(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図19乃至
図21は、被覆電線をレールに固定する従来の固定金具の図であり、
図19は側面図、
図20は正面図、
図21は平面図である。
従来の固定金具100は、レール200の底部201に取り付けられるものであり、曲げ加工された金属線を熱処理することによって製造されている。具体的には、固定金具100は、底部201の下面に配置され、略ミアンダ状に形成されたバネ部101aを有するベース部101と、ベース部の両端からそれぞれ上方に延出するレール挟持部102,103と、レール挟持部102の上端からレール200の腹部202側に向かって延出するフック部104と、レール挟持部103の上端からレール200の腹部202側に向かって延出すると共に、水平面に対して所定角度で傾斜する傾斜部105と、傾斜部105の一端に形成された電線保持部106とを備えている。固定金具100の両端に位置するレール挟持部102,103間の距離は、底部201の幅寸法より若干小さく設計されており、バネ部101aの弾性力により、レール挟持部102,103が底部201を挟持する。これにより、固定金具100がレール200に固定される。
電線保持部106は、
図20及び
図21に示すように、上方に湾曲した湾曲部107と、該湾曲部から横方向(レールの長手方向)に延びる直線部108と、腹部202から離れる方向に延出し、湾曲部107と略同等の曲げ半径にて上方に湾曲した湾曲部109とを有している。湾曲部107,109は、被覆電線300の周方向に沿うように形成されており、直線部108は被覆電線300の長手方向に沿うように形成されている。
【0003】
上記のように構成される固定金具100をレール200に取り付ける際には、先ず、電線保持部106に被覆電線300を取り付ける。湾曲部107,109は被覆電線200の外径と同等か又はこれに対応する形状となるように設計されており、直線部108の長さ分だけ離間して配置された2つの湾曲部107,109によって、被覆電線300が2点で保持される。次いで、傾斜部105をペンチ等の工具で挟みながら、電線保持部106を底部201の斜面201a上に配置すると共に、レール挟持部103を底部201の側面201b近傍に、ベース部101を底面201c近傍にそれぞれ配置させ、更に、ペンチ等の他の工具にてレール挟持部102を掴み、ベース部101を底部201の幅寸法よりも長くなる位置まで引っ張り、フック部104を底部201の斜面201e上に配置して、工具をレール挟持部102から外す。これにより、フック部104が底部201に係止され、固定金具100全体がレール200に固定される。また、固定金具100をレール200から取り外す際には、ペンチ等の工具でフック部104を掴み、該フック部の先端が底部201の側面201dよりも外側に位置するまでフック部104を外方に引っ張って下方にずらし、工具で掴んだままの状態で底部201の下方に移動させる。これによりベース部101の弾性力が開放されて、固定金具100が底部201から取り外される。
また、他の従来の固定金具として、
図22に示すようなATC信号線支持金具が開示されている。この信号線支持金具400において、信号線支持部407は弾性体ワイヤーでできており、信号線404を支持する部分付近はクランパー部406の上辺に固定されている。クランパー部406は、コの字型の剛体構造物であり、下方に左右に広がる2枚の板よりなるレール受け410を有する。このレール受け410をレール401の底部403の底に当て、締め金具(不図示)のめねじと嵌合する締付ボルト408をねじ込んで、底部403の上面を締め上げることにより、クランパー部406をレール401に固定する。締付ボルト408の先端には軸対称にウェッジが形成されており、ねじ込み時にレール底部上面に食い込んで、締結をより確実にすることが開示されている。
【0004】
また、従来の固定金具として、トングレールに配管を固定する固定部材が開示されている(
図23)。この固定部材500は、クランプ部材550と差し込み部材553で構成されており、クランプ部材550は、トングレール502の顎部502bに嵌着し得るように側面視でコの字状に屈曲形成された取付部548と、該取付部の背部に溶接等により垂直に固着される筒体549とを有する。差し込み部材553は、配管546を抱持する締着具551と、該締着具に挿通される軸体552とを有している。クランプ部材550の取付部548は、その上片に固定用ボルト556が螺挿され、下片の上面にはトングレール502の顎部502bの下面に噛合して滑り止め効果を持たせるための凹凸557が形成されている。この取付部548をトングレール502の顎部502bに嵌めて固定用ボルト556を締着することにより、クランプ部材550がトングレール502に固定されることが開示されている。
【0005】
更に、従来の固定金具として、レールに融雪器を取り付ける取付金具が開示されている(
図24)。この取付金具600は、引掛ボルト631と、該引掛ボルトに移動可能に設けられた本体ブラケット632とを有している。本体ブラケット632の両側(レール601の長手方向両側)には、ボルト641a,641bが係合可能なねじ部が形成されている。ボルト641a,641bの先端は、本体ブラケット632を貫通して設けられている。また、本体ブラケット632のほぼ中央部にはボルト637が該本体ブラケットを貫通して設けられており、その先端に融雪器押さえ部材635が取り付けられている。
【0006】
融雪器610をレール601に取り付ける場合、先ず、引掛ボルト631の先端の突起部631aを、基本レール601の幅方向一方側から他方側に通し、引掛けボルト631を締めて、突起部31aと本体ブラケット632で基本レール601の底部605を挟持する。次に、ボルト641a,641bを締めて、ボルト641a,641bの先端部を基本レール601の脚部605の上面に当接させた状態で、ナット642a,642bを締めてボルト641a,641bを固定する。次に、融雪器610を、基本レール601と融雪器押さえ部材635との間に配置し、ナット636を締めてボルト637を固定する。これにより、引掛ボルト631と本体ブラケット632がレール601に固定されることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の固定金具では、レール底部の反対側にフック部を引っ掛けた状態で固定金具をレールに固定するため、分岐器(ポイント)レール内での進路切替え持に、トングレールに取り付けられたフック部が主レールと接触してしまう場合がある。また、トングレールが主レールに接触した状態であると、レール反対側にフック部を係止させることができず、また、金具取付の際に必要なペンチなどの工具が入るスペースがないため、固定金具をレールに取り付けることができない場合がある。
【0009】
また、分岐器内のクロッシング部(レール交差部)などではレール底部の幅方向長さが大きいため、固定金具の長さが足りず、取り付けることができない。更に、固定金具が十分な幅方向長さを有する場合であっても、レール下にバラスト(砕石)が敷き詰められている場合、金具取付作業に必要なスペースを確保するために、少なくともレール1本分の幅方向長さに相当する範囲でレール下からバラストを除去する必要があり、作業効率が悪い。加えて、レール挟持部が、取付対象である各レールの寸法及び形状に依存した設計がなされているため、寸法や形状の異なる他の取付対象に取り付けるには、別途設計した固定金具を作製しなければならず、汎用性が非常に低い。
【0010】
更に、このような従来の固定金具の問題点を解消すべく、上述の特許文献1〜3ではレール底部の片側に取り付けることが可能な固定金具が開示されているが、これらのいずれの固定金具においても、固定金具本体やレール底部への固定のためのボルト等の締結機構が、レール底部の傾斜に対して強固に固定できる構成をなしていない。また、上述の特許文献1〜3の固定金具では、1種類の固定金具を用いて寸法や形状の異なる複数の取付対象に取り付けるという課題を解決することはできない。
【0011】
本発明の目的は、取付対象の周辺部材との干渉を抑制しつつ小さいスペースで取付作業を行うことができ、また、当該取付対象に対して強固に取付けることができ、加えて、形状の異なる取付対象への取付けを可能にすることで高い汎用性を実現し、ひいては長尺体などの被取付対象を取付対象に強固に固定することができる固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の固定金具は、レールに取り付けられる固定金具であって、ベース枠体と、前記ベース枠体から延出する延出面材と、前記延出面材から前記ベース枠体と対向するように延在する対向面材と、前記対向面材に設けられ、被取付対象を固定するための固定部材と、前記対向面材にその面内方向に対して垂直な方向に移動可能に固定され、前記ベース枠
体との間に挿入されるレールを挟持するための挟持部材とを備え、前記挟持部材は、前記対向面材と係合するボルトと、該ボルトの前記ベース枠体側端部に可動であるように取り付けられたパッド部と、を有
し、前記パッド部は、前記レールに圧接される端面を有し、前記端面に凹凸が形成され、前記パッド部は、前記レールにおける底部の上面と圧接する下端面を有し、前記下端面が、前記対向面材よりも更に傾斜した状態で前記底部の上面に圧接され、前記挟持部材が、前記対向面材の傾斜方向に並べて配置された第1挟持部材及び第2挟持部材で構成され、前記第1挟持部材は、前記対向面材と係合する第1ボルトと、該第1ボルトの前記ベース枠体側端部に可動であるように取り付けられた第1パッド部とを有し、前記第2挟持部材は、前記対向面材と係合する第2ボルトと、該第2ボルトの前記ベース枠体側端部に可動であるように取り付けられた第2パッド部とを有し、前記第1パッド部が、前記レールにおける底部の上面に形成された第1傾斜面を押圧し、前記第2パッド部が、前記レールにおける底部の上面に形成され且つ前記第1傾斜面よりも傾斜した第2傾斜面を押圧することを特徴とする。
前記対向面材は、前記ベース枠体に対して傾斜して配置されるのが好ましい。
また、前記ベース枠体が前記レールにおける底部の下方に配置されると共に、前記延出面材が前記底部の側方に、前記対向面材が前記底部の上方にそれぞれ配置され、前記対向面材が、前記底部の上面の傾斜面と平行に配置される。
前記固定部材は、前記対向面材の上面に固定され且つ被取付対象を把持するブラケットを有するのが好ましい。
また、前記ブラケットは、被取付対象の外周を囲む曲線部と、該曲線部の両端から略同一方向に延出する一対の直線部とを有し、前記一対の直線部にそれぞれ設けられた貫通孔にネジが挿通され、且つ前記ネジが前記対向面材に設けられたタップ孔と係合するのがより好ましい。
また、前記被取付対象が1又は複数の電線であり、本発明の固定金具に前記1又は複数の電線が固定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定金具は、ベース枠体と対向するように延在する対向面材を有しており、対向面材に固定された挟持部材とベース枠体とでレールを挟持する。本構成により、固定金具をレールの片側のみに取り付けることが可能となり、固定金具が取付対象であるレール以外の他の周辺部材と干渉するのを抑制することでき、また、小さいスペースで取付作業を行うことができる。また、挟持部材のパッド部が、ボルトのベース枠体側端面に可動であるように取り付けられるので、ベース枠体と挟持部材とでレールを挟持した際に、パッド部がレールの対向面材と対向する側の表面(以下、レール表面という)に追従して可動し、パッド部の端面が、対向面材の面内方向に対して更に傾いた状態でレール表面に圧接される。これにより固定金具をレールに対して強固に取付けることができる。このように、レール表面の寸法や形状が一定でない場合であっても強固な取付を実現できるので、1種類の固定金具を用いて形状の異なる複数のレールへの取付けが可能となり、高い汎用性を実現することができる。更に、対向面材に設けられた固定部材によって長尺体などの被取付対象が固定されることにより、本発明の固定金具を介して被取付対象をレールに強固に固定することができる。
【0014】
また、対向面材がベース枠体に対して傾斜して配置されることにより、パッド部の押圧力をレール表面に確実に伝達することができ、より強固な固定を実現できる。
【0015】
更に、パッド部は、レールに圧接される端面を有し、該端面に凹凸が形成されているので、パッド部の端面とレール表面との摩擦力を向上することができる。
【0016】
また、ベース枠体がレールにおける底部の下面に当接して配置されると共に、延出面材が底部の側方に、対向部材が底部の上方にそれぞれ配置され、対向面材が、底部の上面の傾斜面と平行に配置される。これにより、固定金具をレールの底部片側に強固に取り付けることができ、固定金具がレール以外の他のレール等と干渉するのを抑制することできる。また、大きな作業スペースを要することなく取付作業を容易に且つ確実に実現することができる。
また、固定金具がレールの底部片側に取り付けられるので、レールの底部の幅方向長さが大きいトングレールなどにも容易に取り付けることができ、更にはレール下にバラストが敷き詰められている場合でも、レールの底部片側の下方にあるバラストを除去するだけで取付けが可能となるため、作業効率を向上することができる。
【0017】
特に、パッド部の下端面が、対向面材よりも更に傾斜した状態で底部の上面に圧接されるので、レールの底部上面の傾きが一定でない場合であっても強固な取付を実現できる。これにより、1種類の固定金具を用いて規格の異なる複数のレールへの取付けが可能となり、高い汎用性を実現することができる。更に、対向面材に設けられた固定部材によって1又は複数の電線が固定されることにより、本発明の固定金具を介して電線をレールに強固に固定することが可能となる。
【0018】
また、固定部材が、電線を把持するブラケットで構成され、対向面材の上面に固定されるので、被取付対象が異径電線や本数の異なる電線束、或いはケーブル、パイプ、チューブ、ホースであっても、これらを容易且つ確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る固定金具を概略的に示す側面図である。
【
図5】
図1における挟持部材の各構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は可動状態を示す。
【
図6】
図1の固定金具における対向面材及びパッド部の下端面の傾斜角度と、レール底部上面の傾斜角度との関係を示す図である。
【
図7】本発明の固定金具を40kgN(40N)レールに取り付ける前の状態を示す図である。
【
図8】
図7の固定金具を40kgNレールに取り付けた状態を示す図である。
【
図9】本発明の固定金具を50kgN(50N)レールに取り付ける前の状態を示す図である。
【
図10】固定金具を50kgNレールに取り付けた状態を示す図である。
【
図11】本発明の固定金具を60kg(60)レールに取り付ける前の状態を示す図である。
【
図12】固定金具を60kgレールに取り付けた状態を示す図である。
【
図13】
図1の固定金具の変形例を示す側面図であり、40kgNレールに取り付けた状態を示す。
【
図14】
図1の固定金具の変形例を示す側面図であり、50kgNレールに取り付けた状態を示す。
【
図15】
図1の固定金具の変形例を示す側面図であり、60kgレールに取り付けた状態を示す。
【
図16】
図10における固定部材の変形例を示す側面図であり、
図10に示す被覆電線よりも外径の大きい被覆電線をレールに固定する場合を示す図である。
【
図17】
図10における固定部材の変形例を示す側面図であり、2本の被覆電線をレールに固定する場合を示す図である。
【
図18】
図10における固定部材の変形例を示す側面図であり、3本の被覆電線をレールに固定する場合を示す図である。
【
図19】被覆電線をレールに固定する従来の固定金具の側面図である。
【
図22】他の従来の固定金具としてのATC信号線支持金具を示す側面図である。
【
図23】他の従来の固定金具として、トングレールに配管を固定する固定部材を示す側面図である。
【
図24】他の従来の固定金具として、レールに融雪器を取り付ける取付金具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る固定金具を概略的に示す側面図であり、
図2は、
図1の固定金具の平面図、
図3は、
図1の固定金具の正面図、
図4は、
図1の固定金具の背面図である。本実施形態の取付金具は、レールに被覆電線などの長尺体を固定するために用いられる。以下、説明の便宜上、取付金具の取付対象をレール、被取付対象を被覆電線として説明する。
【0022】
図1乃至
図4に示す如く、固定金具1は、金具本体10と、該金具本体上部に取り付けられ、金具本体10をレール2の底部3(
図7)に固定するための挟持部材20,20と、金具本体10の上部に取り付けられ、被覆電線を固定する固定部材30とを備える。本実施形態では金具本体10は側面視で略コの字型を有しており、その内部空間に取付対象が挿入された状態で、挟持部材20により金具本体10が取付対象に締め付けられる。
【0023】
具体的には、金具本体10は、ベース枠体11と、該ベース枠体の端部から垂直に延出する延出面材12と、延出面材12の端部からベース枠体11と対向するように延在し且つベース枠体11に対して傾斜した対向面材13とを有している。ベース枠体11は、平面視で略矩形に曲げ加工されており、挟持部材20の押圧力に耐えうるように、高さ方向に所定厚みを有している。具体的には、ベース枠体11は、枠体基部11a、該枠体基部から略直角に延び且つ互いに対向して設けられる延出部11b−1,11b−2、及びこれら延出部の一端から略直角に延び且つ枠体基部11aに対向して設けられる端部11c−1,11c−2で構成される。
【0024】
延出面材12は、ベース枠体11の端部、すなわち枠体基部11aと一体成形された所定厚みの板材からなる。
【0025】
対向面材13は、延出面材12と一体成形された所定厚みの板材からなり、延出面材12の上端部からベース枠体11と対向するように横方向に延在し且つベース枠体11に対して所定角度だけ傾斜している。ベース枠体11が水平方向に配置される場合、延出面材12は鉛直方向に配置され、対向面材13は水平方向に対して所定の仰角で配置される。なお対向面材13はベース部材11に対して傾斜して配置されるのが好ましいが、平行に配置されてもよい。
【0026】
挟持部材20,20は、対向面材13にレール2の長手方向Aに並べて取り付けられており、平面視において対向面材13の中心線Xに対して線対称な位置に配置されている(
図2)。この挟持部材20は、対向面材13にその面内方向に対して垂直な方向に移動可能に固定され、該ベース枠
体との間に挿入されるレール2の底部3を挟持する(
図7)。挟持部材20は、対向面材13と係合するボルト21と、該ボルトのベース枠体11側端部に可動であるように取り付けられたパッド部22とを有する。対向面材13にはタップ孔13eが形成されており、ナット24及び緩み防止リング25により、ボルト21が所定位置で固定される。
【0027】
ボルト21は、
図5(a)〜(c)に示すように、中実シャフト21bの外周に雄ねじ21cが形成されてなり、雄ねじ21cが対向面材13のタップ孔13eに形成された雌ねじ(不図示)と係合する。中実シャフト21bの上端部21dには、該シャフトの長手方向に沿って六角孔21eが形成されており、中実シャフト21bのベース枠体11側端部、すなわち下端部21aにはパッド部22が取り付けられている。
【0028】
パッド部22は、本実施形態では略短円柱形状を有しており、ボルト21と同軸で配置されている。パッド部22は、例えばスイベル式でボルト21と接続されており、連結軸21fを介してボルト21に連結されている。また、挟持部材20はチルト機構を有しており、パッド部22がボルト21の軸を中心としてその軸周りに所定角度の範囲内(例えば0〜15°)で傾斜することが可能となっている(
図5(d))。パッド部22は、レール2の底部3に圧接される下端面22aを有しており、下端面22aには、同心で配置された環状の複数溝23が形成されている。この複数溝23により、パッド部22の下端面22aと取付対象表面との摩擦力を向上することが可能となっている。なお下端面22aに形成される溝は、レール2の底部3との摩擦力を向上できるものであれば、1又は複数の溝であってもよく、また、他の形状を有していてもよい。他の形状としては、例えば、ローレット形状によって得られる凹凸形状など、様々な突起部形状を選択することができる。
【0029】
固定部材30は、対向面材13の上面13aに固定され且つ被覆電線を把持するブラケット31と、該ブラケットを上面13aに固定するための溝付きネジ32を有する(
図1)。ブラケット31は、取付対象である被覆電線の外周を囲む曲線部31aと、該曲線部の両端から略同一方向に延出する一対の直線部31b,31bとを有しており、一対の直線部31b,31bの端部にはそれぞれ貫通孔(不図示)が設けられている。曲線部31aは、側面視でその中心が対向面材13の傾斜方向端面13bよりもレール2の腹部4側に位置するように配置される。溝付きネジ32は、2つの貫通孔に挿通された状態で、対向面材13に設けられたタップ孔と係合する。
【0030】
また、対向面材13には、
図2に示すように、挟持部材20,20以外の他の挟持部材を取り付けることが可能な予備タップ孔13c,13cが設けられている。予備タップ孔13c,13cは、それぞれ挟持部材20,20よりもレール2側、すなわちレール2の腹部4側に形成されている。また、対向面材13には、曲線部の大きなブラケットを固定することが可能な予備タップ孔13dが設けられており、この予備タップ孔13dは、溝付きネジ32の固定位置よりも延出面材12側に形成されている。
【0031】
図6は、
図1の固定金具1における対向面材13の傾斜角度、パッド部22の下端面22aの傾斜角度、及びレールにおける底部3”の上面3”−1cの傾斜角度の関係を示す図である。
【0032】
レールが例えば60kgレールである場合、レール2”における底部3”の一方の張出部3”−1は、ほぼ一定の傾斜角度である上面3”−1cを有しており、傾斜角度αは約14°とほぼ一定である。このようなレールに、例えば対向面材13の傾斜角度が6°である固定金具1を取り付けた際にはその角度差βが8°となり、この角度差βが対向面材13に対するパッド部22の傾斜角度に相当する。このパッド部22の傾斜角度βがパッド部22の下端面22aの可動範囲内(−15°≦β≦15°)であれば、パッド部22の下端面22aが張出部3”−1の上面3”−1cに平行に配置される。したがって、底部3”の張り出し部3”−1における上面3”−1aの傾斜角度が対向面材13の傾斜角度と異なる場合であっても、固定金具1をレール2”の底部3”に強固に固定することができる。また、対向面材の傾斜角度をγ、パッド部の下端面の可動角度の範囲を±ε以内とした場合、張出部上面の傾斜角度α(0<α)に対して±εの範囲内となるように傾斜角度γを決定すれば(α−ε≦γ≦α+ε)、パッド部22の下端面22aをレールの底部上面に平行に圧接させることができ、固定金具1をレール2”に強固に取り付けることができる。
【0033】
固定金具1は、例えば以下のようにレール2に固定される。
図7では、40kgNレールに取り付ける場合を例に上げて説明する。
先ず、金具本体10の2つのタップ孔13e,13eにボルト21を嵌入し、ボルト21を対向面材13に取り付ける。また、対向面材13から上方に突出したボルト21の上部にナット24及び緩み防止リング(イダリング)25をそれぞれ係合させる。また、溝付きネジ32でブラケット31を対向面材13の上面13aに仮固定しておく。
【0034】
次に、ナット24及び緩み防止リング25がゆるんだ状態で、固定金具1の内部空間Sに、底部3の張出部3−1を挿入する。張出部3−1は、下面3−1a、側面3−1b、外側上面3−1c及び内側上面3−1dで画定される部位であり、これら下面3−1a、側面3−1b、内側上面3−1c及び外側上面3−1dを覆うように金具本体10を張出部3−1に装着する。そして、張出部3−1の下面3−1aにベース枠体11を当接させると共に、張出部3−1の側面3−1bを延出面材12に当接させる(
図8)。すなわち、ベース枠体11と張出部3−1との間、及び延出面材12と張出部3−1との間に隙間が生じないようにする。このとき、ベース枠体11が張出部3−1の下方に配置されると共に、延出面材12が張出部3−1の側方に、固定部材20が張出部3−1の上方にそれぞれ配置される。
【0035】
次いで、ナット24,24及び緩み防止リング25,25がゆるんだ状態で、六角レンチをボルト21の六角溝21eに差し込み、ボルト21を回転させて、ボルト21を対向面材13から内部空間S側に進行させ、パッド部22の下端面22a全体を張出部3−1の外側上面3−1cに当接させる。パッド部22の下端面22aが外側上面3−1cに当接した後、更にボルト21をねじ込み、金具本体10が張出部3−1に強固に取り付けられるまで、パッド部22で外側上面3−1cを押圧する。
【0036】
その後、ナット24を回転して対向面材13側に進行させ、パッド部22が外側上面3−1cを押圧した状態でナット24をボルト21に固定し、更に、緩み防止リング25でナット24を固定する。これにより、ボルト21の回転が抑止され、対向面材13に固定される。もう一方の挟持部材20も、上記と同様の工程にて取付け、2つの挟持部材20,20とベース枠体11にて張出部3−1を挟持する。
【0037】
次いで、溝付きネジ32をゆるめて仮固定していたブラケット30を外し、該ブラケットの曲線部31で被覆電線6を挟んだ状態で、再度溝付きネジ32を対向面材13に係合させ、スクリュードライバで増し締めする。これにより、被覆電線6が対向面材13の上面にレール2の長手方向に沿って固定される。
【0038】
上記方法により、固定金具1がレール2における底部3の張出部3−1に強固に取り付けられ、被覆電線6が、固定金具1を介して、底部3と頭部5とを連結する腹部4近傍に固定される。また、被覆電線6は、ブラケット30により、対向面材13の傾斜方向端面13bよりも腹部4側に固定され、且つ対向面材13の面内方向直上に固定される。このようにして、固定金具1をレール2に容易に取り付けることができ、また、被覆電線6を容易に固定金具1に固定することができる。
【0039】
図9は、固定金具1を50kgNレールに取り付ける前の状態を示す図であり、
図10は、固定金具を50kgNレールに取り付けた状態を示す図である。50kgNレールとしてのレール2’は、各部位の寸法が異なること以外は基本的に40kgNレールと同じである。すなわちレール2’は、張出部3’−1,3’−2を有する底部3’、腹部4’及び頭部5’で構成され、張出部3’−1は、外側上面3’−1cと内側上面3’−1dとを有している。
【0040】
本発明の固定金具1は、40kgNレールと同じ方法で、50kgNレールにも容易に取り付けることができる。すなわち、張出部3’−1の下面3’−1aにベース枠体11を当接させると共に、張出部3’−1の側面3’−1bを延出面材12に当接させ(
図9)、次いで、パッド部22が張出部3’−1の外側上面3’−1cを押圧した状態でナット24をボルト21に固定し、更に、緩み防止リング25でナット24を固定し、2つの挟持部材20,20とベース枠体11にて張出部3’−1を挟持する(
図10)。その後、ブラケットの曲線部31で被覆電線6を挟んだ状態で、溝付きネジ32を対向面材13に係合させ、スクリュードライバで増し締めする。これにより、固定金具1がレール2’に強固に取り付けられ、また、被覆電線6が固定金具1に容易に固定される。
【0041】
図11は、固定金具1を60kgレールに取り付ける前の状態を示す図であり、
図12は、固定金具を60kgレールに取り付けた状態を示す図である。60kgレールとしてのレール2”は、主に底部における張出部の上面の形状が40kgNレール或いは50gNレールと異なる。具体的には、レール2”は、張出部3”−1,3”−2を有する底部3”、腹部4” 及び頭部5” で構成され、張出部3”−1は、傾斜角度が一定の上面3”−1cを有している。
【0042】
本発明の固定金具1は、40kgN、50kgNレールと同じ方法で、60kgレールにも容易に取り付けることができる。すなわち、張出部3”−1の下面3”−1aにベース枠体11を当接させると共に、張出部3”−1の側面3”−1bを延出面材12に当接させ(
図11)、次いで、パッド部22が張出部3’−1の上面3”−1cを押圧した状態でナット24をボルト21に固定し、更に、緩み防止リング25でナット24を固定し、2つの挟持部材20,20とベース枠体11にて張出部3”−1を挟持する(
図12)。その後、ブラケットの曲線部31で被覆電線6を挟んだ状態で、溝付きネジ32を対向面材13に係合させ、スクリュードライバで増し締めする。これにより、固定金具1がレール2”に取り付けられ、また、被覆電線6が固定金具1に固定される。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、対向面材13に固定された挟持部材20とベース枠体11とでレール2の底部3を挟持する。本構成により、固定金具1をレール2の片側のみに取り付けることが可能となり、固定金具1が取付対象であるレール2以外の他の周辺部材と干渉するのを抑制することでき、また、小さいスペースで取付作業を行うことができる。また、挟持部材20のパッド部22が、ボルト21のベース枠体側端面21aに可動であるように取り付けられるので、ベース枠体11と挟持部材20とでレール2を挟持した際に、パッド部22がレール2の対向面材13と対向する側の外側表面3−1cに追従して可動し、パッド部の端面が、対向面材13の面内方向に対して更に傾いた状態でレール2の外側表面3−1cに圧接される。これにより固定金具1をレール2に対して強固に取付けることができる。
また、ベース枠体11がレール2における底部3の下面3−1aに当接して配置されると共に、延出面材12が底部3の側方に、対向面材13が底部3の上方にそれぞれ配置され、対向面材13が、底部3の外側上面3−1cの傾斜面と平行に配置される。これにより、固定金具1を張出部3−1、すなわちレール2の底部片側に強固に取り付けることができ、固定金具1がレール2以外の他のレール等と干渉するのを抑制することできる。また、大きな作業スペースを要することなく取付作業を容易に且つ確実に実現することができる。また、固定金具1がレール2の張出部3−1に取り付けられるので、レール2の底部3の幅方向長さが大きいトングレールなどにも容易に取り付けることができ、更にはレール2下にバラストが敷き詰められている場合でも、レール2の張出部3−1の下方にあるバラストを除去するだけで取付けが可能となるため、作業効率を向上することができる。
【0044】
また、パッド部22の下端面22aを、対向面材13よりも更に傾斜した状態で底部3の上面3−1c,3’−1c或いは3”−1cに圧接させることができるので、レール2の底部3の上面の傾きが一定でない場合であっても強固な取付を実現できる。これにより、1種類の固定金具を用いて規格の異なる複数のレール2,2’,2”への取付けが可能となり、高い汎用性を実現することができる。
【0045】
以上、本実施形態に係る固定金具について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0046】
図13乃至
図15は、
図1の固定金具の変形例を示す側面図であり、
図13は固定金具を40kgNレールに取り付けた状態、
図14は、固定金具を50kgNレールに取り付けた状態、
図15は固定金具を60kgレールに取り付けた状態をそれぞれ示す。上記実施形態では固定金具に挟持部材が2つ設けられているが、本変形例では挟持部材が4つ設けられる。なお、
図13,14,15の固定金具の構成は、それぞれ
図8,10,12に示す固定金具の構成と基本的に同じであるため、以下に異なる部分を説明する。
【0047】
図13において、固定金具1’は、対向面材13にレール幅方向に並べて取り付けられた挟持部材40,40を備えている。挟持部材40,40は、それぞれ挟持部材20,20に対してレール2の幅方向内側に配置されており、予備タップ孔13c,13cを介して対向面材13に取り付けられる(
図2参照)。挟持部材40は、対向面材13と係合するボルト41と、該ボルトのベース枠体11側端部に可動であるように取り付けられたパッド部42とを有しており、ナット44及び緩み防止リング45により、ボルト41が所定位置で固定される。
【0048】
40kgNレールでは、上述のように、底部3における張出部3−1が傾斜角度の異なる外側上面3−1c,内側上面3−1dを有している。そこで本変形例では、挟持部材20におけるパッド部22(第1パッド部)が外側上面3−1c(第1傾斜面)を押圧すると共に、挟持部材40のパッド部42(第2パッド部)が内側上面3−1d(第2傾斜面)を押圧する。これにより、パッド部22の下端面22aが外側上面3−1cに平行に圧接され、更に、パッド部42の下端面42aが内側上面3−1cに平行に圧接される。
【0049】
また、
図14に示すように、50kgNレールの場合も、挟持部材20におけるパッド部22が外側上面3’−1cを押圧すると共に、挟持部材40のパッド部42が内側上面3’−1dを押圧する。60kgレールは、上述のように、底部3”における張出部3”−1が傾斜角度が一定である上面3”−1cを有しているが、このような形状を有するレール3”にも挟持部材20,20に加えて、挟持部材40,40を適用することができる。このとき、パッド部22の下端面22aが上面3”−1cに平行に圧接されると共に、パッド部42の下端面42aが上面3”−1cに平行に圧接される。このように、2つの挟持部材20,20とベース枠体11でレール底部を挟持しつつ、更に2つの挟持部材40,40とベース枠体11でレール底部を挟持することにより、固定金具1’をより強固にレールに取り付けることができる。
【0050】
図16は、
図10における固定部材30の変形例を示す側面図であり、
図10に示す被覆電線よりも外径の大きい被覆電線をレールに固定する場合を示す図である。
図10の固定部材30は被覆電線6を挿通するのに十分な曲率の曲線部31aを有しているが、被取付対象である被覆電線の外径が、曲線部31aの内径よりも大きい場合がある。この場合には、固定部材30に代えて、
図16に示すような固定部材を設けることができる。
【0051】
具体的には、固定部材50は、固定部材30と同様、対向面材13の上面13aに固定され且つ被取付対象を把持するブラケット51と、ブラケット51を上面13aに固定するための十字溝付きネジ52を有する。ブラケット51は、被覆電線60の外周を囲む曲線部51aと、該曲線部の両端から略同一方向に延出する一対の直線部51b,51bとを有しており、一対の直線部31b,31bの端部にはそれぞれ貫通孔(不図示)が設けられている。そして十字溝付きネジ52は、2つの貫通孔に挿通された状態で、対向面材13に設けられた予備タップ孔13dと係合している(
図2参照)。本変形例によれば、被取付対象が電力供給線等の外径の大きい被覆電線を含む場合であっても、曲線部の内径の異なる複数種のブラケットを準備して、各被覆電線に適合するブラケットを採用し、予備タップ孔で固定することにより、被覆電線を金具本体10に容易に且つ確実に把持することができる。
【0052】
また、上記のような構成の固定部材50を設けることにより、
図17に示すように、
図10に示す被覆電線6と同等の外径を有する2本の電線束70をまとめてレールに固定することもでき、また、3本の電線束80をレール2’に固定することも可能となる(
図18)。このように、導体、被覆電線、撚り電線などの被取付対象の外径、本数に応じて固定部材を選択することにより、当該被取付対象を金具本体に容易に且つ確実に把持することができ、作業効率を格段に向上することができる。また上記実施形態では取付対象がレール、被取付対象が被覆電線であるが、これに限らず、取付対象が、張出部を有する建造物等の構造体等であってもよく、被取付対象が、配管等の長尺物、或いはセンサ等の他の部品等であってもよい。被取付対象である長尺物としては、例えばパイプ、チューブ、ホースなどが挙げられる。パイプ、チューブ、ホースなどを固定する場合は、分岐器のポイントに 注油する機械油や雪解け用の水などをパイプ、チューブ、ホース等に通すことが可能となる。
【0053】
また、上記実施形態ではパッド部22,42は略短円柱形状を有しており、それぞれボルト21,41と同軸で配置されているが、これに限らず、短四角柱形状等、他の形状を有していてもよい。また、パッド部22,42の端面22a,42aにそれぞれ溝が形成されているが、これに限らず、摩擦力の大きい他の薄板部材をパッド部の端面に設け、この薄板部材で底部の張出部上面を押圧してもよい。