【実施例】
【0051】
本実施例において、熱電変換材料用圧粉体の成形性の評価、および熱電変換材料用焼結成形体の熱電性能の評価は、それぞれ以下のようにして行った。
【0052】
[熱電変換材料用圧粉体の成形性の評価]
日本粉末冶金工業会規格 JPMA P11−1992「金属圧粉体のラトラー値測定方法」に準じてラトラー試験を行った。具体的には、以下の手順に従って試験を行った。
熱電変換材料用圧粉体のペレットを目開き1mmのステンレス製篩に入れ、振動数400rpm、振幅4mmの水平回転振動を10分間加えた後に重量を測定し、[(試験前の試験片重量−試験後の試験片重量)/試験前の試験片重量]×100(%)により、ラトラー値を算出した。
本ラトラー試験では1%程度の測定誤差が生じると考えられるため、ラトラー値が1%以下である場合には、ラトラー試験によって試料の欠損が生じていないものとみなした。一方、ラトラー値が1%を超える場合には、試料の欠損が明らかに生じたものとして評価した。
【0053】
[熱電変換材料用焼結成形体の熱電性能の評価]
(1)ゼーべック係数の測定
熱電変換材料用焼結成形体を立方晶窒化ホウ素(cBN)の切断刃によって切断して、2×2×9(mm
3)の角柱形状の試験片とした。そして、オザワ科学製「RZ−2001i」を用い、350Kにおける各試験片のゼーべック係数をヘリウム雰囲気中で測定した。
(2)電気抵抗率の測定
各熱電変換材料用焼結成形体を立方晶窒化ホウ素(cBN)の切断刃によって切断して、2×2×9(mm
3)の角柱形状の試験片とした。そして、ヘリウム雰囲気中において、直流四端子法により各試験片に100mAの電流を通電して350Kにおける電気抵抗率を測定した。
(3)熱伝導率の測定
各熱電変換材料用焼結成形体を炭化ケイ素の研磨紙によって加工してφ10×2(mm
3)の円板状の試験片とした。そして、空気中において、レーザフラッシュ法を用いて各試験片の350Kにおける熱伝導率を測定した。
【0054】
<実施例1>
Fe
2VAlの組成を有する合金の圧粉体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のAl粉末を、Fe
2VAl
1−m(式中、m=1.0、0.9、0.8、0.7、0.6である)の組成となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAlの組成となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表1および
図2に示す。
【0055】
<実施例2>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、純度99質量%のAl粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VAl
0.9−mSi
0.1(式中、m=0.9、0.8、0.6である)の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表2および
図3に示す。
さらに、得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表2に示す。また、熱電性能指数の評価結果を
図4に示す。
【0056】
<実施例3>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VSi
0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAlを添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表3に示す。
【0057】
<実施例4>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VSi
0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1100℃で10分、30分、1時間、2時間、4時間、10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表4に示す。
【0058】
<実施例5>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2+aV
1+bAl
1+c(式中、|a|≦0.2;|b|≦0.1;|c|≦0.1である)の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末を、Fe
2+aV
1+bの組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2+aV
1+bAl
1+cの組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表5に示す。
【0059】
<実施例6>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、(Fe
1−xM
x)
2(V
1−yL
y)(Al
1−zR
z)(式中、MはMn、CoおよびNiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、LはTi、Cr、Zr、Nb、Mo、TaおよびWからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、RはSi、Ge、Sn、SbおよびBiからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、xの値は0≦x≦0.4であr、yの値は0≦y≦0.4であり、zの値は0≦z≦0.4である)の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末、純度99質量%のV粉末、純度99質量%以上の元素M粉末、純度99質量%以上の元素L粉末および純度99質量%以上の元素R粉末を、(Fe
1−xM
x)
2(V
1−yL
y)R
zの組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体で(Fe
1−xM
x)
2(V
1−yL
y)(Al
1−zR
z)の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表6に示す。
【0060】
<比較例1>
Fe
2VAlの組成を有する合金の圧粉体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のAl粉末を、Fe
2VAl
1−m(式中、m=0.5、0.4、0.3、0.2、0である)の組成となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAlの組成となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表1および
図2に示す。
なお、m=0の場合には、原料混合物の粉末の成形が困難であり、圧粉体を得ることができなかった。
【0061】
<比較例2>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、純度99質量%のAl粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VAl
0.9−mSi
0.1(式中、m=0.4、0.2、0である)の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体について、ラトラー試験法を用いて成形性を評価した結果を表2および
図3に示す。
さらに、得られた圧粉体を真空中、1000℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表2に示す。また、熱電性能指数の評価結果を
図4に示す。
なお、m=0の場合には、原料混合物の粉末の成形が困難であり、圧粉体を得ることができなかった。
【0062】
<参考例1>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VSi
0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、700℃で10時間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表3に示す。
【0063】
<参考例2>
Fe
2VAl系熱電変換材料として、Fe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比を有する合金の圧粉体および焼結成形体を作製した。
まず、純度99質量%のFe粉末と純度99質量%のV粉末、および純度99質量%のSi粉末を、Fe
2VSi
0.1の組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルにより混合した。この先駆原料の粉末に、全体でFe
2VAl
0.9Si
0.1の組成比となるように、純度99質量%のAl粉末を添加し、遊星型ボールミルにより混合した。得られた原料混合物の粉末を内径φ10mmの超硬合金製の金型に充填し、400MPaの圧力を加えることで厚みが約2mmの圧粉体のペレットとした。
得られた圧粉体を真空中、1100℃で1分間焼結し、焼結成形体とした。
得られた焼結成形体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率を測定し、熱電性能を評価した結果を表4に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
圧粉体の成形性に関して、実施例1および2の圧粉体は、いずれもラトラー値が1%以下であり、成形性の良好な圧粉体であった。一方、比較例1の圧粉体は、Alの添加割合が減少するにつれてラトラー値が急激に増加し、いずれも成形性が低い圧粉体であった。また、比較例2の圧粉体は、いずれもラトラー値が10%以上であり、成形性が低い圧粉体であった。
【0071】
焼結成形体の熱電性能に関して、実施例2〜4の焼結成形体は、いずれも0.1以上の熱電性能指数であった。また、実施例5および6の焼結成形体は、p型では0.08以上の熱電性能指数であり、n型では0.10以上の熱電性能指数であった。一方、比較例2の焼結成形体は、いずれも約0.07の熱電性能指数であり、実施例2の焼結成形体に比べて有意に低い熱電性能を示した。