(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高電圧ケーブルに常温収縮ゴム部材として導電性シリコーンゴムを拡径しながら装着する際に、高電圧ケーブルと拡径した導電性シリコーンゴムとの接触によるカーボンブラックの脱落を効果的に防止できる導電性シリコーンゴム成形品を与える付加硬化型の導電性シリコーンゴム組成物、及びその硬化成形物からなる高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、導電性付加硬化型シリコーンゴム組成物に、シリコーン樹脂質共重合体を特定の配合量で添加した導電性シリコーンゴム組成物が、電気特性、ゴム強度に優れ、かつカーボンブラック脱落防止性の向上した硬化物を与え、該硬化物からなる導電性シリコーンゴム成形品を高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材として拡径しながら、通常、6,600V以上、特には66kV以上の高電圧ケーブルに装着した際、高電圧ケーブルと拡径した導電性シリコーンゴム成形品とが接触しても、カーボンブラックが多量に脱落せず、高電圧ケーブルへのカーボンブラック付着を効果的に防止し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記の高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材に用いる導電性シリコーンゴム組成物、及び該組成物を硬化成形してなる導電性シリコーンゴム成形品からなる高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材を提供する。なお、本発明において、「常温収縮性」とは、常温(25℃±15℃)において、伸長又は拡径後の収縮性(耐永久伸び性)に優れる、ということを意味する。
〔1〕
6,600V以上の高電圧ケーブルの接続部又はその終端部に装着され、該高電圧ケーブルの接続部又はその終端部を保持する高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材用の導電性シリコーンゴム組成物であって、
(A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも平均2個含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)及びSiO
2単位を含有し、SiO
2単位に対するR
3SiO
1/2単位のモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5であり、アルケニル基含有量が1×10
-4〜5×10
-2mol/gである樹脂質共重合体: 1〜20質量部、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも3個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.5〜20質量部、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ: 10〜40質量部、
(E)導電性充填剤としてカーボンブラック: 0.2〜40質量部、
(F)付加反応触媒: 触媒量
、
(G)下記平均組成式(2)
R2bSiO(4-b)/2 (2)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、bは1.5〜2.8の範囲の正数である。)
で示され、一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を平均1個含有するオルガノポリシロキサン:(A)成分の質量に対して20/80〜80/20の比率
を含有してなる高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材に用いる導電性シリコーンゴム組成物。
〔2〕
(A)成分のオルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(1)
R
1aSiO
(4-a)/2 (1)
(式中、R
1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8の範囲の正数である。)
で示されるものである〔1〕記載の導電性シリコーンゴム組成物。
〔3〕
6,600V以上の高電圧ケーブルの接続部又はその終端部に装着され、該高電圧ケーブルの接続部又はその終端部を保持する高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材であって、〔1〕
又は〔2〕記載の導電性シリコーンゴム組成物の硬化成形物を含む高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材。
〔4〕
6,600V以上の高電圧ケーブルの接続部又はその終端部に装着され、該高電圧ケーブルの接続部又はその終端部を保持する高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材であって、〔1〕
又は〔2〕記載の導電性シリコーンゴム組成物の硬化成形物を内層とし、該内層の外周面に導電性成分を含有しない絶縁性シリコーンゴム層を外層として有する高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性シリコーンゴム組成物によれば、該組成物を硬化成形してなる導電性シリコーンゴム成形品を高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材として拡径しながら高電圧ケーブルに装着する際に、高電圧ケーブルと拡径した導電性シリコーンゴムとが接触しても、カーボンブラックの脱落を効果的に防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材に用いる導電性シリコーンゴム組成物は、(A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも平均2個含有するオルガノポリシロキサン、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)及びSiO
2単位を含有し、SiO
2単位に対するR
3SiO
1/2単位のモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5であり、アルケニル基含有量が1×10
-4〜5×10
-2mol/gである樹脂質共重合体、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも3個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ、
(E)カーボンブラック、
(F)付加反応触媒
を含有してなるものである。
【0011】
この場合、上記成分に加え、必要に応じて、任意成分として、
(G)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を平均1個含有するオルガノポリシロキサン
を配合することができる。
【0012】
(A)成分の一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも平均2個含有するオルガノポリシロキサンは、本発明組成物の主剤(ベースポリマー)として作用するものである。このオルガノポリシロキサンとしては、通常、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
R
1aSiO
(4-a)/2 (1)
(式中、R
1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0013】
ここで、上記R
1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。全R
1の90モル%以上がメチル基であること、特には、アルケニル基以外の全てのR
1がメチル基であることが好ましい。また、R
1のうち、少なくとも2個(通常、2〜50個)、特には2〜20個程度はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要である。なお、このアルケニル基は、全R
1基に対して0.05〜20モル%、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.1〜5モル%程度とすることができる。
【0014】
なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中5×10
-6〜5×10
-3mol/g、特に1×10
-5〜1×10
-3mol/gとすることが好ましい。アルケニル基の量が5×10
-6mol/gより少ないと得られる硬化物のゴム硬度が低く、十分なシール性が得られなくなってしまうおそれがある。5×10
-3mol/gより多いと得られる硬化物の架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。
このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中(非末端)の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0015】
このオルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R
12SiO
2/2)(R
1は上記と同様)の繰返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的であるが、部分的には少量の分岐単位(R
1SiO
3/2)(R
1は上記と同様)を含有する分岐鎖状の構造や環状構造などであってもよい。
【0016】
本発明においては、上記(A)成分の一分子中にアルケニル基を平均2個以上有するオルガノポリシロキサンに加えて、必要に応じて任意成分として、(G)一分子中にアルケニル基を平均1個有するオルガノポリシロキサンを併用することができる。この(G)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが挙げられる。
R
2bSiO
(4-b)/2 (2)
(式中、R
2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、bは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
この場合、R
2としてはR
1と同様のものが挙げられるが、一分子中に含まれるビニル基等のアルケニル基は平均1個である。bは上記の通りであるが、直鎖状のものが好ましいことから、b=1.95〜2.05が特に好ましい。
【0017】
このような(G)成分の一分子中に平均1個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば分子鎖片末端がジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖され、他方の末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された主鎖がジオルガノシロキサン単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン(この場合のオルガノ基は、上記R
2において、アルケニル基以外の非置換又は置換1価格炭化水素基を意味する)などが挙げられる。このような一分子中にアルケニル基を1個だけ含有するオルガノポリシロキサンを、(A)成分と併用して配合することが、硬化したシリコーンゴムの常温収縮性や耐カーボン脱落性等の点から望ましい。(A),(G)成分を併用する場合の配合比率(質量比)は、(A)成分:(G)成分が80:20〜20:80、特に、75:25〜50:50程度であることが好ましい。
【0018】
なお、(A)成分のオルガノポリシロキサン及び(G)成分のオルガノポリシロキサンのいずれにおいても、分子量については、平均重合度が1,500以下、通常100〜1,500であることが好ましく、より好ましくは150〜1,000である。100未満では、十分なゴム感が得られない場合があり、1,500より高いと粘度が高くなり、成形が困難になってしまう場合がある。なお、本発明において、重合度(又は分子量)は、通常、トルエン等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度(又は重量平均分子量)として求めることができる。
【0019】
(B)成分の樹脂質共重合体(いわゆる、シリコーンレジン)は、R
3SiO
1/2単位(1官能性シロキシ単位)及びSiO
2単位(4官能性シロキサン単位)を主成分とする、本質的に三次元樹脂状(レジン状)の成分である。
【0020】
ここで、Rは、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましい。Rで示される一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0021】
(B)成分の樹脂質共重合体は、上記R
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位のみからなるものであってもよく、また必要に応じ、R
2SiO
2/2単位(2官能性シロキサン単位)及び/又はRSiO
3/2単位(3官能性シロキサン単位、なお、Rは上記の通り)をこれらの合計量として、全共重合体質量に対し、50質量%以下(0〜50質量%)、好ましくは40質量%以下(0〜40質量%)、より好ましくは20質量%以下(0〜20質量%)の範囲で含んでいてもよい。必須の構成単位であるR
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]は、0.5〜1.5、特に0.5〜1.3である必要がある。このモル比が0.5より小さいと耐酸性が低下してしまい、1.5より大きいと相溶性が低下し、配合が困難になってしまう。
【0022】
更に、(B)成分の樹脂質共重合体は、1×10
-4〜5×10
-2mol/g、特に2×10
-4〜3×10
-3mol/gのビニル基等のアルケニル基を含有することが必要である。アルケニル基含有量が5×10
-2mol/gより多いと得られるゴムが固くて脆くなり、1×10
-4mol/gより少ないと得られるゴムの補強性が得られない。
【0023】
なお、上記樹脂質共重合体は、通常、目的とするシロキサン単位を含有するクロロシランやアルコキシシランを適当な組合せで当該技術分野における周知の方法によって(共)加水分解することによって製造することができる。
【0024】
これら樹脂質共重合体の配合量は、(A)成分100質量部に対し、1〜20質量部であり、1〜15質量部であることが好ましい。1質量部未満では硬化後のシリコーンゴムにおいてカーボン脱落の防止効果がなく、20質量部を超えると得られる硬化物のゴム強度への悪影響がある。
【0025】
(C)成分は、一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。分子中のSiH基が前記(A)成分及び(B)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤(架橋剤)として作用するものである。この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)
R
3cH
dSiO
(4-c-d)/2 (3)
(式中、R
3は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、cは0.7〜2.1、dは0.001〜1.0、かつc+d=0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に少なくとも3個(通常、3〜300個)、好ましくは3〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
【0026】
ここで、上記式(3)中、R
3の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前述のR
1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましい。また、cは好ましくは0.8〜2.0、dは好ましくは0.01〜1.0、c+dは好ましくは1.0〜2.5である。
【0027】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよい。一分子中の珪素原子の数又は重合度が2〜300(個)、特に4〜150(個)程度の室温(25℃)で液状(通常、25℃で1,000mPa・s以下、好ましくは0.1〜500mPa・s程度)のものが好適に用いられる。ここで、この粘度値は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)による値である。
【0028】
なお、珪素原子に結合する水素原子は、分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0029】
上記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)
3SiO
1/2単位とからなる共重合体や、上記の例示化合物において、メチル基の一部又は全部が他のアルキル基やフェニル基等で置換されたものなどが挙げられる。
【0030】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは0.6〜15質量部である。また、組成物全体中に含まれる珪素原子結合アルケニル基の合計に対する(C)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)のモル比、特には(A)成分、(G)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計に対する(C)成分中の珪素原子と結合する水素原子(SiH基)とのモル比が、珪素原子と結合する水素原子(SiH基)/アルケニル基=0.8〜3.0、特に1.0〜2.5になるように(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合することが好ましい。(C)成分の配合量(質量)が少なすぎる場合、あるいはこの比が0.8より小さい場合には、得られる硬化物において十分なゴム硬度が得られず、(C)成分の配合量(質量)が多すぎる場合、あるいはこの比が3.0より大きい場合には、得られるゴムの耐永久伸び性が悪くなり(永久伸びが大きくなり)、拡径保持部材を除去後のゴム成形品の形状が変形してしまう。
【0031】
(D)成分のヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)は、得られるシリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須なものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、50〜400m
2/g、好ましくは150〜350m
2/gで、50m
2/gより小さいと得られる硬化物のゴム強度が悪くなり、また400m
2/gより大きいと得られるゴムの永久伸びが大きくなって(即ち、耐永久伸び性が悪くなって)しまう。
【0032】
(D)成分のヒュームドシリカは、そのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で予め処理したものを使用したり、あるいはシリコーンオイルとの混練時に表面処理剤を添加して処理したりすることにより使用することが好ましい。これら表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど、公知の表面処理剤を1種で用いてもよく、また2種以上を同時又は異なるタイミングで用いても構わない。
【0033】
また、ヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し、10〜40質量部であり、15〜35質量部であることが好ましい。配合量が10質量部より少ないと得られる硬化物において十分なゴム強度が得られず、また40質量部を超える量では、得られるゴムの永久伸びが大きくなり(即ち、耐永久伸び性が悪くなり)、拡径保持部材を除去後のゴム成形品の形状が変化してしまう。
【0034】
(E)成分のカーボンブラックは、通常その製造方法によって、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別し得る。本発明においてはファーネスブラックが好ましい。
【0035】
(E)成分のカーボンブラックの添加量は、(A)成分100質量部に対して0.2〜40質量部であり、好ましくは1〜40質量部であり、より好ましくは2〜35質量部である。0.2質量部に満たないと、高電圧ケーブルによる誘電緩和を目的とした導電性の付与(即ち、低体積抵抗率)に効果がなく、40質量部を超えると組成物の流動性が損なわれる。
【0036】
(F)成分の付加反応触媒は、(A)成分又は(A),(G)及び(B)成分中の珪素原子結合アルケニル基と(C)成分中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)とをヒドロシリル化付加反応させるための触媒である。この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒等が挙げられるが、特に白金系触媒が好ましい。
【0037】
この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、(A)成分及び(B)成分、又は(A),(G)及び(B)成分の合計に対し、白金族金属の質量換算で、0.5〜500ppm、特に1〜100ppm程度とすることができる。
【0038】
これら(A)〜(F)成分又は(A)〜(G)成分を含有してなる本発明の導電性シリコーンゴム組成物において、当該組成物を実用に供するため硬化時間(可使時間)の調整を行う必要がある場合には、ヒドロシリル化付加反応の反応制御剤(反応抑制剤)として、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどのようなビニル基高含有の低分子環状シロキサンオリゴマー、トリアリルイソシアヌレート、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類やそのシラン又はシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、及びそれらの混合物からなる群から選んだ化合物などを使用しても差し支えない。
【0039】
更に、必要に応じて、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー等の無機顔料、有機染料などの着色剤、酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、酸化チタン、酸化鉄等の耐熱性、難燃性向上剤や、シリコーンゴム組成物の粘度調整や硬化後のシリコーンゴムの硬度調整等を目的として、分子中に平均2個未満(通常1個)のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン等の添加も可能である。
【0040】
本発明においては、圧縮成形、注入成形、射出成形、トランスファー成形などの成形方法で本発明の導電性シリコーンゴム組成物を加熱硬化(成形)させることにより、高電圧ケーブルの接続部又はその終端部に装着され、該高電圧ケーブルの接続部又はその終端部を保持する高電圧ケーブル用の常温収縮ゴム部材として用いる導電性シリコーンゴム硬化物を得ることができる。なお、導電性シリコーンゴム組成物の硬化条件としては、温度100〜200℃で30秒〜30分間の範囲が好ましい。
【0041】
なお、高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材としては、上記導電性シリコーンゴム組成物の硬化成形物を内層とし、該内層の外周面に絶縁性シリコーンゴム層を外層として有するものが好ましい。
ここで、外層として有する絶縁性シリコーンゴム層としては、導電性成分を含有しない従来公知の絶縁性付加硬化型シリコーンゴム組成物を使用する。
本発明に係る導電性シリコーンゴム組成物の成形方法及び本発明の常温収縮ゴム部材への高電圧ケーブルの装着方法の一例を示すと、始めに、金型内に丸棒状の中子をセットし、金型を閉じて、本発明の導電性シリコーンゴム組成物を注入する。加熱硬化し、中子と硬化した導電性シリコーンゴムとの一体ゴム成形品を取り出す。更に、別の金型に上記一体ゴム成形品をセットし、金型を閉じて、一体ゴム成形品の導電性シリコーンゴムの外側に導電性成分を含有しない絶縁性付加硬化型シリコーンゴム組成物を注入する。加熱硬化し、中子と導電性シリコーンゴムの外層に絶縁性シリコーンゴムを形成した一体ゴム成形品を取り出す。中子を引き抜き、一体ゴム成形品を拡径し、樹脂製のスパイラルコアを挿入し、そのゴム成形品を保管し、電線装着時に、樹脂製のスパイラルコアに電線を挿入して、スパイラルコアを取り出し、ゴム成形品を電線に装着する。
【0042】
また、高電圧ケーブル用常温収縮ゴム部材の厚さとしては、2〜40mm、特に4〜35mmであることが好ましい。具体的には、内層の厚さとしては、0.1〜10mm、特に2〜8mm程度であることが好ましく、また外層の厚さとしては、2〜30mm、特に2〜25mm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の%はいずれも質量%である。また、重合度はトルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度である。
【0044】
[実施例1]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.000053mol/g)75質量部、比表面積が300m
2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)25質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.2質量部、水2.0質量部を室温(25℃)で30分混合後、150℃に昇温し、3時間攪拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100質量部に、平均で分子鎖の片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、他方の末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖された平均重合度が220である分子中にビニル基を平均1個有するジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.000063mol/g)22質量部、カーボンブラックEnsaco260G(TIMCAL社製)16質量部を入れ、30分攪拌を続けた後、3本ロールに1回通した。これに、(CH
3)
3SiO
1/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位及びSiO
2単位からなる三次元樹脂質共重合体(ビニル基含有量=0.00086mol/g)2.5質量部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=0.000037mol/g)2.5質量部、平均で分子鎖の片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、他方の末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖された平均重合度が220である分子中にビニル基を平均1個有するジメチルポリシロキサン3質量部、更に架橋剤として分子鎖両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度16、SiH基量0.0031mol/gの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)を0.3質量部と分子鎖両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度18、SiH基量0.0053mol/gの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)を1.7質量部[SiH基/アルケニル基=1.2]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部を添加し、15分攪拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.2質量部を均一に混合して最終的な導電性シリコーンゴム組成物を調製し、120℃で10分のプレスキュア後、オーブン内にて200℃で4時間のポストキュアを行なって、幅20mm×長さ100mm×厚み2mmの直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を得た。この直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を白紙に押し付け、一方向にゴム硬化物を摺動し、この摺動試験を5回繰り返し、白紙上のゴム跡を目視で観察した。その結果を表1に記した。
【0045】
[実施例2]
実施例1において、カーボンブラックEnsaco260G(TIMCAL社製)16質量部をデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)24質量部に変更した以外は同様にして、導電性シリコーンゴム組成物を調製した。この導電性シリコーンゴム組成物を、120℃で10分のプレスキュア後、オーブン内にて200℃で4時間のポストキュアを行なって、幅20mm×長さ100mm×厚み2mmの直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を得た。この直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を白紙に押し付け、一方向にゴム硬化物を摺動し、この摺動試験を5回繰り返し、白紙上のゴム跡を目視で観察した。その結果を表1に記した。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、(CH
3)
3SiO
1/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位及びSiO
2単位からなる三次元樹脂質共重合体(ビニル基含有量=0.00086mol/g)2.5質量部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性シリコーンゴム組成物を調製した。この導電性シリコーンゴム組成物を、120℃で10分のプレスキュア後、オーブン内にて200℃で4時間のポストキュアを行なって、幅20mm×長さ100mm×厚み2mmの直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を得た。この直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を白紙に押し付け、一方向にゴム硬化物を摺動し、この摺動試験を5回繰り返し、白紙上のゴム跡を目視で観察した。その結果を表1に記した。
【0047】
[比較例2]
実施例2において、(CH
3)
3SiO
1/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位及びSiO
2単位からなる三次元樹脂質共重合体(ビニル基含有量=0.00086mol/g)2.5質量部を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、導電性シリコーンゴム組成物を調製した。この導電性シリコーンゴム組成物を、120℃で10分のプレスキュア後、オーブン内にて200℃で4時間のポストキュアを行なって、幅20mm×長さ100mm×厚み2mmの直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を得た。この直方体形状の導電性シリコーンゴム硬化物を白紙に押し付け、一方向にゴム硬化物を摺動し、この摺動試験を5回繰り返し、白紙上のゴム跡を目視で観察した。その結果を表1に記した。
【0048】
【表1】