(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0003】
図10を用いて、シート状成形体に生じた点状の凹み欠陥の有無をラインセンサカメラによって検査する方法の一例について説明する。
図10に示すシート状成形体Lは、その幅方向X中央に点状の凹み欠陥L
1が生じているものとする。シート状成形体Lは、その長手方向Yの一方に搬送されており、その結果、
図10(a)〜
図10(c)に示すように、凹み欠陥L
1は長手方向Y一方に順次移動する。
【0004】
図10(a)〜
図10(c)に示すように、幅方向Xに延びる図示しない光源によって、シート状成形体Lに明部L
2と暗部L
3とが生じている。光源は位置が固定されており、シート状成形体Lが搬送されることで、明部L
2の位置は、シート状成形体L上において長手方向Y他方に順次移動することになる。この明部L
2と暗部L
3との境界線付近が撮像範囲Bとなるように、図示しないラインセンサカメラが設けられる。ラインセンサカメラは、光源に対して位置が固定されており、シート状成形体Lが安定して搬送され、かつ凹み欠陥L
1が撮像エリア付近にない限り、
図10(a)および
図10(c)に示すように、明部L
2と暗部L
3との境界線付近の像は同様のものとなり、ラインセンサカメラによって取得される画像G
1,G
3も同様のものとなる。ただし、
図10(b)に示すように、凹み欠陥L
1が撮像エリア付近にある場合、明部L
2と暗部L
3との境界線付近の像は該凹み欠陥L
1によって変化し、その結果、ラインセンサカメラによって取得される画像G
2には、画像G
1,G
3とは異なり、暗部L
3が大きく写り込む。したがって、
図10(d)のように、ラインセンサカメラによって取得される画像を順次合成していくことで、暗部によって凹み欠陥L
1の位置が示される検査用画像G
4を合成することができる。
【0005】
図10を用いて説明したような欠陥検査の方法は、上述したように、シート状成形体Lが安定して搬送されることを前提とする。しかしながら、シート状成形体Lは搬送中にばたつく場合があり、必ずしも安定して搬送されるものではない。シート状成形体Lが搬送中にばたつくと、該シート状成形体Lとラインセンサカメラおよび光源との位置関係が変化し、上記欠陥検査の方法ではうまく欠陥が発見できない場合がある。
なお、本発明において、シート状成形体がばたつく状態とは、例えば水平方向にシート状成形体を搬送している場合には、シート状成形体の一部または全部が上下に激しく揺れ動いている状態をいい、例えば垂直方向にシート状成形体を搬送している場合は、シート状成形体の一部または全部が左右に激しく揺れ動いている状態をいう。
【0006】
図11を用いて、シート状成形体Lがばたついた場合について説明する。
図11(a)および
図11(b)では、ばたつきは生じておらず、
図10(a)および
図10(b)と同じ状態であり、
図11(c)では、ばたつきが生じているものとする。
図11(c)に示すように、シート状成形体Lがばたつくと、凹み欠陥L
1が撮像エリア付近になくとも、明部L
2と暗部L
3との境界線付近の像はばたつきによって変化し、その結果、ラインセンサカメラによって取得される画像G
5には、画像G
1,G
2とは異なり、暗部L
3が大きく写り込む場合がある。このような場合、暗部によって凹み欠陥L
1の位置を示すはずの検査用画像G
6に、
図11(d)に示すように、凹み欠陥L
1とは関係のない暗部が生じてしまい、凹み欠陥L
1とは関係のない位置にも欠陥があるように誤って判断されるおそれがある。また、
図11とは異なるばたつきの状態では、凹み欠陥L
1が撮像エリア付近にあるときに、ラインセンサカメラによって取得される画像に暗部L
3が写り込まないこともあり、シート状成形体Lに欠陥がないように誤って判断されるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、シート状成形体の欠陥を検査するための画像データを生成する画像生成装置において、シート状成形体のばたつき等に起因して、欠陥の有無について誤った判断が生じるのを防ぐことができる画像生成装置、該画像生成装置を備える欠陥検査装置、および欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、
シート状成形体の欠陥を検査するための画像データを生成する画像生成装置であって、
シート状成形体を該シート状成形体の長手方向に搬送する搬送部と、
シート状成形体の幅方向に直線状に延びる光源を備え、該光源によってシート状成形体に光を照射する光照射部と、
搬送中の前記シート状成形体に対して撮像動作を行って2次元画像を表す2次元画像データを生成する撮像部であって、該2次元画像内に前記光源に対応する明部と該明部よりも輝度が低い暗部とが含まれる位置でシート状成形体に対して複数回の撮像動作を行う撮像部と、
前記撮像部によって生成された複数の2次元画像データから検査用画像データを生成する検査用画像データ生成部であって、
各2次元画像データによって表される各2次元画像内の前記明部と前記暗部との境界線部を抽出する境界抽出部と、
前記境界線部を繋いで見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線を平滑化し、平滑化して得られた本来の境界線を構成する画素を2次元画像データから抽出する再抽出部と、
前記再抽出部によって抽出された画素からなる1次元画像データを生成し、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データを合成して検査用画像データを生成する合成部と、
を含む検査用画像データ生成部と、
を備える画像生成装置を提供する。
【0009】
また本発明は、
前記画像生成装置と、
前記画像生成装置の検査用画像データ生成部によって生成された検査用画像データによって表される画像を表示する表示部と、
を備える欠陥検査装置を提供する。
【0010】
また本発明は、
シート状成形体の欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
シート状成形体の幅方向に直線状に延びる光源によって該シート状成形体に光を照射しながら該シート状成形体を該シート状成形体の長手方向に搬送している状態で、該シート状成形体に対して撮像動作を行って2次元画像を表す2次元画像データを生成する撮像工程であって、該2次元画像内に前記光源に対応する明部と該明部よりも輝度が低い暗部とが含まれるようにシート状成形体に対して複数回の撮像動作を行う撮像工程と、
前記撮像工程において生成された各2次元画像データによって表される名2次元画像内の前記明部と前記暗部との境界線部を抽出する境界抽出工程と、
前記境界線部を繋いで見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線を平滑化し、平滑化して得られた本来の境界線を構成する画素を2次元画像データから抽出する再抽出工程と、
前記再抽出工程において抽出された画素からなる1次元画像データを生成し、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データを合成して検査用画像データを生成する合成工程と、
前記合成工程において生成された検査用画像データによって表される画像を表示する表示工程と、
を含む欠陥検査方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、画像生成装置では、搬送中のシート状成形体に光が照射された状態で、該シート状成形体に対して複数回の撮像動作が行われて複数の2次元画像データが生成される。そして、各2次元画像データによって表される各2次元画像内の明部と暗部との境界線部が抽出される。次いで、該境界線部を繋いで見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線が平滑化される。そうして平滑化されて得られた本来の境界線を構成する画素が2次元画像データから再抽出され、本来の境界線を構成する画素からなる1次元画像データが生成される。同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データが合成されて検査用画像データが生成される。
【0012】
シート状成形体に欠陥が生じている場合において、該シート状成形体が安定して搬送されており、かつ、境界線部付近に欠陥が位置しているとき、該欠陥によって、見かけ上の境界線は鋭いピークが現れた歪な曲線となる。したがって、この見かけ上の境界線を平滑化して得られた本来の境界線は、見かけ上の境界線とは異なる。また、シート状成形体に欠陥が生じている場合において、該シート状成形体が搬送中にばたついており、かつ、境界線部付近に欠陥が位置していないとき、該シート状成形体のばたつきによって、見かけ上の境界線はなだらかな曲線となる。したがって、この見かけ上の境界線を平滑化して得られた本来の境界線は、見かけ上の境界線とほぼ同一の曲線か、または、見かけ上の境界線と同一の曲線である。
【0013】
よって、各2次元画像データより、本来の境界線を構成する画素からなる1次元画像データを生成し、そうして得られた複数の1次元画像データを合成して検査用画像データとすることで、明部および暗部の位置関係によって欠陥の位置を示す検査用画像データを生成することができる。その結果、この検査用画像データに基づいてシート状成形体の欠陥の有無を判断することができ、シート状成形体のばたつき等に起因して、欠陥の有無について誤った判断が生じるのを防ぐことができる。
【0014】
また本発明によれば、欠陥検査装置は、前記の本発明に係る画像生成装置と、表示部とを備える。表示部は、画像生成装置の検査用画像データ生成部によって生成された検査用画像データで表される画像を表示する。表示部によって検査用画像データに基づいて表示される画像を見ることで、欠陥の有無を判断することができ、シート状成形体のばたつき等に起因して、欠陥の有無について誤った判断が生じるのを防ぐことができる。
【0015】
また本発明によれば、欠陥検査方法では、撮像工程において搬送中のシート状成形体に光が照射された状態で、該シート状成形体に対して複数回の撮像動作が行われて複数の2次元画像データが生成される。そして、境界抽出工程において各2次元画像データによって表される各2次元画像内の明部と暗部との境界線部が抽出される。次いで、再抽出工程において、該境界線部を繋いで見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線が平滑化される。そうして平滑化されて得られた本来の境界線を構成する画素が、2次元画像データから再抽出される。さらに、合成工程において、本来の境界線を構成する画素からなる1次元画像データが生成され、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データが合成されて、明部および暗部の位置関係によって欠陥の位置を示す検査用画像データが生成され、表示工程において検査用画像データによって表される画像が表示される。表示工程において表示された、検査用画像データに基づいて表される画像を見ることで、欠陥の有無を判断することができ、シート状成形体のばたつき等に起因して、欠陥の有無について誤った判断が生じるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る画像生成装置、欠陥検査装置および欠陥検査方法について説明する。
図1は、本発明に係る欠陥検査装置100を示す斜視図である。
図2は、本発明に係る欠陥検査装置100を示すブロック図である。
図3は、本発明に係る欠陥検査方法を示す工程図である。欠陥検査装置100は、シート状成形体の欠陥を検査するための装置であり、該欠陥を検査するための方法である、本発明に係る欠陥検査方法を実施可能な装置である。欠陥検査装置100は、シート状成形体として、たとえば、偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムを検査可能であり、特にウェブ状に巻いて保管および輸送される長尺の光学フィルムの検査に適している。
【0018】
シート状成形体は、たとえば、熱可塑性樹脂などの樹脂からなる。樹脂からなるシート状成形体としては、たとえば、押出機から押し出された熱可塑性樹脂をロールの隙間に通して表面に平滑さや光沢を付与する処理が施され、引取ロールにより搬送ロール上を冷却されながら引き取られることにより成形されたものが挙げられる。シート状成形体の材料となる熱可塑性樹脂は、たとえば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロール樹脂などである。シート状成形体は、これら熱可塑性樹脂のうちの1つのみからなっていてもよく、これら熱可塑性樹脂の複数種類を積層したものであってもよい。
【0019】
シート状成形体は、どのような厚みを持つものであってもよい。たとえば、シート状成形体は、偏光フィルムや位相差フィルムなどの、一般に「フィルム」と呼ばれるような比較的薄い厚みを持つものであってもよく、一般に「板」と呼ばれるような比較的厚い厚みを持つものであってもよい。
【0020】
このようなシート状成形体の欠陥の例としては、成形時に生じる気泡、フィッシュアイ、異物、タイヤ跡、打痕、傷などの点状の欠陥(点欠陥)、折り目跡などにより生じるいわゆるクニック(knick)、厚さの違いにより生じるいわゆる原反スジなどの線状の欠陥(線欠陥)が挙げられる。
【0021】
図1および
図2に示すように、欠陥検査装置100は、本発明に係る画像生成装置1と、表示部21とを備える。欠陥検査装置100の画像生成装置1は、シート状成形体Kをその長手方向(以下、「Y方向」と称する)一方に搬送する搬送部11と、シート状成形体Kの幅方向(以下、「X方向」と称する)に直線状に延びる光源を有する光照射部12と、シート状成形体Kに対して撮像動作を行って2次元画像を表す2次元画像データを生成する撮像部13と、情報処理装置14とを備える。情報処理装置14は、検査用画像データ生成部141を有し、該検査用画像データ生成部141は、境界抽出部1411と再抽出部1442と合成部1413とを含む。情報処理装置14は、搬送部11の動作を制御する図示しない搬送制御部も有する。情報処理装置14は、PC(Personal Computer)などによって実現される。なお、情報処理装置14における検査用画像データ生成部141は、FPGA(Field−programmable gate array)やGPGPU(General−purpose computing on graphics processing units)など、画像処理ボードや撮像部13の内部のハードウェアによって実現することもできる。
【0022】
図3に示すように、本発明に係る欠陥検査方法は、撮像工程S1と、境界抽出工程S2と、再抽出工程S3と、合成工程S4と、表示工程S5とを含む。
撮像工程S1では、光照射部12の光源によってシート状成形体Kに光を照射しながら、搬送部11によってシート状成形体をY方向一方に搬送している状態で、光照射部12の光源に対応する明部と該明部よりも輝度が低い暗部とが2次元画像内に含まれるように、撮像部13によってシート状成形体Kに対して複数回の撮像動作を行う。
【0023】
境界抽出工程S2は、撮像工程S1において撮像部13によって生成された各2次元画像データで表される各2次元画像内の明部から暗部に変わる境界線部、または、暗部から明部に変わる境界線部を、境界抽出部1411によって抽出する工程である。
再抽出工程S3は、再抽出部1412によって、境界抽出工程S2において得られた境界線部を繋げて見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線を平滑化し、平滑化して得られた本来の境界線を構成する画素を2次元画像データから抽出する工程である。
【0024】
合成工程S4は、再抽出工程S3において再抽出部1412によって抽出された画素からなる1次元画像データを、合成部1413によって生成し、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データを合成して、輝度の変化によって凹み欠陥または凸欠陥の位置を示す検査用画像データを生成する工程である。たとえば明部から暗部に変わる際の境界線部では、輝度の暗い箇所として凹み欠陥の位置が示される。
表示工程S5は、合成工程S4において合成部1413によって生成された検査用画像データで表される検査用画像を表示部21に表示する工程である。
【0025】
図4〜
図8を用いて各工程S1〜S5について説明する。
図4は、シート状成形体Kの様子を示す図であり、
図5〜
図8は、シート状成形体Kに対する撮像によって得られる画像を示す図である。
図4に示すように、シート状成形体Kには点状の凹み欠陥K
1が生じているとする。また、シート状成形体Kは、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)に示す順に、Y方向一方に搬送されているとする。
【0026】
図4(a)に示すように、X方向に直線状に延びる光照射部12の光源は、シート状成形体K上に、X方向に直線状に延びる明部K
2と、該明部K
2よりも輝度が低い暗部K
3とを生じさせる。明部K
2が直線状に延びるのは、シート状成形体Kが安定的に搬送されてシート状成形体Kのばたつきがなく、かつ、凹み欠陥K
1が明部K
2の近傍にないときである。
図4(b)に示すように、凹み欠陥K
1が明部K
2の近傍にあると、明部K
2は直線状ではなくなる。
図4(c)は、
図4(a)および
図4(b)とは異なり、搬送中にシート状成形体Kがばたついた場合を示しており、この場合、凹み欠陥K
1は明部K
2近傍にはないけれども、シート状成形体Kのばたつきに起因して、明部K
2は直線状ではなくなっている。
【0027】
図4に示す2点鎖線Aは、撮像部13による撮像範囲を示している。撮像工程S1では、撮像部13は、この撮像範囲内に、明部K
2および該明部K
2に隣接する暗部K
3が入るように、撮像動作を行う。
図4(a)における撮像結果である2次元画像が、
図5(a)に示す2次元画像であり、
図4(b)における撮像結果である2次元画像が、
図6(a)に示す2次元画像であり、
図4(c)における撮像結果である2次元画像が、
図7(a)に示す2次元画像である。各2次元画像を構成する各画素は、
図5、
図6、および
図7においてX方向右側になるほど連続的に大きくなる整数のX座標値と、Y方向下側になるほど連続的に大きくなる整数のY座標値とが割り当てられる。なお、
図5(a)、
図6(a)、および
図7(a)では、明部を白色部とし、暗部を斜線部としている。
【0028】
境界抽出工程S2では、
図5(a)、
図6(a)、および
図7(a)に示す各2次元画像から、境界抽出部1411によって、境界線部を抽出する。境界線部は、たとえば、2次元画像内の明部の一部分のうち、該明部に隣接し、該明部よりもY座標値が大きい暗部に変化する部分である。境界線部は、従来公知のエッジ抽出方法によって抽出可能である。たとえば、2次元画像におけるY方向に沿った1列の画素列のデータについて、Y座標値が最も小さい画素から順に注目画素とし、該注目画素よりもY座標値が1つ大きい画素の輝度値が該注目画素の輝度値よりも所定の閾値以上大きいときに、該注目画素よりもY座標値が1つ大きい画素を、境界線部を構成する画素として抽出すればよい。以降では、このようにして抽出された画素を抽出画素と呼ぶ。
図5(a)、
図6(a)、および
図7(a)に示す各2次元画像から抽出された画素によって構成される境界線部を、
図5(b)、
図6(b)、および
図7(b)に、それぞれ示す。隣り合った画素列の境界線部を繋ぐことで、見かけ上の境界線が得られる。
【0029】
明部と暗部との境界線付近に欠陥が存在している場合、このようにして得られた見かけ上の境界線は、該欠陥の影響を受けて、鋭いピークが出現している。再抽出工程S3は、該欠陥の影響を除外した本来の境界線をなす境界線部を得る工程である。そのために、再抽出工程S3では、まず、見かけ上の境界線に鋭いピークがなくなるよう、見かけ上の境界線を平滑化する。例えば、ピークの高さが、ピークの幅の所定倍(例えば1/2倍〜2倍)以上のピークを、鋭いピークと見なし、かかる鋭いピークがなくなるよう、このピークの底辺の直線を、本来の境界線とする。再抽出工程S3では、そうして得られた本来の境界線を構成する画素を、元の2次元画像データから抽出する。以降では、このようにして抽出された画素を再抽出画素と呼ぶ。
明部と暗部との境界線付近に欠陥が存在していない場合、境界抽出工程S2で得られた見かけ上の境界線には鋭いピークが出現しておらず、再抽出工程S3で得られる本来の境界線は、境界抽出工程S2で得られた見かけ上の境界線と同じとなる。そのため、明部と暗部との境界線付近に欠陥が存在せず、境界抽出工程S2で得られた見かけ上の境界線に鋭いピークが存在しない場合は、再抽出工程S3を実質的にスキップしてもよい。
【0030】
図5(b)、
図6(b)、および
図7(b)に、見かけ上の境界線j
1,j
2,j
3を、それぞれ2点鎖線で示す。
図5(b)に示す境界線j
1は直線であり、
図7(b)に示す境界線j
3は、鋭いピークのない、なだらかな曲線である。したがって、
図5(a)に示す2次元画像および
図7(a)に示す2次元画像については、再抽出工程S3において画素の再抽出を行う必要はなく、見かけ上の境界線を構成する画素が、本来の境界線を構成する画素となる。これに対して、
図6(b)に示す境界線j
2は、鋭いピークを有する歪な曲線である。この歪な境界線j
2を平滑化した曲線は、
図6(b)に破線で示す直線j
4である。したがって、本来の境界線は、X座標値1〜4および8〜10については見かけ上の境界線であったj
2と同じとなり、X座標値5〜7については直線j
4となる。再抽出工程S3においては、得られた本来の境界線を構成する画素のデータを、元の2次元画像データから抽出する。
図6(a)に示す2次元画像内から抽出された再抽出画素を、
図6(c)に示す。再抽出画素のうち、X座標値5〜7の画素は、元の2次元画像データに含まれる欠陥部によって歪んだ境界線部に対応し、他の画素より明るいか暗い輝度値を有する。
【0031】
合成工程S4では、再抽出工程S3において再抽出部1412によって各2次元画像内から抽出された再抽出画素から、合成部1413によって、1次元画像を表す1次元画像データを生成する。1次元画像データは、再抽出画素のX座標値と輝度値とが対応付けられた画像データである。
図5(c)、
図6(d)、および
図7(c)に、
図5(a)、
図6(a)、および
図7(a)に示す各2次元画像に対応する1次元画像を示す。
【0032】
さらに、合成工程S4では、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データを合成して検査用画像データを生成する。合成は、撮像部13によって先に生成された2次元画像データに対応する1次元画像データの方が小さなY座標値を有し、撮像部13によって後に生成された2次元画像データに対応する1次元画像データの方が大きなY座標値を有するように、かつ、各1次元画像データのX座標値はそのままとして、複数の1次元画像データをY方向に連続的に配置して組み合わせることで行われる。
図8に、
図5(c)、
図6(d)、および
図7(c)に示す1次元画像を表す1次元画像データから合成された検査用画像データによって表される検査用画像を示す。
【0033】
合成工程S4では、各1次元画像データに対して2値化を行ってもよい。2値化の閾値となる輝度値は、1次元画像データが表す1次元画像内の明部の画素と暗部の画素とが2値化後に互いに異なる値となるように設定される。たとえば、2値化の閾値は、該1次元画像データにおける最大輝度値と最小輝度値との相加平均値である。2値化が行われる場合、各1次元画像データに対する2値化の後に、検査用画像データの合成が行われる。なお、2値化の順序は、上記の順序に限定されるものではなく、1次元画像データを合成した後、その合成後の2次元画像データに対して2値化を行うことによって、検査用画像データを生成するようにしてもよい。
【0034】
表示工程S5では、検査用画像データによって表される検査用画像を、表示部21に表示させる。検査用画像は、たとえば、各画素の輝度値に基づいて、暗部が黒となり、明部が白となるように、表示部21に表示される。
【0035】
このような、欠陥検査装置100によって実施される、各工程S1〜S5を含む欠陥検査方法によれば、シート状成形体Kに凹み欠陥K
1が生じている場合において、
図4(b)に示すように、該シート状成形体Kが安定して搬送されており、かつ、境界線部近傍に凹み欠陥が位置しているとき、該凹み欠陥K
1によって、
図6(b)に示すように、見かけ上の境界線は歪な曲線j
2となる。したがって、この境界線j
2を平滑化した直線j
4を構成する2次元画像内の画素は、
図6(c)に示すように、暗部を含むことになる。また、シート状成形体Kに凹み欠陥K
1が生じている場合において、
図4(c)に示すように、該シート状成形体Kが搬送中にばたついており、かつ、境界線部近傍に凹み欠陥K
1が位置していないとき、該シート状成形体Kのばたつきによって、
図7(b)に示すように、見かけ上の境界線j
3はなだらかな曲線となる。したがって、この境界線j
3を平滑化した曲線は、境界線j
3とほぼ同一の曲線か、または、境界線j
3と同一の曲線であり、該曲線に対応する2次元画像内の画素は、明部の一部である境界線部から大きく離れることはなく、
図7(b)に示すものと同一である。よって、これらの各部分から、
図6(d)および
図7(c)に示す各1次元画像データを生成し、複数の1次元画像データを合成して検査用画像データとすることで、暗部によって欠陥の位置を示す検査用画像データを生成することができる。その結果、この検査用画像データに基づいて表示される、
図8に示す検査用画像を見ることで、欠陥の有無を判断することができ、シート状成形体Kのばたつき等に起因して、欠陥の有無について誤った判断が生じるのを防ぐことができる。
【0036】
欠陥検査装置100について、以下に、より詳細に説明する。
図1および
図2に示す搬送部11は、一定幅でY方向に連続するシート状成形体KをY方向に搬送する装置である。搬送部11は、たとえば、シート状成形体KをY方向に搬送する送出ローラと受取ローラとを備え、ロータリーエンコーダなどにより搬送距離が計測可能となっている。搬送部11がシート状成形体KをY方向に搬送する搬送速度は、たとえば、2m/分〜30m/分に設定される。
【0037】
光照射部12は、Y方向に直交する方向であるX方向に延びる直線状の光源と、該光源の位置が搬送部11の送出ローラおよび受取ローラに対する固定位置となるように固定する図示しない固定部材とを備える。光源は、シート状成形体Kを基準として、撮像部13と同じ側、または撮像部13と反対側において、該シート状成形体Kの表面に光を照射できるよう配置される。光源は、シート状成形体Kの表面における明部までの距離が、たとえば200mmとなるように配置されている。光源としては、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライト、蛍光灯など、シート状成形体Kの組成および性質に影響を与えない光を発光するものであれば、特に限定されない。
【0038】
光照射部12は、光源とシート状成形体Kとの間に配置されるスリット部材を備えていてもよい。スリット部材は、たとえば、樹脂からなる透光性を有する板状の基材に、遮光性を有し、X方向に延びる帯状の遮光領域部が、Y方向に所定の間隔をあけて形成された部材である。光照射部12がこのようなスリット部材を備える場合、シート状成形体Kの表面に、X方向に延びる明部と暗部とが交互に繰返される明暗パターンを形成することができ、この明暗パターンを利用して検査用画像データを生成することが可能になる。
【0039】
撮像部13は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)のエリアセンサからなる。撮像部13は、シート状成形体Kを基準として、光源と同じ側、または光源と反対側において、該シート状成形体Kの表面を撮像できるよう配置され、該シート状成形体Kからの透過光または反射光を受光して2次元画像データを生成する。撮像部13は、1つのエリアセンサによって2次元画像データを生成してもよいし、X方向に配列された複数のエリアセンサによって取得されるデータから2次元画像データを生成してもよい。撮像部13は、撮像範囲がシート状成形体KのX方向の全領域となるように配置される。
【0040】
図1に示す撮像範囲のY方向における長さWは、撮像部13のシャッタ時間に搬送されるシート状成形体Kの搬送距離の少なくとも2倍以上であることが好ましい。換言すれば、撮像範囲のY方向における長さWは、シート状成形体Kの同一部分に対して、2回以上撮像動作が行われるように設定されることが好ましい。たとえば、撮像部13のシャッタ時間が1/30秒〜1秒であるとき、撮像範囲のY方向における長さWは、5mm〜50mm程度に設定される。このように、シート状成形体Kの同一部分の撮像数を増加させることにより、高精度に欠陥を検査することができる。
【0041】
表示部21は、たとえば、液晶ディスプレイ、EL(Electroluminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどである。表示部21は、表示画面に、検査用画像データによって表される検査用画像を表示する。
【0042】
検査用画像データ生成部141は、CPU(Central Processing Unit)などの制御演算回路、DDR SDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリから構成される。検査用画像データ生成部141の不揮発性メモリには、境界抽出部1411、再抽出部1412、および合成部1413として機能するためのプログラムデータが記憶されており、該プログラムデータに従って、検査用画像データ生成部141は、境界抽出部1411、再抽出部1412、および合成部1413の機能を発揮する。なお、検査用画像データ生成部141は、FPGAやGPGPUなど、画像処理ボードや撮像部13の内部のハードウェアによって実現することもできる。
【0043】
境界抽出部1411は、従来公知のエッジ抽出方法によって、撮像部13により生成された2次元画像データが示す2次元画像内から境界線部を抽出する。再抽出部1412は、境界線部を繋いで見かけ上の境界線となし、該見かけ上の境界線に現れた鋭いピークがなくなるよう、該見かけ上の境界線を平滑化し、平滑化して得られた本来の境界線を構成する画素を2次元画像データから再抽出する。合成部1413は、再抽出された画素からなる1次元画像データを生成し、同様にして複数の2次元画像データから得られた複数の1次元画像データを合成して、検査用画像データを生成する。
【0044】
再抽出部1412による再抽出について、以下に詳細に説明する。再抽出部1412は、以下の(1)〜(8)の処理によって、2次元画像内からの画素の再抽出を行う。
【0045】
(1)境界抽出部1411によって抽出された抽出画素のうち、X座標値が最も小さい画素を、最初の注目画素とする。(1)の処理の後は、(2)の処理へ進む。
【0046】
(2)境界線部を構成する抽出画素であって、注目画素から+X方向に所定数(たとえば、抽出対象となる2次元画像のX方向における全画素数の1/40〜1/20の数)までの範囲内の抽出画素および−X方向に該所定数までの範囲内の抽出画素を想定して、<1>これらの範囲内の全ての抽出画素のY座標値が、該注目画素のY座標値以上であり、かつ、<2>+X方向の該範囲内の抽出画素のうちの少なくとも1つおよび−X方向の該範囲内の抽出画素のうちの少なくとも1つが、いずれも、該注目画素のY座標値よりも大きいY座標値を有するという条件
を満たすか否かを判定する。
これら<1>および<2>の両方の条件を満たす場合、現注目画素をピーク頂点画素に設定し、(3)の処理へ進む。
これら<1>および<2>の両方またはいずれかの条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素があるときには、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素を次の注目画素に変更して、(2)の処理を再度行う。
これら<1>および<2>の両方またはいずれかの条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素がないときには、(5)の処理へ進む。
【0047】
図9を用いて、再抽出部1412による処理の具体例を説明する。
図9(a)は、2次元画像の一部を示し、
図9(b)は、境界抽出部1411によって該2次元画像から抽出された抽出画素の一部を示している。上記所定数を3と設定し、
図9(b)の画素P
1を注目画素とするときの、該注目画素を含む上記範囲内の抽出画素を、
図9(c)に示す。また、上記所定数を3と設定し、
図9(b)の画素P
2を注目画素とするときの、該注目画素を含む上記範囲内の抽出画素を、
図9(d)に示す。
図9(c)に示す抽出画素には、そのY座標値が、注目画素である画素P
1のY座標値よりも小さい抽出画素が含まれている。したがって、画素P
1はピーク頂点画素に設定されず、画素P
1よりもX座標値が1つ大きい抽出画素が次の注目画素に変更される。
図9(d)に示す各抽出画素すべてのY座標値は、注目画素である画素P
2のY座標値よりも大きい。したがって、画素P
2はピーク頂点画素に設定され、(3)の処理へ進む。
【0048】
(3)ピーク頂点画素よりもX座標値が小さな抽出画素のうち、Y座標値がピーク頂点画素よりも大きく、かつ、X座標値が最も大きな抽出画素を、ピーク左端候補画素とする。また、ピーク頂点画素よりもX座標値が大きな抽出画素のうち、Y座標値がピーク頂点画素よりも大きく、かつ、X座標値が最も小さな抽出画素を、ピーク右端候補画素とする。
図9(b)に示す画素P
2がピーク頂点画素に設定されたときには、画素P
3がピーク左端候補画素となり、画素P
4がピーク右端候補画素となる。(3)の処理の後は、(4)の処理へ進む。
【0049】
(4)以下の(4−1)の処理と、(4−2)の処理とを、順次、または、並列して行う。
(4−1)現ピーク左端候補画素よりもX座標値が1つ小さい抽出画素のY座標値が、現ピーク左端候補画素のY座標値よりも大きいという条件を満たすか否かを判定する。
この条件を満たす場合、現ピーク左端候補画素よりもX座標値が1つ小さい抽出画素を次のピーク左端候補画素に変更して、(4−1)の処理を再度行う。この条件を満たさない場合、現ピーク左端候補画素を、現ピーク頂点画素(直近で設定されたピーク頂点画素)に対応するピーク左端画素に設定する。
(4−2)現ピーク右端候補画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素のY座標値が、現ピーク右端候補画素のY座標値よりも大きいという条件を満たすか否かを判定する。
この条件を満たす場合、現ピーク右端候補画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素を次のピーク右端候補画素に変更して、(4−2)の処理を再度行う。この条件を満たさない場合、現ピーク右端候補画素を、現ピーク頂点画素(直近で設定されたピーク頂点画素)に対応するピーク右端画素に設定する。
【0050】
(4−1)の処理および(4−2)の処理によって、現ピーク頂点画素に対応するピーク左端画素およびピーク右端画素が設定された後、現ピーク左端画素または現ピーク右端画素が、既に他のピーク頂点画素に対応するピーク左端画素またはピーク右端画素として設定されているか否か
を判定する。
現ピーク左端画素または現ピーク右端画素が既に他のピーク頂点画素に対応するピーク左端画素またはピーク右端画素に設定されているときには、現ピーク頂点画素ならびにそれに対応する現ピーク左端画素および現ピーク右端画素の設定を解除する。現ピーク左端画素または現ピーク右端画素が他のピーク頂点画素に対応するピーク左端画素またはピーク右端画素に設定されていないときには、現ピーク頂点画素ならびにそれに対応する現ピーク左端画素および現ピーク右端画素の設定は、解除せずにそのままとする。
現ピーク頂点画素、現ピーク左端画素、および現ピーク右端画素の設定を解除、または、そのままとした後は、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素があれば、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素を次の注目画素に変更して、(2)の処理を再度行い、現注目画素よりもX座標値が1つ大きい抽出画素がなければ、(5)の処理へ進む。
【0051】
図9(b)に示す例の場合、上記(1)〜(4)の処理によって、画素P
2がピーク頂点画素に設定され、それに対応するピーク左端画素およびピーク右端画素として画素P
5および画素P
6がそれぞれ設定される。また、画素P
7がもう1つのピーク頂点画素に設定され、それに対応するピーク左端画素およびピーク右端画素として画素P
8および画素P
9がそれぞれ設定される。
【0052】
(5)ピーク頂点画素のうち、X座標値が最も小さい画素を、最初の注目画素とする。
(5)の処理の後は、(6)の処理へ進む。
【0053】
(6)注目画素に対応するピーク左端画素とピーク右端画素とのX方向における距離(ピーク右端画素のX座標値−ピーク左端画素のX座標値)が、所定画素数(たとえば、抽出対象となる2次元画像のX方向における全画素数の(1/20〜1/5)の数)以下であるという条件
を満たすか否かを判定する。
この条件を満たす場合、(7)の処理へ進む。
この条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が大きいピーク頂点画素があるときには、現注目画素よりもX座標値が大きく、X座標値が最も近いピーク頂点画素を次の注目画素に変更して、(6)の処理を再度行う。
この条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が大きいピーク頂点画素がないときには、一連の処理を終了する。
【0054】
(7)現注目画素と現注目画素に対応するピーク左端画素とのY方向における距離(ピーク左端画素のY座標値−ピーク頂点画素のY座標値)、または、現注目画素と現注目画素に対応するピーク右端画素とのY方向における距離(ピーク右端画素のY座標値−ピーク頂点画素のY座標値)のうち、短い方の距離が、ピーク左端画素とピーク右端画素とのX方向における距離(ピーク右端画素のX座標値−ピーク左端画素のX座標値)の所定倍(たとえば、1/2倍〜2倍)以上であるという条件
を満たすか否かを判定する。
この条件を満たす場合、(8)の処理へ進む。
この条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が大きいピーク頂点画素があるときには、現注目画素よりもX座標値が大きく、X座標値が最も近いピーク頂点画素を次の注目画素に変更して、(6)の処理を再度行う。
この条件を満たさない場合において、現注目画素よりもX座標値が大きいピーク頂点画素がないときには、一連の処理を終了する。
【0055】
図9(b)に示す例の場合、ピーク頂点画素P
2、ならびに、それに対応するピーク左端画素P
5およびピーク右端画素P
6は、(6)の条件および(7)の条件を満たす。ピーク頂点画素P
7、ならびに、それに対応するピーク左端画素P
8およびピーク右端画素P
9は、ピーク頂点画素P
7とピーク左端画素P
8とのY方向における距離、および、ピーク頂点画素P
7とピーク右端画素P
9とのY方向における距離が、ピーク左端画素P
8とピーク右端画素P
9とのX方向における距離の1/5であり、所定値(たとえば、1/2〜2)倍以上ではないので、(7)の条件を満たさない。
このように、(6)の条件および(7)の条件によって、欠陥に起因すると考えられる鋭いピークのみが選択され、欠陥に起因しないと考えられる緩いピークは選択されないことになる。
【0056】
(8)現注目画素に対応するピーク左端画素とピーク右端画素とを結ぶ線分を表す式を算出し、該線分上の画素を抽出して、再抽出画素とする。ただし、X方向においてピーク左端画素とピーク右端画素との間に位置し、Y方向において隣接する2つの画素M(x
p,y
q)、N(x
p,y
q+1)の間を該線分が通るときは、画素N(x
p,y
q+1)を再抽出画素とする。境界抽出部1411によって抽出された抽出画素のうち、再抽出画素と同じX座標値を持ち、かつ再抽出画素と異なるY座標値を持つ抽出画素については、境界線部を構成する画素として、抽出画素を再抽出画素で置き換える。このようにして、抽出画素の一部を再抽出画素に置き換えて得られた境界線部は、欠陥による影響を除外した本来の境界線をなす。
図9(e)に示すように、置換え後の抽出画素は、元の2次元画像データに含まれる凹み欠陥によって歪んだ境界線部に対応して暗部を含むものとなっており、該暗部によって凹み欠陥の位置を示すことが可能になる。
【0057】
再抽出部1412は、以上の(1)〜(8)の処理によって、再抽出を行っているけれども、再抽出の方法はこれに限られない。たとえば、他の再抽出の方法として、境界抽出部1411によって抽出された境界線部に、関数で表現される曲線をフィッティングさせて、フィッティングカーブ(関数曲線)を求め、次に、該フィッティングカーブを平滑化した平滑化曲線を求め、最後に、該平滑化曲線にフィッティングする2次元画像内の画素を、抽出画素としてもよい。フィッティングに用いる関数としては、n次関数、ガウス関数、ローレンツ関数、フォークト関数、これらの関数の組み合わせなどが挙げられる。フィッティングを行う際に用いるフィッティングの評価方法としては、たとえば最小二乗法を用いることができる。