(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本件発明の発光装置は、主として、発光素子と、素子載置部を有するリードと、発光素子とリードの一部とを封止する透光性部材とから構成される。
以下の説明において、「上面」とは、発光装置の光取り出し面側の面、「底面」とは、上面と反対の面を指す。
下記に、各構成部材について、詳述する。
【0010】
<発光素子>
発光素子は、いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子であればどのようなものでもよい。例えば、基板上にInN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III‐V族化合物半導体、II‐VI族化合物半導体等、種々の半導体によって、発光層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。基板としては、C面、A面、R面のいずれかを主面とするサファイアやスピネル(MgAl
2O
4)のような絶縁性基板、また炭化珪素(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、GaAs、ダイアモンド;ニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板、窒化物半導体基板(GaN、AlN等)等が挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合、PN接合などのホモ構造、ヘテロ結合あるいはダブルへテロ結合のものが挙げられる。発光素子を構成する各半導体層には、Si、Ge等のドナー不純物及び/又はZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされていてもよい。発光層は、量子効果が生ずる薄膜に形成した単一性量子井戸構造、多重量子井戸構造としてもよい。
発光素子の発光波長は、半導体の材料、混晶比、発光層のInGaNのIn含有量、発光層にドープする不純物の種類を変化させるなどによって、紫外領域から赤色領域まで変化させることができる。
【0011】
発光素子は、後述するリードに載置されている。発光素子をリードに載置するためには、通常、接合部材が用いられる。例えば、青及び緑発光を有し、サファイア基板上に窒化物半導体を成長させて形成された発光素子の場合には、エポキシ樹脂、シリコーン等を用いることができる。また、発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子裏面にAlメッキをしてもよいし、樹脂を使用せず、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材を用いてもよい。さらに、GaAs等からなり、赤色発光を有する発光素子のように、両面に電極が形成された発光素子の場合には、銀、金、パラジウムなどの導電性ペースト等によってダイボンディングしてもよい。
本発明の発光装置では、発光素子は1つのみ搭載されてもいいが、2つ以上搭載されてもよい。なお、発光素子は、平面視矩形状であることが好ましい。
【0012】
また、発光素子は支持体(サブマウント)を介してリードに載置してもよい。例えば、セラミックスを用いた支持体は、所定の形状に形成した後、焼成を行うことにより、形成される。支持体の上面側には、発光素子と接続される導体配線が設けられている。導体配線は、通常、例えば、蒸着又はスパッタ法とフォトリソグラフィー工程とにより、あるいは印刷法等により、あるいは電解メッキ等により形成されている。導体配線は、支持体内に設けられていてもよい。導体配線は、例えば、タングステンやモリブデンなど高融点金属を樹脂バインダーに含有させたペースト状の材料から形成される。スクリーン印刷などの方法により、ペースト状の材料をグリーンシートに設けたスルーホールを介して所望の形状とし、焼成することによって、セラミックスの支持体及びその表面又は内部に配置された導体配線が形成される。また、支持体は、リードフレームからなる正負一対の電極を導電部材として、樹脂にてインサート成形されていてもよい。このような支持体の上面に発光素子が載置され、支持体の導体配線と電気的に接続されていてもよい。このような支持体を用いる場合は、支持体の導体配線が後述するリードと電気的に接続される。この場合、発光素子はフェースダウン実装してもよい。
【0013】
<リード>
リードは、発光素子を載置する機能を果たし、また、発光装置の電極としての機能を果たすここができれば、リードの材料は特に限定されず、発光素子に適当な電力を供給することができるような材料等であればよい。また、熱伝導率の比較的大きな材料で形成することが好ましい。このような材料で形成することにより、発光素子で発生する熱を効率的に逃がすことができる。例えば、200W/(m・K)程度以上の熱伝導率を有しているもの、比較的大きい機械的強度を有するもの、あるいは打ち抜きプレス加工又はエッチング加工等が容易な材料が好ましい。例えば、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅、鉄入り銅等の合金等が挙げられる。また、これらを母材とし、さらにその表面に銀、アルミニウム、銅、金等のめっき層が施こされたもの等が挙げられる。
表面に設けられるめっき層は、反射率を高くする、また、導電性ワイヤとの密着性を良好とする、など、母材の表面特性を調整するために設けられる。具体的には、搭載される発光素子からの光を効率よく取り出すために、反射めっき(例えば、銀又は銀合金、Ni/Pd/Au等による)などが挙げられる。また、めっき加工されたリードは濡れ性が良く、半田等を介して被接着体と安定して接着することができる。
【0014】
本件発明の発光装置では、リード12は、発光素子11等とともに、その一部が後述する透光性部材14に埋設されている。そのため、リード12は、透光性部材14に埋設され発光素子11が載置される素子載置部12dと、発光素子11等と電気的に接続され透光性部材外に延長して突出するアウターリード部12aとを備える。
アウターリード部12aは、透光性部材14の側面から突出して設けられる。ここで、アウターリード部12aは、リードの突出方向である第1方向と平面視で直交する第2方向の最大長さ(以下アウターリード部の「幅」と記載することがある)L2が、透光性部材が備えるレンズ部14aのレンズ直径長さL1以上であることが肝要である。これにより、放熱性に優れた発光装置とすることが可能となる。アウターリード部の幅L2をレンズ直径L1以上とすることにより、放熱経路の幅がレンズ径以上となり、通電時にレンズ部が受ける熱の影響を低減することができる。発光素子から発生する熱は、基本的にリードから放熱されるため、放熱経路の幅がレンズ径より小さくなると、レンズ部の熱を効率よく逃がしにくくなる。
【0015】
また、アウターリード部12aの第2方向の最大長さL2は、発光装置の最大長さより小さいことが好ましい。言い換えれば、透光性部材の第2方向における最大長さL3が、発光装置外形の第2方向における最大長さであることが好ましい。アウターリード部12aが透光性部材14より突出すると、突出分だけ発光装置の外形寸法が大きくなってしまう。発光装置を小型化するためには、発光装置の第2方向におけるアウターリード部の最大長さL2を、透光性部材の最大長さL3の範囲内に収めることが肝要である。
【0016】
通常、発光装置を製造するにあたっては、めっき加工された一枚のリードフレームに複数の発光装置のパターンが形成され、各製造工程を経た後に個々に切断、分離され、同時に複数の発光装置が製造される。各発光装置を連結しているリードの適切な箇所が切断されることにより、個々に分離された発光装置となる。めっき加工されたリードを切断することにより生じる切断面には、めっき加工が施されていないことになる。めっき加工が施されていない切断面は濡れ性が悪く、半田等をはじき、被接着体との接着性が不十分となる問題があった。また複数の発光装置を大量生産する工程中においては、アウターリード部の切断面が発光装置から突出していると、鋭利な切断面が他の発光装置を破損させるおそれがある。
【0017】
本件発明の発光装置においては、アウターリード部12aの突出方向である第1方向の端面12bは、めっき層で覆われていることが好ましい。発光装置の第1方向の端部にはアウターリード部12aが配置されるので、この端面12bにリードの切断面が配置されると、鋭利な切断面が他の発光装置を破損させる虞がある。発光装置が、生産時の個片化工程でリード切断時に生じる切断面を有する場合は、その切断面はアウターリード部の第2方向における端面12cのみに配置することが好ましい。これにより、製造工程中における発光装置の破損不良を低減することができる。
【0018】
さらに、めっき層で覆われた端面では半田等のはじきが発生しにくいため、被接着体との接着性を良好に安定して実装することが可能となる。つまり、第1方向の端面の表面がめっき層で覆われていることにより、第1方向への突出長さを抑えながらも、安定した半田実装を行えることが可能となり、発光装置を小型化することができる。
【0019】
また、発光装置を別の基体に半田実装する際、第1方向と第2方向との両方向に切断面が露出していると、両方向で半田はじきが発生しリフロー時に発光装置が回転しにくくなる虞がある。このため、切断面の配置を一方向の端部のみとすることにより、発光装置の半田実装時におけるセルフアライメント性を向上させることができる。
【0020】
本件発明の発光装置において、素子載置部は、その周囲を平面視略矩形の壁部により囲まれていることが好ましい。素子載置部の周囲を壁部で囲むことにより、リード上に素子載置部を底部とした凹形部が形成される。矩形の発光素子の四側面から出射した光は、それぞれ対向する凹形部の内側面で反射して発光装置の上面側へ向かわせることができるため、発光装置の光取り出し効率の向上を図ることができる。また発光素子の適所の配置を確保することができるとともに、透光性部材および後述する被覆部材等の封止の安定性を確保することができる。壁部は、リード上に設けられた樹脂等の枠体でも良いが、
図6に示すように、素子載置部の周囲を屈曲して形成された凹形部であることが好ましい。リードで一体成形された凹形部は光反射性に優れているため、光取り出し効率を向上させることができる。
【0021】
凹形部の平面視形状は、略矩形とすることが好ましい。略矩形とすることにより、矩形状の発光素子の側面からの光を、対向する凹部の側面で効率よく上面側へ導くことが可能となる。
【0022】
凹形部の大きさ及び深さは、搭載する発光素子から出射された光及びその反射光等の光の出射をさえぎらない程度であることが適している。特に、発光素子から出射された光及びその反射光を凹部の側面又は上縁部でさえぎらないことが適している。例えば、凹形部の底部の大きさは、発光素子の占有面積より大きく、さらに占有面積の2.8倍程度以上であることが適している。その深さは、発光素子の高さ以上であればよく、0.3mm程度以上が好ましく、0.5mm程度以下が好ましい。
【0023】
凹形部の側面は垂直であってもよいが、底部に向かって狭くなるように傾斜していることが好ましい。例えば、底面に対する法線方向に20〜60°程度で傾斜していることが適している。これにより、発光素子からの光を効率的に上面に導くことができる。さらに、凹形部は、その側面から凹形部の外周に向かって、表面が丸みを帯びていることが好ましい。このように丸みをつけることにより、凹形部の開口部縁上において、後述する透光性部材にクラックが入りにくくなり、透光性部材の剥がれを防止することができる。
【0024】
リードが上述の凹形部を有する場合は、凹形部の底面の高さと、透光性部材の底面の高さと、アウターリード部の底面の高さとが、略一致することが好ましい。このように、素子載置部の底面を露出させることにより、発光素子の放熱経路を確保することができる。さらに、アウターリード部からは、透光性部材が受けた熱を効果的に逃がすことができる。その結果、発光素子及び透光性部材に対する熱による劣化を防止することができ、発光装置の信頼性を向上させることができる。また、リードで発光装置の底面が補強されるので、発光装置自体の強度を向上させることができる。
凹形部の底面と、透光性部材の底面と、アウターリード部の底面とを略面一とする発光装置は、凹形部が形成されたリードをさらに屈曲させることにより形成される。素子載置部の周囲を上面側に屈曲して凹形部を形成したリードは、透光性部材内にて側面方向に屈曲され、さらに、発光装置の底面側に屈曲した後、リードの底面が透光性部材の底面と略面一となる位置で側面側に屈曲される。透光性部材内で屈曲されたリード部は、透光性部材の側面から突出して配置され、底面が透光性部材との底面と略面一なアウターリード部を形成する。
【0025】
素子載置部を有するリードには、その素子載置部に対して、対になる第2リードが対向していることが好ましい。リードと第2リードとは正負一対の電極となる。第2リードと発光素子とは後述する導電性ワイヤによって接続される。
第2リードは、透光性部材に覆われる内部端子部(インナーリード部)と、透光性部材の側面から突出して配置される外部端子部(第2のアウターリード部)とを有する。インナーリード部は、上述したリードの素子載置部と対向するように配置され、発光素子から伸びる導電性ワイヤが接続される。第2のアウターリード部は、上述したアウターリード部と同形状であることが好ましい。このような形状とすることにより、アウターリード部と同様の効果を得ることができる。
【0026】
リードは、通常、導電性ワイヤを用いたワイヤボンディングによって、発光素子および任意に搭載される保護素子と電気的な接続を有している。導電性ワイヤの材料及び直径などは、特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用されているものを利用することができる。特に、発光素子の電極とのオーミック性が良好であるか、機械的接続性が良好であるか、電気伝導性及び熱伝導性が良好なものであることが好ましい。導電性ワイヤは、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム等の金属及びそれらの合金を用いたものが挙げられる。また、表面に銀又は銀合金を被覆したもの等を用いることもできる。導電性ワイヤは、発光素子とワイヤボンディング用の金属部材と、ワイヤボンディング機器によって容易に接続することができる。
【0027】
本件発明の発光装置のように、レンズ部を有する発光装置を小型化するには、レンズ部以外の部分を最大限小さくすることが肝要である。本件発明の発光装置では、アウターリード部の突出長さを抑えることにより第1方向の外形長さを抑えている。
平面視で、レンズの直径を第1方向に3等分した真ん中のエリアを素子載置部とし、両端のエリアを内部端子部として、ワイヤとの電気的接続をとる為や保護素子の載置等に使用する。このような配置をとることによって、限られたエリア内に効率よくリードの内部端子部を配置することができる。
そのため、発光素子が2つ以上搭載される場合、素子載置部は第2方向に沿って延長し、発光素子を第2方向に沿って配列させることが好ましい。アウターリード部が突出する第1方向には、発光素子の電気的接続等のための内部端子部が配置されるため、素子載置部を第1方向に沿って延長すると、その分だけ、発光装置の外形が大きくなってしまう。
【0028】
透光性部材内に配置されるリードの素子載置部以外の部位(内部端子部)は、発光装置に搭載される発光素子の使用態様(配置空間、配置位置など)を考慮して、その形状、大きさ等を適宜調整することができる。また、発光素子とリードとの導電性を後述する保護素子の載置箇所などに応じて、適宜屈曲、変形させることができる。
【0029】
リードは、1つの発光装置において、上述したリードおよび第2リードの少なくとも2本備えていればよい。なお、複数のリードフレームは、上述した発光素子の電極との電気的な接続以外、実質的に電気的に分離されてパッケージ内に配置される。
【0030】
<透光性部材>
透光性部材は、発光素子およびリード部の一部を封止する部材であって、例えば
図1に示すように、少なくともレンズ部14aと鍔部14bとを有する。発光装置は、通常、基本形状(封止部材の形状)として、円柱、楕円形、球、卵形、三角柱、四角柱、多角柱、またこれらに近似する形状等に成形することができるが、一般的には四角柱に形成されている。本発明における透光性部材は、基本形状の四角柱の上面に集光のためのレンズ部が一体的に配置されている。レンズ部の外周には、鍔部が一体的に配置されて基本形状の四角柱を構成している。四角柱の対向する両側面からは、上述のアウターリード部が配置されている。
【0031】
レンズ部は、平面視において、発光装置の外形のより多くを占めていることが好ましいが、鍔部の外形に対する内接円以下になるよう設けられていることが好ましい。これにより、鍔部のサイズをある程度確保できるので、鍔部を保持して持ち運ぶことができる等、取り扱いやすい発光装置を得ることができる。また、アウターリード部の幅はレンズ部の直径以上としているため、鍔部にリードの内部端子を効率よく配置することができる。さらに、内部端子によって透光性部材を補強することができ、発光装置自体の強度を向上させることができる。
【0032】
レンズ部は、その中心が発光素子又は素子載置部の中心近傍に位置する形状とすることが好ましい。また、
図3に示すように、レンズ部14aは、少なくとも素子載置部12dよりも大きくすることが好ましく、リードに凹形部が設けられている場合には、この凹形部よりも大きくすることが好ましい。なお、レンズ部は、2つ以上の発光素子が素子載置部に載置されている場合でも、その大きさは、素子載置部より大きくすることが好ましい。通常、光の取り出し効率を向上させるためには、レンズ部は、光源の位置を中心とする形状で設計されるが、複数の発光素子が載置される場合には、光源が素子載置部内に複数点在することになるため、レンズ部の中心から外れた位置にも光源が存在し、意図する光の取り出し効率を得ることが難しくなる。そこで、レンズ部の大きさを素子載置部より大きくすることで、光源である発光素子のレンズ部の中心からのズレの程度を相対的に小さくすることができ、意図する光の取り出し効率に近づけることができる。これは、特にレンズ部を半球状とする場合に顕著である。
【0033】
鍔部は、必ずしもレンズ部の全周囲に配置されていなくてもよい。鍔部がレンズ部周囲の一部にのみ配置される場合は、略同一形状の鍔部がレンズ部の周囲に等間隔に配置されていることが好ましい。例えば、平面視において、鍔部は、レンズ部から突出するように透光性部材の四隅(好ましくは、互いに対向する2対)に設けられていることが挙げられる。これにより、発光装置自体のサイズを最小限に留めながら、レンズ部のサイズをより大きくできる。
【0034】
鍔部は、素子載置部が凹部形状を有しているか否かにかかわらず、鍔部が、発光素子から出射される光の照射範囲外に配置されるように形成されていることが適しており、発光素子からの光の照射範囲よりも発光装置の底面方向(下方)に配置されていることが好ましい。発光素子からの光の照射範囲とは、発光素子から出射する光が直接到達する範囲である。具体的には、発光素子の発光層とその周囲の遮光部材(例えばリードの凹形部外縁)を結ぶ直線で規定することができる。発光素子の上面を基準としてもよい。
【0035】
透光性部材は、発光素子及び金属部材の絶縁性を確保することができる材料から選択される。例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられるが、なかでも透光性のシリコーン樹脂が好ましい。耐熱性を発揮し、200℃を超える高温に耐え、さらに高温では変形、分解の速度が緩やかで、つまり、温度依存性が小さく、他の部材への影響が小さいことから、長期の信頼性を見込むことができるからである。
透光性部材は、部分的に、上述した材料に、着色剤として、Cr
2O
3、MnO
2、Fe
2O
3、カーボンブラック等、拡散材として炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。好ましくは、着色剤及び拡散材が混合されていない材料を用いる。これによって、着色剤や拡散材による光錯乱を防止でき、透光性部材の表面における全反射を抑制できるので、光取り出し効率を向上できる。
なお、本発明において、透光性とは、発光素子から出射された光を70%程度以上、好ましくは80%程度以上、さらに好ましくは95%程度以上透過させる性質を意味する。
【0036】
<保持部材>
本発明の発光装置では、保持部材を備えることができる。保持部材は、上述の透光性部材とともに、発光装置のパッケージ部材として機能させる部材である。保持部材は、透光性部材よりも硬い材料によって形成される。透光性部材よりも硬い材料である保持部材を必要に応じて用いることにより、発光装置の強度を高くすることができる。
また、保持部材とリードとの線熱膨張係数の差が、透光性部材とリードとの線熱膨張係数の差よりも小さいものが好ましい。これによって、温度変化時における剥離及びクラックの発生を抑制することができる。保持部材の線膨張係数は、100ppm/K程度以下であるものが適しており、500ppm/K程度以下が好ましい。さらに、20ppm/K程度以上が適している。
【0037】
リードの線熱膨張係数は、保持部材として通常使用される材料よりも小さく、例えば5〜20ppm/K程度である。保持部材とリードとの線熱膨張係数の差は10〜100ppm/K程度であることが好ましい。保持部材を直接リードに接触させることにより、リードを直接透光性部材で被覆する場合の線熱膨張係数の差を緩和することができ、保持部材とリードとの密着性低下を低減することができる。
【0038】
保持部材は、例えば、ポリフタルアミド(PPA)、エポキシ樹脂等の樹脂によって形成することができる。
保持部材は、上述した材料に、部分的に着色剤又は拡散材として、種々の染料又は顔料等を混合して用いてもよい。保持部材は発光素子から出射される光の照射範囲外に配置されることが好ましい。これにより、着色剤としてカーボンブラック等の光の吸収が大きなものが混合された材料のように光反射性が低い材料を用いても発光装置の光出力が低下しないため、光反射性の低い安価な材料を保持部材として選択することができる。
【0039】
このような保持部材は、例えば、リードと第2のリードの間のP‐Nギャップを含むリードの側面に配置することができる。リードが凹形部を有する場合は、リードの底面側にも配置され、凹形部の周囲に配置されることが好ましい。保持部材を、発光素子からの光の照射範囲外に配置することにより、発光効率を落とさずに発光装置を適度に補強することができる。保持部材が凹形部の周囲に配置される場合は、凹形部の底面の高さと、保持部材の底面の高さと、透光性部材の底面の高さと、アウターリード部の底面の高さとが、略一致することが好ましい。これにより保持部材とリードとで発光素子の底面をさらに補強することができる。
【0040】
<被覆部材>
本発明の発光装置では、発光素子をリードに載置した後、発光素子を被覆するように、被覆部材を配置してもよい。被覆部材は、通常、発光素子に接触して配置している。例えば、素子載置部が凹形部の底部である場合、凹形部の一部又は全部に、さらに凹形部から盛り上がるように被覆部材を配置してもよい。被覆部材は、外力、水分等から発光素子を保護し、発光素子とリードとの接続を確保するワイヤを保護し得る材料によって形成することが好ましい。
【0041】
被覆部材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂又はこれらの組み合わせ等の対候性に優れた透明樹脂又は硝子等が挙げられる。被覆部材は、透光性部材と同一の材料、同一の組成等が好ましく、これに拡散材、又は蛍光体物質を含有させてもよい。透光性部材と同一の部材を用いることで、透光性部材と被覆部材の熱膨張係数を略同等にできるため、被覆部材と透光性部材の両方に渡って配置されるワイヤ等に対する耐衝撃性を向上することができる。さらに、屈折率も略同等とできるため、被覆部材から透光性部材へ通過する光の損失を抑制でき、光取り出し効率を向上できる。被覆部材は、異なる材料、異なる組成等を用いることもできるが、発光素子から生じた熱の影響を受けた場合の透光性部材と被腹部剤との密着性を考慮して、これらの熱膨張係数の差が小さくなるものを選択することが好ましい。
【0042】
被覆部材には、拡散剤又は蛍光物質を含有させてもよい。拡散剤は、光を拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。蛍光物質は、発光素子からの光を変換させるものであり、発光素子から透光性部材の外部へ出射される光の波長を変換することができる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、有機蛍光体であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2などの無機蛍光物質など、種々好適に用いられる。本発明において、白色光を得る場合、特にYAG:Ce蛍光体を利用すると、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる黄色系が発光可能となり白色系が比較的簡単に信頼性良く形成できる。同様に、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2蛍光物質を利用した場合は、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる赤色系が発光可能であり白色系が比較的簡単に信頼性よく形成できる。
拡散材や蛍光物質は、被覆部材のみに含有させ、透光性部材には含有させないことが好ましい。これによって、拡散材や蛍光物質による光錯乱によって、発光装置の側面や底面側への光の抜けを防止できる。被覆部材は、上述のように凹形部に充填して形成できるほか、スクリーン印刷や電気泳動沈着等によって発光素子の周囲のみに形成してもよい。
【0043】
<保護素子>
本発明の発光装置には、発光素子の他、保護素子が搭載されていてもよい。保護素子は、1つでもよいし、2つ以上の複数個でもよい。ここで、保護素子は、特に限定されるものではなく、発光装置に搭載される公知のもののいずれでもよい。つまり、過熱、過電圧、過電流、保護回路、静電保護素子等が挙げられる。具体的には、ツェナーダイオード、トランジスタのダイオード等が利用できる。
搭載する部位は、発光素子の近傍でもよいが、発光素子から出射される光の範囲外に載置されていることが好ましい。これにより、保護素子における光吸収を抑制できる。保護素子は、リード、第2リードのどちらに配置されてもよいが、第2リードに配置されることが好ましい。保護素子の接合部材が素子載置部へ流れ出すのを防止できる。また、第1リードに保護素子載置部を設ける場合に比べて、第2リードの面積割合が増えるので、第2リードと透光性部材の密着性が向上する。
<その他の部品>
本発明の発光装置では、発光素子からの光の取り出しを効率的に行うために、反射部材、反射防止部材、光拡散部材等、種々の部品が備えられていてもよい。
【0044】
以下に、本発明の発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例における発光装置100の斜視図である。
図2は、
図1の発光装置の平面図である。
図3および
図4は、
図1の発光装置の内部構造を示す平面図である。
図5は、本発明の発光装置における透光性部材とアウターリードとの関係を説明するための概略平面図である。
図6は、
図1の発光装置における凹形部を説明するための斜視図である。
図7は、
図1の発光装置の底面図である。
【0045】
図1〜
図7に示すように、この実施例の発光装置は表面実装タイプの発光装置であって、発光素子11と、リード12および第2リード13の一部とが、シリコーン樹脂からなる透光性部材14により、一体的に封止構成されている。
この実施例の発光装置の製造工程では、めっき加工された一枚のリードフレーム上に複数の発光装置を形成し、後にリードフレームを切断することにより、個々の発光装置としている。
【0046】
発光素子11は、一辺が650μmの平面視略正方形状をしている。発光素子11は、サファイア基板にGaN系半導体層を積層させた構造によって形成されており、主波長が約470nmの青色発光を有する。発光素子11のダイボンディングは、例えば、銀ペースト又はエポキシ樹脂を用いて行われている。また、直径30μmの金線からなるワイヤによって、発光素子11に形成された電極(図示せず)と、第2リードとが接続されている。
【0047】
本実施例の発光装置100は、上面が縦3.6mm、横4.0mm、パッケージ端部においての底面から上面までの高さが2.05mmの形状である。うち、レンズ部の高さが1.4mmである。アウターリード部12aの第2方向の最大長さL2は3.3mmである。
本実施例の発光装置は、その製造工程において、一枚のリードフレームから複数の発光装置を製造している。一枚のリードフレームで製造される複数の発光装置は、それぞれの発光装置のアウターリード部および第2のアウターリード部の第2方向の両端を切断することにより、個々の発光装置100となる。リードフレームは、Cuを母材とし、その表面にAgめっき加工が施されているものを使用している。
【0048】
アウターリード部12aの露出方向である第1方向の端面12bは、Agめっき層で覆われ、アウターリード部の第2方向における端面12cには、リードの母材であるCuが露出している。Cuが露出する面は切断面であるため、その端部は鋭利であるが、アウターリード部の幅L2が、発光装置の外形寸法内に収まっているので、製造工程中の他の発光装置の破損を低減することができる。
アウターリード部12aの露出方向である第1方向の端面12bは、Agめっき層で覆われているため、半田等のはじきが発生しにくく、第1方向への突出長さを抑えても、接着性を良好に安定して実装することが可能となる。本実施例の発光装置100におけるアウターリード部12aの突出長さは、0.6mm程度である。
【0049】
リード12は、発光素子11を搭載するための素子載置部12dを有しており、その周囲を屈曲して素子載置部12dを底部とする凹形部を形成している。凹形部の形状は、平面視略長方形の角が丸められた形状をしており、凹形部の開口部は長辺が2.4mm、短辺が1.4mmである。凹形部の開口部から底部までの深さは0.35mmで、底部は長辺が2.13mm、短辺が1.13mmの平面視略長方形状をしている。
図示しないが、素子載置部12d内の発光素子11は、蛍光物質(例えばYAG:Ce)及び拡散材(例えばSiO
2)を含有するシリコーン樹脂からなる被覆部材によって封止されている。被覆部材はポッティングによって形成される。
【0050】
素子載置部の周囲を上面側に屈曲して凹形部が形成されたリード12は、凹形部をさらに側面方向に屈曲し、凹形部の周囲に平坦部を形成している。平坦部は発光装置の底面側に屈曲し、さらに側面側に屈曲して、透光性部材14の側面から突出されアウターリード部として配置される。凹形部の底面と、透光性部材の底面と、アウターリード部の底面とを略面一となっている。リード12および第2リード13は、0.25mm厚の銀めっき銅板を、プレスによる打ち抜き加工により形成されている。リード12の上記屈曲による高低差は略0.35mm程度である。
本実施例の発光装置は、さらに保持部材15を備えている。保持部材15は、ポリフタルアミド(PPA)によって成形されている。保持部材は、リードと第2のリードの間のP‐Nギャップを含むリードの側面部や、発光装置の底面側において、凹形部の周囲に配置されている。凹形部の底面12eの高さと、保持部材15の底面の高さと、透光性部材14の底面の高さと、アウターリード部12aの底面の高さとは略一致している。