特許第6190846号(P6190846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190846
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】表面処理銅箔
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20170821BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20170821BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170821BHJP
   C23C 22/24 20060101ALI20170821BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20170821BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20170821BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20170821BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20170821BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C23C28/00 C
   B32B15/01 H
   B32B15/08 J
   C23C22/24
   C25D1/04 311
   C25D5/10
   C25D5/12
   C25D7/06 A
   H05K1/09 A
【請求項の数】26
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-95252(P2015-95252)
(22)【出願日】2015年5月7日
(62)【分割の表示】特願2014-508073(P2014-508073)の分割
【原出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2015-180777(P2015-180777A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年6月4日
【審判番号】不服2016-6147(P2016-6147/J1)
【審判請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-76710(P2012-76710)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮
【合議体】
【審判長】 鈴木 正紀
【審判官】 金 公彦
【審判官】 土屋 知久
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 28/00
C23C 22/24
B32B 15/04
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーに接合される表面処理銅箔であって、該表面処理銅箔表面のSiの付着量が3.5〜243.5μg/dm2であり、該表面処理銅箔表面のNの付着量が4.5〜399.3μg/dm2であり、Kuraray製のVecstar(登録商標)CT−Zの液晶ポリマーに回路幅3mmとしてプレスによって接合された場合のJIS C6471−1995に準拠して行われる90度の常態ピール強度が0.3kg/cm以上であることを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項2】
前記表面処理銅箔表面のSiの付着量が8.0〜243.5μg/dm2であり、前記表面処理銅箔表面のNの付着量が16.0〜399.3μg/dm2であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記表面処理銅箔表面のSiの付着量が20.5〜243.5μg/dm2であり、前記表面処理銅箔表面のNの付着量が16.4〜399.3μg/dm2であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記表面処理銅箔表面の表面粗さRzが0.92μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記表面処理銅箔表面の表面粗さRzが0.82μm以上1.62μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
フレキシブルプリント配線板用銅箔であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
銅箔が圧延銅箔又は電解銅箔であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
1GHzを超える高周波数下で使用されるフレキシブルプリント回路板に用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項9】
銅箔表面に粗化処理層、耐熱処理層、防錆処理層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項10】
銅箔表面に耐熱処理層、防錆処理層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項11】
銅箔表面に耐熱処理層若しくは防錆処理層を有し、前記耐熱処理層若しくは防錆処理層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項12】
銅箔表面に耐熱処理層を有し、前記耐熱処理層の上に防錆処理層を有し、前記防錆処理層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項13】
銅箔表面にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項14】
銅箔表面に粗化処理層を有し、前記粗化処理層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項15】
銅箔表面に粗化処理層を有し、前記粗化処理層の上に防錆処理層及び耐熱処理層からなる群から選択される1種以上の層を有し、前記防錆処理層及び耐熱処理層からなる群から選択される1種以上の層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項16】
銅箔表面に粗化処理層を有し、粗化処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項17】
銅箔表面にシランカップリング処理層を有する請求項1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項18】
銅箔表面に粗化処理層を有し、前記粗化処理層が一次粒子層と、該一次粒子層の上に、二次粒子層を有する請求項1〜、1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項19】
前記粗化処理層が一次粒子層と、該一次粒子層の上に、二次粒子層を有する請求項、1〜1のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項20】
前記粗化処理層が銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層を有する請求項、1〜1、119のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
【請求項21】
前記粗化処理層が銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層を有し、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmである請求項、1〜1、1〜2のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項22】
前記粗化処理層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を有する請求項、1〜1、1〜2のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項23】
前記粗化処理層の上に防錆処理層を有し、前記防錆処理層の上にクロメート処理層を有し、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を有する請求項、1〜1、1〜2のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項24】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の表面処理銅箔を備えたフレキシブルプリント配線板(FPC)を製造するための銅箔積層板。
【請求項25】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の表面処理銅箔を用いたフレキシブルプリント配線板。
【請求項26】
請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板を用いた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電気信号の効率の良い伝送が可能なフレキシブルプリント配線板(FPC)を製造するための銅張積層板用表面処理銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、基板の銅箔をエッチングして種々の配線パターンを形成し、電子部品をハンダで接続して実装することにより製造される。銅箔はその製造方法から電解銅箔と圧延銅箔に分類され、フレキシブル基板用銅箔には、耐屈曲性に優れる圧延銅箔が好んで用いられてきた。また、パソコンや移動体通信等の電子機器では、通信の高速化、大容量化に伴い、電気信号の高周波化が進んでおり、これに対応可能なプリント配線板及び銅箔が求められている。
【0003】
パソコンや移動体通信等の電子機器では電気信号が高周波化しているが、電気信号の周波数が1GHz以上になると、電流が導体の表面にだけ流れる表皮効果の影響が顕著になり、表面の凹凸で電流伝送経路が変化して導体損失が増大する影響が無視できなくなる。この点からも銅箔の表面粗さが小さいことが望まれる。
【0004】
生箔の電解銅箔の表面は銅の電着粒によって形成され、生箔の圧延銅箔の表面は圧延ロールとの接触によって形成される。そのため、一般的に生箔の圧延銅箔の表面粗さは電解銅箔の表面粗さより小さい。また、粗化処理における電着粒子は、圧延銅箔の方が微細である。この意味から、圧延銅箔は高周波回路用銅箔として優れていると言える。
【0005】
一方、高周波になるほどデータ輸送量は大きくなるが、信号電力の損失(減衰)も大きくなり、データが読み取れなくなるため、FPCの回路長さが制限される。このような信号電力の損失(減衰)を減らすために、導体側は、銅箔の表面粗さが小さいものへ、また樹脂側としては、ポリイミドから液晶ポリマーへと移行する傾向にある。なお、表皮効果の観点から最も望ましいのは、粗化処理を形成しない、粗さの小さい銅箔であると考えられる。
【0006】
電子回路における信号電力の損失(減衰)は大きく二つに分けることができる。その一つは、導体損失すなわち銅箔による損失であり、その二は、誘電体損失すなわち基板による損失である。導体損失では、高周波域では、表皮効果があり、電流は導体の表面を流れるという特性を有する。このため、銅箔表面が粗いと複雑な経路を辿って、電流が流れることになる。上記に述べたように、圧延銅箔は電解銅箔に比べて粗さが小さいので、導体損失が少ないという傾向がある。
【0007】
他方、液晶ポリマー(LCP)は、液相(溶融又は溶液)で光学的な異方性を示すポリマーであり、銅箔とは接着剤なしで積層することが必要となる。全芳香族ポリエステル系液晶ポリマーは、溶融状態でも分子の配向性を示し、固体状態でもこの状態が保持され、熱可塑性を示すハロゲンフリーの材料である。
【0008】
液晶ポリマー(LCP)の特徴は、低誘電率、低誘電正接であることである。因みにLCPの比誘電率は3.3であるのに対して、ポリイミドの比誘電率は3.5であり、誘電正接はLCPが0.002であるのに対して、ポリイミドのそれは0.01であるので、液晶ポリマー(LCP)の方が、特性的に優れている。また、液晶ポリマー(LCP)は、低吸水性であり、かつ低吸湿率である特徴を有し、電気特性の変化が少なく、また寸法変化が少ないという大きな利点を持つ。
【0009】
圧延銅箔においては、ハンドリング性を保つ目的から、最終焼鈍後に圧延するという圧延上がり材が最適である(例えば、特許文献1参照)という特徴を有する。
しかしながら、液晶ポリマー(LCP)はポリイミドと比較して強度が弱く、銅箔を積層した材料はピール強度が出難いという大きな問題を有している。銅箔の粗さを大きくすると、物理的なアンカー効果が得られることからピール強度は高くなる傾向にあるが、前述の表皮効果の影響によって、高周波における電気特性が悪化してしまう。
また、高周波回路用銅箔の提案がいくつかあるが(例えば、特許文献2、3、4、5参照)、圧延銅箔の製造工程の簡素化と高周波伝送損失を減少させるという観点から、有効な技術がないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−193211号公報
【特許文献2】特公昭61−54592号公報
【特許文献3】特公平3−34679号公報
【特許文献4】特公平7−10564号公報
【特許文献5】特開平5−55746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波用途に好適な液晶ポリマー(LCP)に銅箔を積層したフレキシブルプリント基板(FPC)用銅箔を提供するに際して、ピール強度を向上させた銅箔を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、次の理由により、伝送損失を低下することができることを見出した。
その一は、高周波領域において銅箔の表面に大きく影響されるということである。表面粗さが大きくなると伝送損失は大きくなる。したがって、銅箔の表面粗さを、できるだけ小さく調整することが有効である。
その二は、液晶ポリマー(LCP)積層基板の利用である。しかしこのためには、銅箔との接着強度(ピール強度)を高める必要がある。
以上の問題を解決することによって、信号電力損失(減衰)を抑制したフレキシブルプリント基板(FPC)を提供することができるという知見を得た。
【0013】
上記の知見から、本願発明は、以下の発明を提供する。
1)銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であることを特徴とする表面処理銅箔。
【0014】
2)銅箔表面のSiの付着量が10.0〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が8.0〜690μg/dm2であることを特徴とする上記1)記載の表面処理銅箔。
【0015】
3)銅箔表面のSiの付着量が20.5〜245μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が16.4〜565μg/dm2であることを特徴とする上記1)記載の表面処理銅箔。
【0016】
4)フレキシブルプリント回路基板用銅箔であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【0017】
5)銅箔が圧延銅箔又は電解銅箔であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【0018】
6)液晶ポリマーからなるフレキシブルプリント回路基板に接合される銅箔であることを特徴とする上記1)〜5)のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【0019】
7)液晶ポリマーからなるフレキシブルプリント回路基板に接合された場合の90度の常態ピール強度が0.3kg/cm以上であることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【0020】
8)1GHzを超える高周波数下での使用が可能なフレキシブルプリント回路板に接合されることを特徴とする上記1)〜7)のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、高周波回路用途に用いることができる表面処理銅箔が製造可能であり、該銅箔を液晶ポリマー(LCP)積層基板に適用することにより、接着強度(ピール強度)を高めることが可能であり、かつ1GHzを超える高周波数下での使用が可能なフレキシブルプリント回路板が実現できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
高周波回路用途に用いることができる表面処理銅箔は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であることを特徴とする。これによって、銅箔を液晶ポリマー(LCP)積層基板に接着する際に、接着強度(ピール強度)を高めることが可能となる。なお、上記銅箔表面のSi付着量とN付着量を達成する1つの手段として、銅箔表面をシラン処理することが挙げられる。また、本願の表面処理銅箔を高周波回路用銅箔に用いることは有効である。
【0023】
銅箔表面のSiの付着量が3.1μg/dm2未満で、銅箔表面のNの付着量が2.5μg/dm2未満であると、接着強度は十分でなく、銅箔表面のSiの付着量が300μg/dm2を超え、銅箔表面のNの付着量が690μg/dm2を超える場合には、LCPとの積層の際に発泡が起こるので、多すぎるのは好ましくないと言える。
特に、銅箔表面のSiの付着量が8.0〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が8.0〜690μg/dm2であること、さらには銅箔表面のSiの付着量が20.5〜245μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が16.4〜565μg/dm2であることが望ましい。
なお、シラン塗布方法はシランカップリング剤溶液のスプレーふきつけ、コーター塗布、浸漬、流しかけ等いずれでも良い。これらについては、既に公知の技術なので(例えば、特公昭60−15654号参照)、詳細は省略する。
【0024】
銅箔表面のSiの付着量については、1dm×1dmの大きさの表面処理された銅箔を酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分析法)で定量して、表面処理された銅箔の単位面積に対する、付着したSiの質量(μg)を求めた。
銅箔表面のNの付着量については、1dm×1dmの大きさの表面処理された銅箔を高温で溶解し、発生したNO2から付着N量を算出して、銅箔の全表面に付いたNの量を測定することで、表面処理された銅箔の単位面積に対する、付着したNの質量を求めた。
【0025】
接着強度を高めた銅箔は、液晶ポリマーからなるフレキシブルプリント回路基板用として最適な高周波回路用銅箔となる。すなわち、液晶ポリマーからなるフレキシブルプリント回路基板に接合された場合の90度の常態ピール強度が0.3kg/cm以上とすることが可能となる。
【0026】
また、銅箔の接着強度を高めることができるので、銅箔の表面粗さが少ない(導体損失の少ない)圧延銅箔及び電解銅箔に適用でき、最適な高周波回路用銅箔を得ることができる。高周波回路用銅箔は、1GHzを超える高周波数下での使用が可能なフレキシブルプリント回路板を製造可能とする。
なお、本願の発明にかかる表面処理銅箔は粗化処理層および/または耐熱処理層および/または防錆処理層および/またはクロメート処理層および/またはめっき処理層および/またはシランカップリング処理層を有しても良い。前記粗化処理層は特に限定はされず、あらゆる粗化処理層や公知の粗化処理層を適用することが出来る。
【0027】
前記耐熱処理層は特に限定はされず、あらゆる耐熱処理層や公知の耐熱処理層を適用することが出来る。前記防錆処理層は特に限定はされず、あらゆる防錆処理層や公知の防錆処理層を適用することが出来る。前記めっき処理層は特に限定はされず、あらゆるめっき処理層や公知のめっき処理層を適用することが出来る。前記クロメート処理層は特に限定はされず、あらゆるクロメート処理層や公知のクロメート処理層を適用することが出来る。
【0028】
例えば、本願の発明にかかる表面処理銅箔はその表面に、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のための粗化処理を施すことにより粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。
【0029】
また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱処理層または防錆処理層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱処理層又は防錆処理層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。
【0030】
すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱処理層、防錆処理層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、表面処理銅箔の表面に、耐熱処理層、防錆処理層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆処理層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。なお、本発明において「防錆処理層」は「クロメート処理層」を含む。
【0031】
なお、樹脂との密着性を考慮すると、表面処理銅箔の最外層にシランカップリング処理層を設けることが好ましい。粗化処理層としては銅の一次粒子層と、該一次粒子層の上に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金からなる二次粒子層とが形成されていることが好ましい。
また、該一次粒子層の平均粒子径が0.25−0.45μmであり、該二次粒子層の平均粒子径が0.05−0.25μmであることがより好ましい。
【0032】
また、防錆処理またはクロメート処理として以下の処理を用いることができる。
<Ni−Coめっき>:Ni−Co合金めっき
(液組成)Co:1〜20g/L、Ni:1〜20g/L
(pH)1.5〜3.5
(液温)30〜80℃
(電流密度)1〜20A/dm2
(通電時間)0.5〜4秒
【0033】
<Zn−Niめっき>:Zn−Ni合金めっき
(液組成)Zn:10〜30g/L、Ni:1〜10g/L
(pH)3〜4
(液温)40〜50℃
(電流密度)0.5〜5A/dm2
(通電時間)1〜3秒
【0034】
<Ni−Moめっき>:Ni−Mo合金めっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、モリブデン(モリブデン酸ナトリウムとして添加):0.1〜10g/L、クエン酸三ナトリウム:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(液温)55〜65℃
(電流密度)1〜11A/dm2
(通電時間)1〜20秒
【0035】
<Cu−Znめっき>:Cu−Zn合金めっき
(液組成)NaCN:10〜30g/L、NaOH:40〜100g/L、Cu:60〜120g/L、Zn:1〜10g/L
(液温)60〜80℃
(電流密度)1〜10A/dm2
(通電時間)1〜10秒
【0036】
<電解クロメート>
(液組成)無水クロム酸、クロム酸、または重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛(添加する場合は硫酸亜鉛の形で添加):0〜5g/L
(pH)0.5〜10
(液温)40〜60℃
(電流密度)0.1〜2.6A/dm2
(クーロン量)0.5〜90As/dm2
(通電時間)1〜30秒
【0037】
<浸漬クロメート>
(液組成)無水クロム酸、クロム酸、または重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛(添加する場合は硫酸亜鉛の形で添加):0〜5g/L
(pH)2〜10
(液温)20〜60℃
(処理時間)1〜30秒
【0038】
また、シランカップリング処理において、銅箔の表面にSiとNを付着させる場合には、シランカップリング処理にはアミノシランを用いる。そして、シランカップリング処理液中のシランカップリング剤の濃度を従来よりも高濃度(例えば、1.5vol%以上)として、シランカップリング処理を行うことが必要である。また、シランカップリング処理後の乾燥温度を高くしすぎず、また乾燥時間を長くしすぎないことが必要である。乾燥温度を高くしすぎたり、乾燥時間を長くしすぎた場合、銅箔表面に存在するシランカップリング剤が脱離する場合があるからである。
【0039】
シランカップリング処理後の乾燥は、例えば乾燥温度90〜110℃、好ましくは95℃〜105℃で、乾燥時間1〜10秒間好ましくは1〜5秒間で行うことが好ましい。
また、好ましい実施の態様において、アミノシランとして、1以上のアミノ基及び/又はイミノ基を含むシランを使用することができる。アミノシランに含まれるアミノ基及びイミノ基の数は、例えばそれぞれ1〜4個、好ましくはそれぞれ1〜3個、さらに好ましくは1〜2個とすることができる。好適な実施の態様において、アミノシランに含まれるアミノ基及びイミノ基の数は、それぞれ1個とすることができる。
【0040】
アミノシランに含まれるアミノ基及びイミノ基の数の合計が、1個であるアミノシランは特にモノアミノシラン、2個であるアミノシランは特にジアミノシラン、3個であるアミノシランは特にトリアミノシランと、呼ぶことができる。モノアミノシラン、ジアミノシランは、本発明において好適に使用することができる。好適な実施の態様において、アミノシランとして、アミノ基1個を含むモノアミノシランを使用することができる。好適な実施の態様において、アミノシランは、少なくとも1個、例えば1個のアミノ基を、分子の末端に、好ましくは直鎖状又は分枝状の鎖状分子の末端に、含むものとすることができる。
【0041】
アミノシランとしては、例えば、N−2−(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、1−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、1、2−ジアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノ‐1‐プロぺニルトリメトキシシラン、3−アミノ‐1‐プロピニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランをあげることできる。
【0042】
また、好ましい実施の態様において、シランカップリング処理には以下の式Iの構造式を有するシランを用いることが好ましい。
式I: H2N−R1−Si(OR22(R3) (式I)
(ただし、上記式Iにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、C1〜C5のアルキル基であり、
R3は、C1〜C5のアルキル基、又はC1〜C5のアルコキシ基である。)
【0043】
R1が、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の複素環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の芳香族炭化水素の二価基、からなる群から選択された基であることが好ましい。
【0044】
また、R1が、−(CH2n−、−(CH2n−(CH)m−(CH2j-1−、−(CH2n−(CC)−(CH2n-1−、−(CH2n−NH−(CH2m−、−(CH2n−NH−(CH2m−NH−(CH2j−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−NH−(CH2j−からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)ことが好ましい。
R1が、−(CH2n−、又は−(CH2n−NH−(CH2m−であることが好ましい。
n、m、jが、それぞれ独立に、1、2又は3であることが好ましい。
R2が、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
R3が、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
また、別の実施の形態においてはスパッタリング、CVD及びPDVなどの乾式めっきによって銅箔の表面にSiとNを含む層を設けてもよい。
【0045】
以下にスパッタリングの条件の一例を示す。
(ターゲット):Si:15〜65mass%、N:25〜55mass%、Si濃度とN濃度との合計が50mass%以上。残部は、任意の元素で良い。
(装置)株式会社アルバック製のスパッタ装置
(出力)DC50W
(アルゴン圧力)0.2Pa
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本実施例は好適な一例を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。したがって、本発明の技術思想に含まれる変形、他の実施例又は態様は、全て本発明に含まれる。なお、本発明との対比のために、比較例を併記する。
【0047】
(実施例1)
無酸素銅に1200ppmのSnを添加したインゴットを溶製し、このインゴットを900℃から熱間圧延し、厚さ10mmの板を得た。その後、冷間圧延と焼鈍を繰り返し、最終的に9μm厚の銅箔に冷間圧延した。この圧延銅箔の表面粗さはRz0.63μmであった。
【0048】
次に、前記圧延銅箔に、次の条件でNiめっきを実施した(粗化処理は実施せず)。なお、Niめっき液の残部は水である。また本願に記載されている、粗化処理、めっき、シラン処理、耐熱処理、防錆処理などに用いられる液の残部も特に記載が無い限り水とした。
Niイオン:10〜40g/L
温度:30〜70℃
電流密度:1〜9A/dm2
めっき時間:0.1〜3.0秒
pH:1.0〜5.0
【0049】
次に、前記Niめっきをした圧延銅箔に、次の条件で浸漬クロメート処理を実施した。
2Cr27:1〜10g/L
温度:20〜60℃
処理時間:1〜5秒
【0050】
次に、表1に示すシランカップリング処理を実施した。
シランの種類:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
シラン濃度:1.5vol%
温度:10〜60℃
処理時間:1〜5秒
シラン処理後の乾燥:100℃×3秒
【0051】
この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRz(十点平均粗さ)は0.63μmとなった。なお、RzはJIS B0601−1982に準拠して、株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE−3C触針式粗度計を用いて測定した。銅箔表面のSiの付着量については、1dm×1dmの大きさの表面処理された銅箔を酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分析法)で定量して、表面処理された銅箔の単位面積に対する、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、3.5μg/dm2となり、また銅箔表面のNの付着量については、1dm×1dmの大きさの表面処理された銅箔を高温で溶解し、発生したNO2量を算出して、銅箔の全表面に付いたNの量を測定することで、表面処理された銅箔の単位面積に対する、付着したNの質量を求めた結果、4.5μg/dm2となった。なお、本測定でSiおよびNが検出された場合には、表面処理銅箔にアミノシランによるシランカップリング処理層が存在すると判定できる。
【0052】
なお、樹脂の張り合わせが行われない面にもSiおよびNが付着している場合には、予め除去をするかマスキング等を行い、樹脂との張り合わせ面の測定結果に影響を及ぼさないようにする必要がある。
以下の実施例及び比較例の、銅箔表面に付着したSiの質量(μg)及びNの付着量の測定法(評価方法)については、同様にして実施しているので、この操作方法は、煩雑さを避けるために、説明を省略することとする。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。
【0053】
このようにして製造したシラン処理した圧延銅箔を、厚さ50μmの液晶ポリマー(Kuraray製、Vecstar CT−Z)の樹脂にプレスにて貼り合わせた。このようにして得た試料を用いて90度ピール強度を測定した。
ピール強度は、回路幅3mmとし、90度の角度で50mm/minの速度で樹脂と銅箔を引き剥がした場合である。2回測定し、その平均値とした。
【0054】
このピール強度の測定は、JIS C6471−1995に準拠するものである(以下、同様である)。この結果、90度ピール強度は0.32kg/cmが得られた。この結果を、表1に示す。本実施例1に示す通り、実施例1の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0055】
また、この銅箔を50μmの液晶ポリマーに張り合わせた後、高周波特性を調べるために、マイクロストリップライン構造を形成した。このとき、特性インピーダンスは50Ωになるよう回路形成を行った。この回路を用いて伝送損失の測定を行い、30GHzの周波数における伝送損失が−0.6より小さい場合、高周波特性を◎と表記した。また、−0.6〜−0.8を○、−0.8〜−1.2を△、−1.2より伝送損失が大きい場合は×とした。なお、この測定値は参考として示すものであり、範囲を限定するものではない。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例2)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を1.7vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。
【0058】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、5.8μg/dm2となり、付着したNの質量は13.0μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.48kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例2に示す通り、実施例2の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0059】
(実施例3)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を2.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。
【0060】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、10.0μg/dm2となり、付着したNの質量は20.1μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.55kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例3に示す通り、実施例3の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0061】
(実施例4)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を3.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.67μmとなった。
【0062】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、12.5μg/dm2となり、付着したNの質量は20.4μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.63kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例4に示す通り、実施例4の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0063】
(実施例5)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を4.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.65μmとなった。
【0064】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、16.8μg/dm2となり、付着したNの質量は23.0μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.63kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例5に示す通り、実施例5の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0065】
(実施例6)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を5.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。
【0066】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、24.5μg/dm2となり、付着したNの質量は36.2μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.77kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例6に示す通り、実施例6の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0067】
(実施例7)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を6.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.60μmとなった。
【0068】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、28.5μg/dm2となり、付着したNの質量は27.6μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.83kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例7に示す通り、実施例7の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0069】
(実施例8)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行い、さらにシラン処理の条件を変更(シラン濃度を5.0vol%)した。他の条件は、実施例1と同様とした。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理、シラン処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)
この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.90μmとなった。下記に粗化処理条件の一例を挙げる。なお、本実施例は下記のめっき条件で粗化処理(粗化処理めっき)を行った。なお、このめっき条件はあくまで好適な例を示すものであり、下記に表示する以外のめっき条件であっても問題はない。
【0070】
(銅の一次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm2
めっき時間:0.1〜10秒
【0071】
(二次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm2
めっき時間:0.5〜4秒
【0072】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、77.3μg/dm2となり、付着したNの質量は90.3μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.95kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例8に示す通り、実施例8の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0073】
(実施例9)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行い、さらにシラン処理の条件を変更(シラン濃度を7.5vol%)した。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理、シラン処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.92μmとなった。なお、本実施例では実施例8と同様のめっき条件で粗化処理(粗化処理めっき)を行った。
【0074】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、115.0μg/dm2となり、付着したNの質量は187.2μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は1.13kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例9に示す通り、実施例9の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0075】
(実施例10)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行い、さらにシラン処理の条件を変更(シラン濃度を7.5vol%)した。他の条件は、実施例1と同様とした。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理、シラン処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.48μmとなった。
【0076】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、243.5μg/dm2となり、付着したNの質量は399.3μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は1.31kg/cmが得られた。これらを、表1に示す。本実施例10に示す通り、実施例10の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0077】
(実施例11)
前記実施例1におけるシラン処理の種類と条件を変更(N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、シラン濃度を5.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.62μmとなった。
【0078】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、33.7μg/dm2となり、付着したNの質量は77.5μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.71kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例11に示す通り、実施例11の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0079】
(実施例12)
前記実施例1におけるシラン処理の種類と条件を変更(3−アミノプロピルメトキシシラン、シラン濃度を7.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.65μmとなった。
【0080】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、60.5μg/dm2となり、付着したNの質量は55.3μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.81kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例12に示す通り、実施例12の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0081】
(実施例13)
前記実施例1におけるシラン処理の種類と条件を変更(3−トリエトキシシリル−N−1、3ジメチル−ブチリデンプロピルアミン、シラン濃度を5.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.64μmとなった。
【0082】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、25.5μg/dm2となり、付着したNの質量は28.9μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.71kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例13に示す通り、実施例13の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0083】
(実施例14)
前記実施例1におけるシラン処理の種類と条件を変更(N−フェニル−3−アミノプロピルメトキシシラン、シラン濃度を7.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.60μmとなった。
【0084】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、90.6μg/dm2となり、付着したNの質量は75.2μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.79kg/cmが得られた。
これらを、表1に示す。本実施例14に示す通り、実施例14の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0085】
(比較例1)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を0.5vol%)し、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.60μmとなった。
【0086】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.7μg/dm2となり、付着したNの質量を求めた結果3.2μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
上の結果、90度ピール強度は0.11kg/cmと低かった。これらを、表1に示す。本比較例1に示す通り、比較例1の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0087】
(比較例2)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(シラン濃度を1.0vol%)し、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。
【0088】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、2.2μg/dm2となり、付着したNの質量は3.4μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.12kg/cmと低かった。これらを、表1に示す。本比較例2に示す通り、比較例2の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0089】
(比較例3)
前記実施例1におけるシラン処理を実施しなかった。したがって、銅箔表面のSi、Nも存在しない。そして、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。
【0090】
銅箔表面のSi、Nも存在しないので、本願発明の銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.03kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例3に示す通り、銅箔表面にSi、Nが存在しない圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0091】
(比較例4)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行ったが、シラン処理は実施しなかった。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理、を行った。ニッケルめっきは行っていない。)したがって、銅箔表面のSi、Nも存在しない。そして、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.92μmとなった。なお、本実施例では実施例8と同様のめっき条件で粗化処理(粗化処理めっき)を行った。
【0092】
銅箔表面のSi、Nも存在しないので、本願発明の銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.32kg/cmと低かった。これらを、表1に示す。実施例8および9と比較すると、銅箔表面にSi、Nが存在しない圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0093】
(比較例5)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行ったが、シラン処理は実施しなかった。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)したがって、銅箔表面のSi、Nも存在しない。そして、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.53μmとなった。なお、本実施例では実施例10と同様のめっき条件で粗化処理(粗化処理めっき)を行った。
【0094】
銅箔表面のSi、Nも存在しないので、本願発明の銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.66kg/cmとなった。これらを、表1に示す。実施例10と比較すると、銅箔表面にSi、Nが存在しない圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に最適な表面性能であるとは言えなかった。
【0095】
(比較例6)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行ったが、シラン処理は実施しなかった。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)したがって、銅箔表面のSi、Nも存在しない。そして、同様に90度ピール強度を測定した。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは3.21μmとなった。
【0096】
銅箔表面のSi、Nも存在しないので、本願発明の銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.89kg/cmとなった。これらを、表1に示す。他の比較例と比較するとピール強度は高いが、これは表面粗さが粗いことによる物理的な効果であるが、前述の通り、粗さが大きいと表皮効果によって損失が大きくなるため、この銅箔は高周波用回路基板の素材として工業的に最適な表面性能を持つとは言えなかった。
【0097】
(比較例7)
前記実施例1のニッケルめっき前に粗化処理を施し、その後耐熱および防錆処理を行ったが、さらにシラン処理の条件を変更(シラン濃度を10.0vol%)した。他の条件は、実施例1と同様とした。(すなわち、前記実施例1の冷間圧延して9μm厚とした圧延銅箔に粗化処理、耐熱および防錆処理、浸漬クロメート処理、シラン処理を行った。ニッケルめっきは行っていない。)この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.51μmとなった。なお、本実施例では実施例10と同様のめっき条件で粗化処理(粗化処理めっき)を行った。
【0098】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、343.0μg/dm2となり、付着したNの質量を求めた結果879.0μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。また、液晶ポリマー(LCP)との積層の際に発泡が起こってしまった。そのため、この銅箔についてはピール強度を測定していない。
これらを、表1に示す。本比較例7に示す通り、比較例7の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0099】
(比較例8)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用し、濃度を1.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.62μmとなった。
【0100】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、3.5μg/dm2となり、付着したNの質量を求めた結果、0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.13kg/cmと低かった。これらを、表1に示す。本比較例8に示す通り、比較例8の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0101】
(比較例9)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用し、濃度を5.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.63μmとなった。
【0102】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、31.2μg/dm2となり、付着したNの質量を求めた結果、0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.19kg/cmと低かった。これらを、表1に示す。本比較例9に示す通り、比較例9の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0103】
(比較例10)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用し、濃度を2.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.67μmとなった。
【0104】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、9.3μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.04kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例10に示す通り、比較例10の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0105】
(比較例11)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(ビニルトリメトキシシランを使用し、濃度を0.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.65μmとなった。
【0106】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、2.2μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.07kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例11に示す通り、比較例11の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0107】
(比較例12)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(ビニルトリメトキシシランを使用し、濃度を2.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.65μmとなった。
【0108】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、14.4μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.09kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例12に示す通り、比較例12の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0109】
(比較例13)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(ビニルトリメトキシシランを使用し、濃度を5.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.65μmとなった。
【0110】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、63.1μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.11kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例13に示す通り、比較例13の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0111】
(比較例14)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを使用し、濃度を2.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.64μmとなった。
【0112】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、9.8μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.07kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例14に示す通り、比較例14の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0113】
(比較例15)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(テトラメトキシシランを使用し、濃度を2.0vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.67μmとなった。
【0114】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、10.1μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.07kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例15に示す通り、比較例15の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0115】
(比較例16)
前記実施例1におけるシラン処理の条件を変更(テトラメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン混合を使用し、濃度を0.2+0.5vol%)し、他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.64μmとなった。
【0116】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、5.1μg/dm2となり、付着したNの質量は0.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.05kg/cmと著しく低かった。これらを、表1に示す。本比較例16に示す通り、比較例16の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことができなかった。
【0117】
次に、銅箔の種類及び粗化処理、耐熱処理、防錆処理を替えた場合の例を示す。本例には耐熱処理および/または防錆処理を行わない例も含まれる(実施例28、29、31−33)。この場合、シランには、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、シラン濃度を5.0vol%とした。シラン処理後の乾燥は、全て100℃×3秒とした。なお、耐熱処理は銅箔と液晶ポリマー(LCP)の積層の際に耐熱性を確保出来ていればよく、金属種は問わない。例として、Zn、Ni、Co、Mo、P、Cr、W等の単一もしくは合金めっきが挙げられる。なお、Znを含まない耐熱処理層でもよい。
下記の実施例21〜実施例33及び比較例21〜比較例27までの製造条件と評価(ピール強度の)方法は、各個別に記載する以外は、実施例1と同様である。なお、Ni−Coめっき処理、Zn−Niめっき処理、Ni−Moめっき処理、Cu−Znめっき処理、電解クロメート処理および浸漬クロメート処理の処理条件は上述の通りとした。なお、浸漬クロメート処理の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0118】
(実施例21)
板厚が6μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Coめっき処理を行った。また、防錆処理として電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.82μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、60.5μg/dm2となり、付着したNの質量を求めた結果、77.5μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は0.88kg/cmの高い値が得られた。
これらの結果を、表3に示す。本実施例21に示す通り、実施例21の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0121】
【表3】
【0122】
(実施例22)
板厚が12μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてZn−Niめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
【0123】
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.90μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0124】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、75.2μg/dm2となり、付着したNの質量は94.6μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は0.93kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例22に示す通り、実施例22の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0125】
(実施例23)
板厚が35μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Moめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
【0126】
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.55μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0127】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、90.1μg/dm2となり、付着したNの質量は109.2μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は1.30kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例23に示す通り、実施例23の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0128】
(実施例24)
板厚が18μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてCu−Znめっき処理を実施した。また、防錆処理としての電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.81μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0129】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、43.5μg/dm2となり、付着したNの質量は54.9μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は0.85kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例24に示す通り、実施例24の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0130】
(実施例25)
板厚が18μmである電解銅箔の光沢面に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Coめっき処理を実施した。また、防錆処理としての電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.62μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0131】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、76.9μg/dm2となり、付着したNの質量は93.2μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は1.29kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例25に示す通り、実施例25の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0132】
(実施例26)
板厚が5μmである電解銅箔の光沢面に粗化処理を施し、耐熱処理としてZn−Niめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.31μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0133】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、50.6μg/dm2となり、付着したNの質量は60.9μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は1.01kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例26に示す通り、実施例26の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0134】
(実施例27)
板厚が12μm電解銅箔の光沢面に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Moめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は5.0vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.42μmとなった。この処理条件を、表2に示す。
【0135】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、55.5μg/dm2となり、付着したNの質量は64.7μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていた。
以上の結果、90度ピール強度は1.18kg/cmの高い値が得られた。これらの結果を、表3に示す。本実施例27に示す通り、実施例27の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0136】
(実施例28)
厚み9μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100))に下記の条件で粗化処理を施し、その後シランカップリング処理を行った。なお、粗化処理は前記圧延銅箔の表面に、銅の一次粒子を設ける処理を行い、その後、二次粒子を設ける処理を行うことにより行った。また、シラン処理のシランにはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用い、シラン濃度は5.0vol%とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.91μmとなった。
【0137】
<粗化処理条件>
(銅の一次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm2
めっき時間:0.1〜10秒
【0138】
(二次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm2
めっき時間:0.5〜4秒
【0139】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、75.3μg/dm2となり、付着したNの質量は89.3μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.95kg/cmが得られた。
【0140】
また、シラン処理後の表面処理銅箔の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて写真撮影を行った。そして当該写真を用いて粗化処理の粒子の観察を行った。その結果、銅の一次粒子層の平均粒子径は0.25〜0.45μmであり、二次粒子層の平均粒子径は0.05〜0.25μmであった。なお、粒子を取り囲む最小円の直径を粒子径として測定し、平均粒子径を算出した。
これらを、表3に示す。本実施例28に示す通り、実施例28の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0141】
(実施例29)
厚み9μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100))に下記の条件で粗化処理を施し、その後電解クロメート処理を行い、さらにその後シランカップリング処理を行った。なお、粗化処理は前記圧延銅箔の表面に、銅の一次粒子を設ける処理を行い、その後、二次粒子を設ける処理を行うことにより行った。また、シラン処理のシランにはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用い、シラン濃度は5.0vol%とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.91μmとなった。
【0142】
<粗化処理条件>
(銅の一次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm2
めっき時間:0.1〜10秒
【0143】
(二次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm2
めっき時間:0.5〜4秒
【0144】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、76.2μg/dm2となり、付着したNの質量は88.5μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.96kg/cmが得られた。
【0145】
また、シラン処理後の表面処理銅箔の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて写真撮影を行った。そして当該写真を用いて粗化処理の粒子の観察を行った。その結果、銅の一次粒子層の平均粒子径は0.25〜0.45μmであり、二次粒子層の平均粒子径は0.05〜0.25μmであった。なお、粒子を取り囲む最小円の直径を粒子径として測定し、平均粒子径を算出した。
これらを、表3に示す。本実施例29に示す通り、実施例29の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0146】
(実施例30)
厚み9μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100))に下記の条件で粗化処理を施し、その後、Ni−Coめっき処理を行い、その後電解クロメート処理を行い、さらにその後シランカップリング処理を行った。なお、前記粗化処理は前記圧延銅箔の表面に、銅の一次粒子を設ける処理を行い、その後、二次粒子を設ける処理を行うことにより行った。また、シラン処理のシランにはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用い、シラン濃度は5.0vol%とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.90μmとなった。
【0147】
<粗化処理条件>
(銅の一次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm2
めっき時間:0.1〜10秒
【0148】
(二次粒子のめっき条件)
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm2
めっき時間:0.5〜4秒
【0149】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、77.0μg/dm2となり、付着したNの質量は90.1μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.96kg/cmが得られた。
【0150】
また、シラン処理後の表面処理銅箔の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて写真撮影を行った。そして当該写真を用いて粗化処理の粒子の観察を行った。その結果、銅の一次粒子層の平均粒子径は0.25〜0.45μmであり、二次粒子層の平均粒子径は0.05〜0.25μmであった。なお、粒子を取り囲む最小円の直径を粒子径として測定し、平均粒子径を算出した。
これらを、表3に示す。本実施例30に示す通り、実施例30の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0151】
(実施例31)
厚み12μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100))に電解クロメート処理を行い、さらにその後シランカップリング処理を行った。シラン処理のシランにはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用い、シラン濃度は5.0vol%とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.62μmとなった。
【0152】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、76.1μg/dm2となり、付着したNの質量は89.0μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.67kg/cmが得られた。
これらを、表3に示す。本実施例31に示す通り、実施例31の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0153】
(実施例32)
厚み12μmの高光沢圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)、60度鏡面光沢度500%以上)にシランカップリング処理を行った。シラン処理のシランにはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用い、シラン濃度は5.0vol%とした。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.31μmとなった。
【0154】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、75.6μg/dm2となり、付着したNの質量は88.9μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.61kg/cmが得られた。
これらを、表3に示す。本実施例32に示す通り、実施例32の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0155】
(実施例33)
厚み12μmの高光沢圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製 タフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)、60度鏡面光沢度500%以上)に下記スパッタリング条件でSiN膜を形成した。スパッタリング後の銅箔表面粗さRzは0.30μmとなった。
(ターゲット):Si59.5mass%以上、N39.5mass%以上。
(装置)株式会社アルバック製のスパッタ装置
(出力)DC50W
(アルゴン圧力)0.2Pa
【0156】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、90.6μg/dm2となり、付着したNの質量は60.4μg/dm2となった。
以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという本願発明の条件を満たしていた。以上の結果、90度ピール強度は0.65kg/cmが得られた。
これらを、表3に示す。本実施例33に示す通り、実施例33の表面処理された銅箔は、高周波用回路基板の素材として工業的に十分な表面性能を持つことが分かる。
【0157】
次に、銅箔の種類及び粗化処理、耐熱処理、防錆処理を替えた場合の例を示す。この場合、シランには、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、シラン濃度を0.5vol%とした。シラン処理後の乾燥は、全て100℃×3秒とした。
さらに比較例21〜比較例27については、基材の種類及び粗化処理、防錆処理、クロメート処理の条件は、実施例21〜実施例27と同一条件であり、シラン濃度のみ変化させた場合(必然的に、SiおよびNの付着量が変化する)の例を示す。
【0158】
(比較例21)
板厚が6μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Coめっき処理を行った。また、防錆処理として電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。なお、シラン濃度0.5vol%は一般的にシラン処理で設定される濃度である。また、シランの比重は約1.0であるため、0.5vol%は約0.5wt%を意味する。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.82μmとなった。
【0159】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、0.7μg/dm2となり、付着したNの質量は0.9μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.29kg/cmと低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例21に示す通り、比較例21の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0160】
(比較例22)
板厚が12μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてZn−Niめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.90μmとなった。
【0161】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、0.8μg/dm2となり、付着したNの質量は1.1μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.32kg/cmとなり、低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例22に示す通り、比較例22の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0162】
(比較例23)
板厚が35μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Moめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.55μmとなった。
【0163】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.5μg/dm2となり、付着したNの質量は1.5μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.70kg/cmと低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例23に示す通り、比較例23の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0164】
(比較例24)
板厚が18μmである圧延銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてCu−Znめっき処理を実施した。また、防錆処理としての電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.81μmとなった。
【0165】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、0.9μg/dm2となり、付着したNの質量は1.3μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.30kg/cmと著しく低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例24に示す通り、比較例24の表面処理された圧延銅箔は、高周波用回路基板の素材として、工業的に十分な表面性能を持っていなかった。
【0166】
(比較例25)
板厚が18μmである電解銅箔の光沢面に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Coめっき処理を実施した。また、防錆処理としての電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.62μmとなった。
【0167】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.9μg/dm2となり、付着したNの質量は1.7μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.65kg/cmと低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例25に示す通り、比較例25の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0168】
(比較例26)
板厚が5μmである電解銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてZn−Niめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.31μmとなった。
【0169】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.7μg/dm2となり、付着したNの質量は2.1μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.44kg/cmと低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例26に示す通り、比較例26の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0170】
(比較例27)
板厚が12μmである電解銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Moめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは1.42μmとなった。
【0171】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.9μg/dm2となり、付着したNの質量は2.0μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.45kg/cmと低下した。これらの結果を、表3に示す。本比較例27に示す通り、比較例27の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。
【0172】
(比較例28)
板厚が12μmである電解銅箔の光沢面に、耐熱処理としてNi−Znめっき処理を実施した。また、防錆処理としての電解クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
【0173】
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。なお、この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.60μmとなった。また、このときのNiおよびZnの付着量はそれぞれ600μg/dm2および90μg/dm2となった。
【0174】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.1μg/dm2となり、付着したNの質量は1.4μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
以上の結果、90度ピール強度は0.10kg/cmと低かった。これらの結果を、表3に示す。本比較例28に示す通り、比較例28の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。なお、この銅箔とポリイミドを張り合わせてピール強度を測定すると、0.8kg/cmとなり、樹脂によってピール強度差が大きいことが確認できる。
【0175】
(比較例29)
板厚が12μmである電解銅箔に粗化処理を施し、耐熱処理としてNi−Moめっき処理を実施した。また、防錆処理としての浸漬クロメート処理を行った。さらにこの上にシラン処理を行った。シラン濃度は0.5vol%とした。
他の条件は、実施例1と同様とした。この処理条件を、表2に示す。この結果、シランカップリング処理後の銅箔表面粗さRzは0.61μmとなった。また、このときのNiおよびZnの付着量はそれぞれ2850μg/dm2および190μg/dm2となった。
【0176】
実施例1と同様にして、付着したSiの質量(μg)を求めた結果、1.4μg/dm2となり、付着したNの質量は1.7μg/dm2となった。以上の結果は、銅箔表面のSiの付着量が3.1〜300μg/dm2であり、銅箔表面のNの付着量が2.5〜690μg/dm2であるという、本願発明の条件を満たしていなかった。
【0177】
以上の結果、90度ピール強度は0.11kg/cmと低かった。これらの結果を、表3に示す。本比較例29に示す通り、比較例29の表面処理された電解銅箔は、高周波用回路基板の素材として、期待する工業的に十分な表面性能を持つには至らなかった。なお、この銅箔とポリイミドを張り合わせてピール強度を測定すると、1.2kg/cmとなり、樹脂によってピール強度差が大きいことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、高周波回路用銅箔が製造可能であり、該銅箔を液晶ポリマー(LCP)積層基板に適用することにより、接着強度(ピール強度)を高めることが可能であり、かつ1GHzを超える高周波数下での使用が可能なフレキシブルプリント回路板が実現できるという優れた効果が得られ、工業的に極めて有用である。