(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記単量体(a)に基づく単位を40〜90質量%、下記単量体(b)に基づく単位を2〜20質量%、下記単量体(c)に基づく単位を2〜20質量%、下記単量体(d)に基づく単位を2〜20質量%、および下記単量体(e)に基づく単位を0.1〜10質量%有し、
前記単量体(a)に基づく単位に対する、下記単量体(f)に基づく単位の割合が10質量ppm以下である含フッ素共重合体。
単量体(a):F(CF2)6CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2。
単量体(b):塩化ビニル。
単量体(c):塩化ビニリデン。
単量体(d):炭素数12〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート。
単量体(e):フルオロアルキル基を有さず、架橋し得る官能基を有する単量体。
単量体(f):F(CF2)nCH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2。(ただし、nは1〜5の整数である。)
前記含フッ素共重合体における単量体(b)に基づく単位と前記単量体(c)に基づく単位との質量比[単量体(b)に基づく単位/単量体(c)に基づく単位]が10/90〜90/10である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
前記単量体(e)が、架橋し得る官能基を有する(メタ)アクリレート類、架橋し得る官能基を有するアクリルアミド類、架橋し得る官能基を有するビニルエーテル類または架橋し得る官能基を有するビニルエステル類である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
前記単量体(e)の前記架橋し得る官能基が、水酸基、ブロックドイソシアネート基、N−ヒドロキシメチルアミド基またはアミノ基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
前記単量体(e)が、ブロックドイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類、水酸基を有する(メタ)アクリレート類またはN−メチロールアクリルアミド類である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミド等も同様とする。また、単量体は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。また、R
f基は、アルキル基の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換された基である。また、R
F基は、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基である。
本明細書における重合体を構成する、単量体に由来する部分を、「単量体に基づく単位」または「単量体単位」と記す。
【0013】
<含フッ素共重合体>
本発明の含フッ素共重合体は、後述する単量体(a)に基づく単位(以下、「単位(A)」と記し、他の単位についても同様に記す。)、単量体(b)に基づく単位である単位(B)、単量体(c)に基づく単位である単位(C)、単量体(d)に基づく単位である単位(D)、および単量体(e)に基づく単位である単位(E)を特定の比率で有し、かつ単位(A)に対して単量体(f)に基づく単位である単位(F)が特定の比率以下である含フッ素共重合体である。
本発明の含フッ素共重合体は、後述する単量体(g)に基づく単位である単位(G)を有していてもよい。
【0014】
[単量体(a)]
単量体(a)は、F(CF
2)
6CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2(C6FMA)である。
本発明の含フッ素共重合体が単位(A)を有することにより、物品に撥水性を付与できる。
【0015】
[単量体(b)]
単量体(b)は、塩化ビニルである。
本発明の含フッ素共重合体が単位(B)を有することにより、物品に優れた撥水性を付与できる。そのため、本発明の含フッ素共重合体を使用して表面処理した物品は、処理された表面から水が染み込みにくく、表面に付着した水が良好にはじかれて動きやすくなる。
【0016】
[単量体(c)]
単量体(c)は、塩化ビニリデンである。
本発明の含フッ素共重合体が単位(C)を有することにより、物品(布帛等。)に対する含フッ素共重合体の親和性、造膜性が向上する。そのため、撥水剤組成物に浸漬した後の物品を風乾した場合であっても、布帛における繊維間のように含フッ素共重合体による皮膜が形成されにくい部分にも含フッ素共重合体が隅々まで浸透し、含フッ素共重合体による均一で理想的な皮膜を形成できる。その結果、物品表面に優れた撥水性を付与でき、水が染み込みにくく、付着した水が良好にはじかれて動きやすい表面を有する物品が得られる。また、単位(C)を有することにより、洗濯耐久性に優れた皮膜を形成できる。
【0017】
[単量体(d)]
単量体(d)は、炭素数12〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。
本発明の含フッ素共重合体が単位(D)を有することにより、撥水性を向上させるとともに物品表面に動的撥水性を付与できる。
単量体(d)におけるアルキル基の炭素数は、撥水性および動的撥水性の点から、18〜30が好ましく、22〜30がより好ましい。
【0018】
単量体(d)としては、たとえば、セチルメタクリレート、セチルアクリート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、ベヘニルアクリレート等が挙げられる。なかでも、撥水性および動的撥水性の点から、ベヘニルメタクリレート、ベヘニルアクリレートが好ましい。
【0019】
[単量体(e)]
単量体(e)は、R
f基を有さず、架橋し得る官能基を有する単量体である。
本発明の含フッ素共重合体が単位(E)を有することにより、撥水性を向上させるとともに物品に動的撥水性を付与できる。
【0020】
架橋し得る官能基としては、共有結合、イオン結合および水素結合から選ばれる少なくとも1つの結合を形成し得る官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成し得る官能基が好ましい。また、分子内に活性な有機基、水素、ハロゲン等の元素を有する基であってもよい。
架橋し得る官能基としては、水酸基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、N−ヒドロキシメチルアミド基、N−アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボキシ基、アルケニル基およびスルホ基が好ましく、水酸基、ブロックドイソシアネート基、N−ヒドロキシメチルアミド基およびアミノ基が特に好ましい。
【0021】
単量体(e)としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が好ましい。
単量体(e)としては、たとえば、下記の化合物が挙げられる。
【0022】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート類。
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類。
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体等のブロックドイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類。
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレート類。
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート類。
(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のアンモニウム基を有する(メタ)アクリレート類。
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート類。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート類。
アリル(メタ)アクリレート等のアルケニル基を有する(メタ)アクリレート類。
【0023】
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等のアミド基を有する(メタ)アクリルアミド類。
N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシメチルアミド基を有するアクリルアミド類。
(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のアンモニウム基を有するアクリルアミド類。
t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸等のスルホ基を有するアクリルアミド類。
N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシメチルアミド基を有するアクリルアミド類。
【0024】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、ヘキサメチレングリコールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル等の水酸基を有するビニルエーテル類。
グリシジルビニルエーテル等のエポキシ基を有するビニルエーテル類。
2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル等のアミノ基を有するビニルエーテル類。
アリルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等のアルケニル基を有するビニルエーテル類。
クロトン酸アルキルエステル等のアルケニル基を有するビニルエステル類。
マレイン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、シトラコン酸アルキルエステル、メサコン酸アルキルエステル等のカルボキシ基を有するビニルエステル類。
【0025】
トリ(メタ)アリルイソシアヌレート(TAIC、TMAIC、日本化成社製)、トリアリルシアヌレート(TAC、日本化成社製)、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(商品名「AT−600」、共栄社化学社製)、3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(商品名「テックコートHE−6P」、京絹化成社製)。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル(商品名「プラクセル」のFA、FMシリーズ ダイセル化学工業社製)。
(メタ)アクリル酸、2−クロロエチルビニルエーテル、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−ビニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等。
【0026】
単量体(e)としては、撥水性および動的撥水性の点から、ブロックドイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類、水酸基を有する(メタ)アクリレート類、N−ヒドロキシメチルアミド基を有するアクリルアミド類がより好ましく、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが特に好ましい。
【0027】
[単量体(f)]
単量体(f)は、F(CF
2)
nCH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2。(ただし、nは1〜5の整数である。)である。
【0028】
[単量体(g)]
単量体(g)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)、単量体(e)および単量体(f)以外の単量体である。
単量体(g)としては、たとえば、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、スチレン、ベンジルメタアクレリート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。単量体(g)としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0029】
単位(A)の割合は、撥水性および動的撥水性の点から、全ての単量体単位(100質量%)のうち、40〜90質量%であり、60〜80質量%が好ましく、65〜75質量%がより好ましい。
単位(B)の割合は、撥水性および動的撥水性の点から、全ての単量体単位(100質量%)のうち、2〜20質量%であり、5〜15質量%が好ましく、8〜13質量%がより好ましい。
単位(C)の割合は、撥水性および動的撥水性の点から、全ての単量体単位(100質量%)のうち、2〜20質量%であり、5〜15質量%が好ましく、8〜13質量%がより好ましい。
単位(D)の割合は、撥水性および動的撥水性の点から、全ての単量体単位(100質量%)のうち、2〜20質量%であり、5〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
単位(E)の割合は、撥水性および動的撥水性の点から、全ての単量体単位(100質量%)のうち、0.1〜10質量%であり、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0030】
単位(F)の割合は、優れた撥水性が得られる点から、単位(A)に対して、10質量ppm以下であり、6質量ppm以下が好ましく、2質量ppm以下がより好ましい。
単位(G)の割合は、全ての単量体単位(100質量%)のうち、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜5質量%が特に好ましい。
【0031】
単位(B)と単位(C)との質量比(B)/(C)は、優れた撥水性が得られる点から、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40が特に好ましい。
【0032】
含フッ素共重合体における単量体単位の割合は、NMR分析および元素分析から求める。なお、NMR分析および元素分析から求められない場合は、含フッ素共重合体の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出してもよい。
【0033】
本発明の含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、撥水性および動的撥水性の点から、20000以上が好ましく、30000以上が特に好ましい。また、本発明の含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、造膜性、保存安定性の点から、80000以下が好ましく、60000以下が特に好ましい。
本発明の含フッ素共重合体の数平均分子量(Mn)は、3000以上が好ましく、5000以上が特に好ましい。また、本発明の含フッ素共重合体の数平均分子量(Mn)は、10000以下が好ましく、8000以下が特に好ましい。
含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される、ポリスチレン換算の分子量であり、具体的には、下記の方法で測定する。
【0034】
含フッ素共重合体をテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)に溶解させ、0.5質量%の溶液とし、0.2μm、0.45μmのフィルタに通し、分析サンプルとする。該分析サンプルについて、数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を下記条件にて測定する。下記条件において2種類の記載がある場合は、最初に記載された条件が0.2μmのフィルタに通した分析サンプルの測定条件、2番目に記載された条件が0.45μmのフィルタに通した分析サンプルの測定条件を意味する。
測定温度:23℃、40℃、
注入量:0.2mL、40μL、
流出速度:1mL/分、0.35mL/分、
溶離液:THF。
【0035】
本発明の含フッ素共重合体は、単位(A)〜(E)を特定の比率で有し、単位(F)の含有量が特定の比率以下であるため、優れた撥水性が得られ、表面処理した物品において水滴がはじかれて動きやすくなる。
前記効果が得られる要因としては、単位(F)の含有比率が低いことが特に影響していると考えられる。単量体(a)は、通常、CF
3CF
2IおよびCF
3(CF
2)
3Iからなる群から選ばれる少なくとも1種とテトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と記す。)のテロメル化反応により得たCF
3(CF
2)
5Iにエチレンを付加し、さらにメタクリル酸化合物と反応させる方法で製造される。前記テロメル化反応では、目的のCF
3(CF
2)
5Iと共にCF
3(CF
2)
3Iが副生する。また、未反応のCF
3CF
2IおよびCF
3(CF
2)
3Iが残存することもある。そのため、最終的に得られる反応液には単量体(a)と共に単量体(f)が副生物として含まれる。本発明では、製造した単量体(a)から単量体(f)が充分に取り除かれ、含フッ素共重合体に含まれる単位(F)の量が低減されることで、単位(A)のR
F基による効果が良好に発現され、優れた撥水性が得られると考えられる。
また、必ずしも明らかではないが、単量体(b)と単量体(c)は単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が大きく異なり、それらの重合速度にずれがあることも、優れた撥水性が得られる要因になっていることも考えられる。すなわち、単量体(a)および単量体(c)は単量体(b)に比べ重合速度が速く、単量体(a)に由来する優れた撥水性とTgが低い単量体(c)による優れた造膜性を発現させる部位と、重合速度が遅い単量体(b)に由来する接着性、靭性を発現させる部位とが、共重合体内で分布を有するため、優れた撥水性が得られると考えられる。
【0036】
また、本発明の含フッ素共重合体は、炭素数7以上のR
F基を有する単量体に基づく単位を有しないため、環境への影響が指摘されている、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびその前駆体、類縁体の含有量(固形分濃度20質量%とした場合の含有量)を国際公開第2009/081822号に記載の方法によるLC−MS/MSの分析値として検出限界以下にでき、環境負荷が小さい。
また、本発明の含フッ素共重合体は、エマルションとして保存する際のpHの低下、および着色も抑制される。
【0037】
<含フッ素共重合体の製造方法>
本発明の含フッ素共重合体の製造方法は、下記工程(I)および下記工程(II)を有する。(I)CF
3CF
2IおよびCF
3(CF
2)
3Iからなる群から選ばれる少なくとも1種とTFEのテロメル化反応により得たCF
3(CF
2)
5Iにエチレンを付加し、さらにメタクリル酸化合物と反応させて単量体(a)を含む反応液を得た後、蒸留により該反応液中の単量体(a)に対する単量体(f)の割合を10質量ppm以下にする工程。(II)重合開始剤の存在下、水性媒体中にて、前記工程(I)で得られた単量体(a)を40〜90質量%、単量体(b)を2〜20質量%、単量体(c)を2〜20質量%、単量体(d)を2〜20質量%、および単量体(e)を0.1〜10質量%含む単量体混合物を重合して含フッ素共重合体とする工程。
【0038】
[工程(I)]
たとえば、特許第4802544号公報に記載の方法により、CF
3CF
2IおよびCF
3(CF
2)
3Iからなる群から選ばれる少なくとも1種とTFEのテロメル化反応を行い、CF
3(CF
2)
5Iを得る。該方法によれば、テロマーの鎖長を高度に制御して、CF
3(CF
2)
5Iを製造できる。
具体的には、CF
3CF
2IおよびCF
3(CF
2)
3Iからなる群から選ばれる少なくとも1種のペルフルオロアルキルアイオダイドとTFEのモル比が20/1〜200/1である均質な液状混合物を、管型反応器に下方から供給し、ラジカル開始剤の存在下、反応系が気液分離しない条件にて液相状態を保持しつつ滞留時間5分以上で上方に移動させ、前記管型反応器内のテロメル化反応で前記TFEを消費させた後に反応器上部よりCF
3(CF
2)
5Iを得る。
【0039】
前記ペルフルオロアルキルアイオダイドとTFEのモル比は、10/1〜200/1が好ましい。
反応温度は、0〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。
ラジカル開始剤としては、テロメル化反応を液相で実施し得るものであればよく、反応温度に応じて汎用の有機過酸化物、アゾ化合物等を使用できる。
【0040】
次に、得られたCF
3(CF
2)
5Iにエチレンを付加反応させ、CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2Iを得る。エチレンの付加反応の条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。
反応温度は、30〜250℃が好ましく、50〜220℃がより好ましい。
反応圧力は、1MPa以下が好ましく、0.2〜0.4MPaがより好ましい。
エチレンの付加反応は、ラジカルを発生させる触媒の存在下で行ってもよい。ラジカルを発生させる触媒としては、アゾ化合物、有機過酸化物、金属触媒、金属塩触媒等が挙げられる。
【0041】
次に、得られたCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2Iとメタクリル酸化合物とをエステル化反応させ、単量体(a)を得る。エステル化反応の条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。
メタクリル酸化合物としては、たとえば、メタクリル酸の金属塩が挙げられる。メタクリル酸の金属塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩が挙げられる。
反応温度は、160〜220℃が好ましく、70〜190℃がより好ましい。
反応溶媒としては、たとえば、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0042】
前記エステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。
重合禁止剤としては、たとえば、ハイドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、クレゾール、tert−ブチルカテコール、ジフェニルアミン、p−フェニレンジアミン類、N−オキシル化合物等が挙げられる。
【0043】
前記テロメル化反応では、目的のCF
3(CF
2)
5I以外にCF
3(CF
2)
3I等が副生するため、エステル化反応後の反応液には単量体(a)に加えて単量体(f)等の不純物が存在する。そのため、エステル化反応後に蒸留によって精製し、単量体(a)に対する単量体(f)の割合を10質量ppm以下にする。
具体的には、以下の工程を有する2段階の蒸留精製によって蒸留することが好ましい。(i−1)反応液から固液分離により金属ヨウ化物を取り除き、単量体(a)および単量体(f)を含む粗液を得る工程。(i−2)該粗液を蒸留して、単量体(a)よりも低沸点の化合物群(L)と、単量体(a)および単量体(a)よりも高沸点の化合物群(H)とに分離する工程。(i−3)化合物群(H)を蒸留して単量体(a)を単量体(a)よりも高沸点の化合物から分離する工程。
単量体(f)は、工程(i−2)において、化合物群(L)として単量体(a)を含む化合物群(H)から分離される。
【0044】
工程(i−1)における固液分離の方法としては、濾過法または遠心分離法が好ましい。分離するときの温度は、20〜60℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。
【0045】
工程(i−2)では、粗液を蒸留塔に導入し、化合物群(L)を留出液、化合物群(H)を缶出液として分離する。蒸留は、重合反応が起きることを抑制するため、できるだけ低温で行うことが好ましい。
工程(i−2)の蒸留は減圧下で行うことが好ましい。工程(i−2)における減圧度は、6.67×10
3〜66.7×10
3Paが好ましく、26.7×10
3〜40.0×10
3Paがより好ましい。
【0046】
また、蒸留中に重合反応が起こることを抑制するため、酸素ガスを含有する酸素含有ガスを供給しながら蒸留を行うことが好ましい。
また、重合禁止剤の存在下で蒸留を行ってもよい。重合禁止剤としては、たとえば、エステル化反応で挙げたものと同じものが挙げられる。重合禁止剤の使用量は、単量体(a)の1モルに対して、0.001〜0.05モルが好ましく、0.01〜0.03モルがより好ましい。
【0047】
工程(i−3)では、化合物群(H)を蒸留塔に導入し、単量体(a)を留出液として取り出す。蒸留は、重合反応が起きることを抑制するため、できるだけ低温で行うことが好ましい。
工程(i−3)の蒸留は減圧下で行うことが好ましい。工程(i−3)における減圧度は、0.13×10
3〜3.33×10
3Paが好ましく、0.13×10
3〜1.33×10
3Paがより好ましい。
【0048】
また、蒸留中に重合反応が起こることを抑制するため、酸素ガスを含有する酸素含有ガスを供給しながら蒸留を行うことが好ましい。
また、重合禁止剤の存在下で蒸留を行ってもよい。重合禁止剤としては、たとえば、エステル化反応で挙げたものと同じものが挙げられる。重合禁止剤の使用量は、単量体(a)の1モルに対して、0.001〜0.05モルが好ましく、0.01〜0.03モルがより好ましい。
【0049】
[工程(II)]
工程(I)の精製後の単量体(a)を含む留出液を使用し、重合開始剤の存在下、水および必要に応じて他の液状媒体を含む水性媒体中にて、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)および単量体(e)を含み、必要に応じて単量体(g)を含む単量体混合物を重合して含フッ素共重合体とする。工程(I)の精製後の単量体(a)を含む留出液においては、単量体(f)の含有量が単量体(a)に対して10質量ppm以下となっているので、得られる含フッ素共重合体における単位(A)に対する単位(F)の割合は10質量ppm以下となる。
留出液中の単量体(a)と単量体(f)の濃度は、ガスクロマトグラフ分析により測定される。
【0050】
重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、乳化重合が好ましい。また、重合法は、一括重合であってもよく、多段重合であってもよい。
含フッ素共重合体の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体および水性媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体および水性媒体からなる混合物を、超音波撹拌装置、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0051】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤を、重合温度に応じて使用できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が好ましく、水性媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。
アゾ系化合物およびアゾ系化合物の塩としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]酢酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩が挙げられる。
【0052】
重合開始剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
重合温度は40〜70℃が好ましい。
【0053】
単量体混合物の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。
分子量調整剤としては、メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、チオグリセロール、α−メチルスチレンダイマ(CH
2=C(Ph)CH
2C(CH
3)
2Ph、Phはフェニル基である。)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、2,4,6−トリメルカプトトリアジン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等の多官能メルカプト化合物等が挙げられる。
分子量調整剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0〜5質量部が好ましく、0〜2質量部がより好ましい。
【0054】
単量体混合物中の単量体(a)〜(e)の割合は、単量体がほぼ100%で重合することから、前記単位(A)〜(E)の割合と同じであり、好ましい態様も同じである。
また、重合は、界面活性剤の存在下に行ってもよい。
【0055】
乳化重合直後のエマルションの固形分濃度は、エマルション(100質量%)のうち、20〜40質量%が好ましい。なお、該固形分濃度は、含フッ素共重合体の他、界面活性剤も含む濃度である。乳化重合直後のエマルション(100質量%)における含フッ素共重合体の割合は、18〜40質量%が好ましい。
エマルションの固形分濃度は、エマルションの加熱前の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0056】
<撥水剤組成物>
本発明の撥水剤組成物は、前述の本発明の含フッ素共重合体と、液状媒体とを必須成分として含み、必要に応じて、界面活性剤、添加剤を含む組成物である。
本発明の撥水剤組成物は、溶液、乳濁液、分散液等の液状形態の組成物であることが好ましい。乳化重合で得られた乳濁液(エマルション)またはそれを液状媒体で希釈した乳濁液であることがより好ましい。乳化重合で得られた乳濁液を液状媒体で希釈する場合、希釈するための液状媒体は乳化重合で得られた乳濁液中の液状媒体と同じ種類のものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
本発明の撥水剤組成物に使用する本発明の含フッ素共重合体は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0057】
[液状媒体]
液状媒体としては、水性媒体または有機溶媒が挙げられ、水性媒体が好ましい。水性媒体とは、水のみからなる液状媒体、または水100質量部に対して80質量部以下の有機溶媒を含む液状媒体を意味する。
有機溶媒としては、フッ素系有機溶媒または非フッ素系有機溶媒が挙げられる。なかでも、不燃性の点、表面張力が低く膜厚斑の小さい均一な塗膜を形成できる点から、フッ素系有機溶媒が好ましい。
フッ素系有機溶媒としては、例えば、ジクロロペンタフルオロプロパン(製品名;AK−225、旭硝子社製)、メタキシレンヘキサフルオライド(mxHF、東京化成工業社製)等が挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、例えば、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン等が挙げられる。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられ、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、分散安定性の点から、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤もしくは両性界面活性剤との併用、または、アニオン性界面活性剤の単独使用が好ましく、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との併用がより好ましい。
本発明の撥水剤組成物(100質量%)中の界面活性剤の含有量は、0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましい。
【0059】
[添加剤]
添加剤としては、浸透剤、消泡剤、吸水剤、帯電防止剤、制電性重合体、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子(ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等。)、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂、トリアジン環含有化合物、イソシアネート系化合物等。)、エポキシ硬化剤(イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド、スピログリコール等。)、熱硬化触媒、架橋触媒(有機酸類、塩化アンモニウム等。)、合成樹脂、繊維安定剤、無機微粒子等が挙げられる。
【0060】
また、本発明の撥水剤組成物は、必要に応じて、本発明の含フッ素共重合体以外の、撥水性もしくは撥油性のいずれか一方またはその両方を発現できる重合体(たとえば、市販の撥水剤、市販の撥油剤、市販の撥水撥油剤、市販のSR剤等。)、フッ素原子を有しない撥水性化合物等を含んでもよい。
フッ素原子を有しない撥水性化合物としては、例えば、パラフィン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、アルキルエチレン尿素化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。
【0061】
撥水処理に使用する際の本発明の撥水剤組成物の固形分濃度は、0.2〜5質量%が好ましく、0.6〜2質量%が特に好ましい。前記固形分濃度が下限値以上であれば、優れた撥水性が得られやすい。前記固形分濃度が上限値以下であれば、優れた撥水性および動的撥水性が得られる。乳化重合後から撥水処理までの間の本発明の撥水剤組成物の固形分濃度は、前記乳化重合で得られたエマルションの固形分濃度であってもよく、その場合は液状媒体で希釈して撥水処理に使用する。
撥水剤組成物の固形分濃度は、撥水剤組成物の加熱前の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0062】
以上説明した本発明の撥水剤組成物にあっては、単位(A)〜(E)を特定の比率で有し、単位(F)の含有量が特定の比率以下である本発明の含フッ素共重合体を含むため、物品に優れた撥水性を付与できる。また、本発明の撥水剤組成物は、本発明の含フッ素共重合体が炭素数7以上のR
F基を有する単量体に基づく単位を有しないため、環境負荷が小さい。
【0063】
<物品>
本発明の物品は、本発明の撥水剤組成物によって表面が処理されたものである。
処理される物品としては、布帛、繊維(天然繊維、合成繊維、混紡繊維等。)、各種繊維製品(衣料等)、不織布、樹脂フィルム、紙、皮革、金属製品、石材、コンクリート製品、石膏製品、ガラス製品等が挙げられる。物品としては、布帛、不織布、多孔質樹脂フィルム、紙、皮革等の多孔質のシート形状の物品が好ましく、特に布帛が好ましい。
処理方法としては、たとえば、公知の塗工方法によって物品に撥水剤組成物を塗工した後、乾燥する方法、または物品を撥水剤組成物に浸漬した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0064】
本発明の物品は、本発明の撥水剤組成物による処理の後に、さらに、帯電防止加工、柔軟加工、抗菌加工、消臭加工、防水加工等を行ってもよい。
防水加工としては、防水膜を付与する加工が挙げられる。防水膜としては、たとえば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から得られる多孔質膜、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から得られる無孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、またはこれらを組み合わせた透湿防水膜が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜12は製造例であり、例13〜16は実施例であり、例17〜25は比較例である。
[評価方法]
(撥水性(ぬれ))
例13〜24における試験布Pおよび試験布Qについて、JIS L1092−1992のスプレー試験にしたがって撥水性(ぬれ)を評価した。撥水性(ぬれ)は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性(ぬれ)が良好であることを示す。
等級に+(−)を記したものは、当該等級の標準的なものと比べてそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。また、たとえば「4−5」は、「4」と「5」の中間程度の性質であることを示し、他についても同様である。これらは、撥水性(はじき)の評価でも同様である。
【0066】
(撥水性(はじき))
例13〜24における試験布Pおよび試験布Qについて、JIS L1092−1992のスプレー試験と同様の方法に基づき、水滴の転がり方、流れ方を撥水性(はじき)として評価した。撥水性(はじき)は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性(はじき)が良好であることを示す。
【0067】
(前進角および後退角の測定)
例13、16、18、19、21、22における試験布Q4上に0.5μLの水を滴下し、該試験布Q4を傾斜角度が45°となるように傾け、dropmaster700(協和界面科学社製)を用いて、水滴の前進角(水滴における下方側の接触角。)と後退角(水滴における上方側の接触角。)を測定した。前進角および後退角は、それぞれ5つの試験布Q4について測定したものの平均値とした。測定温度は20〜25℃とした。
【0068】
(pH測定)
例4、9、10、25の含フッ素共重合体のエマルションの温度20℃におけるpHをpHメーター HORIBA D−54により測定した後、45℃のオーブンに入れ、15日後と30日後の温度20℃におけるpHを再度測定した。
【0069】
(色彩値測定)
例4、9、10、25の含フッ素共重合体のエマルションの色彩値(L*/a*/b*)を測定した後、45℃のオーブンに入れ、15日後と30日後の色彩値(L*/a*/b*)を再度測定した。色彩値(L*/a*/b*)は、色彩色差計(MINOLTACR−300、コニカミノルタ社製)を用いて、JIS Z8759等に従って測定した。
【0070】
[略号]
(単量体(a))
C6FMA:F(CF
2)
6CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2。
(単量体(b))
VCl:塩化ビニル。
(単量体(c))
VdCl:塩化ビニリデン。
(単量体(d))
VA:ベヘニルアクリレート、
StA:ステアリルアクリレート、
(単量体(e))
MOI−BP:カレンズMOI−BP(登録商標)(ブロックドイソシアネート系単量体、昭和電工社製。)、
N−MAM:N−メチロールアクリルアミド。
(単量体(f))
CnFMA:F(CF
2)
nCH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2。(ただし、nは1〜5の整数である。)
(単量体(g))
IB−X:イソボルニルメタクリレート。
【0071】
[例1]
ガラス製の容器に、単量体(a)としてC6FMAの184.2g、単量体(d)としてStAの15.4g、単量体(e)としてMOI−BPの5.1g、界面活性剤としてエマルゲン−430の5.12g、界面活性剤としてサーフィノール−465の2.56g、界面活性剤としてプロノン−204の2.56g、界面活性剤としてアーカード−18の2.56g、界面活性剤としてアーカード−Cの1.28g、および水性媒体として水の378.9gとジプロピレングリコールの76.8gとの混合液を入れ、65℃で40分間加温した後、ミキサー(SMT社製、HIGH−FLEX DISPERSER HG−92)を用いて予備乳化液を得た。得られた予備乳化液を、50℃に保ちながら、高圧乳化機(ゴーリン社製、LAB60)を用いて、乳化圧:40MPa、1passにて処理して乳化液を得た。C6FMAは、C6FMAを缶出液として分離した後に留出液として取り出す2段階の蒸留精製を行った後のものを使用した。乳化液中のC6FMAに対するCnFMAの割合は6質量ppmとした。
得られた乳化液をステンレス製の反応容器に入れ、10℃まで冷却し、単量体(c)としてVdClの25.6gを投入し、重合開始剤としてVA−061・酢酸塩の1.28gを加えて気相を窒素置換し、単量体(b)としてVClを吹き込み、60℃で10時間の重合反応を行い、含フッ素共重合体(X−1)のエマルション(固形分濃度35質量%)を得た。VClは合計で25.6g吹き込んだ。
各単量体単位の割合(質量%)を表1に示す。各単位の割合は、製造時の仕込量により算出した。
【0072】
[例2〜12]
各単量体単位の割合(質量%)が表1に示す割合となるように各単量体の仕込み量を変更した以外は、例1と同様にして含フッ素共重合体(X−2)〜(X−4)のエマルションおよび含フッ素共重合体(Y−1)〜(Y−8)のエマルションを得た。例11、12におけるCnFMAの仕込み量は、F(CF
2)
4CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2を用いて調整した。
【0073】
【表1】
【0074】
[例13]
含フッ素共重合体(X−1)のエマルションを水で希釈し、固形分濃度が0.6質量%の撥水剤組成物を得た。得られた撥水剤組成物中に、極細ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)・ウーリーで形成された試験布Pおよび高密度ナイロン・タフタで形成された試験布Qを浸漬した後、ウェットピックアップがそれぞれ65質量%、57質量%となるように絞った。その後、これらを170℃で60秒間加熱して乾燥し、試験布P1および試験布Q1を得た。
また、前記と同様の方法で、前記撥水剤組成物の固形分濃度を1.0質量%とした試験布P2および試験布Q2、1.5質量%とした試験布P3および試験布Q3、3.0質量%とした試験布Q4をそれぞれ得た。
【0075】
[例14〜24]
使用する含フッ素共重合体を表2に示すように変更した以外は、例13と同様にして試験布P1〜P3および試験布Q1〜Q4を得た。
例13〜24の評価結果(等級)を表2に示す。また、例13、16、18、19、21、22における試験布Q4についての水滴の前進角および後退角の測定結果を表3に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
表2に示すように、本発明の例13〜16の撥水剤組成物は、単位(B)または単位(C)のいずれかを有さない例17〜22、および単位(F)の割合が多い例23、24の撥水剤組成物に比べて、物品に優れた撥水性が付与された。特に、例13〜16の撥水剤組成物により処理した物品は、R
F基の炭素数が6以下の場合に弱点とされる撥水性(はじき)に優れていることが確認された。
また、本発明の例13および例16の撥水剤組成物で処理した試験布Q4では、単位(B)または単位(C)のいずれかを有さない例18、19、21、22の撥水剤組成物で処理した試験布Q4に比べて、前進角および後退角が大きく、撥水性に優れていた。
【0079】
[例25]
例9で得られた含フッ素共重合体(Y−5)のエマルションと、例10で得られた含フッ素共重合体(Y−6)のエマルションを1:1で混合し、含フッ素共重合体(Y−5)および含フッ素共重合体(Y−6)を等量含むエマルションを得た。
例4、9、10、25の含フッ素共重合体のエマルションについてpHおよび色彩値の変化を測定した結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示すように、例4の本発明の含フッ素共重合体(X−4)のエマルションは、単位(B)を有さず単位(C)を有する例9の含フッ素共重合体(Y−5)のエマルションに比べて、水素イオン濃度の増加が抑制され、また赤みを増す変色が抑制されていた。水素イオン濃度の増加が抑えられることで、物品の加工時において、撥水剤組成物による装置等の腐食を防ぐことができる。また、赤みを増す変色が抑えられることで、淡色系の加工布に撥水剤組成物を処理した場合でも、撥水剤組成物由来の着色が発生しない。
単位(C)を有さず単位(B)を有する例10の含フッ素共重合体(Y−6)のエマルションでは、水素イオン濃度の増加や赤みを増す変色があまりないことから、水素イオン濃度の増加および赤みを増す変色は、単位(C)(塩化ビニリデン単位)における塩素原子が隣接する水素原子と共に塩化水素として脱離して共役二重結合となることが、要因であると考えられる。
また、含フッ素共重合体(Y−5)のエマルションと含フッ素共重合体(Y−6)のエマルションを混合した例25においては、例4と比べて水素イオン濃度の増加の抑制効果および変色の抑制効果が認められなかった。このことから、単位(B)と単位(C)を共に含む本発明の含フッ素共重合体では、単位(B)と単位(C)が一部隣接して配置されることで、その部分において単位(C)(塩化ビニリデン単位)における塩素原子が塩化水素として脱離することが抑制されているために前記抑制効果が得られると考えられる。