特許第6192015号(P6192015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192015熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192015
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/34 20060101AFI20170828BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 35/14 20060101ALI20170828BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20170828BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20170828BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20170828BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 35/20 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01L35/34
   H01L35/32 A
   H01L35/14
   C22C38/00 302Z
   C22C38/00 304
   C22C38/60
   C22C30/00
   C22C33/02 B
   H01L35/20
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-69371(P2014-69371)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192084(P2015-192084A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】三上 祐史
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−102002(JP,A)
【文献】 特開2008−021982(JP,A)
【文献】 特開2006−203186(JP,A)
【文献】 特開2005−330570(JP,A)
【文献】 特開2008−192652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00
C22C 30/00
C22C 33/02
C22C 38/00
C22C 38/60
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z1+cで表される組成を有する熱電変換材料用圧粉体の製造方法であって、次の工程;
(α)一般式(2):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z−m1+cで表される組成の先駆原料にAlを添加して、一般式(1)で表される組成の原料混合物を得る工程、および
(β)前記原料混合物を加圧して圧粉体を得る工程
を含むことを特徴とする熱電変換材料用圧粉体の製造方法。
(上記一般式(1)および(2)中、Mは周期表における第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Lは周期表における第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Rは周期表における第2〜6周期の2族および13〜15族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、xの値は0≦x≦0.4であり、yの値は0≦y≦0.4であり、zの値は0≦z≦0.4であり、aの値は|a|≦0.2であり、bの値は|b|≦0.1であり、cの値は|c|≦0.1であり、mの値は0.6≦m≦1−zである)
【請求項2】
MがMn、CoおよびNiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、LがTi、Cr、Zr、Nb、Mo、TaおよびWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、RがSi、Ge、Sn、SbおよびBiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料用圧粉体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(α)では、添加するAlが金属Al状態であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換材料用圧粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱電変換材料用圧粉体。
【請求項5】
請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の製造方法によって製造された熱電変換材料用圧粉体を焼結することを特徴とする熱電変換材料用焼結成形体の製造方法。
【請求項6】
焼結温度が850〜1400℃であり、焼結時間が2分以上であることを特徴とする請求項5に記載の熱電変換材料用焼結成形体の製造方法。
【請求項7】
焼結雰囲気が真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、または還元雰囲気であることを特徴とする請求項5または6に記載の熱電変換材料用焼結成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体とその製造方法に関し、より詳細には、FeVAl系熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できる熱電変換材料として、ホイスラー型FeVAl系合金が知られている。このFeVAl系合金は、鉄やアルミニウム等、安価で豊富に存在する元素から構成されており、熱電変換材料の特性を表す指標のひとつである熱電性能指数が高い。また、これまでに、FeVAlを基本的な化学組成としつつ、構成元素の一部を他の元素で部分的に置換等することによって、熱電性能指数等の熱電性能をより向上させる試みがなされてきた。このようなFeVAl系合金の特性を活用して、例えば、FeVAl系熱電変換材料を用いて熱電変換素子や熱電変換モジュールを作製し熱電発電システムを構築する等の応用が期待されている。
【0003】
そこで、これまでにも、熱電変換材料をより安価かつ大量に供給することを目的として、FeVAl系合金の製造方法の改良の取り組みが行われている。例えば、特許文献1には、原料混合物をアーク溶解処理することによりFeVAl系合金のインゴットを作製した後、熱処理、切断加工を行ってFeVAlの焼結成形体を製造する方法が提案されている。また、特許文献2には、溶解法により作製したFeVAl合金をボールミル等で粉砕し、この粉末を加圧成形した後に常圧焼結することによりFeVAlの焼結成形体を製造する方法が提案されている。さらに、特許文献3には、FeVAl合金の粉末を粉末状態のまま焼結型に充填し、加圧と焼結を同時に行うことによりFeVAlの焼結成形体を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4035572号明細書
【特許文献2】特開2006−203186号公報
【特許文献3】特開2008−21982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アーク溶解等の溶解法では、溶解処理できる合金の量が限られているため、例えば、少数の良質な試験片を作製する等の場合には適しているが、焼結成形体を大量に生産する目的には溶解法は不向きである。また、得られる焼結成形体は粗大な結晶粒から構成されているため、割れや欠け等によって破損しやすいという問題点が存在する。一方で、焼結法を用いた場合には、FeVAl合金を粉砕する工程を伴い、FeVAl合金を粉末化すると、FeVAl合金の脆性材料的な特性に起因する成形性の著しい低下が避けられない。さらに、加圧成形後に常圧焼結する手法では、FeVAl合金粉末の成形性を向上させるために合金粉末をより微細化することを要し、このことがその後の真空中での取り扱いを余儀なくさせる等、製造工程の複雑化を招く。そして、成形性の低いFeVAl合金粉末を用いることが可能な加圧と焼結を同時に行う手法では、焼結型を用いたバッチ処理であるため生産性に劣る等の問題点が存在する。
【0006】
このため、これまでの様々な改良の試みにもかかわらず、熱電変換材料を熱電発電システムへ応用する等の実用化の観点からは、依然として、原料混合物やその圧粉体の成形性を確保しつつ、より簡略化した製造工程で、採算性にも優れた製造方法によって熱電変換材料を提供することは困難であった。そこで、原料混合物やその圧粉体の成形性と熱電変換材料の生産性とを両立することのできる熱電変換材料の製造方法が求められていた。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、原料混合物やその圧粉体の成形性に優れているとともに、熱電変換材料の生産性にも優れた新規な熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
また本発明は、新規な製造方法によって製造された熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、熱電変換材料の構成元素のうち、組成割合でAl成分の40%以下とAl成分以外の構成元素とを混合した先駆原料に、組成割合でAl成分の60%以上を添加して混合することにより、成形性に優れた原料混合物および熱電変換材料用圧粉体が得られること、そして、この熱電変換材料用圧粉体を焼結して熱電変換材料用焼結成形体を製造することにより、熱電変換材料の生産性を向上させることができることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記の熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体とその製造方法、ならびにこの焼結成形体を含む熱電変換素子および熱電変換モジュールを提供するものである。
【0010】
本発明の熱電変換材料用圧粉体の製造方法は、一般式(1):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z1+cで表される組成を有する熱電変換材料用圧粉体の製造方法であって、次の工程;
(α)一般式(2):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z−m1+cで表される組成の先駆原料にAlを添加して、一般式(1)で表される組成の原料混合物を得る工程、および
(β)前記原料混合物を加圧して圧粉体を得る工程
を含むことを特徴とする(上記一般式(1)および(2)中、Mは周期表における第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Lは周期表における第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Rは周期表における第2〜6周期の2族および13〜15族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、xの値は0≦x≦0.4であり、yの値は0≦y≦0.4であり、zの値は0≦z≦0.4であり、aの値は|a|≦0.2であり、bの値は|b|≦0.1であり、cの値は|c|≦0.1であり、mの値は0.6≦m≦1−zである)。
【0011】
この熱電変換材料用圧粉体の製造方法においては、MがMn、CoおよびNiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、LがTi、Cr、Zr、Nb、Mo、TaおよびWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、RがSi、Ge、Sn、SbおよびBiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であることが好ましい。
【0012】
また、この熱電変換材料用圧粉体の製造方法においては、前記工程(α)では、添加するAlが金属Al状態であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の熱電変換材料用圧粉体は、前記の熱電変換材料用圧粉体の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の熱電変換材料用焼結成形体の製造方法は、前記の熱電変換材料用圧粉体の製造方法によって製造された熱電変換材料用圧粉体を焼結することを特徴とする。
【0015】
この熱電変換材料用焼結成形体の製造方法においては、焼結温度が850〜1400℃であり、焼結時間が2分以上であることが好ましい。
【0016】
また、この熱電変換材料用焼結成形体の製造方法においては、焼結雰囲気が真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、または還元雰囲気であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の熱電変換素子は、前記の熱電変換材料用焼結成形体の製造方法によって製造された熱電変換材料用焼結成形体を含むことを特徴とする。
【0018】
そして、本発明の熱電変換モジュールは、前記の熱電変換材料用焼結成形体の製造方法によって製造された熱電変換材料用焼結成形体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、原料混合物やその圧粉体の成形性に優れているとともに、熱電変換材料の生産性にも優れた熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記製造方法によって製造された熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の熱電変換材料用焼結成形体を用いて作製される熱電変換モジュールの一実施形態を例示する模式斜視図である。
図2】FeVAlの組成を有する熱電変換材料用圧粉体におけるAl添加割合と圧粉体のラトラー値との関係を示すグラフである。
図3】FeVAl0.9Si0.1の組成を有する熱電変換材料用圧粉体におけるAl添加割合と圧粉体のラトラー値との関係を示すグラフである。
図4】FeVAl0.9Si0.1の組成を有する熱電変換材料用焼結成形体におけるAl添加割合と焼結成形体の熱電性能指数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の組成>
本発明の熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体は、一般式(1):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z1+cで表わされる組成を有する。上記一般式(1)中、Mは周期表における第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Lは周期表における第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Rは周期表における第2〜6周期の2族および13〜15族からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素である。また、上記一般式(1)中、xの値は0≦x≦0.4であり、yの値は0≦y≦0.4であり、zの値は0≦z≦0.4であり、aの値は|a|≦0.2であり、bの値は|b|≦0.1であり、c値は|c|≦0.1である。
【0023】
一般に、熱電変換材料の変換効率は、無次元性能指数ZTと1対1の対応関係があり、ZTの値が大きいほど熱電変換効率は大きくなることが知られている。ここで、無次元性能指数ZTは、以下の式で表される。
ZT=[(σ×S)/κ]×T=PF/κ×T
(σ:電気伝導率、S:ゼーベック係数、κ:熱伝導率、T:絶対温度)
つまり、上記の式より、無次元性能指数ZTを向上させるためには、出力因子(PF)を向上させるか、または熱伝導率(κ)を低減させればよいことが分かる。
【0024】
本発明では、上記一般式(1)のように、熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の組成を設計することにより、熱電変換材料の価電子濃度や電子構造、および結晶格子中のひずみの大きさを制御することができる。その結果、大きな熱起電力と高い電気伝導率および低い熱伝導率を同時に併せ持つ、優れた熱電性能を有する熱電変換材料を得ることができる。
【0025】
上記一般式(1)中のx、yおよびzの値が0.4を超える場合、aの値が0.2を超える場合、そして、bおよびcの値が0.1を超える場合には、FeVAl系合金本来の結晶構造を保つことが困難となり、優れた熱電性能を有する熱電変換材料を得ることができない場合がある。
【0026】
より安定的に大きな熱起電力と高い電気伝導率および低い熱伝導率を有する熱電変換材料を得る観点からは、上記一般式(1)中のMはMn、CoおよびNiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、LはTi、Cr、Zr、Nb、Mo、TaおよびWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、RはSi、Ge、Sn、SbおよびBiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であることが好ましい。
【0027】
なお、本発明においては、上記の組成条件のほかに、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、あるいは副次的効果を与えるものとして、必要に応じて一般に公知の各種方法を適用して熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の組成を設計することによって、熱電変換材料の熱電性能を向上させることができる。
【0028】
<熱電変換材料用圧粉体>
前記のとおり、本発明の熱電変換材料用圧粉体(以下、単に「圧粉体」ともいう)の製造方法では、(α)一般式(2):(Fe1−x2+a(V1−y1+b(Al1−z−m1+cで表される組成の先駆原料にAlを添加して、上記一般式(1)で表される組成の原料混合物を得る工程、および(β)前記原料混合物を加圧して圧粉体を得る工程を含む。
【0029】
本発明の熱電変換材料用圧粉体の製造方法では、構成元素を供給するために用いる元素材料としては、例えば、単体元素、合金等、各々の構成元素を供給することができれば、特に限定されない。単体元素としては、例えば、金属Fe粉末、金属V粉末、金属Al粉末などを用いることができる。また、合金としては、例えば、FeV合金粉末、FeAl合金粉末などを用いることができる。
【0030】
また、上記一般式(1)中のM、L、Rで表される構成元素を供給するために用いる元素材料としては、例えば、各々の選ばれた少なくとも一種の元素の単体元素、各々の選ばれた少なくとも一種の元素を含む合金などを用いることができる。
【0031】
なお、元素材料の形状としては、例えば、粉末状、粒状、チップ状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体を用いて得られる熱電変換材料は、ホイスラー型の結晶構造の規則度が高いほど、より優れた熱電性能を発揮する。ホイスラー型の結晶構造の規則度を高くするためには、原料混合物の圧粉体を焼結することによって得られる焼結成形体が、組成的に均質であることが好ましい。
【0033】
本発明においては、組成的に均質である焼結成形体を得る観点からは、Alを除いた構成元素のうち、焼結時に拡散速度の遅い元素が、先駆原料の状態、Al添加後の原料混合物の状態、そして焼結前の圧粉体の状態において、組成的に均質であることが好ましい。
【0034】
組成的に均質である先駆原料を調製する方法としては、例えば、元素材料を所望の組成となるように秤量し、ボールミリングなどの任意の方法で粉砕した後に混合する方法などを用いることができる。あるいは、例えば、所望の組成となるように秤量した元素材料を溶融・混合し、固化した後に粉砕する方法や、高速なガス噴霧下で元素材料の溶融体を冷却しながら粉末状に固化する方法などを用いることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。なお、本明細書において、「組成的に均質」とは、先駆原料、原料混合物、圧粉体、焼結成形体の各々の状態において、各構成元素の組成分布が均質であることを意味する。また、例えば、一般に公知の方法で微細化された粉末状の元素材料が均質に混合された先駆原料は、組成的に均質であるものに含まれる。
【0035】
本発明の熱電変換材料用圧粉体は、構成元素のうち、組成割合でAl成分の40%以下とAl成分以外の構成元素とを混合した先駆原料に、組成割合でAl成分の60%以上を添加して混合した原料混合物を加圧することによって得られる。
【0036】
上記工程(α)において、原料混合物を得るために先駆原料にAlを添加する方法としては、例えば、Alの元素材料を上記一般式(1)で表される所望の組成となるように秤量し、先駆原料に添加してボールミリングなどの任意の方法で混合する方法や、溶融もしくは気化させたAlの元素材料を上記一般式(1)で表される所望の組成となるように吹き付けながら先駆原料に添加する方法などを用いることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0037】
原料混合物を加圧して圧粉体とする際の成形性を高める観点からは、添加するAlが延性や展性の高い金属Al状態であることが好ましい。また、先駆原料の粒径が100μm以下であることがより好ましい。そして、先駆原料の粒径と添加するAlの粒径とがいずれも100μm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
上記工程(β)において、上記工程(α)で調製した原料混合物を加圧して圧粉体とする方法としては、一般に公知である各種の加圧方法を適用することができる。例えば、原料混合物を金型に充填した後に加圧する方法(金型プレス成形法)や、ゴム製などの変形抵抗の低い成形モールド内に原料混合物を密封した後に圧力媒体を通して加圧する方法(ラバープレス法)などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0039】
このようにして、Al成分の一部もしくは全部を他の構成元素とは別にして先駆原料に添加して得た原料混合物を加圧して圧粉体とすることにより、原料混合物に含まれるAlの塑性が、圧粉体の成形性の向上に寄与すると考えられる。
【0040】
圧粉体の成形性が向上することによって、材料強度が必要とされる機械的な手段を用いた搬送や充填などにおいても圧粉体の破損や形状変形が発生しにくくなり、自動化装置による取り扱いが可能になる。また、加熱による割れや崩壊も起こりにくくなるため、圧粉体を常圧下で焼結することが可能となる。そのため、従来の常圧焼結法と比較した場合に機械的な装置で圧粉体を取り扱うことが可能になることや、真空中での取り扱いが不要となる等、熱電変換材料の製造工程における圧粉体の取扱性が増し、熱電変換材料の量産のための製造ラインの構築がより容易になる。
【0041】
本発明の熱電変換材料用圧粉体は、熱電変換素子や熱電変換モジュールを作製する際に必要となるミリメートルサイズの焼結成形体とすることが可能な程度に成形性が向上する。そのため、従来のように、より大きいサイズの焼結成形体から所望のミリメートルサイズに切り出す工程を必要とせずに、得られた熱電変換材料を熱電変換素子や熱電変換モジュールにそのまま適用することが可能となる。即ち、本発明の熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体を用いることにより、熱電変換材料をニア・ネット・シェイプ成形によってより安価かつ大量に製造することが可能となり、熱電変換材料の生産性が向上する。
【0042】
<熱電変換材料用焼結成形体>
前記のとおり、本発明の熱電変換材料用焼結成形体(以下、単に「焼結成形体」ともいう)の製造方法は、前記の熱電変換材料用圧粉体の製造方法によって製造された圧粉体を焼結することを特徴とする。
【0043】
一般に、圧粉体を焼結することによって、圧粉体の粉末粒子間の結合が促進され、ホイスラー型の結晶構造の規則度が高まり、その結果、機械的強度に優れ、熱電性能の高い焼結成形体が得られることが知られている。
【0044】
熱電変換材料用圧粉体を焼結する方法としては、圧粉体を加熱することができれば、特に限定されない。例えば、電気炉や燃焼炉などの炉体内に圧粉体を設置して焼結する方法が挙げられる。焼結温度は850〜1400℃、好ましくは900℃〜1300℃である。また、焼結時間は2分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分〜10時間程度である。
【0045】
熱電変換材料用圧粉体を焼結する際の焼結雰囲気は、圧粉体の酸化等による変質を防ぐ観点からは、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、または還元雰囲気であることが好ましい。
【0046】
なお、熱電変換材料用圧粉体を焼結する際に、焼結効果を促進させ、より結晶構造の緻密な焼結成形体を得る目的で、圧力を加えてもよい。この場合には、油圧プレス機構など外部的な加圧機構による加圧手段を用いたホットプレス法などを採用すると、製造装置の構成が複雑になるとともに焼結成形体の量産性が損なわれる可能性がある点を考慮することが好ましい。経済面の観点からより安価な手段で圧力を加えて焼結成形体の量産を行う方法としては、常圧下に設置した圧粉体に耐熱性の重りを載せる方法などが挙げられる。
【0047】
<熱電変換素子および熱電変換モジュール>
本発明の熱電変換材料用焼結成形体は、熱電変換素子および熱電変換モジュールとして適用することができる。例えば、本発明の熱電変換材料用焼結成形体は、p型熱電変換材料およびn型熱電変換材料として適用することができる。
【0048】
図1は、本発明の熱電変換材料用焼結成形体を、p型熱電変換材料およびn型熱電変換材料のいずれか、またはp型熱電変換材料、n型熱電変換材料の両方に用いて作製される熱電変換モジュールの一実施形態を例示する模式斜視図である。この熱電変換モジュールの構造は、一般に公知である熱電変換モジュールと同様であり、高温部用基板、低温部用基板、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料、電極、導線等により構成される熱電変換モジュールである。図1では、12対のp−n対が電極によって直列に接続されている構造を示す。
【0049】
以上の通り、本発明の熱電変換材料用圧粉体および焼結成形体の製造方法は、従来の製造方法と比較して、より安価かつ大量に熱電変換材料を製造することができる。したがって、例えば、この製造方法によって製造されたFeVAl系熱電変換材料用焼結成形体を用いて熱電変換モジュールを作製し熱電発電システムを構築することによって、より安価に熱エネルギーから電力を回収することが可能となると期待される。そして、これまで経済的に採算性が取れない等の理由で廃棄されていた排熱を再利用することで、総合的なエネルギー利用効率の向上が可能となると期待される。
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
本実施例において、熱電変換材料用圧粉体の成形性の評価、および熱電変換材料用焼結成形体の熱電性能の評価は、それぞれ以下のようにして行った。
【0052】
[熱電変換材料用圧粉体の成形性の評価]
日本粉末冶金工業会規格 JPMA P11−1992「金属圧粉体のラトラー値測定方法」に準じてラトラー試験を行った。具体的には、以下の手順に従って試験を行った。
熱電変換材料用圧粉体のペレットを目開き1mmのステンレス製篩に入れ、振動数400rpm、振幅4mmの水平回転振動を10分間加えた後に重量を測定し、[(試験前の試験片重量−試験後の試験片重量)/試験前の試験片重量]×100(%)により、ラトラー値を算出した。
本ラトラー試験では1%程度の測定誤差が生じると考えられるため、ラトラー値が1%以下である場合には、ラトラー試験によって試料の欠損が生じていないものとみなした。一方、ラトラー値が1%を超える場合には、試料の欠損が明らかに生じたものとして評価した。
【0053】
[熱電変換材料用焼結成形体の熱電性能の評価]
(1)ゼーべック係数の測定
熱電変換材料用焼結成形体を立方晶窒化ホウ素(cBN)の切断刃によって切断して、2×2×9(mm)の角柱形状の試験片とした。そして、オザワ科学製「RZ−2001i」を用い、350Kにおける各試験片のゼーべック係数をヘリウム雰囲気中で測定した。
(2)電気抵抗率の測定
各熱電変換材料用焼結成形体を立方晶窒化ホウ素(cBN)の切断刃によって切断して、2×2×9(mm)の角柱形状の試験片とした。そして、ヘリウム雰囲気中において、直流四端子法により各試験片に100mAの電流を通電して350Kにおける電気抵抗率を測定した。
(3)熱伝導率の測定
各熱電変換材料用焼結成形体を炭化ケイ素の研磨紙によって加工してφ10×2(mm)の円板状の試験片とした。そして、空気中において、レーザフラッシュ法を用いて各試験片の350Kにおける熱伝導率を測定した。
【0054】
<実施例1>
FeVAlの組成を有する合金の圧粉体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のAl粉末を、FeVAl1−m(式中、m=1.0、0.9、0.8、0.7、0.6である)の組成となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAlの組成となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表1および図2に示す。
【0055】
<実施例2>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、純度99質量%のAl粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVAl0.9−mSi0.1(式中、m=0.9、0.8、0.6である)の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表2および図3に示す。
さらに、得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表2に示す。また、熱電性能指数の評価結果を図4に示す。
【0056】
<実施例3>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVSi0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAlを添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表3に示す。
【0057】
<実施例4>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVSi0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1100℃で10分、30分、1時間、2時間、4時間、10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表4に示す。
【0058】
<実施例5>
FeVAl系熱電変換材料として、Fe2+a1+bAl1+c(式中、|a|≦0.2;|b|≦0.1;|c|≦0.1である)の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末を、Fe2+a1+bの組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe2+a1+bAl1+cの組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表5に示す。
【0059】
<実施例6>
FeVAl系熱電変換材料として、(Fe1−x(V1−y)(Al1−z)(式中、MはMn、CoおよびNiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、LはTi、Cr、Zr、Nb、Mo、TaおよびWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、RはSi、Ge、Sn、SbおよびBiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、xの値は0≦x≦0.4であr、yの値は0≦y≦0.4であり、zの値は0≦z≦0.4である)の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末、純度99質量%のV粉末、純度99質量%以上の元素M粉末、純度99質量%以上の元素L粉末および純度99質量%以上の元素R粉末を、(Fe1−x(V1−y)Rの組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体で(Fe1−x(V1−y)(Al1−z)の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表6に示す。
【0060】
<比較例1>
FeVAlの組成を有する合金の圧粉体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のAl粉末を、FeVAl1−m(式中、m=0.5、0.4、0.3、0.2、0である)の組成となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAlの組成となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表1および図2に示す。
なお、m=0の場合には、原料混合物の粉末の成形が困難であり、圧粉体を得ることができなかった。
【0061】
<比較例2>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、純度99質量%のAl粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVAl0.9−mSi0.1(式中、m=0.4、0.2、0である)の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表2および図3に示す。
さらに、得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表2に示す。また、熱電性能指数の評価結果を図4に示す。
なお、m=0の場合には、原料混合物の粉末の成形が困難であり、圧粉体を得ることができなかった。
【0062】
<参考例1>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVSi0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、700℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表3に示す。
【0063】
<参考例2>
FeVAl系熱電変換材料として、FeVAl0.9Si0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、FeVSi0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFeVAl0.9Si0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1100℃で1分間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表4に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
圧粉体の成形性に関して、実施例1および2の圧粉体は、いずれもラトラー値が1%以下であり、成形性の良好な圧粉体であった。一方、比較例1の圧粉体は、Alの添加割合が減少するにつれてラトラー値が急激に増加し、いずれも成形性が低い圧粉体であった。また、比較例2の圧粉体は、いずれもラトラー値が10%以上であり、成形性が低い圧粉体であった。
【0071】
焼結成形体の熱電性能に関して、実施例2〜4の焼結成形体は、いずれも0.1以上の熱電性能指数であった。また、実施例5および6の焼結成形体は、p型では0.08以上の熱電性能指数であり、n型では0.10以上の熱電性能指数であった。一方、比較例2の焼結成形体は、いずれも約0.07の熱電性能指数であり、実施例2の焼結成形体に比べて有意に低い熱電性能を示した。
図1
図2
図3
図4