特許第6191392号(P6191392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6191392移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191392
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20170828BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20170828BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20170828BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H02K41/03 A
   H01L21/30 515G
   H01L21/68 K
   H02K9/19 A
   H02K5/20
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-222686(P2013-222686)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-87257(P2014-87257A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2016年10月3日
(31)【優先権主張番号】61/718,482
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】新井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森本 樹
(72)【発明者】
【氏名】ファーランド ミシェル
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−243801(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0069449(US,A1)
【文献】 特開2001−037201(JP,A)
【文献】 特開2004−336863(JP,A)
【文献】 米国特許第06452292(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/00− 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルユニットを有するベース部材と、磁石ユニットを有する移動体と、前記磁石ユニットと該磁石ユニットに対応する前記コイルユニットとの相互作用により前記移動体を前記ベース部材上で少なくとも所定の2次元平面内の一軸方向に駆動する電磁アクチュエータと、を含む移動体装置であって、
前記ベース部材は、
前記コイルユニットが有する入力用コネクタに接続可能な出力用コネクタを前記複数のコイルユニットに対応して複数有し、前記入力用及び出力用コネクタを介して前記複数のコイルユニットに電力を分配する電力分配部材と、
前記電力分配部材に重ねて配置され、前記コイルユニットが有する第1ジョイントに接続可能な第2ジョイントを前記複数のコイルユニットに対応して複数有し、前記第1及び第2ジョイントを介して前記複数のコイルユニットに冷媒を分配する冷媒分配部材と、を備え、
前記複数のコイルユニットは、前記電力分配部材、又は前記冷媒分配部材の一面に沿って規則的に配置される移動体装置。
【請求項2】
前記電力分配部材、及び前記冷媒分配部材は、前記2次元平面に平行な板状に形成され、互いに平行に配置される請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記電磁アクチュエータは、前記コイルユニットが前記2次元平面内の互いに直交する第1軸及び第2軸に沿って2次元配置され、前記移動体を前記第1及び第2軸に沿って駆動可能な平面モータである請求項1又は2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記複数のコイルユニットが所定の位置に規則的に配置されることによって、前記入力用コネクタと前記出力用コネクタとが接続されるとともに、前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとが接続される請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとが接続された状態で、前記冷媒分配部材から前記コイルユニットに冷媒を供給することと、該コイルユニットから前記冷媒分配部材へ前記冷媒を戻すことと、が可能である請求項1〜4のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記入力用コネクタと前記出力用コネクタとが着脱可能であり、前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとが着脱可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記入力用コネクタと前記出力用コネクタとが接続され、且つ前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとが接続された状態で、前記電力分配部材、又は前記冷媒分配部材の前記一面と前記コイルユニットとの間に隙間が形成され、
前記入力用コネクタ、前記出力用コネクタ、前記第1ジョイント、及び前記第2ジョイントの少なくともひとつが前記隙間に配置される請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記複数のコイルユニットは、前記電力分配部材の一面に沿って配置され、
前記冷媒分配部材は、前記電力分配部材の他面に対向して配置され、
前記電力分配部材には、前記冷媒分配部材に設けられた前記第2ジョイントの通過を許容する開口部が前記複数の第2ジョイントに対応して複数形成される請求項1〜7のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記冷媒分配部材は、該冷媒分配部材の外部から供給された前記冷媒を前記複数のコイルユニットに対応して分岐させる分岐流路、及び前記分岐流路から前記複数のコイルユニットそれぞれに前記冷媒を供給する複数の供給流路を有し、
前記分岐流路、及び前記複数の供給流路は、一体的に形成される請求項1〜8のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記冷媒分配部材の前記分岐流路、及び前記複数の供給流路は、所定の板状部材を機械加工することにより一体的に形成される請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記冷媒分配部材は、前記第1ジョイントと前記第2ジョイントとが接続された状態で前記コイルユニットが有する第3ジョイントに接続可能な第4ジョイントを前記複数のコイルユニットに対応して複数有し、前記第3及び第4ジョイントを介して前記ベース部材における前記移動体に対する対向面の温度調整に用いられる冷媒を前記複数のコイルユニットに供給する請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記ベース部材は、
前記電力分配部材、及び前記冷媒分配部材が一体的に載置される本体部を更に備え、
前記電力分配部材に電力を供給する電力供給装置、及び前記冷媒分配部材に冷媒を供給する冷媒供給装置が前記本体部材の下方に配置され、
前記本体部には、前記電力供給装置と前記電力分配部材とを接続する第1接続部材、及び前記冷媒供給装置と前記冷媒分配部材とを接続する第2接続部材の通過を許容する開口部が形成される請求項1〜11のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項13】
前記ベース部材は、前記移動体を前記2次元平面に平行な方向に駆動する際の反力によって、前記移動体に対して前記2次元平面に沿って前記移動体とは反対の方向に相対移動可能に設けられる請求項1〜12のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項14】
前記ベース部材は、錘を有する請求項13に記載の移動体装置。
【請求項15】
所定の物体が前記移動体に保持される請求項1〜14のいずれか一項に記載の移動体装置と、
前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、ベース部材上で電磁アクチュエータにより駆動される移動体を含む移動体装置、該移動体装置を含む露光装置、及び該露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、露光対象物体であるウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)を保持する基板ステージを、該基板ステージが有する可動子と、所定のベース部材が有する固定子とを含む平面モータを用いて2次元駆動する基板ステージ装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ベース部材がコイルユニットを有し、基板ステージが磁石ユニットを有するムービングマグネットタイプの平面モータにおいて、ベース部材では、複数のコイルユニットが水平面に沿って2次元配置される。このため、複数のコイルユニットそれぞれに電力の供給を行うためのケーブル、及びコイル冷却用の冷媒を循環させるための配管をベース部材内に配置する必要があり、ベース部材の構造が複雑になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,452,292号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、複数のコイルユニットを有するベース部材と、磁石ユニットを有する移動体と、前記磁石ユニットと該磁石ユニットに対応する前記コイルユニットとの相互作用により前記移動体を前記ベース部材上で少なくとも所定の2次元平面内の一軸方向に駆動する電磁アクチュエータと、を含む移動体装置であって、前記ベース部材は、前記コイルユニットが有する入力用コネクタに接続可能な出力用コネクタを前記複数のコイルユニットに対応して複数有し、前記入力用及び出力用コネクタを介して前記複数のコイルユニットに電力を分配する電力分配部材と、前記電力分配部材に重ねて配置され、前記コイルユニットが有する第1ジョイントに接続可能な第2ジョイントを前記複数のコイルユニットに対応して複数有し、前記第1及び第2ジョイントを介して前記複数のコイルユニットに冷媒を分配する冷媒分配部材と、を備え、前記複数のコイルユニットは、前記電力分配部材、又は前記冷媒分配部材の一面に沿って規則的に配置される移動体装置である。
【0007】
これによれば、複数のコイルユニットは、電力分配部材、又は冷媒分配部材の一面に沿って規則的に配置され、電力分配部材は、上記規則的に配置された複数のコイルユニットそれぞれの第1コネクタに対応して複数の第2コネクタを有している。従って、コイルユニットと電力分配部材との接続構造が簡単になる。また、冷媒分配部材は、上記規則的に配置された複数のコイルユニットそれぞれの第1ジョイントに対応して複数の第2ジョイントを有している。従って、コイルユニットと冷媒分配部材との接続構造が簡単になる。これにより、移動体装置は、ベース部材の構造が簡単になる。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、所定の物体が前記移動体に保持される本発明の移動体装置と、前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置である。
【0009】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の露光装置が有するウエハステージ装置の斜視図である。
図3図2のウエハステージ装置が有する定盤の分解斜視図である。
図4】定盤が有するコイルユニットを下方から見た斜視図である。
図5】定盤の一部を拡大して示す斜視図である。
図6】コイルユニット冷却システムを示す概念図である。
図7】コイルユニットに対する電力供給システムを示す概念図である。
図8】露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について、図1図8を用いて説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る露光装置10の構成が概略的に示されている。露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系16bが設けられており、以下においては、投影光学系16bの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0013】
露光装置10は、照明系12、レチクルステージ14、投影ユニット16、ウエハステージ装置20、及びこれらの制御系を備えている。
【0014】
照明系12は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系12は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILとしては、例えばArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0015】
レチクルステージ14は、パターン面(図1における−Z側の面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRを、例えば真空吸着により保持している。レチクルステージ14は、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系13(図1では不図示、図8参照)によって、走査方向(Y軸方向)に所定のストロークで駆動可能、且つX軸、及びθz方向に微小駆動可能となっている。レチクルステージ14のXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、例えばレーザ干渉計システム(あるいは2次元エンコーダシステム)を含むレチクルステージ位置計測系15(図1では不図示、図8参照)を用いて、主制御装置90(図8参照)によって求められる。
【0016】
投影ユニット16は、レチクルステージ14の下方(−Z側)に配置されている。投影ユニット16は、鏡筒16aと、鏡筒16a内に保持された投影光学系16bと、を含む。投影光学系16bとしては、例えば光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系16bは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。
【0017】
このため、照明系12からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系16bの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系16bを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系16bの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージ14とウエハステージ24との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRが走査方向に相対移動するとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWが走査方向に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では、照明系12、及び投影光学系16bによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0018】
ウエハステージ装置20は、定盤30、及びウエハステージ24を含む。
【0019】
定盤30は、平面視(+Z方向から見て)でY軸方向を長手方向とする矩形の板状部材(図2参照)であって、上面がXY平面(水平面)にほぼ平行となるように複数の支持装置28により下方から非接触支持されている。複数の支持装置28は、図3に示されるように、定盤30の4隅部近傍を支持可能なように、例えば4つ設けられている。支持装置28は、例えば米国特許出願公開第2009/0316133号明細書に開示される防振装置とほぼ同様に構成され、定盤30及び床100(図1参照)相互間での振動の伝達を抑制する。
【0020】
定盤30は、図2に示されるように、本体部32、マニホールドプレート34、マザーボード36、錘38、及び複数のコイルユニット50を有している。
【0021】
本体部32は、図3に示されるように、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形板状の部分である底面部33aと、該底面部33aのX軸方向の両端部それぞれから上方に突き出して形成された部分である一対の側壁部33bと、を有するXZ断面U字状の部材から成る。本体部32の下方には、図1に示されるように、用力供給ユニット18が床100上に設置されている。用力供給ユニット18には、ウエハステージ装置20で用いられる用力(例えば電力、電気信号、冷媒、加圧気体など)が露光装置10の外部から供給される。
【0022】
図3に戻り、マニホールドプレート34は、コイルユニット50を冷却するための液体の冷媒(例えば水、フッ素系不活性液体、HFC(Hydro−Fluoro−Carbon)など)を用力供給ユニット18(図3では不図示。図1参照)から複数のコイルユニット50それぞれに分配するのに用いられる。マニホールドプレート34は、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形板状の部材から成り、本体部32の一対の側壁部33b間に挿入され、底面部33aの上面上に載置されている。
【0023】
マニホールドプレート34の下面中央部には、用力供給ユニット18(図3では不図示。図1参照)からマニホールドプレート34へ冷媒を供給するための配管、及びマニホールドプレート34から用力供給ユニット18へ冷媒を戻すための配管を含む配管ユニット35が、マニホールドプレート34の下面から下方に突き出して固定されている。配管ユニット35は、YZ平面に平行な板状に形成されている。これに対し、本体部32の底面部33aの中央部には、配管ユニット35を通過させるための開口部32aが形成されている。開口部32aは、Y軸方向に延びる長穴(スリット)状に形成され、配管ユニット35は、開口部32aを通過して用力供給ユニット18に接続されている。
【0024】
マザーボード36は、コイルユニット50で用いられる電力、及び電気信号を用力供給ユニット18(図3では不図示。図1参照)から複数のコイルユニット50それぞれに分配するのに用いられる。マザーボード36は、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形板状の部材から成り、本体部32の一対の側壁部33b間に挿入され、マニホールドプレート34の上面上に重ねて載置されている。マザーボード36のX軸、及びY軸方向の寸法(幅、及び長さ)は、マニホールドプレート34とほぼ同じに設定されている。また、マザーボード36のZ軸方向の寸法(厚み)は、マニホールドプレート34よりも小さく(薄く)設定されている。
【0025】
マザーボード36は、いわゆるリジッドタイプのプリント回路板であり、絶縁基板上に導電パターンが形成されている。なお、マザーボード36は、複数のプリント回路板が繋ぎ合わされることによって全体的に一枚の板状に形成されても良いし、マザーボード36の大きさによっては、一枚のプリント回路板により構成されても良い。
【0026】
マザーボード36の下面中央部には、用力供給ユニット18(図3では不図示。図1参照)からマザーボード36へ電力を供給するためのケーブル、及びマザーボード36と用力供給ユニット18との間で送受信される電気信号用のケーブルなどを含むケーブルユニット37がマザーボード36の下面から下方に突き出して固定されている。ケーブルユニット37は、YZ平面に平行な板状に形成されている。これに対し、マニホールドプレート34の中央部であって、上記配管ユニット35に抵触しない位置には、ケーブルユニット37を通過させるための開口部34aが形成されている。また、本体部32の底面部33aの中央部にも、ケーブルユニット37を通過させるための開口部(不図示)が形成されている。ケーブルユニット37は、マニホールドプレート34に形成された開口部34a、及び本体部32に形成された開口部(不図示)を通過して用力供給ユニット18に接続されている。なお、配管ユニット35、及びケーブルユニット37を通過させるために本体部32に形成される開口部は共通であっても良い。
【0027】
複数のコイルユニット50は、図2に示されるように、平面視ほぼ正方形の箱形の部材から成る。複数のコイルユニット50には、ウエハステージ24をX軸(及びZ軸)方向に駆動するのに用いられるXコイルユニットと、ウエハステージ24をY軸(及びZ軸)方向に駆動するのに用いられるYコイルユニットと、が含まれる(ただし、特に説明する場合を除き、本明細書及び図面では、XコイルユニットとYコイルユニットとを特に区別せずに説明する)。複数のコイルユニット50は、XコイルユニットとYコイルユニットとが、マザーボード36の上面に沿ってX軸、及びY軸方向に互いに隣接するように(マトリクス状に)規則的に(マザーボード36上に複数のコイルユニット50を敷き詰めたように)配置されている。本実施形態において、コイルユニット50は、X軸方向に配列された、例えば9台のコイルユニット50から成るコイルユニット列が、Y軸方向に、例えば16列配置されることにより、合計で、例えば144台(9×16)設けられている。なお、コイルユニット50の数は、特に限定されず、例えば定盤30の広さなどに応じて適宜変更が可能である。
【0028】
以下、コイルユニット50の構造について説明する。図4には、複数のコイルユニット50のうちのひとつが示されている。コイルユニット50は、図4に示されるように、回路基板52、下部冷却マニホールド54、複数のコイル56、上部冷却モジュール58、表面保護プレート60、複数のスイッチング用FET(Field Effect Transistor)64、コネクタ66、冷媒流入口68a、70a、及び冷媒流出口68b、70bを有している。
【0029】
回路基板52は、平面視ほぼ正方形の、いわゆるリジッドタイプのプリント回路板である。下部冷却マニホールド54は、平面視ほぼ正方形の厚みの薄い箱形の部材から成り、回路基板52の上面上に載置されている。複数のコイル56は、下部冷却マニホールド54上に載置されている。複数のコイル56それぞれは、回路基板52に電気的に接続されている。複数のコイル56それぞれに対する電力供給は、スイッチング用FET64を介して主制御装置により個別にオン・オフ制御される。上部冷却モジュール58は、平面視ほぼ正方形の板状部材から成り、複数のコイル56上に載置されている。前述した下部冷却マニホールド54は、主に複数のコイル56の冷却に用いられるのに対し、上部冷却モジュール58は、主に定盤30(図4では不図示。図1参照)の上面の温度を制御するのに用いられる。
【0030】
表面保護プレート60は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)により形成された平面視ほぼ正方形の板状部材から成り、上部冷却モジュール58上に載置されている。表面保護プレート60は、コイルユニット50の最上部に配置されており、ウエハステージ24(図4では不図示。図1参照)は、複数のコイルユニット50それぞれの表面保護プレート60により形成されるXY平面に平行なガイド面に沿って定盤30(図4では不図示。図1参照)上を移動する。
【0031】
複数のスイッチング用FET64は、冷却用ブロック62を介して回路基板52の下面に取り付けられている。冷却用ブロック62は、例えば金属材料により形成された板状の部材から成り、回路基板52の下面に固定されている。冷却用ブロック62は、下面中央の領域がX軸方向の両端部近傍の領域よりも厚くなるように、X軸方向両端部それぞれに段差部62aが形成されている。複数、本実施形態では、例えば6つのスイッチング用FET64は、例えば3つが+X側の段差部62a上に載置され、例えば他の3つが−X側の段差部62a上に載置されている。複数のスイッチング用FET64それぞれは、冷却用ブロック62に密着しており、リードを介して回路基板52に実装されている。
【0032】
コネクタ66は、回路基板52の下面における冷却用ブロック62の−Y側の領域に取り付けられており、回路基板52の下面から下方に突き出している。コネクタ66は、複数の金属端子を有しており、該金属端子は、回路基板52に形成された不図示の回路パターンを介して複数のコイル56、あるいはコイルユニット50に内蔵された不図示の温度センサ、流量センサ、ホールセンサなど(以下、まとめてセンサ類と称する)に電気的に接続されている。
【0033】
複数(本実施形態では、例えば3つ)の冷媒流入口68a、及び複数(本実施形態では、例えば2つ)の冷媒流出口68bそれぞれは、冷却用ブロック62の中央部にY軸方向に所定間隔で形成されている。下部冷却マニホールド54には、冷媒流入口68a、冷却用ブロック62内に形成された不図示の配管、及び回路基板52に形成された不図示の開口部を介してマニホールドプレート34(図4では不図示。図1参照)から冷媒が供給される。また、下部冷却マニホールド54からは、回路基板52に形成された不図示の開口部、冷却用ブロック62内に形成された不図示の配管、及び冷媒流出口68bを介して冷媒がマニホールドプレート34に戻される。
【0034】
ここで、冷媒をマニホールドプレート34に戻すために冷却用ブロック62の内部に形成された配管(不図示)は、その流路が冷却用ブロック62の内部の全体(特に段差部62aの内部全体)に渡るように屈曲、及び分岐して形成されている。これにより、冷媒が冷却用ブロック62内を通過することにより、スイッチング用FET64が冷却されるようになっている。
【0035】
複数(本実施形態では、例えば2つ)の冷媒流入口70a、及び複数(本実施形態では、例えば2つ)の冷媒流出口70bは、それぞれ一方が下部冷却マニホールド54の−Y側の端部近傍に形成され、それぞれ他方が下部冷却マニホールド54の+Y側の端部近傍に形成されている(図4では他方の冷媒流入口70aは、冷却用ブロック62に対して紙面奥側に隠れている)。上部冷却モジュール58は、不図示の流路を介して冷媒流入口70a、及び冷媒流出口70bそれぞれに相互に接続されており、上部冷却モジュール58には、冷媒流入口70a、及び不図示の配管部材を介してマニホールドプレート34から冷媒が供給され、該冷媒は、不図示の配管部材、及び冷媒流出口70bを介して上部冷却モジュール58からマニホールドプレート34に戻される。
【0036】
以上説明したコイルユニット50の構成は、前述したようにXコイルユニット、及びYコイルユニットに共通であるが、複数のコイルユニット50がマザーボード36の上面に沿って配置される際、Xコイルユニットは、Yコイルユニットに対してZ軸回りに90°回転された状態で配置される。コイルユニット50それぞれとマニホールドプレート34との接続構造、及びコイルユニット50それぞれとマザーボード36との接続構造については、後述する。
【0037】
図3に戻り、錘38は、平面視で矩形の枠状に形成されており、複数のコイルユニット50により形成されるガイド面の外周縁部に沿って配置されている。錘38は、本体部32の一対の側壁部33b上に一体的に載置されている。錘38は、例えば金属材料により形成されており、定盤30の重量を増加させるために設けられている。
【0038】
図2に戻り、ウエハステージ24は、箱形(直方体状)の部材から成り、上面に載置されたウエハWを、例えば真空吸着により保持する。ウエハステージ24の内部であって、底面(定盤30の上面に対向する面)側の領域には、図1に示されるように、複数の磁石ユニット26が収容されている。ウエハステージ24は、複数の磁石ユニット26と、該磁石ユニット26に対応するコイルユニット50との間にローレンツ力(駆動力)を発生させるムービングマグネットタイプの平面モータを含むウエハステージ駆動系27(図1では不図示。図8参照)により、定盤30に対して駆動される。
【0039】
平面モータとしては、例えば米国特許第6,452,292号明細書などに開示されるような、上記ローレンツ力によりウエハステージ24を定盤30に対して6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向)に適宜駆動することが可能な、いわゆる6DOF(degrees of freedom)駆動タイプの平面モータが用いられている。これにより、主制御装置90(図1では不図示。図8参照)は、ウエハステージ駆動系27を用いて、ウエハステージ24を定盤30上でX軸方向、及び/又はY軸方向に(XY平面に沿って)所定の長ストロークで駆動すること、ウエハステージ24を定盤30上に所定のクリアランスを介して浮上(磁気浮上)させること、並びに、XY平面に沿って移動するウエハステージ24をピッチング、ヨーイング、及びローリング方向に適宜微少駆動することができる。
【0040】
ウエハステージ24のXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、例えば2次元(あるいは3次元)エンコーダシステム、又は光干渉計システム(あるいはエンコーダシステムと光干渉計システムとを組み合わせたシステム)を含むウエハステージ位置計測系25(図1では不図示。図8参照)を用いて、主制御装置90(図8参照)によって求められる。なお、ウエハステージ位置計測系25の構成は、所望の分解能でウエハステージ24の6DOF方向の位置情報を求めることができれば、その構成は特に限定されない。
【0041】
ここで、平面モータを用いて定盤30上でウエハステージ24に対して水平面に平行な(X軸、及び/又はY軸方向に)駆動力を作用させる場合、定盤30には、水平面内でウエハステージ24とは反対の方向に上記駆動力の反力が作用する。そして、定盤30が複数の支持装置28により非接触支持されていることから、定盤30は、運動量保存則により水平面内でウエハステージ24とは反対の方向に移動することにより上記反力を吸収し、これにより上記反力に起因する振動の発生などが抑制される。なお、定盤30の重量は、ウエハステージ24の重量に比べて大きいので、定盤30の移動量は、ウエハステージ24に比べて微少量である。また、ウエハステージ装置20は、上記反力により移動した定盤30を所定位置に復帰させるための、いわゆるトリムモータ(不図示)を複数有している。
【0042】
次に、マニホールドプレート34と複数のコイルユニット50それぞれとの接続構造、及びマザーボード36と複数のコイルユニット50それぞれとの接続構造を含み、定盤30が有する複数のコイルユニット50を冷却するためのコイルユニット冷却システム、及び定盤30が有する複数のコイルユニット50に電力を供給するためのコイルユニット給電システムについて説明する。
【0043】
図6に概念図で示されるように、コイルユニット冷却システムにおいて、マニホールドプレート34には、複数の領域(ゾーン)が設定されている。以下、上記複数のゾーンを便宜上第1〜第Nゾーン(Nは2以上の自然数)と称して説明する。複数(本実施形態では、例えば144個)のコイルユニット50は、上記第1〜第Nゾーンそれぞれに対応して、ほぼ均等に(ひとつのゾーンに含まれるコイルユニット50の数が概ね等しくなるように)分配されている。
【0044】
マニホールドプレート34内には、用力供給ユニット18(図6では不図示。図1参照)から供給される冷媒(コイル冷却用の冷媒A、及び定盤表面温度調整用の冷媒B。以下、適宜まとめて単に冷媒と言う)を、第1〜第Nゾーンに分配するための第1分岐流路、該第1分岐流路から冷媒を第1〜第Nゾーンそれぞれに(冷媒Aに関してはオリフィス39を介して)導く(案内する)ための複数の第1案内流路、該第1案内流路により案内された冷媒を第1〜第Nゾーン内で複数のコイルユニット50それぞれに分配するための複数の第2分岐流路、及び該第2分岐流路から冷媒をコイルユニット50に導く(案内する)ための複数の第2案内流路が設けられている。上記第1及び第2分岐流路、並びに第1及び第2案内流路により形成される流路は、冷媒A及びBに対応して2系統用意されている。
【0045】
上記冷媒が流れる流路(第1及び第2分岐流路、並びに第1及び第2案内流路)を含み、マニホールドプレート34は、例えば金属材料により形成された一枚の板状部材を切削加工などの機械加工を用いて加工することにより一体的に形成される。なお、マニホールドプレート34は、上記機械加工された板状部材を複数枚繋ぎ合わせて全体的に一枚の板状部材となるように構成されても良い。
【0046】
本実施形態のコイルユニット冷却システムにおいて、冷媒(冷媒A及びB)は、コイルユニット50と用力供給ユニット18(図6では不図示。図1参照)との間(あるいは用力供給ユニット18を介して露光装置10(図6では不図示。図1参照)の外部に設置された冷却装置との間)で循環して使用される。このため、マニホールドプレート34内には、複数のコイルユニット50から冷媒を用力供給ユニット18に案内する(戻す)ための流路(リターン用流路と称する)も併せて形成されている。リターン用流路は、冷媒の流れる向きが反対である点、及びオリフィス39を有していない点を除き、上述した冷媒を複数のコイルユニット50それぞれに分配して供給するための流路と概念的に同じであるので、その説明は省略する。
【0047】
コイル冷却用の冷媒Aは、マニホールドプレート34(図6では不図示。図1参照)からコイルユニット50が有する下部冷却マニホールド54(図6では不図示。図4参照)に供給される。以下、冷媒Aは、コイルユニット50内に設けられた不図示の配管を通過することで複数のコイル56(図6では不図示。図4参照)と熱交換を行い、該複数のコイル56の温度を低下させる。コイル56との間で熱交換を行った冷媒Aは、再び下部冷却マニホールド54に戻される。また、下部冷却マニホールド54に戻された冷媒Aは、冷却用ブロック62(図6では不図示。図4参照)内において、該冷却用ブロック62に形成された不図示の配管に案内される。これにより、冷媒Aは、冷却用ブロック62を介して複数のスイッチング用FET64(図6では不図示。図4参照)と熱交換を行い、該複数のスイッチング用FET64の温度を低下させる。
【0048】
このように、本実施形態のコイルユニット冷却システムでは、コイル56(図6では不図示。図4参照)の冷却に用いられた冷媒Aが、スイッチング用FET64(図6では不図示。図4参照)の冷却に再利用される。以下、冷媒Aは、冷却用ブロック62(図6では不図示。図4参照)からマニホールドプレート34(図6では不図示。図1参照)に戻され、さらに配管ユニット35(図6では不図示。図3参照)を介して用力供給ユニット18(図6では不図示。図1参照)に戻される。
【0049】
これに対し、冷媒Bは、マニホールドプレート34(図6では不図示。図1参照)からコイルユニット50内に設けられた不図示の配管を介してコイルユニット50が有する上部冷却モジュール58(図6では不図示。図4参照)に供給される。冷媒Bの流量は、定盤30上面の温度がほぼ一定に保たれるように不図示の温度センサの出力に基づいて制御される。以下、冷媒Bは、上部冷却モジュール58からマニホールドプレート34に戻され、さらに配管ユニット35(図6では不図示。図3参照)を介して用力供給ユニット18(図6では不図示。図1参照)に戻される。このように、冷媒Aと冷媒Bとは、用力供給ユニット18とコイルユニット50との間で、別系統で循環して用いられる。
【0050】
次に、コイルユニット給電システムについて説明する。図7に概念図で示されるように、コイルユニット給電システムにおいて、複数(本実施形態では、例えば144個)のコイルユニット50は、複数のコイルユニットグループを形成している。以下、上記複数のコイルユニットグループを便宜上第1〜第nグループ(nは2以上の自然数)と称して説明する。ひとつのコイルユニットグループを構成する複数のコイルユニット50は、共通のアンプ(不図示)により制御される。したがって、アンプは、合計でn台設けられている。ひとつのコイルユニットグループ内において、複数のコイルユニット50は、電気的に並列に接続されている。
【0051】
なお、上記コイルユニット冷却システムにおける、ひとつのゾーンに対応する複数のコイルユニット50と、コイルユニット給電システムにおける、ひとつのコイルユニットグループを構成する複数のコイルユニット50とは、一致していなくても良い(一致していても良い)。また、第1〜第nコイルユニットグループの数は、適宜変更可能であり、上記コイルユニット冷却システムにおけるゾーンの数(N)と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0052】
マザーボード36には、用力供給ユニット18(図7では不図示。図1参照)からひとつのアンプを介して供給される電力を、該アンプに対応するコイルユニットグループを構成する複数のコイルユニット50に対して分配することができるように回路パターンが形成されている。また、マザーボード36には、主制御装置90(図7では不図示。図8参照)から供給される電気信号(例えばスイッチング用ネットワーク制御信号、あるいはセンサ(温度センサ、流量センサ、ホールセンサなど)用ネットワーク制御信号)を、複数のコイルユニットグループに対して分配する回路パターン、及び上記電気信号をコイルユニットグループ内で該コイルユニットグループを構成する複数のコイルユニット50に対して分配する回路パターンが形成されている。
【0053】
次に、複数のコイルユニット50の取り付け構造について図4及び図5を用いて説明する。図5には、互いに隣接する4つのコイルユニット50が取り除かれた状態の定盤30が示されている。
【0054】
コイルユニット50が取り付けられていない場合、定盤30の最上層には、マザーボード36が配置され、マザーボード36の下層にマニホールドプレート34(図5では不図示。図3参照)が配置される。マニホールドプレート34、及びマザーボード36それぞれには、本体部32の底面部33a(図5では不図示。図3参照)の上面から上方に突き出して形成された複数の突起40(図3では不図示)を通過させるための開口部が該突起40の位置に対応して複数形成されており、底面部33a上にマニホールドプレート34、及びマザーボード36が載置された状態で、該突起40の上端部がマザーボード36の上面から上方に突き出している。
【0055】
互いに隣接する突起40の中心間の間隔は、コイルユニット50の一辺の長さとほぼ同じに設定されており、コイルユニット50は、四隅部近傍がそれぞれ異なる突起40上に載置されることにより、マザーボード36上に配置される。突起40には、コイルユニット50を本体部32(図5では不図示。図3参照)に固定するためのボルト穴が複数形成されている。
【0056】
また、コイルユニット50が突起40に取り付けられた状態で、コイルユニット50の回路基板52(図5では不図示。図4参照)の下面とマザーボード36の上面との間には、隙間が形成され、該隙間に回路基板52の下面に取り付けられた冷却用ブロック62、複数のスイッチング用FET64、及びコネクタ66(それぞれ図5では不図示。図4参照)が、マザーボード36の上面から離間した状態で配置される。
【0057】
さらに、マザーボード36には、マニホールドプレート34(図5では不図示。図3参照)の上面から上方に突き出して形成された複数の冷媒供給管42a、44a、及び複数の冷媒回収管42b、44b(それぞれ図3では不図示)を通過させるための開口部が上記複数の冷媒供給管42a、44a、及び複数の冷媒回収管42b、44bの位置に対応して複数形成されており、マニホールドプレート34上にマザーボード36が載置された状態で、該複数の冷媒供給管42a、44a、及び複数の冷媒回収管42b、44bの上端部がマザーボード36の上面から上方に突き出している。
【0058】
冷媒供給管42aは、コイルユニット50の冷媒流入口68a(図5では不図示。図4参照)に接続され、冷媒回収管42bは、コイルユニット50の冷媒流出口68b(図5では不図示。図4参照)に接続される。コイルユニット50には、上記冷媒供給管42a及び冷媒流入口68aを介してマニホールドプレート34(図5では不図示。図3参照)から冷媒Aが供給され、該冷媒Aは、上記冷媒流出口68b及び冷媒回収管42bを介してマニホールドプレート34に戻される。また、冷媒供給管44aは、コイルユニット50の冷媒流入口70a(図5では不図示。図4参照)に接続され、冷媒回収管44bは、コイルユニット50の冷媒流出口70b(図5では不図示。図4参照)に接続される。コイルユニット50には、上記冷媒供給管44a及び冷媒流入口70aを介してマニホールドプレート34から冷媒Bが供給され、該冷媒Bは、上記冷媒流出口70b及び冷媒回収管44bを介してマニホールドプレート34に戻される。なお、冷媒供給管42a、44aと対応する冷媒流入口68a、70aとの接続構造、冷媒回収管42b、44bと対応する冷媒流出口68b、70bとの接続構造それぞれは、冷媒の漏れを防止でき、且つ着脱可能な構造であれば特に限定されず、公知の流体ジョイントを用いることができる。
【0059】
また、マザーボード36の上面には、複数のコネクタ46が固定されている。コネクタ46は、マザーボード36に形成された回路パターンに電気的に接続された金属端子を複数有しており、コネクタ46にコイルユニット50のコネクタ66(図5では不図示。図4参照)が差し込まれることにより、コイルユニット50が用力供給ユニット18(図5では不図示。図1参照。あるいは用力供給ユニット18を介して不図示の主制御装置90(図5では不図示。図8参照))に電気的に接続される。なお、複数のコイルユニット50は、上述したようにXコイルユニットがYコイルユニットに対してZ軸回りに90°回転した状態で配置されることから、ひとつのコイルユニット50に対応する複数の冷媒供給管42a、44a、冷媒回収管42b、44b、及びコネクタ46それぞれは、接続対象のコイルユニット50に対応してZ軸回りに90°回転した状態で配置されている。
【0060】
ここで、マザーボード36の上面において、複数のコネクタ46は、複数のコイルユニット50をマザーボード36上に規則的に配置することによって、コイルユニット50側のコネクタ66(図5では不図示。図4参照)と、マザーボード36側のコネクタ46とが接続可能となる位置に配置されている。換言すると、コイルユニット50側のコネクタ66を対応するマザーボード36側のコネクタ46に接続すると、自動的にマザーボード36上に複数のコイルユニット50が規則的に配置される。
【0061】
また、マニホールドプレート34(図5では不図示。図3参照)の上面において、複数の冷媒供給管42a、44a、及び冷媒回収管42b、44bは、複数のコイルユニット50をマザーボード36上に規則的に配置すること、すなわち、コイルユニット50側のコネクタ66(図5では不図示。図4参照)を対応するマザーボード36側のコネクタ46に接続することによって、コイルユニット50側の冷媒流入口68a、70a、及び冷媒流入口68a、70a(それぞれ図5では不図示。図4参照)と、マニホールドプレート34側の対応する冷媒供給管42a、44a、及び冷媒回収管42b、44bとが接続可能となる位置に配置されている。このように、本実施形態では、マザーボード36上に複数のコイルユニット50を規則的に配置すること、コイルユニット50側のコネクタ66を対応するマザーボード36側のコネクタ46に接続すること、及びコイルユニット50側の冷媒流入口68a、70a、及び冷媒流入口68a、70aと、マニホールドプレート34側の対応する冷媒供給管42a、44a、及び冷媒回収管42b、44bとを接続すること、のいずれかひとつの動作を行うと、他の2つの動作も自動的に行われる。
【0062】
図8には、露光装置10の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置90の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置90は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置10の構成各部を統括制御する。
【0063】
上記のように構成された露光装置10(図1参照)では、まず、レチクルR及びウエハWが、それぞれレチクルステージ14及びウエハステージ24上にロードされ、レチクルアライメント及びベースライン計測、並びにウエハアライメント(例えばEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等)などの所定の準備作業が行われる。その後、主制御装置90の管理の下、ウエハWの第1番目のショット領域に対する露光のための加速開始位置にウエハステージ24が駆動されるとともに、レチクルRの位置が加速開始位置となるように、レチクルステージ14が駆動される。そして、レチクルステージ14と、ウエハステージ24とがY軸方向に沿って同期駆動されることで、ウエハW上の第1番目のショット領域に対する露光が行われる。以後、レチクル上のすべてのショット領域に対する露光が行われることで、ウエハWの露光が完了する。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、複数のコイルユニット50は、マザーボード36の上面に沿ってマトリクス状に配置される。そして、マザーボード36は、上記マトリクス状に配置された複数のコイルユニット50それぞれが有するコネクタ66に接続可能な複数のコネクタ46を、複数のコイルユニット50それぞれに対応する位置に予め有している。従って、容易に複数のコイルユニット50と用力供給ユニット18とを電気的に接続することができる。また、マニホールドプレート34は、上記マトリクス状に配置された複数のコイルユニット50それぞれが有する冷媒流入口68a、70a、及び冷媒流出口68b、70bに接続可能な冷媒供給管42a、44a、及び冷媒回収管42b、44bを、複数のコイルユニット50それぞれに対応する位置に予め有している。従って、容易に複数のコイルユニット50と用力供給ユニット18と間における冷媒の流路を形成することができる。
【0065】
また、マザーボード36は、全体的に一枚の板状に形成されているので、仮に複数のコイルユニット50それぞれと用力供給ユニット18とを個別にケーブルを用いて接続する場合に比べ、定盤30の厚みが増大することを防止できるとともに、メンテナンスも容易となる。また、コイルユニット50は、マザーボード36に対してコネクタ接続されるので、着脱が容易であり、例えばコイルユニット50を交換する際などの交換時間を短縮できる。同様に、マニホールドプレート34も全体的に一枚の板状に形成されているので、仮に複数のコイルユニット50それぞれと用力供給ユニット18とを個別に配管を用いて接続する場合に比べ、定盤30の厚みが増大することを防止できるとともに、メンテナンスも容易となる。
【0066】
また、それぞれ板状に形成されたマザーボード36とマニホールドプレート34とが、上下方向に重ねて配置されているので、定盤30の構成を簡単にすることができるとともに、定盤30の大型化(フットプリントの増大)を防止することができる。
【0067】
なお、上記実施形態の露光装置10の構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、コイルユニット50のコイル56を冷却した後の冷媒Aによりスイッチング用FET64が冷却されたが、コイル56よりも先にスイッチング用FET64を冷却しても良い。また、スイッチング用FET64を冷却する冷媒としては、定盤30の表面温度を制御するための冷媒Bを用いても良い。
【0068】
また、上記実施形態において、冷媒による冷却対象物は、コイルユニット50に一体的に取り付けられたスイッチング用FET64であったが、これに限られず、例えばコイルユニット50で用いられる他の電気部品、あるいはマザーボード側に実装された他の電気部品(種類は限定されない)であっても良い。また、上記実施形態において、スイッチング用FET64は、コイルユニット50に実装されたが、これに限られず、マザーボード36に実装されても良い。この場合、マザーボード36上に冷却用ブロックを設けると良い。
【0069】
また、上記実施形態のマニホールドプレート34において、冷媒が通過する流路は、機械加工により形成されたが、これに限られず、例えばマニホールドプレート34内にチューブ、分岐管などを収容しても良い。また、マニホールドプレート34は、金属材料を機械加工して形成されたものに限られず、例えば射出成形などにより形成されても良い。また、上記実施形態では、マニホールドプレート34が全体的に板状に形成されたが、マニホールドプレート34の形状は、特に限定されず、適宜変更が可能である。
【0070】
また、上記実施形態において、ウエハステージ駆動系27には、コイルユニット50が2次元配置され、ウエハステージ24を水平面に沿って駆動する平面モータが用いられたが、これに限られず、例えばXY平面内の1軸方向にのみに推力を発生するリニアモータであっても良い。
【0071】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、照明光ILの波長は、100nm以上の光に限られず、波長100nm未満の光を用いても良く、例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置にも上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0072】
さらに、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0073】
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro−mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0074】
また、上記実施形態では、定盤30上にひとつのウエハステージ24が配置されたウエハステージ装置20について説明したが、定盤30上に配置される移動体の数、種類は、適宜変更が可能であり、例えば米国特許出願公開第2010/0066992号明細書に開示されるようなウエハステージを2つ備えたウエハステージ装置、あるいは米国特許出願公開第2009/0268178号明細書に開示されるようなウエハステージと、計測ステージとを備えるウエハステージ装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0075】
さらに、例えば米国特許第8,004,650号明細書に開示されるような、投影光学系と露光対象物体(例えばウエハ)との間に液体(例えば純水)を満たした状態で露光動作を行う、いわゆる液浸露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0076】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0077】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0078】
また、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0079】
さらに、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0080】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態に係る露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、移動体をベース部材上で駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に所定のパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【符号の説明】
【0082】
10…露光装置、18…用力供給ユニット、20…ウエハステージ装置、24…ウエハステージ、26…磁石ユニット、30…定盤、32…本体部、34…マニホールドプレート、36…マザーボード、50…コイルユニット、56…コイル、64…スイッチング用FET、W…ウエハ。
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