(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記模様部は、前記第三の模様よりも相対的に大きく、かつ、前記第三の模様を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の立体的効果を有する貴重印刷物。
前記第1の模様部は、前記第2の模様部よりも相対的に大きく、かつ、前記第2の模様部を囲むように配置されていることを特徴とする請求項5又は6記載の立体的効果を有する貴重印刷物。
前記基材と前記第二の模様の間に、前記基材の色及び前記第2の色とは異なる第3の色の第3の要素から成る第三の模様が形成されたことを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項記載の立体的効果を有する貴重印刷物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、1種類の有色インキを用いて形成されているにもかかわらず、画線の盛り上がり高さを異ならせて形成することによって、真上から視認できる画像と、観察角度を変化させて視認できる画像が異なるという優れた特徴を有している。しかしながら、使用しているインキが1色に限られることから、製造的には工数が少なくコストパフォーマンスが高いところではあるが、色彩変化が乏しく、視覚的なインパクトが今一つであるという課題があった。
【0008】
特許文献2に記載の技術も、1色の光輝性インキを用いて形成されていることからコストパフォーマンスが高く、更には、基材に対して観察角度を変化させると、画像が立体的に視認できるという視覚的なインパクトも高い技術ではあるが、立体的に視認させるために、二つの同一画像をそれぞれ背景部と画像部に区分けする必要があり、結果的には面積率及び配列角度の異なる四つの領域を重ならないように隣接して配置することとなり、刷り合わせ精度を要するという問題があった。併せて、特許文献1と同様、色彩的な変化が乏しいという課題もあった。
【0009】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、真上から視認できる画像が、観察角度を変化させていくと、画像が立体的に視認でき、更に角度を変化さえると色彩が変化した画像が視認できるもので、判別具を必要とせず、色彩変化及び立体視可能な画像を備えた貴重印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材の少なくとも一部に模様形成領域を有し、模様形成領域には、基材面に向かって第一の模様、第二の模様及び第三の模様が順に積層された印刷模様が形成され、 第一の模様は、基材の色とは異なる第1の色の第1の要素が万線状に配置され、第二の模様は、第1の色と異なる第2の色を有する凸形状の第2の要素が万線状に配列され、第2の要素の一部の位相が異なることで模様部と背景部に区分けされ、第三の模様は、基材及び第1の色と異なる第3の色の第3の要素により形成され、第1の要素は、第2の要素上に第2の要素と同じピッチで配置され、模様部と第三の模様は、形状が等しく、重畳して共有する共通領域を有し、かつ、所定のずれ量を有して配置され、基材面に対して真上から観察すると、第1の色、第2の色及び第3の色が混色した色の印刷模様が視認され、その位置から傾けて観察すると、印刷模様が立体的に視認され、更にその位置から傾けて観察すると、第1の色の印刷模様が視認できることを特徴とする立体的効果を有する貴重印刷物である。
【0011】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、第2の色が第3の色と異なることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、模様部と第三の模様が同じ大きさで、各々の中心がずれて配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、模様部が第三の模様よりも相対的に大きく、かつ、第三の模様を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、基材の少なくとも一部に模様形成領域を有し、模様形成領域には、基材面に向かって少なくとも第一の模様及び第二の模様が順に積層された印刷模様が形成され、第一の模様は、基材と異なる第1の色の第1の要素が万線状に配置され、第二の模様は、基材と異なる第2の色を有する凸形状の第2の要素が万線状に配列され、複数の第2の要素の画線幅及び/又は位相が異なることで第1の模様部、第2の模様部及び背景部に区分けされ、第1の模様部と第2の模様部は、同じ形状で一部共有する共通領域を有し、かつ、所定のずれ量を有して配置され、基材面に対して真上から観察すると、基材の色、第1の色及び第2の色が混色した色の印刷模様が視認され、その位置から傾けて観察すると、印刷模様が立体的に視認され、更にその位置から傾けて観察すると、第1の色の印刷模様が視認できることを特徴とする立体的効果を有する貴重印刷物である。
【0015】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、一つの第2の要素において、画線幅及び/又は位相が異なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、第1の模様部と第2の模様部が、同じ大きさ、かつ、各々の中心がずれて配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、第1の模様部が第2の模様部よりも相対的に大きく、かつ、第2の模様部を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、背景部が、第1aの画線幅の第1aの要素から成り、共通領域は、第1aの画線幅とは異なる第1bの画線幅で、背景部を形成している第1aの要素とは異なる位相の前記第1dの要素から成り、共通領域を除く第1の模様部は、第1bの画線幅で、共通領域を形成している前記第1dの要素とは異なる位相の第1bの要素から成り、共通領域を除く第2の模様部は、第1aの画線幅で、背景部を形成している第1aの要素とは異なる位相の第1cの要素から成ることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、基材と第二の模様の間に、基材の色及び第2の色とは異なる第3の色の第3の要素から成る第三の模様が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の立体的効果を有する貴重印刷物においては、基材を真上から観察した画像と、基材を徐々に傾けて観察すると立体的な画像として視認でき、さらに観察角度を傾けていくと、画像の色彩が変化して視認でき、一つの印刷物において、異なる三つの画像が視認できる。
【0021】
また、本発明の立体的効果を有する貴重印刷物は、立体的な画像を視認させるために二つの画像の位置をずらして形成しているが、従来のように、二つの画像を刷り合わせる必要がなく、複数の画線の一部の位相及び画線幅を異ならせることで位置をずらして形成さしているので、製造上の難易度が高くない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明における立体的効果を有する貴重印刷物(以下、「印刷物」という。)(1)を示す。印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色を有する印刷画像(3)が、基材の少なくとも一部の領域である模様形成領域(4)に形成されて成る。基材(2)は、一般の印刷に用いられる上質紙やコート紙、プラスティック等、特に限定はない。また、
図1に示すように、印刷物(1)上には、印刷画像(3)以外にも、模様形成領域(4)以外の領域に、ロゴマークや料額等、他の文字、記号、数字等、様々な印刷がされていても良い。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態における印刷画像(3)を説明するための分解図である。印刷画像(3)は、第一の模様(5)、第二の模様(7)及び第三の模様(9)により形成されている。第一の模様(5)は、第1の要素(6)が万線状に配列されて成り、第二の模様(7)は、第2の要素(8)が万線状に配列されて成り、第三の模様(9)は、第3の要素(10)により形成されている。
【0026】
印刷画像(3)を形成する第一の模様(5)、第二の模様(7)及び第三の模様(9)は、
図3(a)に示すように、基材(2)から第三の模様(9)、第二の模様(7)、第一の模様(5)の順番に積層されている。
図3(b)は、
図3(a)におけるX−X’断面図であり、基材(2)の上に第3の要素(10)により第三の模様(9)が形成され、その上に第2の要素(8)が万線状に配列され、その第2の要素(8)の上に第1の要素(6)が配置されている。それぞれの要素についての詳細は後述する。
【0027】
本発明の印刷物(1)は、
図4に示すように観察角度を異ならせることで視認される画像が変化する。
図4(a)のように、基材(2)に対して真上から観察する(以下、「第1の観察角度」(E1)という。)と、第1の要素(6)の万線と、その中に第三の模様(9)が視認できる。その位置から基材(2)を傾けて観察(以下、「第2の観察角度」(E2)という。)すると、
図4(b)のように印刷画像(3)が立体的に視認できる。さらにその位置から基材(2)を傾けて観察(以下、「第3の観察角度」(E3)という。)すると、
図4(c)のように印刷画像(3)の色彩が変化して視認できる。
【0028】
以下、各模様について詳細に説明する。はじめに、第一の模様(5)について説明する。
図5に示すように、第一の模様(5)は、第1の要素(6)が第1の色でピッチP、画線幅(W1)で万線状に複数配置されて成る。この第1の要素(6)を形成する第1の色の色彩が第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)で観察される模様の色彩に影響するため、色材は、透明以外で基材とは異なる色のインキを用い、比較的インキ膜厚の薄いオフセット印刷やインクジェット印刷等、一般的な印刷方法を用いて付与する。
【0029】
第1の要素(6)は、曲線、破線等の画線や画素の集合等で形成しても構わない。
【0030】
ここで本発明における画線とは、印刷物における画像を形成する最小単位である印刷網点を、所定方向に隙間無く連続して配置することにより形成した画像要素であって、例えば直線、曲線、波線、点線や破線等の分断線等が含まれ、画線の形状は如何なるものであっても本発明における画線に含まれるものとする。画素とは、印刷物における画像を形成する最小単位である印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、例えば円、三角形や四角形等を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号等が含まれ、濃淡の変化が面積率、即ち点の大小により表現される網点形状であり、画素の形状は如何なるものであっても本発明における画素に含まれるものとする。なお、以降の説明では、第1の要素(6)は直線で形成されているものとして説明する。
【0031】
第1の要素(6)の画線同士のピッチ(P)は、後述する第2の要素(8)と略同一の80〜1000μmの範囲で形成する。出現する模様を明瞭に形成させるために、凸状の第2の要素(8)と同じピッチ(P)である必要がある。また画線幅(W1)は、10μmより太く、ピッチ(P)の9/10までの範囲とする必要がある。第2の要素(8)の上に形成されなければならないことと、最下層の第3の模様(9)を第1の観察角度(E1)から確認できなければならないためである。
【0032】
次に、第二の模様(7)について説明する。
図6に示すように、第二の模様(7)は、第1の色と異なる第2の色を有する凸形状の第2の要素(8)がピッチP、画線幅W2で万線状に複数配置されて成る。さらに、第二の模様は、第2の要素(8)の一部において位相が異なる(ずれる)ことにより模様部(11)と背景部(12)に区分けされ、位相のずれ量については、W1/2より大きいことが望ましく、好ましくはP/2に設計する。
【0033】
第2の要素(8)の画線同士のピッチ(P)は、80〜1000μmの範囲で形成する。ピッチ(P)が80μmより狭いと、印刷精度の問題や第2の要素(8)上に積層して形成する第1の要素(6)との、刷り合わせ精度の関係で好ましくなく、また、1000μmより大きいと、形成する模様自体が大きくなってしまい、観察角度を変化させても模様に変化が生じない場合や、他の印刷模様に影響を及ぼすため好ましくないからである。
【0034】
また、画線幅(W2)は、画線の上に形成する第1の要素(6)及び観察角度を変化させたときに模様が変化するように、ピッチ(P)に対して調整して形成される。模様部(11)と背景部(12)を区分けするためには、画線幅(W2)をピッチ(P)に対して1/2より小さくすることが好ましい。併せて、観察角度を変化させた際に模様の視認性を良くするためには、ピッチ(P)に対して1/5より大きくすることが好ましい。したがって、第2の要素(8)の画線幅(W2)は、ピッチ(P)に対して1/5〜1/2の範囲となる。
【0035】
例えば、第2の要素(8)のピッチ(P)が80μmのときの画線幅(W2)は、16〜40μmとなり、ピッチ(P)が1000μmのときの画線幅(W2)は、200〜500μmとなる。
【0036】
また、
図6(c)に示す第2の要素(8)の高さ(H)は、10〜100μmで形成される。高さ(H)を10μmより低くしても立体的に視認できないこともないが、視認できる視点の範囲が狭くなってしまうため好ましくない。高さ(H)を100μmより高くすることも可能ではあるが、インキによりその高さを形成することは非常に困難であるとともに、上に積層して印刷する第1の要素(6)を形成することが困難となるので好ましくない。
【0037】
第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)において、立体的に画像が観察できるためには、第2の要素(8)は、
図3(b)に示すように盛り上がりのある印刷画線である必要がある。第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)において、盛り上がりのある凸状の画線の第2の要素(8)により第1の要素(6)を隠す役割を果たすためである。第2の要素(8)の形成方法としては、一般的に盛り上がりのある画線を印刷可能な方法であれば限定はなく、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、凹版印刷、更には紫外線硬化用のインクジェット印刷において形成する方法がある。
【0038】
次に、第三の模様(9)について説明する。
図7に示すように、第三の模様(9)は、基材の色及び第一の模様(5)の第1の要素(6)を形成する第1の色と異なる第3の色を用い、曲線、破線等の画線や画素の集合で形成する。第一の観察角度(E1)で観察した場合に第三の模様(9)が観察できるように、第三の模様(9)上には第一の模様(5)及び第二の模様(7)が積層されない領域(所謂、非画線部)が設けられていれば、第3の要素(10)の形状に限定は特にない。各模様との干渉によって第三の模様(9)が隠ぺいされないような形状を用いればよく、好ましくは、ベタ模様や網点模様を用いれば干渉を考慮する必要性は低い。模様の付与方法としては、比較的インキ膜厚の薄いオフセット印刷やインクジェット印刷等、一般的な印刷方法を用いればよい。
【0039】
次に、三つの模様の積層位置関係について説明する。
図8は、本発明の第1の実施の形態における印刷物の各模様の積層状態を示す図である。
図8(a)は、印刷模様(3)を第一の観察角度(E1)から観察した場合の一部拡大図であり、基材の上に(図では基材を省略)第三の模様(9)を印刷し、次に盛り上がりを有する第二の模様(7)を印刷し、第二の模様(7)の模様部(11)と背景部(12)は位相をずらして形成し、最後に第一の模様(5)を印刷したものである。
【0040】
第二の模様(7)の模様部(11)のY−Y’断面図を
図8(b)、第二の模様の背景部(12)のX−X’断面図を
図8(c)に示す。第二の模様(7)の模様部(11)と背景部(12)は、それぞれを形成している第2の要素(8)の位相がずれているため、第2の要素(8)上に印刷する第1の要素(6)の位置が、盛り上がりのある画線に対して相対的に異なる位置に印刷される。具体的には、模様部(11)を示す
図8(b)では、第2の要素(8)の盛り上がりのある一方の斜面(右側)にあるのに対し、背景部(12)を示す
図8(c)では、第2の要素(8)の盛り上がりのある他方の斜面(左側)にある。
【0041】
また、第三の模様(9)上には第一の模様及び第二の模様が印刷されていない領域(非画線部)があり、そこから第三の模様(9)が観察できる。
【0042】
次に、立体効果を得るための、第二の模様(7)と第三の模様(9)の大きさ及び位置関係について説明する。第一の観察角度(E1)から第三の観察角度(E3)まで傾けて観察するときに立体効果を得るためには、第一の観察角度(E1)で観察できる第三の模様(9)と、第二の観察角度(E2)から出現する第二の模様の模様部(11)との位置ずれが必須となる。この模様部(11)同士の位置ずれの距離を、本発明ではずれ量(L)という。ここでいう位置ずれとは、
図9(a)に示すように、模様部(11)の中心(13−1)と第三の模様(9)の中心(13−2)の位置をずらして配置されていることは勿論、
図9(b)に示すように、模様部(11)の中心(13−1)と第三の模様(9)の中心(13−2)は同じ位置に配置されているが、模様部(11)と第三の模様(9)の大きさが異なることも含む。
図9(b)では、第三の模様(9)よりも模様部(11)の方が相対的に大きくなっている。更には大きさの異なる模様をずらして配置していることも含まれる。
【0043】
また、ずれ量(L)については、模様部(11)の大きさや形状、更には第二の模様(8)の画線ピッチ(P)に依存する模様の解像度にもよるため、立体感を得るためには肉眼で模様のずれを認識できる必要があり、ずれ量(L)は、少なくとも前述した画線ピッチ(P)以上であることが望ましく、ずらす方向については、
図9では一つの方向(S1方向)で説明しているが立体効果を得たい方向にずらせばよく、(S1)方向に対して垂直方向でもよく、更には両方向でもよく特に限定はない。大きさについても同様に、少なくともピッチ(P)以上のずれ量(L)が生じるような倍率を選択すればよい。
【0044】
なお、模様部(11)と第三の模様(9)は、
図9に示すように、必ず一部の領域が重畳して共有する領域の共通領域(14)を有している。ずれ量(L)が大きければ、共通領域(14)は小さくなり、逆にずれ量(L)が小さければ、共通領域(14)は大きくなる。
【0045】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、第2の実施形態における印刷画像(3)を説明するための分解図である。第1の実施形態で印刷画像(3)を立体的に視認させるために第三の模様(9)と第二の模様(7)の模様部(11)との位置をずらして配置していたところを、本第2の実施形態は、第二の模様(7)内において、二つの模様をずらして配置するように形成したものである。
【0046】
印刷画像(3)は、第一の模様(5)及び第二の模様(7)により形成されている。第一の模様(5)は、第1の要素(6)が万線状に配列されて成り、第二の模様(7)は、第2の要素(8)が万線状に配列されて形成されている。なお、第1の実施形態と同様の内容についての説明は省略する。
【0047】
印刷画像(3)を形成する第一の模様(5)及び第二の模様(7)は、
図11(a)に示すように、基材(2)に向かって第一の模様(5)及び第二の模様(7)の順番に積層されているが、第1の実施形態との差異として、本第2の実施形態では、基材(2)が第一の模様(5)の第1の色及び第二の模様(7)の第2の色とは異なる第3の色を有している。
図11(b)は、
図11(a)におけるX−X’断面図であり、基材(2)の上に第2の要素(8)により第二の模様(7)が形成され、その上に第1の要素(6)が万線状に配列されている。
【0048】
第2の実施形態における印刷画像(3)の観察状態は、第1の実施形態において
図4を用いて説明した状態と同様であり、第1の観察角度(E1)、第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)の三つの角度により異なる状態として視認できるものである。
【0049】
第2の実施形態における第一の模様(5)は、第1の実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0050】
次に、第二の模様(7)について説明する。本第2の実施形態における第二の模様(7)は、第2の要素(8)の画線幅と画線の位相を異ならせたことにより、背景部(12)、第1の模様部(11a)、第2の模様部(11b)及び第1の模様部(11a)と第2の模様部(11b)が共有する領域の共通領域(14)で形成されている。
【0051】
第1の模様部(11a)は、
図12で示すと、他の部分よりも淡く見える「桜模様」を指し、背景部(12)を形成している第2aの要素(8−a)の第2aの画線幅(W2a)と第1の模様部(11a)を形成している第2bの要素(8−b)の第2bの画線幅(W2b)が異なることで形成されている。また第2の模様部(11b)は、前述した第1の模様部(11a)で形成した「桜模様」の影となって立体感を表現する役割を示す部分で、
図12で示すと、第1の模様部(11a)に対して若干ずれた位置に見える「桜模様」を指し、背景部(12)を形成している第2aの要素(8−a)と第2の模様部(11b)を形成している第2cの要素(8−c)の画線と位相が異なることで形成されている。
【0052】
図12を見てわかるように、第1の模様部(11a)と第2の模様部(11b)は、共通した領域を有しており、その共通した領域を含めて、それぞれ第1の模様部(11a)と第2の模様部(11b)が形成されている。その第1の模様部(11a)及び第2の模様部(11b)を共通して形成している領域を共通領域(14)という。したがって、共通領域(14)を形成している第2dの要素(8−d)は、第1の模様部(11a)を形成している第2bの要素(8−b)と画線幅(W2b)は等しく、位相が異なっており、第2の模様部(11b)を形成している第2cの要素(8−c)とは、第2aの画線幅(W2a)と第2bの画線幅(W2b)とが異なり、位相は等しい。更に、背景部(12)を形成している第2aの要素(8−a)と、第2aの画線幅(W2a)と第2bの画線幅(W2b)の画線幅及び位相の両方が異なっている。
【0053】
なお、
図12では、第1の模様部(11a)を形成している第2bの要素(8−b)と共通領域(14)を形成している第2dの要素(8−d)は、第2の模様部(11b)を形成している第2cの要素(8−c)及び背景部(12)を形成している第2aの要素(8−a)より線幅の細い第2bの画線幅(W2b)で形成しているが、これに限らず、どちらか一方が他方よりも画線幅が太い関係を有していればよい。画線幅をW2a>W2b、若しくはW2a<W2bの範囲で形成することで、第二の模様(7)に濃淡画像が形成され、第1の観察角度(E1)で観察した場合に観察できる模様を形成することができる。したがって、基材(2)上に第二の模様(7)の積層されていない、基材(2)の第3の色の部分が模様として認識できる。
【0054】
本第2の実施形態における第2の要素(8−a、8−b、8−c及び8−d)のピッチ(P)については、前述した第1の実施形態と同様、80〜1000μmの範囲で形成し、画線幅は、ピッチ(P)の1/5〜1/2の範囲で形成する。この画線幅の範囲内において、前述したように、第1の模様部(11a)及び共通領域(14)か、第2の模様部(11b)及び背景部(12)のどちらか一方の画線幅が他方の画線幅よりも太い関係を有していればよい。
【0055】
次に、立体効果が得られるために必要な各部の位置関係について説明する。第1の観察角度(E1)で観察可能な画像は、第1の模様部(11a)となる。第2の観察角度(E2)から出現する画像は、第1の模様部(11a)と第2の模様部(11b)となる。これらの位置関係は、第一の実施形態と同様である。また、第3の観察角度(E3)から出現する画像は、第1の観察角度(E1)で視認された色とは異なる色である。
【0056】
(第2の実施の形態の変形例)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例について説明する。
図13は、第2の実施形態の変形例における印刷画像(3)を説明するための分解図である。第一の模様(5)及び第二の模様(7)は、前述の第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態では、基材(2)が第3の色を有していたことに対し、本第2の実施形態の変形例については、基材(2)には色の限定はなく、第二の模様(7)と基材(2)の間に、第3の色を有する第三の模様(9)が配置されているものである。したがって、印刷画像(3)は、第一の模様(5)、第二の模様(7)及び第三の模様(9)により形成されている。第一の模様(5)は、第1の要素(8)が万線状に配列されて成り、第二の模様(7)は、第2の要素(8)が万線状に配列されて成り、第三の模様(9)は、第3の要素(10)により形成されている。なお、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の内容についての説明は省略する。
【0057】
印刷画像(3)を形成する第一の模様(5)、第二の模様(7)及び第三の模様(9)は、
図14(a)に示すように、基材(2)に向かって第一の模様(5)、第二の模様(7)及び第三の模様(9)の順番に積層されている。
図14(b)は、
図14(a)におけるX−X’断面図であり、基材(2)の上に第3の要素(10)により第三の模様(9)が形成され、その上に第2の要素(8)が万線状に配列され、その第2の要素(8)の上に第1の要素(6)が万線状に配列されている。
【0058】
第2の実施形態の変形例における印刷画像(3)の観察状態も、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態において説明した状態と同様であり、第1の観察角度(E1)、第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)の三つの角度により異なる状態として視認できるものである。
【0059】
第三の模様(9)については、第一の実施形態の第三の模様と同様に、第三の模様(9)上には第一の模様(5)及び第二の模様(7)が積層されない領域(非画線部)が設けられていればよく、各模様との干渉によって第三の模様(9)が隠ぺいされないような形状を用いればよく、一般的には、ベタ模様や網点模様を用いれば干渉を考慮する必要性は低い。模様の付与方法としては、第一の実施形態と同様に、比較的インキ膜厚の薄いオフセット印刷やインクジェット印刷等、一般的な印刷方法を用いればよく、特に限定はない。
【0060】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した本発明の印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
本発明における第1の実施形態に伴う立体的効果を有する貴重印刷物を、以下のとおり作製した。
【0062】
基材(2)に印刷用コート紙(日本製紙製エスプリFM)を用い、はじめにオフセット印刷においてプロセスマゼンタインキ(T&K TOKA社製「UV Lカートン紅」)を用いて「桜」の第三の模様(9)を印刷した。次に、第二の模様(7)をスクリーン印刷において、スクリーン印刷用白インキ(帝国インキ社製「UV−FIL−611白」)を用いて、画線ピッチ(P)を500μm、画線幅(W2)を200μm、模様部(11)と背景部(12)は、第2の要素(8)の画線の位相を250μmずらした形成の凸状画線を積層して形成した。なお、第三の模様(9)と第二の模様(7)は、同一形状の「桜」を用い、それぞれの模様の位置関係は、ずれ量(L)をX方向、Y方向ともに1000μmとして配置した。
【0063】
また、第一の模様(5)をオフセット印刷でプロセスシアンインキ(T&K TOKA製「UV Lカートン藍」)を用いて、画線ピッチ(P)が500μm、画線幅(W1)が150μmの直万線を第二の模様(8)上に積層して形成した。
【0064】
本実施例1の印刷物を第一の観察角度(E1)から観察すると、マゼンタ色の模様の「桜」が観察され、傾けて第二の観察角度(E2)で観察すると、シアン色の「桜」とマゼンタとシアンが混ざった紫色の陰影を有する桜が観察され,立体効果を有する印刷物を得た。更に傾けて第三の観察角度(E3)で観察すると、シアン色の桜のみが観察された。
【実施例2】
【0065】
本発明における第2の実施形態に伴う立体的効果を有する貴重印刷物を以下のとおり作製した。
【0066】
基材(2)に肌色上質紙(北越紀州製上質紙)を用い、はじめに第二の模様(7)をスクリーン印刷においてスクリーン印刷用インキ(帝国インキ社製「UV−FIL−611白」)を用いて、画線ピッチ(P)を500μm、画線幅(W2)を250μm、第2の模様部(11b)と背景部(12)は、凸状の画線である第2の要素(8)の画線の位相を、ずれ量(L)250μmとしてずらした形成で積層して形成した。なお、第1の模様部(11a)及び共通領域(14)の画線幅(W21)を100μmとし、第二の模様(7)同一形状の「桜」を用い、それぞれの模様の位置関係は、ずれ量(L)を1000μmとした。更に、第一の模様(5)をオフセット印刷でプロセスシアンインキ(T&K TOKA社製「UV Lカートン藍」)を用いて画線ピッチ(P)が500μm、画線幅(W1)が150μmの直万線を第二の模様(7)上に積層して形成した。
【0067】
本実施例2の印刷物を第一の観察角度(E1)から観察すると、基材色の肌色濃淡の模様の「桜」が観察され、傾けて第二の観察角度(E2)で観察すると、シアン色の「桜」と肌色とシアンが混ざった色の陰影を有する桜が観察され、立体効果を有する印刷物を得た。更に傾けて第三の観察角度(E3)で観察すると、シアン色の桜のみが観察された。