(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の層Aと層Bとを有する圧延成形用積層体であって、層Aの厚みと層Bの厚みの合計を100%としたときの、層Aの厚みの割合が0.5%以上10%以下、層Bの厚みの割合が90%以上99.5%以下であり、層Aは、前記積層体の少なくとも一方の表面をなして配置されている圧延成形用積層体。
層A:プロピレン重合体成分(A1)と熱可塑性エラストマー成分(A2)とを含有し、(A1)の含有量が20重量%以上80重量%以下であり、(A2)の含有量が20重量%以上80重量%以下である層(ただし、(A1)の含有量と(A2)の含有量の合計を100重量%とする)。
層B:プロピレン重合体成分(B1)と無機フィラー(B2)とを含有し、(B1)の含有量が50重量%以上80重量%以下であり、(B2)の含有量20重量%以上50重量%以下である層(ただし、(B1)の含有量と(B2)の含有量の合計を100重量%とする)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[層A]
本発明の層Aは、プロピレン重合体成分(A1)と、熱可塑性エラストマー成分(A2)を含有する。以下、プロピレン重合体成分(A1)を成分(A1)と、また、熱可塑性エラストマー成分(A2)を成分(A2)と、それぞれ記すことがある。
【0009】
プロピレン重合体成分(A1)とは、プロピレン単独重合体またはプロピレンランダム共重合体である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
プロピレン単独重合体とは、プロピレンに由来する構成単位からなる重合体である。プロピレン単独重合体として、例えば、アイソタクチック構造を有するプロピレン単独重合体、またはシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体が挙げられる。プロピレン単独重合体として、好ましくは、アイソタクチック構造を有するプロピレン単独重合体である。
【0011】
アイソタクチック構造を有するプロピレン単独重合体である場合、その13C−NMR法により測定されたアイソタクチック・ペンタッド分率(以下、[mmmm]と表記する)は、好ましくは0.90以上であり、より好ましくは0.95以上である。
【0012】
ここで、アイソタクチック・ペンタッド分率とは、13C−NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンに由来する構成単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来する構成単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める[mmmm]ピークの分率として算出される値である。ここで、[mmmm]ピークとは、5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来するピークである。
【0013】
なお、この[mmmm]は、A.Zambelliらの報告(Macromolecules,1973年,6号)に記載の方法に従って求めることができる。
【0014】
一方、シンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体である場合、13C−NMR法により測定されたシンジオタクチック・ペンタッド分率(以下、[rrrr]と表記する)は、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.90以上である。
【0015】
ここで、シンジオタクテチック・ペンタッド分率とは、13C−NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのシンジオタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンに由来する構成単位が5個連続してラセモ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来する構成単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める[rrrr]ピークの分率として算出される値である。ここで、[rrrr]ピークとは、5個連続してラセモ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来するピークである。
【0016】
なお、[rrrr]は、特開2008−169316号公報に記載の方法で求めることができる。
【0017】
プロピレンランダム共重合体とは、プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体、またはプロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体である。
【0018】
炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられるが、好ましくは1−ブテン、または1−ヘキセンである。
【0019】
プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−(1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−イソブテンランダム共重合体、プロピレン−(1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−(2−メチル−1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−(3−メチル−1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−(1−ヘキセン)ランダム共重合体、プロピレン−(2−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−(3−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−(4−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−(1−オクテン)ランダム共重合体、プロピレン−(1−ノネン)ランダム共重合体、プロピレン−(1−デセン)ランダム共重合体などが挙げられる。プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体として、好ましくは、プロピレン−(1−ブテン)ランダム共重合体、またはプロピレン−(1−ヘキセン)ランダム共重合体である。
【0020】
プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−イソブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(2−メチル−1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(3−メチル−1−ブテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(1−ヘキセン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(2−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(3−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(4−メチル−1−ペンテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(1−オクテン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(1−ノネン)ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−(1−デセン)ランダム共重合体などが挙げられる。プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン−(1−ブテン)ランダム共重合体である。
【0021】
プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、60重量%以上99.9重量%以下であることが好ましく、70重量%以上99.9重量%以下であることがより好ましい。プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、0.1重量%以上40重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。ただし、プロピレンに由来する構成単位と、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の全量を、100重量%とする。プロピレンに由来する構成単位の含有量、およびエチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、13C−NMR法により求められる。
【0022】
プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、60重量%以上99.9重量%以下であることが好ましく、70重量%以上99.9重量%以下であることがより好ましい。プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の、エチレンに由来する構成単位の含有量は、0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体の、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。ただし、プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体を、100重量%とする。プロピレンに由来する構成単位の含有量、エチレンに由来する構成単位の含有量、および炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、13C−NMR法により求められる。
【0023】
プロピレン重合体成分(A1)の示差走査熱量測定(以下、DSCとする)により求められる融点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは155℃以上であり、より好ましくは160℃以上である。また、プロピレン重合体成分(A1)のDSCにより求められる融解熱量は、好ましくは60J/g以上であり、より好ましくは80J/g以上、より好ましくは90J/g以上である。
【0024】
融点とは、プロピレン重合体成分(A1)中に含まれる結晶相の融解温度である。具体的には、プロピレン重合体成分(A1)を昇温したときに得られるDSC曲線において、最も高温側の吸熱ピークにおけるピークトップ温度である。
【0025】
融解熱量とは、プロピレン重合体成分(A1)中に含まれる結晶相が、溶融状態へ転移するために必要な熱量であり、具体的には、プロピレン重合体成分を昇温したときに得られるDSC曲線における全吸熱ピークのピーク面積の合計として求められる。
【0026】
なお、融点と融解熱量は、DSCを用いて、以下の条件で測定する。(i)結晶性プロピレン重合体成分(A1)約10mgを、窒素雰囲気下、220℃で5分間熱処理した後、降温速度10℃/分で50℃まで冷却する。(ii)次いで、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度10℃/分で加熱する。
【0027】
プロピレン重合体成分(A1)のメルトフローレートは、0.05g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上10g/10分以下であることがより好ましい。メルトフローレートは、JIS K6758に規定された方法に従って、230℃、2.16kg荷重で測定される値である。プロピレン重合体成分(A1)のメルトフローレートの値が小さいほど、成形体は耐衝撃性に優れる。
【0028】
本発明において、プロピレン重合体(A1)は、公知の固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、必要に応じて更に電子供与体とを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、該遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させて形成される触媒系などを用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
【0029】
熱可塑性エラストマー成分(A2)は、オレフィン系エラストマー又はスチレン系エラストマーであり、これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0030】
本発明において、オレフィン系エラストマーとは、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位とを有する共重合体である。炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンとして、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテンであり、より好ましくは、プロピレンまたは1−ブテンである。オレフィン系エラストマーは、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位を、2種以上有していても良い。
【0031】
オレフィン系エラストマーは、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位や、エチレンに由来する構成単位に加えて、他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。該他のモノマーとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどの炭素数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。他のモノマーとして、好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンである。オレフィン系エラストマーは、他のモノマーに由来する構成単位を、2種以上有していてもよい。
【0032】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−プロピレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−プロピレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−(5−エチリデン−2−ノルボルネン)共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−(1,4−ヘキサジエン)共重合体、エチレン−プロピレン−(5−ビニル−2−ノルボルネン)共重合体などが挙げられる。オレフィン系エラストマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。オレフィン系エラストマーとして、好ましくは、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、またはエチレン−プロピレン−(5−エチリデン−2−ノルボルネン)共重合体であり、より好ましくはエチレン−プロピレン共重合体、またはエチレン−(1−ブテン)共重合体である。
【0033】
オレフィン系エラストマーの、エチレンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは30重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは、40重量%以上80重量%以下である。オレフィン系エラストマーのプロピレンまたは炭素原子数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは5重量%以上70重量%以下であり、より好ましくは20重量%以上60重量%以下である。ただし、エチレンに由来する構成単位の含有量と、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量の合計を、100重量%とする。
【0034】
オレフィン系エラストマーが、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位や、エチレンに由来する構成単位に加えて、他のモノマーに由来する構成単位を有している場合、他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、好ましくは1重量部以上40重量部以下であり、より好ましくは5重量部以上25重量部以下である。ただし、エチレンに由来する構成単位の含有量と、プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量の合計を、100重量部とする。
プロピレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量、エチレンに由来する構成単位の含有量、および他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、13C−NMR法により求められる。
【0035】
オレフィン系エラストマーは、公知の触媒を用いて、公知の重合方法により製造することができる。公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系、メタロセン触媒系等が挙げられる。公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0036】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位と共役ジエンに由来する構成単位からなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体の共役ジエン由来の二重結合が水素添加されたブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。スチレン系エラストマーとして、好ましくは、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位と共役ジエンに由来する構成単位からなるブロック共重合体の、共役ジエンに由来する二重結合が80%以上水素添加されたブロック共重合体であり、より好ましくは共役ジエンに由来する二重結合が85%以上水素添加されたブロック共重合体である。
【0037】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンゴム(SIS)などのブロック共重合体、またはその水素添加物などが挙げられる。
【0038】
熱可塑性エラストマー成分(A2)のDSCにより求められる融点は、好ましくは150℃未満である。また、熱可塑性エラストマー成分(A2)のDSCにより求められる融解熱量は、好ましくは120J/g未満であり、より好ましくは70J/g未満であり、より好ましくは60J/g未満である。
【0039】
ここで、熱可塑性エラストマー成分(A2)の融点とは、熱可塑性エラストマー成分(A2)中に含まれる結晶相の融解温度であり、具体的には、熱可塑性エラストマー成分(A2)を昇温したときに得られるDSC曲線において、最も高温側の吸熱ピークにおけるピークトップ温度である。
【0040】
熱可塑性エラストマー成分(A2)の融解熱量とは、熱可塑性エラストマー成分(A2)中に含まれる結晶相が、溶融状態へ転移するために必要な熱量であり、具体的には、熱可塑性エラストマー成分(A2)を昇温したときに得られるDSC曲線において、全吸熱ピークのピーク面積の合計である。
【0041】
なお、前記融点と前記融解熱量は、DSCを用いて、以下の条件で測定する。(i)熱可塑性エラストマー成分(A2)約10mgを、窒素雰囲気下、220℃で5分間熱処理した後、降温速度10℃/分で50℃まで冷却する。(ii)次いで、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度10℃/分で加熱する。
【0042】
熱可塑性エラストマー成分(A2)としては、経済性や耐衝撃性の観点から、オレフィン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0043】
熱可塑性エラストマー成分(A2)のメルトフローレートは、1g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、2g/10分以上15g/10分以下であることがより好ましい。メルトフローレートは、JIS K6758に規定された方法に従って、190℃、2.16kg荷重で測定される。熱可塑性エラストマー成分(A2)のメルトフローレートの値が小さいほど、本圧延成形用積層体から得られる成形体は耐衝撃性に優れる。
【0044】
本発明の層Aに含まれるプロピレン重合体成分(A1)の含有量は、20質量%以上80重量%以下であり、好ましくは、(A1)の含有量が25質量%以上50重量%以下である。本発明の層Aに含まれる熱可塑性エラストマー成分(A2)の含有量は、20重量%以上80重量%以下であり、好ましくは30重量%以上60重量%以下である。ただし、(A1)の含有量と(A2)の含有量の合計を100重量%とする。
【0045】
[層B]
本発明の層Bは、プロピレン重合体成分(B1)と、無機フィラー(B2)を含有する。
【0046】
プロピレン重合体成分(B1)としては、層Aに含まれるプロピレン重合体成分(A1)と同様のものを用いることができる。
【0047】
無機フィラー(B2)としては、マイカ、ガラスフレーク、ガラス繊維、タルクなどが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。無機フィラー(B2)としては、タルクが好ましい。
【0048】
(レーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L))
無機フィラー(B2)としてマイカやタルクなどの鱗片状フィラーを使用する場合、無機フィラー(B2)の、JIS R1629に従ってレーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は、本圧延成形用積層体から得られる成形体の衝撃性の観点から、10μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0049】
メディアン径D50(L)は、レーザー法粒度分布測定機を用いて、JIS R1629に従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求められる。レーザー法粒度分布測定機としては、例えば、日機装株式会社MT−3300EX−IIなどが挙げられる。
【0050】
(遠心沈降法により測定されるメディアン径D50(S))
無機フィラー(B2)としてマイカやタルクなどの鱗片状フィラーを使用する場合、無機フィラー(B2)の、JIS R1629に従って遠心沈降法により測定されるメディアン径D50(S)は、2μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0051】
メディアン径D50(S)は、遠心沈降法粒度分布測定機を用いて、JIS R1619に従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求められる。遠心沈降法粒度分布測定機としては、例えば、株式会社島津製作所製島津製作所SA−CP3などが挙げられる。
【0052】
(アスペクト比定数)
無機フィラー(B2)としてマイカやタルクなどの鱗片状フィラーを使用する場合、無機フィラー(B2)のアスペクト比定数は、2以上15以下であることが好ましい。アスペクト比定数は、上記メディアン径D50(L)と上記メディアン径D50(S)の値から下記の式(1)によって求められる。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S) 式(1)
【0053】
無機フィラー(B2)がガラス繊維などの繊維状フィラーを使用する場合、無機フィラー(B2)の数平均繊維長は、1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0054】
本発明の層Bに含まれるプロピレン重合体成分(B1)の含有量は、50重量%以上80重量%以下であり、好ましくは、60重量%以上75重量%以下である。本発明の層Bに含まれる無機フィラー(B2)の含有量は、20重量%以上50重量%以下であり、好ましくは、25重量%以上40重量%以下である。ただし、(B1)の含有量と(B2)の含有量の合計を、100重量%とする。
【0055】
本発明の層Aは、無機フィラー(B2)を含んでいても良い。層Aが無機フィラー(B2)を含む場合、無機フィラー(B2)の含有量は、層A100重量部に対して、5重量部以上45重量部以下であり、好ましくは10重量部以上25重量部以下である。
本発明の層Bは、熱可塑性エラストマー成分(A2)を含んでいても良い。層Bが熱可塑性エラストマー(A2)を含む場合、熱可塑性エラストマー(A2)の含有量は、層B100重量部に対して、0.5重量部以上12重量部以下であり、好ましくは1重量部以上3重量部以下である。
【0056】
本発明の層Aおよび層Bを構成する各成分の混合方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機で、各成分を溶融混練する方法や、プロピレン重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B1)、または熱可塑性エラストマー成分(A2)を製造するための重合反応中に、各成分を混合する方法などが挙げられる。
【0057】
本発明の層Aおよび層Bを製造する方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、射出成形法などが挙げられる。
【0058】
[圧延成形用積層体]
本発明の圧延成形用積層体は、少なくとも1層の層Aと少なくとも1層の層Bを含有する積層体である。
【0059】
本発明の圧延成形用積層体において、層Aは、該積層体の少なくとも一方の表面をなして配置されている。圧延成形用積層体は、1つの層Aと1つの層Bからなる二層積層体でもよく、層Bの両側に層Aがそれぞれ配置されている三層積層体であってもよく、少なくとも1層の層Aと複数の層Bからなり、層Aが少なくとも一方の表面をなして配置されている多層積層体であってもよい。
【0060】
本発明の圧延成形用積層体において、層Aの総厚みと層Bの総厚みの合計を100%としたときの、層Aの厚みの割合は好ましくは0.5%以上10%以下であり、層Bの厚みの割合は好ましくは90%以上99.5%以下である。より好ましくは、層Aの厚みの割合が0.8%以上5%以下であり、層Bの厚みの割合が95%以上99.2%以下である。
【0061】
本発明の圧延成形用積層体には、成形体中の無機フィラー(B2)の分散性を向上させるために、変性重合体を含有していても良い。変性重合体として、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0062】
変性重合体は、耐衝撃性を良好なものにするために、圧延成形用積層体の全量100重量部あたり、3重量部から15重量部含有されていることが好ましい。
【0063】
本発明の圧延成形用積層体は、各種添加剤や結晶造核剤を含んでいても良い。
【0064】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0065】
結晶造核剤としては、ソルビトール系核剤、有機リン酸エステル金属塩系化合物、有機カルボン酸金属塩系化合物、ロジン系化合物などのα晶核剤や、アミド系化合物、キナナクリドン系化合物などのβ晶核剤が挙げられる。結晶造核剤の含有量は、添加した効果を充分に得るために、圧延成形用積層体を100重量部として、0.001重量部以上であることが好ましく、結晶核剤の分散性の悪化を抑えるために、圧延成形用積層体の全量100重量部あたり、1.5重量部以下であることがより好ましい。
【0066】
圧延成形用積層体は、共押出法、層Aと層Bを加熱して圧着する方法、層Aと層Bとを接着層を介して接着する方法など、公知の積層方法で製造することができる。圧延成形用積層体は、層Aと層Bを、接着せずに重ね合わせたものでも良い。
【0067】
本発明の成形体は、本発明の積層体を圧延成形することで得られ、具体的には、積層体の厚み方向に加熱圧縮することで得られる。本発明の成形体は、成形体中に含まれる無機フィラー(B2)の厚み方向に垂直な面が、加熱圧縮時に圧延成形用積層体に含まれる各成分が流動する方向と平行に配向していることが好ましい。
【0068】
成形体中における無機フィラー(B2)の配向状態は、成形体の広角X線散乱を測定することにより評価することができる。
無機フィラー(B2)の配向状態は、無機フィラー(B2)の配向度によって定量化できる。無機フィラー(B2)の配向度は、二次元広角X線散乱像の無機フィラー(B2)の厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布の半値幅を用いて、下記の式(2)により求めることができる。尚、方位角度強度分布を計算するときの散乱角度幅は、前記格子面に由来する回折ピーク位置から±0.5°の範囲とする。
配向度(%)={(180−hwd)/180}×100 式(2)
(式(2)中、hwdは、無機フィラー(B2)の厚み方向に垂直な格子面の方位角強度
分布における半値幅(単位:度)を表す。)
上記配向度の値が大きいほど、無機フィラー(B2)の面が、加熱圧縮時に圧延成形用積層体に含まれる各成分が流動する方向と平行に配向していると言える。
【0069】
本発明の成形体に含まれる無機フィラー(B2)の配向度は、80%以上であり、耐衝撃性を良好なものにするため、好ましくは85%以上である。
【0070】
プロピレン重合体成分(B1)の結晶内の原子は、三次元的な周期性をもって繰り返し配列されているため、その周期性を考慮して、結晶は一定の構造を持った平行六面体が三次元的に積み重なったものと考えられる。このような平行六面体を単位格子いう。この単位格子の三辺をそれぞれ、a軸、b軸、c軸と呼ぶ。α晶ポリプロピレン結晶の単位格子では、分子鎖方向をc軸といい、その他の結晶軸の2辺のうち、短軸をa軸、長軸をb軸という。
【0071】
本発明における成形体は、プロピレン重合体成分(B1)の結晶構造のうち、α晶のc軸またはa軸が、加熱圧縮時の流動方向に平行に配向していることが好ましい。結晶性プロピレン重合体成分(B1)のα晶のc軸またはa軸が、加熱圧縮時に圧延成形用積層体に含まれる各成分が流動する方向に配向していることによって、成形体の衝撃強度を高くすることができる。
【0072】
プロピレン重合体成分(B1)の結晶の配向状態は、成形体の広角X線散乱を測定することにより評価を行うことができる。
プロピレン重合体成分(B1)の結晶の配向状態は、結晶配向度によって定量化できる。結晶配向度は、二次元広角X線散乱像の(040)面の方位角強度分布の半値幅を用いて、下記の式(3)により求めることができる。尚、方位角度強度分布を計算するときの散乱角度幅は、前記(040)面に由来する回折ピーク位置から±0.5°の範囲とする。
結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100 式(3)
(式(3)中、hw040は、プロピレン重合体成分(B1)のα晶における(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
結晶配向度の値が大きいほど、プロピレン重合体成分(B1)のα晶のc軸またはa軸が、加熱圧縮時に圧延成形用積層体に含まれる各成分が流動する方向と平行に配向していると言える。
【0073】
本発明の成形体に含まれるプロピレン重合体成分(B1)の結晶配向度は、75%以上であり、好ましくは、80%以上である。
【0074】
本発明の成形体は、前述の圧延成形用積層体を、プロピレン重合体成分(B1)の融点近傍の温度で加熱圧縮することにより得られる。
【0075】
圧延成形用積層体を加熱圧縮する際、加熱圧縮に用いられる装置における圧延成形用積層体と接触する加圧部の温度は、プロピレン重合体成分(B1)の融点(Tm)近傍の温度であり、好ましくは融点(Tm)−20℃以上、融点(Tm)+10℃以下であり、より好ましくは融点(Tm)−10℃以上、融点(Tm)+5℃以下である。
【0076】
圧延成形用積層体を加熱圧縮する時間は、成形体の耐衝撃性を良好なものにするためや、積層体に含まれる成分の熱劣化を防止するために、好ましくは15秒以上60分以下であり、より好ましくは1分以上30分未満であり、更に好ましくは10分以上15分未満である。
【0077】
圧延成形用積層体を加熱圧縮する装置としては、例えば、温度調節機能を有するプレス成形機、トラックベルト型の加熱加圧成形機、加圧可能なベルト型のシーラー、圧延ロール成形機などが挙げられる。また、加熱圧縮する方法としては、温度調節機能を有するプレス成形機により、圧延成形用積層体を厚み方向から加熱圧縮する方法が好ましい。
【0078】
圧延成形用積層体を加熱圧縮する方法として、加熱圧縮する装置の、圧延成形用積層体と接触する加圧部に、潤滑剤を塗ることも可能である。潤滑剤としては、例えば、シリコンオイルなどが挙げられる。潤滑剤を塗ることで、圧延成形用積層体と加圧部の摩擦抵抗が軽減され、より円滑に圧延成形用積層体を加熱圧縮することができるため、成形サイクルの向上および加熱圧縮する装置の負荷低減に繋がる。
【0079】
本発明で得られた成形体は、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法などの公知の方法を用いて、更に所要の形状に成形加工することができる。
【0080】
本発明で得られた成形体は、他の樹脂・金属・紙・皮革と張り合わせを行い、多層構造として用いることが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて説明する。実施例及び比較例で使用したプロピレン重合体成分、熱可塑性エラストマー成分及び無機フィラーを下記に示す。
【0082】
(1)プロピレン重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B1)
特開平10−2123219号公報に記載の触媒を用い、気相重合法によって、重合反
応器内の水素濃度と、重合温度を制御することによって、プロピレン単独重合体を得た。
(A1−1)プロピレン単独重合体
MFR(230℃、2.16kg荷重):7.8g/10分
アイソタクチック・ペンタッド分率:0.977
融点:163℃
融解熱量:106J/g
(B1−1)プロピレン単独重合体
MFR(230℃、2.16kg荷重):7.8g/10分
アイソタクチック・ペンタッド分率:0.977
融点:163℃
融解熱量:106J/g
【0083】
(2)熱可塑性エラストマー成分(A2)
(A2−1)エチレン−(1−ブテン)共重合体
(商品名)エンゲージ ENR7447:ダウデュポンエラストマー社製
MFR(190℃、2.16kg荷重):5.0g/10分
融点:47℃
融解熱量:47J/g
エチレン含有量:70重量%
1−ブテン含有量:30重量%
【0084】
(3)無機フィラー(B2)
(B2−1)タルク
(商品名)HAR W92:Imerys製
D50(L):11μm
D50(S):2.5μm
【0085】
原料成分及び成形体の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 6758に規定された方法に従って、測定した。測定温度230℃もしくは190℃で、荷重2.16kgで測定した。
【0086】
(2)アイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm])
直径10mmの試験管の中で、約200mgの樹脂サンプルを3mlのオルトジクロロベンゼンに完全に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRのスペクトルの測定を行った。13C−NMRのスペクトルの測定条件を以下に示す。
<測定条件>
機種:Bruker Avance600
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
測定結果から、A.Zambelliらの報告(Macromolecules,1973年,6号,925項から926項)に記載の方法に従って、[mmmm]を計算した。
【0087】
(3)融点(Tm、単位:℃)および、融解熱量(ΔH、単位:J/g)
プロピレン重合体成分または熱可塑性エラストマー成分を熱プレス成形(230℃で5分間予熱後、1分間かけて5.0MPaまで昇圧し2分間保圧し、次いで、30℃、5.0MPaで5分間冷却)して、厚み約0.5mmのシートを作製した。示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、Diamond DSC)を用い、プロピレン重合体成分および熱可塑性エラストマー成分の融点および融解熱量を測定した。測定条件を以下に記す。
<測定条件>
作製されたシートの10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間熱処理後、降温速度5℃/分で50℃まで冷却し、次いで、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した。
<TmおよびΔHの算出法>
DSCの昇温時に得られるDSC曲線において、最も高温側の吸熱ピークにおけるピークトップ温度をTm(℃)とした。また、上記DSC曲線において、吸熱に由来する全ピークのピーク面積をΔH(J/g)とした。
【0088】
(4)エチレンに由来する構成単位の含有量および1−ブテンに由来する構成単位の含有量
直径10mmの試験管の中で、約200mgの樹脂サンプルを3mlのオルトジクロロベンゼンに完全に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRのスペクトルの測定を行った。13C−NMRのスペクトルの測定条件を以下に示す。
<測定条件>
機種:Bruker Avance600
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
測定結果から、M.Kakugoらの報告(Macromolecules,1982年,15号,1150項から1152項)に記載の方法に従って、エチレンに由来する構成単位の含有量を算出し、1−ブテンに由来する構成単位の含有量は、100重量%からエチレンに由来する構成単位の含有量を差し引きすることで算出した。
【0089】
(6)レーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)
レーザー回折法により測定されるメディアン径D50(L)は、以下の方法で求めた。ホモジナイザを用いてエタノール中に分散させた試料を、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製「MT−3300EX II)を用いて、JIS R1629に従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値よりD50(L)を求めた。
【0090】
(7)遠心沈降法により測定されるメディアン径D50(S)
遠心沈降法により測定されるメディアン径D50(S)は、以下の方法で求めた。超音波洗浄装置を用いてエタノール中に分散させた試料を、遠心沈降式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社製「SA−CP3」)を用いて、JIS R1619従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値よりD50(S)を求めた。
【0091】
(5)広角X線散乱
成形体の広角X線散乱を以下の条件で測定した。
<測定条件>
機種 :リガク製ultraX18
X線源:CuKα線
電圧 :40kV
電流 :200mA
検出器:X線光子計数型2次元検出器PILATUS
測定法:透過法
<測定方法>
(1)成形体を製造した時に加熱圧縮によって樹脂組成物が流動した方向の第一の軸と、これに直交する前記成形体の厚み方向の第二の軸との両方を含む平面に平行に前記成形体を切断して、切断面を形成した。(2)前記切断面における前記成形体の両表面から等距離の深さ位置にX線を照射して広角X線散乱プロファイルを測定した。
【0092】
<成形体に含まれるプロピレン重合体成分(B1)の結晶配向度測定>
以下の方法を用いてプロピレン重合体成分(B1)の結晶配向度を評価した。
(1)上記測定によって得られた広角X線散乱プロファイルを用いて、プロピレン重合体成分(B1)のα晶の(040)面に由来する方位角強度分布を求めた。
(2)得られた方位角強度分布から、ピーク位置における半値幅を求め、下記の式(3)により結晶配向度を求めた。
結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100 式(3)
(式中、hw040は、ポリプロピレン重合体成分(B1)の(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【0093】
<成形体に含まれる無機フィラー(B2)の配向度測定>
以下の方法を用いて無機フィラー(B2)の結晶配向度を評価した。
(1)上記測定によって得られた広角X線散乱プロファイルを用いて、無機フィラー(B2)の厚み方向に垂直な格子面に由来する方位角強度分布を求めた。
(2)得られた方位角強度分布から、ピーク位置における半値幅を求め、下記の式(2)により無機フィラー(B2)の配向度を求めた。
配向度(%)={(180−hwd)/180}×100 式(2)
(式中、hwdは、無機フィラー(B2)の厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【0094】
<アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2)>
成形体から幅12.8mm、長さ63.5mmの大きさの試験片を切り出して測定に用いた。測定条件はJIS K 7110に従い、23℃におけるアイゾット衝撃強度を測定した。
【0095】
[実施例1]
(層Aの作製)
プロピレン単独重合体(A1−1)、熱可塑性エラストマー成分(A2)、および無機フィラー(B2)を表1に示す配合量で、粉末状態のまま均一に混合し、15mm二軸押出機KZW15−45MG(テクノベル製)を用いて、シリンダ設定温度:220℃、スクリュー回転数:5100rpm、押出量:約4kg/時間の条件で、溶融混練した。溶融混練した物を厚み0.1mmで枠形状を有するスペーサーの枠内に入れ、スペーサーと溶融混練した物を、スペーサーよりも大きい0.5mm厚のアルミニウム板でサンドウィッチにして挟み、それを更にアルミニウム板より大きい2mm厚のステンレス板で挟んだものを、プレス板の設定を230℃とした熱プレス成形機中に入れ、5分間予熱後、10MPaまで昇圧し5分間保圧した後、30℃、30MPaで5分間冷却して、厚さ0.1mmのシートを作製した。これを48mm×48mmの大きさに切断し、層Aを得た。
(層Bの作製)
プロピレン単独重合体(A1−1)、および無機フィラー(B2)を表1に示す配合量で、粉末状態のまま均一に混合し、15mm二軸押出機KZW15−45MG(テクノベル製)を用いて、シリンダ設定温度:220℃、スクリュー回転数:5100rpm、押出量:約4kg/時間の条件で、溶融混練した。溶融混練した物を、東洋機械金属製SI30III型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型温度50℃で射出成形を行い、48mm×48mm×厚さ3mmの大きさの成形体を得た。この成形体を4枚重ねて厚さ12mmの層Bを得た。
(圧延成形用積層体の作製)
上記の層Bの上面に、層Aを1枚重ね合わせることで、圧延成形用積層体1を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に示す。
(成形体の作製)
上記圧延成形用積層体を、プレス板の設定が160℃である熱プレス成形機中に入れて、100tまで昇圧し5分間保圧し、圧力を維持したまま80℃まで冷却した後に脱圧し、厚さ2mmの成形体を得た。得られた成形体の物性を表2に示す。
【0096】
[実施例2]
層Aの厚みを1mmとした以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0097】
[実施例3]
層Aの組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0098】
[実施例4]
層Aの組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0099】
[比較例1]
層Aの厚みを2mmとした以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0100】
[比較例2]
層Aの組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0101】
[比較例3]
層Aの厚みを0.04mmとした以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0102】
[比較例4]
層Aの組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0103】
[比較例5]
層Aの組成を表1に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様の方法で成形体を作製した。圧延成形用積層体の層Aの厚みの割合を表1に、得られた成形体の物性を表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】