【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)「複合撮像面による空間情報取得システムの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補間処理部は、前記補間対象要素画像に対して前記仮想要素レンズの主点から遠ざかる順での前記複数の視点それぞれについての複数の画素の値の平均値において、前記平均値の変化率が閾値以下となる場合の平均値を前記第1の補間対象画素の値とする、
請求項1記載の撮影装置。
前記補間処理部は、前記撮像面間の間隙に対応する補間対象画素から前記補間対象要素画像における第1の補間対象画素を除く第2の補間対象画素の値を、画素の内挿処理により算出する、
請求項1から請求項3いずれか一項記載の撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態である撮影装置を適用した撮影表示システムの構成の概略を示す図である。同図に示すように、撮影表示システム1は、マルチレンズ撮像アレイ10と、画像処理装置(補間処理部)20と、投影装置60と、拡散板70と、表示用レンズアレイ80とを含む。撮影表示システム1において、撮影装置は、マルチレンズ撮像アレイ10と、画像処理装置20とを含む。
【0011】
図1には、マルチレンズ撮像アレイ10によって撮影される被写体Sが表されている。また、同図には、相互に直交する3本の軸(X軸、Y軸、およびZ軸)が表されている。X軸は、マルチレンズ撮像アレイ10に含まれる複数の撮像素子の撮像面それぞれの水平方向に平行な軸である。Y軸は、マルチレンズ撮像アレイ10に含まれる複数の撮像素子の撮像面それぞれの垂直方向に平行な軸である。Z軸は、マルチレンズ撮像アレイ10の各撮像素子の撮像面に対して垂直な軸である。つまり、Z軸は、撮影装置の主光軸に平行な軸である。
【0012】
マルチレンズ撮像アレイ10は、例えば9個のマルチレンズ撮像部100を含んで構成される。詳しくは後述するが、各マルチレンズ撮像部100は、撮像用レンズアレイ(レンズアレイ)および前記の撮像素子を備える。
図1に示すように、マルチレンズ撮像アレイ10は、9個のマルチレンズ撮像部100それぞれにおける撮像素子の撮像面がX軸およびY軸を含む平面(XY平面)に平行となるよう、マルチレンズ撮像部100間に所定の間隙を設けて、9個のマルチレンズ撮像部100をX軸方向およびY軸方向それぞれに3個ずつ配設して構成される。本実施形態では、これらマトリクス状に設けられた9個のマルチレンズ撮像部100それぞれの符号に二次元座標を表す添字(2桁の数字)を付して、各マルチレンズ撮像部100を区別する(以下、同様の記載をする場合がある)。
【0013】
なお、マルチレンズ撮像アレイ10は、9個に限定されることなく複数のマルチレンズ撮像部100を含むものとしてよい。また、マルチレンズ撮像アレイ10は、マルチレンズ撮像部100間に所定の間隙を設けて、複数のマルチレンズ撮像部100を、少なくともX軸方向またはY軸方向のいずれか一方向に配設して構成してもよい。
【0014】
マルチレンズ撮像部100は、被写体Sから到来する光束を撮像用レンズアレイに通し、この撮像用レンズアレイを通過した光束を撮像素子で光電変換させて、要素画像群データを生成する。要素画像は、撮像用レンズアレイにおける要素レンズからの光束から得られる画像である。よって、要素画像群は、撮像用レンズアレイからの光束から得られる画像群である。マルチレンズ撮像アレイ10は、9個のマルチレンズ撮像部100を同時に動作させて9個の要素画像群データを生成し、これら9個の要素画像群データを要素画像群データセットとして画像処理装置20に供給する。この要素画像群データセットは、1フレームに相当する要素画像群のデータセットである。
【0015】
画像処理装置20は、マルチレンズ撮像アレイ10が供給する要素画像群データセットを取り込む。画像処理装置20は、要素画像群データセットが有する9個の要素画像群データを、9個(3個×3個)のマルチレンズ撮像部100のマトリクス配置に対応させて合成することにより、1フレーム分の要素画像群データを生成する。
【0016】
具体的に、画像処理装置20は、9個の要素画像群データを合成する際に、例えば、撮像用レンズアレイ間の間隙に対応する仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における第1の補間対象画素の値を、この第1の補間対象画素と前記の仮想要素レンズの主点とを通る線上の複数の視点それぞれについての、当該視点と前記の仮想要素レンズの周囲にある要素レンズの主点とを通して得られる複数の画素の値の平均値に基づいて算出する。そして、画像処理装置20は、撮像面間の間隙に対応する補間対象画素から補間対象要素画像における第1の補間対象画素を除く第2の補間対象画素の値を、画素の内挿処理により算出する。そして、画像処理装置20は、9個の要素画像群データと、第1の補間対象画素の値と、第2の補間対象画素の値とを結合することにより、1フレーム分の要素画像群データを生成する。
【0017】
画像処理装置20は、生成した1フレーム分の要素画像群データを、インテグラル画像データとして投影装置60に供給する。画像処理装置20が要素画像群データセットを合成してインテグラル画像データを得る処理(合成処理)の詳細については、後述する。画像処理装置20は、中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)を搭載した演算処理装置、例えば、コンピュータ装置により実現される。
【0018】
撮影表示システム1は、表示装置を含む。この表示装置は、投影装置60と、拡散板70と、表示用レンズアレイ80とを含む。この表示装置は、本実施形態である撮影装置が生成したインテグラル画像データを取り込み、このインテグラル画像データをインテグラルフォトグラフィとして表示する。
【0019】
投影装置60は、画像処理装置20が供給するインテグラル画像データを取り込む。投影装置60は、インテグラル画像データを画像光に変換し、この画像光を拡散板70に向けて投射する。投影装置60は、例えば、プロジェクタ装置により実現される。
【0020】
拡散板70は、光透過性および光拡散性をともに有する平板である。拡散板70は、投影装置60によって投影された画像光を一方の面(投影装置60側の面)から拡散させながら透過させて他方の面に到達させる。これにより、インテグラル画像が拡散板70の他方の面に表出する。
【0021】
表示用レンズアレイ80は、複数の要素レンズを、各光軸が平行となるようにして規則的(例えば、正方格子状)に二次元配列させて構成した要素レンズ群である。各要素レンズは、例えば凸レンズである。表示用レンズアレイ80は、各要素レンズの焦平面が拡散板70の他方の面に一致する位置に設けられる。拡散板70の他方の面に表示されたインテグラル画像からの光束を、表示用レンズアレイ80に通すことによって、被写体Sに対応する空間像が生成される。
【0022】
撮影表示システム1において、9個の撮像用レンズアレイ100が有する複数の要素レンズと画素との位置関係は、表示用レンズアレイ80が有する複数の要素レンズと画素との位置関係に等しい。
【0023】
図2は、
図1に示したマルチレンズ撮像アレイ10をX軸方向に見た場合の側面図である。
図2には、マルチレンズ撮像アレイ10が備える9個のマルチレンズ撮像部100のうち、マルチレンズ撮像部100
11,100
12,100
13が基板部103に固定された様子が示されている。
図1および
図2を併せ参照すると、9個のマルチレンズ撮像部100
11,100
12,100
13,100
21,100
22,100
23,100
31,100
32,100
33は、基板部103の平面に固定されている。
【0024】
図2において、マルチレンズ撮像部100
11は、撮像用レンズアレイ101
11と、撮像素子102
11とを備える。また、マルチレンズ撮像部100
12は、撮像用レンズアレイ101
12と、撮像素子102
12とを備える。また、マルチレンズ撮像部100
13は、撮像用レンズアレイ101
13と、撮像素子102
13とを備える。また、同図には示していないが、マルチレンズ撮像部100
21,100
22,100
23,100
31,100
32,100
33についても、同図と同様に、撮像用レンズアレイ100および撮像素子102を備える。
【0025】
撮像用レンズアレイ101は、複数の要素レンズを、各光軸が平行となるようにして規則的に二次元配列させて構成した要素レンズ群である。撮像用レンズアレイ101をZ軸方向からみた場合、複数の要素レンズは、正方格子状に二次元配列されている。撮像用レンズアレイ101の各要素レンズは、例えば、屈折率分布型(GRadient INdex;GRIN)レンズにより実現される。
【0026】
具体的に、撮像用レンズアレイ101の要素レンズとして、以下に示す仕様の屈折率分布型レンズを用いる。すなわち、屈折率分布型レンズの光軸方向の長さをL、その屈折率分布型レンズの蛇行周期をPとし、下記の式(1)を満たす仕様の屈折率分布型レンズを要素レンズとして用いる。ただし、式(1)において、nは正整数である。
【0028】
式(1)を満たす仕様の屈折率分布型レンズを要素レンズとして用いることにより、この屈折率分布型レンズの一方の端面から十分遠方に存在する被写体Sの正立実像を、他方の端面上またはこの端面の外側に現出させることができる。
屈折率分布型レンズの一方の端面から十分遠方に存在する被写体Sの正立実像を他方の端面上に現出させるためには、下記の式(2)を満たす仕様の屈折率分布型レンズを用いる。ただし、式(2)において、nは正整数である。
【0030】
図2は、式(2)においてnが1である場合の屈折率分布型レンズを用いてマルチレンズ撮像部100を構成した例を模式的に示している。要素レンズとして、式(2)を満たす屈折率分布型レンズを用いることにより、要素画像間のクロストークを抑制することができる。
【0031】
撮像素子102は、撮像用レンズアレイ101の各要素レンズから得られる光束を光電変換して要素画像群データを生成する。撮像素子102は、例えば、CCD(Charged Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子により実現される。
【0032】
マルチレンズ撮像部100において、撮像用レンズアレイ101は、各要素レンズの焦平面が撮像素子102の撮像面に一致するように設けられる。例えば、式(2)を満たす仕様の屈折率分布型レンズを撮像用レンズアレイ101の要素レンズとして用いた場合、この屈折率分布型レンズの焦平面を、この屈折率分布型レンズにおける被写体S側と反対側の端面に一致させることができる。したがって、この場合、
図2に示したように、撮像用レンズアレイ101における被写体S側と反対側の端面を撮像素子102の撮像面に接触させてマルチレンズ撮像部100を構成することができる。このように構成したマルチレンズ撮像部100を用いることにより、集光レンズや拡散板を含まない撮影装置を実現することができる。よって、その撮影装置によれば、集光レンズおよび拡散板を含まないことによって画質劣化を抑えることができ、また、装置の小型化を実現することができる。
【0033】
図3は、
図1に示したマルチレンズ撮像アレイ10を被写体S側からZ軸方向に見た場合の、マルチレンズ撮像部100における撮像面間の間隙を模式的に示す図(XY平面図)である。同図は、マルチレンズ撮像アレイ10において相互に隣り合う4個のマルチレンズ撮像部100
11,100
21,100
12,100
22を示している。また、同図は、各マルチレンズ撮像部100において、XY平面内で正方格子状に要素レンズを配列させた撮像用レンズアレイと、撮像面の画素とを示している。
【0034】
なお、
図3では、要素レンズに対する画素の密度を低く、つまり要素レンズに対して画素を大きく表しているが、これは説明の便宜のためであり、実際は、要素レンズに対する画素の密度はさらに高い。また、同図における撮像用レンズアレイは、要素レンズをX軸方向およびY軸方向に隙間なく配列したものであり、この場合、X軸方向およびY軸方向それぞれにおけるレンズピッチは要素レンズの直径に等しい。レンズピッチとは、隣接する要素レンズの中心点間の大きさである。また、同図における撮像素子は、画素を隙間なく格子状に配列したものであり、この場合、X軸方向およびY軸方向それぞれにおける画素ピッチは画素幅に等しい。画素ピッチとは、隣接する画素の中心点間の大きさである。
【0035】
図3に示すように、XY平面において、マルチレンズ撮像部100
11の撮像面とマルチレンズ撮像部100
21の撮像面との間、およびマルチレンズ撮像部100
12の撮像面とマルチレンズ撮像部100
22の撮像面との間には、X軸方向の間隙が設けられている。これらX軸方向の間隙の大きさP
Xは、撮像面におけるX軸方向の画素ピッチの正整数倍である。同図は、X軸方向の間隙の大きさP
Xが撮像面におけるX軸方向の画素ピッチの8倍であることを示している。
【0036】
同様に、XY平面において、マルチレンズ撮像部100
11の撮像面とマルチレンズ撮像部100
12の撮像面との間、およびマルチレンズ撮像部100
21の撮像面とマルチレンズ撮像部100
22の撮像面との間には、Y軸方向の間隙が設けられている。これらY軸方向の間隙の大きさP
Yは、撮像面におけるY軸方向の画素ピッチの正整数倍である。同図は、Y軸方向の間隙の大きさP
Yが撮像面におけるY軸方向の画素ピッチの8倍であることを示している。
【0037】
なお、X軸方向の間隙の大きさP
XとY軸方向の間隙の大きさP
Yとは、等しくてもよいし等しくなくてもよい。
【0038】
図4は、
図1に示したマルチレンズ撮像アレイ10を被写体S側からZ軸方向に見た場合の、マルチレンズ撮像部100における撮像用レンズアレイ間の間隙を模式的に示す図(XY平面図)である。
図4に示すように、XY平面において、マルチレンズ撮像部100
11の撮像用レンズアレイとマルチレンズ撮像部100
21の撮像用レンズアレイとの間、およびマルチレンズ撮像部100
12の撮像用レンズアレイとマルチレンズ撮像部100
22の撮像用レンズアレイとの間には、X軸方向の間隙が設けられている。これらX軸方向の間隙の大きさL
Xは、撮像用レンズアレイのレンズピッチの正整数倍である。同図は、X軸方向の間隙の大きさL
Xが撮像用レンズアレイのレンズピッチの2倍であることを示している。
【0039】
同様に、XY平面において、マルチレンズ撮像部100
11の撮像用レンズアレイとマルチレンズ撮像部100
12の撮像用レンズアレイとの間、およびマルチレンズ撮像部100
21の撮像用レンズアレイとマルチレンズ撮像部100
22の撮像用レンズアレイとの間には、Y軸方向の間隙が設けられている。これらY軸方向の間隙の大きさL
Yは、撮像用レンズアレイのレンズピッチの正整数倍である。同図は、Y軸方向の間隙の大きさL
Yが撮像用レンズアレイのレンズピッチの2倍であることを示している。
【0040】
撮像用レンズアレイ間の間隙に対応して仮想的に設けられる要素レンズを仮想要素レンズとする。つまり、
図4の例では、X軸方向の間隙に2列の仮想要素レンズがあり、Y軸方向の間隙に2行の仮想要素レンズがある。
【0041】
なお、X軸方向の間隙の大きさL
XとY軸方向の間隙の大きさL
Yとは、等しくてもよいし等しくなくてもよい。
【0042】
図5は、
図3に示した撮像面間の間隙と、
図4に示した撮像用レンズアレイ間の間隙とを、ともに示した図である。
図5に示すように、XY平面において隣り合って配設される4個のマルチレンズ撮像部100
11,100
21,100
12,100
22における、X軸方向の撮像面間の間隙および撮像用レンズアレイ間の間隙は同一でない。同様に、Y軸方向の撮像面間の間隙および撮像用レンズアレイ間の間隙は同一でない。
図2および
図5によれば、9個のマルチレンズ撮像部100は、マルチレンズ撮像部100間における、撮像素子102の撮像面間の間隙の大きさが撮像面における画素ピッチの正整数倍、且つ撮像用レンズアレイ101間の間隙の大きさがレンズピッチの正整数倍を満たすよう、基板部103の平面に固定される。
【0043】
ここで、画像処理装置20による要素画像群データセットの合成処理について詳細に説明する。画像処理装置20は、マルチレンズ撮像アレイ10から要素画像群データセットを取り込み、この要素画像群データセットが有する9個の要素画像群データを、
図3に示す画素ピッチの正整数倍分の間隙を設けて自装置に内蔵する記憶部に記憶させる。この記憶部は、例えば、少なくとも1フレーム分のインテグラル画像データを記憶可能なメモリである。つまり、記憶部には、撮像素子102の撮像面のマトリクス配置に対応して、9個の要素画像群データが記憶される。
【0044】
そして、画像処理装置20は、
図4に示す撮像用レンズアレイ間の間隙に対応する仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における第1の補間対象画素の値を、この第1の補間対象画素と前記の仮想要素レンズの主点とを通る線上の複数の視点それぞれについての、当該視点と前記の仮想要素レンズの周囲にある要素レンズの主点とを通して得られる複数の画素の値の平均値に基づいて算出する。インテグラルフォトグラフィによる撮影/表示方式では、被写体からの光線情報を記録し、この記録した光線情報を基に被写体像(空間像)を再生させるため、表示用レンズアレイからの視点距離に応じて被写体像の大きさが変化する。上記の、第1の補間対象画素の値の算出法は、このインテグラルフォトグラフィの特性を利用し、撮影側で取得できなかった画素(補間対象要素画像における第1の補間対象画素)の値を算出する方法である。より具体的に、
図6を参照して説明する。
【0045】
図6は、画像処理装置20が仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における補間対象画素の値を計算する処理を説明するための図である。同図において、要素画像Aと要素画像Cとの間には、1要素画像分の補間対象要素画像Bの画素領域がある。主点PAは、要素画像Aに対応する要素レンズの主点である。また、主点PCは、要素画像Cに対応する要素レンズの主点である。また、主点PBは、補間対象要素画像Bに対応する仮想要素レンズの主点である。同図は、画像処理装置20が補間対象要素画像Bにおける3番目の補間対象画素B(3)の値を計算する場合の例である。
図4に示したように、撮像用レンズアレイにおける複数の要素レンズは、撮影装置の主光軸に対して直角である平面(XY平面)上に配列されるため、各要素画像における視線方向は、要素レンズの並びに応じて徐々に変化する。つまり、隣り合う要素画像間、または、注目する要素画像とこの周辺の要素画像との間では、画像の相関が強い確率が高い。
【0046】
このような統計的な性質を利用し、
図6の補間対象画素B(3)を例とすると、画像処理装置20は、補間対象要素画像Bの補間対象画素B(3)と仮想要素レンズの主点PBとを通る線5上のn個の視点(視点1、視点2、・・・、視点n)それぞれについて、当該視点と主点PAとを通して得られる画素の値、および当該視点と主点PCとを通して得られる画素の値の平均値を算出する。具体的に、画像処理装置20は、視点1と主点PAとを通る線1Aが到達する要素画像Aにおける画素A(1)の値と、視点1と主点PCとを通る線1Cが到達する要素画像Cにおける画素C(5)の値との平均値B(3)[1]を算出する。同様に、画像処理装置20は、視点2と主点PAとを通る線2Aが到達する要素画像Aにおける画素A(2)の値と、視点2と主点PCとを通る線2Cが到達する要素画像Cにおける画素C(4)の値との平均値B(3)[2]を算出する。
【0047】
画像処理装置20は、n個の視点それぞれについて平均値を算出したのち、補間対象要素画像Bに対して主点PBから遠ざかる順でのn個の視点それぞれについての平均値B(3)[1],B(3)[2],・・・,B(3)[n]において、平均値の変化率があらかじめ決定された閾値以下となる場合の平均値B(3)[k]を、補間対象画素B(3)の値として決定する。そして、画像処理装置20は、算出した補間対象画素B(3)の値を、記憶部において対応するアドレスの領域に記憶させる。
【0048】
つまり、画像処理装置20は、補間対象要素画像における第1の補間対象画素と、その補間対象要素画像に対応する仮想要素レンズの主点とを結ぶ光軸方向を基準とし、この光軸方向において複数の視点位置それぞれについて、補間対象要素画像の周囲にある要素画像(例えば、補間対象要素画像に隣接する要素画像)において当該視点位置に対応する画素の値の平均値を算出し、これら複数の平均値から最も確からしい値を、第1の補間対象画素の値として決定する。これにより、画像処理装置20は、補間対象要素画像を高精度に生成することができる。
【0049】
図7は、画像処理装置20が、補間対象要素画像における第1の補間対象画素を、補間対象要素画像に隣接する二つの要素画像から求めるための計算の結果を示すグラフである。同図のグラフは、横軸を表示面からの視点距離(単位:メートル)、縦軸を画素値とする。このグラフにおいて、実線は、第1の補間対象画素に対応する、補間対象要素画像に隣接する一方(観視側から見て左側)の要素画像に含まれる第1の画素の値である。また、破線は、第1の補間対象画素に対応する、補間対象要素画像に隣接する他方(観視側から見て右側)の要素画像に含まれる第2の画素の値である。一点鎖線は、画像処理装置20が、視点位置に応じて算出した、第1の画素の値と第2の画素の値との平均値である。画像処理装置20は、一点鎖線で表した計算結果から、平均値の変化率があらかじめ決定された閾値以下となる場合の平均値(例えば、“217”)を、第1の補間対象画素の値として得る。
【0050】
また、画像処理装置20は、
図3に示す撮像面間の間隙(撮像面の画素ピッチの8倍)に対応する補間対象画素から補間対象要素画像における第1の補間対象画素を除く第2の補間対象画素の値を、隣接する画素または周囲の画素の内挿処理により算出する。例えば、画像処理装置20は、第2の補間対象画素に対する周囲の画素の値を線形補間することによって第2の補間対象画素の値を算出する。具体的に、例えば、第2の補間対象画素に隣接する4画素から第2の補間対象画素の値を求める場合、画像処理装置20は、それら4画素の画素値の平均値を計算することにより第2の補間対象画素の値を得る。そして、画像処理装置20は、算出した第2の補間対象画素の値を、記憶部において対応するアドレスの領域に記憶させる。
【0051】
以上説明したとおり、本実施形態である撮影装置は、撮像面間に間隙を有してマトリクス状に配設される複数の撮像素子102と、これら複数の撮像素子102の撮像面それぞれに対応させて、間隙を有して設けられる複数の撮像用レンズアレイ101とを備える。また、撮影装置は、撮像用レンズアレイ101間の間隙に対応する仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における第1の補間対象画素の値を、この第1の補間対象画素と仮想要素レンズの主点とを通る線上の複数の視点それぞれについての、当該視点と仮想要素レンズの周囲にある要素レンズの主点とを通して得られる複数の画素の値の平均値に基づいて算出する画像処理装置20を備える。
【0052】
このように、所定の解像度を有するマルチレンズ撮像部100を複数用いて撮影装置を構成することにより、被写体からの光線を取得できない領域の画素を高精度に補間することができ、フレーム全体として、前記の解像度よりも極めて高い解像度を有する撮影装置を実現することができる。
【0053】
また、撮影装置において、画像処理装置20は、補間対象要素画像に対して仮想要素レンズの主点から遠ざかる順での複数の視点それぞれについての複数の画素の値の平均値において、平均値の変化率が閾値以下となる場合の平均値を第1の補間対象画素の値としてもよい。この構成により、撮影装置は、補間対象要素画像の周囲の要素画像に基づいて、補間対象要素画像を高精度に補間することができる。
【0054】
また、撮影装置において、画像処理装置20は、撮像面間の間隙に対応する補間対象画素から補間対象要素画像における第1の補間対象画素を除く第2の補間対象画素の値を、画素の内挿処理により算出してもよい。
【0055】
[その他の実施の形態]
画像処理装置20は、撮像用レンズアレイ101間の間隙に対応する仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における第1の補間対象画素の値を、この第1の補間対象画素と仮想要素レンズの主点とを通る線上の複数の視点それぞれについての、当該視点と仮想要素レンズの周囲にある要素レンズの主点とを通して得られる複数の画素の値の平均値から、平均値を計算することによって得てもよい。具体的に、
図6の補間対象画素B(3)を例とすると、画像処理装置20は、n個の視点それぞれについての平均値B(3)[1],B(3)[2],・・・,B(3)[n]の平均値を算出し、その平均値を補間対象画素B(3)の値として決定する。
【0056】
この構成によっても、撮影装置は、インテグラルフォトグラフィによって高精細な空間像を得るためのインテグラル画像データを生成することができる。
【0057】
上述した実施形態は、撮像用レンズアレイ101および表示用レンズアレイを、正方格子状に要素レンズを配列して構成した例とした。これらレンズアレイにおける要素レンズの配列パターンは、正方格子配列に限定されることなく、例えば、デルタ配列としてもよい。デルタ状に要素レンズを隙間なく配列した場合、要素レンズの直径をDとすると、例えば、X軸方向のレンズピッチは行ごとにDであり、隣接する行間においてはD/2である。また、Y軸方向のレンズピッチは、(√3)×D/2である。デルタ配列によって構成されるレンズアレイは正方格子配列によって構成されるレンズアレイよりも要素レンズの密度が高い。よって、デルタ配列によって構成されるレンズアレイを用いた撮影表示システムは、内挿処理を実行した場合に、高画質の補間対象要素画像および補間対象画素を得ることができる。
【0058】
また、撮像用レンズアレイの要素レンズと表示用レンズアレイの要素レンズとの組み合わせを、以下のようにしてもよい。すなわち、撮像側または表示側いずれか一方を屈折率分布型レンズとし、他方を凸レンズとする。または、いずれか一方を凸レンズとし、他方を凹レンズとする。または、撮像側および表示側の両方を凸レンズまたは屈折率分布型レンズとし、画像処理装置において各要素画像の奥行きを反転させる画像処理を実行してもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、画像処理装置20が仮想要素レンズに対する補間対象要素画像における補間対象画素の値を計算する処理の例としたが、例えば、撮像素子102に欠陥画素がある場合、撮像用レンズアレイ101の要素レンズに傷がある場合や塵埃が付着している場合にも適用できる。
【0060】
また、画像処理装置20の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて、このコンピュータシステムが実行することにより、当該機能を実現してもよい。なお、このコンピュータシステムとは、オペレーティングシステム(Operating System;OS)や周辺装置のハードウェアを含むものである。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに備えられる磁気ハードディスクやソリッドステートドライブ等の記憶装置のことをいう。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のコンピュータネットワーク、および電話回線や携帯電話網を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、さらには、その場合のサーバ装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0061】
以上により、実施形態である撮影装置は、インテグラルフォトグラフィによって高精細な空間像を得るためのインテグラル画像データを生成することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。