光伝送路
102 光伝送路
103 垂直方向
104 光取出孔
105 アダプタ本体
106 フェルール
107 スリーブ
108 スリーブホルダ
109 受光素子
110 開口部
111 光反射層
112 爪部
113 受光方向
114 缶体
115 受光部
116 封止板
117 光反射層
200 通信光検知器
201 検知器本体
500 二連型LC用通信光検知構造