特許第6190861号(P6190861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6190861-吸収性物品 図000004
  • 特許6190861-吸収性物品 図000005
  • 特許6190861-吸収性物品 図000006
  • 特許6190861-吸収性物品 図000007
  • 特許6190861-吸収性物品 図000008
  • 特許6190861-吸収性物品 図000009
  • 特許6190861-吸収性物品 図000010
  • 特許6190861-吸収性物品 図000011
  • 特許6190861-吸収性物品 図000012
  • 特許6190861-吸収性物品 図000013
  • 特許6190861-吸収性物品 図000014
  • 特許6190861-吸収性物品 図000015
  • 特許6190861-吸収性物品 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190861
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20170821BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20170821BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61F13/47 300
   A61F13/532 200
   A61F13/56 110
   A61F13/476
   A61F13/472 200
   A61F13/53 100
   A61F13/539
   A61F13/533 100
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-219128(P2015-219128)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-86378(P2017-86378A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】木下 英之
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−097715(JP,A)
【文献】 特開2015−157027(JP,A)
【文献】 実開昭63−102426(JP,U)
【文献】 特表平11−508470(JP,A)
【文献】 特開2011−250888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
着用者の排泄口と対向する排泄口当接域と、
前記排泄口当接域の後側に位置する後側域と、
少なくとも前記排泄口当接域及び前記後側域に配置され、吸収材料を含む吸収コアを有する吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記排泄口当接域の後方で前記幅方向に延びる第1曲部と、前記第1曲部よりも後方で前記幅方向に延びる第2曲部と、が設けられており、
前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されており、
前記第1曲部の前方において前記第1曲部に隣接する第1領域と、前記第2曲部の後方において前記第2曲部に隣接する第2領域と、前記前後方向において前記第1曲部と前記第2曲部の間に位置する第1中間領域と、が設けられており、
前記第1中間領域の前記吸収材料の目付は、前記第1領域及び前記第2領域の前記吸収材料の目付よりも低く、
前記第1曲部、前記第2曲部及び前記第1中間領域は、前記吸収性物品の前記幅方向の中心を結ぶ中心線から、前記幅方向における前記吸収コアの外側縁と前記中心線との中間点を越えて延びており、
前記第1中間領域の前記前後方向の長さは、10mm以上40mm以下であり、
前記第1曲部及び前記第2曲部は、平面視において、後方に向かって凸状に湾曲する、吸収性物品。
【請求項2】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
着用者の排泄口と対向する排泄口当接域と、
前記排泄口当接域の後側に位置する後側域と、
少なくとも前記排泄口当接域及び前記後側域に配置され、吸収材料を含む吸収コアを有する吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記排泄口当接域の後方で前記幅方向に延びる第1曲部と、前記第1曲部よりも後方で前記幅方向に延びる第2曲部と、が設けられており、
前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されており、
前記第1曲部の前方において前記第1曲部に隣接する第1領域と、前記第2曲部の後方において前記第2曲部に隣接する第2領域と、前記前後方向において前記第1曲部と前記第2曲部の間に位置する第1中間領域と、が設けられており、
前記第1中間領域の前記吸収材料の目付は、前記第1領域及び前記第2領域の前記吸収材料の目付よりも低く、
前記第1曲部、前記第2曲部及び前記第1中間領域は、前記吸収性物品の前記幅方向の中心を結ぶ中心線から、前記幅方向における前記吸収コアの外側縁と前記中心線との中間点を越えて延びており、
前記第1中間領域の前記前後方向の長さは、10mm以上40mm以下であり、
前記吸収体よりも非肌面側に設けられた非肌面シートを有し、
前記非肌面シートには、前記吸収性物品を下着に止めるための粘着剤を有する粘着領域が設けられており、
前記粘着剤が設けられていない非粘着剤領域が、前記第1中間領域と少なくとも部分的に重複する領域で、前記幅方向における前記吸収性物品の一端から他端まで延びている、吸収性物品。
【請求項3】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
着用者の排泄口と対向する排泄口当接域と、
前記排泄口当接域の後側に位置する後側域と、
少なくとも前記排泄口当接域及び前記後側域に配置され、吸収材料を含む吸収コアを有する吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記排泄口当接域の後方で前記幅方向に延びる第1曲部と、前記第1曲部よりも後方で前記幅方向に延びる第2曲部と、が設けられており、
前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されており、
前記第1曲部の前方において前記第1曲部に隣接する第1領域と、前記第2曲部の後方において前記第2曲部に隣接する第2領域と、前記前後方向において前記第1曲部と前記第2曲部の間に位置する第1中間領域と、が設けられており、
前記第1中間領域の前記吸収材料の目付は、前記第1領域及び前記第2領域の前記吸収材料の目付よりも低く、
前記第1曲部、前記第2曲部及び前記第1中間領域は、前記吸収性物品の前記幅方向の中心を結ぶ中心線から、前記幅方向における前記吸収コアの外側縁と前記中心線との中間点を越えて延びており、
前記第1中間領域の前記前後方向の長さは、10mm以上40mm以下であり、
前記幅方向における前記吸収体の外側縁よりも前記幅方向の外側に延出し、使用時に折り返し可能なウイングと、前記後側域において前記幅方向の外側に膨らんだヒップフラップと、を有し、
前記第1中間領域の少なくとも一部は、前記ウイングの後側端部と前記ヒップフラップの前側端部との間に設けられている、吸収性物品。
【請求項4】
前記第1中間領域の前記前後方向の長さは、前記第1領域の、前記第1曲部に隣接する部分の前記吸収体と、前記第2領域の、前記第2曲部に隣接する部分の前記吸収体のうち最も厚いところよりも長い、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1曲部、前記第2曲部及び前記第1中間領域は、前記幅方向において、前記吸収コアの一端から他端まで延びている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1曲部の前記幅方向の中心と前記排泄口当接域の前記前後方向の中心との距離は、25mm以上80mm以下である、請求項1から請求項5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体よりも肌面側に設けられた肌面シートを有し、
前記肌面シートは、前記吸収体を覆う表面シートと、前記幅方向における前記表面シートの端部領域から前記幅方向外側に延びるサイドシートと、を含み、
前記サイドシートに、少なくとも前記前後方向に伸縮する伸縮性部材が接合されており、
前記伸縮性部材の伸縮性が発現される有効長部分は、前記前後方向において、前記第1中間領域を跨いで、前記第1領域から前記第2領域まで延びている、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記後側域において前記幅方向の外側に膨らんだヒップフラップと、
前記ヒップフラップに設けられ、前記ヒップフラップを下着に止めるための粘着剤を有するヒップフラップ粘着領域と、を有し、
前記伸縮性部材の前記有効長部分の後側縁は、前記ヒップフラップ粘着領域の後側縁よりも前側に配置されている、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、前記排泄口当接域において、前記吸収体の外側縁よりも幅方向の内側に位置する中高部を有し、
前記中高部の厚さは、前記第1領域における前記吸収体の外側縁の厚さよりも厚く、
前記中高部は、前記第1領域内において前記第1曲部に隣接している、請求項1から請求項8のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体が厚み方向に圧縮された第1圧搾部を備えており、
前記第1圧搾部は、前記中高部の外側縁に沿って配置されている、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体よりも肌面側に設けられた肌面シートと、
前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、
前記第1中間領域において、前記肌面シートと前記コアラップとが接合されていない非接合領域が、前記幅方向に沿って連続的に延びている、請求項1から請求項10のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収コアを包むコアラップを有し、
前記コアラップは、前記吸収コアよりも肌面側の第1ラップ部と、前記吸収コアよりも非肌面側の第2ラップ部と、を有し、
前記第1ラップ部と前記第2ラップ部とは、前記第1中間領域のところで、前記吸収コアを介して、又は前記吸収コアを介することなく互いに圧縮された状態で接合されている、請求項1から請求項11のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記後側域において前記中心線に沿って延び、前記吸収性物品を曲げることができるように構成された第1折曲誘導部が設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記第1折曲誘導部は、前記第1中間領域と繋がっている、請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記第1折曲誘導部は、前記前後方向における前記後側域の中心よりも後側へ達している、請求項13又は請求項14に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記吸収体よりも肌面側に設けられた肌面シートと、
前記吸収コアを包むコアラップと、を有し、
前記コアラップは、前記吸収コアよりも肌面側の第1ラップ部と、前記吸収コアよりも非肌面側の第2ラップ部と、を有し、
前記第1折曲誘導部において、前記肌面シートと前記コアラップとが接合されていない非接合領域が、前記前後方向に沿って連続的に延びており、
前記第1ラップ部と前記第2ラップ部とは、前記第1折曲誘導部のところで、前記吸収コアを介して、又は前記吸収コアを介することなく互いに圧縮された状態で接合されている、請求項13から請求項15のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記第1折曲誘導部を挟んで両側で前記前後方向に延び、前記吸収体が圧搾された一対の長手圧搾部が設けられている、請求項13から請求項16のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記一対の長手圧搾部は、前記第1中間領域に達していない、請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記吸収体は、前記後側域において前記第1折曲誘導部から前記幅方向の外側に延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第2折曲誘導部を有する、請求項13から請求項18のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項20】
前記吸収体は、前記後側域において前記第1折曲誘導部から前記幅方向の外側に延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第2折曲誘導部を有し、
記一対の長手圧搾部は、前記第2折曲誘導部のところで前記前後方向に間隔をあけて形成されている、請求項17又は請求項18に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記第1折曲誘導部は、前記中心線に沿って延びる第2中間領域と、前記第2中間領域を挟んで前記前後方向に延びる第3曲部及び第4曲部と、を有し、
前記第3曲部及び前記第4曲部は、前記吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されており、
前記第2中間領域の前記吸収材料の目付は、前記第1折曲誘導部より前記幅方向外側の前記吸収材料の目付よりも低い、請求項13から請求項20のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
夜用の吸収性物品は、着用者が寝た状態で使用され、昼用の吸収性物品と比較して長時間使用される。そのため、夜用の吸収性物品の使用時には、後漏れが発生し易い。特許文献1には、後漏れを防止する夜用の吸収性物品が開示されている。
【0003】
特許文献1の吸収性物品は、着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部と、排泄部対向部よりも背中側に配置される後方部と、を有する。後方部における吸収体には、複数本の幅方向に延びる高密度部と低密度部が形成されている。特許文献1の吸収性物品は、体液が後方に流れた際に比較的密度が高い高密度部によって体液を保持するとともに、比較的密度が低い低密度部が柔軟に変形し、後漏れを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−136900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の発明者は、着用者の身体の変形を種々調査した。その結果、着用者の身体の動きに応じて、吸収性物品に様々な外力がかかり、吸収性物品の一部が身体に密着したり離れたりすることがあることを見出した。さらに、発明者は、密着していた吸収性物品の一部が身体から離れると、着用者に対して特に違和感や、体液が漏れるのでないかという不安感を与えることがあることを見出した。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、着用者が動いたときにも着用者の身体に密着し続け易く、付け心地の良い吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、着用者の排泄口と対向する排泄口当接域と、前記排泄口当接域の後側に位置する後側域と、少なくとも前記排泄口当接域及び前記後側域に配置され、吸収材料を含む吸収コアを有する吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記排泄口当接域の後方で前記幅方向に延びる第1曲部と、前記第1曲部よりも後方で前記幅方向に延びる第2曲部と、が設けられており、前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されており、前記第1曲部の前方において前記第1曲部に隣接する第1領域と、前記第2曲部の後方において前記第2曲部に隣接する第2領域と、前記前後方向において前記第1曲部と前記第2曲部の間に位置する第1中間領域と、が設けられており、前記第1中間領域の前記吸収材料の目付は、前記第1領域及び前記第2領域の前記吸収材料の目付よりも低く、前記第1曲部、前記第2曲部及び前記第1中間領域は、前記中心線から、前記幅方向における前記吸収コアの外側縁と前記中心線との中間点を越えて延びており、前記第1中間領域の前記前後方向の長さは、10mm以上40mm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着用者が動いたときにも着用者の身体に密着し続け易く、付け心地の良い吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における吸収性物品の平面図である。
図2図1とは反対側から見た吸収性物品の平面図である。
図3図1の3A−3A線に沿った吸収性物品の断面図である。
図4】一実施形態における吸収体の平面図である。
図5】使用中の吸収性物品の斜視図である。
図6】使用中の吸収性物品の、図1の6A−6A線に沿った模式的断面図である。
図7】使用中の吸収性物品の、図1の7A−7A線に沿った模式的断面図である。
図8】立った姿勢における使用中の吸収性物品の模式図である。
図9】寝た姿勢において着用者の臀部が潰れていない状態の吸収性物品の模式図である。
図10】寝た姿勢において着用者の臀部が潰れた状態の吸収性物品の模式図である。
図11】吸収性物品の一変形態様を説明する模式図である。
図12】吸収性物品の別の変形態様を説明する模式図である。
図13】別の実施形態における吸収性物品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)吸収性物品の全体構成
図1乃至図4を参照して、実施形態に係る吸収性物品1の全体構成について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0011】
図1は、吸収性物品の平面図であり、図2は、吸収性物品の背面図である。図3は、図1に示す3A−3A線に沿った吸収性物品の断面図である。図4は、吸収性物品に備えられた吸収体の平面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、夜用の生理用ナプキンである。
【0012】
吸収性物品1は、着用者の前側(腹側)及び後側(背側)に延びる前後方向Lと、前後方向Lと直交する幅方向Wと、着用者の肌対向面側T1及び非肌対向面側T2に延びる厚み方向Tと、を有する。
【0013】
吸収性物品1は、排泄口当接域S1、前側域S2及び後側域S3を有する。排泄口当接域S1は、着用者の排泄口(例えば膣口)に対向する領域である。吸収性物品が下着に装着されたときに、排泄口当接域S1は、下着の股下部に位置する。つまり、排泄口当接域S1は、着用者の股下、すなわち着用者の両足の間に配置される領域である。
【0014】
前側域S2は、排泄口当接域S1よりも前側に位置する。前側域S2の前端縁は吸収性物品1の前端縁91を規定する。後側域S3は、排泄口当接域S1よりも後側に位置する。後側域S3の後端縁は吸収性物品1の後端縁92を規定する。後側域S3の前後方向Lの長さは、排泄口当接域S1の前後方向Lの長さよりも長くなっていてよい。
【0015】
吸収性物品1は、吸収材料が積層された吸収コアを有する吸収体30、吸収体30よりも肌対向面側T1に位置する肌面シート10、及び吸収体30よりも非肌対向面側T2に位置する非肌面シート20を備える。肌面シート10は、吸収体30の少なくとも幅方向中央を覆う液透過性の表面シート11と、表面シート11の外側縁(幅方向の外端)を覆い、幅方向の外側に延出するサイドシート12と、を有する。非肌面シート20は、液不透過性のシートである。
【0016】
表面シート11は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート11は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート11は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0017】
サイドシート12は、表面シート11と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート12を乗り越えて吸収性物品1の外方へ経血が流れることを防止するためには、サイドシート12は、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート12は、後述する本体部2の外側縁、ウイング3及びヒップフラップ4に配置されている。
【0018】
非肌面シート20は、肌面シート10の長さと略同一の長さを有する。非肌面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。
【0019】
吸収体30は、吸収材料が積層された吸収コア31と、吸収コア31を覆うコアラップ32と、を有する。吸収材料は、例えば、親水性繊維、パルプ、及びSAPを例示できる。
【0020】
コアラップ32は、少なくとも吸収コア31よりも肌面側で吸収コア31を覆っていればよい。具体的一例として、コアラップ32は、吸収コア31よりも肌面側に配置される第1ラップ部と、吸収コア31よりも非肌面側に配置される第2ラップ部と、を有していてよい。
【0021】
肌面シート10は、後述する第1中間領域41において、コアラップ32と接合されていない非接合領域を有する。この非接合領域は、幅方向Wに沿って連続的に延びている。この非接合領域は、少なくとも、幅方向Wにおける第1中間領域41の一端から他端まで延びていてもよい。
【0022】
また、肌面シート10は、後述する第1折曲誘導部40において、コアラップ32と接合されていない非接合領域を有していてもよい。この非接合領域は、前後方向Lに沿って連続的に延びている。
【0023】
吸収性物品1は、本体部2と、ウイング3と、ヒップフラップ4と、を有する。本体部2は、吸収性物品1の幅方向Wの中央に位置し、前後方向Lに延びる。ウイング3及びヒップフラップ4は、本体部2の外側縁よりも幅方向Wの外側に延出しており、後側域S3において幅方向Wの外側に膨らんだ部分である。幅方向Wにおける本体部2の外側縁2Eは、吸収体30の外側縁30Eに一致する。
【0024】
本体部2は、肌面シート10と、非肌面シート20と、吸収体30と、を有する。より詳細には、本体部2は、表面シート11と、サイドシート12の一部と、非肌面シート20と、吸収体30と、を含む。
【0025】
サイドシート12は、幅方向Wにおける表面シート10の端部領域から、幅方向W外側に延びている。サイドシート12の内側縁は、前後方向Lに沿っており、幅方向Wの外側に折り返されている。当該折り返されたサイドシート12間に、前後方向Lに伸縮する伸縮性部材90が配置されている。サイドシート12の内側縁は、表面シート11に接合されていない。伸縮性部材90は、所定の長さに伸張された状態で、サイドシート12に接合されている。これにより、サイドシート12の内側縁は、自然状態では、前後方向Lに縮められる。このようにして、サイドシート12の内側縁及び伸縮性部材90は、起立性の防漏カフを構成する。
【0026】
伸縮性部材90は、前後方向Lの端部でサイドシート12に接合されている。この伸縮性部材90とサイドシート12との接合部は、伸縮性部材90の伸縮力を発現する部分である。伸縮性部材90は、前後方向Lの両端部で、サイドシート12と接合されていない非接合部分を有する。伸縮性部材90の非接合部分は、伸縮性部材90の伸縮力を発現できない部分となる。本明細書では、この伸縮性部材90の伸縮力が発現できない部分を除いた伸縮性部材90の部分を、伸縮性部材90の「有効長部分Le」と呼ぶ。
【0027】
伸縮性部材90の伸縮性が発現される有効長部分Leは、前後方向Lにおいて、第1中間領域41を跨いで、第1領域R1から第2領域R2まで延びている。伸縮性部材90の有効長部分Leの後側縁は、後述するヒップフラップ粘着領域64の後側縁よりも前側に配置されていてよい。
【0028】
ウイング3は、排泄口当接域S1に設けられており、吸収体30よりも幅方向外側に延びている部分である。ウイング3の前端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、前側に位置する部分に相当する。ウイング3が存在する吸収性物品では、ウイング3の前端縁は、排泄口当接域S1と前側域S2との境界を規定している。ウイング3の後端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、後側に位置する部分に相当する。ウイング3の後端縁は、排泄口当接域S1と後側域S3との間に位置していてよい。ここで、前後方向Lにおけるウイング3の前端縁とウイング3の後端縁との間の領域を「ウイング域」と称することがある。ウイングを有する吸収性物品では、排泄口当接域S1は、ウイング域と実質的に同じ領域となる。
【0029】
ウイング3は、サイドシート12と、非肌面シート20と、を有する。ウイング3の前後方向の中心は、着用者の排泄口に対向して配置される。ウイング3は、非肌面シート20側に折り返し可能に構成されており、使用時に下着のクロッチ部の非肌対向面側に折り返される。ヒップフラップ4は、ウイング3の後方に位置する。ヒップフラップ4は、使用時に下着の非肌対向面側に折り返されずに下着の肌対向面側に配置されるように構成されている。
【0030】
ヒップフラップ4の前端縁は、ヒップフラップ4の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ部分に相当する。ヒップフラップ4の前端縁は、ウイング3の後端縁と一致していてもよく、一致していなくてもよい。
【0031】
図2に示すように、非肌面シート20の非肌対向面には、吸収性物品を下着Sに止めるための粘着剤が塗布された粘着領域が設けられている。粘着領域は、本体部2に配置された第1本体粘着領域61及び第2本体粘着領域62と、ウイング3に配置されたウイング粘着領域63と、ヒップフラップ4に配置されたヒップフラップ粘着領域64と、を有する。第1本体粘着領域61は、第2本体粘着領域62と前後方向に離間しており、第2本体粘着領域62よりも前方に配置されている。
【0032】
粘着領域61〜64は、使用前の状態において、剥離シートによって覆われている。剥離シートは、使用前に粘着剤が劣化するのを防止している。剥離シートは、使用時に着用者によって剥離される。なお、剥離シートを有しない吸収性物品においては、吸収性物品を個別に包装する包装シートによって使用前に粘着領域が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。
【0033】
吸収性物品の非肌面シートには、粘着剤が設けられていない非粘着剤領域が、存在する。非粘着剤領域は、第1中間領域41と少なくとも部分的に重複する領域で、幅方向Wにおける吸収性物品の一端から他端まで延びている(図2参照)。
【0034】
吸収性物品1には、第1曲部41a及び第2曲部41bが設けられている。第1曲部41a及び第2曲部41bは、排泄口当接域S1の前後方向の中心よりも後側かつ吸収コア31の後端縁よりも前側に位置する。第1曲部41a及び第2曲部41bは、幅方向Wに延びており、吸収性物品1が厚み方向Tに曲がることができるように構成されている。なお、本実施の形態の吸収体30は、吸収コアの後端縁と吸収体の後端縁が略一致している。
【0035】
吸収性物品1は、第1曲部41aの前方において第1曲部41aに隣接する第1領域R1と、第2曲部41bの後方において第2曲部41bに隣接する第2領域R2と、前後方向Lにおいて第1曲部41aと第2曲部41bの間に位置する第1中間領域41と、を有する。第1領域R1は、吸収体30の前端縁30Fから第1曲部41aまでの領域である。第2領域R2は、吸収体30の後端縁30Rから第2曲部41bまでの領域である。第1中間領域41は、第1曲部41aと第2曲部41bとの間の領域である。第1中間領域41の吸収材料の目付は、第1領域R1の吸収材料の目付よりも低く、かつ第2領域R2の吸収材料の目付よりも低い。なお、第1中間領域41は、吸収材料の目付、本実施形態では特に吸収材料中の繊維材料(例えばパルプ繊維)が0の領域であってもよいし、設計上の目付が0であるが、第1領域R1や第2領域R2から混入した微量の吸収材料が配置された領域であってもよい。
【0036】
第1中間領域41の吸収材料の目付は、第1曲部41aに隣接する第1領域R1の吸収材料の目付の1/3以下であることが好ましい。また、第1中間領域41の吸収材料の目付は、第2曲部41bに隣接する第2領域R2の吸収材料の目付の1/3以下であることが好ましい。これにより、第1中間領域41が、後述するように吸収性物品にかかる外力を吸収する機能を発現し易くなり、また、着用者の体の動きに合せて変形し易くなる。この効果をより顕著に発揮させるためには、第1中間領域41の吸収材料の目付は、第1曲部41aに隣接する第1領域R1の吸収材料の目付の1/5以下であり、更に好ましくは1/10以下である。また、第1中間領域41の全体に吸収材料が存在しておらず、部分的に散在している状態であってもよい。
【0037】
第1曲部41aは、剛性が変化する境界となる。第1曲部41aよりも前側の領域の剛性と、第1曲部41aよりも後側の領域の剛性とは、異なる。より詳細には、第1曲部41aよりも前側の領域の吸収材料の目付は、第1曲部41aよりも後側の領域の吸収材料の目付よりも高い。よって、第1曲部41aよりも前側の剛性は、第1曲部41aよりも後側の剛性よりも高い。
【0038】
第2曲部41bは、第1曲部41aよりも後方に位置する。第2曲部41bは、剛性が変化する境界である。第2曲部41bよりも前側の領域の剛性と、第2曲部41bよりも後側の領域の剛性と、は異なる。より詳細には、第2曲部41bよりも前側の領域の吸収材料の目付は、第2曲部41bよりも後側の領域の吸収材料の目付よりも低い。よって、第2曲部41bよりも前側の剛性は、第2曲部41bよりも後側の剛性よりも低い。
【0039】
第1中間領域41の前後方向Lの長さは、第1領域R1の、第1曲部41aに隣接する部分の吸収体30と、第2領域R2の、第2曲部41bに隣接する部分の吸収体30のうち最も厚いところよりも長い。
【0040】
また、第1中間領域41の前後方向の長さは、10mm以上かつ40mm以下であることが好ましい。なお、第1中間領域41の前後方向の長さが変化する構成にあっては、第1中間領域41の幅方向Wの中心における前後方向の長さが10mm以上かつ40mm以下であればよい。また、より好ましくは、第1中間領域41の前後方向の長さは、10mm以上かつ30mm以下である。
【0041】
第1曲部41aの幅方向の中心と排泄口当接域S1の前後方向の中心との距離Xは、25mm以上であることが望ましい。また、第1曲部41aの幅方向の中心と排泄口当接域S1の前後方向の中心との距離Xは、80mm以下であることが望ましい。なお、第1曲部41aが前後方向に所定長さを有する構成にあっては、第1曲部41aの前端縁の幅方向の中心と排泄口当接域S1の前後方向の中心との距離が25mm以上80mm以下であればよい。
【0042】
第1曲部41a及び第2曲部41bは、平面視において、後方に向かって凸状に湾曲する。この場合、第1中間領域41も、平面視において、後方に向かって凸状に湾曲する。より詳細には、第1曲部41aの幅方向の中心は、第1曲部41aの外側縁よりも後方に位置する。第1曲部41aの幅方向の中心は、後方に向かう凸状である。第2曲部41bの幅方向の中心は、第2曲部41bの外側縁よりも後方に位置する。第2曲部41bの幅方向の中心は、後方に向かう凸状である。なお、第1曲部41aと第2曲部の41bの前後方向における距離は、一定であってもよいし、変化していてもよい。
【0043】
第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41は、厚み方向Tにおいて粘着領域60に重なっていない。第1本体粘着領域61は、第1領域R1内に配置されており、第2本体粘着領域62は、第2領域R2内に配置されている。第1本体粘着領域61の後端縁61Rは、第1曲部41aよりも前方に位置し、第2本体粘着領域62の前端縁62Fは、第2曲部41bよりも後方に位置する。
【0044】
第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41は、幅方向Wにおいて、中心線CLから、幅方向Wにおける吸収コアの外側縁30Eと中心線CLとの中間点を越えて延びている。すなわち、幅方向Wにおいて、第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41の長さは、吸収コア31の長さの半分以上となっている。
【0045】
さらに、第1曲部41aの外側縁及び第2曲部41bの外側縁は、吸収コア31の外側縁に位置することが好ましい。すなわち、第1曲部41a及び第2曲部41bは、吸収コアの幅方向全域に亘って形成されていいてもよい。この場合、吸収コア31は、第1曲部41a及び第2曲部41bによって前後方向Lに分断されている。なお、本実施形態では、吸収体30は、吸収コア31の外側縁と吸収体30の外側縁が略一致している。よって、第1曲部41aの外側縁及び第2曲部41bの外側縁は、吸収体30の外側縁30Eと一致する。
【0046】
吸収性物品1は、後側域S3において幅方向Wの中心を結ぶ中心線CLに沿って延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第1折曲誘導部40を有している。本実施形態では、第1折曲誘導部40は、第3曲部42a、第4曲部42b、及び第2中間領域42から構成される。この代わりに、第1折曲誘導部40は、吸収コアが圧搾された圧搾部により構成されていてもよい。
【0047】
第3曲部42a及び第4曲部42bは、前後方向Lに延びており、吸収性物品1が厚み方向Tに曲がることができるように構成されている。第2中間領域42の吸収材料の目付は、第1折曲誘導部40より幅方向W外側の吸収材料の目付よりも低い。第2中間領域42の吸収材料の目付は、第2領域R2の吸収材料の目付の1/3以下であることが好ましい。これにより、第2中間領域42が、後述するように着用者の臀部に向けて突出し易くなる。この効果をより顕著に発揮させるためには、第2中間領域42の吸収材料の目付は、第2領域R2の吸収材料の目付の1/5以下であり、更に好ましくは1/10以下である。また、第2中間領域42の全体に吸収材料が存在しておらず、部分的に散在している状態であってもよい。すなわち、第2中間領域42は、設計上の目付が0であるが、第2領域R2から混入した微量の吸収材料が配置された領域であってもよい。この代わりに、第2中間領域42は、吸収材料の目付が0の領域であってもよい。
【0048】
第3曲部42aは、剛性が変化する境界となる。第3曲部42aを挟んで両側の領域の剛性は互いに異なる。第4曲部42bは、剛性が変化する境界である。第4曲部42bを挟んで両側の領域の剛性は互いに異なる。第2中間領域42は、中心線CLに沿って延びている。
【0049】
第1折曲誘導部40は、前後方向Lにおける後側域S3の中心よりも後側へ達していることが好ましい。第1折曲誘導部40は、第1中間領域41と繋がっていてもよい。この場合、第1折曲誘導部40を構成する第2中間領域42が第1中間領域41と繋がっていてもよい。後述の装着状態の説明にあるように、第1折曲誘導部40は、臀部に沿って着用者に向けた凸状の折曲変形を誘導する。そのため、前後方向Lに沿った折曲変形の前側端部は吸収材料が凸状に集まり硬くなり易い。第1折曲誘導部40と第1中間領域41とが連続してつながっていると、前後方向Lに沿った折曲変形の前側端部の吸収材料の目付が小さいため、折曲変形の前側端部が硬くなり難くなる。したがって、着用者に心地よい装着感を与えることができる。なお、第1折曲誘導部40は、第1中間領域41と繋がっていなくてもよい。
【0050】
吸収性物品は、後側域S3において第1折曲誘導部40から幅方向Wの外側に延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第2折曲誘導部43を有していてもよい。第2折曲誘導部43は、第2領域R2の吸収材料の目付よりも低い目付の吸収材料を有する領域から構成されていてよい。この場合、第2折曲誘導部43を構成する吸収材料の目付は、第2領域R2の吸収材料の目付の1/3以下であることが好ましい。また、第2折曲誘導部43は、吸収材料の目付が0の領域であってもよいし、設計上の目付が0であるが、第2領域R2から混入した微量の吸収材料が配置された領域であってもよい。
【0051】
吸収体30は、吸収体30の外側縁30Eよりも幅方向の内側に位置する中高部33を有する。中高部33は、第1領域R1内に位置し、第1領域R1の吸収体30の外側縁30Eよりも幅方向の内側に位置する。中高部33の厚さは、第1領域R1における吸収体30の外側縁30Eの厚さよりも厚い。中高部33の吸収材料の目付は、第1領域R1における吸収体30の外側縁30Eの吸収材料の目付よりも高い。中高部33は、第1領域R1内の後側に位置し、第1曲部41aに隣接している。
【0052】
なお、吸収体が2層の吸収層を備える構成にあっては、吸収体の中高部が2層の吸収層を有し、吸収体の中高部以外が1層のみの吸収層を有していてもよい。また、変形例として、吸収体の中高部が体液を引き込む補助シートを有し、吸収体の中高部以外が補助シートを有しない構成であってもよい。
【0053】
吸収性物品1は、少なくとも吸収コア31が厚み方向Tに圧縮されることによって形成された圧搾部を有する。この圧搾部は、前側圧搾部81と、長手圧搾部82と、を有していてよい(図1及び図4参照)。
【0054】
前側圧搾部81は、少なくとも排泄口当接域S1に設けられている。前側圧搾部81は、排泄口当接域S1から前側域S2へ延びていてもよい。前側圧搾部81は、表面シート11と吸収コア31とコアラップ32とが厚み方向Tに圧縮されることによって形成されていてよい。前側圧搾部81は、中高部33の幅方向W両側に設けられた前後方向Lに沿った区間を有する。前側圧搾部81は、中高部33の幅方向Wにおける側縁を規定していてよい。
【0055】
前側圧搾部81は、吸収コア31の前端縁付近で幅方向Wに向かって曲がっており、U字型に連続的に繋がっている。この代わりに、前側圧搾部81は、中高部33の幅方向W両側に、別個に設けられていてもよい。すなわち、一対の前側圧搾部81が、互いに分断された形態で、別個に設けられていてもよい。
【0056】
長手圧搾部82は、後側域S3で、中心線CL、より具体的には第1折曲誘導部40を挟んで両側に設けられている。長手圧搾部82は、少なくとも吸収体30が厚み方向に圧縮されることによって形成されている。長手圧搾部82は、吸収体30と表面シート11とが厚み方向に圧縮されることによって形成されていてもよい。
【0057】
長手圧搾部82は、前後方向Lに沿って延びている。長手圧搾部82は、前後方向Lに直線的に延びていてもよいし、前後方向Lに対して傾斜して曲線的に延びていてもよい。長手圧搾部82は、ヒップフラップ4の最大幅の位置P1よりも前側に形成されていてよい。長手圧搾部82は、第1中間領域41に達していないことが好ましい。
【0058】
一対の長手圧搾部82は、第2折曲誘導部43のところで前後方向Lに間隔をあけて形成されていてもよい。
【0059】
本明細書における「吸収体の厚さ」の測定は、以下の測定方法によって行われるものとする。
【0060】
吸収性物品1がパッケージなどに封入されている場合には、パッケージから取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において12時間放置したサンプルを用いる。
【0061】
測定位置は、吸収体の製品幅方向中央部とする。測定する際は、吸収性物品が縮んだ状態ではなく、吸収性物品の伸縮性部材を伸張させた状態として測定する。また、吸収体以外の肌面シート及び非肌面シート等、吸収体以外の部分を取り除く。尾崎製作所(株)製のダイアルゲージPEACOCKを使用し、測定子には直径10mmのものを採用し、大きさが30mm×30mmの試片を用意して、当該試片の厚みを測定する。測定器は、試片に対する測定圧が3g/cmとなるように調整する。ここで、10サンプルに対して、それぞれの状態で上述の測定を行い、その平均値を、長さとした。
【0062】
また、本明細書における「吸収体の目付及び密度」の測定は、以下の測定方法によって行われるものとする。
【0063】
吸収性物品1がパッケージなどに封入されている場合には、パッケージから取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において12時間放置したサンプルを用いる。
【0064】
包装体によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、目付及び密度を測定する部分の厚み及び面積を測定する。次いで、目付及び密度を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から表面シート及び裏面シート等、吸収体以外の部分を取り除き、吸収体の重量を測定する。吸収体の重量と、目付及び密度を測定する部分の面積とに基づいて目付を算出する。目付及び厚みに基づいて、密度を算出する。
【0065】
また、本明細書における「長さ」の測定は、以下の測定方法によって行われるものとする。
【0066】
吸収性物品1がパッケージなどに封入されている場合には、パッケージから取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において12時間放置したサンプルを用いる。
【0067】
次いで、シンワ測定株式会社製のスプリングメジャー(テープ:ガラス繊維入塩ビ被覆)を用いて、測定対象部位に沿わせるようにして、測定対象部位のこの状態の長さを測定する。ここで、10サンプルに対して、それぞれの状態で上述の測定を行い、その平均値を、長さとした。
【0068】
コアラップ32の第1ラップ部とコアラップ32の第2ラップ部とは、第1中間領域41のところで、吸収コア31を介して、又は吸収コア31を介することなく互いに圧縮された状態で接合されていてよい。以下、この接合部を、「第1圧着部51」と呼ぶ(図4参照)。
【0069】
また、コアラップ32の第1ラップ部とコアラップ32の第2ラップ部とは、第1折曲誘導部40のところで、吸収コア31を介して、又は吸収コア31を介することなく互いに圧縮された状態で接合されていてもよい。以下、この接合部を、「第2圧着部52」と呼ぶ(図4参照)。
【0070】
さらに、コアラップ32の第1ラップ部とコアラップ32の第2ラップ部とは、第2折曲誘導部43のところで、吸収コア31を介して、又は吸収コア31を介することなく互いに圧縮された状態で接合されていてもよい。以下、この接合部を、「第3圧着部53」と呼ぶ(図4参照)。
【0071】
第1中間領域41、第1折曲誘導部40、第2折曲誘導部43に吸収コア31を構成する吸収材料がない場合、圧着部51,52,53は、吸収コア31を介することなく第1ラップ部と第2ラップ部とが互いに直接接合された部分となる。第1中間領域41、第1折曲誘導部40、第2折曲誘導部43に吸収コア31を構成する吸収材料が存在する場合、圧着部51,52,53は、吸収コア31を介して第1ラップ部と第2ラップ部とが互いに間接的に接合された部分となる。
【0072】
前後方向Lにおける第1圧着部51の幅は、前後方向Lにおける第1中間領域41の幅よりも小さいことが好ましい。また、第1圧着部51は、幅方向Wに沿って連続的に延びていることが好ましい。
【0073】
第2圧着部52は、第1折曲誘導部40に沿って前後方向Lに延びている。幅方向Wにおける第2圧着部52の幅は、幅方向Wにおける第1折曲誘導部40の幅よりも小さいことが好ましい。第2圧着部52は、第1圧着部51と繋がっていてもよい。
【0074】
第3圧着部53は、第2折曲誘導部43に沿って延びている。前後方向Lにおける第3圧着部53の幅は、前後方向Lにおける第2折曲誘導部43の幅よりも小さいことが好ましい。第3圧着部53は、第2圧着部52と繋がっていてもよい。
【0075】
第1圧着部51、第2圧着部52及び/又は第3圧着部53は、肌面シート10には形成されていないことが好ましい。より具体的には、第1圧着部51、第2圧着部52及び/又は第3圧着部53は、コアラップ32のみ、又は吸収コア31とコアラップ32のみを圧着することによって形成されていることが好ましい。なお、圧着部51,52,53は、エンボス加工によって形成することができる。
【0076】
(2)吸収性物品の装着状態
次いで、このように構成された吸収性物品1の装着状態を説明する。図5は、使用中の吸収性物品の斜視図である。図6は、吸収性物品1が着用者に装着された状態の図1の6A−6A断面を基準とした断面図である。図7は、吸収性物品1が着用者に装着された状態の図1の7A−7A断面を基準とした断面図である。
【0077】
生理用ナプキンとしての吸収性物品1を着用する際、吸収性物品1は下着Sに固定される。吸収性物品1の排泄口当接域S1は、着用者の両足によって挟まれ、幅方向Wの外側から幅方向Wの内側に向かう力を受ける。この力により、排泄口当接域S1が着用者の排泄口付近にフィットするように持ち上がる(図6参照)。
【0078】
着用者の大陰唇より後方に位置する会陰部よりも後方には、肛門や臀裂が位置する。この会陰部よりも後方近辺の身体の断面形状は、幅方向の中心が窪んだ形状である。この着用者の臀部に、吸収性物品の後側域S3が対向して配置される。
【0079】
後側域S3では、中心線CLに沿って前後方向Lに延びる第1折曲誘導部40が形成されている。そのため、吸収性物品の外側から内側に向かう力により、幅方向Wにおける後側域S3の中心は、着用者の体に向けて突出し易い(図5及び図7参照)。これにより、後側域S3では、吸収性物品1は、着用者の臀裂の形状に合わせて変形することができる。その結果、着用者は、臀部においても、吸収性物品1との心地よいフィット感を得られる。
【0080】
このように、第1折曲誘導部40が臀裂に沿って突出していたとしても、後側域S3において複数の第2折曲誘導部43が幅方向Wに形成されているため、吸収性物品の後側域S3は、着用者の臀部の丸みに沿って湾曲することができる。これにより、着用者は、臀部において、より心地よいフィット感を得られる。
【0081】
図8は、吸収性物品1を装着した着用者が立った状態を示している。吸収性物品1の第1領域R1は、下着のクロッチ部(着用者の股下域に対向する部分)に、第1本体粘着領域61を介して止着されている。吸収性物品1の第2領域R2は、下着のクロッチ部の後方部分(着用者の臀部に対向する部分)に、第2本体粘着領域62を介して止着されている。着用者が立った状態で、着用者の臀部は膨らんだ状態である。
【0082】
図9は、図8に示す断面図を90度回転させた状態であり、着用者が仰向けに寝た状態を示している。着用者が仰向けに寝た状態は、寝具によって着用者の身体が押圧されるが、図9においては、説明の便宜上、寝具によって着用者の身体が押圧されていない仮想的な状態を示している。図9に、寝具を示すラインLBを図示する。寝具のラインLBと身体が重なっている領域は、身体が寝具によって押圧され、身体が寝た状態で変形する領域である。
【0083】
図10は、仰向けに寝た着用者の身体が寝具によって押圧されて変形した状態を示している。図10に示す状態では、図9において身体と寝具のラインと重なっている領域が変形している。より詳細には、着用者の臀部の膨らみが潰れ、着用者の臀部の一部が平坦な形状である。臀部の潰れた部分は、股下側(図10の左方向)に移動し、脚の付け根から脚先側に膨らむ。臀部の潰れた部分の臀部側の端部に第2曲部41bが配置され、臀部の潰れた部分の股下側の端部に第1曲部41aが配置される。そのため、吸収性物品の第1中間領域41が、臀部の膨らみが潰れた部分に沿って変形し、臀部の潰れた部分に沿って配置される。
【0084】
排泄口当接域S1の前後方向の中心は、着用者の排泄口に対向する位置となる。着用者の排泄口よりも後方の臀部に当たる位置に、第1曲部41aの変形起点と第2曲部41bの変形起点とが形成される。よって、吸収性物品1は、臀部の膨らみが潰れた際に、臀部の変形に従って柔軟に変形する。これにより、寝た姿勢において、吸収性物品1が体にフィットした状態が維持される。
【0085】
(3)作用効果
一実施形態に係る吸収性物品によれば、排泄口当接域S1の後方で幅方向に延びる第1曲部41aと、第1曲部41aよりも後方で幅方向Wに延びる第2曲部41bと、が設けられている。第1曲部41a及び第2曲部41bは、吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されている。第1曲部41aの前方において第1曲部41aに隣接する第1領域R1と、第2曲部41bの後方において第2曲部41bに隣接する第2領域R2と、前後方向Lにおいて第1曲部41aと第2曲部41bの間に位置する第1中間領域42と、が設けられている。第1中間領域41の吸収材料の目付は、第1領域R1及び第2領域R2の吸収材料の目付よりも低い。第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41は、中心線CLから、幅方向における吸収コアの外側縁と前記中心線との中間点を越えて延びている。第1中間領域41の前後方向Lの長さは、10mm以上40mm以下である。
【0086】
第1中間領域41は吸収材料の目付が低い領域であるため、吸収性物品に加わった外力を吸収する(逃がす)ことができる。そのような領域が、吸収性物品の中心線CLを挟んで左右に、吸収性物品1の長さの半分以上延びていることで、吸収性物品が左右に回転するような力を受けたとき、または左右に移動するような力を受けたときに、第1中間領域41は吸収性物品に加わった外力を逃がすように変形することができる。さらに、第1中間領域41は、着用者が寝た姿勢において、着用者の臀部の潰れに伴う臀部の張り出しによって吸収性物品を押す力を逃がすようにも変形することができる。
【0087】
また、柔軟に変形可能な第1中間領域41の前後方向Lの長さが長いため、着用者の動作中に、吸収性物品が様々な方向からの外力を受けた場合であっても、排泄口当接域S1と後側域S3とが独立して変形し、排泄口当接域S1と後側域S3とがそれぞれ着用者の体にフィットした状態を維持することができる。
【0088】
図11は、吸収性物品が前後方向Lに縮むような力を受けたときのようすを示している。上述したように、第1中間領域41の前後方向の長さが比較的大きいため、後側域S3の吸収コアが排泄口当接域S1の吸収コア上に重なるように変形することができる。また、後側域S3の吸収コアが排泄口当接域S1の吸収コア下に重なるように変形することも可能である。
【0089】
図12は、吸収性物品の後側域S3が、概ね排泄口当接域S1の中心を軸にして、左右に回転するような力を受けたときの様子を示している。この状態において、第1中間領域41の前後方向の長さが比較的大きいため、後側域S3は、排泄口当接域S1を基点にして、左右に所定の角度回転するように変形することができる。
【0090】
さらに、第1中間領域41の前後方向の長さが比較的大きいため、吸収性物品1の後側域S3は、排泄口当接域S1とは独立して、図5の回転軸CLまわりに回転するような変形も可能となる。
【0091】
着用者が寝返りをしたり、歩行中の場合、脚や臀部の動きに応じて、後側域S3は、排泄口当接域S1に対して回転するような力を受けたり、左右に移動するような力を受ける。上記構成の吸収性物品によれば、このような力に応じて、後側域S3は、排泄口当接域S1とは独立して自由に動くことができるようになる。その結果、着用者が動いている最中においても、排泄口当接域S1と後側域S3の両方を、着用者にフィットさせ続けることができる。これにより、着用者に対して安心感や良い付け心地を与えることができる。
【0092】
第1中間領域41の前後方向Lの長さが10mm以上であるため、吸収性物品は、第1中間領域41のところで、臀部の膨らみが潰れた部分を十分に吸収することができる。また、第1中間領域41の前後方向の長さが十分に長くなるので、着用者が動作中に、排泄口当接域S1と後側域S3とが独立して変形し易くなり、着用者の動作中においても排泄口当接域S1と後側域S3とがそれぞれ体にフィットした状態を維持し易くなる。
【0093】
一実施形態によれば、第1中間領域41の前後方向Lの長さは、40mm以下である。これにより、吸収性に対する不安感を抑制でき、着け心地に優れる吸収性物品を提供することができる(後述する比較評価も参照)。
【0094】
一実施形態によれば、第1中間領域41の前後方向Lの長さは、第1領域R1の、第1曲部41aに隣接する部分の吸収体と、第2領域R2の、第2曲部41bに隣接する部分の吸収体のうち最も厚いところよりも長い。これにより、後側域S3の吸収コアが排泄口当接域S1の吸収コア上に重なるようにより変形し易くすることができる。
【0095】
一実施形態によれば、第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41は、幅方向Wにおいて、吸収コアの一端から他端まで延びている。これにより、後側域S3の吸収コアが排泄口当接域S1の吸収コア上に重なるように変形し易くなる(図11参照)。また、後側域S3は、排泄口当接域S1を基点にして、左右に所定の角度回転するように変形をし易くなる(図12参照)。
【0096】
一実施形態によれば、第1曲部41aの幅方向Wの中心と排泄口当接域S1の前後方向Lの中心との距離Xは、25mm以上80mm以下である。本願の発明者が種々調査を行った結果、臀部における股下側の変形起点は、排泄口当接域S1の前後方向Lの中心よりも25mm以上後方に位置することが多い。よって、第1曲部41aの幅方向Wの中心と排泄口当接域S1の前後方向Lの中心との距離Xが25mm以上であると、臀部の股下側の変形起点に第1曲部41aや第1中間領域41が位置することになる。また、臀部の体圧が最も掛かる部分に第1曲部41aや第1中間領域41が位置しないようにするため、第1曲部41aの幅方向Wの中心と排泄口当接域S1の前後方向Lの中心との距離Xが80mm以下であることが好ましい。これにより、着用者の違和感を低減することができる。
【0097】
一実施形態によれば、第1曲部41a及び第2曲部41bは、平面視において、後方に向かって凸状に湾曲する。後方に向かって凸状に湾曲した部分は、仰向け時に下着と共に後方に向かって凸状に膨らみ、身体から離れる方向に押し出される。第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41が身体から離れることにより、第1曲部41a、第2曲部41b及び第1中間領域41によって仰向け時の変形を吸収できる。よって、第1領域R1及び第2領域R2が身体の丸みに追従する形状に維持され、吸収性物品全体が身体の丸みに沿って配置される。また、図5及び図11に示すように、排泄口当接域S1に対して後側域S3が立ち上がった状態(着用状態)では、第1曲部41a及び第2曲部41bが平面視において後方に向かって凸状に湾曲していることで、後側域S3が図5の中心軸CLまわりに回転するような変形をし易くなる。
【0098】
一実施形態によれば、吸収性物品1は、吸収体よりも非肌面側に設けられた非肌面シート20を有する。非肌面シート20には、吸収性物品1を下着に止めるための粘着剤を有する粘着領域61,62,63,64が設けられている。粘着剤が設けられていない非粘着剤領域が、第1中間領域41と少なくとも部分的に重複する領域で、幅方向Wにおける吸収性物品の一端から他端まで延びている(粘着領域61と粘着領域62との間の領域)。これにより、着用者の臀部がせり出して第1中間領域41に臀部からの力が加わったとしても、第1中間領域41が下着とは独立に変形し、その力を吸収することができる。したがって、着用者の臀部の潰れによるせり出しの力を、下着まで伝え難くし、吸収性物品のフィット性も維持し易くなる。
【0099】
一実施形態によれば、サイドシート12に、少なくとも前後方向Lに伸縮する伸縮性部材90が接合されており、伸縮性部材90の伸縮性が発現される有効長部分Leは、前後方向Lにおいて、第1中間領域41を跨いで、第1領域R1から第2領域R2まで延びている。第1中間領域41の剛性が低いため、自然状態において、伸縮性部材90の収縮作用により第1中間領域41は前後方向に縮んだ状態となる。さらに、第1中間領域41のところで、粘着剤が存在しない非粘着領域があるため、結果として、吸収性物品は、第1中間領域41が前後方向Lに縮んだ状態で下着に取り付けられる。その後、着用者が下着を引き上げた際には、当該第1中間領域41の縮んだ部位が下着の伸びとともに伸びていく。これにより、着用者が下着を装着したときには、第1中間領域41が伸びた状態(収縮による皺の少ない状態)になり、着用者に着け心地の良さを与えることができる。また、一般には、下着の装着中または装着後において、下着の伸びによって粘着領域に負荷がかかり吸収性物品が下着から剥がれてしまうこともある。しかしながら、本実施形態では、粘着剤が存在しない非粘着領域が、下着の伸びに応じた力を緩衝する領域となるため、下着の伸びに応じて吸収性物品が下着から剥がれることが抑制される。
【0100】
一実施形態によれば、吸収性物品は、ヒップフラップに設けられ、ヒップフラップを下着に止めるための粘着剤を有するヒップフラップ粘着領域64を有する。伸縮性部材90の有効長部分Leの後側縁は、ヒップフラップ粘着領域64の後側縁よりも前側に配置されている。これにより、伸縮性部材90の伸縮力がヒップフラップ粘着領域64に強くかからないようになっている。これにより、ヒップフラップ粘着領域64による下着との粘着力が、伸縮性部材90の伸縮力に負けて、ヒップフラップ粘着領域64が下着から剥がれてしまうことを抑制することができる。
【0101】
一実施形態によれば、吸収体は、排泄口当接域S1において、吸収体の外側縁よりも幅方向の内側に位置する中高部33を有する。中高部33の厚さは、第1領域R1における吸収体の外側縁の厚さよりも厚い。中高部33は、第1領域R1内において第1曲部41aに隣接している。第1領域R1の中高部33と第1曲部41aが隣接することにより、第1領域R1と第1中間領域41との間の剛性差及び厚み差が大きくなり、より明確な変形起点が形成される。よって、第1中間領域41と第1領域R1とを異なる形状で身体に沿わせて配置できる。
【0102】
一実施形態によれば、吸収性物品は、吸収体が厚み方向に圧縮された第1圧搾部81を備えている。第1圧搾部81は、中高部33の外側縁に沿って配置されている。これにより、着用者の脚からの力が第1圧搾部81に加わる。第1圧搾部81は変形の基点となり、中高部33が着用者の股下にフィットするように変形する(図6参照)。
【0103】
一実施形態によれば、第1中間領域41において、肌面シート10とコアラップ32とが接合されていない非接合領域が、幅方向に沿って連続的に延びている。これにより、第1中間領域41が柔軟に変形したとしても、第1中間領域41の吸収体に対する肌面シート10の自由度が高いため、着用者に与える違和感を抑制することができる。
【0104】
一実施形態によれば、コアラップ32は、吸収コア31よりも肌面側の第1ラップ部と、吸収コア31よりも非肌面側の第2ラップ部と、を有する。第1ラップ部と第2ラップ部とは、第1中間領域41のところで、吸収コア32を介して、又は吸収コア32を介することなく互いに圧縮された状態で接合されている(図4参照)。第1中間領域41は、着用者の動きに伴い柔軟に変形する部分である。そのため、第1中間領域41及びその近辺は、着用者の動作とともに吸収コア31が崩れたり、よれたりし易い部分となる。本実施形態では、第1中間領域41のところで、第1ラップ部と第2ラップ部とが、吸収コア32を介して、又は吸収コア32を介することなく互いに圧縮された状態で接合されている。そのため、コアラップ32の形状が長時間維持され、継続的に吸収性物品のフィット性を確保することができる。
【0105】
一実施形態によれば、吸収性物品は、幅方向Wにおける吸収体の外側縁よりも幅方向の外側に延出し、使用時に折り返し可能なウイング3と、後側域S3において幅方向の外側に膨らんだヒップフラップ4と、を有する。第1中間領域41の少なくとも一部は、ウイング3の後側端部とヒップフラップ4の前側端部との間に設けられている。ウイング3間の領域(排泄口当接領域S1)とヒップフラップ4の領域は、着用者の肌に密着させておくことが望まれる領域である。第1中間領域41が、ウイング3間の領域(排泄口当接領域S1)とヒップフラップ4の領域との間に設けられているので、排泄口当接領域S1とヒップフラップの領域の両方を着用者の肌に密着させた状態のまま、吸収性物品を第1中間領域41のところで変形させることができる。
【0106】
一実施形態によれば、後側域S3において中心線CLに沿って延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第1折曲誘導部40が設けられている。後側域S3は、着用者の臀部に対向する位置であり、後側域S3の幅方向の中心は、着用者の臀裂に対向する。後側域S3の幅方向の中心に第1折曲誘導部40が存在することで、吸収性能物品に幅方向内側の力がかかったときに、第1折曲誘導部40が着用者の臀裂に沿って突出し易くなる。これにより、着用者の臀部によりフィットし易い吸収性物品を提供できる。
【0107】
一実施形態によれば、第1折曲誘導部40は、第1中間領域41と繋がっている。これにより、第2領域Rが、中心線CLを挟んで左右に区分される。したがって、第2領域Rの左側の部分と、第3領域Rの左側の部分とが、独立に変形し易くなり、フィット性の向上に繋がる。また、第2領域Rの吸収材料が中心線CLを超えて移動することが抑制されるので、吸収材料の局所的な集中を防止することができる。
【0108】
一実施形態によれば、第1折曲誘導部40は、前後方向Lにおける後側域S3の中心よりも後側へ達している。着用中に、第1折曲誘導部40は、着用者の肌側に向けて突出する。第1折曲誘導部40は、後側域S3で前後方向Lに沿って延びているため、着用者の臀裂に沿ってフィットし易い。
【0109】
一実施形態によれば、コアラップ32は、吸収コア31よりも肌面側の第1ラップ部と、吸収コア31よりも非肌面側の第2ラップ部と、を有する。第1折曲誘導部40において、肌面シート10とコアラップ32とが接合されていない非接合領域が、前後方向に沿って連続的に延びている。第1ラップ部と第2ラップ部とは、第1折曲誘導部40のところで、吸収コア31を介して、又は吸収コア31を介することなく互いに圧縮された状態で接合されている。第1折曲誘導部40及びその近辺は、前述したように変形し易い部分である。そのため、第1折曲誘導部40及びその近辺は、着用者の動作とともに吸収コア31が崩れたり、よれたりし易い部分となる。本実施形態では、第1折曲誘導部40のところで、第1ラップ部と第2ラップ部とが、吸収コア32を介して、又は吸収コア32を介することなく互いに圧縮された状態で接合されている。そのため、コアラップ32の形状が長時間維持され、継続的に吸収性物品のフィット性を確保することができる。
【0110】
一実施形態によれば、第1折曲誘導部40を挟んで両側で前後方向Lに延び、吸収体が圧搾された一対の長手圧搾部82が設けられている。一対の長手圧搾部82は、比較的剛性が高いため、吸収コア31の変形の基点となる。一対の長手圧搾部82の間に挟まれた第1折曲誘導部40は、より着用者の身体側に隆起し易くなる。これにより、より着用者の身体になじみ、着用者に対してより心地よいフィット感を与えることができる吸収性物品を提供することができる。
【0111】
一実施形態によれば、一対の長手圧搾部82は、第1中間領域41に達していない。一対の長手圧搾部82は、比較的剛性の高い部分となる。このように剛性の高い部分が、第1中間領域41に形成されていないため、吸収性物品は、第1中間領域41のところで、より変形しやすくなる。
【0112】
一実施形態によれば、吸収体は、後側域S3において第1折曲誘導部40から幅方向Wの外側に延び、吸収性物品を曲げることができるように構成された第2折曲誘導部43を有する。第2折曲誘導部43は、幅方向Wに沿って延びる変形基点を形成する。後側域S3の吸収コア31は、第2折曲誘導部43を基点に変形できるため、吸収性物品1が身体の前後方向Lに沿った丸みに沿ってよいフィットし易くなる。特に、図5に示すように、第1折曲誘導部40が臀裂に沿って突出している場合、後側域S3を身体の前後方向Lに沿った丸みに沿って変形させ難くなることがある。この場合であっても、変形基点となる第2折曲誘導部43によって、後側域S3を身体の前後方向Lに沿った丸みに合わせて変形し易くすることができる。これにより、より着用者の身体になじみ、着用者に対してより心地よいフィット感を与えることができる吸収性物品を提供することができる。
【0113】
一実施形態によれば、第1折曲誘導部40を挟んで両側で前後方向Lに延び、吸収体が圧搾された一対の長手圧搾部82が設けられている。一対の長手圧搾部82は、第2折曲誘導部43のところで前後方向Lに間隔をあけて形成されている。一対の長手圧搾部82は、比較的剛性の高い部分となる。このように剛性の高い部分が、第2折曲誘導部43のところで間隔をあけて形成されているので、吸収性物品は、第2折曲誘導部43のところで、より変形しやすくなる。
【0114】
一実施形態によれば、第1折曲誘導部40は、中心線CLに沿って延びる第2中間領域42と、第2中間領域42を挟んで前後方向Lに延びる第3曲部42a及び第4曲部42bと、を有する。第3曲部42a及び第4曲部42bは、吸収性物品が厚み方向に曲がることができるように構成されている。第2中間領域42の吸収材料の目付は、第1折曲誘導部40より幅方向W外側の吸収材料の目付よりも低い。これにより、第1折曲誘導部40は、第3曲部42a及び第4曲部42bを基点として、第2中間領域42のところで折り曲げられやすくなる。これにより、後側域S3が着用者の臀裂にフィットし易くなる。
【0115】
(4)変形例に係る吸収性物品
次いで、変形例に係る吸収性物品について図13を用いて説明する。なお、変形例に係る吸収性物品の説明において、上述した実施形態と異なる構成について説明し、上述した実施形態と同様の構成については同符号を用いて説明を省略する。
【0116】
変形例に係る吸収性物品1は、少なくとも吸収体30を厚み方向に圧縮した圧搾部を有する。圧搾部は、表面シート11及び吸収体30が厚み方向に圧縮されている。変形例に係る圧搾部は、第1領域R1に配置される第1圧搾部81と、第2領域R2に配置される第2圧搾部82と、第2圧搾部82よりも後側に配置される後側圧搾部84と、を有する。
【0117】
長手圧搾部82は、後側域S3で、中心線CL、より具体的には第1折曲誘導部40を挟んで両側に設けられている。長手圧搾部82は、前後方向Lに沿って延びている。長手圧搾部82は、前後方向Lに直線的に延びていてもよいし、前後方向Lに対して傾斜して曲線的に延びていてもよい。長手圧搾部82は、ヒップフラップ4の最大幅の位置P1よりも前側に形成されていてよい。長手圧搾部82は、第1中間領域41に達していないことが好ましい。
【0118】
一対の後側圧搾部84は、後側域S3で、中心線CLを挟んで両側に設けられている。後側圧搾部84は、吸収体30と表面シート11とが厚み方向に圧縮されることによって形成されていてよい。一対の後側圧搾部84は、吸収性物品の幅方向Wの中心を通る中心線CLを挟んで互いに離間して設けられている。一対の後側圧搾部84は、ヒップフラップ4の最大幅の位置P1よりも後側に位置していてよい。
【0119】
(5)その他の実施形態
本実施の形態の吸収性物品は、夜用の生理用ナプキンであるが、他の実施形態として、昼用の生理用ナプキンであってもよい。また、生理用ナプキンは、ヒップフラップを備えていなくてもよい。
【0120】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0121】
(6)比較評価
次いで、前後方向Lにおける第1中間領域41の長さの比較評価について説明する。表1は、第1中間領域41の長さの比較評価結果を示す。比較評価の試験では、実施例1〜4の吸収性物品と、比較例1〜3の吸収性物品と、を比較して、フィット性の維持状態と見た目による吸収性に対する不安感について評価した。実施例1〜4の吸収性物品と、比較例1〜3の吸収性物品とは、第1中間領域41の前後方向の長さが異なるが、その他の構成は、同じである。
【0122】
【表1】
【0123】
質問1「普段使用しているナプキンと比べて、フィット性は維持出来ているか」。当該質問1に対して「維持出来ている」と答えた人数の比率が65%以上のサンプルを官能評価が良好であり、○と評価した。また、質問1に対して「維持出来ている」と答えた人数の比率が65%未満のサンプルを官能評価が良好でなく、×と評価した。
【0124】
質問2「普段使用しているナプキンと比べて、着け心地は良いか(違和感を感じたか)」。当該質問2に対して「非常に良い、やや良い」と答えた人数の比率が65%以上のサンプルを官能評価が良好であり、○と評価した。また、○の評価のサンプルのうち、非常に良いと答えた人数の比率が全体人数の20%を超えたサンプルは、より着け心地に優れると評価されているため、◎と評価した。
【0125】
質問3「普段使用しているナプキンと比べて、見た目の吸収性に対する不安感が少ないか(又は不安感が生じないか)」。当該質問2に対する答えが、「不安感が少ない」又は「不安感がない」と答えた人数の比率が65%以上のサンプルを官能評価が良好であり、○と評価した。また、質問1に対して「不安感が少ない」又は「不安感がない」と答えた人数の比率が65%未満のサンプルを官能評価が良好でなく、×と評価した。
【0126】
実施例1〜4に係る吸収性物品は、第1中間領域の前後方向の長さが10〜50mmであり、フィット性の維持評価、着け心地の良さ、及び吸収性に対する不安感の評価のいずれについても良好との結果を得ることが出来た。さらに、実施例1〜3に係る吸収性物品は、より着け心地に優れるという結果を得ることができた。当該結果により、第1中間領域の前後方向の長さは、好ましくは10mm以上40mm以下、より好ましくは10mm以上30mm以下であることがわかった。より詳細には、第1中間領域の前後方向の長さが10mm以上であることにより、フィット性について良好な結果を得ることがわかった。また、第1中間領域の長さが40mm以下であることにより、吸収性に対する不安感を抑制でき、着け心地に優れることがわかった。さらに、第1中間領域の長さが30mm以下であることにより、より着け心地に優れることがわかった。なお、第1中間領域の長さが50mmのときには、後側域の中心が突出する長さが長すぎて、着用者に違和感を与えてしまうことがわかった。
【0127】
次いで、仰向けに寝た着用者の臀部の潰れた部分の股下側への迫り出し量を測定した。迫り出し量は、仰向けに寝た状態の着用者の臀部の潰れた部分の股下側の端部(図4(c)のP1)と、臀部の迫り出しの脚側端部(図4(c)のP2)と、の距離とした。5人の試験者の迫り出し量を測定した。測定結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
測定結果から臀部の迫り出し量は、10mm〜30mmであることがわかった。よって、第1中間領域の前後方向の長さが10mm以上であることにより、着用者の臀部の潰れた部分の股下側の端部から臀部の迫り出しの脚側端部までの膨らみを覆うことができることがわかった。また、第1中間領域41の前後方向の長さが30mm程度であれば、臀部のせり出しによって吸収性物品にかかる力を第1折曲誘導部40により逃がすことがより確実にできるようになる。吸収性物品の着用位置の個人差も考慮すると、前述の試験結果にあるように、第1中間領域41の前後方向の長さが40mm以下であることが好ましい。
【0130】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0131】
1 :吸収性物品
3 :ウイング
4 :ヒップフラップ
10 :肌面シート
20 :非肌面シート
30 :吸収体
31 :吸収コア
32 :コアラップ
33 :中高部
40 :第1折曲誘導部
41 :第1中間領域
41a :第1曲部
41b :第2曲部
42 :第2中間領域
42a :第3曲部
42b :第4曲部
43 :第2折曲誘導部
61 :第1本体粘着領域
62 :第2本体粘着領域
81 :前側圧搾部
82 :長手圧搾部
L :前後方向
W :幅方向
T :厚み方向
S1 :排泄口当接域
S2 :前側域
S3 :後側域
CL :中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13