(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂(A)、請求項1〜4から選ばれる一項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G1)、フッ素系樹脂(C)及び難燃剤(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂(A)がカーボネート結合、エステル結合、及びアミド結合から選ばれる少なくとも一つの結合を有する熱可塑性樹脂である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味する。また「(共)重合体」とは、「重合体」及び「共重合体」の少なくとも一方を意味する。
【0057】
以下、本発明を詳細に説明するが、材料、製造条件等に関する記載の全ては、特記しない限り、第1の発明群及び第2の発明群に共通する説明である。
【0058】
<ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体>
第1の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G1)(以下、「グラフト共重合体(G1)」または「共重合体(G1)」と略す場合がある。)は、アルキル基又は芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル(b
1)と芳香族ビニル単量体(b
2)とを含むビニル単量体混合物をポリオルガノシロキサン系ゴムにグラフト重合した共重合体である。
【0059】
第2の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G2)(以下、「グラフト共重合体(G2)」または「共重合体(G2)」と略す場合がある。)は、ポリオルガノシロキサン系ゴムに1種以上のビニル単量体をグラフト重合して得られる共重合体である。
【0060】
第2の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G2)の粉体とは、該グラフト共重合体(G2)の粉体である。この粉体は、グラフト共重合体のラテックスから、噴霧乾燥法及び凝固法等の方法により回収される粉体である。
【0061】
〔ポリオルガノシロキサン系ゴム〕
ポリオルガノシロキサン系ゴムとしては、ポリオルガノシロキサンゴム、又はポリオルガノシロキサン及びポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する複合ゴムであることが好ましい。
【0062】
[ポリオルガノシロキサンゴム]
ポリオルガノシロキサンは、オルガノシロキサン単位を構成単位として含有する重合体である。ポリオルガノシロキサンゴムは、オルガノシロキサン、または、必要に応じて使用される成分を含むオルガノシロキサン混合物を重合することにより得ることができる。必要に応じて使用される成分としては、シロキサン系架橋剤、シロキサン系グラフト交叉剤、及び末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマー等が挙げられる。
【0063】
オルガノシロキサンとしては、鎖状オルガノシロキサン、環状オルガノシロキサンのいずれも用いることができる。環状オルガノシロキサンは、重合安定性が高く、重合速度が大きいので好ましい。環状オルガノシロキサンとしては、3〜7員環のものが好ましく、例えば、以下のものが挙げられる。ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン系ゴムの粒子径分布を制御しやすいことから、60質量%以上がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0064】
シロキサン系架橋剤としては、シロキシ基を有するものが好ましい。シロキサン系架橋剤を用いることによって、架橋構造を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。シロキサン系架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の3官能性又は4官能性の架橋剤を挙げることができる。中でも、4官能性の架橋剤が好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。シロキサン系架橋剤の含有率は、オルガノシロキサン混合物100質量%中、0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0065】
シロキサン系グラフト交叉剤は、シロキシ基を有すると共にビニル単量体と共重合可能な官能基を有するものである。シロキサン系グラフト交叉剤を用いることによって、ビニル単量体と共重合可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。このようなグラフト交叉剤を用いることにより、ポリオルガノシロキサンに対して、後述する複合ゴム用アルキル(メタ)アクリレート成分、又はビニル単量体をラジカル重合によってグラフトさせることができる。
【0066】
シロキサン系グラフト交叉剤としては、式(1)で表されるシロキサンを挙げることができる。
【0067】
【化1】
式(1)中、R
1は、メチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基を示す。R
2は、アルコキシル基における有機基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基を挙げることができる。nは、0、1又は2を示す。Rは、式(2)〜(5)で表されるいずれかの基を示す。
【0068】
【化2】
これらの式中、R
3及びR
4は、それぞれ、水素又はメチル基を示し、pは、1〜6の整数を示す。
【0069】
式(2)で表される官能基としては、メタクリロイルオキシアルキル基を挙げることができる。この基を有するシロキサンとしては、例えば以下のものが挙げられる。β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等。
【0070】
式(3)で表される官能基としては、例えばビニルフェニル基等を挙げることができる。この基を有するシロキサンとしては、例えば、ビニルフェニルエチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0071】
式(4)で表される官能基を有するシロキサンとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0072】
式(5)で表される官能基としては、メルカプトアルキル基を挙げることができる。この基を有するシロキサンとして、例えば以下のものが挙げられる。γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルエトキシジメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等。
【0073】
これらシロキサン系グラフト交叉剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。シロキサン系グラフト交叉剤の含有率は、オルガノシロキサン混合物100質量%中、0.05〜20質量%であることが好ましい。
【0074】
末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーとは、オルガノシロキサンオリゴマーの末端にアルキル基等を有し、ポリオルガノシロキサンの重合を停止させるシロキサンオリゴマーをいう。
【0075】
末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、メトキシトリメチルシランを挙げることができる。
【0076】
[ポリオルガノシロキサンゴムの製造方法]
ポリオルガノシロキサンゴムの製造方法としては特に制限はなく、例えば、以下の製造方法を採用できる。
【0077】
まず、オルガノシロキサンまたは前記オルガノシロキサン混合物を、乳化剤と水によって乳化させてエマルションを調製した後、酸触媒を用いて高温下で重合させる。次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンゴムのラテックスを得る。尚、以下の製造方法の説明においては、ゴムの原料として「オルガノシロキサン混合物」を用いた場合について説明するが、「オルガノシロキサン」を用いた場合についても同様の製造プロセスを適用できる。
【0078】
この製造方法において、エマルションの調製方法としては、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーを用いる方法、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して高速攪拌により混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、ホモジナイザーを使用する方法は、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの粒子径の分布が狭くなるので好ましい方法である。
【0079】
重合の際の酸触媒の混合方法としては、(1)オルガノシロキサン混合物、乳化剤及び水とともに一括して添加し、混合する方法、(2)オルガノシロキサン混合物のエマルション中に酸触媒水溶液を一括して添加する方法、(3)オルガノシロキサン混合物のエマルションを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下して混合する方法等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御しやすいことから、オルガノシロキサン混合物のエマルションを高温で保持し、次いで酸触媒水溶液を一括して添加する方法が好ましい。
【0080】
重合温度は、50℃以上が好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。また、重合時間は、オルガノシロキサン混合物のエマルション中に酸触媒水溶液を一括して添加して重合する場合には、通常2時間以上、好ましくは5時間以上である。
【0081】
更に、30℃以下の温度においては、シラノール間の架橋反応が進行することから、ポリオルガノシロキサンの架橋密度を上げるために、50℃以上の高温で重合させた後、生成したラテックスを、30℃以下の温度で5時間から100時間程度保持することもできる。
【0082】
オルガノシロキサン混合物の重合反応は、ラテックスを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液等のアルカリ性物質でpH6〜8に中和して、終了させることができる。
【0083】
上記製造方法で使用される乳化剤としてはオルガノシロキサン混合物を乳化できれば特に制限されないが、アニオン系乳化剤又はノニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
【0084】
ノニオン系乳化剤としては、例えば以下のものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等。
【0085】
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0086】
乳化剤の使用量は、オルガノシロキサン混合物100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。乳化剤の使用量を変更することによって、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの粒子径を所望の値に調整することが可能である。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、オルガノシロキサンエマルション混合物のエマルションの乳化安定性が十分となる。乳化剤の使用量が10質量部以下であれば、乳化剤に起因するグラフト共重合体を含む粉体の着色を抑制でき、また該グラフト共重合体と樹脂を含む樹脂組成物の耐熱分解性の低下を抑制できる。
【0087】
オルガノシロキサン混合物の重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類及び硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸を使用すると、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの粒子径分布を狭くすることができ、さらに、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス中の乳化剤成分に起因する成形品の外観不良を低減させることができる。
【0088】
第1の発明群用のポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの質量平均粒子径は、150nm〜1000nmであることが好ましい。この質量平均粒子径を150nm〜1000nmとすることによって、このポリオルガノシロキサンゴムから得られるグラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径を200〜2000nmに調整することが可能である。
【0089】
第2の発明群用のポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの質量平均粒子径は、250nm〜1000nmであることが好ましい。この質量平均粒子径を250nm〜1000nmとすることによって、このポリオルガノシロキサンゴムから得られるグラフト共重合体の吸光度法で測定される粒子径を300〜2000nmに調整することが可能である。
【0090】
ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの「質量平均粒子径Dw/数平均粒子径Dn」は、1.0〜1.7であることが好ましい。Dw/Dnを1.0〜1.7とすることによって、顔料発色性の高いグラフト共重合体を得ることができる。
【0091】
Dw及びDnは、以下の方法で測定した値を採用することができる。
【0092】
ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスを脱イオン水で濃度約3%に希釈したものを試料として、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布計を用いて粒子径を測定する。
【0093】
測定はMATEC社が推奨する下記の標準条件で行なうことができる。
カートリッジ:専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジ(商品名;C−202)、
キャリア液:専用キャリア液(商品名;2XGR500)、
キャリア液の液性:ほぼ中性、
キャリア液の流速:1.4ml/分、
キャリア液の圧力:約4,000psi(2,600kPa)、
測定温度:35℃、
試料使用量:0.1ml。
【0094】
また、標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンで、粒子径が40〜800nmの範囲内の12種類の粒子が用いられる。
【0095】
上記方法により得られるポリオルガノシロキサンゴムのラテックスには、機械的安定性を向上させる目的で、必要に応じて、乳化剤を添加してもよい。乳化剤としては、上記例示したものと同様のアニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が好ましい。
【0096】
[複合ゴム]
本発明において、ポリオルガノシロキサン系ゴムとして、ポリオルガノシロキサン及びポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する複合ゴム(以下、「複合ゴム」と略す。)を用いることができる。複合ゴムは、前記ポリオルガノシロキサンと、単独重合体のガラス転移温度Tgが0℃以下のポリアルキル(メタ)アクリレートを含有するゴムである。複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンゴムの存在下にアルキル(メタ)アクリレートを重合して得られるゴムであることが好ましい。
【0097】
複合ゴムを構成するポリアルキル(メタ)アクリレート(PA)は、アルキル(メタ)アクリレート成分(以下、「複合ゴム用(メタ)アクリレート成分」と略す。)を重合して得ることができる。複合ゴム用(メタ)アクリレート成分は、以下のFOXの式で表されるガラス転移温度Tgが、0℃以下、−100℃以上であるアルキル(メタ)アクリレートと架橋性単量体を含有することが好ましい。
【0098】
【数1】
但し、各記号は以下を示す。
Tg:共重合体のガラス転移温度(℃)、
wi:単量体iの質量分率、
Tgi:単量体iを重合して得られる単独重合体のガラス転移温度(℃)。
なお、Tgiの値としては、POLYMER HANDBOOK Volume 1(WILEY-INTERSCIENCE)に記載の値が用いられる。
【0099】
複合ゴム用(メタ)アクリレート成分としては、例えば以下のものが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0100】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(PA)のガラス転移温度を0℃以下、−100℃以上にするには、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下、−100℃以上のアルキル(メタ)アクリレートを50質量%以上用いることが好ましく、80質量%以上用いることがより好ましい。但し、この質量%は、重合に供する複合ゴム用(メタ)アクリレート成分の全量100質量%を基準とする値である。
【0101】
単独重合体のガラス転移温度が0℃以下のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び成形品の光沢を考慮すると、特にn−ブチルアクリレートが好ましい。
【0102】
架橋性単量体としては、例えば以下の多官能性単量体が挙げられる。メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステル、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、トリメリト酸トリアリル等。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
第1の発明群用の複合ゴムの製造において、ポリアルキル(メタ)アクリレート成分100質量%中における架橋性単量体の使用量は、0.1〜20.0質量%であることが好ましく、0.3〜10.0質量%であることがより好ましい。架橋性単量体の使用量を0.1〜20.0質量%とすることで、衝撃強度が優れた成形体が得られる。
【0104】
第2の発明群用の複合ゴムの製造において、ポリアルキル(メタ)アクリレート成分100質量%中における架橋性単量体の使用量は、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.3〜1.8質量%であることがより好ましい。架橋性単量体の使用有量を0.1〜2.0質量%とすることで、衝撃強度が優れた成形体が得られる。
【0105】
複合ゴム100質量%中におけるポリオルガノシロキサンの含有量は、5〜65質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサンの含有量が5質量%以上あれば、低温における衝撃強度及び耐薬品性の優れた樹脂組成物を得ることができる。また65質量%以下であれば、顔料着色性の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0106】
[複合ゴムの製造方法]
複合ゴムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法により製造することができるが、乳化重合法を用いることが好ましい。中でも、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの存在下に、複合ゴム用(メタ)アクリレート成分を乳化重合して、複合ゴムのラテックスを得る方法が特に好ましい。
【0107】
ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスと複合ゴム用(メタ)アクリレート成分の混合物を調製する方法としては、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス中に、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび架橋性単量体を添加する方法が挙げられる。これによって複合ゴム用(メタ)アクリレート成分をポリオルガノシロキサンゴムの粒子中に含浸させた後、公知のラジカル重合開始剤を作用させて重合する。この製造方法において、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス中に、複合ゴム用(メタ)アクリレート成分を添加する方法としては、その全量を一括して添加する方法、一定速度で滴下して添加する方法が挙げられる。
【0108】
複合ゴムのラテックスを製造する際には、ラテックスを安定化させ、複合ゴムの粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。乳化剤は、特に制限されず、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
【0109】
アニオン系乳化剤としては、例えば以下のものが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸カルシウム等。
【0110】
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルが挙げられる。これらの乳化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0111】
複合ゴム用(メタ)アクリレート成分の重合に用いるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物、及び過酸化物と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、樹脂組成物(特に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物)のアウトガスを抑制する観点から、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤が好ましい。
【0112】
アゾ系開始剤としては、例えば以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等の油溶性アゾ系開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシメチル)−2−メチルプロピオナミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス−(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0113】
過酸化物としては、例えば以下のものが挙げられる。過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等。これらの過酸化物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0114】
これら過酸化物の中では、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のアウトガス抑制の観点から、有機過酸化物を用いることが好ましい。これらの中でも、耐薬品性の観点から、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドがより好ましい。
【0115】
過酸化物を還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤とする場合、上記の過酸化物と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、L−アスコルビン酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトール等の還元剤と、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を組み合わせて用いることが好ましい。
【0116】
これらの還元剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なお、還元剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを用いる場合には、樹脂組成物のアウトガスを抑制する観点から出来る限り使用量を抑えることが好ましい。
【0117】
ラジカル重合開始剤の使用量としては、アゾ系開始剤を用いる場合は複合ゴム100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましい。
【0118】
レドックス系開始剤の場合、過酸化物の使用量としては、複合ゴム100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましい。還元剤の使用量は、複合ゴム100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましい。
【0119】
第2の発明群用の複合ゴムの製造において、特に、還元剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを用いる場合は、グラフト共重合体の粉体のアルカリ土類金属含有量を0〜150ppmとする観点から、0.01〜0.2質量部とすることが特に好ましい。
【0120】
〔グラフト共重合体(G1)〕
第1の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G1)は、ポリオルガノシロキサン系ゴムに対してアルキル基又は芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル(b
1)と芳香族ビニル単量体(b
2)とを含むビニル単量体混合物をグラフトしたグラフト共重合体である。上記ポリオルガノシロキサン系ゴムの存在下でビニル単量体混合物をグラフト重合することによって、グラフト共重合体(G1)を得ることができる。以下、アルキル基又は芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル(b
1)を、単に「(メタ)アクリル酸エステル(b
1)」という場合がある。
【0121】
グラフト成分が(メタ)アクリル酸エステル(b
1)に由来する成分を含むことから、グラフト共重合体(G1)は、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂(A)中での相溶性、分散性に優れる。また、グラフト共重合体(G1)が芳香族ビニル単量体(b
2)に由来する成分を含むことから、グラフト共重合体(G1)と熱可塑性樹脂(A)からなる樹脂組成物は難燃性に優れる。
【0122】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル(b
1)のうち、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば以下のものが挙げられる。メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート等のアルキルアクリレート等。これらの単量体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0123】
また、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、フェニル基等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを意味し、例えば以下のものが挙げられる。フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、モノブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロロフェニル(メタ)アクリレート、ジクロロフェニル(メタ)アクリレート、トリクロロフェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等。これらの単量体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0124】
本発明の芳香族ビニル単量体(b
2)としては、例えば以下のものが挙げられる。スチレン、α―メチルスチレン、p―メチルスチレン、p一t―ブチルスチレン、p―メトキシスチレン、o―メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
本発明の前記ビニル単量体混合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、共重合可能なその他の単量体(b
3)を含んでもよい。その他の単量体(b
3)としては、例えば以下のものが挙げられる。(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;安息香酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類等。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
ビニル単量体混合物100質量%中における芳香族ビニル単量体(b
2)の使用量は2〜95質量%が好ましく、2〜71質量%がより好ましく、10〜65質量%がさらに好ましい。ビニル単量体混合物100質量%中における、(メタ)アクリル酸エステル(b
1)の使用量は、5〜98%が好ましく、29〜98質量%がより好ましく、35〜90質量%がさらに好ましい。ビニル単量体混合物100質量%中における、その他の単量体(b
3)の使用量は、5質量%以下が好ましい。
【0127】
芳香族ビニル単量体(b
2)の使用量が2質量%以上の場合、成形体の難燃性が良好となり、95質量%以下の場合、熱可塑性樹脂(A)中でのグラフト共重合体(G1)の相溶性、分散性が良好となる。相溶性、分散性が悪いと、成形体中でグラフト共重合体(G1)が異物として観察されたり、成形体の難燃性の悪化を引き起こす場合があるため、好ましくない。
【0128】
ビニル単量体混合物中の(メタ)アクリル酸エステル(b
1)の使用量が5質量%以上の場合、熱可塑性樹脂(A)中でのグラフト共重合体(G1)の相溶性、分散性が良好となり、98質量%以下の場合、成形体の難燃性が良好となる。
【0129】
グラフト共重合体(G1)100質量%中における芳香族ビニル単量体(b
2)に由来する成分の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。
【0130】
グラフト共重合体(G1)100質量%中における「ポリオルガノシロキサン」の含有量は、0.1〜69質量%である。この量は、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることが更に好ましく、25〜40質量%であることが特に好ましい。ポリオルガノシロキサンの含有量が0.1質量%以上の場合、成形体の低温における衝撃強度ならびに難燃性が良好となり、また69質量%以下の場合、成形体の発色性が良好となる。
【0131】
グラフト共重合体(G1)100質量%中の「ポリオルガノシロキサン系ゴム」の含有量は、10〜99質量%が好ましい。ポリオルガノシロキサン系ゴムの含有量が10質量%以上であれば、低温における成形体の衝撃強度が十分となり、また99質量%以下であれば、樹脂組成物の表面外観が良好となり好ましい。更には、樹脂組成物の耐薬品性をより良好にする観点から、60〜97質量%がより好ましく、75〜95質量%がさらに好ましく、80〜95質量%が特に好ましい。
【0132】
グラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径は、200〜2000nmである。この粒子径は、250〜1000nmであることが好ましく、さらには300〜800nmであることがより好ましく、350〜750nmであることがさらに好ましく、400〜700nmであることが特に好ましく、480〜700nmであることが最も好ましい。グラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径が200nm以上であると、グラフト共重合体(G1)を熱可塑性樹脂に配合して得られる成形体は、耐衝撃性(特に低温耐衝撃性)及び難燃性が良好となる。またグラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径が2000nm以下であると、グラフト共重合体(G1)を熱可塑性樹脂に配合して得られる成形体は、発色性と耐衝撃性(特に低温耐衝撃性)が良好となるとともに表面外観が良好となる。
【0133】
グラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径は、以下の方法で測定した値を採用することができる。グラフト共重合体のラテックスを蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製 SALD−7100)を用い、体積平均におけるメジアン径を求める。ラテックスの試料濃度は、装置に付属の散乱光強度モニターにおいて適正範囲となるよう適宜調整する。標準粒子径物質としては、粒子径既知の単分散ポリスチレンであって、粒子径が20〜800nmの範囲内の12種類の粒子が用いられる。
【0134】
〔グラフト共重合体(G2)〕
第2の発明群のグラフト共重合体(G2)はポリオルガノシロキサン系ゴムに1種以上のビニル単量体をグラフト重合して得られる共重合体である。グラフト共重合体(G2)のグラフト部は、前記FOXの式で表されるガラス転移温度Tgが0℃を超えることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
【0135】
「ビニル単量体」としては、例えば以下のものが挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0136】
グラフト部のガラス転移温度Tgが0℃を超えるようにするには、単独重合体のTgが0℃を超えるビニル単量体を50質量%以上用いることが好ましく、80質量%以上用いることがより好ましい。但し、この質量%は、グラフト重合に供するビニル単量体の全量100質量%を基準とする値である。
【0137】
単独重合体のTgが0℃を超えるビニル単量体としては、例えば以下のものが挙げられる。メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート等のアルキルアクリレート。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0138】
この場合のビニル単量体として、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等の単独重合体のTgが0℃以下のアルキルアクリレートを共に用いても良い。単独重合体のTgが0℃以下のアルキルアクリレートの含有量は、ビニル単量体100質量%のうち0.05〜20質量%であることが好ましい。
【0139】
グラフト共重合体(G2)100質量%中のポリオルガノシロキサン系ゴムの含有量は、10〜99質量%が好ましい。ポリオルガノシロキサン系ゴムの含有量が10質量%以上であれば、成形体の低温における衝撃強度が良好となる。また99質量%以下であれば、成形体の表面外観が良好となる。樹脂組成物の耐薬品性を向上する観点からポリオルガノシロキサン系ゴムの含有量は60〜97質量%がより好ましく、75〜95質量%が特に好ましい。
【0140】
グラフト共重合体(G2)においては、樹脂組成物の耐薬品性と耐熱分解性を向上する観点から、グラフト重合用のビニル単量体混合物が「架橋性単量体」を含有することが好ましい。
【0141】
架橋性単量体としては、例えば以下の多官能性単量体が挙げられる。アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリアリルトリメリテート等。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0142】
グラフト共重合体中における架橋性単量体に由来する成分の含有量としては、グラフト共重合体100質量%中、0.5〜2.0質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。この成分の含有量が0.5質量%以上であれば、成形体の耐薬品性と耐熱分解性が良好となり、2.0質量%以下であれば、成形体の衝撃強度が良好となる。
【0143】
グラフト重合用の単量体混合物における架橋性単量体の含有量としては、グラフト重合用の単量体混合物100質量%中においては、0.5〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。架橋性単量体の含有量が0.5質量%以上であれば、成形体の耐薬品性と耐熱分解性が良好となり、5質量%以下であれば、成形体の衝撃強度が良好となる。
【0144】
グラフト共重合体(G2)においては、樹脂組成物の耐薬品性を向上する観点から、グラフト部のFedors法にて算出したsp値が20.15〜21.00であることが好ましい。sp値が20.15以上であれば、成形体の耐薬品性が良好となり、21.00以下であれば、成形体の衝撃強度が良好となる。
【0145】
グラフト部のsp値は、POLYMER HANDBOOK Volume 1(WILEY-INTERSCIENCE)に記載の各ビニル単量体のFerors法で算出したsp値をもとに算出される。ビニル単量体混合物が3種のビニル単量体からなる場合、以下の式を用いて算出される。
【0146】
【数2】
但し、各記号は以下を示す。
Asp:ビニル単量体Aのsp値
Bsp:ビニル単量体Bのsp値
Csp:ビニル単量体Cのsp値
Amo:ビニル単量体Aのモル分率
Bmo:ビニル単量体Bのモル分率
Cmo:ビニル単量体Cのモル分率
Amo+Bmo+Cmo=1 。
【0147】
グラフト部のsp値は、用いるビニル単量体の組成によって調整することができる。例えば、メチルメタクリレート(sp値:20.15)にメタクリル酸(sp値:23.43)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(sp値:24.98)、フェニルメタクリレート(sp値:20.95)等を少量用いることで、グラフト部のsp値を20.15〜21.00に調整が可能である。
【0148】
さらに、グラフト共重合体(G2)においては、樹脂組成物の耐熱分解性を向上させる観点から、グラフト用のビニル単量体混合物が「芳香族ビニル単量体」を含有することが好ましい。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0149】
芳香族ビニル単量体の含有量としては、グラフト重合用の単量体混合物100質量%中、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル単量体の含有量が10質量%以上であれば、樹脂組成物の耐熱分解性が良好となり、90質量%以下であれば、成形体の耐衝撃性が良好となるため好ましい。
【0150】
グラフト共重合体(G2)の吸光度法で測定される粒子径は、300〜2000nmが好ましく、300〜800nmであることが好ましく350〜650nmであることがさらに好ましい。この粒子径は、ラテックスの吸光度から算出される粒子径である。その測定方法は後述する。粒子径が300nmより小さい場合、樹脂組成物の顔料着色性ならびに耐薬品性が低下するため好ましくない。また、粒子径が2000nmを超えると、樹脂組成物の外観が悪化するため好ましくない。
【0151】
[グラフト共重合体の製造方法]
グラフト部の重合の方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサン系ゴムのラテックス中にグラフト重合用のビニル単量体を添加し、1段又は多段で重合する方法が挙げられる。多段で重合する場合は、ポリオルガノシロキサンゴム系ゴムのラテックス中に、グラフト重合用のビニル単量体を分割して逐次添加し又は連続的に添加して、重合することが好ましい。このような重合方法は重合安定性が良好であり、且つ所望の粒子径及び粒子径分布を有するグラフト共重合体のラテックスを安定に得ることができる。
【0152】
グラフト部の重合の際には、必要に応じて乳化剤を追加することができる。乳化剤としては、複合ゴムを製造する際に用いた前述の乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
【0153】
グラフト部の重合に用いられる重合開始剤としては、複合ゴムを製造する際に用いた重合開始剤と同様のものが挙げられ、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤が好ましい。
【0154】
グラフト共重合体のラテックスから、グラフト共重合体の粉体を回収する場合には、噴霧乾燥法、凝固法のいずれかの方法を用いることができる。
【0155】
噴霧乾燥法は、グラフト共重合体のラテックスを乾燥機中に微小液滴状に噴霧し、これに乾燥用の加熱ガスを当てて乾燥する方法である。微小液滴を発生する方法としては、例えば、回転円盤型式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式が挙げられる。乾燥機の容量は、実験室で使用するような小規模な容量から、工業的に使用するような大規模な容量のいずれであってもよい。乾燥用の加熱ガスの温度は200℃以下が好ましく、120〜180℃がより好ましい。別々に製造された2種以上のグラフト共重合体のラテックスを、一緒に噴霧乾燥することもできる。更には、噴霧乾燥時のブロッキングを防止し、嵩比重等の粉末特性を向上させるために、グラフト共重合体のラテックス中に、シリカ等の任意成分を添加して噴霧乾燥することもできる。
【0156】
凝固法は、グラフト共重合体のラテックスを凝析して、グラフト共重合体を分離し、回収し、乾燥する方法である。先ず、凝固剤を溶解した熱水中にグラフト共重合体のラテックスを投入し、塩析し、凝固することによりグラフト共重合体を分離する。次いで、分離した湿潤状のグラフト共重合体を脱水等して、水分量が低下したグラフト共重合体を回収する。回収されたグラフト共重合体は圧搾脱水機や熱風乾燥機を用いて乾燥される。
【0157】
凝固剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの無機塩や、硫酸等の酸などが挙げられ、酢酸カルシウムが特に好ましい。これらの凝固剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合は水に不溶性の塩を形成しない組み合わせを選択することが必要である。例えば、酢酸カルシウムと、硫酸、もしくはそのナトリウム塩とを併用すると、水に不溶性のカルシウム塩を形成するので好ましくない。
【0158】
上記の凝固剤は、通常、水溶液として用いられる。凝固剤水溶液の濃度は、グラフト共重合体を安定的に凝固し、回収する観点から、0.1質量%以上、特に1質量%以上であることが好ましい。また、回収されたグラフト共重合体中に残存する凝固剤の量が多いと成形体の耐熱分解性が悪化するため、凝固剤水溶液の濃度は、20質量%以下、特に15質量%以下であることが好ましい。ラテックスに対する凝固剤水溶液の量は特に限定されないが、ラテックス100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下であることが好ましい。
【0159】
ラテックスを凝固剤水溶液に接触させる方法は特に限定されないが、通常、下記の方法が挙げられる。(1)凝固剤水溶液を攪拌しながら、そこにラテックスを連続的に添加して一定時間保持する方法、(2)凝固剤水溶液とラテックスとを、一定の比率で攪拌機付きの容器内に連続的に注入しながら接触させ、凝析された重合体と水とを含む混合物を容器から連続的に抜き出す方法。ラテックスを凝固剤水溶液に接触させるときの温度は特に限定されないが、30℃以上、100℃以下であることが好ましい。接触時間は特に限定されない。
【0160】
凝析したグラフト共重合体は、1〜100質量倍程度の水で洗浄され、ろ別した湿潤状のグラフト共重合体は流動乾燥機や圧搾脱水機等を用いて乾燥される。乾燥温度、乾燥時間は得られるグラフト共重合体のガラス転移温度によって適宜決めればよい。なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送り、熱可塑性樹脂と混合して成形体を得ることも可能である。
【0161】
本発明において、グラフト共重合体は、樹脂組成物とした際の耐熱分解性の観点から、凝固法を用いて回収することが好ましい。
【0162】
[衝撃強度、全光線透過率及び難燃性]
第1の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G1)は、下記の「作製条件1」で作製された試験片について、下記の「評価条件2」で測定される「試験片」のシャルピー衝撃強度[kJ/m
2]、全光線透過率[%]及び難燃性が、以下の性能条件(1)〜(3)を満たすことが好ましい。
(1)15≦「シャルピー衝撃強度」≦70
(2)60≦「シャルピー衝撃強度」+「全光線透過率」×1.36
(3)1/16インチ厚さにおけるUL94規格垂直燃焼試験による難燃性が「V−1」以上。
【0163】
<試験片の作製条件1>:
(1)粘度平均分子量22,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000F):100質量部、
(2)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G1):5.5質量部、
(3)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(三菱レイヨン(株)製メタブレンA−3800):0.5質量部、
(4)芳香族リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業(株)製PX−200):5.5質量部。
【0164】
上記の4種類の材料(1)〜(4)を配合した樹脂組成物を、バレル温度280℃に加熱した脱揮式押出機((株)池貝製PCM−30)に供給してスクリュー回転数150rpmの条件で混練してペレットを得る。このペレットを100t射出成形機(住友重機(株)製SE−100DU)に供給して、シリンダー温度280℃、金型温度90℃の条件で成形して以下の各試験片を得る。
(i)シャルピーノッチ付き衝撃強さ評価用「試験片1」(長さ80.0mm、幅10.0mm、厚み4mm、Vノッチ付き)。
(ii)全光線透過率評価用「試験片2」(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)。
(iii)厚み1/16インチの難燃性評価用「試験片3」。(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)
<評価条件2>:
〔シャルピー衝撃強度[kJ/m
2]〕
JIS K 7111‐1/1eAに準拠して温度−30℃にて、「試験片1」のシャルピー衝撃強度を測定する。
【0165】
〔全光線透過率[%]〕
JIS K 7375に準拠して日本電色工業(株)製HAZE Meter NDH4000を用いて、「試験片2」のD65光源における全光線透過率測定する。
【0166】
〔難燃性〕
UL94V試験に準拠した垂直燃焼試験法にて、5つの「試験片3」について総燃焼時間を測定する。
【0167】
これらの各試験片は、それぞれ以下の性能条件(11)、(12)及び(13)を満たすことがより好ましい。
(11)25≦「シャルピー衝撃強度」≦70
(12)60≦「シャルピー衝撃強度」+「全光線透過率」×1.36
(13)1/16インチ厚さにおけるUL94規格垂直燃焼試験による難燃性が「V−1」以上。
【0168】
これらの各試験片は、それぞれ以下の性能条件(21)、(22)及び(23)を満たすことが更に好ましい。
(21)25≦「シャルピー衝撃強度」≦40
(22)60≦「シャルピー衝撃強度」+「全光線透過率」×1.36≦100
(23)1/16インチ厚さにおけるUL94規格垂直燃焼試験による難燃性が「V−0」以上。
【0169】
前記条件(1)を満たすことで、得られる成形体は、実用上使用可能なレベルの低温耐衝撃強度を有し、かつ前記条件(2)を満たすことで、高い発色性と低温耐衝撃強度のバランスに優れる成形体を得ることが出来るといえる。さらに、前記条件(3)を満たすことで、得られる成形体は、実用上使用可能な難燃性能を有しているといえる。
【0170】
シャルピー衝撃強度の増加は、グラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径を大きくすること、グラフト成分に(メタ)アクリル酸エステル(b
1)に由来する成分を用いること等によって達成することができる。全光線透過率の増加は、グラフト共重合体(G1)のポリオルガノシロキサン含量を0.1〜69質量%とすること等によって達成することができる。難燃性「V−1」以上の性能は、グラフト共重合体(G1)の体積平均粒子径を大きくすること、グラフト成分に芳香族ビニル単量体(b
2)に由来する成分を用いること等によって達成することができる。
【0172】
第2の発明群のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G2)の粉体は、該グラフト共重合体(G2)の粉体である。この粉体は、グラフト共重合体(G2)以外の他の(共)重合体を含んでいても良い。他の(共)重合体とは、例えば、ビニル単量体をグラフト重合させた際に、ポリオルガノシロキサン系ゴムにグラフト結合せずに重合した(共)重合体である。
【0173】
第2の発明群の第1の態様の発明において、このグラフト共重合体(G2)の吸光度法で測定される粒子径は300〜2000nmであり、この粉体のアルカリ金属含有量が0〜20ppmであり、かつアルカリ土類金属含有量が0〜150ppmである。
【0174】
アルカリ金属量が20ppmを超えると、この粉体と樹脂から得られる樹脂組成物の耐熱分解性が低下するため好ましくない。アルカリ金属は、特に芳香族ポリカーボネート樹脂を触媒的に分解するため、含有量を20ppm以下に抑えることが必要であり、1〜15ppmが好ましい。アルカリ金属の中でも、特にカリウム及びナトリウムの合計の含有量を抑えることが必要である。アルカリ金属含有量の測定方法は後述する。
【0175】
前記粉体のアルカリ金属含有量を0〜20ppmとする方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。(1)グラフト重合の際に乳化剤、重合開始剤等としてアルカリ金属塩型のものを用いない方法、あるいはそれらの使用量を抑える方法、(2)噴霧回収あるいは凝固回収した粉体を水あるいは有機溶剤等で洗浄する方法、(3)これらの両者を組み合わせる方法。
【0176】
またグラフト共重合体(G2)の粉体のアルカリ土類金属の含有量は、0〜150ppmである。アルカリ土類金属の含有量が150ppmを超えると、この粉体と樹脂から得られる樹脂組成物の耐熱分解性が低下するため好ましくない。アルカリ土類金属は、アルカリ金属と比較して作用は弱いが、特に芳香族ポリカーボネート樹脂を触媒的に分解する。このため、含有量を150ppm以下に抑えることが必要であり、10〜140ppmが好ましい。アルカリ土類金属の中でも、特にカルシウム及びマグネシウムの合計の含有量を抑えることが必要である。アルカリ土類金属含有量の測定方法は後述する。
【0177】
前記粉体のアルカリ土類金属含有量を0〜150ppmとする方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。(1)グラフト重合の際に乳化剤、重合開始剤等として、もしくは凝固回収の際の凝析剤として、アルカリ土類金属塩型のものを用いない方法、あるいはそれらの使用量を抑える方法、(2)噴霧回収あるいは凝固回収した粉体を水あるいは有機溶剤等で洗浄する方法、(3)これらの両者を組み合わせる方法。
【0178】
特に、重合開始剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを還元剤とするレドックス系開始剤を用いる場合は、アルカリ土類金属塩型の凝析剤を用いて凝固回収を行うと、重合開始剤がグラフト共重合体を含む粉体中にアルカリ土類金属塩として残存する。このアルカリ土類金属塩は、この粉体と樹脂から得られる樹脂組成物の耐熱分解性を低下させるため、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを用いないか使用量を抑える方法が好ましい。
【0179】
さらに、グラフト共重合体(G2)の粉体の硫黄含有量は、0〜200ppmであることが好ましい。硫黄含有量は、粉体中に残存する硫酸塩類の量の指標となる。硫酸塩類とは、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸等の硫黄のオキソ酸とそれらの塩の総称である。硫酸塩類は特に芳香族ポリカーボネート樹脂を触媒的に分解するため、その含有量を硫黄含有量として200ppm以下に抑える必要があり、10〜190ppmが好ましい。硫黄含有量が200ppmを超えると、樹脂組成物の耐熱分解性が低下するため好ましくない。硫黄含有量の測定方法は後述する。
【0180】
前記粉体中の硫黄含有量を0〜200ppmとする方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。(1)グラフト重合の際に乳化剤、重合開始剤等として硫酸塩類を用いない方法、あるいはそれらの使用量を抑える方法、(2)噴霧回収あるいは凝固回収した粉体を水あるいは有機溶剤等で洗浄する方法、(3)これらの両者を組み合わせる方法。
【0181】
特に、重合開始剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを還元剤とするレドックス系開始剤を用いる場合は、グラフト共重合体粉体中に硫酸塩類として残存する。この硫酸塩類は、この粉体と樹脂から得られる樹脂組成物の耐熱分解性を低下させるため、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを用いないかその使用量を抑える方法が好ましい。
【0182】
第2の発明群の第2の態様の発明において、グラフト共重合体(G2)の粉体は、ポリオルガノシロキサン系ゴムに1種以上のビニル単量体をグラフト重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体であって、該1種以上のビニル単量体が「芳香族ビニル単量体」を含有する単量体混合物であり、該粉体のアルカリ金属含有量が0〜20ppmであり、かつアルカリ土類金属含有量が0〜150ppmである。グラフト重合用のビニル単量体として芳香族ビニル単量体を含有する単量体混合物が用いられていることから、耐熱分解性と耐衝撃性が優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0183】
前記粉体は、下記の「作製条件11」で使用される樹脂組成物について、下記の「評価条件12」で測定されるシルバー発生本数が0本であることが好ましい。
【0184】
<樹脂組成物及び試験片の作製条件11>:
(1)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G2)の粉体:4質量部、
(2)粘度平均分子量22,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000F):96質量部、
(3)Irganox1076(BASF製):0.1質量部、
(4)アデカスタブ2112((株)ADEKA製):0.1質量部、
(5)カーボンブラック#960(三菱化学(株)製):0.1質量部。
【0185】
上記の5種類の材料(1)〜(5)を配合し、バレル温度280℃に加熱した脱揮式押出機((株)池貝製PCM−30)に供給して、スクリュー回転数150rpmの条件で混練して樹脂組成物のペレットを得る。次いで100t射出成形機(住友重機械(株)製SE−100DU)とホットランナーを有する金型(試験片サイズ:縦100mm×横100mm×厚み2mm、ピンゲート)を用い、シリンダー温度310℃、ランナー温度310℃、金型温度が90℃の条件で、前記ペレットを成形して1ショット目の射出成形体を作製する。前記射出成形機による1ショット成形後、樹脂組成物を射出成形機内に6分間滞留させた後に更に1ショット成形して、「試験片11」を得る。
【0186】
<評価条件12(耐熱分解性)>:
「試験片11」のゲート付近に発生するシルバーストリークの本数を目視で確認する。
【0187】
前記の「作製条件11」で使用される樹脂組成物について、「評価条件12」で測定されるシルバー発生本数を0本とするためには、グラフト共重合体(G2)において、グラフト重合用のビニル単量体混合物に、「芳香族ビニル単量体」または「架橋性単量体」を含有させる等の手段をとればよい。
【0188】
芳香族ビニル単量体の含有量としては、グラフト重合用の単量体混合物100質量%中、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。
【0189】
グラフト共重合体(G2)において、架橋性単量体に由来する成分の含有量としては、グラフト共重合体100質量%中、0.5〜2.0質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。グラフト重合用の単量体混合物100質量%中における架橋性単量体の含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0190】
また、前記粉体は、前記「作製条件11」で使用された樹脂組成物について、下記の「評価条件13」で測定されるL*が20以下であることが特に好ましい。
【0191】
<評価条件13(発色性)>:
前記樹脂組成物のペレットを100t射出成形機(住友重機(株)製SE−100DU)に供給して、シリンダー温度310℃、金型温度90℃の条件で成形して「試験片13」(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)を得る。
【0192】
JIS Z 8729(L*a*b* 表色系による物体色の表示方法)により、測定は下記のようにJISZ8722に準じて、日本電色工業(株)製分光式色差計SE−2000を用いて、「試験片13」の物体色を測定する。
装置:分光式色差計SE−2000(日本電色工業株式会社製、0−45°後分光方式)
測定範囲:380〜780nm、
測定光源:C光(2°視野)、
三刺激値(XYZ)からCIE色差式を用いてL*値を算出する。
【0193】
<熱可塑性樹脂組成物1>
第1の発明群のグラフト共重合体(G1)は、熱可塑性樹脂(A)と混合して熱可塑性樹脂組成物として使用することができる。熱可塑性樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂(A)、グラフト共重合体(G)、フッ素系樹脂(C)及び難燃剤(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物が好ましい。
【0194】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリル酸エステル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)等のスチレン(St)系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル(Ac)系樹脂;ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリアミド(PA)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)等のPEs樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル((m−)PPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリスルフォン(PSO)樹脂、ポリアリレート(PAr)樹脂、ポリフェニレン(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;熱可塑性ポリウレタン(PU)樹脂;PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PVC/ABS等のPVC系樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA樹脂とTPEとのアロイ、PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ、PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPEとPP/PE等とのオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPSとPPE/PBTとPPE/PA等とのPPE系樹脂同士のアロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂とAc系樹脂とのアロイ等のポリマーアロイ;硬質塩化ビニル樹脂、半硬質塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等のPVC系樹脂。
【0195】
熱可塑性樹脂(A)としては、これらの中でも、得られる成形体の耐衝撃性及び難燃性の向上の観点から、カーボネート結合、エステル結合、及びアミド結合から選ばれる少なくとも一つの結合を有する熱可塑性樹脂が好ましい。カーボネート結合、エステル結合、及びアミド結合から選ばれる少なくとも一つの結合かを有する熱可塑性樹脂としては、例えば、PC系樹脂、PBT、PET、PA樹脂、PLAが挙げられる。なお、これらの樹脂を含むアロイ・ブレンドと呼ばれる樹脂を使用してもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
【0196】
芳香族ポリカーボネート系樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐鎖を有していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法、すなわち、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等が採用される。PC系樹脂は、その末端OH基量が熱安定性、加水分解安定性等に影響を及ぼす傾向にあるため、本発明では、溶融法で製造され、かつ、反応時の減圧度などを調整することにより、末端のOH基量が調整された芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
【0197】
PC系樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の商品名ユーピロンS−1000、ユーピロンS−2000、ユーピロンS−3000、ユーピロンH−3000もしくはユーピロンH−4000;または帝人化成(株)製の商品名パンライトL1250、パンライトL1225もしくはパンライトK1300など。
【0198】
熱可塑性樹脂(A)に対するグラフト共重合体(G1)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、グラフト共重合体(G1)0.5〜90質量部添加することが好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜7質量部がさらに好ましい。グラフト共重合体(G1)の使用量が0.5〜90質量部であれば、耐衝撃性と表面外観が優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0199】
〔フッ素系樹脂(C)〕
フッ素系樹脂(C)は、燃焼時の滴下防止を目的として用いることができる。フッ素系樹脂(C)としては、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、SAN変性ポリテトラフルオロエチレン、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0200】
フッ素系樹脂(C)としては公知のものを用いることができ、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば以下のものが挙げられる。「ポリフロンFA−500」(商品名、ダイキン工業(株)製)等のポリテトラフルオロエチレン;「BLENDEX B449」(商品名、GEスペシャルティ・ケミカルズ社製)等のSAN変性ポリテトラフルオロエチレン;「メタブレンA−3000」、「メタブレンA−3750」、「メタブレンA−3800」(商品名、三菱レイヨン(株)製)等のアクリル変性ポリテトラフルオロエチレン。これらのフッ素系樹脂(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0201】
これらのフッ素系樹脂(C)の中でも、得られる成形体中の分散性に優れ、成形体が機械特性、耐熱性、難燃性に優れることから、SAN変性ポリテトラフルオロエチレン、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0202】
SAN変性ポリテトラフルオロエチレン中、またはアクリル変性ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有率としては、フッ素系樹脂(C)100質量%中、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。SAN変性ポリテトラフルオロエチレン、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有率が10質量%以上であると、得られる成形体は難燃性に優れる。SAN変性ポリテトラフルオロエチレン、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有率が80質量%以下であると、得られる成形体は外観が優れる。
【0203】
フッ素系樹脂(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.3〜2質量部であることが更に好ましい。フッ素系樹脂(C)の配合量が0.01質量部以上であると、得られる成形体は難燃性に優れる。また、フッ素系樹脂(C)の配合量が10質量部以下であると、熱可塑性樹脂(A)の本来の性質を損なわない。
【0204】
〔難燃剤(D)〕
難燃剤(D)としては、公知の難燃剤を用いることができ、例えば以下のものが挙げられる。ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン系化合物と酸化アンチモン等の難燃助剤の組合せからなるハロゲン系難燃剤;有機塩系難燃剤;リン酸エステル系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル型難燃剤等のリン系難燃剤;芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩等のスルホン酸系難燃剤;分岐型のフェニルシリコーン化合物、フェニルシリコーン系樹脂等のオルガノポリシロキサン等のシリコーン系難燃剤。
【0205】
これらの難燃剤(D)の中でも、得られる成形体が難燃性に優れることから、リン酸エステル系難燃剤等のリン系難燃剤;芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩等の有機金属塩系難燃剤が好ましい。
【0206】
リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば以下のものが挙げられる。トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリスイソブチルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、1,3フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、1,3フェニレンビス(ジ2,6キシレニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビスジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジエチレンエチルエステルフォスフェート、ジヒドロキシプロピレンブチルエステルフォスフェート、エチレンジナトリウムエステルフォスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル−プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジエチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、アルキルリン酸エステル等。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0207】
有機金属塩系難燃剤は、極少量の添加により難燃効果を示すため、成形体の耐熱性を低下させにくいと共に成形体に少なからず帯電防止性を付与できる点で有利である。本発明において最も有利に使用される有機金属塩系難燃剤は、含フッ素有機金属塩化合物である。含フッ素有機金属塩化合物とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸からなるアニオン成分と金属イオンからなるカチオン成分とからなる金属塩化合物をいう。その中でも、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、およびフッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が好ましい。含フッ素有機金属塩化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その中でも好ましいのはフッ素置換有機スルホン酸の金属塩であり、特に好ましいのはパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である。
【0208】
その他、上記含フッ素有機金属塩化合物以外の有機金属塩系難燃剤としては、フッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩が好適である。該金属塩としては、例えば脂肪族スルホン酸の金属塩、芳香族スルホン酸の金属塩が挙げられる。その中でも好ましいのは芳香族スルホン酸の金属塩である。
【0209】
有機金属塩系難燃剤の金属イオンを構成する金属種としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。有機金属塩系難燃剤として、具体的には、以下のものが挙げられる。4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルホニル−ベンゼンスルホンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3’−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0210】
難燃剤(D)の配合量としては、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。難燃剤(D)の配合量が0.01質量部以上であると、得られる成形体は難燃性に優れる。また、難燃剤(D)の配合量が20質量部以下であると、熱可塑性樹脂(A)の本来の性質を損なわない。
【0211】
さらに、難燃剤(D)の種類により最適配合量は異なる。リン酸エステル系難燃剤の配合量としては、1〜10質量部であることがより好ましく、有機金属塩系難燃剤の配合量としては、0.01〜2質量部であることがより好ましい。
【0212】
〔酸化防止剤(E)〕
第1の発明群の熱可塑性樹脂組成物中には必要に応じて、酸化防止剤(E)を含有させることができる。酸化防止剤(E)は、成形体の製造時の樹脂の酸化分解を抑制することを目的とするだけでなく、成形体の難燃性を向上させることも目的とする成分である。酸化防止剤(E)は、通常の成形時に使用されるものであれば、特に限定されない。具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。トリス[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート((株)ADEKA製、アデカスタブAO−20など)、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン(BASF社製、イルガノックス1010など)、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)(BASF社製、イルガノックス245など)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸オクタデシル(BASF社製、イルガノックス1076など)、ブチリデン−1,1−ビス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル−フェニル((株)ADEKA製、アデカスタブAO−40など)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉冨ファインケミカル(株)製、ヨシノックス930など)などのフェノール系酸化防止剤;ビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト((株)ADEKA製、アデカスタブPEP−36など)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト((株)ADEKA製、アデカスタブ2112など)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト((株)ADEKA製、アデカスタブHP−10など)などのリン系酸化防止剤;ジラウリル3,3’−チオ−ジプロピオネート(吉冨ファインケミカル(株)製、ヨシノックスDLTP)、ジミリスチル3,3’−チオ−ジプロピオネート(吉冨ファインケミカル(株)製、ヨシノックスDMTP)などのイオウ系酸化防止剤等。
【0213】
酸化防止剤(E)の配合量としては、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜2部が好ましく、0.05〜0.8部がより好ましい。酸化防止剤(E)の配合量が0.05部以上であると、得られる成形体は難燃性に優れる。また、酸化防止剤(E)の配合量が2部以下であると、得られる成形体の耐衝撃性の低下を抑えられる。
【0214】
〔その他の添加剤〕
第1の発明群の熱可塑性樹脂組成物中には、更に必要に応じて、以下の成分を配合することができる。可塑剤、滑剤;離型剤(例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート);成核剤、帯電防止剤、安定剤、充填材;強化材(ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カオリン、タルク、CaCO
3およびガラスフレーク);色素および顔料。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0215】
〔樹脂組成物の調製方法〕
第1の発明群の熱可塑性樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(A)、グラフト共重合体(G1)と、必要に応じてフッ素系樹脂(C)、難燃剤(D)、酸化防止剤(E)、各種添加剤とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、この混合物を押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより調製できる。これらの各成分の混合はバッチ的又は連続的に実施することができ、各成分の混合順序は特に限定されない。溶融混練物はペレットにして、各種の成形に用いることができる。
【0216】
<樹脂組成物2>
本発明の第2の発明群のグラフト共重合体(G2)の粉体は、樹脂と混合して樹脂組成物として使用することができる。第2の発明群において使用できる樹脂としては、特に制限はないが、例えば「硬化性樹脂」、「熱可塑性樹脂」及び「熱可塑性エラストマー」から選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。
【0217】
樹脂に対するグラフト共重合体(G2)の粉体の添加量は、樹脂と粉体の合計100質量%中、0.5〜90重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましい。粉体の添加量が0.5〜90重量%であれば、耐衝撃性と表面外観が優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0218】
〔硬化性樹脂〕
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂が挙げられる。これらの中では、電気的特性に優れ、半導体封止に適していることから、エポキシ樹脂が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂とに分類できるが、そのいずれであってもよい。
【0219】
エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂としては、グラフト共重合体(G2)の粉体の分散性が良好となることから、固形状のものが好ましい。
【0220】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤;アミン系硬化剤;酸無水物系硬化剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。硬化剤の使用量は、エポキシ基の化学量論量であることが好ましい。
【0221】
フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は、乾性油、キシレン樹脂、メラミン樹脂等で変性されたものであってもよい。フェノール樹脂としては、グラフト共重合体を含む粉体の分散性が良好となることから、固形状のものが好ましい。
【0222】
フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂である場合には、硬化剤として、ヘキサミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ポリホルムアルデヒド化合物、レゾール型フェノール樹脂等が併用される。
【0223】
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。飽和二塩基酸(例えばイソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)と、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA等)と、不飽和二塩基酸(例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等)とを180〜250℃で反応させて得られるもの。
【0224】
不飽和ポリエステル樹脂としては、上記不飽和二塩基酸と共重合可能な単量体とを共重合させた樹脂でもよい。不飽和二塩基酸と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0225】
〔熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂としては、前記熱可塑性樹脂(A)として例示した樹脂が挙げられる。それらの中でも以下の樹脂またはアロイが好ましい。St系樹脂、PC樹脂、PA樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、(m−)PPE樹脂、POM樹脂、PU樹脂;PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA樹脂とTPEとのアロイ、PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ、PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイ;PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂同士のアロイ等。またPC樹脂がより好ましい。
【0226】
〔熱可塑性エラストマー〕
熱可塑性エラストマーとしては、例えば以下のものが挙げられる。スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン。これらの中でも、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが好ましい。
【0227】
〔樹脂組成物の調製方法〕
樹脂が硬化性樹脂である場合の樹脂組成物(以下、「硬化性樹脂組成物」という。)の調製方法としては、例えば、(1)各成分を溶液状態で混合する方法、(2)各成分をミキシングロールやニーダー等を用いて溶融混合し、冷却した後、粉砕もしくは打錠する方法が挙げられる。
【0228】
硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば以下のものが挙げられる。種々の硬化促進剤;シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類等の離型剤;結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ等の充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維;三酸化アンチモン等の難燃剤;ハイドロタルサイト類、希土類酸化物等のハロゲントラップ剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;シランカップリング剤。
【0229】
樹脂が熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーである場合の樹脂組成物(以下、「熱可塑性樹脂組成物」という。)の調製方法として、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)ヘンシェルミキサー、タンブラー等でグラフト共重合体(G2)の粉体、及び熱可塑性樹脂の粉体もしくは粒状物を混合した後に、押出機、ニーダー、ミキサー等で溶融混合する方法、
(2)予め溶融させた熱可塑性樹脂に、残りの材料を逐次混合していく方法。
【0230】
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば以下のものが挙げられる。フェノール系安定剤、燐系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等の安定剤;燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等の難燃剤;耐加水分解性等の各種物性を付与するための改質剤;酸化チタン、タルク等の充填剤;染顔料;可塑剤。
【0231】
上述の樹脂の中では、アウトガスの発生抑制効果を最大限に発揮できる観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、芳香族ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。第2の発明群の熱可塑性樹脂組成物に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記熱可塑性樹脂(A)として例示した芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる
【0232】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。グラフト共重合体(G2)の粉体と、芳香族ポリカーボネート樹脂と、必要に応じて使用される各種添加剤とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等により混合分散させる。次いで、この混合物を押出機又はバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いて溶融混練する。
【0233】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、以下の各種添加剤を含有することができる。防炎加工剤;ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン及びアラミド繊維);滑剤;離型剤(例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート);成核剤、帯電防止剤、安定剤、充填材;強化材(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カオリン、タルク、CaCO
3 及びガラスフレーク);色素及び顔料。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0234】
<成形体>
本発明の第1の発明群及び第2の発明群の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形に用いられる成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0235】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、特に300℃以上の高温で成形する際に、アウトガスの発生を抑制しながら、耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えた優れた成形体を得ることができる。
【0236】
本発明の第1の発明群の成形体は、優れた耐衝撃性、難燃性、発色性を有するため、自動車分野、OA機器分野、家電、電気・電子分野等の種々の材料として、工業的に広く利用することができる。
【0237】
本発明の第2の発明群の硬化性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、トランスファー成形、シートコンパウンドモールディング成形、バルクモールディング成形が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物が溶液状態である場合には、接着剤として塗布することもできる。
【0238】
本発明の第2の発明群の成形体は、用途としては特に制限はなく、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の材料として、工業的に広く利用することができる。
【実施例】
【0239】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。実施例1〜14及び比較例1〜13は、第1の発明群に関するものであり、実施例21〜46及び比較例21〜25は、第2の発明群に関するものである。実施例1〜5及び比較例1〜4はポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体に関し、実施例6〜14及び比較例5〜13はポリカーボネート系樹脂組成物に関する。実施例21〜33及び比較例21及び22はポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含む粉体に関し、実施例34〜46及び比較例23〜25はポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0240】
実施例に先立って、各種評価方法、並びに、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックスの製造例1及び2、及び、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の製造例3を説明する。以下の説明において「部」および「%」は、特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0241】
<1.評価方法>
(1)ラテックスの固形分
質量w
1のラテックスを180℃の熱風乾燥機中で30分間乾燥し、乾燥後の残渣の質量w
2を測定し、下記式により固形分を算出する。
固形分[%]=w
2/w
1×100 ・・・(1)
【0242】
(2)重合率
重合体を製造する際に仕込んだ全単量体の質量w
3と重合後に得られた固形分の質量w
4から、下記式により重合率を算出する。
重合率[%]=w
4/w
3×100 ・・・(2)
【0243】
(3)グラフト共重合体の体積平均粒子径
この評価は第1の発明群に関するものである。グラフト共重合体のラテックスを蒸留水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製 SALD−7100)を用い、体積平均におけるメジアン径を求める。ラテックスの試料濃度は、装置に付属の散乱光強度モニターにおいて適正範囲となるよう適宜調整する。標準粒子径物質としては、粒子径既知の単分散ポリスチレンであって、粒子径が20〜800nmの範囲内の12種類の粒子が用いられる。
【0244】
(4)グラフト共重合体の吸光度法で測定される粒子径
この評価は第2の発明群に関するものである。グラフト共重合体のラテックスの濃度(固形分)を、脱イオン水を用いて0.5g/Lに希釈した液について、紫外可視分光光度計(島津製作所製 UV−mini1240)を用いて、波長700nmにおける吸光度DAを測定する。下記式により粒子径を算出する。
【0245】
【数3】
【0246】
(5)紛体中の金属含有量、硫黄量
この評価は第2の発明群に関するものである。グラフト共重合体を含む粉体0.25gを分解容器内に量り取り、硝酸8mlを加えマイクロウエーブ(湿式分解)にて分解させる。冷却後、フッ化水素酸2 ml入れ再度マイクロウエーブで処理した後、蒸留水で50mlにメスアップし検液とする。この検液についてICP発光分析装置(IRIS Interpid II XSP:Thermo社製)を用いて、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄の含有量を定量する。
【0247】
(6)シャルピー衝撃強度
JIS K 7111‐1/1eAに準拠して、温度23℃、及び−30℃にて、試験片(長さ80.0mm、幅10.0mm、厚み4mm、Vノッチ付き)のシャルピー衝撃強度を測定する。
【0248】
(7)全光線透過率(発色性)
この評価は第1の発明群に関するものである。JIS K 7375に準拠して、日本電色工業(株)製HAZE Meter NDH4000を用いて、試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)について、D65光源における全光線透過率を測定する。
【0249】
(8)難燃性
この評価は第1の発明群に関するものである。熱可塑性樹脂組成物を1/16インチの燃焼棒に成形し、UL−94V試験を行なう。
【0250】
(9)耐熱老化性
この評価は第1の発明群に関するものである。試験片(長さ80.0mm、幅10.0mm、厚み4mm、Vノッチ付き)を温度120℃のオーブン中にて12時間、熱処理する。オーブンから試験片を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で24時間以上放置した後、温度23℃において、シャルピー衝撃強度を測定し、耐熱老化性の指標とする。
【0251】
(10)耐熱分解性
この評価は第2の発明群に関するものである。先ず、前述の「作成条件11」に従って、ペレットを製造する。次いで、このペレットを住友SE100DU射出成形機(住友重機械(株)製)とホットランナーを有する金型(試験片サイズ:縦100mm×横100mm×厚み2mm、ピンゲート)に供給して、シリンダー温度310℃、ランナー温度310℃、金型温度90℃の条件で射出成形する。1ショット成形後、2分間ずつ滞留させながら連続して3ショット成形して、滞留なし(0分)の試験片、2分間滞留後の試験片、4分間滞留後の試験片、及び6分間滞留後の試験片を得る。
【0252】
これら4種類の試験片について、前述の「評価条件12(耐熱分解性)」に従って、成形品のシルバーストリークの本数を目視で確認し、耐熱分解性の指標とする。アウトガス発生量が多いほどシルバーストリークの本数が多く、耐熱分解性が低いことを示す。
++ : 最良 (0本)、
+ : 良 (1〜2本)、
− : 悪 (3〜10本)、
−− : 最悪 (10本以上)。
【0253】
(11)耐薬品性
この評価は第2の発明群に関するものである。100t射出成形機(住友重機械(株)製SE−100DU)を用い、シリンダー温度310℃、金型温度90℃の条件で樹脂組成物を射出成形して作成した長さ100mm、幅50mm、厚さ2mmの試験片を得る。この試験片を溶剤(アセトン13質量%、トルエン20質量%、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン16質量%、イソブチルアルコール16質量%、メチルエチルケトン20質量%、キシレン5質量%、シクロヘキサノン10質量%の混合物)中に室温(25℃)で2分間浸漬後、温度70℃にて30分間乾燥する。次いで、この試験片を温度23℃、相対湿度50%の空気雰囲気中に4時間静置後、デュポン面衝撃試験機(荷重:1kg、高さ:10cm、n=10)を用いて面衝撃試験を行う。以下の計算式を用いて脆性破壊率を算出し、耐薬品性の指標とする。脆性破壊率が低いほど耐薬品性が良好であることを示す。
【0254】
【数4】
(12)L*(発色性)
この評価は第2の発明群に関するものである。前述の「評価条件13(発色性)」に従って、試験片のL*を測定する。
【0255】
<製造例>
[製造例1]
テトラエトキシシラン(TEOS)2部、γ−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン(DSMA)2部及び、オクタメチルシクロテトラシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(株)製、製品名:TSF404)96部を混合してオルガノシロキサン混合物100部を得た。脱イオン水150部中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)1部を溶解した水溶液を、前記混合物中に添加し、ホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。
【0256】
次いで、冷却コンデンサーを備えた容量5リットルのセパラブルフラスコ内に、上記エマルションを入れた。該エマルションを温度80℃に加熱し、次いで硫酸0.20部と蒸留水49.8部との混合物を3分間にわたり連続的に投入した。温度80℃に加熱した状態を7時間維持して重合反応させた後、室温(25℃)に冷却し、得られた反応液を室温で6時間保持した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液をpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス(S−1)を得た。
【0257】
このラテックスの固形分は29.8%であった。また、このラテックスのキャピラリー粒度分布計(米国MATEC社製CHDF2000型)による数平均粒子径(Dn)は384nm、質量平均粒子径(Dw)は403nmであり、Dw/Dnは1.05であった。
【0258】
[製造例2]
環状オルガノシロキサン混合物(信越シリコーン(株)製、製品名:DMC)を97.5部、TEOSを2部及びDSMAを0.5部、混合してオルガノシロキサン混合物100部を得た。DBSNaを0.68部、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSH)を0.68部、脱イオン水200部中に溶解した水溶液を、前記混合物中に添加し、ホモミキサーにて10,000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。
【0259】
次いで、冷却コンデンサーを備えた容量5リットルのセパラブルフラスコ内に前記エマルションを仕込んだ。該エマルションを温度85℃に加熱し、この温度を6時間維持して重合反応させた後、室温(25℃)に冷却し、得られた反応物を室温で12時間保持した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液をpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス(S−2)を得た。
【0260】
このラテックスの固形分は28.3%であった。また、このラテックスのDnは86nm、Dwは254nmであり、Dw/Dnは2.95であった。
【0261】
[製造例3]
これはポリテトラフルオロエチレン含有粉体(J−2)の製造例である。以下の説明において、「PTFE」は、ポリテトラフルオロエチレンを意味する。
【0262】
乳化剤としてのアルケニルコハク酸ジカリウム6.0部、蒸留水230部を、攪拌翼、コンデンサー、熱電対、窒素導入口を備えた容量2リットルのセパラブルフラスコ内に仕込み、窒素気流下に室温で30分間攪拌した。尚、前記アルケニルコハク酸ジカリウムは、予め、前記蒸留水の一部に溶解させた状態で使用した。
【0263】
次いで、該フラスコ内の液体の温度を70℃まで昇温し、過硫酸カリウム0.2部を蒸留水3部に溶解した水溶液を、フラスコ内に添加した。さらに、メチルメタクリレート(MMA)50部、スチレン(St)30部、n−ブチルアクリレート(n−BA)20部、n−オクチルメルカプタン0.1部からなる混合物を4時間かけて該フラスコ内に滴下し、ラジカル重合を行った。滴下終了後、該フラスコ内の液体の温度を70℃に保ちながら1時間攪拌し、ビニル重合体(p2)を含有するラテックス(p2−1)を得た。このラテックス中のビニル重合体(p2)の含有量は30%であった。
【0264】
攪拌装置を備えた容量5リットルの反応器内に、前記ラテックス(p2−1)166.7部、及び、PTFE系重合体(p1)を含有するラテックスである「フルオンAD939E」(旭硝子(株)製、PTFEの濃度60%、PTFEの質量平均分子量約1500万、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの濃度3%)83.3部を仕込み、5分間攪拌して、ラテックス(j−2)を得た。このラテックス中にはPTFEが50部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが2.5部、前記ビニル重合体(p2)が50部、含まれていた。
【0265】
次いで、凝析剤としての酢酸カルシウム5.0部を含有する酢酸カルシウム水溶液325部を容量10リットルのフラスコ内に仕込んだ。この水溶液を、温度80℃に加熱して、攪拌しながら、この水溶液中に前記ラテックス(j−2)を徐々に滴下して、ポリマーを凝析させてスラリーを得た。その後、このスラリーの温度を90℃まで上昇させた後、5分間攪拌を続けた。次いで、得られた析出物をスラリーから分離して、濾過し、水洗し、乾燥して、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(J−2)100部を得た。
【0266】
[実施例1]
製造例1において得たポリオルガノシロキサンゴムのラテックス(S−1)をポリマー換算で29.5部、容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、脱イオン水100部を添加混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、n−ブチルアクリレート(n−BA)58.9部、アリルメタクリレート(AMA)1.8部、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(t−BH)0.25部の混合物を添加した。
【0267】
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温を50℃まで昇温した。液温が50℃となった時点で硫酸第一鉄(Fe)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.3部を脱イオン水2.5部に溶解させた水溶液を添加しラジカル重合を開始した。アクリレート成分の重合を完結させるため、液温65℃の状態を1時間維持し、ポリオルガノシロキサンとポリn−ブチルアクリレートとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0268】
上記複合ゴムのラテックスの温度を65℃に維持した状態で、Stを4.9部、MMAを4.7部、n−BAを0.2部、t−BHを0.03部の混合液を、1.5時間にわたって、このラテックス中に滴下して重合した。滴下終了後、液温を65℃に1時間維持したのち25℃に冷却して、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1)のラテックスを得た。グラフト共重合体(G−1)の体積平均粒子径を表1に示す。
【0269】
次いで、酢酸カルシウムの濃度が1質量%の水溶液500部を、温度30℃に維持して、攪拌しながら、この中にグラフト共重合体(G−1)のラテックス300部を徐々に滴下し凝固した。得られたグラフト共重合体(G−1)をろ過、脱水した。更に、グラフト共重合体100部に対して10倍量の水を加えた後、攪拌機の付いたフラスコ内にて10分間洗浄を行い、ろ過、脱水した。この操作を2回繰り返した後、乾燥させてグラフト共重合体(G−1)の粉体を得た。グラフト共重合体(G−1)の重合率、体積平均粒子径を表1に示す。尚、この重合率は、複合ゴムの製造からグラフト重合までの全工程において使用された単量体成分の重合率である。
【0270】
[実施例2〜4、比較例1及び2]
実施例1において用いた各原料の種類及び量を表1に示す条件に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−2〜4、及びG’−1〜2)を製造し、更にグラフト共重合体の粉体を得た。得られた各グラフト共重合体の重合率、体積平均粒子径を表1に示す。
【0271】
尚、比較例2では、G’−2の重合率が91%と低かったため、ガスクロマトグラフィーを用いて残存単量体を求めた。その結果、Stの重合率が68%と低く、重合が進んでいないことが考えられた。
【0272】
[実施例5]
製造例1において得たラテックス(S−1)をポリマー換算で10.0部、容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、蒸留水200部を添加混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、n−BAを59.1部、AMAを0.9部、t−BHを0.18部の混合物を添加した。
【0273】
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温を50℃まで昇温した。液温が50℃となった時点で硫酸第一鉄(Fe)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加しラジカル重合を開始した。アクリレート成分の重合を完結させるため、液温65℃の状態を1時間維持し、ポリオルガノシロキサンとポリn−ブチルアクリレートとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0274】
上記複合ゴムのラテックスの温度を65℃に維持した状態で、MMAを15部、Stを15部、t−BHを0.14部の混合液を1時間にわたって、フラスコ内に滴下して重合した。滴下終了後、液温65℃の状態を1時間維持したのち、室温(25℃)に冷却し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−5)のラテックスを得た。グラフト共重合体(G−5)の重合率、体積平均粒子径を表1に示す。
【0275】
次いで、酢酸カルシウムの濃度が1質量%の水溶液500部を温度60℃に加熱、攪拌しながら、この液中にグラフト共重合体(G−5)のラテックス340部を徐々に滴下し凝固した。得られたグラフト共重合体(G−5)をろ過、脱水した。更に、グラフト共重合体100部に対して10倍量の水を加えた後、攪拌機の付いたフラスコ内にて10分間洗浄を行い、ろ過、脱水した。この操作を2回繰り返した後、乾燥させてグラフト共重合体(G−5)の粉体を得た。
【0276】
[比較例3]
製造例1において得たラテックス(S−1)をポリマー換算で80.0部、容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、蒸留水46部を添加混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、AMAを5.0部、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)を0.11部の混合物を添加した。
【0277】
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で硫酸第一鉄(Fe)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部を脱イオン水2.5部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始し、液温70℃で1時間維持した。
【0278】
上記の液温70℃のラテックス中に、フェニルメタクリレート(PhMA)を15.0部、t−BHを0.3部の混合液を、1.5時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、液温70℃の状態を1時間維持したのち23℃に冷却し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G’−3)のラテックスを得た。グラフト共重合体(G’−3)の重合率、体積平均粒子径を表1に示す。
【0279】
その後は、グラフト共重合体(G’−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、グラフト共重合体(G’−3)の粉体を得た。
【0280】
[比較例4]
製造例2によって得たラテックス(S−2)をポリマー換算で20.0部、容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、蒸留水140部を添加混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、n−BAを49.0部、AMAを1.0部、t−BHを0.20部の混合物を添加した。その後は実施例1と同様にして複合ゴムのラテックスを得た。
【0281】
上記複合ゴムラテックスの温度を65℃に維持した状態で、MMAを6.0部、Stを24.0部、t−BHを0.12の混合物を1時間にわたって滴下して重合した。滴下終了後、液温65℃の状態を1時間維持したのち室温(25℃)に冷却し、グラフト共重合体(G’−4)のラテックスを得た。グラフト共重合体(G’−4)の重合率、体積平均粒子径を表1に示す。
【0282】
その後は、グラフト共重合体(G’−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、グラフト共重合体(G’−4)の粉体を得た。
【0283】
[実施例6〜11、比較例5〜10]
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体として、実施例1〜5または比較例1〜4で得たポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1〜5、G’−1〜4)の粉体を用いて、前述の「作製条件1」に従って、それぞれ、耐衝撃性評価用「試験片1」、全光線透過率評価用「試験片2」、及び難燃性評価用「試験片3」を作製した。尚、その際、ペレットは80℃で12時間乾燥した後、射出成形機に供給した。次いで、前述の「評価条件2」に従って、各評価を実施し、表2に示す評価結果を得た。
【0284】
[実施例12〜14、比較例11〜13]
実施例1または比較例4で得たポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1、G’−4)の粉体、有機スルホン酸金属塩(DIC(株)製、商品名:メガファックF−114)、滴下防止剤として製造例3で得たポリテトラフルオロエチレン含有粉体J−2、及びポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量22,000)、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン(株)製、商品名:イルガノックス245)、リン系酸化防止剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブPEP36)を表3に記載の量で配合した。これら以外は実施例6と同様にしてポリカーボネート系樹脂組成物及び各試験片を得た。評価結果を表3に示す。
【0285】
〔樹脂組成物の性能比較〕
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を3.3部配合した実施例6の樹脂組成物は、比較例5の樹脂組成物に比べ、難燃性、耐衝撃性及び全光線透過率のバランスに優れることが分かった。また、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を5.5部配合した実施例7〜11の樹脂組成物は、比較例6〜9の樹脂組成物に比べ、難燃性、耐衝撃性及び全光線透過率のバランスに優れることが分かった。
【0286】
比較例5及び9の樹脂組成物は、用いたグラフト共重合体(G’−4)の体積平均粒子径が200nmより小さいため、難燃性及び耐衝撃性(低温及び熱老化試験後23℃)が低位であった。比較例6の樹脂組成物は、用いたグラフト共重合体(G’−1)が芳香族ビニル単量体(b
2)を含んでいないため、難燃性が低位であった。
【0287】
比較例7の樹脂組成物は、用いたグラフト共重合体(G’−2)が(メタ)アクリル酸エステル(b
1)を含んでいないため、マトリクス樹脂との相溶性が低位となり、ポリオルガノシロキサンの含有量と複合ゴムの含有量が同量のグラフト共重合体(G−1〜4)を配合した実施例7〜10に比べて、低温耐衝撃性が低位であった。
【0288】
比較例8の樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサンの含有量が69質量%より多く、また芳香族ビニル単量体(b
2)を含んでいないグラフト共重合体(G’−3)を用いている。このため、グラフト共重合体は低屈折率であり、マトリクス樹脂との屈折率差が大きくなるため、樹脂組成物は全光線透過率が低位であり、発色性が低位であった。比較例10の樹脂組成物は、グラフト共重合体(B)を含んでいないため、耐衝撃性が低位であり、難燃性も比較的低位であった。
【0289】
難燃剤に有機金属塩系を用いた場合でも、実施例12及び13の樹脂組成物は、比較例11の樹脂組成物に比べ、難燃性、耐衝撃性及び全光線透過率のバランスに優れることが分かった。また、実施例14の樹脂組成物は、比較例12及び13の樹脂組成物に比べ難燃性、耐衝撃性及び全光線透過率のバランスに優れることが分かった。
【0290】
比較例12の樹脂組成物は、用いたグラフト共重合体(G’−4)の体積平均粒子径が200nmより小さいため、難燃性及び低温耐衝撃性が低位であった。また、比較例11及び13の樹脂組成物は、グラフト共重合体(B)を含んでいないため、難燃性や発色性には優れるものの、耐衝撃性が低位であった。
【0291】
【表1】
【0292】
【表2】
【0293】
【表3】
以下は、第2の発明群の実施例である。
【0294】
[実施例21]
製造例1において得たポリオルガノシロキサンゴムのラテックス(S−1)33.56部(ポリマー換算で10.0部)を、容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、蒸留水200部を添加し混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、n−ブチルアクリレート(n−BA)59.1部、アリルメタクリレート(AMA)0.9部、t−ブチルハイドロパーオキサイド(t−BH)0.24部の混合物を添加した。
【0295】
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温を50℃まで昇温した。液温が50℃となった時点で硫酸第一鉄(Fe)0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。液温が65℃に低下した後、アクリレート成分の重合を完結させるため、液温65℃の状態を1時間維持し、ポリオルガノシロキサンとポリn−ブチルアクリレートとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0296】
上記複合ゴムのラテックスの液温を65℃に維持した状態で、メチルメタクリレート(MMA)を28.5部、n−BAを1.5部、t−BHを0.14部の混合液を1時間にわたって、このラテックス中に滴下して重合した。滴下終了後、液温60℃以上の状態を1時間保ったのち25℃に冷却して、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−21)のラテックスを得た。このグラフト共重合体の吸光度法で測定される粒子径は405nmであった。
【0297】
次いで、酢酸カルシウムの濃度が1質量%の水溶液500部を、温度60℃に加熱して、攪拌しながら、この水溶液中にグラフト共重合体(G−21)のラテックス340部を徐々に滴下し凝固した。得られたグラフト共重合体(G−21)をろ過、脱水した。更に、グラフト共重合体100部に対して10倍量の水を加えた後、攪拌機の付いたフラスコ内にて10分間洗浄を行い、ろ過、脱水した。この操作を2回繰り返した後、乾燥させてグラフト共重合体(G−21)の粉体を得た。得られた粉体中に含まれるアルカリ金属含有量、アルカリ土類金属含有量、硫黄含有量を表5に示す。また、グラフト共重合体の粒子径を表5に示す。
【0298】
[実施例22〜26、33、比較例21及び22]
実施例21において、用いた各原料の種類及び量を表4に示す条件に変更したこと以外は実施例21と同様にして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−22〜26、G−33、G’−21、G’−22)の粉体を製造した。各評価結果を表5に示す。
【0299】
[実施例27]
製造例1において得たラテックス(S−1)33.56部(ポリマー換算で10.0部)を容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、蒸留水200部を添加混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、n−BAを59.1部、及びAMAを0.9部の混合物を添加した。
【0300】
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温を50℃まで昇温した。液温が50℃となった時点で2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシメチル)−2−メチルプロピオナミジン]ハイドレート(和光純薬工業(株)製、商品名;VA−057)0.15部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加しラジカル重合を開始した。液温が65℃に低下した後、アクリレート成分の重合を完結させるため、液温65℃の状態を1時間維持し、ポリオルガノシロキサンとポリn−ブチルアクリレートとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0301】
上記複合ゴムのラテックスの液温を65℃に維持した状態で、Feを0.001部、EDTAを0.003部、SFSを0.12部を蒸留水10部に溶解させた水溶液をフラスコ内に添加した。次いでMMAを28.5部、n−BAを1.5部、t−BHを0.14部の混合液を1時間にわたってフラスコ内に滴下して重合した。滴下終了後、液温60℃以上の状態に1時間保ったのち室温(25℃)に冷却し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−27)のラテックスを得た。このグラフト共重合体の吸光度より求めた粒子径は415nmであった。
【0302】
次いで、酢酸カルシウムの濃度が1質量%の水溶液500部を温度60℃に加熱し、攪拌しながら、この水溶液中にグラフト共重合体(G−27)のラテックス340部を徐々に滴下し凝固した。得られたグラフト共重合体(G−27)をろ過、脱水した。更に、グラフト共重合体100部に対して10倍量の水を加えた後、攪拌機の付いたフラスコにて10分間洗浄を行い、ろ過、脱水した。この操作を2回繰り返した後、乾燥させてグラフト共重合体(G−27)の粉体を得た。各評価結果を表5に示す。
【0303】
[実施例28〜32]
実施例27において、用いた各原料の種類及び量を表4に示す条件に変更したこと以外は実施例27と同様にして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−28〜32)の粉体を製造した。各評価結果を表5に示す。
【0304】
〔グラフト共重合体の粉体の比較〕
実施例21〜33のグラフト共重合体の粉体は、複合ゴムの製造時に重合開始剤として用いたSFSの量が0.2部より少ないため、酢酸カルシウムで凝固した場合であってもアルカリ土類金属含有量が150ppm以下であった。
【0305】
比較例21のグラフト共重合体の粉体は、複合ゴムの製造時に重合開始剤として用いたSFSの量が0.2部より多いため、酢酸カルシウムで凝固した場合、アルカリ土類金属含有量が150ppmより多くなった。
【0306】
比較例22のグラフト共重合体の粉体は、ポリオルガノシロキサンゴムの粒子径が小さいため、粒子径が300nm以下であった。
【0307】
[実施例34〜46、比較例23〜25]
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体として、グラフト共重合体(G−21〜33、G’−21、G’−22)の粉体を用いた。前述の「樹脂組成物及び試験片の作製条件11」、「評価条件12(耐熱分解性)」及び「評価条件13(発色性)」に従って、それぞれ、「耐熱分解性」及び「発色性」を評価した。尚、その際、ペレットは80℃で12時間乾燥した後、射出成形機に供給した。
【0308】
また、前記と同様の80℃で12時間乾燥したペレットを、100t射出成形機(住友重機(株)製、商品名;SE−100DU)に供給し、シリンダー温度310℃及び金型温度90℃で射出成形を行なった。JIS K7152に準じてファミリー金型を用い、シャルピー衝撃強度用の試験片(長さ80.0mm、幅10.0mm、厚み4mm、Vノッチ付き)、耐熱分解性評価用の試験片(縦100mm、横100mm、厚み2mm)及び耐薬品性評価用の試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)を得た。評価結果を表6に示す。
【0309】
〔樹脂組成物の性能比較〕
実施例34〜46から明らかなように、アルカリ金属量が20ppm以下かつアルカリ土類金属量が150ppm以下であるグラフト共重合体の粉体を用いて得られるポリカーボネート樹脂組成物は、高温成形時のアウトガスの発生が抑制されており、耐熱分解性に優れていた。
【0310】
一方、比較例23のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体の粉体に含まれるアルカリ土類金属量が150ppm以上であったため、実施例34〜46の樹脂組成物と比較して顕著にアウトガスの発生が確認され、耐熱分解性が低位であった。
【0311】
実施例36〜39のポリカーボネート樹脂組成物は、複合ゴムの製造時にアルキル(メタ)アクリレート成分の重合に使用した過酸化物がクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドであるため、耐薬品性が優れていた。
【0312】
さらに、実施例35、37、39、41、42及び43のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体中の複合ゴムの含有量が75質量%以上であるために、耐薬品性がより優れていた。
【0313】
実施例44のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体のグラフト部のsp値が高いために、耐薬品性が良好であった。
【0314】
実施例45のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体の製造時のグラフト用単量体が架橋性単量体を含んでおり、グラフト共重合体自体の耐薬品性が高いために、耐薬品性が良好であった。
【0315】
実施例46のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体のグラフト部がスチレン単位を含んでおり、耐熱分解性が良好であった。
【0316】
比較例24のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体の粉体のアルカリ土類金属含有量ならびに硫黄含有量が多く、さらにグラフト共重合体の粒子径が300nmよりも小さいため、耐熱分解性ならびに発色性が低位であった。
【0317】
比較例25のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体を含有していないために、低温におけるシャルピー衝撃強度ならびに耐薬品性が低位であった。
【0318】
【表4】
【0319】
【表5】
【0320】
【表6】