特許第6192273号(P6192273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6192273リチウム2次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム2次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192273
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】リチウム2次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20170828BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20170828BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170828BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170828BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/583
   H01M4/36 A
   H01M10/052
   H01M4/62 Z
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-199192(P2012-199192)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2013-62246(P2013-62246A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2015年8月21日
(31)【優先権主張番号】61/534,750
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/550,427
(32)【優先日】2012年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】宋 在▲ヒョク▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 商仁
(72)【発明者】
【氏名】朴 ハンオル
(72)【発明者】
【氏名】金 志賢
(72)【発明者】
【氏名】金 起賢
(72)【発明者】
【氏名】劉 容贊
(72)【発明者】
【氏名】李 夏英
【審査官】 大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030292(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123858(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/106292(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/062019(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/117871(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147766(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0241666(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0258363(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0142668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M10/05−10/0587
H01M10/36−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるリチウムホスフェート化合物粒子;および
繊維状炭素を含み、
前記繊維状炭素の一部は、前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に挿入されているリチウム2次電池用正極活物質であって、
前記繊維状炭素の一部が前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に挿入された長さは、5〜1,000nmであり、
前記正極活物質が、粉末状、無定形またはこれらの組み合わせの形態を有する炭素系物質をさらに含む、リチウム2次電池用正極活物質。
[化学式1]
LiFe1−xPO
(前記化学式1中、Mは、Co、Mn、V、Mgまたはこれらの組み合わせであり、0≦x≦0.20である。)
【請求項2】
前記繊維状炭素は、炭素ナノチューブ、気相成長炭素繊維、炭素ナノ繊維またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記繊維状炭素は、5〜25nmの直径および5〜200μmの長さを有する、請求項1に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記繊維状炭素は、前記リチウムホスフェート化合物粒子100重量部に対して0.01〜20重量部が含まれる、請求項1に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウムホスフェート化合物粒子は、1次粒子を含み、
前記繊維状炭素の一部は、前記1次粒子内部に挿入されている、請求項1に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記1次粒子の直径は、100〜1,000nmである、請求項5に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウムホスフェート化合物粒子は、前記1次粒子が集まって形成される2次粒子を含み、
前記2次粒子は、球状であり、5〜30μmの直径を有する、請求項5に記載のリチウム2次電池用正極活物質。
【請求項8】
下記化学式1で表されるリチウムホスフェート化合物および繊維状炭素を混合する段階;
前記混合して得られた混合物を乾燥する段階;および
前記乾燥して得られた乾燥物を熱処理する段階
を含み、
前記混合は、粉末状、無定形またはこれらの組み合わせの形態を有する炭素系物質をさらに添加して混合する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウム2次電池用正極活物質の製造方法。
[化学式1]
LiFe1−xPO
(前記化学式1中、Mは、Co、Mn、V、Mgまたはこれらの組み合わせであり、0≦x≦0.20である。)
【請求項9】
前記リチウムホスフェート化合物は、
LiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、そしてFePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られるか;または
LiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、FeC・2HO、FePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの鉄化合物、そして(NHHPOおよびLiPOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られる、請求項8に記載のリチウム2次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理は、650〜800℃の温度で行われる、請求項8に記載のリチウム2次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記繊維状炭素は、炭素ナノチューブ、気相成長炭素繊維、炭素ナノ繊維またはこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のリチウム2次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
電解液
を含む、リチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、リチウム2次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム2次電池は、有機電解液を使用することに伴って、既存のアルカリ水溶液を使用した電池より2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
このようなリチウム2次電池は、リチウムをインターカレーション(intercalation)およびデインターカレーション(deintercalation)することができる正極活物質を含む正極、およびリチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる負極活物質を含む負極を含む電池セルに電解液を注入して使用される。
【0004】
最近、EV(electric vehicle)、HEV(hybrid electric vehicle)などのような自動車用電池の需要増加を考慮するとき、他の正極活物質に比べて安定性に優れたLiFePOに対する関心が増加している。
【0005】
なお、LiFePOは優れた寿命特性を有すると同時に低価の原料物質を使用して生産単価が低いため、ESS(energy storage system)用リチウム2次電池の正極活物質に適した特徴を有している。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1)韓国公開特許第10−2009−0102793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、LiFePOは、電気伝導度が低いことから、2次粒子の表面のLiFePOは充放電に比較的に良好に参加することに比べて内部のLiFePOは充放電に良好に参加することができない。
【0007】
本発明の一実施形態は、2次粒子の中央部分まで優れた電気伝導性を付与することができることによって、優れた高率寿命特性を有するリチウム2次電池用正極活物質を提供する。
【0008】
本発明の他の一実施形態は、前記リチウム2次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記リチウム2次電池用正極活物質を含むリチウム2次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、下記化学式1で表されるリチウムホスフェート化合物粒子;および繊維状炭素を含み、前記繊維状炭素の少なくとも一部は、前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれているリチウム2次電池用正極活物質を提供する。
【0011】
[化学式1]
LiFe1−xPO
(前記化学式1中、Mは、Co、Mn、V、Mgまたはこれらの組み合わせであり、0≦x≦0.20である。)
【0012】
前記繊維状炭素は、炭素ナノチューブ、気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber)、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
前記繊維状炭素は、5〜25nmの直径および5〜200μmの長さを有することができる。
【0014】
前記繊維状炭素は、前記リチウムホスフェート化合物粒子100重量部に対して0.01〜20重量部が含まれ得る。
【0015】
前記繊維状炭素の少なくとも一部が前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれた長さは、5〜1,000nmであってもよい。
【0016】
前記リチウムホスフェート化合物粒子は、1次粒子を含み、前記繊維状炭素の少なくとも一部は、前記1次粒子内部に打ち込まれていてもよい。
【0017】
前記1次粒子の直径は、100〜1,000nmであってもよい。
【0018】
前記リチウムホスフェート化合物粒子は、前記1次粒子が集まって形成される2次粒子を含み、前記2次粒子は、球状であり、5〜30μmの直径を有することができる。
【0019】
前記正極活物質は、粉末状、無定形またはこれらの組み合わせの形態を有する炭素系物質をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の他の一実施形態は、前記化学式1で表されるリチウムホスフェート化合物および繊維状炭素を混合する段階;前記混合して得られた混合物を乾燥する段階;および前記乾燥して得られた乾燥物を熱処理する段階を含むリチウム2次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0021】
前記リチウムホスフェート化合物は、LiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、そしてFePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られるか;またはLiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、FeC・2HO、FePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの鉄化合物、そして(NHHPOおよびLiPOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られてもよい。
【0022】
前記熱処理は、650〜800℃の温度で行われてもよい。
【0023】
前記混合は、粉末状、無定形またはこれらの組み合わせの形態を有する炭素系物質をさらに添加して混合することができる。
【0024】
前記繊維状炭素は、炭素ナノチューブ、気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber)、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極;および電解液を含むリチウム2次電池を提供する。
【0026】
その他本発明の実施形態の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0027】
正極活物質内部の電気伝導性が改善されることによって、優れた高率寿命特性を有するリチウム2次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の正極活物質層をなす粒子の模式図である。
図2】本発明の一実施形態による正極活物質をなす粒子の模式図である。
図3A】繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の表面に存在する場合の接触面積を示す模式図である。
図3B】繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に存在する場合の接触面積を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態によるリチウム2次電池を示す概略図である。
図5】実施例1で使用された繊維状炭素のFE−SEM写真である。
図6】実施例3で使用された繊維状炭素のFE−SEM写真である。
図7】実施例2で製造された正極活物質のSEM写真である。
図8】実施例4で製造された正極活物質のSEM写真である。
図9】実施例5で製造された正極活物質のSEM写真である。
図10】実施例6で製造された正極活物質のSEM写真である。
図11】実施例7で製造された正極活物質のSEM写真である。
図12】比較例1で製造された正極活物質のSEM写真である。
図13】比較例2で製造された正極活物質のSEM写真である。
図14】比較例3で製造された正極活物質のSEM写真である。
図15】比較例4で製造された正極活物質のSEM写真である。
図16】比較例5で製造された正極活物質のSEM写真である。
図17】比較例6で製造された正極活物質のSEM写真である。
図18】参考例1で製造された正極活物質のSEM写真である。
図19】参考例2で製造された正極活物質のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるもので、本発明はこれによって制限されず、特許請求の範囲の範疇により定義される。
【0030】
本発明の一実施形態によるリチウム2次電池用正極活物質は、リチウムホスフェート化合物粒子および繊維状炭素を含む。この時、前記繊維状炭素の少なくとも一部は、前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造を有する。
【0031】
前記正極活物質は、前記リチウムホスフェート化合物粒子および前記繊維状炭素と共に、炭素系物質をさらに含むことができる。前記炭素系物質は、繊維状ではない、粉末状、無定形またはこれらの組み合わせの形態を有する物質であってもよい。
【0032】
前記炭素系物質は、前記リチウムホスフェート化合物粒子の外部、表面および内部のうちの少なくとも一つの部分に位置することができる。
【0033】
前記正極活物質の構造を図1および図2を参照して具体的に説明する。
【0034】
図1は、従来の正極活物質をなす粒子の模式図であり、図2は、本発明の一実施形態による正極活物質をなす粒子の模式図である。
【0035】
まず前記リチウムホスフェート化合物粒子は、リチウムホスフェート化合物原料を粉砕した後、粉砕された原料を乾燥した後に焼成する方法で製造され得る。この時、焼成後のリチウムホスフェート化合物は、小さいサイズの1次粒子が集まって球状の2次粒子の形態に得られてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記繊維状炭素の少なくとも一部が前記1次粒子内部に打ち込まれている構造を有することができ、前記1次粒子が集まって2次粒子を形成することができる。
【0037】
前記リチウムホスフェート化合物の1次粒子の直径は、約100〜1,000nmであってもよく、前記2次粒子の直径は、約5〜30μmであってもよい。前記2次粒子は、球状であってもよい。この時、前記2次粒子の直径はD50を基準にしたものである。前記粒子の直径(D50)は、粒度分布で累積体積が50体積%に該当する粒子の平均直径を意味する。
【0038】
図1では、リチウムホスフェート化合物の1次粒子10に炭素系物質14を分散させた場合、前記リチウムホスフェート化合物の1次粒子の表面または間に前記炭素系物質が位置する。これによって、前記リチウムホスフェート化合物の2次粒子12の外部は、前記炭素系物質と直接接触しているため、充放電に参加が容易であるが、2次粒子の内部は、前記炭素系物質と直接接触することができず充放電に参加が容易ではないため、電気伝導度が低い。
【0039】
本発明の一実施形態による図2を参照すると、リチウムホスフェート化合物の1次粒子20の表面や間に炭素系物質24が位置しているばかりか、前記リチウムホスフェート化合物の1次粒子20の内部に繊維状炭素26が打ち込まれている構造を見ることができる。
【0040】
前記図2に示すように、前記繊維状炭素の少なくとも一部が前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造を有することによって、図1のように繊維状炭素が存在しない構造と対比して、前記リチウムホスフェート化合物の2次粒子22の内部、具体的には2次粒子の中央部分まで電気伝導性を付与することができる。
【0041】
図3Aは、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の表面に存在する場合の接触面積を示す模式図であり、図3Bは、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に存在する場合の接触面積を示す模式図である。
【0042】
図3Aおよび図3Bを参照すると、本発明の一実施形態により繊維状炭素36がリチウムホスフェート化合物の1次粒子30の内部に存在する場合、表面に存在する場合対比接触面積Aが広いことが分かり、これによって、電気伝導性の改善程度がより大きい。本発明の一実施形態によれば、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に存在することによって正極活物質内部の電気伝導性が大きく改善されることから、リチウム2次電池に適用する場合、優れた高率寿命特性を有することができる。
【0043】
前記打ち込まれている構造とは、前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部、具体的に前記リチウムホスフェート化合物の1次粒子の内部に前記繊維状炭素の少なくとも一部が挿入されている構造を意味する。具体的には、前記繊維状炭素が前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれた長さは5〜1,000nmであってもよく、より具体的には100〜600nmであってもよい。前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に前記繊維状炭素の打ち込まれた長さが前記範囲内である場合、正極活物質の電気伝導性を大きく向上させることによって正極活物質の容量特性が改善され、高率寿命特性に優れたリチウム2次電池を実現することができる。
【0044】
前記繊維状炭素が前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれた長さは、次の方法で測定され得る。
【0045】
前記繊維状炭素が内部に打ち込まれた前記リチウムホスフェート化合物粒子を硝酸溶液のような酸溶液に0.5〜2時間溶解した後、前記リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれた前記繊維状炭素が完全に露出されると、露出された繊維状炭素の長さをFE−SEM分析を利用して測定することができる。
【0046】
前記リチウムホスフェート化合物粒子は、下記化学式1で表される化合物を使用することができる。
【0047】
[化学式1]
LiFe1−xPO
(前記化学式1中、
Mは、Co、Mn、V、Mgまたはこれらの組み合わせであり、
0≦x≦0.20である。)
【0048】
前記繊維状炭素は、炭素ナノチューブ、気相成長炭素繊維(vapor grown carbon fiber)、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)またはこれらの組み合わせを使用することができ、これらのうち好ましくは、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維(carbon nano fiber)またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0049】
前記繊維状炭素の直径は5〜25nmであってもよく、具体的には10〜20nmであってもよい。前記繊維状炭素の直径が前記範囲内である場合、前記リチウムホスフェート化合物粒子との適切な接触面積を維持して電気伝導性が改善され得る。
【0050】
前記繊維状炭素の長さは、5〜200μmであってもよく、具体的には5〜20μmであってもよく、より具体的には10〜15μmであってもよい。
【0051】
前記繊維状炭素は、前記リチウムホスフェート化合物粒子100重量部に対して0.01〜20重量部が含まれてもよく、具体的には0.5〜3重量部が含まれてもよい。前記繊維状炭素が前記範囲内に含まれる場合、電気伝導度の改善により高い質量および体積当たり容量値を得ることができる。
【0052】
前記炭素系物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、非晶質炭素微粉またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0053】
前記炭素系物質は、前記リチウムホスフェート化合物粒子100重量部に対して0.01〜20重量部が含まれてもよく、具体的には1〜10重量部が含まれてもよい。前記炭素系物質が前記範囲内に含まれる場合、電気伝導度の改善により質量および体積当たり容量に優れている。
【0054】
前記正極活物質は、次のような方法で製造され得る。
【0055】
前記化学式1で表されるリチウムホスフェート化合物および繊維状炭素を混合する段階、前記混合して得られた混合物を乾燥する段階、そして前記乾燥して得られた乾燥物を熱処理する段階を経て製造され得る。
【0056】
前記リチウムホスフェート化合物は、LiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、そしてFePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られるか、またはLiCO、LiOHおよびLiNOから選択される少なくとも一つのリチウム化合物、FeC・2HO、FePOおよびFe(PO・8HOから選択される少なくとも一つの鉄化合物、そして(NHHPOおよびLiPOから選択される少なくとも一つの燐酸化合物から得られてもよい。
【0057】
前記混合は、前記リチウムホスフェート化合物と前記繊維状炭素を溶媒中で混合することができ、この時、炭素系物質をさらに添加して混合することもできる。
【0058】
前記乾燥は、例えばディスクタイプのスプレー乾燥機で行われ得る。前記乾燥機は、15,000〜25,000rpmのディスク回転速度、200〜300℃の上部温度、そして100〜130℃の排出口温度を有することができる。
【0059】
前記熱処理は、650〜800℃の温度で行われ得、具体的には700〜750℃の温度で行われ得る。前記温度範囲内で熱処理が行われる場合、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物に打ち込まれた形態になって電気伝導度に優れており、リチウムホスフェート化合物の結晶度および粒状に優れた特性を有する。
【0060】
以下、前記正極活物質を含むリチウム2次電池について図4を参照して説明する。
【0061】
図4は、本発明の一実施形態によるリチウム2次電池を示す概略図である。
【0062】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム2次電池100は、正極114、正極114と対向する負極112、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113、そして正極114、負極112およびセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電極組立体と、前記電極組立体を収容する電池容器120、および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0063】
前記正極は、集電体、そして前記集電体の上に形成される正極活物質層を含む。
【0064】
前記集電体としては、Al(アルミニウム)を使用することができるが、これに限定されない。
【0065】
前記正極活物質層は、前述した正極活物質を含み、バインダーをさらに含むことができる。
【0066】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を集電体に良好に付着させる役割を果たし、具体的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
前記負極112は、負極集電体および前記負極集電体の上に形成されている負極活物質層を含む。
【0068】
前記負極集電体は、銅箔を使用することができる。
【0069】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を含む。
【0070】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0071】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素物質として、リチウム2次電池で一般に使用される炭素系負極活物質は如何なるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0072】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0073】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si−C複合体、Si−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn−C複合体、Sn−Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiOとを混合して使用することもできる。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0074】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0075】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としてポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0076】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0077】
前記負極112は、前記負極活物質、前記導電材および前記バインダーを溶媒中で混合して負極活物質層組成物を製造し、前記負極活物質層組成物を前記集電体に塗布して製造する。前記溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0078】
前記電解液は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0079】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系および非陽子性溶媒から選択され得る。
【0080】
前記カーボネート系溶媒としては、例えばジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、メチルエチルカーボネート(methylethyl carbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)などを使用することができる。
【0081】
特に、鎖状カーボネート化合物および環状カーボネート化合物を混合して使用する場合、誘電率を高めると同時に粘性が小さい溶媒に製造され得て好ましい。この場合、環状カーボネート化合物および鎖状カーボネート化合物は、約1:1〜1:9の体積比に混合して使用することができる。
【0082】
また、前記エステル系溶媒としては、例えばメチルアセテート、酢酸エチル、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル溶媒としては、例えばジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができる。
【0083】
前記非水性有機溶媒は、単独または一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができる。
【0084】
前記非水性電解液は、エチレンカーボネート、ピロカーボネートなどの過充電防止剤のような添加剤をさらに含むこともできる。
【0085】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源で作用して基本的なリチウム2次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0086】
前記リチウム塩の具体的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
前記リチウム塩の濃度は、約0.1M〜約2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解液が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解液性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0088】
前記セパレータ113は、単一膜または多層膜であってもよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの組み合わせから作られ得る。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載された実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0090】
また、ここに記載されない内容は、当該技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推することができるため、その説明を省略する。
【0091】
(リチウム2次電池の製作)
〔実施例1〕
LiCO、FeC・2HOおよび(NHHPOを1.05:1.00:1.00のモル比に混合した混合物を純水溶液に分散させてLiFePOを得た。この時、前記混合物と前記純水溶液は2:8の重量比に分散させた。
【0092】
前記LiFePOを含む第1分散液に、カーボンブラック6重量部(前記LiFePO100重量部基準)と、10〜20nmの直径と5〜10μmの長さを有する炭素ナノチューブ1.25重量部(前記LiFePO100重量部基準)を添加して分散させた。この時、分散剤としてトリトンX−100(triton X−100)を前記カーボンブラックおよび炭素ナノチューブの総量100重量部に対して100重量部を添加して30分撹拌した。
【0093】
ビーズミル(ビーズ直径0.3mm、2,000rpm、3時間)に前記撹拌して得られた第2分散液を投入して分散させた。得られた第3分散液をディスクタイプのスプレー乾燥機(ディスク回転速度20,000rpm、上部温度250℃、および排出口温度110℃)で乾燥させた。
【0094】
前記乾燥させて得られた乾燥物を電気炉(N:H=95:5体積比、ガス総流量20L/min、維持時間10時間)で700℃で熱処理させて正極活物質を形成した。
【0095】
その後、アルミニウム箔の上に前記正極活物質を塗布して正極を製造した。
【0096】
前記正極の対極(counter electrode)としては、金属リチウムを使用してコインタイプの半電池を製作した。この時、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)の混合体積比が1:1:1の混合溶液に1M濃度のLiPFが溶解したものを使用した。
【0097】
〔実施例2〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0098】
〔実施例3〕
実施例1で10〜15nmの直径と10〜20μmの長さを有する炭素ナノチューブを使用して正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0099】
〔実施例4〕
実施例1で10〜15nmの直径と10〜20μmの長さを有する炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0100】
〔実施例5〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して650℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0101】
〔実施例6〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して750℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0102】
〔実施例7〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して800℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0104】
〔比較例2〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに600℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0105】
〔比較例3〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに650℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0106】
〔比較例4〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに750℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0107】
〔比較例5〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに800℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0108】
〔比較例6〕
実施例1で炭素ナノチューブを添加せずに850℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0109】
〔参考例1〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して600℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0110】
〔参考例2〕
実施例1で炭素ナノチューブを2.5重量部(前記LiFePO100重量部基準)使用して850℃で熱処理させて正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で半電池を製作した。
【0111】
(評価1:繊維状炭素のFE−SEM写真の分析)
実施例1および3で使用されたそれぞれの繊維状炭素のFE−SEM(Field Emission−Scanning Electron Microscopy)写真を図5および図6にそれぞれ示した。
【0112】
図5および図6は、それぞれ実施例1および3で使用された繊維状炭素のFE−SEM写真である。
【0113】
図5および図6を参照すると、本発明の一実施形態によりリチウムホスフェート化合物粒子に打ち込まれている炭素物質は繊維状の構造からなっていることが分かる。このような構造によりリチウムホスフェート化合物粒子の内部に円滑に挿入され得、内部の接触面積も増加することとなり、正極活物質の電気伝導性を高めることができる。
【0114】
(評価2:正極活物質層のSEM写真の分析)
実施例2および4〜7、比較例1〜6、および参考例1および2で製造された正極活物質のSEM(scanning electron microscope)写真を評価し、その結果をそれぞれ図7図11図12図17、および図18および図19に示した。
【0115】
図7図11は、それぞれ実施例2および4〜7で製造された正極活物質のSEM写真を示し、図12図17は、それぞれ比較例1〜6で製造された正極活物質のSEM写真を示し、図18および図19は、それぞれ参考例1および2で製造された正極活物質のSEM写真を示す。
【0116】
図7図11を参照すると、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造で形成されることを確認することができる。反面、図12図17を参照すると、繊維状炭素は存在せず、繊維状ではないカーボン系物質のみがリチウムホスフェート化合物粒子の表面に存在することを確認することができる。
【0117】
また、図18および図19を参照すると、参考例1および2で製造された正極活物質は繊維状炭素が存在するが、リチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれていないことを確認することができる。
【0118】
(評価3:正極活物質層の電気伝導度の評価)
実施例1〜7、比較例1〜6、および参考例1および2で製造された正極活物質の電気伝導度を粉末伝導度測定装備を利用して測定し、その結果を下記表1に示した。この時、試料の量は2g、粉末に加えた圧力は20kNに固定した。
【0119】
【表1】
【0120】
前記表1から、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造の正極活物質に該当する実施例1〜7の場合、繊維状ではない炭素系物質のみがリチウムホスフェート化合物粒子の表面や間に存在する構造の正極活物質に該当する比較例1〜6の場合と比較して、電気伝導度が高いことが分かる。
【0121】
また、実施例1〜7の場合、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の表面にのみ存在する参考例1および2の場合と比較して、電気伝導度が高いことが分かる。
【0122】
〔評価4:リチウム2次電池の高率寿命特性の評価〕
実施例1〜7、比較例1〜6、および参考例1および2のリチウム2次電池を次のような方法で充放電させた後に高率による寿命を測定してその結果を下記表2に示した。
【0123】
充放電特性は2.0〜4.2Vの領域で測定し、充電および放電速度は0.1C、3.0Cおよび5.0Cになるように電流値を調節した。
*効率(%)は、0.1C充電容量対比0.1C放電容量の百分率値である。
**容量維持率(%)は、それぞれ0.1C放電容量対比1.0C放電容量の百分率値、0.1C放電容量対比5.0C放電容量の百分率値、1.0C放電容量対比3.0C放電容量の百分率値である。
【0124】
【表2】
【0125】
前記表2から、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造の正極活物質を適用した実施例1〜7の場合、繊維状ではない炭素系物質のみがリチウムホスフェート化合物粒子の表面や間に存在する構造の正極活物質を適用した比較例1〜6の場合と比較して、容量が大きく、高率寿命特性が優秀であることを確認することができる。
【0126】
具体的に実施例1〜4を参照すると、繊維状炭素の添加量が増加することによって0.1C充電容量および0.1C放電容量が小幅減少することが分かる。これは正極活物質内に炭素が残存するだけ、リチウムホスフェート化合物の量が減少することによって正極活物質の重量当たり容量は小幅減少することで説明され得る。
【0127】
また、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の内部に打ち込まれている構造の正極活物質を適用した実施例1〜7の場合、繊維状炭素がリチウムホスフェート化合物粒子の表面にのみ存在する参考例1および2の場合と比較して、容量が大きく、高率寿命特性が優秀であることを確認することができる。
【0128】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0129】
10、20、30…リチウムホスフェート化合物の1次粒子
12、22…リチウムホスフェート化合物の2次粒子
14、24…炭素系物質
26、36…繊維状炭素
100…リチウム2次電池
112…負極
113…セパレータ
114…正極
120…電池容器
140…封入部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19