(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性などに優れ、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とし、シリコーン樹脂などを主成分とする離型層を設けた離型フィルムは、多くの分野で使用されている。
【0003】
しかし二軸延伸ポリエステルフィルム上にシリコーン樹脂を主成分とした離型層を設けた離型フィルムは、静電気が発生して帯電しやすいと言う特徴がある。そのため、離型フィルムが帯電により周囲の埃を引き付けるといった問題が生じる。例えば離型フィルムを巻き出した際の剥離帯電により、離型フィルムの反離型面に吸着した異物は、加工後に離型フィルムを巻き取ると押し跡状に製品に不具合を及ぼす。
【0004】
このような帯電を抑制するために、種々の離型フィルムが提案されている。例えば、特許文献1では、帯電防止性の離型剤が提案されている。しかし、このような離型材料を塗布した離型フィルムは、粘着剤からの剥離が重く、十分ではない。
また、特許文献2では、基材フィルムの、離型層とは反対側の面に帯電防止性の層を設けたものが提案され、効果が示されている。
【0005】
一方でまた、離型フィルムの使用される用途として、高温にさらされることが多くある。例えば、離型層の上に、粘着剤組成物を塗布・乾燥する際の熱などである。粘着剤の塗布乾燥工程では、100℃から180℃程度の熱が加えられることがある。しかしポリエステルフィルムの問題として、このような高温の処理にさらされると、フィルム中に含有されるオリゴマー(ポリエステルの低分子量成分、特に環状三量体)が、フィルム内部から析出してくる。このようにして析出してきたオリゴマー、特に反離型面から析出したオリゴマーは、工程内のフィルム走行中にロール等に蓄積して異物化する。この異物を巻き込んで製品に不具合を生じたり、ロール清掃のために生産性を阻害したりするといった問題が生じる。
【0006】
そのため、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とした離型フィルムは、用途によっては十分に使用に耐える特性を有しておらず、改良を求められている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の離型フィルムの基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0013】
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
【0015】
また添加剤をフィルム中に加える場合、単層フィルムに加えたり、多層フィルムの一部の層のみに加えたりすることもできる。例えば、フィルムを3層構成とし、内層には粒子を加えず、一方もしくは両方の外層に粒子を加えることで、易滑性と透明性を、より両立することができる。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0017】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径(d50)に関しては、
通常0.01μm〜3μm、好ましくは0.02μm〜2.5μm、さらに好ましくは0.03μm〜2μmの範囲である。平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。
【0018】
粒子含有量については、粒子を含有するポリエステル層に対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。なおフィルムの透明性、平滑性などを特に確保したい場合には、実質的に粒子を含有しない構成とすることもできる。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
【0019】
なお、本発明の基材フィルムであるポリエステルフィルムのヘーズは10%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。この範囲より大きいと、光学用途においては、外観上使用しがたくなる場合がある。
【0020】
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
【0021】
本発明のフィルムの塗布層は、製膜したフィルムに後から塗布層を設ける、いわゆるオフラインコーティングと、フィルムの製膜中に塗布層を設ける、いわゆるインラインコーティングのいずれでも設けることができる。ただしインラインコーティング、特に塗布後に延伸を行う塗布延伸法により設けられることが好ましい。
【0022】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。特に塗布延伸法としては、一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために、薄膜で均一なコーティングとなるために塗布層の特性が安定する。また、二軸延伸される前のポリエステルフィルム上を、まず塗布層を構成する樹脂層で被覆し、その後フィルムと塗布層を同時に延伸することで、基材フィルムと塗布層が強固に密着することになる。
【0023】
また、ポリエステルフィルムの二軸延伸は、テンタークリップによりフィルム端部を把持しつつ横方向に延伸することで、フィルムが長手/横手方向に拘束されており、熱固定において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。 塗布層を設けたポリエステルフィルムとして、塗布層の均一性、造膜性の向上および塗布層とフィルムの密着は好ましい特性を生む場合が多い。ただし、塗布層として用いられる樹脂に耐熱性が必要となるため、使用する樹脂の選定には十分な検討が必要である。
【0024】
塗布延伸法の場合、用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、安全上の理由から水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0025】
本発明のフィルムの塗布層は、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液を塗布し、乾燥して得られる。なお塗布液中には、その他の成分を含有していても構わない。
【0026】
ここでいう四級アンモニウム基含有ポリマーとは、分子内に四級化されたアンモニウム基を有する高分子化合物を指す。
【0027】
本発明では例えば、四級アンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
【0028】
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式1または下記式2で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。
【0030】
上記式中、R
1は水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、R
2は−O−または−NH−、R
3は炭素数が1〜6のアルキレン基または式1の構造を成立しうるその他の構造、R
1、R
2、R
3はそれぞれが、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、X
−は1価の陰イオンである。
【0032】
上記式中、R
1およびR
2はそれぞれ、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、X
−は1価の陰イオンである。
【0033】
式(1)で示される構成要素を持つ重合体は、得られる塗布層の透明性に優れ好ましい。ただし塗布延伸法においては、耐熱性に劣る場合があり、塗布延伸法に用いる場合、X
−はハロゲンではないことが好ましい。
【0034】
式(2)で示される構成要素や、その他の四級アンモニウム塩基が高分子骨格内にある化合物は、耐熱性に優れており、塗布延伸法においても帯電防止性が得られやすい。
【0035】
また、式1ないし式2で示される構成要素と、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとが共重合されているポリマーは、構造が柔軟となり、塗布延伸の際には、均一性に優れた塗布層が得られ好ましい。
【0036】
あるいは、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートポリマーを、塗布液中に含有して塗布することでも、同様に均一性に優れた塗布層を得ることができる。
【0037】
かかるポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとしては具体的には、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレグリコール単位の重合度は4〜14の範囲が好ましい。)、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート等を出発原料とする重合体が例示される。
【0038】
なお四級アンモニウム基含有ポリマーが、塗布液中の不揮発分全体に占める割合としては、下限は10重量%以上、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。含有量がこれより少ない場合、帯電防止性能が不十分となることがある。一方、上限は90重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。含有量がこれより多い場合、得られる塗膜の均一性や外観に劣ることがある。
【0039】
また本発明における多価アルデヒド化合物としては、例えばグリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、シクロヘキサンジアルデヒド、トリシクロデカンジアルデヒド、ノルボルナンジアルデヒド、スベルアルデヒド等が挙げられる。さらにこれらのアルデヒド基にグリコールやアミドを反応させたものも使用できる。特に、グリオキサールにエチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、グルコース、ガラクトース等の単糖類、あるいは環状アミドを反応させたものは好ましく使用できる。かかる反応物は常温において多価アルデヒドの反応性を抑制し、塗布、乾燥後に、エチレングリコール等のグリコール類や環状アミドが外れ、塗布層の中でアルデヒドの反応が開始するため、取扱いが容易になるとともに、一旦エチレングリコール等のグリコール類や環状アミドが外れた後は、その高い反応性のために遊離の反応残基が少なくなり、経時での性能安定や、安全衛生上の利点がある。
【0040】
本発明の第一塗布層を得るための塗布液は、ポリビニルアルコールを含有していることが好ましい。この様にして得られた塗布層を有する離型フィルムは、加熱した際に、基材フィルム中からのオリゴマー成分の析出がより抑制される傾向がある。
【0041】
本発明で用いるポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。
【0042】
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用いられる。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上で99.9モル%以下であるポリ酢酸ビニルけん化物が実用上用いられる。
【0043】
また塗布液には、熱硬化性の架橋成分を含有すると、第一塗布層の耐久性が向上して好ましい。かかる架橋成分としては、例えばアミノ樹脂系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系などが挙げられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。本発明において特に好ましい様態としては、アミノ樹脂系の架橋剤を例示することができる。アミノ樹脂系の架橋剤としては、例えばアルキロール化したメラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などがある。特に、アミノ基をメチロール化し、さらにそのメチロール基の一部をメチル化したものが、水溶性で取扱いがよく、反応性も高く、基材フィルムからのオリゴマーの析出が少ない離型フィルムが得られる。
【0044】
なおかかる架橋成分を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
【0045】
塗布層を設けるための塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、その他のバインダー、粒子、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0046】
また、塗布層の厚さは、最終的に、二軸延伸ポリエステルフィルム上の皮膜厚さとして、通常0.003μm〜1μmの範囲である。好ましくは0.005μm〜0.5μm、さらに好ましくは0.01μm〜0.2μmの範囲である。厚さがこれより薄い場合には、フィルムから析出するオリゴマー量が十分に少なくならないことがある。またこれより厚い場合には、第一塗布層の外観の悪化や、ブロッキングしやすくなるなどの問題が生じる。
【0047】
なお塗布層の厚みは、塗布フィルムをルテニウム化合物やオスミウム化合物等の重金属を用いて染色を行い、超薄切片法により塗布フィルムの断面を調整した後、透過型電子顕微鏡にて塗布フィルム断面の塗布層を複数個所観測し、その実測値を平均する事で確認することができる。
【0048】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター等のような技術が挙げられる。
【0049】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0050】
本発明では、上述のようにして得られたフィルムの塗布層と反対の面に、さらに離型層を設ける。フィルムの両面に上述の塗布層を設けて、一方の面に離型層を設けることもできる。
【0051】
離型層は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではないが、その中でも、硬化型シリコーン樹脂を含有するものによれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0052】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0053】
具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0054】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0055】
本発明における離型層の塗布量は、離型層形成後の乾燥被膜として、通常0.01〜1g/m
2の範囲である。離型層の塗布量は、塗料の重量濃度と塗布面積、塗料の使用量から計算できる。塗布量がこれより少ない場合、均一な離型性を得ることが難しくなり、これより多い場合、ブロッキングなどの問題が生じてくる。
【0056】
なお、離型層の厚みを前述のように透過型電子顕微鏡にて断面から確認し、比重で割ることで塗布量を求めることもできる。一般的に硬化性シリコーンの比重は0.9〜1.2程度が多い。厚み0.1μmの離型層の塗布量は、比重1の時0.1g/m
2である。
【0057】
本発明における必須の構成は、基材フィルム、基材フィルムの片面に設けられた第一塗布層、もう一方の面に設けられた離型層である。
【0058】
上記の必須の構成を有していれば、塗布層、離型層とも、フィルムの片面に設けられていても、両面に設けられていても、本発明の概念に当然含まれる。
【0059】
たとえば、(1)フィルムの両面に設けられた塗布層と、その一方の上に設けられた離型層の構成、(2)フィルムの両面に設けられた塗布層と、さらにその上にそれぞれ設けられた離型層の構成(3)フィルムの片面に設けられた塗布層と、その上に設けられた離型層、さらにもう一方の面に設けられた離型層の構成などである。したがって、本発明においては、離型フィルムとして、少なくとも一方の面は、最表面は離型層となっている。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0061】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0062】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0063】
(3)塗布層厚さ
包埋樹脂でフィルムを固定し断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して試料を調整した。得られた試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)で観察し、塗布層の厚みを測定した。フィルムの計15箇所を測定し、数値の大きい方から3点と、小さい方から3点を除いた9点の平均を塗布層厚みとする。
【0064】
(4)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを十分調湿後、印可電圧100Vで1分後の測定面の表面固有抵抗値を測定した。
【0065】
(5)埃付着性評価(アッシュテスト)
23℃,50%RHの測定雰囲気でフィルムを十分調湿後、離型層の逆の面を綿布で10往復こする。これを、細かく砕いた煙草の灰の上に静かに近づけ、その時の灰の付着状況を以下の基準で評価した。
○:フィルムを灰に接触させても付着しない。
△:フィルムを灰に接触させると少し付着する。
×:フィルムを灰に近づけただけで多量に付着する。
【0066】
(6)工程内汚れ評価
ロール状に巻かれた離型フィルムを15m/分の走行速度で繰り出してオーブン中に導き、140℃で1分間加熱した後、離型層と逆の面が接するように金属ロール上を走行させた。金属ロールはロール径が100mmで、離型フィルムのロールへの抱き角は120度、この時のフィルム張力は50N/mとした。(抱き角:ロールに対するフィルムの入りと出のなす角度)
離型フィルムを1000m走行させた後の金属ロール上の汚れを目視で判定した。
○:ロール汚れなし
△:ロールに薄く汚れが付着
×:ロールに多量に汚れが付着
【0067】
実施例および比較例で使用したポリエステルは、以下である。
(ポリエステル1):
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル1の極限粘度は0.63であった。
【0068】
(ポリエステル2):
ポリエステル1の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径(d50)が1.6μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル1の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル2を得た。得られたポリエステル2は、極限粘度0.65であった。
【0069】
また、第一塗布層を設けるための塗布液に含有する組成物としては以下を用いた。
(E1):
対イオンがメチルスルホネートである、2−(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー。
【0070】
(E2):
対イオンがメチルスルホネートである、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー。
【0071】
(E3):
下記式1−1の構成単位と、下記式1−2の構成単位とを重量比率で95/5の重量比率で共重合した、数平均分子量20000の高分子化合物
【0072】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
(A1):
グリオキサールに無水グルコースを反応させた多価アルデヒド化合物。
(B1):
数平均分子量が20000の、ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー
(B2):
けん化度=88モル%、重合度500のポリビニルアルコール
(C1):
イミノ基/メチロール基/メトキシ基が1.5/2/2.5のモル比である、ヘキサメトキシメチロール化メラミン。
(F1):
表面アルミナコートシリカゾル、BET法による平均粒径15nm。
【0075】
比較例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で90/10でブレンドしたものをA層、ポリエステル1のみのものをB層の原料として、二台のベント式二軸押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、A層を二分配して再外層(表層)、B層を中間層とする二種三層(A層/B層/A層)の層構成で共押出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、厚み構成比がA層/B層/A層=3/32/3となる未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、フィルム厚みが38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムの特性を下記表2に示す。得られたフィルムにさらに、以下の離型層塗料1を、乾燥後の塗布量が0.1g/m
2になるように、リバースグラビアコート方式により塗布した後、120℃、30秒間乾燥、熱処理し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0076】
(離型層塗料1):
硬化型シリコーン樹脂
(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 100部
硬化剤(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0077】
実施例1〜9、比較例2〜4:
比較例1と同様の工程において得られた一軸配向フィルムの片面に、下記表1に示すとおりの塗布液を塗布した(なお、表1中の重量比は、塗布液中における各成分の不揮発分の重量比を表す)。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布液の乾燥、熱処理を行いつつ、比較例1と同様の工程によって、フィルム厚みが38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、表1に示す厚さの第一塗布層を設けた積層ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。なお表2中の表面固有抵抗値は、得られた第一塗布層面に対して測定を行った数値である。さらに、比較例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムの第一塗布層とは逆の面に離型層塗料1を塗布、乾燥、熱処理して、ポリエステルフィルムの片面に第一塗布層、もう一方の面に離型層を有する離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】