特許第6191534号(P6191534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6191534ウエハのそりの評価方法及びウエハの選別方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191534
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ウエハのそりの評価方法及びウエハの選別方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20170828BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
   G01B21/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-94469(P2014-94469)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-213099(P2015-213099A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 久之
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−147289(JP,A)
【文献】 特開2011−214910(JP,A)
【文献】 特開2009−027095(JP,A)
【文献】 特開2003−075147(JP,A)
【文献】 特開2013−120820(JP,A)
【文献】 特開2009−117301(JP,A)
【文献】 特表2010−537394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86;7/20−7/24;
9/00−9/02
G01B 21/00−21/32
H01L 21/027;21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハのそりを評価する方法であって、
吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定する第1の工程と、前記測定したウエハのそりのデータを用いて、ウエハ面内の任意の点Pを通る直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点間のウエハそり量Aと、前記直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから前記距離aとは異なる距離b離れた点Rと点Rの2点間のウエハそり量Bを求め、前記ウエハそり量A及び前記ウエハそり量Bから前記点Pにおけるウエハそり量の差を算出する第2の工程とを有し、算出した前記ウエハそり量の差からウエハのそりを評価することを特徴とするウエハのそりの評価方法。
【請求項2】
前記距離a及び前記距離bは0.5〜12.5mmであり、かつ(距離a−距離b)≧5mmであることを特徴とする請求項1に記載のウエハのそりの評価方法。
【請求項3】
前記ウエハそり量は、前記点Pから所定の距離離れた2点におけるウエハ裏面の高さを0としたときの前記点Pにおけるウエハ表面の高さから求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウエハのそりの評価方法。
【請求項4】
前記ウエハそり量の差の算出は、少なくともウエハ面内の中心で直角に交わるX軸、Y軸上の複数の任意の点におけるウエハそり量の差を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウエハのそりの評価方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のウエハのそりの評価方法で求めたウエハそり量の差と、フォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生の有無との相関関係を求め、該相関関係からオーバーレイ不良の発生しないウエハを選別することを特徴とするウエハの選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハのそりの評価方法及びこれを用いたウエハの選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトリソグラフィー技術を用いて半導体デバイスや液晶デバイス等のデバイスを製造する際に、投影光学系を介して原版(以下、マスクともいう)のパターンを感光剤が塗布された感光基板(以下、ウエハともいう)上に露光し転写している。
【0003】
近年デバイスの高集積化がますます加速度を増しており、これに伴う感光基板の微細加工技術の進展も著しい。この微細加工技術の中心をなす露光装置として、ミラープロジェクションアライナー、ステッパー、スキャナー等がある。ミラープロジェクションアライナーは円弧状の露光領域を持つ等倍のミラー光学系に対して原版と感光基板を走査しながら露光する等倍投影露光装置である。ステッパーは原版のパターン像を屈折光学系により感光基板上に形成し、感光基板をステップアンドリピート方式で露光する縮小投影露光装置である。スキャナーは原版を走査するのに同期させて感光基板を走査しながら露光する縮小投影露光装置である。
【0004】
露光を行う際は、マスクをウエハに重ね合わせて露光を行うが、ステッパーを用いてウエハの露光を行う際は、数回のショットで露光を行うため重ね合わせの位置がずれる、いわゆるオーバーレイ不良が発生することがある。このようなオーバーレイ不良の発生を防止するために、これまで様々な装置や方法が提案されてきた。
【0005】
特許文献1では、ショットごとにマスクパターンの像とウエハ上の所定領域とを位置合わせしてマスクパターンをウエハ上に形成する投影露光装置において、ウエハステージをショットごとに定められた所定位置にステッピング移動する装置が提案されている。また、特許文献2では、ショットごとにファインアライメントした後、露光を実行する方法が提案されている。これらの特許文献では、1stショットのパターン位置に合わせて2nd以降のショットを打つ場所を特定しているが、実際には一部のアライメントマークを確認し、正常な位置にあれば、残りのショットではアライメントを行わないため、オーバーレイ不良の発生を十分に防止することはできないという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献3では、一ショットごとにアライメントを行う方法が提案されており、またアライメントをダイバイダイアライメント方式で行うことが提案されている。しかしながら、このように一ショットごとにアライメントを行うと操作が煩雑になり、また生産性が低下するという問題があった。
また、これらの特許文献ではオーバーレイ不良の発生原因については特定されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−204115号公報
【特許文献2】特開平11−204419号公報
【特許文献3】特開平11−265844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウエハの形状は主にフラットネスとそりに分けられ、フラットネスは裏面を平らにした場合の表面形状、つまり、厚さむらである。一方、そりは裏面吸着を行わない、フリーの状態での表面形状である。
従来、フォトリソグラフィー工程に用いられるウエハにおいて重要視されていたのはフラットネスであり、これは、露光を行う際にはウエハをステージ上に吸着してそりを修正するため、フラットネスが表面形状になるとされていたからである。
ステッパーにおけるウエハの吸着は通常真空吸着によって行われ、ウエハ1を吸着するステージ2は図6(a)のように真空でウエハを引っ張る溝凹部とウエハを保つ凸部(ピンチャック)3からなり、ウエハ1は平らなピンチャック3に吸着されることで、そりが修正され、裏面形状はピンチャック3と同じように平らになると考えられていた。
【0009】
しかし、実際には、吸着を行っても図6(b)のようにピンチャック3のピッチと同じかそれ以下の周期(幅)のそりを修正することはできないため、ウエハ裏面は完全に平らにはならない。また、吸着によってそりが修正されるのはウエハ裏面とピンチャックが触れる一部分だけであり、その一部の場所はステッパーによって異なる。つまり、ステッパーごとにウエハの形状の修正のされ方が異なるということである。
ステッパーにおけるピンチャックの形状やピッチはメーカーのノウハウであり、メーカーや開発時期によって異なる。さらに、デバイスメーカーはいろいろなステッパーをミックス&マッチで使い分けるため、一つのデバイスを作るためには、何台かの異なるステッパーでフォトリソグラフィー工程を行うことになる。
【0010】
常に裏面が平らにされた状態でフォトリソグラフィー工程が行われるなら、たとえウエハが反っていても、工程ごとに同じようにウエハの形状が修正されるので、パターンの歪みは生じない。しかし、実際には上述のように工程ごとにピンチャックのピッチが異なるステッパーを使う必要があり、またステッパーの違いにより工程ごとにウエハの形状の修正のされ方は異なるため、もともと、直線に作られた配線が歪んでしまったり、ウエハの形状が歪んでしまい、結果としてオーバーレイ不良が発生するという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ウエハを吸着した際にピンチャックのピッチの違いによって生じるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入し、これを用いてウエハのそりを評価する方法を提供することを目的とする。また、この評価方法を用いて、フォトリソグラフィー工程においてオーバーレイ不良が発生しないウエハを選別する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、ウエハのそりを評価する方法であって、
吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定する第1の工程と、前記測定したウエハのそりのデータを用いて、ウエハ面内の任意の点Pを通る直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点間のウエハそり量Aと、同一直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから前記距離aとは異なる距離b離れた点Rと点Rの2点間のウエハそり量Bを求め、前記ウエハそり量A及び前記ウエハそり量Bから前記点Pにおけるウエハそり量の差を算出する第2の工程とを有し、算出した前記ウエハそり量の差からウエハのそりを評価するウエハのそりの評価方法を提供する。
【0013】
このような評価方法であれば、吸着していないフリーの状態のウエハのそりから、ウエハを吸着した際にピンチャックのピッチの違いによって生じるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入し、これを用いてウエハのそりを評価することができる。
【0014】
またこのとき、前記距離a及び前記距離bは0.5〜12.5mmであり、かつ(距離a−距離b)≧5mmであることが好ましい。
このような距離であれば、より一層ウエハのそりやピンチャックのピッチの違いが反映されたウエハそり量の差を算出することができる。
【0015】
またこのとき、前記ウエハそり量は、前記点Pから所定の距離離れた2点におけるウエハ裏面の高さを0としたときの前記点Pにおけるウエハ表面の高さから求めることができる。
【0016】
またこのとき、前記ウエハそり量の差の算出は、少なくともウエハ面内の中心で直角に交わるX軸、Y軸上の複数の任意の点におけるウエハそり量の差を算出することが好ましい。
これにより、より正確にウエハ全面のそりを評価することができる。
【0017】
さらに、本発明では上記のウエハのそりの評価方法で求めたウエハそり量の差と、フォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生の有無との相関関係を求め、該相関関係からオーバーレイ不良の発生しないウエハを選別するウエハの選別方法を提供する。
このような選別方法であれば、フォトリソグラフィー工程においてオーバーレイ不良が発生しないウエハを容易に選別することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のウエハのそりの評価方法であれば、吸着していないフリーの状態のウエハのそりから、ウエハを吸着した際にピンチャックのピッチの違いによって生じるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入し、これを用いてウエハのそりを評価することができる。さらに、本発明の評価方法で求めたウエハそり量の差と、フォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生の有無との相関関係を求めることで、オーバーレイ不良が発生しないウエハを容易に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のウエハのそりの評価方法の一例を示すフロー図である。
図2】本発明のウエハのそりの評価方法におけるピンチャックそりの算出方法の一例を示す説明図である。
図3】本発明のウエハのそりの評価方法におけるピンチャックそりの算出をウエハ全面で行う一例を示す説明図である。
図4-1】本発明の実施例のサンプル1におけるウエハ全体のそりの測定結果を示すグラフである。
図4-2】本発明の実施例のサンプル2におけるウエハ全体のそりの測定結果を示すグラフである。
図4-3】本発明の実施例のサンプル3におけるウエハ全体のそりの測定結果を示すグラフである。
図5-1】本発明の実施例のサンプル1におけるピンチャックそり(20/10と20/5)の算出結果をプロットしたグラフである。
図5-2】本発明の実施例のサンプル2におけるピンチャックそり(20/10と20/5)の算出結果をプロットしたグラフである。
図5-3】本発明の実施例のサンプル3におけるピンチャックそり(20/10と20/5)の算出結果をプロットしたグラフである。
図6】ピンチャックに吸着した際のウエハの形状を示す説明図である。
図7】ピンチャックのピッチとウエハ形状の修正され方の関係を示す説明図である。
図8】ピンチャックのピッチとウエハの伸びの関係を示す説明図である。
図9】ウエハを吸着した際の伸び量Xとウエハのそり量Yとの関係を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、近年、ステッパーを用いたフォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生が問題となっており、オーバーレイ不良の発生の防止が課題となっていた。
【0021】
本発明者は、フォトリソグラフィー工程に用いるウエハの形状に着目し、従来フォトリソグラフィー工程において、ウエハは裏面吸着されることで裏面は平らになると考えられていたが、実際には裏面は完全に平らにはならないことを知見した。
これは、ピンチャックのピッチより長い周期(幅)のウエハそりは吸着によって修正することができるが、ピンチャックのピッチより短い周期のウエハのそりは、吸着によって修正することができないためである。
【0022】
つまり、ピンチャックのピッチが異なるステッパーでフォトリソグラフィー工程を行う場合、そりが修正される箇所と修正されない箇所があるため、図7のようにピンチャック3のピッチによってウエハ1の形状の修正のされ方に違いが出る。即ち、そりの形状によってはパターンが伸び縮みするということである。
【0023】
また例えば図8に示すように、20mmピッチのピンチャック3に吸着することで修正されたウエハ1の形状と、10mmピッチのピンチャック3で吸着することで修正されたウエハ1の形状では、後者の方がより平らになるため、上から見た展開図では面積が広くなってしまい、ウエハ1が変形したのと同じ現象が起こり、これがオーバーレイ不良の発生原因となると考えられる。
【0024】
また、ここで、ウエハのそり量とウエハを吸着した際の伸び量の変化を図9のように想定して、オーバーレイ不良が発生する場合のそり量を計算した。図9中のXは伸び量、Yはそり量を示す。
なお、最新のデバイスチップの最小回路幅は20−10nmといわれており、その線幅、もしくは半分以上の伸び縮みがあれば、オーバーレイ不良となると仮定し、20nm、10nm、5nmの伸びが起きる場合のウエハのそり量を概算した。
(1)吸着なし→ピッチ25mmのピンチャックで吸着を行った場合
伸び量X ウエハのそり量Y
20nm 32μm
10nm 22μm
5nm 16μm
(2)ピッチ25mmのピンチャックからピッチ12.5mmのピンチャックに変えた場合)
伸び量X ウエハのそり量Y
20nm 16μm
10nm 11μm
5nm 7.9μm
(3)ピッチ25mmのピンチャックからピッチ8.3mmのピンチャックに変えた場合
伸び量X ウエハのそり量Y
20nm 13μm
10nm 9.1μm
5nm 6.5μm
(4)ピッチ25mmのピンチャックからピッチ6.25mmのピンチャックに変えた場合
伸び量X ウエハのそり量Y
20nm 7.9μm
10nm 5.6μm
5nm 4.0μm
【0025】
実際には、そりは複雑な形状であるため、ここで求めたそり量よりも小さなそりでもオーバーレイ不良の原因となることが考えられるが、上記計算結果に示されるように、ピッチ25mmの中で数μmの凹凸があれば、5nm以上の伸びが発生し得るため、オーバーレイ不良の原因となり得ると考えられる。
【0026】
以上のことから、本発明者は、ピンチャックのピッチが異なるステッパーを用いてウエハを吸着した際に、ピンチャックのピッチの違いによるそりの修正度合の違いが小さいウエハであれば、オーバーレイ不良が発生しにくいことに想到し、ピンチャックのピッチの違いによるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入することで、オーバーレイ不良と相関するウエハのそりを評価できることを見出して本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、ウエハのそりを評価する方法であって、
吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定する第1の工程と、前記測定したウエハのそりのデータを用いて、ウエハ面内の任意の点Pを通る直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点間のウエハそり量Aと、同一直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから前記距離aとは異なる距離b離れた点Rと点Rの2点間のウエハそり量Bを求め、前記ウエハそり量A及び前記ウエハそり量Bから前記点Pにおけるウエハそり量の差を算出する第2の工程とを有し、算出した前記ウエハそり量の差からウエハのそりを評価するウエハのそりの評価方法である。
【0028】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明のウエハのそりの評価方法の一例を示すフロー図である。
本発明のウエハのそりの評価方法では、まず(I)第1の工程として、吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定する。次に(II)第2の工程として、ウエハ面内の任意の点におけるウエハそり量の差(以下、ピンチャックそりともいう)を算出する。次に、(III)算出したピンチャックそりからウエハのそりを評価する。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0029】
(第1の工程)
本発明のウエハのそりの評価方法の第1の工程では、吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定する(図1(I))。
ウエハとしては、特に限定されないが、例えば一般的にフォトリソグラフィー工程に用いられるシリコン単結晶ウエハであれば、本発明に好適に用いることができる。
また、ウエハのそりの測定は、吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定できる公知の装置・方法を用いて測定すればよい。
【0030】
(第2の工程)
本発明のウエハのそりの評価方法の第2の工程では、上記第1の工程で測定したウエハのそりのデータを用いて、ウエハ面内の任意の点Pを通る直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点間のウエハそり量Aと、同一直線上にあり前記点Pを中心として前記点Pから前記距離aとは異なる距離b離れた点Rと点Rの2点間のウエハそり量Bを求め、前記ウエハそり量A及び前記ウエハそり量Bから前記点Pにおけるウエハそり量の差(ピンチャックそり)を算出する(図1(II))。
【0031】
以下、ピンチャックそりの算出方法について図2を参照しながらさらに詳しく説明する。
まず、ウエハ面内の任意の点Pを通る直線上にあり点Pを中心として点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点間のウエハそり量Aを求める(図2(i)参照)。
【0032】
このとき、ウエハそり量Aは、例えば図2に示されるように点Pから距離a離れた点Qと点Qの2点におけるウエハ裏面の高さを0としたときの点Pにおけるウエハ表面の高さ(図中の矢印)から求めることができる。
なお、点Qと点Qの2点におけるウエハ表面の高さを0としたり、点Pにおけるウエハ裏面の高さからウエハそり量Aを求めてもよく、ウエハそり量Aと後述のウエハそり量Bを同じ基準のもとに算出すればよい。
【0033】
次に、点P、点Q、点Qと同一直線上にあり点Pを中心として点Pから距離aとは異なる距離b離れた点Rと点Rの2点間のウエハそり量Bを求める(図2(i)参照)。
このウエハそり量Bもウエハそり量Aと同様にして求めることができる。
【0034】
次に、上述のようにして求めたウエハそり量A及びウエハそり量Bから、点Pにおけるウエハそり量の差(ピンチャックそり)を算出する(図2(iii)参照)。
これは、ピンチャックそり=(ウエハそり量A)−(ウエハそり量B)として算出すればよい。
【0035】
なお、本明細書中、ピンチャックそりの後にピンチャックのピッチを記載する場合がある。
このとき、点Qと点Qの2点間の距離(2a)と、点Rと点Rの2点間の距離(2b)がピンチャックのピッチに相当するため、「ピンチャックそり2a/2b」と記載する。例えば、距離aを10mm、距離bを5mmとしたときのピンチャックそりは「ピンチャックそり20/10」となる。
【0036】
図2の(i)のように大きな周期でなめらかに形状が変わるピンチャックそりの小さいウエハは、例えば20mmピッチのピンチャックで吸着しても、5mmピッチのピンチャックで吸着しても、表面形状が変わりにくい。従って、たとえウエハ全体のそり値が大きくてもオーバーレイ不良が発生しにくい。一方、図2の(ii)のように短い周期で形状が変わるピンチャックそりが大きいウエハは、ピッチの違いによる表面形状の変化が大きいため、オーバーレイ不良が発生しやすい。
【0037】
距離a及び距離bは0.5〜12.5mmであり、かつ(距離a−距離b)≧5mmであることが好ましい。
これは、現在ステッパー、スキャナーのショット面積の主流である35×25mmに適用できるよう、ピンチャックのピッチが1〜25mmの場合を想定したものであり、もちろん距離a及び距離bはこのような範囲に限定されるものではない。
また、(距離a−距離b)≧5mmとすることで、Q間の距離とR間の距離の差(即ち、ピンチャックのピッチの差)が大きくなるため、より一層ウエハのそりが反映されたピンチャックそりを算出することができる。
【0038】
また、ピンチャックそりの算出は、少なくともウエハ面内の中心で直角に交わるX軸、Y軸上の複数の任意の点におけるピンチャックそりを算出することが好ましい。X軸、Y軸上の複数箇所でピンチャックそりを算出することで、より正確にウエハ全面のそりを評価することができる。また、X軸、Y軸に対して斜め方向の直線上のピンチャックそりを算出してもよい。
【0039】
また、ピンチャックそりの算出をウエハ全面で行えば、さらに正確にウエハ全面のそりを評価することができる。このとき、縦横1〜20mm間隔の直線上のピンチャックそりを算出することが好ましい。図3にウエハ全面で縦横20mm間隔の直線上のピンチャックそりを算出する例を示す。
【0040】
また、同一直線上の複数の箇所でピンチャックそりを算出するときは、例えば1mmの間隔でピンチャックそりを算出すれば、より正確にウエハのそりを評価することができるが、もちろんこの間隔は1mmに限定されず、任意の間隔としてもよい。
【0041】
以下、本発明の評価方法をより具体的に説明する。
1.フリー状態でのウエハのそりを測定する。
2.任意の点のピンチャックそりを求める。
ステッパーにウエハの裏面を吸着させたときのピンチャック間で生じるそり量をウエハを吸着させず1で求めたフリーの状態のそりから求める。
3.X軸、Y軸の任意の点の両隣10mmの点(20mm間隔の場合;即ちa=10mm)の裏面高さを0とした場合、ウエハ形状はそのままだとして任意の点の表面高さ(ウエハそり量)Aを求める。
4.同様に両隣2.5mmの点(5mm間隔の場合;即ちb=2.5mm)の裏面高さを0とした場合の任意の点の表面高さ(ウエハそり量)Bを求める。
5.上記3、4を1mmピッチでX軸、Y軸全域に渡って求める。
6.高さAと高さBの差をその点のピンチャックそり20/5とし、値が大きい場合はピンチャックのピッチが変わった場合の差が大きいということになり、オーバーレイ不良が発生しやすいウエハであると評価することができる。
【0042】
さらに、本発明では上記のウエハのそりの評価方法で求めたピンチャックそりと、フォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生の有無との相関関係を求め、該相関関係からオーバーレイ不良の発生しないウエハを選別するウエハの選別方法を提供する。
このような選別方法であれば、フォトリソグラフィー工程においてオーバーレイ不良が発生しないウエハを容易に選別することができる。
【0043】
以上のように、本発明のウエハのそりの評価方法であれば、吸着していないフリーの状態のウエハのそりから、ウエハを吸着した際にピンチャックのピッチの違いによるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入し、これを用いてウエハのそりを評価することができる。さらに、本発明の評価方法で求めたウエハそり量の差と、フォトリソグラフィー工程におけるオーバーレイ不良の発生の有無との相関関係を求めることで、オーバーレイ不良が発生しないウエハを容易に選別することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[実施例]
直径300mmのシリコンウエハを3サンプル用意し(それぞれサンプル1〜3とする)、コベルコ科研社製 SBW330を用いて、吸着していないフリーの状態のウエハのそりを測定した。なお、ウエハのそりはウエハの中心を通る4線(X軸、Y軸及びX軸、Y軸に対して斜め方向の直線)で測定した。測定結果を図4−1〜3に示す。
【0046】
図4−1に示されるようにサンプル1のウエハ全体のそりは−24〜18μm程度であり、図4−2に示されるようにサンプル2のウエハ全体のそりは−45〜45μm程度であり、図4−3に示されるようにサンプル3のウエハ全体のそりは−18〜15μm程度であった。
【0047】
次に、上述のようにしてウエハのそりを測定したサンプル1〜3に対して、ピンチャックそり20/10とピンチャックそり20/5を算出した。なお、ピンチャックそりはノッチからウエハの中心を通る直線上の端から端までを1mm間隔で計算して求めた。
算出したサンプル1〜3のピンチャックそり20/10とピンチャックそり20/5を図5−1〜3に示す。
【0048】
図5−1に示されるように、サンプル1のピンチャックそり20/10とピンチャックそり20/5は絶対値で0.45μm程度以下であり、図5−2に示されるようにサンプル2のピンチャックそり20/10とピンチャックそり20/5は絶対値で0.50μm程度以下であり、図5−3に示されるようにサンプル3のピンチャックそり20/10とピンチャックそり20/5は絶対値で0.30μm程度以下であった。
【0049】
次に、サンプル1〜3を用いて実際にフォトリソグラフィー工程を行ったところ、サンプル1とサンプル2ではオーバーレイ不良が発生したが、サンプル3ではオーバーレイ不良が発生しなかった。
【0050】
上述のように、サンプル2のウエハ全体のそりはほかの二つのサンプルに比べて大きいものの、サンプル1とサンプル3のウエハ全体のそりは同程度であり、ウエハ全体のそりからオーバーレイ不良を起こさないウエハ(サンプル3)を選別するのは困難であることがわかる。
一方、本発明の評価方法で導入したピンチャックそりを用いた評価方法であれば、上述のようにピンチャックそりの大きいサンプル1、2とピンチャックそりの小さいサンプル3を区別することができるため、容易にオーバーレイ不良を起こさないウエハ(サンプル3)を選別することができる。
【0051】
以上のように、本発明の評価方法であれば、ウエハを吸着した際にピンチャックのピッチの違いによって生じるそりの修正度合の違いを示す新規パラメータを導入することで、オーバーレイ不良と相関するウエハのそりを評価することができるため、求めたウエハそり量の差から、オーバーレイ不良が発生しないウエハを容易に選別することができることが明らかとなった。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1…ウエハ、 2…ステージ、 3…ピンチャック。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
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図8
図9