(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。また、本明細書においては、式(2)で表される基を基(2)と記す。他の式で表される基も同様に記す。また、本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、本明細書における単量体は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。また、本明細書におけるR
f基は、アルキル基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基であり、R
F基は、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。
【0015】
<撥水剤組成物>
本発明の撥水剤組成物は、含フッ素共重合体と、媒体とを必須成分として含み、必要に応じて、界面活性剤、添加剤を含む。
【0016】
(含フッ素共重合体)
含フッ素共重合体は、単量体(a)に基づく構成単位、単量体(b)に基づく構成単位、および単量体(c)に基づく構成単位、必要に応じて、単量体(d)に基づく構成単位、単量体(e)に基づく構成単位を有する共重合体である。
【0017】
単量体(a):
単量体(a)は、化合物(1)である。なお、式(1)において、ZとYの境界はZの炭素数が最も少なくなるように定める。
(Z−Y)
nX ・・・(1)。
【0018】
Zは、炭素数が1〜6のR
f基(ただし、該R
f基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)、または基(2)である。
C
iF
2i+1O(CFX
1CF
2O)
jCFX
2− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、X
1およびX
2は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
R
f基としては、R
F基が好ましい。R
f基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
Zとしては、下記の基が挙げられる。
F(CF
2)
4−、
F(CF
2)
5−、
F(CF
2)
6−、
(CF
3)
2CF(CF
2)
2−、
C
kF
2k+1O[CF(CF
3)CF
2O]
h−CF(CF
3)−等。
ただし、kは、1〜6の整数であり、hは0〜10の整数である。
【0019】
Yは、2価有機基(ただし、ポリフルオロアルキレン基を除く。)または単結合である。
2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキレン基は、−O−、−NH−、−CO−、−S−、−SO
2−、−CD
1=CD
2−(ただし、D
1、D
2は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。)等を有していてもよい。
【0020】
Yとしては、下記の基が挙げられる。
−CH
2−、
−CH
2CH
2−
−(CH
2)
3−、
−CH
2CH
2CH(CH
3)−、
−CH=CH−CH
2−、
−S−CH
2CH
2−、
−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−、
−CH
2CH
2−SO
2−CH
2CH
2−、
−W−OC(O)NH−A−NHC(O)O−(C
pH
2p)−等。
ただし、pは、2〜30の整数である。
Aは、分岐のない対照的なアルキレン基、アリレン基またはアラルキレン基であり、−C
6H
12−、−φ−CH
2−φ−、−φ−(ただし、φはフェニレン基である。)が好ましい。
Wは、下記の基のいずれかである。
−SO
2N(R
1)−C
dH
2d−、
−CONHC
dH
2d−、
−CH(R
F1)−C
eH
2e−、
−C
qH
2q−。
ただし、R
1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、dは、2〜8の整数であり、R
F1は、炭素数1〜20のR
F基であり、eは、0〜6の整数であり、qは、1〜20の整数である。R
F1としては、炭素数1〜6のR
F基が好ましく、炭素数4または6のR
F基がより好ましい。
【0021】
nは、1または2である。
Xは、nが1の場合は、基(3−1)〜(3−5)のいずれかであり、nが2の場合は、基(4−1)〜(4−4)のいずれかである。
【0022】
−CR=CH
2 ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH
2 ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH
2 ・・・(3−3)、
−OCH
2−φ−CR=CH
2 ・・・(3−4)、
−OCH=CH
2 ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
【0023】
−CH[−(CH
2)
mCR=CH
2]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CH
2)
mC(O)OCR=CH
2]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CH
2)
mOC(O)CR=CH
2]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
【0024】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、含フッ素共重合体を含む皮膜の柔軟性、疎水性基材に対する含フッ素共重合体の接着性、媒体に対する分散性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が4〜6のR
F基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR
F基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)である化合物が好ましく、炭素数6のR
F基を有するメタクリレートがより好ましい。
【0025】
単量体(b):
単量体(b)は、R
f基を有さず、炭素数が1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。
単量体(b)に基づく構成単位を有することにより、撥水性および撥アルコール性を維持しつつ、基材の塗布する際の帯電防止剤の量を低減することができる。また、含フッ素共重合体のコストを抑えることもできる。
単量体(b)としては、炭素数が1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0026】
単量体(c):
単量体(c)は、ハロゲン化オレフィンである。
単量体(c)に基づく構成単位を有することにより、基材への密着性が向上し、撥水性および撥アルコール性がさらに向上する。
単量体(c)としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンが挙げられ、含フッ素共重合体のコストを抑えることができる点から、塩化ビニル、塩化ビニリデンが好ましく、塩化ビニルがより好ましい。
【0027】
単量体(d):
単量体(d)は、R
f基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体である。
単量体(d)に基づく構成単位を有することにより、撥水性および撥アルコール性がさらに向上する。
【0028】
架橋しうる官能基としては、共有結合、イオン結合または水素結合のうち少なくとも1つ以上の結合を有する官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成できる官能基が好ましい。また、分子内に活性な有機基、水素やハロゲン等の元素を有する化合物であってもよい。
該官能基としては、水酸基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましく、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基が特に好ましい。
【0029】
単量体(d)としては、(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類が好ましい。
単量体(d)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0030】
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体。
【0031】
3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0032】
メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド。
【0033】
t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、アリル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−(2−ビニルオキサゾリン)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル。
【0034】
トリ(メタ)アリルイソシアヌレート(T(M)AIC、日本化成社製)、トリアリルシアヌレート(TAC、日本化成社製)、フェニルグリシジルエチルアクリレートトリレンジイソシアナート(AT−600、共栄社化学社製)、3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(テックコートHE−6P、京絹化成社製)。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル(プラクセルFA、FMシリーズ ダイセル化学工業社製)。
【0035】
モノクロロ酢酸ビニル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスルトールテトラビニルエーテル。
【0036】
単量体(d)としては、撥水性および撥アルコール性の点から、アミド基、水酸基を有する化合物が好ましい。さらに、単量体(d)として、親水性基であるアミド基や水酸基等を有することで、含フッ素共重合体のエマルションを安定化させることができる。含フッ素共重合体のエマルションが安定化することによって、疎水性基材を均一に処理でき、撥水性および撥アルコール性が効率よく発揮される。
単量体(d)として、具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
単量体(e):
単量体(e)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)および単量体(d)を除く単量体である。単量体(e)としては、本発明の効果を阻害しないものであればよく、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)および単量体(d)を除く(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。ただし、炭素数が8以上のR
F基を有する単量体および炭素数が8以上のアルキル基を有する単量体は含まれない。
【0038】
単量体に基づく構成単位の組み合わせとしては、撥水性および撥アルコール性の点から、単量体(a):炭素数4〜6のR
F基を有する(メタ)アクリレートに基づく構成単位、単量体(b):1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく構成単位、単量体(c):塩化ビニルに基づく構成単位、および単量体(d)に基づく構成単位の組み合わせが好ましい。
【0039】
単量体(a)に基づく構成単位の割合は、撥水性および撥アルコール性の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、50〜90質量%であり、55〜80質量%がより好ましく、60〜70質量%が特に好ましい。
単量体(b)に基づく構成単位の割合は、撥水性および撥アルコール性の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、5〜45質量%であり、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
単量体(c)に基づく構成単位の割合は、基材への密着性および含フッ素共重合体のコストの点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、1〜45質量%であり、5〜40質量%がより好ましく、10〜35質量%が特に好ましい。
【0040】
単量体(d)に基づく構成単位の割合は、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、0〜10質量%が好ましく、撥水性および撥アルコール性の点から、1〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
単量体(e)に基づく構成単位の割合は、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
【0041】
本発明における単量体に基づく構成単位の割合は、NMR(核磁気共鳴)分析および元素分析から求める。なお、NMR分析および元素分析から求められない場合は、撥水剤組成物の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出してもよい。
【0042】
含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)が5,000以上であれば、撥水性および撥アルコール性が良好となる。含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)が100,000以下であれば、造膜性が良好となり、その結果、撥水性および撥アルコール性を充分に発揮できる。
含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)で測定される、ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0043】
(媒体)
媒体としては、水、有機溶媒(アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、硫黄化合物等)が挙げられ、水のみまたは水を含む混合媒体が好ましい。水と併用される有機溶媒(重合補助溶媒)としては、グリコール系有機溶媒(ジプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等)、グリコールエーテル系有機溶媒(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)が特に好ましい。
媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、公知のものを用いればよい。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤の配合量は、含フッ素共重合体(100質量部)に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましい。
【0045】
(添加剤)
添加剤としては、公知の撥水剤組成物用の各種添加剤が挙げられる。
【0046】
(撥水剤組成物の製造方法)
本発明の撥水剤組成物は、界面活性剤および重合開始剤の存在下、媒体中にて単量体(a)、単量体(b)、および単量体(c)を含み、必要に応じて、単量体(d)、単量体(e)を含む単量体混合物を重合して含フッ素共重合体のエマルションを得た後、該エマルションに、必要に応じて他の媒体、他の界面活性剤、添加剤を配合する方法によって製造される。
【0047】
重合法としては、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法等が挙げられ、乳化重合法が好ましい。また、一括重合であってもよく、多段重合であってもよい。
含フッ素共重合体の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤および媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤および媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0048】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましい。重合温度は20〜150℃が好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0049】
単量体混合物の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。分子量調整剤としては、メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマ(CH
2=C(Ph)CH
2C(CH
3)
2Ph(Phはフェニル基である。))等が挙げられる。
分子量調整剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0〜5質量部が好ましく、0〜3質量部がより好ましい。
【0050】
また、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、2,4,6−トリメルカプトトリアジン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等の多官能メルカプト化合物の存在下で、単量体混合物を重合してもよい。
【0051】
重合の際に用いられる単量体混合物中の各単量体の仕込み量の割合(質量%)は、以下のとおりである。
単量体(a)の割合は、撥水性および撥アルコール性の点から、単量体混合物(100質量%)のうち、50〜90質量%であり、55〜80質量%がより好ましく、60〜70質量%が特に好ましい。
単量体(b)の割合は、撥水性および撥アルコール性の点から、単量体混合物(100質量%)のうち、5〜45質量%であり、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
単量体(c)の割合は、基材への密着性および含フッ素共重合体のコストの点から、単量体混合物(100質量%)のうち、1〜45質量%であり、5〜40質量%がより好ましく、10〜35質量%が特に好ましい。
【0052】
単量体(d)の割合は、単量体混合物(100質量%)のうち、0〜10質量%が好ましく、撥水性および撥アルコール性の点から、1〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
単量体(e)の割合は、単量体混合物(100質量%)のうち、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
【0053】
本発明の撥水剤組成物は、含フッ素共重合体が媒体中に粒子として分散していることが好ましい。含フッ素共重合体の平均粒子径は、50〜1000nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が50nm以上であれば、界面活性剤を多量に用いる必要がない。平均粒子径が200nm以下であれば、造膜性が良好となり、その結果、撥水性および撥アルコール性を充分に発揮できる。
含フッ素共重合体の平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定できる。
【0054】
撥水剤組成物の固形分濃度は、製造直後においては、撥水剤組成物(100質量%)中、20〜40質量%が好ましく、35〜40質量%がより好ましい。なお、該固形分濃度は、含フッ素共重合体の他、界面活性剤、添加剤も含む濃度である。
撥水剤組成物の固形分濃度は、加熱前の撥水剤組成物の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0055】
(作用効果)
本発明の撥水剤組成物にあっては、短鎖のアルキル基を有する単量体(b)に基づく構成単位を有し、炭素数が8以上のアルキル基を有する単量体に基づく構成単位を有さない含フッ素共重合体を含むため、帯電防止剤によって疎水性基材に付与される帯電防止性を妨げることがない。なお、従来では炭素数が8以上の長鎖アルキル基によって補っていた撥水性および撥アルコール性については、単量体(a)に基づく構成単位の割合を、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、50質量%以上とすることによって、充分なレベルに維持している。
【0056】
また、本発明の撥水剤組成物にあっては、含フッ素共重合体が、単量体(a)に基づく構成単位および単量体(b)に基づく構成単位を有し、炭素数が8以上のR
F基を有する単量体に基づく構成単位を有さないため、環境負荷を低く抑えることができる。具体的には、環境への影響が指摘されている、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびその前駆体、類縁体の含有量(固形分濃度20%とした場合の含有量)を国際公開第2009/081822号パンフレットに記載の方法によるLC−MS/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法)の分析値として検出限界以下にすることができる。
【0057】
<疎水性基材処理剤組成物>
本発明の疎水性基材処理剤組成物は、本発明の撥水剤組成物と、浸透剤と、帯電防止剤とを含む。
本発明の疎水性基材処理剤組成物は、本発明の撥水剤組成物を、必要に応じて希釈用媒体で希釈した後、浸透剤、帯電防止剤、必要に応じて他の併用剤を配合することにより調製される。
【0058】
希釈後の撥水剤組成物の固形分濃度は、希釈後の撥水剤組成物(100質量%)中、0.2〜5質量%が好ましく、0.3〜4質量%がより好ましい。
希釈用の媒体としては、水、有機溶媒が挙げられ、水のみまたは水を含む混合媒体が好ましい。
【0059】
浸透剤を用いることによって、本発明の撥水剤組成物を疎水性基材に浸透させることができる。
浸透剤としては、アルコール、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、具体的には、炭素数が1〜10のアルキル基を有するアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、NRW−200(Mitsubishi International PolymerTrade Corporation社製)等が挙げられる。浸透剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
浸透剤の濃度は、疎水性基材処理剤組成物(100質量%)中、0.01〜1.0質量%が好ましく、疎水性基材への浸透性と、撥水性および撥アルコール性との両立の点から、0.1〜0.5質量%がより好ましい。
【0060】
帯電防止剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、アニオン性界面活性剤としては、リン酸エステル系化合物、たとえば、ブチルリン酸金属塩としての、ZELEC TY(Stepan社製)、AS−300(Mitsubishi International Polymer Trade Corporation社製)が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系化合物が、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウムクロリド等が、両性界面活性剤としては、アミドアルキルベタイン系化合物等が挙げられる。
帯電防止剤の濃度は、疎水性基材処理剤組成物(100質量%)中、0.01〜1.0質量%が好ましく、帯電防止剤の効果と、撥水性および撥アルコール性との両立の点から、0.1〜0.5質量%がより好ましい。
【0061】
他の併用剤としては、pH調整剤、難燃剤、柔軟剤、スリップ防止剤、ほつれ防止剤、防しわ剤、汚れ防止剤等が挙げられる。
【0062】
本発明の疎水性基材処理剤組成物にあっては、帯電防止剤と、該帯電防止剤によって疎水性基材に付与される帯電防止性を妨げることなく、疎水性基材に充分な撥水性および撥アルコール性を付与でき、かつ環境負荷の低い本発明の撥水剤組成物と、を含むため、疎水性基材に、充分な帯電防止性と充分な撥水性および撥アルコール性とを同時に付与できる。また、環境負荷も低くできる。
【0063】
<物品>
本発明の物品は、疎水性基材を、本発明の疎水性基材処理剤組成物で処理してなるものである。
疎水性基材の材料としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン等が挙げられる。
疎水性基材の形態としては、ポリオレフィン不織布(ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン、ポリエチレン混紡不織布等)、ナイロン不織布、ポリエステル不織布等が挙げられ、医療用ガウンとしてはポリプロピレン不織布が好ましい。
【0064】
処理方法としては、たとえば、疎水性基材を本発明の疎水性基材処理剤組成物に浸漬した後、乾燥する方法;本発明の疎水性基材処理剤組成物を泡加工で疎水性基材の表面に塗布した後、乾燥する方法;ロール、ブレード等によって疎水性基材の表面に本発明の疎水性基材処理剤組成物をコートした後、乾燥する方法;疎水性基材の表面に本発明の疎水性基材処理剤組成物をスプレー塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0065】
本発明の物品にあっては、疎水性基材を本発明の疎水性基材処理剤組成物で処理して得られたものであるため、充分な帯電防止性、撥水性および撥アルコール性を有し、かつ環境負荷が低い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜6は実施例であり、例7〜10は比較例である。
【0067】
<含フッ素共重合体の物性>
下記の回収方法にて回収された含フッ素共重合体について、分子量の測定を行った。
(回収方法)
エマルションの6gを、2−プロパノール(以下、IPAと記す。)の60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体をデカントした。再度、IPAの12gを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して共重合体を得た。
【0068】
(分子量)
回収した含フッ素共重合体を、フッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)=6/4(体積比)の混合溶媒に溶解させ、1質量%の溶液とし、0.2μmのフィルタに通し、分析サンプルとした。該サンプルについて、質量平均分子量(Mw)を測定した。測定条件は下記のとおりである。
【0069】
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC、
カラム:Polymer laboratories社製、MIXED−Cおよび100Aを直列でつなげたもの、
測定温度:37℃、
注入量:50μL、
流出速度:1mL(ミリリットル)/分、
標準試料:Polymer laboratories社製、EasiCalPM−2、
溶離液:フッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/THF=6/4(体積比)の混合溶媒。
【0070】
(平均粒子径)
エマルション中の含フッ素共重合体の平均粒子径は、光散乱装置(大塚電子社製、FPAR−1000)を用いて測定した。
【0071】
<物品の評価>
(耐水圧)
Worldwide Strategic Partners(以下、WSPと記す。)80.1にしたがい、昇圧速度:60mbar/分の条件で、三点水滴が通過した圧力、または評価用サンプルが破断した圧力を耐水圧とした。
【0072】
(撥アルコール性)
WSP80.8にしたがい、表1に示す混合比のイソプロピルアルコール/水の混合溶媒を、評価用サンプル上に滴下し、5分間浸透しなかった混合溶媒の表1中のナンバーの最大の数値を評価値とした。
【0073】
【表1】
【0074】
(表面電気抵抗値)
WSP40.1にしたがい、評価用サンプルに荷電圧(100V)を印加し、30秒後の表面電気抵抗値を測定した。
【0075】
(略号)
単量体(a):
C6FMA:C
6F
13C
2H
4OC(O)C(CH
3)=CH
2。
【0076】
単量体(b):
BA:n−ブチルアクリレート(関東化学社製)、
BMA:n−ブチルメタクリレート(関東化学社製)。
【0077】
単量体(b’):
LA:ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、LA)、
STA:ステアリルアクリレート(日油社製、STA)、
BeA:ベヘニルアクリレート(日油社製、ブレンマーVA)。
【0078】
単量体(c):
VCM:塩化ビニル。
【0079】
単量体(d):
PE−350:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPE−350、エチレンオキシド付加モル数8、ポリエチレングリコールジメタクリレートを約10質量%含む。)、
N−MAM:N−メチロールアクリルアミド(笠野興産社製、N-MAM)。
【0080】
界面活性剤:
Aq−18:モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(ライオン・アクゾ社製、アーカード18−63)、
P−204:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(日本油脂社製、プロノン204、エチレンオキシドの割合:40質量%)、
AM3130N:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(日本サーファクタント社製、NIKKOL AM−3130N)、
E430:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王社製、エマルゲン430、エチレンオキシド付加モル数30)、
【0081】
分子量調整剤:
DoSH:n−ドデシルメルカプタン。
【0082】
重合開始剤:
VA−061:2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬社製、VA−061)。
【0083】
媒体:
水:イオン交換水。
【0084】
重合補助溶媒:
DPG:ジプロピレングリコール、
ソルフィット:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(クラレ社製)、
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(協和発酵ケミカル社製、アーコソルブDPM)。
【0085】
〔例1〕
ガラス製オートクレーブに、C6FMAの209.5g、BMAの34.9g、PE−350の6.98g、P−204の3.1g、AM3130Nの3.1g、E−430の10.8g、水の434.2g、DPGの104.8g、およびDoSHの3.5gを入れて、60℃で60分間加温した後、高圧乳化機(日本精機社製)を用いて10MPaで前処理し、40MPaで本処理して乳化液を得た。
得られた乳化液の714.8gを、ステンレス製反応容器に入れ、VA−061の1.4gを加えて、30℃以下に冷却した。気相を窒素置換し、VCMの78.2gを導入した後、撹拌しながら55℃で1時間、60℃で10時間重合反応を行い、固形分濃度34.0質量%のエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0086】
〔例2〕
PE−350を0g、VCMを83.0gに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0087】
〔例3〕
C6FMAを244.4g、BMAを69.8g、およびVCMを22.4gに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0088】
〔例4〕
PE−350をN−MAMに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0089】
〔例5〕
BMAをBAに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0090】
〔例6〕
AM3130NをAq−18に変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0091】
〔例7〕
C6FMAを139.7g、BMAを104.8gに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0092】
〔例8〕
BMAをLAに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0093】
〔例9〕
BMAをSTAに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0094】
〔例10〕
BMAをBeAに変更した以外は、例1と同様にしてエマルションからなる撥水剤組成物を得た。
【0095】
〔評価〕
撥水剤組成物を、固形分濃度が0.25質量%になるように水で希釈し、浸透剤(Mitsubishi International PolymerTrade Corporation社製、NRW−200)を、濃度が0.25質量%となるように添加し、さらに帯電防止剤(Mitsubishi International PolymerTrade Corporation社製、AS−300)を、濃度が0.3質量%となるように添加して疎水性基材処理剤組成物を得た。
ポリプロピレン不織布(坪量:63g/m2)を疎水性基材処理剤組成物に浸漬した後、マングルで余分な液を除去した。標準ピックアップは140%とした。ポリプロピレン不織布を125℃で4分間熱処理し、評価用サンプルを得た。サンプルの撥水性(耐水圧)、撥アルコール性、および表面電気抵抗値(帯電防止性)を評価した。
結果を表2および3にまとめて示す。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】